第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 当社グループの経営方針、経営環境および対処すべき課題等は、以下のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)経営の基本方針

①基本理念

 当社グループは、企業として果たすべき使命、重視する価値観について、以下のとおりグループ共通の考え方を定めております。

 この基本理念の下、新しいサービス/製品の差別化のために独自の先端SoCを開発しようとするお客様のパートナーとして、また、進化する半導体エコシステムにおいてファウンドリ/OSATをはじめIP/EDAツール/ソフトウエアに至るまで最新の技術を提供するサプライヤーのパートナーとして、お客様、さらにはその先にいる世界中の人々に新しい価値を提供し、豊かな社会の実現に貢献していきたいと考えています。

 

・Mission(企業としての使命)

 Together with our global partners, we bring innovation to everyone everywhere.

・Values(重視する価値観)

「Change」

 非連続な変化への適応。ビジネス・技術・マインド・オペレーション等環境の変化に合わせ我々自身も変化していく。

「Technology」

 最先端技術の追求により、世界のイノベーションを支える開発競争力を持つ会社を目指す。

「Growth」

 私たちの成長が株主・お客様・パートナー・社員等のあらゆるステークホルダーへの貢献に繋がる。

「Speed」

 ダイナミックかつ急激に変化する市場・お客様への迅速な対応。

「Sustainability」

 お客様・パートナー・社会との共生により持続可能な未来を創る。

 

行動指針

・各人が自身の仕事にオーナーシップを持ち、環境の変化に合わせ、お客様視点・マーケットインの視点から自立的に考え行動を起こす。

・成長市場・成長企業にアクセスし続けるために、最新の技術・知識に裏付けられた、お客様にとって価値のある課題解決に向けた提案を行う。

・各人が意欲的にあるべき姿に向かってチャレンジしプロフェッショナルを目指すことが、個人の成長・会社の成長に繋がる。

・個人単位・組織単位での迅速な判断と意思決定を行い、常に先を見て、お客様にとっての価値を生み出す。

・グローバル社会の構成員として、企業としての社会的責任を果たし、持続可能で豊かな社会の実現に向け貢献する。

 

・CSR基本方針

・法令・社会規範の遵守

私たちは法令・社会規範の遵守を徹底し、社会の信頼に応えます。

・人権の尊重

私たちは一人ひとりの人権を尊重し、差別等の人権侵害行為を許しません。

・社員の労働環境整備

私たちは社員の幸せを目指し、個性を尊重し、公平な処遇を実現するとともに、健康で働きやすい環境をつくります。

・環境への配慮

私たちは地球環境に配慮した企業活動を進めていきます。

・公正な商取引の推進

私たちは常に公正な商取引に則り、お客様/お取引先との信頼関係を築きます。

・情報管理の徹底

私たちは自社情報、お客様やお取引先等の第三者情報や個人情報等の管理を徹底し、機密を保持します。

・知的財産の尊重

私たちは企業価値の源である知的財産を守り、尊重します。

 

②経営方針

 上記の基本理念実現のために、当社グループは、独自の先端SoCを必要とするお客様に向けて、最適な技術の組み合わせにより、お客様が求める機能を実現するSoCを開発・提供する事業を、「ソリューションSoC」という独自のビジネスモデルにより展開しています。「オートモーティブ」、「データセンター/ネットワーク」および「スマートデバイス」といった先端分野に加えて、「産業機器」や「IoT&レーダーセンシング」の分野で、グローバルなお客様から地域的なバランスをとりながら、より多くの商談の獲得を目指します。

 

 事業活動を通して、お客様の信頼を獲得し、世界の主要・成長企業のSoC部門となりお客様の成長を支えるとともに、当社グループの低消費電力技術等を活用して社会の課題解決に貢献します。また、お客様と協力した開発を通して、エンジニアの成長と会社の成長との好循環を実現し、会社の成長による企業価値の向上により株主への還元を図ります。

 

(2)経営環境および対処すべき課題等

①経営環境

 近年、ネットワーク、クラウド、AI等様々な革新的技術の普及と融合により、今までにない新たなサービス/製品が次々と出現しています。それらのサービス/製品を取扱う企業においては、自社のサービスや製品を差別化するために独自のSoCへのニーズが増加しており、カスタムSoCの需要は拡大しています。

 同時に、半導体のエコシステムの目覚ましい進化により、カスタムSoC開発に必要なコア技術である設計(IP/EDAツール/ソフトウエア)や製造(プロセス/アセンブリ/テスト)の最先端技術をエコシステムから入手し、競争力ある独自のSoCの開発ができる環境が整い、今後も半導体のエコシステムはさらなる進化が見込まれています。

 一方、プロセステクノロジーの進歩が継続する中、チップレット技術や高度なパッケージング技術の進化により、これらの新しい技術と連携した先端SoC開発は、より複雑化するとともに、熱管理・電源効率や相互接続などの新たな課題への対応などにより開発の難易度は、ますます高まっています。

 

 こうした事業環境を背景に、独自のカスタムSoCを開発したい顧客と進化する半導体のエコシステムとを繋ぐとともに、課題解決のために重要となるEntire Design(全体設計)を特徴としている「ソリューションSoC」ビジネスモデルに対する需要が高まっています。

 

②優先的に対処すべき事業上および財務上の課題

 当社グループが持続的な成長を実現するためには、開発競争力の強化、事業体制の変革、組織全体のグローバル化、さらなる利益率の改善など多くの課題があります。「第一の変革」で成し遂げた「量的な変化」を土台として、競争力のある開発体制の構築やグローバル企業に相応しい組織風土を目指す「質的な変化」を当社グループの「第二の変革」と位置づけ、大胆に進めてまいります。

 

〔開発体制の再構築およびビジネスプロセスの改善〕

 当社グループは「ソリューションSoC」ビジネスモデルへの転換に伴い、これまで、開発力強化・開発効率改善のため、開発体制の再構築を進めてきました。今後もグローバルな顧客、半導体エコシステムを構成するプレーヤー、投資家等とのコミュニケーションを通じて、「ソリューションSoC」ビジネスモデルに相応しいグローバルな開発基盤と標準的な開発プロセスの構築、グローバルリーディンググループを中心としたグローバルな開発体制や技術力のさらなる強化、開発の効率化・可視化、開発マネジメント改革を一体的に推進していきます。

 また、さらにグローバルな顧客との商談が拡大していくことに伴い、生産管理グループのグローバル化およびオペレーション改善の施策を引き続き実施していきます。顧客と当社グループの生産システムを繋ぎ、デリバリーシステムにおける効率性や透明性の向上を目指していきます。それにより、精度の高い生産計画とタイムリーな調達を可能にする強固な体制を確立し、製造を委託するファウンドリやOSATとの関係を含むビジネスプロセスを改善していきます。

 

〔先端技術への積極的な投資〕

 今後の持続的な成長のために必要な技術力を強化するため、先端技術分野への投資を拡大し、成長重視の経営を進めていきます。具体的には、チップレットやチップレット技術と連携した2nmノード以細のテクノロジーでの開発、先端パッケージング技術および新たなパッケージ/アセンブリ技術のための高信頼性解析技術など先端技術への投資、SoCの設計プロセスに積極的にAIを組み込むなどSoC設計技術の強化、米国/インドなどでの人材確保などに積極的に取り組んでいきます。

 

〔中長期的な成長を見据えた売上および営業利益の拡大〕

 当社グループは将来の売上管理のために、商談獲得残高という経営指標を採用しており、この商談獲得残高は商談獲得金額から売上実績を差し引いた金額です。この商談獲得残高により、現時点において2027年3月期までの売上の推移をある程度見通すことができております。2025年3月期には約1兆1,400億円(1米ドル=100円で換算)に拡大しており、2028年3月期以降の持続的な成長のためには、さらに商談を獲得していくことが必要であると認識しております。そのために、これまで順調に商談を獲得してきているオートモーティブ分野に加え、データセンター/ネットワーク分野をはじめとして、各注力分野においてバランスよく商談獲得への取り組みを進めてまいります。

 また、営業利益拡大への施策としては、従来に引き続き製造粗利益の改善、開発収支の改善、販売管理費の適正な管理等に取り組んでいきます。

 

〔サステナビリティに関する取り組み〕

 当社グループでは、優先的に取り組むマテリアリティ(重要課題)を特定し、サステナビリティ活動を推進しています。

 マテリアリティのなかでも、特に環境/気候変動への取り組みとして、2024年4月より再生可能エネルギーの導入を開始するなど、当社グループのGHG(温室効果ガス)排出量の削減を進めるとともに、当社グループが提供する低消費電力/省スペースな先端SoCにより、お客様のもとでのGHG排出量の低減へ貢献することで、脱炭素社会の実現を目指しています。

 また、人的資本に関しては、人権、ダイバーシティ、安全衛生/健康推進に関する諸制度の充実、エンジニア人材育成に関する教育プログラムの策定等により、当社グループの人的資本の最大化に向けた活動を進めています。

 当社グループは、半導体エコシステムのパートナーと協働して、サプライチェーン全体でマテリアリティへの取り組みの実効性を高め、社会課題の解決と事業のさらなる成長を通じて、持続可能な社会の実現を目指しています。

 当社グループは、グローバル企業としての社会的責任を全うし、全てのステークホルダーから信頼と共感を得られる存在であり続けたいと考えています。当社グループの最先端SoC技術で新しい価値を世界中に提供し、今後も中長期的な企業価値の向上を追求していきます。

 当社グループは、国際連合が提唱する国連グローバルコンパクト(United Nations Global Compact:UNGC)に署名しました。UNGCは、国連と民間(企業/団体)が手を結び、健全なグローバル社会を築くための世界最大のサステナビリティイニシアチブです。各企業/団体が責任ある創造的なリーダーシップを発揮することによって、社会の良き一員として行動し、持続可能な成長を実現するための世界的な枠組みです。当社グループは、組織のトップ自らのコミットメントのもと、4分野(人権/労働/環境/腐敗防止)からなる10原則に基づき、持続可能な社会の実現に向けて努力していきます。

 

(3)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 カスタムSoCは、一般的に商談獲得から設計開発および顧客による評価期間を経て製品を出荷し売上計上するまで2年以上を要するため、当社グループは、より早い段階から将来売上見通しを見える化し、必要な対策をタイムリーに実行していくために、将来の売上見通しのベースとなる「商談獲得金額」、「商談獲得残高」を会社の重要経営指標としております。日々の商談獲得活動によるこれら指標の積上げ、見直しによる、中期的な売上高成長率の向上、並びに製品売上拡大による売上総利益の増加および開発効率化等を通じた営業利益率の改善を目指しております。

 当社グループの商談獲得金額は2018年3月期および2019年3月期は1,000億円の水準でしたが、2023年3月期は2,500億円程度に達し、2025年3月期は約3,000億円規模へと拡大しました。特に高成長が期待されるデータセンター/ネットワーク、オートモーティブを中心とした注力分野において大型の商談を多数獲得しております。その結果、商談獲得残高は2022年6月末時点の約8,800億円から2025年3月末時点で約1兆1,400億円と増加しております。

 当社グループは、商談獲得後、SoCの設計開発を行いますが、一般的に顧客から設計開発に要する費用の大半をNRE売上として段階的に受領します。その後、顧客の評価を経て製品の量産段階に入り、製品売上を計上します。2025年3月期において、当社グループの連結売上高に占めるNRE売上高の比率は22%でした。商談獲得から設計開発および顧客の評価完了を経て製品売上が計上されるまでには、通常2年以上を要し、その間に案件の中止や仕様変更等に基づく製品単価の変化が発生しうるため、商談獲得金額が将来の売上を確実に保証するわけではありません。

 

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「商談獲得金額」は、ある会計期間に獲得された商談について、顧客との間で設計開発に係る契約を締結した時点(商談獲得時点)における、将来の設計開発および量産に至る販売全期間における顧客需要として当社グループが予測した金額を、1米ドル100円により示したものです。商談獲得金額は、顧客需要の予測であるため、製造キャパシティの制約は考慮しておらず、また、商談獲得後の案件の中止、実際に計上された売上といった事後的な事象に基づき更新することはしていません。なお、商談獲得時において、製品単価は合意されます(但し、設計開発を経て製品の仕様が変更される場合には製品単価も変更されることがあります。)が、販売数量は合意されません。

このため、単価や数量の変動等個々の商談の状況変化を適時反映した「商談獲得残高」も重要な経営指標としております。

 

「商談獲得残高」は、その時点において存続している案件に関する商談獲得金額の累積値を当社グループが予測した金額で、同じく1米ドル100円で計算しています。商談獲得残高は、商談獲得金額についての、商談を獲得した時点以降の案件の進捗又は変化を反映又は更新したものであるため、商談獲得残高の算定時点により大きく変動する可能性があります。これらの進捗又は変化には、①商談獲得後の案件の中止(2020年3月期から2025年3月期までの商談獲得金額の合計についておよそ15%に相当する商談が事後的に中止となっています。これまでは、このようなキャンセルによる影響額は商談獲得後の単価上昇、数量増などの影響額でオフセットされほぼ同水準で推移してきましたが、2025年3月末時点では、北米オートモーティブ案件の影響もあり、相当する商談獲得残高とこれまでの関連する売上の合計が、商談獲得金額の合計に対して数%の減少となっています)、②実際に計上された売上の控除および③仕様変更等に基づく製品単価の変化や製品の販売数量の見込みの変化が含まれます。

 

 上記のほか、「商談獲得金額」および「商談獲得残高」の留意事項については、下記「3 事業等のリスク (4)当社グループの経営指標について」もご参照ください。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取り組み】

当社グループのサステナビリティに関する考え方および取り組みは次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)サステナビリティの基本的な考え方

 当社グループは、「Together with our global partners, we bring innovation to everyone everywhere.」 というミッションのもと、サステナビリティへの取り組みを重要な経営課題と位置付け、新しいサービス/製品の差別化のために独自の先端SoCを開発するお客様のパートナーとして、また、進化する半導体のエコシステムにおいてファウンドリ/OSATをはじめ、IP/EDAツール/ソフトウエアに至るまで最新の技術を提供するサプライヤーのパートナーとして、お客様、さらにはその先にいる世界中の人々に新しい価値を提供し、持続可能で豊かな社会の実現に貢献していきたいと考えています。

 地球温暖化や気候変動等の環境問題および人権尊重や多様性等の社会的課題へのグローバルな関心の高まりを受け、企業を取り巻く環境は大きく変化しています。当社グループは、世界全体の様々な課題が引き起こすリスクを正しく認識し、それらの課題を解決するための対策に取り組んでいきます。

 また、取り組みにあたっては、お客様、パートナー、社員、地域社会、株主等、当社グループを取り巻く様々なステークホルダーとの対話や協働を通じて、課題の理解に努めるとともに信頼関係を構築し、持続可能な社会の実現を目指していきます。

