第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において、当社が判断したものであります。

 

(1)経営方針

より良い社会を創造していくには、その構成要素となる人と組織の生産性を高め、より良い組織を一つでも多く創っていくことが地道でありながら最も確実な方法であると考えます。そして、一人ひとりの多様な能力発揮を支援し、ビジネスと社会の持続的発展を可能にするために当社が考えるテーマは次の通りです。

 

それは、すべてのビジネスパーソンに「客観的な立場からコミュニケーションできる、経験豊富でスキルもあり信頼できる、あなたの能力発揮をお手伝いする」役割を持ったコーチを活用して頂くことです。

当社は、ビジネス経験・マネジメント経験の豊富な方をパートナーコーチとして迎えています。

当社はパートナーコーチと連携して、エグゼクティブや次世代のエグゼクティブのみならずビジネスの世界で活躍するすべての人の個人の成功、ひいては組織の成功をサポートしていきたいと考えております。

1対1型サービスでは、ハイレベルなエグゼクティブコーチング、ビジネスリーダーコーチング、ビジネスパーソンコーチング等、一人ひとりの課題と状況に対応した幅広いビジネスコーチングを提供するとともに、1対n型サービスでは、組織に対しては1on1の導入・定着・継続を支援するビジネスコーチングプログラムにより間接的にコーチングの素晴らしさを体感頂ける機会を、プロフェッショナルチームとテクノロジーの活用により皆様にご提供することで、コーチングの普及を実現したいと考えています。

 

  これらを実現する企業となるため、当社は次の通り、パーパス・ミッション・ビジョンを定めております。

 

<パーパス>

一人ひとりの多様な魅力、想い、能力の発揮を支援し、働く人が幸せを感じられる社会の持続的発展を可能にする。

<ビジョン> 

一人ひとりにビジネスコーチがついている社会を実現する。

<ミッション>

プロフェッショナルチームとテクノロジーの力で、一人ひとりに最適なビジネスコーチングを提供する。

 

  (2)経営上の目標達成状況を判断するための客観的な指標等

   当社は、ビジネスコーチングを1対1型と1対n型で提供しており、現在は1対n型が収益の過半を占めていますが、一人ひとりにビジネスコーチがついている社会を実現するためには、コーチングを受けているコーチング対象者(クライアント)数を増加させる必要があるため、1対1型サービスのクライアント数及び1対1型サービスの売上構成比を重視しております。また、経営の効率性を確保するため、売上高、売上総利益率、営業利益率並びに従業員一人当たり売上高を重要指標として活用することで、健全な収益力の向上と経営基盤の強化を進めて参ります。

 

(3)経営環境

当社は、「働き方改革関連法」による生産性向上・長時間労働是正・ワークライフバランス実現等を目的とした人材開発関連投資が拡大してきたと考えており、また、コロナ禍により始まったテレワークの実施により組織内コミュニケーションの課題が顕在化して、これを解決するためのコミュニケーションを改善するための人材開発投資も活発化していると考えております。

一方で、企業向け法人研修市場は約5,370億円(※1)で前年度比3%程度で増加傾向にありますが、ビジネスコーチング市場は、その中の小さなカテゴリーで310億円程度(約6%)(※2)と考えられ、適切なマーケットデータは存在しません。

当社では、これらの状況から企業向け法人研修市場の中で支出カテゴリーの変化が起きているものと考えています。

   米国においては、法人研修市場のうち、ビジネスコーチングが占める割合は約36%(※3)と、日本の構成比の5倍以上です。この差は、米国のジョブ型雇用制度と能力給型報酬制度に対して、日本のメンバーシップ型雇用制度と年功序列型報酬制度の違いによりもたらされているものと考えております。

   国内においてもジョブ型雇用制度が話題になる等、米国型制度への転換が模索されており、これにより人材開発投資の内容が変化していると考えております。

   また、「持続的な企業価値の向上と人的資本に関する研究会 報告書 ~人材版伊藤レポート~」(経済産業省)にあるとおり、企業における人的資本への投資状況の開示が望まれる状況となっており、実効性のある人材開発投資が求められる状況になっています。

これらのニーズに対して、一人ひとりの能力を最大限に引き出すビジネスコーチングをという、単なる研修ではないサービスの有効性を訴求して、成果を測定できる形でサービス提供することが重要と考えています。

(※1)出典:矢野経済研究所「企業向け研修サービス市場の実態と展望2023」

(※2)出典:矢野経済研究所「企業向け研修サービス市場の実態と展望2023」から当社にてカテゴリー区分の上集計。

(※3)出典:IBISWorld刊「61143 Business Coaching in the US Industry Report」から当社にてカテゴリー区分の上集計。

 

(4)経営戦略等

当社は、現状は1対n型コーチングが収益の柱になっていますが、今後は、1対1型コーチングを伸長させてより多くの顧客の生産性向上に寄与したいと考えています。

人材開発投資の投資効果測定は非常に難しい課題です。1対n型で人材開発投資をしても、プログラム参加者の学習理解度、習得内容の利用機会の有無、習得内容を利用するための支援の有無等により、参加者の成果は一律ではなく、客観的な成果を把握するためには情報の収集と分析に多大な労力を必要とします。

一方で、1対1型コーチングでは、コーチがコーチング対象者(クライアント)に1対1で対応し、行動変容の定着化までフォローアップするので、成果につながりやすく、また成果の把握も容易になります。

米国型の雇用制度・報酬制度に向かって人材開発のニーズが全員一律のインプットから個人別成果実現の支援に向かって変化し、人的資本投資の開示が求められる時代においては、1対1型の人的資本投資がより重視されるようになると考えており、1対1型コーチングの伸長を想定した戦略を準備・実行することで顧客価値の最大化と収益の増加を実現することが可能になります。

 

① 高品質なコーチの確保・育成・維持

第一は、高品質のコーチを確保し、育成し、維持することが重要です。コーチの品質は「コーチ個人の実践知」×「コーチングスキルの習熟度」で決定すると考えています。コーチングスキルが有ってもコーチ個人の実践知が低いと、クライアントに対して適切な「気づき」をもたらすことが出来ません。コーチが実践知を持っていてもコーチングスキルが無いとティーチングとなってしまい、クライアントはコーチから指示された行動変容を行うことになって継続は難しくなります。これらを解決するための仕組みや環境を整えて高品質のコーチを確保することで、1対1型の成長を目指します。

 

②フォローアップの特化したサービスの開発と提供

1対n型コーチングにおいても、フォローアップを出来るだけ容易にするサービスを開発して提供することで、安定的な成長を目指します。

 

③コーチングのAI分析

コーチングや1on1ミーティングは1対1で実施されるために当事者以外にはブラックボックスとなっています。そのため、最適なコーチングになっているかどうかが感覚的にしか判断できないため、会話音声AI解析により、効果的なコーチングとなるように支援するサービスも開発・販売を開始しており、これらの有効性を高めて成果につながるコーチングや1on1ミーティングの実現を目指していきます。

 

 

 

(5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

   当社の優先的に対処すべき事業上の課題は以下の通りであります。なお、優先的に対処すべき財務上の課題につきましては、長期借入金及び社債の約定返済・償還も順調に進み、営業キャッシュ・フローにより実質無借金状態となっていますので、現時点ではございません。

 

 人材を管理の対象とみなす「人的資源」ではなく、適切な「環境」を整備・提供すると価値の創造・増殖が起きる「人的資本」と捉えることが日本企業において強く求められつつあると考えております。

 2021年6月に行われたコーポレートガバナンス・コード改訂のポイントは「人的資本に対する投資の開示」でありますが、その本質は、「開示すること」それ自体にあるのではなく、個の自律・活性化に対して企業が本気で投資していくことで、個々人の総和である企業価値を大きく高めることにあると認識しております。

無形資産の中核をなす人的資本の価値を高めるためには、従来型の「十把一絡げ」の一律教育では限界をきたしており、社員のエンゲージメント向上や一人ひとりの魅力・想いを引き出したうえでの能力発揮が不可欠となっていると考えております。

そのためのもっとも効果的なアプローチがビジネスコーチングであり、個々の自発性を高め、生産性向上を加速させることで、大企業を中心とした顧客企業の企業価値向上に貢献してまいります。

 

(6)ハイパフォーマンスモデルの確立による営業展開の強化

 当事業年度では、2023年5月にコーポレートコーチング本部と人材マネジメント本部を統合して新・コーポレートコーチング本部を発足し、法人顧客を主たるステークホルダーとし、「ハイパフォーマンスモデル」の明確化と高度化を促進してまいりました。顧客に寄り添い、人的資本に関する課題解決を行う場合、顧客と当社の十分な相互理解と信頼関係の確立が不可欠であるため、法人営業を担うコーポレートコーチ職の人員増強が必要であります。当事業年度においては採用による社員数増加が計画未達となり、十分な営業活動量を確保することができませんでした。そのため、採用方法や採用募集チャネル等の見直しを行い、計画通りの採用を実現することで人的資本を確保し、営業展開を強化してまいります。同時に、社内教育によるコーポレートコーチ職の専門知識レベルの向上、パートナーコーチとの連携の緊密化、サービス提供を支えるオペレーション担当者の効率化等を図り、より多くの顧客にライフタイムバリュー(顧客生涯価値)を最大化する体系的サービス提供を実現してまいります。

 

(7)1対1型サービスの普及推進

 当事業年度では、エグゼクティブコーチング及びビジネスリーダー・ビジネスパーソンコーチングで構成される1対1型サービスのクライアント(コーチング対象者)数が前年同期比14%増の1,254名となりました。当社では、マネジメント層の経営力強化や次世代経営者を選抜・育成するプロセスにはエグゼクティブコーチングが有効であると考えており、ミドル層以下のクライアントには個人の課題に合わせた人材育成手段としてのビジネスリーダー・ビジネスパーソンコーチングが、エンゲージメント向上に有効であることが認識され始めた結果であると考えております。

 今後も、クライアントのニーズに合わせて1対1型サービスの普及に尽力してまいります。

 

(8)1対n型サービスの成長性回復

 1対n型サービスに関しては、2023年9月期の売上は前年同期比で約14%の減少となりました。新型コロナウイルス感染症の5類感染症への移行に伴った行動制限の解除等により、2023年4月からのクライアント企業の人材教育における主眼が対面による新入社員教育・若手社員教育に置かれたため、当社が得意とするマネジメント層に対する1対n型サービスの実施時期が後ろ倒しになったこと、及び過年度より当社事業の成長を牽引してきた1on1導入支援のニーズが一巡した状況に対し、クライアント企業の課題が、定着し始めた1on1の活性化や有効化を実現する施策に進化してまいりましたが、その課題に対応するコンテンツの標準化が遅れたことも要因の一つと考えております。

 クライアント企業と対話を重ねていく中で、1on1によりチームメンバーとのコミュニケーションを活性化した管理職がプロフェッショナルマネージャーとして飛躍するために必要な考え方を習得し、それに対応した言動を自発的に実現するためのプログラムに対するニーズが明確になってきましたので、このプログラムを標準化し、これを中核として1対n型サービスの復活を実現してまいります。

 

 

(9)サービス提供力の増強と生産管理の強化

 コーチ等の増員によるサービス提供力の増強は、質と量の両面において当社の課題であります。当事業年度においてもサービス提供力の増強を実施し170名のパートナーコーチと契約をしております。今後もコンスタントにパートナーコーチを増員してサービス提供力を量と質の両面から増強を図ってまいります。


 (10)ガバナンス体制の強化推進

 当社は2022年10月に東京証券取引所グロース市場に上場し、コーポレート・ガバナンス報告書を提出しております。現状ではコーポレートガバナンス・コードの5つの基本原則にコンプライしている状況ですが、会社の持続的な成長と中長期的な企業価値向上に向けて、全原則への対応を推進してまいります。

 また、当社は7月に株式会社購買Designの子会社化を決定し、第19期終了後の10月2日に株式取得により子会社化を完了しております。

 これに関連して2023年10月16日の当社の取締役会で、内部統制システムの基本方針を改訂し、企業集団における業務の適正性の確保に関する方針を定めましたので、これに則って株式会社購買Designにおいてもコーポレート・ガバナンスへの対応を推進してまいります。

 

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社のサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において、当社が判断したものであります。

 

(1)経営環境

 多くの社会課題の顕在化やステークホルダーの価値観の変化に伴い、ESG(環境・社会・ガバナンス)を重視した経営や経済価値と社会の双方を創出するサステナビリティ経営がより一層求められています。当社も、持続的な社会への貢献について、責任をもって取り組んでいくべきであると考えています。

 

(2)サステナビリティに関する考え方

 当社にとってのサステナビリティとは、ビジネスを通して社会課題の解決に貢献することであり、当社の持続的な成長が、社会の持続的な発展に貢献できるような社会を目指すことです。その実現に向けて、顧客、取引先、従業員、株主はもちろん、環境や社会とのエンゲージメントも非常に重要であると考え、2005年の創業以来、あらゆるステークホルダーとのエンゲージメントを大切に、サステナビリティを重視した経営を実践しております。