 

(2)マテリアリティの特定

 当社グループは、サステナビリティの基本的な考え方に基づき、解決すべき社会的課題と当社グループの事業成長における重要性を評価し、優先的に取り組むマテリアリティを特定しました。グローバルな潮流の変化や事業環境の変化に柔軟に対応し、持続的な成長を実現するため、サプライチェーン全体でマテリアリティへの取り組みを進めていきます。

 

〔マテリアリティ特定プロセス〕

 マテリアリティの選定にあたっては、当社グループの「基本理念」をもとに、お客様、パートナー、社員、地域社会、株主等、当社グループを取り巻く様々なステークホルダーと当社グループの事業のそれぞれの側面から、マテリアリティを抽出し、SASB/WEF/CSRD等のグローバルな要求や基準を踏まえ、「ステークホルダーからの期待度」と「当社グループとしての重要度」の両面からマテリアリティを評価しました。最終的には経営層での議論を経て、取締役会における承認により決定しています。

 

当社グループの「基本理念」をもとに「ステークホルダーからの期待」と「事業成長」のそれぞれの側面からマテリアリティを抽出

抽出したマテリアリティに対して「ステークホルダーからの期待度」と「当社グループとしての重要度」の2軸で整理/評価

経営層での議論を経て、優先的に取り組むマテリアリティを特定し、取締役会で承認

 

〔マテリアリティマップ〕

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優先的に取り組むマテリアリティ

当社グループの考え方

コーポレート・ガバナンス

健全かつ透明性の高いガバナンスが、グローバルな事業成長の基盤となる。

インテグリティ・コンプライアンス

グローバルに事業展開を進めるうえで、高いインテグリティ意識やコンプライアンス遵守が不可欠となる。

(新規技術の追求による)
イノベーションへの貢献

当社グループのサービス/製品の差別化を図ることが、中長期的な事業成長を実現し、企業価値を最大化するために必要な要素となる。

GHG排出量削減

お客様の製品におけるGHG排出量削減に貢献することが、社会的課題の解決と当社グループの事業成長に繋がる(低消費電力/省スペースSoCの提供による貢献)。

持続可能なサプライチェーン

ファブレスでの事業運営において、サプライチェーン全体での高度なCSRマネジメントが不可欠となる。

人材確保・リテンション & 人材育成

グローバルな開発競争力を維持するため、技術開発をリードし、イノベーションを生み出す人材の確保/育成が必須となる。

社員のエンパワーメント・エンゲージメント

社員が生き生きと働き、継続的に成長/挑戦していくことのできる環境/企業文化の醸成が、さらなる事業成長に必要となる。

人権・多様性

一人ひとりの人権を尊重し、配慮することはもとより、さらなる事業成長には、多様な人材とその人材が活躍できる環境の構築が必要となる。

品質と信頼性

高度な技術力のみならず、高い品質と信頼性が当社グループの差別化/競争力の源泉となる。

安定供給

お客様の要求に応え、また、社会的責任を果たすために、優れたQCD、安定供給、および事業継続が求められる。

設計データ資産管理
(情報セキュリティ、サイバーリスク)

設計資産/ノウハウの厳格な管理が事業の基盤となり、お客様の信頼獲得に不可欠となる。

労働・安全・健康
(ワークライフバランス)

社員がフレキシブルに勤務場所/時間を選択し効率的に働くことや、心身ともに健康であることが、事業成長に必要となる。

 

(3)サステナビリティ情報開示の考え方

 サステナビリティ情報の開示においては、TCFD(※1)提言やISSB(※2)サステナビリティ開示基準(IFRS(※3)S1/S2)、およびSSBJ(※4)サステナビリティ開示基準に則り、ガバナンス、戦略、

リスク管理、指標と目標の4つの観点に沿って行う方針です。

※1:

気候関連財務情報開示タスクフォース(Task Force on Climate-related Financial Disclosures)の略語です。

※2:

国際サステナビリティ基準審議会(International Sustainability Standards Board)の略語です。

※3:

国際財務報告基準(International Financial Reporting Standards)の略語です。

※4:

サステナビリティ基準委員会(Sustainability Standard Board of Japan)の略語です。

 

(4)当社グループの取り組み内容

①ガバナンス

 当社グループは、サステナビリティ活動を推進し、中長期的な課題を経営レベルで継続的に議論していくため、ESG推進室を設置し、社内関連部門と連携した推進体制を構築しています。この推進体制を活動の基盤として経営委員会の実行指示のもと活動を推進しています。取締役会は、重要なサステナビリティ課題への取り組み方針/実行計画の審議/承認や、進捗確認等の監督を行っています。

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〔取締役会〕

 サステナビリティ活動に関する決定機関として、方針/戦略/施策等を審議/承認します。また、半期毎に各種施策の進捗を監督し、必要に応じて是正等の指示を行います。

 

〔経営委員会〕

 取締役会での審議に先立ち、サステナビリティに関する方針/戦略/施策等の計画案を策定します。また、各施策に対する執行責任を持ち取締役会での承認の下、実行部門への指示を行い、施策等を推進します。

 施策の推進に当たり、ESG推進室は、方針/戦略/施策等の計画策定および計画実行のサポート、施策の実行状況について取りまとめ、経営委員会への報告を実施します。

 

②リスク管理

 当社グループは、様々な経営リスク、事業リスクの抑制/低減に向け、半期毎に全社リスクマネジメントを実施しています。このフレームワークの中で、気候変動/人的資本/多様性といったサステナビリティに関するリスクについても重要リスクと認識し、リスクアセスメントの実施、対策立案/実行、進捗/効果確認を定期的に実施しています。リスクマネジメントに関する基本的な考え方および体制については、下記「3 事業等のリスク」を参照ください。

 

③環境に関する戦略

〔環境方針〕

 当社グループは、先進の技術によって環境性能に優れたSoCおよびそれを核とするソリューションビジネス/サービスの設計、開発および販売を通じて、お客様とともに豊かな地球環境の保護に貢献します。また、以下の行動指針により、当社グループは、開発から調達、生産、流通、販売、使用、廃棄にいたるすべてのライフサイクルを通じて、環境負荷の低減と環境汚染の予防に努めます。

 

1. 省電力、軽量化、含有化学物質の適正管理など、環境に配慮した製品の開発を積極的に推進することにより、温室効果ガス排出の削減、廃棄物の削減など、地球環境の負荷低減に積極的に貢献します。

2. 開発から調達、生産、流通、販売、使用、廃棄にいたる、サプライチェーン全体での活動を通して、環境負荷の最小化を追求するため、エネルギー/原材料/水資源の有効活用、温室効果ガス/廃棄物/水の排出量管理、材料や副資材に含まれる化学物質の確実な管理に取り組みます。

3. 持続可能な社会を実現するため、資源の有効活用を促進するとともに、環境汚染の予防と、生物多様性や森林保全に配慮した事業活動と貢献活動、およびプラスチックの使用削減を推進します。

4. 各国、各地域の環境関連法規制、およびそれらに関するお客様との個々の合意事項を遵守します。

5. すべての役員および従業員の環境への意識向上を図り、地域社会への環境貢献を推進します。

6. これらの環境活動を有効に実施するために、環境マネジメントシステムを継続的に改善します。

7. 地球環境の保全/負荷低減に向けた活動への賛同、および支援を行うとともに、環境情報の適切な開示や地域環境への貢献を推進することにより、ステークホルダーとの連携/協働を図ります。

 

〔環境マネジメントシステム(ISO14001)構築/認証〕

 当社は、環境方針の実現に向けた具体的な取り組みとして、国際標準規格ISO14001に基づく環境マネジメントシステムを構築し、外部の認証機関による第三者認証を取得した上で環境活動を推進しています。

 環境マネジメントシステムは、トップマネジメントのもと、環境活動の具体的行動計画の策定、実施および結果のチェック、EMS委員会、マネジメントレビューの実施により、PDCAサイクルを確実に回し、継続的な改善に努めています。環境マネジメントシステムの構築により、活動状況の把握をはじめ、順法や緊急事態への対応など、より実効性の高い活動を可能にしています。

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〔環境マネジメントシステム(ISO14001)登録証〕

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〔環境マネジメントシステム(ISO14001)推進体制〕

 当社は、環境管理統括責任者(担当役員)のもと、組織単位で環境責任者を設置し、環境活動を推進しています。また、サステナビリティ推進部門であるESG推進室と連携し、サステナビリティ活動との連携を図っています。四半期毎に開催するEMS委員会では、環境活動の結果をレビューし、情報共有を図っています。

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〔環境活動内容〕

 当社は、各部門が環境への影響/課題を評価/抽出し、環境目標の設定および四半期毎に結果確認を行うことにより、環境活動を推進しています。

部門

環境への影響・課題

環境目標および活動事例

営業部門

販売したLSI製品の市場での電力消費、廃棄。

環境配慮型製品(低消費電力、小型化)の販売により、電力消費、廃棄物の量を削減。

事業/開発部門

環境配慮型製品(低消費電力、小型化)の開発により、電力消費、廃棄物の量を削減。

LSI製品不良品の廃棄。

開発/製造/試験工程の見直しによる歩留まり改善。

品質・製造技術/生産/調達部門

LSI試験時間増によるテスターの電力消費。

試験最適化、同測数拡大などによる試験時間短縮。

LSI製品への規制化学物質の含有。

各国の製品含有化学物質規制の遵守。

流通におけるエネルギー消費。

流通ルートの短縮/効率化に向けた製造拠点、倉庫拠点の最適化。

コーポレート部門

データセンターのCPU/サーバーの電力消費。

設計開発に使用するデータセンター内のCPU/サーバーの消費電力低減。

気候変動、環境規制等への対応体制、プロセスの構築。

環境取り組みの社外への情報開示。

開発および不良品解析に使用する化学薬品の保有。

保有化学薬品の管理、SDS評価。

地球環境への貢献。

清掃ボランティア活動、ペットボトルキャップのリサイクル。

 

〔環境教育〕

 当社は、役員および従業員一人ひとりの環境意識を高めるため、環境への取り組みに対する考え方や、業務との関わり、環境法令や当社の取り組みについて、すべての役員および従業員に対しe-Learning環境教育を毎年実施しています。

 また、社内のイントラネットへ当社の環境活動の目標を含む活動状況を掲載し、すべての役員および従業員への周知と意識高揚に努めています。

 

〔気候変動への対応〕

(a)環境に配慮した製品の提供

 当社グループは、環境負荷の低減に向けて、再生可能資源の利用促進、エネルギー効率の向上、有害物質の削減、低消費電力型製品の開発を行うことで環境に配慮した製品を提供し、かつ各国の様々な法規制にも対応することで、お客様に安心をお届けします。

 ソシオネクストの製品、および包装梱包材は、EU REACH規制*1、EU RoHS指令*2、中国RoHS指令*3、などの法規制に対応しています(使用禁止措置適用除外項目を除く)。

*1:EUにおける化学品の登録/評価/認可および制限を目的とした規制(Registration, Evaluation, Authorization and Restriction of Chemicals)

*2:EUにおいて販売される電子/電気機器に特定有害物質の使用を禁止する指令(Restriction of Hazardous Substances)

*3:中国で販売される電子/電気機器に特定有害物質の使用を禁止する指令(電子情報製品生産汚染防止管理弁法)

 

 当社グループは、我々の提供するSoCによって、お客様のもとでのGHG排出量の低減に貢献し続けていくことが、サステナブルな社会の実現に繋がると考えています。グローバル市場をリードする主要なお客様との共同開発や、独自のマルチコア設計技術・低電力なAIエンジン/アクセラレータ等の活用等による高性能なカスタムSoCの開発を通じて、お客様の製品のさらなる小型化、高集積化、低消費電力化を実現することで、お客様のイノベーションおよび製品の環境負荷低減に貢献します。

 また、設計開発に使用するデータセンターにおいては、CPU/サーバーの消費電力低減、および再生可能エネルギーの導入などを順次進めています。

 

(b)リスクと機会およびシナリオ分析

 当社グループは、2025年3月期において、事業活動における気候変動に関連する「リスク」と「機会」を以下のとおり認識した上で、シナリオ分析を通じた財務/事業インパクトの算出を行いました。

 

〔気候変動に関連する主なリスクと機会〕

区分

気候変動が当社グループに及ぼす影響

当社グループの対策







政策/法規制

省エネ/GHG排出量削減に向けた取り組み/施策によるコスト増(カーボンプライシング等のエネルギーコスト増等)。

グローバルな動向/法規制の変化を早期に捉えた計画的な施策の検討/実行/評価。

サプライチェーンGHG排出量の把握、パートナーへの削減の働きかけの継続的な実施。

技術

市場競争力維持/向上のための研究開発費増。

市場競争力維持/向上のための製造コスト増。

お客様、パートナーと連携した低消費電力/省スペースな環境配慮型デバイスとソリューションの開発/提供、およびその開発プロセスの効率化。

 

 

市場/評判

環境配慮型デバイスを提供できないことによる売上減およびレピュテーションリスク。

GHG排出量の低減に貢献するサービス/製品の開発/提供。

 

 

規制による材料/電力等仕入れ価格のコスト増。

使用部材の見直し、データセンターにおける導入機器の効率化などによる消費電力の削減検討。

 





急性

異常気象の激甚化による製造委託先/データセンターの操業停止。

製造委託先およびデータセンター等の操業停止を想定した拠点分散化等の事業継続計画の定期的な見直し。

 

慢性

水不足による製造委託先の操業停止。

 

気温上昇によるデータセンター等の電力コスト増。

事業所、データセンターにおける導入機器の効率化などによる消費電力の削減検討。


資源の効率性

事業所、データセンターにおける資源(エネルギー、水)の効率利用によるコスト削減。

SoC開発効率化(独自のマルチコア設計技術、低電力なAIエンジン/アクセラレータの活用)によるコスト削減。

サービス/製品

お客様の省エネ/GHG排出量削減への貢献に寄与する低消費電力製品を中心とした需要増。

低消費電力/省スペースな環境配慮型デバイスとソリューションの開発/提供。

市場

低消費電力技術を基盤とした新たなお客様獲得。

AD/ADAS/データセンター向けSoCを中心としたさらなる低消費電力化/小型化の実現による新たなお客様獲得。

 

〔シナリオ分析〕

区分

シナリオ/参考情報

期間

・短期:~2026年

・中期:2027年~2030年

・長期:2031年~2050年

インパクト

・小:10億円以内

・中:10億円超50億円以内

・大:50億円超

※会計年度単位での影響額

シナリオ

1.5℃/2.0℃シナリオ:IEA(国際エネルギー機関)のSDS/NZE、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)のRCP/SSP1