 その実践に際しては、1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等(1)経営方針にも記載の通り、<パーパス>一人ひとりの多様な魅力、想い、能力の発揮を支援し、働く人が幸せを感じられる社会の持続的発展を可能にする。<ビジョン> 一人ひとりにビジネスコーチがついている社会を実現する。<ミッション>プロフェッショナルチームとテクノロジーの力で、一人ひとりに最適なビジネスコーチングを提供することを特徴としています。

 

(3)ガバナンス及びリスク管理

当社は、サステナビリティ関連を含む経営上の重要なリスクにつき、常勤取締役1名と各本部の代表メンバーで構成されたリスク管理委員会・コンプライアンス委員会を中心に運用しております。常勤監査役・内部監査担当もオブザーバーとして出席の上、定期(毎月1回)及び必要に応じて臨時に開催し、全社リスクマネジメント体制においてサステナビリティに関するリスクを管理の上、シナリオ分析を実施し、リスク管理及び対応策検討を実施しております。また定期開催の委員会の内容については、取締役会に年2回報告・協議されています。

 

(4)戦略並びに指標及び目標

 上述の当社のサステナビリティに関するガバナンス・リスク管理の枠組みにおいて、当社の企業価値や業績への影響をもたらすサステナビリティ項目のうち、長期の企業価値の向上に向けて重要であるものは、当社の人的資本に関するものと判断いたしました。したがって、「戦略」および「指標及び目標」については人的資本に関するものを記載いたします。

 人的資本経営の実践に関するサービスを主な事業領域としている当社にとって人的資本の充実は、重要な経営課題です。クライアントファーストを標榜し、ビジネスコーチングの提供によって人的資本経営をリードする会社として、クライアント企業にとって、「なくてはならない」存在でありたいと考えております。したがって、当社ではサステナビリティの実践に向けて、特に組織・人材戦略を中心に据え、その重要テーマとして「人材力」と「組織力」を置き、その向上を図っております。

 

(5)人的資本に関する戦略並びに指標及び目標

①  人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備位に関する方針

 当社においては、フロント活動を担うコーポレートコーチ職が、クライアント企業に寄り添い、コーチングを軸とした人材・組織開発サービスの提供を行っております。そして、コーポレートコーチ以外の社員はスタッフ職として、コーポレートコーチを支える業務を担っております。当社の社員一人ひとりの多様な個性を引き出すための人材戦略の特徴は2点あります。採用について、中途採用のみを対象に職種別・即戦力採用を行っていること、また、人事制度について、個々人の職務評価をベースとしたジョブ型人事制度を導入していることの2点であります。このことから、全社員一律の育成プロセスを施すことが効果ではなく、一人ひとりの多様性を活かした取り組みが不可欠となります。上記戦略を実行するための具体的な施策は下記の通りです。

ⅰ.当社社員の人材力の強化

 当社では、「人材力」と「組織力」の両方を高めるために、多様性確保を含む人材の採用と育成は、非常に重要な事項であると考えております。採用・育成に関する具体的な取り組み内容は、下記の通りです。

<採用>

 「人材力」と「組織力」の向上に向けて、採用は非常に重要です。当社は、新卒採用は行っておらず、全員が中途採用であることから、採用プロセスにおいて、データ活用を行い当社におけるハイパフォーマンス人材とのマッチングを行うとともに、複数回の選考プロセスを設けることで、ポテンシャルが高く志向性や価値観も当社の考えとフィットしている候補者を採用することができています。

(具体的施策)

・リファラル採用の推進

・多様な採用ルートの確保

・データを基にしたハイパフォーマンスモデルの構築による人材像の明確化

<育成>

 事業戦略の遂行において、社員一人ひとりに成長が欠かせません。当社では、「一流で一番」をスローガンに独自の育成体制を構築しております。充実した入社時研修により組織文化の浸透を図っています。実務においては、OJTを中心としてコーチングスキルを活用しながら、一人ひとりの個性に合わせた育成を実施しております。また、階層ごとにサクセッションプランや管理職向け施策として外部コーチによるコーチングを活用しています。社内ではメンター1on1制度を活用し、上司・部下の間を越えて、対話の機会を創出することで、コーチング文化の醸成を図っています。さらに、人事評価制度においては毎月の進捗面談を必須とし、目標設定と行動計画とそれに対するフォローを丁寧に行うことで、一人ひとりの成長の促進を図っております。

     (具体的施策)

・次期経営者育成にむけたサクセッションプラン

・管理職力強化のための外部コーチによるコーチング

・メンター1on1制度

・人事評価制度による毎月の進捗面談

 

 ⅱ.社内環境整備による組織力の強化

<エンゲージメント>

 事業を効率的に行っていくためには、上記施策で強化された一人ひとりの社員が最大のパフォーマンスを発揮するとともに、社内でのコミュニケーションを積極的に図り「個」の力を「組織力」へ昇華することが欠かせません。当社は、健全で効率的な職場環境の整備を目指し、社員一人ひとりが、当社で働くことで物心ともに豊かになるために、数多くの施策を実施し、エンゲージメントの向上を図っています。

    (具体的施策)

・定期的な社内報の発行

・衛生委員会主催による各種イベントの開催

・定期的なエンゲージメントサーベイの実施

Welcome Your Voice制度(匿名の目安箱)による全社改善運動

・社員家族を対象としたFamily dayの開催

 

   指標及び目標

       上記方針の下、当社は以下の数値を重要な指標と考えております。その実績及び目標は以下の通りで

       あります。

 

実績

(2023年9月期)

目標

(2026年9月期)

全社員の職務ポイント合計(注1)

2,456pt

3,500pt

エンゲージメントスコア(注2)

76pt

80pt

 

(注)1.当社の人事評価制度で定義された独自のポイント。①革新性、②専門性、③裁量性、④外部対人関係、⑤内部対人関係、⑥問題解決困難度、⑦経営への影響度という7つの評価項目と5段階のスケール及びそれに対する職務割合から構成され、絶対評価で評価が行われ、一人当たりの最大ポイントは100となります。この職務ポイント合計は社員一人ひとりの「個」の能力を数値化したものの総和であり、<採用>で優秀で能力の高い社員を採用し、<育成>により「個」の能力を高め、<エンゲージメント>により社員の定着状況を測定する指標となります。したがって、この指標により<採用>、<育成>、<エンゲージメント>施策が機能しているかどうかを客観的に測定することができると考えております。

      なお、2022年9月期末の職務ポイントの合計は2,036ptであり、2023年9月期の上記施策により、420pt(20.7%)増加しました。内訳としては<採用>で379pt、<育成>で177ptそれぞれ増加し、<退職>にて135pt減少いたしました。今後は、<採用><育成>により、社員の能力を高めるとともに、組織風土をより良くすることで<退職>を抑制することを目指してまいります。

 2.株式会社アトラエが提供するエンゲージメントサーベイ「Wevox」の総合スコア(2023年9月実施)

 

 

3 【事業等のリスク】

 当社の事業とその他に関するリスクについて、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性があると考えられる主な事項を記載しております。また、必ずしも、そのようなリスク要因に該当しない事項につきましても、投資者の判断上、重要であると考えられる事項については、投資者に対する積極的な情報開示の観点から以下に開示しております。       

 当社は、これらのリスク発生の可能性を十分に認識した上で、発生の回避及び発生した場合の対応に努める方針ではありますが、当社株式に関する投資判断は、本項及び本書中の本項以外の記載事項を慎重に検討した上で行われる必要があると考えております。なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであり、将来において発生の可能性があるすべてのリスクを網羅するものではありません。

 

(1)景気変動リスクについて

当社がビジネスコーチングサービスを提供する主要顧客は、従業員5千人以上の企業グループに属する企業であり、かつ国内外に事業を展開する企業が多数あります。国内外の景気動向により、これら主要顧客の経営状態や業績により人材開発投資を抑制した場合には、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(2)特定サービスへの依存について

当社のビジネスコーチングサービスの主要サービスであるビジネスコーチングプログラムは、顧客企業において1on1ミーティングでコーチングスキルを活用して「生産性向上に貢献する上司と部下の意味ある会話」を実現し、組織の生産性向上に貢献しております。ビジネスコーチングプログラムに対する当社への問い合わせ件数は年々増加しており、今後においても引き続き増加していくものと考えております。

しかしながら、顧客企業における1on1ミーティングのスキルやノウハウの蓄積により、顧客企業内で1on1導入・運用業務の内製化が進み、ビジネスコーチングプログラムに対する需要が期待通り伸長しない場合には、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(3)競合について

当社が展開するビジネスコーチングサービスについては、現時点では顧客企業の意向に沿って組織化された多人数のコーチチームを必要とする大企業向けサービスを提供できる企業が限定されており、創業以来、ビジネスコーチングを専門的に行ってきた当社では、他社に先行してビジネスコーチング事業を展開できていると認識しております。

しかしながら、大手コンサルティング企業や海外のコーチング関連ビジネス企業が日本市場に参入してきた場合は、競合他社との競争激化により、価格の下落、又は価格競争以外の要因でも案件獲得を失うおそれがあり、当社の事業展開及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(4)品質リスクについて

当社は、顧客の人材開発を支援するビジネスコーチングサービスを展開し、顧客の組織および従業員の生産性向上を支援するサービスを提供しております。当社は、提供サービスの品質の向上・維持のため、顧客満足度調査の実施や定期的な顧客ヒアリングの実施にくわえ、外注委託先に対する品質管理などの対策をとっております。

しかしながら、顧客が期待する品質のサービスが提供できない場合には、契約の継続性に支障を来し、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(5)外注委託先のリスクについて

当社では、当社が開催するスクール等を通じて当社のビジネスコーチング及び人事コンサルティングの知識・ノウハウを獲得した委託先を活用して人材開発事業の拡大を図っております。

① 品質管理について

当社では、外部委託先に対してビジネスコーチングサービス及び人事制度コンサルティングサービスの品質水準及び管理体制に関して定期的な審査を実施し、必要に応じて改善指導を行うなど外部委託先が実施するサービスの品質管理に努めております。

しかしながら、委託先において急病、事故、事件、天災被害等により、契約したサービスが提供できない事態が発生した場合には、ビジネスコーチングサービス及び人事コンサルティングサービスの品質保持のためのコスト増、顧客からの損害賠償等が発生し、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

② 委託業務について

当社と外部委託先との契約の多くは業務委託契約の下で行われております。委託先の殆どはコーチング事業を営む中小企業又は個人事業主であり、下請代金支払遅延等防止法の適用対象となっております。当社は、業務委託契約書や注文書等において下請代金支払遅延等防止法が求める必要事項の記載や支払条件に関して、契約書及び注文書の雛型でカバーしており、運用においても注意を払っています。当社の支払条件は、サービス提供月末締翌月末払いが標準であり、外部委託先に対して注文書発行により業務範囲を明確にし、事後的な金額変更も行わないように発注担当者を指導しております。しかしながら、サービス内容が日々進化して、外部委託先の役割も変わっていく中で、既存の書類では適切な対応が出来ず、あるいは認識の齟齬が生まれて下請代金支払遅延等防止法違反となる可能性があります。

③ 委託先の情報管理体制について

当社が委託する業務は人材開発事業の特性から顧客の個人情報を扱う頻度が高いため、個人情報保護規程を制定し、個人情報を委託する場合は十分な個人情報保護の体制が確立していることを個人情報委託先選定確認書の提出を求めることで確認しております。このような取組みにも関わらず、委託先において予想外の事態が発生して情報漏えい問題等が発生した場合には、当社の信用を失い、事業展開及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

④ 外部委託先の確保について

1対1型サービス及び1対n型サービスのうち、サービス企画・設計やHRテックサービス以外の、コーチの稼働を必要とする部分は、その殆どが委託先への委託によるサービス提供となっています。社内コーチや社内コンサルタントは、当社のサービスレベル向上や新サービス開発のために稼働しますが、社内コーチや社内コンサルタントを増加させてもサービス提供の全てを社内で完結させることは目指していません。外部委託先とのパートナー関係を強化、拡大してビジネスコーチングの普及を実現する方針としております。そのため、当社が顧客に提供するビジネスコーチングを提供できる外部委託先の確保が必要不可欠となっております。

当社は、外部委託を担当する専任者を配置し、定期的に情報共有を行い、必要に応じて改善指導を行うなどにより外部委託先との関係強化に努めております。また、外部委託先の新規開拓も行っており、当社が顧客に提供するビジネスコーチングを提供できる外部委託先の安定的な確保に努めております。

このような取組みにも関わらず、外部委託先の確保ができない場合には、当社の事業展開及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

⑤ 外部委託先の不祥事、風評等について

当社外部委託先で実際にサービス提供を行うコーチが、事故、事件、不祥事等を起こした場合は、サービス提供の停止等の対応が必要となるため、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。また、当社の対応等にも関わらず、報道やインターネットによる情報拡散で社会全般に広まった場合は、当社の社会的信用が損なわれ、事業運営や業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(6) 売上高の計上時期が業績に与える影響について

ビジネスコーチングサービスについては、取引先の都合や、受注後の仕様変更等によりサービスの提供時期及び検収時期が変更となる場合があるため、売上高について当事業年度の予定から翌事業年度に計上される可能性があります。また、同一取引先に対して複数の案件が存在するためサービスの内容、金額及び提供時期が異なるため、それぞれの履行義務の充足に応じて収益を認識する必要があります。