シナリオ分析の進め方

当社グループは、IEAやIPCC等が発表する「世界の平均気温がパリ協定で合意した2.0℃未満の上昇に抑えられる(一部1.5℃以内)」のシナリオでリスクと機会を分析しました。

 

〔1.5℃/2.0℃シナリオにおける当社グループへのインパクト〕

区分

気候変動が当社グループに及ぼす影響

事業活動に対する財務的インパクト

重要度

※1

発生時期

影響

項目

影響度 ※2

移行

リスク

政策/法規制

省エネ/GHG排出量削減に向けた取り組み/施策によるコスト増(カーボンプライシング等のエネルギーコスト増等)。

中・長期

コスト

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技術

市場競争力維持/向上のための研究開発費増。

市場競争力維持/向上のための製造コスト増。

短・中期

コスト

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市場/評判

お客様の需要変化による売上減。

環境配慮型デバイスを提供できないことによるレピュテーションリスク。

中・長期

売上

-

規制による材料/電力等仕入れ価格のコスト増。

中・長期

コスト

-

物理

リスク

急性

異常気象の激甚化による製造委託先/データセンターの操業停止。

中・長期

売上

-

慢性

水不足による製造委託先の操業停止。

中・長期

売上

-

気温上昇によるデータセンター等の電力コスト増。

中・長期

コスト

0102010_009.png

 

機会

資源の効率性

事業所、データセンターにおける資源(エネルギー、水)の効率利用によるコスト削減。

中・長期

コスト

0102010_010.png

 

サービス/製品

お客様の省エネ/GHG排出量削減への貢献に寄与する低消費電力製品を中心とした需要増。

中・長期

売上

-

市場

低消費電力技術を基盤とした新たなお客様獲得。

中・長期

売上

-

※1:重要度「高」「中」「低」の程度は、気候関連のリスクと機会の「発生可能性」と「影響の程度」を勘案して評価しています。

※2:試算が困難であるリスク/機会の影響度については、各項目における定性評価に留め、「-」として表示しています。

 

(c)リスクと機会に関する具体的な取り組み

 近年、自動運転技術の発展や、生成系AIの市場利用が始まり、必要とされるコンピューティングパワーは指数関数的に増加していくと予測されており、消費電力を抑え、GHG排出量を抑制することが社会的な課題となっています。当社グループでは、市場競争力の維持/向上およびエネルギーコスト増への対策として、開発段階から消費電力の低減に向けた取り組みを行っています。

 また、SoCの小型化による使用部材の削減や、省スペース化に向けた取り組みも推進しています。

 

(ⅰ)SoCの消費電力の削減/低減に向けた取り組み

〔微細化による消費電力の低減〕

 お客様からのSoCに対する消費電力低減の要求に応えるため、当社グループはプロセスノードの進化(微細化や低電圧化)を追求することで、低消費電力化の対応を進めています。

 先端プロセスと既存プロセスにおける消費電力を比較すると、最先端の2nm/3nmプロセスは、28nmプロセスに対し、トランジスタ当たりの消費電力は概ね1/10以下に低減されています。2nm以細の最先端テクノロジー(1.4nm/2nm)への開発投資拡大も進めており、継続して微細化や低電圧化への追求を進めています。

 

〔低消費電力化の実現に向けた設計技術〕

 当社グループのSoC設計は、お客様の低消費電力化の要望に応えるため、多様な取り組みを行っています。低消費電力SoCを実現するためには、個々の技術だけではなく、様々な技術を組み合わせることが有効です。当社グループの設計環境「リファレンス・デザイン・フロー」は、様々な低消費電力化技術に対応しており、SoCの動作時と待機時の双方の消費電力を削減できます。特に、電源を制御することにより、低消費電力化を図る手法を体系化して開発しています。

 また、当社グループは、UPF/CPF(※)を採用することで、お客様の設計資産への変更を抑えつつ、低消費電力化設計を容易にしています。UPF/CPFの採用は、これまでは検証が非常に困難だった低消費電力化技術に対しても信頼性の高い設計を行うことを可能としています。

 

詳細は当社グループのホームページを参照ください。

https://www.socionext.com/jp/products/customsoc/design/low-power.html

 

UPF(Unied Power Format):IEEE Std. 1801として標準化された低消費電力設計指針を記述する標準仕様です。

CPF(Common Power Format)とは、Si2にて標準化された低消費電力設計指針を記述する標準仕様です。

 

〔低消費電力化を可能とする設計/開発プロセスおよびパッケージング技術〕

 当社グループではお客様の製品における低消費電力化を実現するため、独自の開発フロー(「デザイン・レビュー」の仕組み)を策定し、運用しています。この仕組みは、お客様からの低電力要求仕様の聴き取りおよび仕様決定、要求を実現するテクノロジー選択(プロセスノード選択を含む)の提案、GHG排出量の低減等の環境負荷対策に積極的なFab/OSATの選定等、製品の製造から使用に至る様々な段階でのGHG排出量の削減に寄与しています。

 開発段階においては、低消費電力化および小型化を志向した論理/物理設計、並びにパッケージング設計(2.5D/3D/チップレット戦略等)に取り組んでおり、SoC製品を通したGHG排出量の削減に貢献しています。

 

 以上のように、当社グループは、先端テクノロジー製品や、多様な低消費電力化技術を搭載した製品の開発/提供により、お客様のもとでの消費電力の削減に貢献しています。

 プロセスノード別の売上推移では、製品売上、NRE売上ともに先端テクノロジー製品(3nm~7nm)へのシフトが進んでいます。将来的な製品売上の先行指標と言えるNRE売上(2025年3月期)では、先端テクノロジー製品の比率が 74% に達しています。

 

〔売上の内訳(プロセスノード別)〕

0102010_011.png

 

(ⅱ)小型化/省スペース化に向けた取り組み

 当社グループは、SoCの小型化により使用部材(鉱物資源、化石資源)を削減し、原材料から製品にいたる、製造プロセスでのエネルギー削減に貢献しています。

 SoCの小型化は、お客様の最終製品における小型化/省スペース化につながり、さらには機器動作時の発熱対策の容易性にもつながります。これによって、お客様における使用部材の削減や、製造プロセスでのエネルギー削減だけではなく、最終製品を使用する段階でのエネルギー削減(例えば、電気自動車の航続距離向上、データセンターの空調機負荷軽減等)が果たされますので、サステナブルな社会の実現に繋がると考えています。

 近年、2.5D/3D集積技術に代表されるチップレットが実用段階に入り、SoCの微細化限界に対するブレークスルーとして期待されています。当社グループは、本技術の採用を積極的に進めることで、さらなる小型化/省スペース化、および低消費電力化を推進しています。

 チップレットは、先端テクノロジー(3nm~7nm)のSoCチップと、複数の機能チップとの組み合わせで製品化を行っており、データセンター/ネットワーク、およびオートモーティブ用途向けの製品において、既に製品出荷を開始しています。

 チップレットの低消費電力化の推進にあたっては、チップレット間通信の最適化、低消費電力のインターコネクト技術の採用、また、各チップレットの電力管理を細かく制御するなどの設計技術を適用し、全体の消費電力の削減を図っています。

 

〔チップレット断面構造イメージ〕

0102010_012.png

 

(ⅲ)データセンターにおける消費電力の削減に向けた取り組み

 先端テクノロジー製品(2nm~7nm)への開発シフトによる高集積化の進展により、設計/開発業務におけるデータ処理量が増大したため、データセンターでの消費電力は当社グループのGHG排出量(Scope1、2の合算値)の約半分を占めている状況であり、将来的な事業規模の拡大に合わせ、消費電力のさらなる増加が見込まれます。

 当社グループでは、データセンターにおける消費電力の低減施策として、CPU/サーバー等を中心に低消費電力型機器の導入/置き換えを順次進めています。また、開発プロセス/開発手法等の改善による業務の効率化により、CPU/サーバーの稼働時間を抑制し、消費電力の低減に取り組んでいます。その他にも、データセンターの集約や、導入機器の水冷化へのシフト等による消費電力低減を進めています。

 データセンターにおいては、今年度より再生可能エネルギーの導入を開始しており、次年度以降、再生可能エネルギーのさらなる導入拡大を推進していきます。

 

④環境に関する指標と目標

 2025年3月期の当社グループのGHG排出量(Scope1(※1)、2(※2))は、6,527t-CO2となりました。前年比では、1,448t-CO2の削減となりました。また、売上高当たりのGHG排出量については、3.46t-CO2となり、前年比では、0.15t-CO2の削減となっております。

 当社グループは、2050年までにGHG排出量(Scope1、2)のカーボンニュートラルを目指しており、目標達成に向けて、引き続き削減施策の検討を行い、実行してまいります。

※1:事業者自らによる温室効果ガスの直接排出

※2:他社から供給された電気、熱・蒸気の使用に伴う間接排出

 

〔GHG排出量〕

 

2023年3月期

(t-CO2)

2024年3月期

(t-CO2)

2025年3月期

(t-CO2)

前年比

(t-CO2)

目標

Scope1

168

199

254

55(128%)

2050年までにカーボンニュートラル達成

Scope2

8,172

7,776

6,936

△840(89%)

合計

8,340

7,975

7,190

△785(90%)

※再エネ導入による排出削減量(Scope2分)

0

0

△663

△663

 

再計

8,340

7,975

6,527

△1,448(82%)

 

 

〔売上高当たりのGHG排出量(1億円当たり)〕

 

2023年3月期

(t-CO2)

2024年3月期

(t-CO2)

2025年3月期

(t-CO2)

前年比

(t-CO2)

Scope1、2

4.33

3.61

3.46

△0.15

 

〔GHG排出量 Scope3内訳〕

温室効果ガス(GHG)排出量

グローバル実績(t-CO2)

2023年3月期

2024年3月期

2025年3月期

Scope1

 

168

199

254

Scope2

マーケットベース

8,172

7,776

6,273

 

ロケーションベース

8,327

7,774

7,098

 

内データセンター(マーケットベース)

3,678

3,655

3,156

 

内オフィス/その他(マーケットベース)

4,494

4,121

3,117

Scope3

 

581,631

396,738

340,898

合計

マーケットベース

589,971

404,713

347,425

Scope3詳細

 

 

 

 

Cat.1

購入したサービス/製品

541,839

356,133

299,323

Cat.2

資本財

35,620

35,025

36,455

Cat.3

Scope1、2に含まれない燃料およびエネルギー関連活動

1,375

1,327

1,244

Cat.4

輸送、配送(上流)

1,308

1,137

1,050

Cat.5

事業から出る廃棄物

26

25

67

Cat.6

出張

953

2,267

2,016

Cat.7

雇用者の通勤

510

824

743

Cat.8

リース資産(上流)

対象外

 

 

Cat.9

輸送、配送(下流)

Cat.4で算出のため非該当

Cat.10

販売した製品の加工

対象外

 

 

Cat.11

販売した製品の使用

対象外

 

 

Cat.12

販売した製品の廃棄

対象外

 

 

Cat.13

リース資産(下流)

対象外

 

 

Cat.14

フランチャイズ

対象外

 

 

Cat.15

投資

対象外

 

 

※GHG排出量算定方法の見直しを実施し、2023年3月期に遡ってScope1/2/3の排出実績を変更しています。

 

〔IFRS S2 開示要求項目〕

開示項目

指標

実績

SASB対照表(コード)

2023年3月期

2024年3月期

2025年3月期

温室効果
ガス排出

(1)グローバルでの「Scope1」の総排出

168 t-CO2eq

199 t-CO2eq

254 t-CO2eq

TC-SC-110a.1

(2)ペルフルオロ化合物からの総排出

当社グループ製品には当該物質は含有されていないため、温室効果ガスの排出はありません。

TC-SC-110a.1

「Scope1」の排出を管理するための長期的および短期的な戦略又は計画、排出削減目標並びにそれらの目標に対するパフォーマンスの分析についての説明

2050年までにGHG排出量(Scope1、2)のカーボンニュートラルを目指しています。

TC-SC-110a.2

事業活動におけるエネルギー管理

(1)エネルギー総消費量

192,639 GJ

161,037 GJ

149,701 GJ

TC-SC-130a.1

(2)電力系統からの電気の割合

97.0 %

96.0 %

91.5 %

(3)再生可能エネルギーの割合

0 %

0 %

8.9 %

水管理

(1)総取水量

4,798 m3 (*)

4,145 m3

2,094 m3

TC-SC-140a.1

(2)総消費水量、およびそれらの「ベースライン水ストレス」が「高い」又は「極めて高い」地域の割合

水ストレスが「極めて高い」「高い」地域における使用割合は、0%です。

製品ライフサイクル
管理

IEC62474申告対象物質を含む製品から生じた売上高の割合

IEC62474申告対象物質を含む製品から生じた売上高の割合は、0%です。

当社グループ製品では、IEC62474申告対象物質の閾値を超える使用、報告義務のある用途・物質の使用はありません。

TC-SC-410a.1

(1)サーバー、(2)デスクトップおよび(3)ラップトップのシステムレベルにおけるプロセッサーのエネルギー効率

該当無し。

TC-SC-410a.2

総生産量

(自社所有の製造設備および製造委託契約をしている製造設備による総生産量を開示)

159,068 千個

123,770 千個

99,612 千個

TC-SC-000.A

自社施設からの生産の割合

0 %

0 %

0 %

TC-SC-000.B

当社グループは製造工程を外部に委託しており、自社施設では生産を行っておりません。

※「事業活動におけるエネルギー管理」の算定方法の見直しを実施し、2023年3月期に遡って実績を変更しています。

 

(5)サステナビリティ活動に対する社外からの評価

 当社グループは、2022年10月の東京証券取引所プライム市場への上場後、経営と一体化したサステナビリティ活動を積極的に進めています。今年度は、CDP(Carbon Disclosure Project)において、初めての審査でBランクを獲得しました。また、日本経済新聞社主催の「第6回日経SDGs経営調査」の総合ランキングにおいて3つ星に認定され、同じく「脱炭素経営ランキング GX500」において、上位500企業として選出されました。

 これらの評価結果を基に、サステナビリティ活動のさらなる進展を図っています。

 

[CDP 2024「気候変動」および「水セキュリティ」の2分野で「B」評価を獲得]

 CDP(Carbon Disclosure Project)は、世界唯一の独立した環境情報開示システムを運営する非営利団体です。世界の主要企業から気候変動などの環境関連情報を収集/分析し、その結果を9段階(A、A-、B、B-、C、C-、D、D-、F)で評価しています。CDPのデータベースは環境情報開示のグローバルスタンダードとされており、CDPを通じた情報開示を求める機関投資家が年々増加しています。

 CDP 2024では、全世界で24,800社以上が回答し評価されています。今回が初めての回答となる当社グループは「気候変動」および「水セキュリティ」の分野で「B」評価を獲得しました。これは、最高評価から3番目に位置する評価となります。