そのため、売上高の計上について当事業年度の予定から翌事業年度に計上される場合等があり、これによって事業年度における当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(7)特定人物への依存について

当社代表取締役社長である細川馨は、当社設立以来の代表者であり、人材開発事業に関する経験と知識を有しており、経営方針や事業戦略の決定等、当社の事業活動全般において極めて重要な役割を果たしております。

また、当社取締役副社長である橋場剛及び専務取締役である山本佳孝は、それぞれコーチとして、知識とスキルを維持・開発・指導する中核的な役割を担っています。

当社は現在、取締役会等において情報の共有を図るとともに、後継人材の採用と育成、並びに知識とスキルのデータ化を推進しており、3名の特定人物に過度に依存しない組織体制の構築を進めております。

しかしながら、何らかの理由により3名の特定人物の業務遂行が困難になった場合には、当社の事業展開及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(8)小規模組織であることについて

当社は組織的規模が小さく、内部管理体制や業務執行体制も当該組織規模に応じたものとなっております。したがって、当社の役員や重要な業務を担当する従業員が退職等で流出した場合は、当社の事業活動に支障を来し、業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(9)人材の採用・確保及び育成について

当社は、ビジネスコーチングを提供できる人材の採用・確保及び育成が、今後の事業展開のために重要であると考えております。

自社主催スクールや独自の社員採用プログラムの運営により、このような人材の採用・確保を行い、育成を図っております。また、コーチングスキルを社内に適用したコミュニケーションの改善、福利厚生の充実、業務環境の改善等により離職率の低減を図っております。

しかしながら、当社が必要とする、ビジネスコーチングを提供できる人材の採用・確保及び育成が計画通りに進まない場合や、人材の社外流出が生じた場合には、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(10)自然災害、事故、感染症等について

当社の事業拠点は、本社所在地である東京都港区にあり、当該地区において大地震、台風等の自然災害及び事故、火災等により、業務の停止、設備の損壊や電力供給の制限等の不測の事態が発生した場合、当社の事業展開及び業績に影響を及ぼす可能性があります。また、オンラインによるサービス提供を標準としており、インターネット回線や当社が利用するWEB会議システムのサービス業者に不測の事態が発生した場合、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

なお、当社は、2020年4月からサービス提供のオンライン化を進め、現在は全てのサービスをオンライン提供しています。そのため、新型コロナウイルス及びインフルエンザ等感染症の影響で接触回避等を理由としたビジネスコーチングの需要の落ち込みが発生する可能性は低いと考えております。

 

(11)コンプライアンスリスクについて

当社の役員及び従業員に対し、行動規範を定める等、取締役及び従業員に対して法令遵守意識を浸透させております。

しかしながら、万が一、当社の役員及び従業員がコンプライアンスに違反する行為を行った場合には、当社の社会的信用及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(12)訴訟等のリスクについて

当社は、顧客や外部委託先と契約を締結する際に、損害賠償の範囲を限定するなど、過大な損害賠償の請求をされないようリスク管理を行っております。

しかしながら、契約時に想定していないトラブルの発生、取引先等との何らかの問題が生じた場合などにより、他社から損害賠償請求等の訴訟を提起された場合には、当社の社会的信用並びに業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(13)知的財産について

当社が事業活動を行うに当たり、第三者が保有する知的財産権を侵害しないよう細心の注意を払っており、著作権保護に関するe-ラーニングを全社員が受講する等の対策をしていますが、万が一、第三者の知的財産権を侵害し、当該第三者より損害賠償請求、使用差止請求等がなされた場合には、当社の事業展開及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

また、当社はビジネスコーチングにおいてクラウドサービスの提供も行っており、これらのうちには商標権、著作権等の知的財産権による保護の対象も含まれます。

しかしながら、これらに対する知的財産権が適切に保護されないときは、当社の事業展開及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(14)情報の管理について

① 機密情報の管理について

当社のエグゼクティブコーチングサービスでは、顧客エグゼクティブ層の個人目標または組織目標達成のためのコーチングを実施しており、機密性の高い情報を取り扱っております。このため当社では、役員及び従業員に対して、入社時及び定期的に機密情報の取扱いについて指導・教育を行っております。また、情報を保管するファイルサーバでは情報を外部と共有が出来ないように制限しており、社内においても業務上必要最低限の関係者にのみ共有する運用を行っております。

しかしながら、不測の事態により、これらの情報が外部に漏洩した場合には、当社の社会的信用に重大な影響を与え、対応費用を含め当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

② 個人情報の管理について

当社の人材開発サービスの提供において個人情報を取り扱うことがあります。このため当社では、プライバシーマーク認証を取得し、役員及び従業員に対して、入社時及び全従業員を対象に年1回、個人情報の管理について指導・教育を行っております。

しかしながら、不測の事態により、これらの情報が外部に漏洩した場合には、当社の社会的信用に重大な影響を与え、対応費用を含め当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(15)風評リスクについて

当社は、高品質のサービスの提供に努めるとともに、役員及び従業員に対する法令遵守浸透、情報管理やコンプライアンスに関し、定期的に説明会を開催するなど、意識の徹底を行い、経営の健全性、効率性及び透明性の確保を図っております。

しかしながら、当社のサービスや役員及び従業員に対して意図的に根拠のない噂や悪意を持った評判等を流布された場合には、当社の社会的信用及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(16)新株予約権行使による株式価値の希薄化について

当社は、当社の取締役及び従業員に対するインセンティブを目的とした新株予約権を発行しております。本書提出日現在における新株予約権による潜在株式は31,100株であり、発行済株式総数1,014,900株の3.1%に相当します。これら新株予約権が行使された場合、新株式が発行され、株式価値が希薄化する可能性があります。

 

(17)大株主について

本書提出日現在で当社代表取締役社長細川馨は直接所有分2.71%であり、細川馨の資産管理会社である有限会社コーチ・エフが保有する当社議決権の36.40%と合算した議決権保有割合は39.11%であります。

 細川馨及び当該資産管理会社は引続き当社の株式を一定程度保有する見通しでありますが、議決権の行使に当たっては、株主共同利益を追求するとともに少数株主の利益にも配慮する方針であります。

 しかしながら、何らかの事情によって、細川馨及び当該資産管理会社が、当社株式をやむを得ず売却することとなった場合は、当社の事業展開、当社株式の市場価格及び議決権行使の状況等に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

 当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という)の状況の概要は次のとおりであります。

 

① 財政状態の状況

 

(資産)

当事業年度末における流動資産は791,722千円となり、前事業年度末と比較して146,666千円増加しております。主な要因は、現金及び預金が172,351千円増加、売掛金が48,660千円減少、前払費用が6,292千円増加、未収還付法人税等が15,510千円増加、その他流動資産が6,160千円増加したことによるものであります。    