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[日本経済新聞社「第6回日経SDGs経営調査」で3つ星に認定]

 日本経済新聞社主催「第6回日経SDGs経営調査」の総合ランキングにおいて3つ星に認定されました。「日経SDGs経営調査」は国連の「持続可能な開発目標(SDGs)」への企業の取り組みを格付け評価するもので、「SDGs戦略/経済価値」「社会価値」「環境価値」「ガバナンス」の4つの分野における総合得点で評価されます。

 当社グループは、評価対象分野のなかでも、特に「ガバナンス方針/実効性」および「株主対応/株式保有」への対応が評価されました。

0102010_014.png

[日本経済新聞社「脱炭素経営ランキング GX500」に選出]

 日本経済新聞社主催「脱炭素経営ランキング GX500」において、上位500企業として選出されました。「脱炭素経営ランキング GX500」は、企業の脱炭素の取り組みを総合的に評価し、GX(グリーントランスフォーメーション)時代の優力企業500社を選出してランク付けするもので、アンケートに回答した国内上場企業など887社を対象に「情報開示」「排出量の管理や削減実績」「省エネや再エネ活用」「温暖化ガス削減の具体策」「削減の目標設定」の5分野における総合得点でランキングと格付け評価が行われます。

 当社グループは、評価対象分野のなかでも、特に「情報開示」への対応が評価されました。

0102010_015.png

 

 

(6)人的資本への対応

①人的資本に関する戦略

 当社グループは、多様な社員や組織が互いに高め合い協力することが、最先端の技術力やグローバルな開発競争力を向上させ、さらには、持続的成長の基盤となり、当社グループのミッション「Together with our global partners, we bring innovation to everyone everywhere.」の実現につながると考えます。

 「人材こそが企業価値の源泉である」という信念のもと、「人材育成」、「人権/ダイバーシティ&インクルージョン」、「安全衛生」、「健康推進」に注力し、多様な人材が最大限に能力を発揮できる環境づくりとその成長支援を積極的に推進しています。

 当社グループは、EcoVadis、RBA-Online、SAQ5.0などの外部評価を受けています。また、S&P Global CSAや日経サステナビリティ調査などの格付け評価機関の要求にも対応しています。これらの評価は、国際的なサステナビリティ基準に基づき、サステナビリティおよびサプライチェーンの専門家からなる科学的コミュニティによって行われます。第三者からの厳格な評価を通じて得られたフィードバックを改善につなげ、ステークホルダーとの信頼を深めながら、企業価値の向上と持続的成長に向けて取り組んでいます。

 

(a)人材育成について

 当社グループは、最先端の「ソリューションSoC」ビジネスを通じて、ステークホルダー(お客様、パートナー、従業員、地域社会等)の様々な期待/要望にお応えするため、最先端技術を追求することで、世界のイノベ-ションを支える会社として持続的な成長を目指しており、そのために必要となる、仕事にオーナーシップを持ち、自律的/意欲的にあるべき姿にチャレンジするプロフェッショナルな人材の育成に取り組んでいます。

 

〔エンジニア育成〕

(ⅰ)求める人材の明確化

 当社グループは、エンジニアの育成を重要な経営課題の一つと考えています。

 当社グループは、中期事業計画において、AD(自動運転)/ADAS(先進運転支援システム)や車載センシング等の「オートモーティブ」、データセンターやAIアクセラレータ等の「データセンター/ネットワーク」、アクションカメラやネットワークカメラ等の「スマートデバイス」、FA(Factory Automation)機器や計測器等の「産業機器」の各領域を中心に事業規模の拡大を計画しています。

 これらの事業領域において、お客様は、SoCのアーキテクチャに対する知識はもとより、SoCが搭載される最終製品やサービスに関する高い知見、および差別化を可能とする先端のハードウエアからソフトウエアにいたるまでの技術を組み合わせて、最適なソリューションを提案できるパートナーを求めています。このような「ソリューションSoC」ビジネスモデルの実現には、以下のようなエンジニア人材が必要になると考えます。

- グローバルに開発競争力を維持し続けるためのメソドロジスト

- お客様の要求に基づき最適なSoCアーキテクチャ仕様を提案/策定できるシステムアーキテクト

- アーキテクチャ仕様から実装仕様作成、設計を行える各分野のエキスパート

- お客様からの信頼を得て、開発を円滑にゴールに導くプロジェクトマネジャー

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(ⅱ)求める人材に必要となるスキルの明確化

 必要とされるエンジニア人材の拡大を図るために、当社グループは、必要なスキルおよび経験を明確に定義し、エンジニア一人ひとりが保有するスキル等の可視化に取り組んでいます。

 

<エンジニアロールモデルとスキル/重要度のマトリックス>

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(ⅲ)スキル習得に向けた人材育成プログラム

<エンジニア育成のロードマップ>

 当社グループは、エンジニア育成の一環として、エンジニア一人ひとりが上司との1on1面談を実施する制度を設けており、自身のキャリアパスおよびその実現に向けた具体的なアクションを共有することで、個人の成長をサポートしています。また、エンジニア一人ひとりが求められる人材に必要なスキルおよび経験を確実に身に付けるために、エンジニアのレベルに応じた教育プログラムを策定/実践しています。さらに、海外のお客様、海外パートナーとのビジネスを進めていくうえで欠かせない語学/コミュニケーションスキルについても、教育支援体制を強化しています。

 

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(※) 語学/コミュニケーションスキル育成のプログラム

リーダー層向け

・コミュニケーションスキル上級(1on1研修)

・グローバルマインド研修(グループ研修)

・グループコーチング研修

一般社員向け

・コミュニケーションスキル初級(グループ研修)

・グローバルマインド研修(グループ研修)

・英語運用力研修

・新入社員向け語学研修(グループ研修)

全社員共通

・基礎英語力強化(語学研修アプリ)

 

<エンジニア教育の実施状況>

 

2023年

3月期

2024年

3月期

2025年

3月期

総教育時間(時間)

21,000

19,500

18,900

エンジニア

一人あたり

教育時間(時間)

14.4

13.2

12.8

投資額(万円)

1.45

2.04

2.87

 

(ⅳ)人材育成に関する指標/実績

 中長期的には、さらなる海外商談の増加、最新の技術を提供するIPベンダーやツールベンダー、ファウンドリ、OSAT等のグローバルなパートナーとの協働が増加していくことが見込まれます。これらに対応していくために、多くのエンジニアに対し戦略的に海外ビジネスや先端テクノロジービジネスに参画する機会を増やし、エンジニアが得たノウハウ/経験を組織として蓄積/活用することを進めています。また、教育プログラムへのフィードバックも行い、教育プログラムの見直しを継続的に進めています。

<エンジニアのプロジェクト経験状況>

 

2023年

3月期

2024年

3月期

2025年

3月期

2030年までの目標

グローバルプロジェクトの
経験人数比率(%)

72

82

87

Over 90

先端プロジェクト(7nm以細)の
経験人数比率(%)

61

75

82

Over 90

 

 これらの人材育成への取り組みによって、当社の基準を満たしたエンジニア(メソドロジスト、システムアーキテクト、エキスパート、プロジェクトマネジャー)は基準となる2023年3月期からそれぞれ増加しています。特にメソドロジストについては、リソースシフトおよび人材育成などの施策によって125ポイントの増加となりました。今後も前年比での指数改善を目標に掲げ、さらなる取り組みの加速を図ります。

<基準を満たしたエンジニア>※2023年3月期の人員を基準(100)とした指数

 

2023年

3月期

2024年

3月期

2025年

3月期

目標

メソドロジスト

100

200

225

前年比での指数改善

システムアーキテクト

100

118

141

前年比での指数改善

エキスパート

100

101

105

前年比での指数改善

プロジェクトマネジャー

100

97

115

前年比での指数改善

 

(b)人権/ダイバーシティ&インクルージョン/安全衛生/健康推進について

 当社グループは、一人ひとりのライフスタイルやキャリアプランを尊重し、健全な労働環境の構築に取り組むことで、過重労働の抑制やストレスの軽減を図り、従業員の心身の健康を維持しつつ、より良い働き方を実現する企業風土/文化の醸成に努めています。

 また、当社グループは、社員の健康を重要な経営資源と位置づけ、健康増進施策の推進やワークライフバランスの最適化を通じて、組織の生産性向上と持続的な成長を目指しています。健康経営を積極的に実践することにより、社員のエンゲージメント向上を図るとともに、企業ブランドの強化、イノベーションの創出、さらには社会への貢献につなげていきます。

 

〔基本的な考え方〕

人権

当社グループでは、グループ理念である「CSR基本方針」において、「人権の尊重」および「社員の労働環境整備」を重要な責務として掲げています。

-人権の尊重

私たちは一人ひとりの人権を尊重し、差別等の人権侵害行為を許しません。

-社員の労働環境整備

私たちは社員の幸せを目指し、個性を尊重し、公平な処遇を実現するとともに、健康で働きやすい環境をつくります。

当社グループは事業活動に関わるすべてのステークホルダー(お客様、パートナー、社員、地域社会の皆様等)の人権を尊重し、性別、年齢、国籍、人種、民族、思想、宗教、社会的身分、雇用形態、婚姻状況、妊娠状況、門地、性的指向や性自認、身体的特徴、疾病、障がい等による差別的取り扱い/人権侵害を行いません。

また、当社グループやサプライチェーンで働く人々に対しては、一人ひとりの人権を尊重します。ハラスメントを排除し、健康で安心して働くことができる職場環境を提供するとともに、最低賃金や労働時間の法規制を遵守し、強制労働や、児童労働、人身売買を行いません。また、結社の自由と団体交渉権、プライバシーの権利を保護します。

ダイバーシティ
&インクルージョン

当社グループは、様々な個性、考え方、価値観をもった社員一人ひとりが、働きやすく、能力を発揮することができる企業風土、文化の醸成に努めます。当社グループは国籍/性別/年齢等を問わず人材採用と登用を行い、かつ、多様な人材が生き生きと働くことのできる社内環境整備を推進します。

安全衛生/健康推進

当社グループが持続的に成長するため、社員が健康かつ安全に働き、自らの持てる力を最大限発揮できるように、社員と関係者の健康と安全を最優先して事業を展開します。労働災害の無い安全な職場を実現するため、事故防止、安全に働ける環境づくりを行うとともに、健康経営の推進により社員のエンゲージメント向上/健康維持/増進を図り、企業価値の向上に向けた様々な取り組みを推進します。

 

〔主な取り組み〕

人権・ダイバーシティ&インクルージョンに関する諸制度・取り組み

人権相談窓口の設定

人権教育(ハラスメント防止、LGBTQ+への理解含む)の全従業員受講

コアなしフレックスタイム勤務制度

在宅勤務の柔軟運用

長時間残業の抑制


 

グローバル人材の採用と支援
(新卒の10月入社、グローバルコミュニケーション研修プログラム等)

定年後再雇用制度の見直し

育児休暇制度/育児時短勤務制度

ベビーシッター費用補助

看護、介護のための在宅勤務制度

疾病、疾患の治療のための短時間勤務制度

休職制度(チャイルドプラン、介護等)

積み立て休暇制度(看護、子育て、介護等)

障がい者の継続的な採用と環境整備

視覚障がい者によるマッサージルーム運営

精神障がい者による社内業務代行制度

障がい者への環境整備アンケートの実施と改善

安全衛生/健康推進に関する諸制度・取り組み

健康診断、婦人検診、ストレスチェックの実施

禁煙サポート

感染症予防対策

安全衛生防災委員による職場巡視

安全衛生教育の全従業員受講

 

②人的資本に関する指標と目標(単体ベース)

 当社グループは、主要な取り組みについて目標を設定するとともに、その目標に対する進捗状況を管理しています。

戦略

指標

実績

目標

2023年3月期

2024年3月期

2025年3月期

人材育成

(エンジニア)

グローバルプロジェクトの経験人数比率

72%

82%

87%

Over 90%

先端プロジェクト(7nm以下)の経験人数比率

61%

75%

82%

Over 90%

人材
育成
への
投資

エンジニア一人当たりの研修時間

(全従業員)

14.4H

(11.8H)

13.2H

(11.3H)

12.8H

(11.7H)

-

エンジニア一人当たりの投資額

(全従業員)

1.45万円

(1.25万円)

2.04万円

(1.76万円)

2.87万円

(2.59万円)

-

メソドロジスト
育成度(指数)

100

200

225

前年比での指数改善

システムアーキテクト
育成度(指数)

100

118

141

前年比での指数改善

エキスパート
育成度(指数)

100

101

105

前年比での指数改善

プロジェクトマネジャー育成度(指数)

100

97

115

前年比での指数改善

ダイバーシティ&インクルージョン

(人材確保/リテンション)

採用人数

新卒:12人
キャリア:32人

新卒:26人
キャリア:39人

新卒:36人
キャリア:32人

2025年3月期実績以上の採用を継続

定年後

再雇用率

90.9%

89.3%

83.5%

-

離職率(※2)

2.1%

1.9%

2.4%

2.5%未満

ダイバーシティ&インクルージョン

(人権/コンプライアンス)

管理職

女性比率

2.3%

2.6%

2.6%

3.4%以上
(※1)

新卒入社の

女性比率

0.0%

7.7%

16.7%

15%以上
(※1)

外国籍

社員比率

2.2%

2.0%

2.2%

-

障がい者

雇用率

2.3%

2.4%

2.4%

2.5%以上

法定障がい者雇用率以上

労働者の男女の

賃金の差異

全労働者:
71.6%

正規:
72.6%
非正規:
61.3%

全労働者:
71.6%

正規:
72.5%
非正規:
62.7%

全労働者:
73.4%

正規:
74.7%
非正規:
61.8%

社員の働きやすさ/働きがい/活躍を支援する仕組み/制度を充実させると共に、資質ある社員を性別/年齢に関係なく、相応の上位職へ昇格させる等の取り組みにより改善を図っていく。

(賃金制度上、同一資格等級での性別/年齢の賃金差異はないが、上位職位/資格等級に占める女性の割合が少ないことが差異の主な理由であるため)

労働者の男女の

賃金の差異(管理職)

95.4%

91.6%

95.4%

サプライチェーンデュー・デリジェンス実施率

-

80.2%

95.2%

調達金額ベースで全取引先の80%以上の回答入手

コンプライアンス教育e-Learning
受講率
(※3)

100%

100%

100%

100%

ダイバーシティ&インクルージョン

(ワークライフバランス)

育休取得率(男性)

15.8%

57.1%

93.3%

50.0%
(※1)

育休取得率(女性)

100%

100%

100%

100%

復職率

100%

100%

100%

100%

年間総実労働時間

2,165時間

2,099時間

2,016時間

2,000時間未満を目標とし、段階的な削減を図る(各年度、前年比1%減)

有給休暇取得率

74.1%

75.3%

75.4%

70.0%

欠勤率

0.60%

0.77%

0.80%

-

リモートワーク適用比率(※4)

100%

100%

100%

-

安全衛生

健康推進

アブセンティーイズム(※5)

0.60%

0.77%

0.80%

-

ワークエンゲージメント(※6)

2.41

2.37

2.40

-

ストレスチェック実施率

85.8%

83.2%

87.2%

100%

重大労働災害・事故件数

0件

0件

0

0

従業員エンゲージメント

従業員満足度

eNPS(※7)

-

-69

-67

業界平均以上(-68)

 

※1:

女性活躍推進法に基づき策定した一般事業主行動計画で示した目標です。

※2:

正規従業員における自己都合退職者の比率です。

※3:

コンプライアンス教育のe-Learningには以下が含まれます。

コンプライアンス、情報セキュリティ、インサイダー取引防止、ハラスメント防止、環境、購買取引、安全保証輸出関連法令等

※4:

対象者(一部の職種を除く全社員)は、リモートワークを週3回まで利用することが可能であり、

フレキシブルに勤務場所を選択し効率的に働くことに努めています。

※5:

病欠、病気休業している状態で、傷病および外傷休業延日数÷在籍労働者の延所定労働日数で算出しています。

※6:

仕事に関連するポジティブで充実した心理状態で、新職業性ストレス簡易調査票にて算出した数値です。

※7:

eNPSは「Employee Net Promoter Score」の略で、従業員のエンゲージメント(貢献意欲/信頼関係)を数値化する手法の一つです。

当社は2024年3月期より、国内従業員に対して、株式会社リクルート様が運営するサーベイツール「Geppo」を用いて、エンゲージメントサーベイを年1回行っています。なお、業界平均とは同ツールを利用する電子部品/デバイス/電子回路製造業の業界平均となります。

 

(7)サプライチェーン全体での取り組み

 当社グループは、サプライチェーン全体でサステナビリティを高めていくことが重要だと考えています。当社グループのみならず、パートナーにも当社グループの方針をご理解いただき、持続可能な調達活動を支援していただくことが不可欠であるとの認識のもと、サプライチェーンCSRの強化の取り組みの手段として「当社グループCSR調達ガイドライン」を策定しています。

 本ガイドラインにて「人権、多様性、気候変動」等を含むRBA行動規範(※)に則り遵守項目を明確に示すとともに、パートナーに対してもCSR活動への取り組みを要請しています。また、パートナーにおけるCSR活動の実施状況を確認するため、「CSR全般、環境活動、情報セキュリティ、BCM、責任ある鉱物調達」等に関する定期的な調査を実施しています。この調査結果を踏まえ、必要に応じてパートナーに対して改善に向けたフィードバックを行う等、最適なサプライチェーンの構築に取り組んでいます。

Responsible Business Alliance 行動規範の略語です。

 

 

①パートナーに対するCSR調査

 「CSR調査」は、当社グループのパートナーにおけるCSR上のリスクを把握し、改善を促すことを目的として実施しています。本調査では、当社グループの方針およびグローバルに広く使用されるRBA行動規範に基づき、取引において重要と考える以下のカテゴリーについて評価を行います:「法令遵守」、「人権/労働」、「安全衛生」、「環境」、「公正取引/倫理」、「品質/安全性」、「情報セキュリティ」、「事業継続」、「マネジメントシステム」。

 評価結果はA~Dの4段階に分類し、Dランク(ハイリスク)と判定された場合は、当該取引先に対して是正を求めるとともに、必要に応じて支援を実施します。また、CSR調査にご回答いただいたパートナーには評価結果をフィードバックし、各カテゴリーにおいて取り組みが不足していると判定された場合は、指摘事項を報告のうえ、次回調査までの改善を要請しています。なお、是正がなされなかった場合は、取引の見直し等の対応を実施します。

〔2025年3月期 CSR調査結果(購入金額ベース)〕

 

2024年3月期

2025年3月期

Aランク

79.5%

93.0%

Bランク

0.7%

1.9%

Cランク

0.0%

0.2%

Dランク

0.0%

0.0%

合計

80.2%

95.1%

 

②責任ある鉱物調達に関するデュー・デリジェンス

 当社グループは、サプライチェーンにおける、いかなる人権侵害や環境破壊も容認しません。責任ある鉱物調達が解決すべき社会課題であるとの認識のもと、当社グループとしての「責任ある鉱物調達の方針」「推進体制」「調達プロセス」を策定/構築し、RBA/RMI(※1)などのグローバルな規範に則った調達活動を進めており、毎年、CMRT(※2)/EMRT(※3)調査を通じて得られた結果に対してデュー・デリジェンスを行い、リスクの特定と改善の取り組みを進めています。

※1

Responsible Minerals Initiative の略語です。

※2

Conflict Minerals Reporting Template の略語です。

※3

Extended Minerals Reporting Template の略語です。

 

〔2025年3月期 調査結果:3TG(金、タンタル、スズ、タングステン)〕

・調査対象のパートナー:19社

・調査回答入手のパートナー:19社(入手率100%)

・特定した製錬/精製業者:全鉱物で221社(うちRMIのRMAP認証を取得している業者は215社)

 

3TG

2025年度3月期(19社)

合計

タンタル

スズ

タングステン

製錬所/精製所総数

221

90

33

66

32

RMAP認証取得(コンフリクトフリー)製錬所/精製所数

215

86

33

65

31

RMAP Active 製錬所/精製所数

1

1

-

-

-

その他RMI認定 製錬所/精製所数

5

3

-

1

1

RMAP認証取得 製錬所/精製所率

97%

96%

100%

98%

97%

調査票回収率

100%

-

-

-

-

 

 

〔2025年3月期 調査結果:コバルト/マイカ〕

・調査対象のパートナー:11社

・調査回答入手のパートナー:11社(入手率100%)

・特定した製錬/精製業者:全鉱物で53社(うちRMIのRMAP認証を取得している業者は44社)

 

コバルト/マイカ

2025年度3月期(11社)

合計

コバルト

マイカ

製錬所/精製所総数

53

49

4

RMAP認証取得(コンフリクトフリー)製錬所/精製所数

44

41

3

RMAP Active 製錬所/精製所数

-

-

-

その他RMI認定 製錬所/精製所数

9

8

1

RMAP認証取得 製錬所/精製所率

83%

84%

75%

調査票回収率

100%

-

-

 

(8)人的資本に関する外部機関からの評価

 当社グループは、人的資本の最大化に向けた取り組みに対して、外部機関による評価を積極的に受審しています。この評価結果をもとに、さらなる施策の強化を図っています。

 

[日本経済新聞社「第8回日経スマートワーク経営調査」で3つ星に認定]

日本経済新聞社主催「第8回日経スマートワーク経営調査」の総合ランキングにおいて3つ星に認定されました。本調査は人材を最大限に活用するとともに、人材投資を加速させることで新たなイノベーションを生み出し、生産性を向上し、企業価値を最大化させることを目指す先進企業を選定するもので、全国の上場企業と有力非上場企業を対象とし、人材活用、人材投資、テクノロジー活用の3要素によって星5段階で評価されます。

当社グループは、評価対象分野のなかでも、特に「人材戦略とKPI」「多様で柔軟な働き方」への対応が評価されました。

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[「S&P Global CSA 2024」で半導体セクター上位11%のスコアを獲得]

ESG投資分野の世界的な調査/評価会社である米国のS&P Global社では、世界の企業を対象に、経済/環境/社会の3つの側面に関する評価(CSA:Corporate Sustainability Assessment)を実施し、サステナビリティに優れた企業を毎年選定しています。

当社グループは、CSAスコア53点を獲得しました。これは、半導体セクターにおいて上位11%の評価となっています。評価対象分野のなかでも、特に「製品品質」、「サプライチェーンマネジメント」および「人的資本の最大化」への対応が評価されました。

0102010_020.png

 

 

3【事業等のリスク】

 有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財務状態、経営成績およびキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであり、将来において発生の可能性があるすべてのリスクを網羅するものではありません。

 

・リスクマネジメントに関する基本的な考え方および体制について

当社グループがグローバルに事業活動を展開していく上で、複雑かつ多様なビジネス環境の変化によって生じるあらゆるリスクを早期に把握し、適切な対策を講じることが、当社グループの経営戦略/事業戦略の実現に必要不可欠であると考えています。

当社グループでは、組織的かつ継続的にリスクの抽出/評価を行い、抽出されたリスク項目ごとに主管役員を選任し、対応案の策定と実行を進めています。
 また、これらの取り組みに関して、定期的に取締役会への報告を行い、想定しているリスクの網羅性、各種対策の有効性および進捗状況等について確認する体制を構築し、リスクの発生可能性/損失規模の低減に向けてリスクマネジメントの強化に取り組んでいます。

 

・経営/事業を取り巻くリスク

(1)製造委託先について

 当社グループは、経営資源を設計/開発業務に集中し、製品の生産を外部に委託するファブレスという事業形態を採用し、多くの資金が必要となる生産設備投資に制約されることなく事業を推進しています。生産は国内外のファウンドリおよびOSATといった製造委託先に分散して委託しておりますが、かかる事業形態に関して以下のようなリスクがあります。

 

①製造委託先が限定的であることについて

 当社グループは台湾、日本、中国、シンガポールおよび韓国等の製造委託先に半導体の製造を委託しています。当社グループの取扱う最先端テクノロジー品や、車載品等の高い品質・信頼性を要求される製品については、その技術力等から製造委託先が限定される場合があり、特に半導体製造の前工程においてはTSMCに多くの製造を委託しています。当社グループの顧客への製品の供給は、製造委託先の方針、技術力や製造キャパシティの制約による影響を受けています。急速に技術革新が進む半導体業界において製造委託先が技術革新に乗り遅れた場合や、原材料や燃料価格の高騰が生じた場合の他、需要が急速に伸び製造キャパシティが不足する場合には、当社グループによる当該製造委託先への委託が困難となる可能性があります。そのような場合に、契約条件、事業上の関係性又は顧客の意向といった制約により、当社グループにおいて適時に合理的な条件で新たな製造委託先を確保できる保証はありません。さらに、製造委託先において、半導体製造のために必要な水、エネルギー又は廃水処理能力の不足による制約が生じる場合、当社グループの製品の供給に遅延が生じる可能性があります。

 当社グループは、複数の製造委託先を確保する等、不測の事態に備えてはいますが、半導体業界に固有の急速な業界環境の変化、地政学的な要因や技術革新等により将来の需要予測には限界があり、製造キャパシティの制約に起因して製品の供給に遅延や中断が生じる可能性があります。その結果、製品売上の減少、当社グループの評判の悪化、顧客からの損害賠償請求等、当社グループの事業、財政状態および経営成績に悪影響が生じる可能性があります。

 

②製造委託における価格について

 当社グループの製造委託先は限定されており、また、製造委託先との間で長期的な製造委託契約を締結しているわけではないことから、製造キャパシティの制約、原材料や燃料価格の高騰、人件費、為替変動その他の理由による製造委託費の値上げの影響を大きく受けることとなります。製造委託先による値上げがあった場合、顧客と製品価格の見直しについて適時交渉を行いますが、製品価格に適切に転嫁できない場合には、当社グループの利益率が大きく低下することとなり、当社グループの事業、財政状態および経営成績に悪影響が生じる可能性があります。

 

③製品の品質について

 当社グループの製品については、製造委託先の責任による歩留の低下や製品の欠陥が生じる可能性があります。これらの問題は製造過程の初期段階では発見することが困難であり、その改善に多くの時間や費用を要する可能性があります。また、このような場合に、他の製造委託先や製造拠点への移管を行おうとしても、対応可能な製造委託先等が存在しない等移管が困難である可能性や、移管に多くの時間や費用を要する可能性があります。

 当社グループの製品に歩留の低下や製品の欠陥その他の製造に関する問題が生じた場合には、顧客への製品の供給に遅延が生じ又は供給ができないことやプロジェクトが中止となること等により、顧客から損害賠償請求を受ける可能性があります。仮にかかる請求が認められない場合でも、その対応には多くの時間や費用が必要となります。また、製造委託先の責任に起因する場合でも、製造委託先に対して費用償還を求めることが困難な可能性もあります。これらにより、当社グループの事業、経営成績、財政状態、ブランドイメージおよび社会的信用に悪影響が生じる可能性があります。

 

(2)当社グループの製品の設計開発について

 当社グループの製品については、商談を獲得したのち、製造に向けた設計/開発を行うこととなります。設計/開発から顧客の評価完了までは2年以上という長期間にわたる可能性があるため、その間に生じる半導体や最終製品の市場環境および顧客の戦略/需要の変化、新規技術の発明/市場への導入、製造委託先の製造キャパシティや繁忙状況の変化といった事象の影響を受け、顧客による仕様変更等に起因してプロジェクトが延伸、または中止となる可能性があるほか、顧客の要求水準を満たす製品の開発や顧客が受入可能な価格および数量での製造に成功しない可能性もあります。設計/開発段階でプロジェクトが中止となった場合、予定していた製品売上は一切受領できないこととなります。

 また、当社グループは設計/開発段階において、一般的に顧客から設計/開発に要する費用の大半をNRE売上として段階的に受領しておりますが、上記のように設計/開発段階でプロジェクトが中止された場合には、残りの期間のNRE売上を収受できない可能性があるうえ、NRE売上は設計/開発段階で生じる費用の全てをカバーしない場合があるため、プロジェクトによっては損失が生じる可能性もあります。また、製品売上が当社グループの売上の大半を占め、当社グループの注力分野ではプロジェクトごとの規模が大きくなる傾向にあり、特定のプロジェクトにおける製品の価格もしくは数量の変更又はプロジェクトの延期や中止による当社グループの将来の経営成績への影響が大きくなります。従って、重要なプロジェクト又は複数のプロジェクトが設計/開発段階で中止となった場合には、当社グループの事業、財政状態および経営成績に重大な悪影響が生じる可能性があります。

 

(3)当社グループの製品の量産化について

 設計/開発が完了した場合、製品の量産段階に進むこととなりますが、商談獲得段階では製品単価については顧客との間で合意している(但し、仕様変更により変更される場合があります)ものの、製造数量については合意しておらず、量産段階における顧客からの個別の発注により確定することとなります。そのため、当社グループが商談獲得時に予測した数量の製品を顧客が量産時点において購入する保証はありません。従って、当社グループが当初想定していた数量について製品の量産化が行われない場合には、当社グループの事業、財政状態および経営成績に悪影響が生じる可能性があります。

 