また、固定資産は139,644千円となり、前事業年度末と比較して36,026千円増加しております。主な要因は、有形固定資産が32,292千円増加、無形固定資産(ソフトウェア)が16,180千円増加、繰延税金資産が10,073千円減少したことによるものであります。繰延資産は、673千円となり、前事業年度末に比較して716千円減少しております。主な要因は、社債発行費が716千円減少したことによるものであります。

この結果、総資産は932,040千円となり、前事業年度末に比べて181,976千円増加いたしました。

 

 (負債)

当事業年度末における流動負債は、207,940千円となり、前事業年度末と比較して55,737千円減少しております。主な要因は、買掛金が22,428千円減少、賞与引当金が12,128千円減少、未払費用が5,033千円増加、未払法人税等が26,083千円減少、未払消費税等が22,102千円減少、契約負債が19,020千円増加、1年内償還社債が5,000千円減少、1年内返済長期借入金が13,328千円増加したことによるものであります。また、固定負債は35,525千円となり、前事業年度末と比較して26,819千円減少しております。その要因は、社債が15,000千円減少、長期借入金が11,819千円減少したことによるものであります。

この結果、負債合計は243,465千円となり、前事業年度末に比べて82,557千円減少いたしました。

 

 (純資産)

当事業年度末における純資産は、688,574千円となり、前事業年度末と比較して264,532千円増加しております。その要因は、資本金及び資本剰余金が新株発行によりそれぞれ129,805千円増加、繰越利益剰余金が2022年9月期の期末配当金の支払により48,400千円減少、自己株式の取得により72千円減少、当事業年度における当期純利益を53,394千円計上したことによるものであります。

 

② 経営成績の状況

当事業年度における我が国経済は、新型コロナウイルス感染症の5類感染症への移行に伴った行動制限の解除等により景気は緩やかな回復基調にありますが、円安やエネルギー価格高騰等によるインフレ傾向から実質賃金が低下し、景気回復が諸外国に比べて遅れている状況と相まって国民に生活不安が引き起こされ、依然として先行きは不透明な状況で推移しております。

当事業年度における人材開発市場は、上場企業を対象に始まった人的資本の情報開示を契機に人的資本投資を企業価値向上に繋げるため、自社の課題把握や人と組織活性化に関する戦略的な投資が積極的に検討され、引き続き市場全体に活発な動きが見られます。

 また、人材開発に関するテーマ別の状況では、組織開発やエンゲージメント向上、ジョブ型雇用、キャリア自律、リスキリング等に関連した自律型の人材育成・組織開発関連の需要が拡大しつつあります。

(注):人材開発市場の中心となる法人研修市場の規模推計は2021年度5,210億円、2022年度5,370億円、2023年度予測5,500億円となっております。(「企業向け研修サービス市場の実態と展望 2023」矢野経済研究所)

 

このような状況の中、当社は、一貫して「クライアントファースト」を掲げ、顧客企業の役員・社員のエンゲージメント向上を目的として、組織内コミュニケーションの活性化を支援する1対n型コーチングサービスや、役員・社員個人のポテンシャルを引き出す支援を行う1対1型コーチングサービスを中心にクライアントのニーズにマッチしたサービスを提供し、人的資本経営の実現を目指す企業にとって頼りがいのあるパートナーである「コーポレートコーチ」として機能することを目指しています。コーチングサービスにおいては、フェーズ1(気づき)、フェーズ2(実践)、フェーズ3(継続・定着)に区分してクライアントのニーズに応じたサービスを提供しておりますが、特に継続的にフォローアップを行うサービスの強化が顧客満足度を向上させる有力な手段と考え、1対1型サービスの拡大を図るとともに、1対n型サービスではフォローアップ研修の実施や動画サービス強化及びクラウドコーチング等によるフォローアップサービスを充実させてまいりました。

 

1対1型サービスの主要なKPIであるクライアント数(コーチング対象者数)は、前年同期比約14%増の1,254名となり、1対1型サービスの売上高は前年同期比で約38%成長し、構成比においても約10%増加しました。この要因としては、クライアント企業の経営陣のリーダーシップ強化・行動変容等の「個の能力開発」という目的に加え、組織風土改革・文化醸成といった「組織全体の変革・活性化」を目的に、経営陣・管理職といった複数のレイヤーに対して同時期に1対1型サービスを導入する企業が増加したことが挙げられます。

 また、クライアント数の増加率以上に売上高が増加した要因は、経営陣を対象とした高単価なエグゼクティブコーチングの割合が平均以上に増加して売上単価を引き上げたことによります。

 

 1対n型サービスについては、売上高は前年同期比で約14%減少しました。この要因としては、新型コロナウイルス感染症の収束による行動制限の解除等により、クライアント企業の人材教育における主眼が新入社員教育や若手社員教育に置かれたため、当社が得意とするマネジメント層に対する1対n型サービスの実施時期が後ろ倒しになったことが主な原因と考えられます。また、上記1対n型サービスについて、過年度より当社事業の成長を牽引してきた1on1導入支援のニーズが一巡した状況に対し、クライアント企業の課題が、定着し始めた1on1の活性化や有効化を実現する施策に進化してまいりましたが、その課題に対応するコンテンツの標準化と新商品開発が遅れたことも要因の一つと考えております。 

 

サービス型

2022年9月

2023年9月

増加額

(百万円)

増加率

(%)

売上金額

(百万円)

構成比

(%)

売上金額

(百万円)

構成比

(%)

1対n型

740

64.5

639

55.3

△101

△13.7

1対1型

286

24.9

396

34.3

109

38.4

その他

121

10.6

120

10.4

△1

△0.9

合計

1,148

100.0

1,155

100.0

7

0.7

 

 

当社の法人取引における顧客数は、前年同期比約4%減の329社となり通期目標の365社には届きませんでした。また、一社当たり平均売上高は、コーポレートコーチがクライアント企業に寄り添うことにより幅広い提案活動に繋がったこと等が奏功し、前年同期比約6%増の3.4百万円となりましたが通期目標である3.6百万円には届きませんでした。この要因としては、コーポレートコーチ職の採用が遅れてコーポレートコーチの人数を増加できず十分な営業活動量を確保できなかったこと、コーポレートコーチに対してクライアント企業の課題の深掘りが行えるような十分な育成ができなかったことが考えられます。

サービス提供を支える契約パートナーコーチ数は、積極的な採用活動を行った結果、前年同期比約28%増の170名となりました。また、当社のコーポレートコーチの活動を支援するバックオフィス部門の社員採用は順調に進み、従業員数は事業年度末比6名純増(14.6%増)となり、事業成長に向けた基盤づくりが進捗しております。一方で、上記の通りコーポレートコーチ職の採用については、足元の人材市場の人手不足による売り手市場の環境下のため事業年度末比で純増できず、事業成長の阻害要因となりました。 