(4)当社グループの経営指標について

 上記「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (3) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等」に記載のとおり、当社グループは「商談獲得金額」および「商談獲得残高」を重要な経営指標としております。商談獲得金額および商談獲得残高の算出には、製品の販売可能期間および受注が中止される可能性に関する見込みのほか、開発計画、開発コスト、NRE売上、製品単価および将来の製品の販売数量(なお、価格については、仕様変更による変更はありうるものの、商談獲得段階で合意されます。)に関する仮定および見込みを含む当社グループによる将来の予測や主観的判断が相当程度考慮されています。製品の販売数量は、顧客から提示された初期的な数量見込みのほか、顧客との過去の取引履歴や第三者による市場データその他の情報に基づく当社グループ独自の予測、第三者による市場データその他の情報を基礎として判断したものですが、製造委託先の受注制限等、製造キャパシティによる制約は考慮していません。このように商談獲得金額および商談獲得残高の算出は当社グループ独自の方法により行われているため、他社が用いる同種の指標との比較は適切でない可能性があり、当社グループと他社の現在および将来の業績の比較において当該指標に依拠することもできません。当社グループは、商談獲得金額および商談獲得残高が過大な見積りとならないよう、モニタリング部門によるレビューおよび経営陣による承認に関する社内手続を定めていますが、かかる手続が有効である保証はありません。また、ある期間に獲得された商談獲得金額は、かかる期間の末時点における当社グループの仮定および見込みを反映したものに過ぎず、その後の案件の中止、かかる案件に関連して実際に計上された売上、又は開発プロセス、当社グループによる将来の製品販売数量の見込み、製品単価、製造キャパシティ、その他事後的に発生する要因の変更に基づき更新することはしておらず、年度ごとの比較が適切でない可能性があります。商談獲得残高は月次でこれらの情報を考慮し更新していますが、更新時点における見積もりであることに変わりはなく、かかる見積もりが正確である保証はありません。当社グループは商談獲得金額および商談獲得残高の算出方法を将来変更する可能性があり、また、過去にも変更しています。

 以上のような制約により、商談獲得金額および商談獲得残高は当社グループの将来予測される業績を示すものではなく、実際の売上と大きく異なる可能性があります。

 

(5)事業計画等の前提となる事項について

 当社グループは、日々変化していく市況に対応し、持続的な成長を遂げていくため、事業計画の策定と実行、組織強化を目的とした各種施策を遂行しております。これら事業計画および各種施策の策定においては、半導体および最終製品の市場動向その他の経営環境について一定の前提を置いており、かかる前提には、例えば、当社グループが成長性のある注力分野において引き続き商談を獲得していくこと、商談獲得金額および商談獲得残高がその需要予測に従いNRE売上および製品売上として実現されること、製造委託先における製造キャパシティの確保が当社グループの想定どおりに実現されること、並びに為替変動が一定の範囲に収まること等が含まれます。しかしながら、これらの前提が現実と異なる場合には、当社グループの事業計画における各種施策の遂行および経営指標の達成が困難となり、当社グループの事業、財政状態および経営成績に悪影響が生じる可能性があります。

 

(6)主要顧客について

 当社グループは、「オートモーティブ」、「データセンター/ネットワーク」、「スマートデバイス」および「産業機器」等の分野において商談を獲得しており、今後当該分野の主要顧客への売上の割合が高くなることが予想されますが、主要顧客への売上は、商談の獲得時期および規模並びに当該商談から得られた製品売上、当社グループの顧客基盤の多様化、消費者の嗜好の変化、業界の動向、法規制の変更、自然災害その他の要因により、大きく変動する可能性があります。当社グループにおける顧客との取引は、個別の発注に基づいており、顧客は長期的な購入義務を負わず、顧客が当社グループの期待する数量の製品を購入する保証はありません。主要顧客が最終製品の市場への投入を延期又は中止し、また、当社グループの製品の機能/性能、又は開発スケジュールが主要顧客の要求水準を満たさない場合には、当社グループの製品の採用を中止する可能性があります。主要顧客は、当社グループの製品を組み込んだ最終製品の売れ行きが芳しくない場合、当社グループの製品の発注数量を減少させ、又は納入期日を延期することがあります。さらに、当社グループの主要顧客が、競争力の低下又はM&Aや提携を契機として、当社グループの製品の購入量を減少し、また、当社グループとの契約条件が主要顧客に有利なように改定される可能性があります。これらにより、当社グループの事業、財政状態および経営成績に悪影響が生じる可能性があります。

 

(7)海外での事業活動について

 当社グループは、顧客が世界の様々な地域に所在していることから、米国、欧州およびアジアの主要エリアに営業拠点を有しており、各地域の特色に合わせた営業活動を行っております。海外で事業活動を行うにあたっては、地政学上のバランス、各国の政治/経済情勢、海外輸送/生産の遅延やコストの上昇、為替の変動、外資規制/知的財産権等に関する法規制の新設又は変更、税制の変更等のリスクが存在すると考えております。これらのリスクが顕在化することにより、当社グループの事業、財政状態および経営成績に悪影響が生じる可能性があります。

 

(8)経済情勢について

 当社グループは、グローバルな景気動向、最終製品の需要変動、技術革新、製品の陳腐化や価格の下落、半導体市場の市況変動の影響を受けております。足元では、米国新政権の発足に伴う関税政策等の新政策の導入や米中摩擦のさらなる激化などにより経済情勢の先行きをますます不透明にしています。また、近年はAI/データセンター向け半導体を中心に需要が高まりを見せていますが、かかる需要が今後も同水準で成長又は継続する保証はありません。経済情勢の停滞/減退局面においては、当社グループの事業、財政状態および経営成績に悪影響が生じる可能性があります。

 

(9)為替レートの変動について

 当社グループは、設計開発/製造/販売活動をグローバルに展開しており、多くの収益を海外から得ているため、米ドルを中心とする為替レートの変動に伴う影響を受けます。当社グループは為替レートの変動の影響を軽減するよう対応に努めていますが、かかる影響を完全に排除することはできないため、為替レートの変動状況によっては、外貨建取引の売上高、外貨建の設計開発や製造販売コスト等への影響により、当社グループの経営成績および財政状態に悪影響が生じる可能性があります。

 

(10)競合について

 当社グループによるカスタムSoCの開発/供給は独自のビジネスモデルであり、直接的な競合先は少ないと認識しているものの、個別の商談獲得においては、従来型のASIC、汎用的なASSPおよびASSPをベースにカスタマイズされたASICが競合しており、それらのベンダーとは競合関係にあります。

 当社グループの半導体製品およびサービスは、主に先端テクノロジーを必要とする各種エレクトロニクス製品に採用されておりますが、当該分野は技術革新の速度が速く、激しい市場競争に晒されております。競合他社の設計/開発能力の向上、異業種からの新規参入、巨大テック企業によるSoCの自社開発の拡大、従来型のASICや汎用的なASSPのベンダーによる開発の動向、顧客の嗜好/需要、各国政府による自国企業の優遇措置、競合他社間の統合/提携により、競争がさらに激化する可能性があります。また、当社グループの注力分野のうち、「オートモーティブ」においては、現状当社グループは優位な地位にあると認識しておりますが、技術革新/他社の積極的な攻勢等によりその地位を維持できない可能性があります。他方、データセンターやネットワーク等の既存市場ではより厳しい競争状況にあるところ、当社グループは顧客との共同開発を通じて顧客にとってより最適なカスタムSoCを提供することができるという強み、先端分野への研究開発投資および多様な製品の提供を通じてより多くの商談を獲得することを目指しておりますが、そのような施策が奏功する保証はありません。

 

(11)地政学リスクについて

 当社グループが開発/販売する半導体は、近年経済安全保障上重要な製品と認識されております。米中対立、ロシアによるウクライナ侵攻、中東地域の不安定化等の地政学リスクの顕在化により、各国が輸出管理規制、関税や制裁措置等を発動/強化した場合、当社グループの主要な販売地域における当社グループの製品に対する需要の減退、競争力の低下、又はサプライチェーンの寸断や遅延が生じ、当社グループの事業、財政状態および経営成績に悪影響が生じる可能性があります。当社グループにおける中国での売上高が一定規模を占めていることや当社グループがTSMCに多くの製造を委託していることから、これらの地域における地政学リスクが顕在化した場合には、当社グループの事業、財政状態および経営成績に重大な悪影響が生じる可能性があります。

 

(12)研究開発活動について

 当社グループが属する半導体業界は技術革新の速度が速く、既存技術の陳腐化、それに伴う新たな市場の創出および既存市場の縮小が急速に起こる可能性があります。このような業界で、日々高まる顧客の要求水準を満たす新製品を開発し顧客が受入可能な価格および数量で製造するためには、多額の研究開発費用を要し、かかる費用が商談獲得や将来の製品売上に繋がらない場合には損失を被る可能性があります。当社グループは今後も積極的な研究開発活動を行う予定ですが、このような技術革新に当社グループが対応できず、当社グループの市場シェアや製品価格が低下する場合や、研究開発を効率化できず研究開発費用が増加する場合には、当社グループの事業、財政状態および経営成績に悪影響が生じる可能性があります。

 

(13)感染症の世界的な拡大に係る影響について

 当社グループ、当社グループの製造委託先およびサプライチェーンにかかわる取引先が事業を行っている台湾等の地域において、新型コロナウイルス感染症その他の感染症の感染拡大により事業活動等が禁止/制限されるような事態に陥った場合、製造委託先の工場閉鎖や生産停止およびそれらに伴う製造/輸送の遅延、部材調達の制限等の予期できない事象により、当社グループの製品に対する需要の減少や供給能力に対する制約を受ける可能性があります。また、それらに伴う当社グループの取引先の経営状態の悪化、通信/金融/サプライチェーンを含む公共および民間のビジネスインフラの混乱等が生じる可能性もあります。

 

(14)災害等による影響について

 当社グループは日本のみならず、世界各地で設計開発/販売活動を行っており、当社グループが事業を展開する各地域において大規模な地震、津波、干ばつ、暴風雨、洪水、大雨、噴火その他の自然災害や火災、停電、感染症の流行、戦争/紛争、テロ行為や政治/社会騒動、セキュリティ侵害又はコンピュータ関連システムの障害その他の事故/事件等が発生した場合、当社グループの事業拠点、当社グループの製造委託先、取引先、顧客およびサプライチェーンに関係する当事者に対して大きな被害が発生する可能性があります。特に、当社グループは、台湾に本拠を置くTSMCに多くの製造を委託しているため、これらの災害等が台湾において発生した場合、当社グループの製品の製造および供給に悪影響が生じる可能性があります。

 当社グループにおいては、リスクの予防/回避および発災時の人命の安全、並びに被害の抑制/軽減、二次災害の防止、早期の業務再開を図ることを目的に事業継続に関する規範/規程類を定めており、リスクの軽減に向けた施策を実施しておりますが、かかる施策が奏功しない可能性があり、その場合には、当社グループの事業、財政状態および経営成績に悪影響が生じる可能性があります。

 

(15)資金調達について

 当社グループにおいては、新技術や新製品のための研究開発への継続的な投資が必要となります。当社グループは、これまで必要な資金を主に営業活動から得られるキャッシュ・フローにより賄ってきましたが、業績、資金需要や市場環境並びにこれらの見込みにより資金調達を検討することがあります。しかしながら、当社グループの将来的な資金需要に必要な資金を、適時かつ受入可能な条件で調達できる保証はありません。また、金融市場の混乱、日本銀行を含む各国中央銀行の金融政策の変更、半導体業界の低迷、金融機関の貸付方針の変更、当社グループの信用力の低下等により、当社グループに有利な条件で資金調達をできない可能性もあります。これらの結果、資金調達コストが増加する可能性や、研究開発や必要となる各種投資を適時かつ適切な範囲で実施できない可能性があります。

 

(16)M&A/提携協業等について

 半導体業界では、M&Aや提携が頻繁に行われており、当社グループにおいても、技術や大口顧客の獲得、事業領域の拡大、競争力の強化や収益力向上を図るため、M&Aや提携を実行する可能性があります。しかしながら、当社グループが適切な対象会社や提携先を発見できる保証はなく、また、デュー・デリジェンスで重大な問題点を検出できない可能性や、競争法その他の法規制による事業活動への制約等により当初期待した効果が得られない可能性があります。このような場合には、保有株式やのれんの減損が生じ、当社グループの事業、財政状態および経営成績に悪影響が生じる可能性があります。

 

(17)知的財産について

 当社グループは他社製品と差別化を図るための様々な技術やノウハウを開発/保持しております。当社グループでは、これらの技術やノウハウを知的財産として保護しており、知的財産が流出/不正利用されることのないよう、専門部門で管理するとともに、顧客/パートナー/従業員との秘密保持契約の締結や、第三者によるオフィス/施設へのアクセスの管理等の施策を講じております。しかしながら、知的財産に対する十分な保護が得られない地域もあり、かかる施策にかかわらず、当社グループの知的財産が競合他社により不正に取得又は利用される可能性があります。

 また、当社グループの製品には第三者からライセンスを受けて開発/販売しているものがありますが、今後第三者から必要なライセンスを受けられなくなる可能性や、引き続きライセンスを受けられるとしても従前より不利な条件でしかライセンスを受けられない可能性があります。さらに、半導体業界では、多数の特許が存在し、また多数の新たな特許の出願がなされています。当社グループ又はその顧客が事前の調査にかかわらず第三者の権利を侵害する場合、第三者より当社グループ又はその顧客に対して知的財産権に関する訴訟を提起され、当社グループが重要な技術を利用できなくなる可能性や、当社グループに帰責事由がある場合には当社グループが多額の損害賠償責任を負う可能性があり、また、当社グループに帰責事由がない場合でも、訴訟対応のため、時間、費用その他当社グループの経営資源が費やされる可能性があります。

 

(18)製造物責任について

 当社グループでは、様々な施策を通じて最適な品質を確保できるよう品質管理に取り組んでおりますが、当社グループの製品に用いられる技術の高度化や製造委託先に起因する欠陥等により、出荷時に発見できない不具合や異常が製品に存在する可能性があり、顧客への出荷後にそれらが発見される場合があります。この場合、製品の回収および交換、製品の採用中止等により多額の費用が発生する可能性、当該顧客から損害賠償請求を受ける可能性、当該顧客又は他の顧客からの将来の受注を失う可能性があります。

 また、当社グループの製品は、顧客がエンドユーザーに販売する最終製品に組み込まれますが、その方法次第で、当社グループがエンドユーザーから損害賠償責任を追及される可能性もあります。顧客における当社グループの製品の使用方法は多様化しており、当社グループが当初想定していなかった方法で使用されることがあるところ、当社グループの製品が顧客の製品に組み込まれた後になって問題が発見される可能性もあります。このような場合には、当社グループもエンドユーザーによる損害賠償請求の対象となる可能性があります。かかる事態に備えて、当社グループは、製造物責任保険やリコール保険に加入していますが、これらの保険により当社グループの負う多額の費用や損害賠償の全額が補填される保証はありません。

 

(19)人材確保について

 当社グループが厳しい事業環境下において競争優位性を確保するためには、経営陣、経営管理、設計/開発、製造技術支援、営業等の各分野において優秀な人材を確保することが重要です。しかしながら、専門性の高い優秀な人材の数は限られており、人材の採用および確保の競争は激化しています。特に当社グループのカスタムSoCの設計開発において、エンジニアは重要な役割を担っていますが、当社グループがエンジニアを含む優秀な人材を十分に採用および確保できない場合は、設計/開発に支障をきたす可能性があります。また、当社グループから、専門性の高い優秀な人材が競合他社に移籍した場合、その者が有する当社グループの知識やノウハウの流出により、当社グループの競争優位性が損なわれる可能性があります。これらにより、当社グループの事業、財政状態、経営成績、ブランドイメージおよび社会的信用に悪影響が生じる可能性があります。

 

(20)情報セキュリティについて

 当社グループは、事業活動全般において、様々な情報システムを利用しており、災害、戦争、テロ行為、コンピュータウイルスの感染やサイバー攻撃等により、システム障害が発生する可能性があります。また、在宅勤務者の増加等の働き方の変化により、新たなサイバー攻撃等のリスクが生じています。これらにより、当社グループの業務活動や製品の製造委託および供給の停止、重要なデータの喪失、多額の対応費用の発生等が生じた場合には、当社グループの事業、財政状態、経営成績、ブランドイメージおよび社会的信用に悪影響が生じる可能性があります。

 また、当社グループは、事業活動の遂行に関連して、自己又は顧客その他の第三者の秘密情報や個人情報を多数有しております。これらの情報については、セキュリティシステムを整備し、法令や社内規則等に基づき管理しておりますが、不正行為や妨害行為の手法は多様化しており、かつ発見が困難であることや、関係者による意図的な漏洩の可能性もあるため、予防策が奏功せず、予期せぬ事態により情報が流出するおそれがあります。そのような事態が生じた場合、営業秘密の流出による競争力の低下や、顧客の信用や社会的信用の低下を招く可能性があるほか、システム改修等の対応に要する費用の発生や顧客からの損害賠償請求により、当社グループの事業、財政状態および経営成績に悪影響が生じる可能性があります。

 

(21)環境について

 当社グループは、大気汚染、水質汚濁、有害物質、廃棄物処理、製品リサイクル、地球温暖化防止、エネルギー管理等に関し、世界各国において様々な環境関連法令の適用を受けています。当社グループは、これらの規制に細心の注意を払いつつ事業を行っておりますが、過失の有無にかかわらず、過去分を含む環境問題に対して法的又は社会的責任を負う可能性があり、そのような事態が生じた場合、その対応のために多額の費用負担が発生する可能性、当社グループの事業が停止する可能性や当社グループの社会的信用の低下を招く可能性があります。また、将来、環境に関する規制や社会的な要求がより厳しくなり当社グループおよび製造委託先の事業活動に制約が生じ、かかる規制に対応するためのコストが増加する可能性や、環境関連の規制又は社会的要請に適切に対応しないことにより当社グループに対する社会的評価/信用が低下する可能性があるほか、当社グループの事業、財政状態および経営成績に悪影響が生じる可能性があります。

 

(22)法規制等について

 当社グループはグローバルに事業活動を展開しており、当社グループが事業活動を行っている国および地域における安全保障、外国貿易管理、労働、人権、競争政策、税制、腐敗防止および環境保護等に関連する様々な法律および規制の対象となっています。当社グループは、かかる法律および規制のコンプライアンス体制の整備、業務の適正化のために必要な社内体制を構築しておりますが、かかる体制が適切に機能する保証はなく、また、これらの法律および規制の新設又は改正により法規制等の遵守が困難になる可能性もあります。これらの法律又は規制に違反した場合、当社グループに民事上の損害賠償請求や、刑事上又は規制上の罰則等が科せられ、当社グループの事業、財政状態、経営成績、ブランドイメージおよび社会的信用に悪影響が生じる可能性があります。

 

(23)訴訟等について

 当社グループは、グローバルに事業を展開しているため、様々な国又は地域において、パートナー、従業員、競合他社等から契約違反、労働問題、知的財産権の侵害等に関して訴訟の提起を受け、又は規制当局による措置、処分等に服するリスクを有しています。訴訟やその他の法的手続、当局による調査の結果、当社グループに不利益な決定がなされた場合、その決定の内容によっては当社グループの事業、財政状態、経営成績、ブランドイメージおよび社会的信用に悪影響が生じる可能性があります。

 

(24)内部統制の整備について

 当社グループは、財務報告に係る内部統制の整備/運用および評価のための体制を整備しております。しかしながら、内部統制が有効に機能しなかった場合、又は財務報告に係る内部統制の不備もしくは開示すべき重要な不備が発生した場合、当社グループの内部統制への信頼性が失われる結果、株価に重大な悪影響が生じ、又は法令違反、行政処分および損害賠償請求を受けることにより、当社グループの事業、財政状態および経営成績、ブランドイメージおよび社会的信用に悪影響が生じる可能性があります。

 

(25)販売特約店について

 当社グループは、販売特約店を通じて販売を行う場合と、顧客と直接商談を推進/獲得する場合があります。特に、当社グループの継続的な販売特約店である加賀FEI株式会社およびその子会社を通じて相当の取引を行っております。そのため、販売特約店の事業活動が中止する又は販売特約店との取引が中止される等の場合には、商談推進/販売活動の中断、売掛金回収の遅延/不能により、当社グループの事業、財政状態および経営成績に悪影響が生じる可能性があります。

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

 当社グループ(当社、連結子会社および持分法適用会社)の財政状態、経営成績およびキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

①財政状態および経営成績の状況

a.経営成績

 当連結会計年度における世界経済は、インフレ圧力は緩和されつつあるものの、地域による温度差が生じています。具体的には、欧州や日本では、中国の内需低迷の影響による輸出需要が減少するなど厳しい状況が続きました。一方、米国では、個人消費の改善や設備投資を含む需要の拡大を背景として経済は堅調に推移しました。なお、為替相場においては、米国の金利引き下げペースの鈍化により日米の金利差が縮まりにくくなることを背景に円安が進みました。

 

 当社グループにおいては、2018年4月以降、ビジネスモデルの転換、グローバルな大型商談が見込まれる成長分野/先端分野へのシフト、さらに大胆な事業体制の変革等の構造改革を進めてきました(「第一の変革」)。その結果、注力分野であるオートモーティブ、データセンター/ネットワーク、スマートデバイス分野を中心に多くの大型商談を獲得しております。年間の商談獲得金額(1米ドル=100円で換算)は、構造改革以前は1,000億円程度でしたが、構造改革後は2,000億円程度へ、2023年3月期は2,500億円程度に達し、2025年3月期は約3,000億円規模へと拡大しました。また、獲得した商談の量産が徐々に始まり、確実に売上拡大に繋がっております。

 さらに、競争力のある開発体制の構築やグローバル企業に相応しい組織風土を目指す「第二の変革」を進めております。グローバルな顧客、半導体エコシステムを構成するプレーヤー、投資家等とのコミュニケーションを通じて、社内の体制、組織の構造、従業員の意識を変える取り組みを強化しております。

 

 先端技術分野のモデルプロジェクトの開発および開発基盤構築に取り組む組織であるグローバルリーディンググループを中心に、「ソリューションSoC」ビジネスモデルに相応しいコンピュータアーキテクチャベースの開発基盤と標準的な開発プロセスの構築を進めてきました。また、これと並行して、開発の効率化/可視化、開発マネジメント改革を一体として積極的に推進してきました。

 

 半導体関連サプライヤーが集中する台湾において、委託先の生産を管理するチームを現地(台湾)に配置することでダイレクトインターフェースを構築しました。これにより、サプライヤーとの連携がより強固なものとなり、製造委託先の供給状況の変化にも迅速に対応する体制が整いつつあります。

 

 ここ数年の大型先端開発案件の商談獲得に伴い、半導体業界を取り巻くエコシステムを形成するグローバル企業との関係強化を進めてきました。特に、北米や台湾等に本社を置くグローバル企業とのマネジメントレベルでの関係構築/強化により、これらの企業との先端技術分野での共同開発プロジェクト等の進捗がありました。

 

 当社グループにおける研究開発は、注力分野における商談獲得に繋げるための先行開発と、獲得した商談の製品開発から構成されております。当連結会計年度の研究開発費は、前連結会計年度比12.3%増の59,821百万円となりました。これは主に獲得した商談の製品開発が増加していることによるものであります。先行開発では、日々進化する半導体エコシステムにおいて最新の技術を活用するために、Arm Holding plc(Arm社)およびTaiwan Semiconductor Manufacturing Company Limited(TSMC社)とも密に連携し、2nm以細のプロセステクノロジー、チップレット等の先進的なパッケージング技術、最新設計ツールの実用化およびプラットフォーム化等に積極的に取り組んでおります。また、Arm社のアーキテクチャ採用のTSMC社の3nmプロセステクノロジーを使用したハイパフォーマンス・コンピューティング(HPC)プロセッサーSoCの開発、Google社との量子コンピューティング向けSoCの開発等も順調に進んでおります。さらに、インド電子情報技術省(Ministry of Electronics and Information Technology, MeitY)の主要な研究開発機関であるCentre for Development of Advanced Computing(C-DAC)およびMosChip Technologiesと提携しました。加えて、北米を中心に複数のデータセンター向けSoC商談を獲得しており、それらの開発も開始しております。

 今後は、引き続き、設計開発へのAI導入等にも取り組んでいきます。

 

 また、当社グループでは、優先的に取り組むマテリアリティ(重要課題)を特定し、サステナビリティ活動を推進しております。当連結会計年度においては、個々のマテリアリティの実現に向けた取り組みの結果として「脱炭素経営ランキングGX500」への選出、「日経スマートワーク経営企業」および「日経SDGs経営企業」としての認定を受けるなど、社外からも一定の評価をいただくことができました。

 

 当社グループの当連結会計年度の業績は、売上高は188,535百万円(前連結会計年度比14.8%減)となりました。当社グループの売上は、量産段階で受領する製品売上と、設計開発に要する費用を段階的に受領するNRE売上から構成されております。製品売上は、中国の5G基地局向け商談における特需の終了やデータセンター/ネットワーク分野での中国市場における通信機器などの需要減少により、146,578百万円(前連結会計年度比19.8%減)となりました。NRE売上は、オートモーティブおよびハイエンドカメラでの7nmより微細な先端テクノロジーの開発案件が重なったこともあり、41,019百万円(前連結会計年度比9.1%増)となりました。

 

 また、売上原価は84,616百万円、先端テクノロジーを使用した開発案件の増加および円安影響により販売費及び一般管理費は78,919百万円となり、営業利益は25,000百万円(前連結会計年度比29.6%減)となりました。これに営業外収益・費用を加え、経常利益は25,118百万円(前連結会計年度比32.3%減)となりました。特別利益1,790百万円は、第2四半期に計上した高蔵寺事業所の売却による固定資産売却益であります。特別損失1,531百万円は、第4四半期に計上したオートモーティブ分野の特定顧客の事業撤退方針決定に伴い、当社が保有する技術資産が遊休資産となったことによる減損損失であります。この結果、親会社株主に帰属する当期純利益は19,600百万円(前連結会計年度比25.0%減)となりました。

 当連結会計年度の1米ドルの平均為替レートは152.6円、前連結会計年度比8.0円の円安となりました。

 

 なお、当社グループの事業セグメントは、「ソリューションSoC」ビジネスモデルで開発するSoCを主とする単一セグメントであるため、セグメント情報に関連付けた記載は行っておりません。

 

b.財政状態

(資産)

 当連結会計年度末における流動資産は126,290百万円となり、前連結会計年度末に比べ12,611百万円減少しました。これは主に、売上高の減少により、売掛金および棚卸資産が減少したことによるものであります。

 固定資産は44,022百万円となり、前連結会計年度末に比べ3,917百万円減少しました。これは主に、獲得した商談の製品開発に係るレチクル、テストボード、設計開発環境の増強およびⅠPマクロ等の設備投資がある一方、減価償却費の増加、高蔵寺事業所の売却および技術資産の減損によるものであります。

 この結果、総資産は170,312百万円となり、前連結会計年度末に比べ16,528百万円減少しました。

 

(負債)

 当連結会計年度末における流動負債は31,271百万円となり、前連結会計年度末に比べ21,823百万円減少しました。これは主に、売上高の減少により、買掛金および有償支給に係る負債等の減少によるものであります。

 この結果、負債合計は33,266百万円となり、前連結会計年度末に比べ22,554百万円減少しました。

 

(純資産)

 当連結会計年度末における純資産合計は137,046百万円となり、前連結会計年度末に比べ6,026百万円増加しました。これは主に、親会社株主に帰属する当期純利益19,600百万円、配当金の支払額8,952百万円および自己株式の取得5,000百万円(2,016,500株)によるものであります。

 この結果、自己資本比率は80.47%となり、前連結会計年度末から10.35ポイント増加しております。

 

②キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度末における現金及び現金同等物は72,837百万円となり、前連結会計年度末に比べ3,099百万円増加しました。当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況は次のとおりであります。

 

 営業活動によるキャッシュ・フローは31,866百万円の収入(前連結会計年度は52,882百万円の収入)となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益25,377百万円、減価償却費16,237百万円および法人税等の支払額8,551百万円によるものであります。

 

 投資活動によるキャッシュ・フローは14,552百万円の支出(前連結会計年度は23,155百万円の支出)となりました。これは主に、獲得した商談の製品開発に係るレチクル、テストボードおよび設計開発環境の増強等の有形固定資産の取得による支出12,758百万円、IPマクロ等の無形固定資産の取得による支出3,821百万円および固定資産の売却による収入2,363百万円によるものであります。

 

 財務活動によるキャッシュ・フローは13,825百万円の支出(前連結会計年度は6,624百万円の支出)となりました。これは主に、配当金の支払額8,952百万円および自己株式の取得による支出5,000百万円によるものであります。

 

 当社は、顧客の需要変動および世界景気の減速や地政学リスクの高まり等に対応して、借入枠20,000百万円のコミットメントライン契約を締結しております。なお、当連結会計年度においてコミットメントライン契約に基づく借入は行っておりません。

 

③生産・受注および販売の実績

 当連結会計年度における生産実績、受注実績および販売実績は次のとおりであります。

 なお、当社グループの事業セグメントは、「ソリューションSoC」ビジネスモデルで開発するSoCを主とする単一セグメントであるため、セグメント情報に関連付けた記載を行っておりません。