このような活動の結果、売上高は1,155,988千円(前期比0.7%増)、営業利益は83,079 千円(前期比66.3%減)、経常利益は76,134千円(前期比68.8%減)、当期純利益は53,394千円(前期比69.0%減)となりました。

また、2023年7月に、クライアント企業における無形資産投資の中核である人的資本投資、DX 化投資の両側面に対して戦略的にサービス展開するために、株式会社購買 Design の株式の取得を決議し、2023年10月より子会社化いたしました。このM&Aによりサービスメニューが拡充し、人と組織の行動変容により業務プロセスが改善し、DX 化推進支援により業務プロセスの可視化が進み、課題発見の迅速化や仕組構築へとつながることを期待しております。そして、人と組織が仕組みを活用し更なる行動変容が促進されるといった相互連携の実現を見込んでおります。

なお、当社は、人材開発事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載を省略しております。

 

③ キャッシュ・フローの状況

 当事業年度における現金及び現金同等物(以下、「資金」という)は521,268千円と前年同期と比べ167,351千円の増加となりました。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

当事業年度は、43,591千円の資金収入となりました。その要因は、資金収入として税引前当期純利益76,134千円、減価償却費20,581千円、売掛金の減少額48,660千円、契約負債の増加額19,020千円、棚卸資産の減少額4,988千円があったことに対し、資金支出として仕入債務の減少額22,428千円、賞与引当金の減少額12,128千円、その他流動資産の増加額12,453千円、その他流動負債の減少額22,445千円、その他4,686千円、法人税等の支払額54,261千円があったこと等であります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

当事業年度は、68,887千円の資金支出となりました。その要因は、有形固定資産の取得による支出が35,753千円、ソフトウェア資産の取得による支出33,300千円、定期預金の預入による支出5,000千円、敷金の返戻による収入5,166千円があったこと等であります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

当事業年度は、192,647千円の資金収入となりました。 その要因は、新株発行による収入が259,610千円、長期借入金の借入による収入が30,000千円あったことに対して、1年内返済の長期借入金を含む長期借入金の返済28,491千円、1年内償還社債の償還20,000千円、配当金の支払い48,400千円、自己株式取得による支出72千円があったことであります。

 

④ 生産、受注及び販売の実績

 

a. サービス生産実績

セグメントの名称

サービス生産高(千円)

前年同期比(%)

人材開発事業

373,217

+7.8

合計

373,217

+7.8

 

(注) 1.金額は、サービス原価によっております。

 

b. 受注実績

セグメントの名称

受注高(千円)

前年同期比(%)

受注残高(千円)

前年同期比(%)

人材開発事業

1,380,876

+19.7

685,207

+48.9

合計

1,380,876

+19.7

685,207

+48.9

 

 

c. 販売実績

セグメントの名称

販売高(千円)

前年同期比(%)

人材開発事業

1,155,988

+0.7

合計

1,155,988

+0.7

 

 

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

 

① 財政状態及び経営成績等の状況に関する分析・検討内容

当社の当事業年度の財政状態及び経営成績は以下のとおりであります。

 

(資産)

    総資産932,040千円(前期末比181,976千円増)のうち、現預金が561,109千円(前期末比172,351千円増)と60.2%を占めております。売掛金は167,664千円(前期末比48,660千円減)で総資産の18.0%となっており高い流動性を確保しております。

 当社の事業は役務による無形サービス提供のため、顧客からの売上代金回収期間と外注委託先への支払期間の差が少ないことから営業キャッシュ・フローは利益に比例して増減いたします。

 

(負債)

 負債のうち、社債(1年内償還予定の社債を含む)20,000千円(前期末比20,000千円減)及び長期借入金(1年内返済予定の借入金を含む)68,179千円(前期末比1,509千円増)の合計88,179千円の有利子負債があり、負債・純資産合計額の9.5%をしめております。

 また、契約負債は86,768千円(前期末比19,020千円増)と負債・純資産合計額の9.3%となっております。

 

(純資産)

  純資産688,574千円のうち、2022年10月の新規上場に伴う新株発行及び新株予約権の権利行使による新株発行により資本金が208,205千円(前期末比129,805千円増)、資本準備金が165,805千円(前期末比129,805千円増)となり合計で、純資産の54.3%をしめております。また、当期純利益の計上による増加と配当金の支払いによる減少により利益剰余金が314,636千円(前期末比4,994千円増)と純資産の45.7%をしめております。なお、配当方針は配当性向30%を目途に決定としております。

 

(売上高)

  売上高は1,155,988千円と前年同期に比べて7,830千円(0.7%)増加しました。ウイズコロナ時代のサービス提供形態としてオンラインサービスが定着し、事業が安定的推移する基盤ができた状況の中で、人的資本投資に関する関心が高まり、従業員等のエンゲージメントを高める方法としてコーチングの効果の認識が広まってきたことによるものです。

 

(売上原価及び売上総利益)

 売上原価は、383,344千円と前年同期と比べて37,951千円(11.0%)増加しました。ビジネスリーダー・ビジネスパーソンコーチングの売上構成比が高まりパートナーコーチへの支払が増加したこと、人材開発サービス以外のサービスも含めた包括的なプロジェクトの受注があり、外部コンサルタントの活用で原価率が高騰した案件があったこと等から売上原価率が前年同期の30.1%から33.2%と3.1ポイント悪化し、売上総利益も772,644千円と前年同期に比べて30,121千円(3.8%)減少しました。

 

(販売費及び一般管理費並びに営業利益)

 販売費及び一般管理費は689,564千円と前年同期と比べて133,113千円(23.9%)増加しました。これは、主に昇給及び採用により人件費等が増加したこと、本社移転による賃料の増加並びに設備費用を計上したこと等によるものです。この結果、営業利益は83,079千円と前年同期と比べて163,234千円(66.3%)減少しました。

 

(営業外収益、営業外費用及び経常利益)

 営業外収益は、80千円と前年同期と比べて512千円(86.3%)減少しました。営業外費用は7,025千円と前年同期と比べて4,323千円(160.0%)増加しました。主な内訳は、上場関連費、支払利息及び社債発行費償却です。この結果、経常利益は76,134千円と前年同期と比べて168,070千円(68.8%)減少しました。

 

(法人税等合計及び当期純利益)

 法人税等合計は、22,740千円と前年同期と比べて49,200千円(68.4%)減少いたしました。この結果、当期純利益は53,394千円と前年同期と比べて118,870千円(69.0%)減少しました。

 

 当社の経営成績に重要な影響を与える要因として、人的資本投資の開示義務化により顧客の人材開発投資のニーズに変化が生じていること、及びこれによる市場拡大期待によりコーチング市場に参入する企業が増加していることがあります。

 顧客においては、従来のインプット中心の階層別研修だけでは人的資本投資として不十分という認識が出てきており、組織における個人のパフォーマンスを極大化するための人的投資としてコーチングが選択肢として検討される機会が増加してまいりました。

 一方で、このような市場環境によりコーチング事業に参入を表明する企業も出てきており、様々な特徴を持ったコーチングサービス提供企業の増加で、今後の競争激化が懸念されております。また、AIサービスをコーチングに活用する動きも具体化しており、コーチングサービスの対象者やコーチングの手段等の多様化が進み、市場がダイナミックに変動する可能性が考えられます。

 当社は、このような状況において、ビジネスコーチングというビジネス分野に特化したコーチングサービスを、経験豊富なエグゼクティブコーチにより大企業の経営層を中心に提供することで他社との差別化を図ってまいります。

 また、動画と研修を組み合わせて人材開発課題に対して深い理解を実現するサービスを提供し、研修後のフォローアップとしてオンラインコーチングによる現場での実践を支援するサービスを準備することで、包括的かつ効果的な人的資本投資のプログラムを提供してまいります。

 このような市場セグメンテーションとサービス開発施策の成否が、今後の事業成長の重要なポイントになると考えております。

 

 ② キャッシュ・フローの状況の分析 

当社の当事業年度のキャッシュ・フローは、「(1)経営成績等の状況の概要③キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりでありますが、ビジネスモデルの特性により利益額と営業キャッシュ・フローが比例的に増減しますが、前事業年度の急激な利益成長の影響で前事業年度の法人税等が当事業年度を納付期限として発生したため、当期利益と比較して多額の法人税等の支払いを行ったことにより営業キャッシュ・フローが減少し、新本社移転による設備の支払いをしたことで投資キャッシュ・フローの支出が大きくなりましたが、社債償還、借入金返済資金及び配当金の支払いがありながらも新規上場に伴う新株発行による収入があったため財務キャッシュ・フローは増加し、結果として、現金及び預金は、561,109千円有しており、安定的であると考えております。

 

③ 当社の資本の財源及び資金の流動性

当社の資金需要は、運転資金、納税資金等であり、資本の源泉は営業キャッシュ・フロー、金融機関からの借入等であります。

なお、クラウドコーチングソフトウェア追加開発資金、本社移転資金を手持資金で対応いたしました。

また、当事業年度末の現金及び預金は、561,109千円あり、十分な短期流動性を確保していると考えております。

さらに、2023年10月に行った子会社買収に伴う株式取得資金も手持資金で対応いたしました。

 

 ④ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。その作成には経営者により会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額並びに開示に影響を与える見積を必要とします。経営者は、これらの見積りについて、過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性が存在するため、これらの見積りとは異なる場合があります。当社の財務諸表の作成に当たり会計上の見積りに用いた仮定のうち重要なものはないため、重要な会計上の見積りに該当する項目はないと判断しております。なお、当社の財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 財務諸表等 注記事項 (重要な会計方針)」に記載のとおりであります。

 

 ⑤ 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (2)経営上の目標達成状況を判断するための客観的な指標等」記載の通り、当社は売上高、売上総利益率、営業利益率並びに従業員一人当たり売上高を重要指標としております。当事業年度においては、売上高1,155,988千円(前年同期比0.7%増)、売上総利益率66.8%(前年同期比3.1ポイント減)、営業利益率7.2%(前年同期比14.3ポイント減)、従業員一人当たり売上高24,595千円(前年同期比12.2%減)となりました。

当事業年度では、売上高は前事業年度と同水準で、売上高総利益率は、約67%で3.1ポイント悪化しました。また、上場費用や本社移転等の一時費用の発生により営業利益率も7.2%と14.3ポイント悪化しました。これらの指標の推移から、売上は堅調に推移したものの上場や本社移転における一時的な費用を吸収するまでの伸長までには至らなかったものと認識しています。

 

 

5 【経営上の重要な契約等】

(株式取得による子会社化)

 当社は、2023年7月18日開催の取締役会において、以下のとおり、株式会社購買Designの株式を50.2%取得して、子会社化することについて決議し、同日付で締結した株式譲渡契約の通り、同年10月2日に株式を取得し子会社化いたしました。

 

 (1)株式取得の目的

当社は、2023年7月18日開催の取締役会において、株式会社購買Designの株式を取得することを決議しました。同社は、2014 年4月の設立以来、IT とシステムを活用し、クライアント企業の購買活動のフォローアップ等を通じた稼ぐ力と ESG の両立に向けた支援、DX に関するコンサルティング及び設計・運用サポートを通じて、生産性向上と持続可能性の高い社会の実現に貢献しております。

 今回の株式の取得を通じて、株式会社購買 Design をグループに迎え入れることで、クライアント企業における無形資産投資の中核である人的資本投資、DX 化投資の両側面に対して、戦略的にサービス展開することが可能になります。また、人と組織の行動変容により業務プロセスが改善し、DX 化推進支援により業務プロセスの可視化が進み、課題発見の迅速化や仕組構築へとつながります。そして、人と組織が仕組みを活用し更なる行動変容が促進されるといった相互連携の実現が見込まれます。これにより、従来以上にクライアント企業の企業価値向上の支援に貢献できると考え、今後のグループ全体としての持続的成長と企業価値向上に有効であると判断いたしました。

 当該株式取得に伴い、2024年9月期より、株式会社購買Designは当社の連結子会社となります。

 

(2)買収する会社の名称、事業内容、規模

 被取得企業の名称  株式会社購買Design

 事業の内容     DX推進支援のための経営原資の獲得及びIT環境開発ツールの提供・開発

 資本金の額     20,000,000円

 

 (3)株式取得の時期 2023年10月2日

 

 (4)株式取得後の企業の名称 変更ありません。

 

 (5)取得する株式の数、取得価額及び取得後の持分比率

 ①取得する株式の数  241株

 ②取得価額      251,041千円

 ③取得後の持分比率  50.2%

 

 (6)支払資金の調達及び支払方法 自己資金

 

  (7)取得企業を決定するに至った根拠 当社が現金を対価として株式を取得することによります。

 

 (8)主要な取得関連費用の内容及び金額 アドバイザリー他に対する報酬・手数料(概算額)8,576千円

 

 (9)発生するのれんの金額、発生原因、償却方法及び償却期間 現時点では、確定しておりません。

 

 (10)株式取得日に受け入れた資産及び引き受けた負債の額並びにその主な内訳 現時点では、確定してお

   りません。

 

6 【研究開発活動】

該当事項はありません。