 

a.生産実績

 当社グループは、ファブレスモデルのビジネス形態となっており、製品の製造については、製造委託先(ファウンドリ、OSAT)へ委託しております。当社グループ製品は、顧客の特定製品向け専用で設計し搭載されるものが主であり、受注生産を行っていることから、生産実績は販売実績と概ね同等の金額となるため、生産実績の記載は省略しております。

 

b.受注実績

 当社グループは、商談獲得後、設計開発業務に係る受注を受けて設計開発を開始し、開発終了後にサンプルを製作の上、顧客に提供し評価を受けます。設計開発開始後、顧客の評価完了までの間、受注した設計開発業務に係る売上が段階的に計上されます。顧客により製品の性能等に問題がないことが確認されると、製品の量産段階に移行し、顧客の買取責任が発生する形で製品の量産に係る受注を受け、当社グループは製造委託先へ製造を委託します。当社グループの当連結会計年度における設計開発および製品の量産に係る受注高および受注残高は以下のとおりです。受注高については、2026年3月期に量産に入る新商品の受注が入り始め前年度比増加となりました。受注残高については、半導体不足時における顧客の先行手配の影響で、前連結会計年度は顧客側での発注調整が行われましたが、当連結会計年度でも調整の影響が残っており前年度比減少となりました。なお、下記の受注高および受注残高は、当社グループの経営指標である商談獲得金額および商談獲得残高とは算定方法および基準時点が異なります。

 

前連結会計年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

当連結会計年度

(自 2024年4月1日

至 2025年3月31日)

前年度比

受注高 (百万円)

114,307

171,045

49.6%

受注残高(百万円)

175,124

156,802

△10.5%

 

c.販売実績

 

前連結会計年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

当連結会計年度

(自 2024年4月1日

至 2025年3月31日)

前年度比

売上高 (百万円)

221,246

188,535

△14.8%

(注)主な相手先別の販売実績および当該販売実績の総販売実績に対する割合

 ・CRS TECHNOLOGY Co., LTDへの前連結会計年度および当連結会計年度の販売実績および当該販売実績の総販売実績に対する割合は、60,171百万円、27.2%および、30,488百万円、16.2%であります。

 ・加賀FEI株式会社への前連結会計年度および当連結会計年度の販売実績および当該販売実績の総販売実績に対する割合は、56,408百万円、25.5%および、50,169百万円、26.6%であります。

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容

 当社グループの経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容は次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものであります。

 

①経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容

a.売上高

 当連結会計年度の売上高は188,535百万円(前連結会計年度比14.8%減)となりました。うち「製品売上」は146,578百万円(前連結会計年度比19.8%減)となりました。中国の5G基地局向け商談における特需の終了やデータセンター/ネットワーク分野での中国市場における通信機器等の需要減少により減少しました。「NRE売上」は41,019百万円(前連結会計年度比9.1%増)となりました。オートモーティブおよびハイエンドカメラでの7nmより微細な先端テクノロジーの開発案件が重なったこともあり、対価としてのNRE売上が増加しました。今後、開発が完了し顧客での評価後量産段階に移行した場合には製品売上高の増加に貢献することが見込まれます。「その他」は知的財産のライセンスによる収入が増加しました。

 ・財務指標

 

前連結会計年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

当連結会計年度

(自 2024年4月1日

至 2025年3月31日)

前年度比

製品売上 (百万円)

182,876

146,578

△19.8%

NRE売上(百万円)

37,609

41,019

9.1%

その他  (百万円)

761

938

23.3%

売上高合計(百万円)

221,246

188,535

△14.8%

 

b.売上原価・販売費及び一般管理費並びに営業利益

①売上原価

 当連結会計年度の売上原価は84,616百万円、売上総利益は103,919百万円(前連結会計年度比5.5%減)となりました。主に、製品売上の減少による売上総利益の減少によるものです。売上原価率は、製造委託先の能力確保のための一時的なコスト負担が減少したことや、品種構成の変動により減少しました。

 ・財務指標

 

前連結会計年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

当連結会計年度

(自 2024年4月1日

至 2025年3月31日)

前年度比

売上原価率

50.3%

44.9%

△5.4ポイント

売上総利益(百万円)

110,003

103,919

△5.5%

(注)各指標の計算方法は下記のとおりであります。

 売上原価率:売上原価/売上高×100

 

②販売費及び一般管理費

 当連結会計年度の販売費及び一般管理費は78,919百万円(前連結会計年度比4,426百万円増)となりました。先端テクノロジーの開発が進んだことから研究開発費は59,821百万円(前連結会計年度比6,542百万円増)、研究開発費を除いた販売費及び一般管理費は19,098百万円(前連結会計年度比2,116百万円減)であります。

 

③営業利益

 当連結会計年度の営業利益は25,000百万円(前連結会計年度比10,510百万円減)となりました。主に、売上高の減少によるものです。当連結会計年度の1米ドルの平均為替レートは152.6円、前連結会計年度に比べて8.0円の円安となりました。

 

 ・財務指標

 

前連結会計年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

当連結会計年度

(自 2024年4月1日

至 2025年3月31日)

前年度比

営業利益(百万円)

35,510

25,000

△29.6%

営業利益率

16.1%

13.3%

△2.8ポイント

EBITDA(百万円) ※

48,906

41,237

△15.7%

 ※ EBITDAは、「営業利益」および「減価償却費」を合計して算出しております。

 

c.税金等調整前当期純利益

 当連結会計年度の特別利益は1,790百万円となりました。第2四半期に計上した高蔵寺事業所の売却による固定資産売却益であります。

 当連結会計年度の特別損失1,531百万円は、第4四半期に計上したオートモーティブ分野の特定顧客の事業撤退方針決定に伴い、当社が保有する技術資産が遊休資産となったことによる減損損失であります。

 

 以上の結果、当連結会計年度の税金等調整前当期純利益は25,377百万円(前連結会計年度比11,745百万円減)となりました。

 

d.親会社株主に帰属する当期純利益

 当連結会計年度の法人税、住民税および事業税の額が5,175百万円、法人税等調整額が602百万円となった結果、親会社株主に帰属する当期純利益は19,600百万円(前連結会計年度比6,534百万円減)となりました。

 

②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源および資金の流動性に係る情報

a.資本の財源および資金の流動性についての分析

 当社グループは、経営環境が急激に変化したとしても、顧客にとっての基幹部品である当社グループ製品を長期にわたり供給していく責任があることから、内部留保を厚くし資金の流動性を高く維持する方針としております。

 

 当連結会計年度末における総資産は170,312百万円となり、前連結会計年度末に比べ16,528百万円減少しました。流動資産は126,290百万円となり、前連結会計年度末に比べ12,611百万円減少となりました。これは主に、売上高の減少や顧客要望に基づく先行手配の減少による、売掛金、棚卸資産の減少によるものです。当社グループはファブレスによる事業運営のため、資産構成上流動資産の割合が高く、総資産の74.2%を流動資産が占めております。

 ・財政状態および財務指標

 

前連結会計年度末

(2024年3月31日)

当連結会計年度末

(2025年3月31日)

前年度比

総資産(百万円)

186,840

170,312

△16,528

流動資産(百万円)

138,901

126,290

△12,611

流動資産比率(%)

74.3

74.2

△0.1ポイント

(注)各指標の計算方法は下記のとおりであります。

 流動資産比率:流動資産/総資産×100

 

 当連結会計年度末の負債合計は33,266百万円となり、前連結会計年度末に比べ22,554百万円減少となりました。これは主に、製造委託先からの購入金額の減少や顧客要望に基づく先行手配の減少による、買掛金、有償支給に係る負債および未払金の減少によるものです。

 

 ・財政状態および財務指標

 

前連結会計年度末

(2024年3月31日)

当連結会計年度末

(2025年3月31日)

前年度比

流動負債(百万円)

53,094

31,271

△21,823

流動比率(%)

261.6

403.9

142.3ポイント

(注)各指標の計算方法は下記のとおりであります。

 流動比率:流動資産/流動負債×100

 

 当連結会計年度末の純資産は137,046百万円となり、前連結会計年度末に比べ6,026百万円増加となりました。これは主に、利益剰余金が10,648百万円増加したことによるものです。

 

 以上の結果、当連結会計年度の自己資本は137,046百万円となり、自己資本比率は80.47%に、ROEは14.62%となりました。引き続き、経営環境の変化に柔軟に対応できるよう、収益力と財務体質の改善に取り組んでまいります。

 

 ・財政状態および財務指標

 

前連結会計年度末

(2024年3月31日)

当連結会計年度末

(2025年3月31日)

前年度比

自己資本(百万円)

131,020

137,046

6,026

自己資本比率(%)

70.12

80.47

10.35ポイント

ROE(%)

21.70

14.62

△7.08ポイント

(注)各指標の計算方法は下記のとおりであります。

自己資本比率:自己資本/総資産

ROE(自己資本利益率):親会社株主に帰属する当期純利益/((前連結会計年度末自己資本+当連結会計年度末自己資本)/2)

 

 当社は、顧客の需要変動および世界景気の減速や地政学リスクの高まり等に対応して、借入枠20,000百万円のコミットメントライン契約を締結しております。なお、当連結会計年度においてコミットメントライン契約に基づく借入は行っておりません。

 

b.キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容

 当社グループは、売掛債権の回収期間および棚卸資産の滞留日数の短縮に取り組んでおり、運転資金および成長に必要な資金を、営業キャッシュ・フローから確実に確保できるよう努めております。

 

 当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローは前年度比21,016百万円減少の31,866百万円のプラス(前連結会計年度は52,882百万円のプラス)となりました。これは主に、製品売上の減少による、営業利益の減少によるものです。投資活動によるキャッシュ・フローは14,552百万円のマイナス(前連結会計年度は23,155百万円のマイナス)となり、フリー・キャッシュ・フローは17,314百万円のプラス(前連結会計年度は29,727百万円のプラス)となりました。

 

 ・当社グループのキャッシュ・フロー関連指標

 

前連結会計年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

当連結会計年度

(自 2024年4月1日

至 2025年3月31日)

前年度比

Ⅰ 営業活動によるキャッシュ・フロー(百万円)

52,882

31,866

△21,016

Ⅱ 投資活動によるキャッシュ・フロー(百万円)

△23,155

△14,552

8,603

Ⅰ+Ⅱ フリー・キャッシュ・フロー(百万円)

29,727

17,314

△12,413

 

 当連結会計年度の財務活動によるキャッシュ・フローは13,825百万円のマイナス(前連結会計年度は6,624

百万円のマイナス)となりました。これは主に、配当金の支払額8,952百万円、自己株式の取得5,000百万円によるものです。

 

 以上の結果、現金及び現金同等物の当連結会計年度末の残高は72,837百万円となり、前連結会計年度末に比べ3,099百万円増加しております。

 

③重要な会計上の見積りおよび当該見積りに用いた仮定

 当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたって、当社グループの重要な判断と見積りに大きな影響を及ぼすと考えられる特に重要な会計方針は以下のとおりであります。

 

a.繰延税金資産の回収可能性

 繰延税金資産に関して、将来の業績予測やタックス・プランニングを基に将来の課税所得を見積り、繰延税金資産の回収可能性を判断しています。経営環境等の悪化により、その見積りに変更が生じた場合は、繰延税金資産が取り崩されることにより税金費用を計上する可能性があります。

 

b.棚卸資産の評価

 棚卸資産に関して、正味売却価額が取得原価より下落した場合に簿価の切下げを行います。また、一定期間を超えて滞留する棚卸資産について、将来の需要や市場動向を反映した正味実現可能価額まで簿価の切下げを行います。

 

c.固定資産の減損

 固定資産に関して、「固定資産の減損に係る会計基準」に基づき、減損の要否を検討し、固定資産に減損が見込まれる場合は、将来キャッシュ・フローの現在価値又は正味売却価額に基づいて減損損失を計上いたします。将来の事業計画の変更や経営環境等の悪化による将来キャッシュ・フローの見積りが著しく減少する場合は、減損損失を計上する可能性があります。

 

5【重要な契約等】

 該当事項はありません。

 

6【研究開発活動】

 当社グループのビジネスモデルである「ソリューションSoC」は、自社のサービス/製品の差別化を求める顧客に、先端テクノロジーを用いて、顧客に最適な先端SoCを提供するものです。そのため、最先端技術に対して積極的に投資を行っており、それにより当社グループ独自のビジネスモデルをより強化し、継続的な成長の実現に繋げていきます。

 また、当社グループは、経営理念のもと、進化する半導体のエコシステムにおいてプロセス技術、パッケージング技術、テスト技術をはじめIP/EDAツール/ソフトウエアに至るまで最新の技術を提供するグローバルサプライヤーとも密に連携を行い、開発活動を実施しております。現在も半導体のエコシステムは進化拡大しており、先端技術を使った様々な選択肢の中から最適な技術を組み合わせたSoCを開発することの難易度が上昇しています。そのため、当社グループは、技術の組み合わせとその実証にも積極的な投資を行っております。

 当連結会計年度における研究開発費は59,821百万円で、先端品の製品開発の増加に伴う減価償却費等の増加や前期より為替が円安に振れたことにより前連結会計年度比で6,542百万円の増加となりました。当社グループの研究開発活動は主に、注力分野における商談獲得に繋げるための先行開発投資と、獲得した商談に関する製品開発から構成されています。当社グループは、注力分野の事業領域において、先行開発した要素技術を元に新たな商談を獲得し、獲得した個々の製品開発を行う中での顧客との技術議論や実際の製品開発で明らかになった技術課題から、今後必要とされる要素技術を明らかにし、次の先行開発投資を企画・実施していく、そうした好循環を目指します。

 また、個々の製品開発を行う場合には、顧客と開発受託契約を締結した上で設計開発を経て、顧客に対して試作品を提供しております。当該開発受託契約に基づき当社グループが行う研究開発の成果物に係る知的財産は、当社グループに帰属することが定められていることから、個々の顧客の製品開発にかかる費用は研究開発費(販売費及び一般管理費)に含めております。

 なお、当社グループの事業セグメントは、「ソリューションSoC」ビジネスモデルで開発するSoCを主とする単一セグメントであるため、セグメント情報に関連付けた記載をしておりません。

 

<先行開発>

 「ソリューションSoC」ビジネスモデルでは様々な機能の実装が求められております。従来その解決策としては、プロセステクノロジーの微細化による回路規模の拡大により対応する方法が一般的でした。一方、最先端のプロセステクノロジーの使用に関しては、費用、開発期間の問題や量産工場の供給能力の問題もあり、必ずしもそれだけが最適解とはならないケースが増えつつあり、お客様は先端SoCを開発するために「Entire Design(全体設計)」能力のあるパートナーを求めています。当社グループでは、そうした環境のもと、プロセステクノロジーの微細化(3nm、2nm、1.xnm)への対応はもちろんのこと、コンピュータアーキテクチャを前提としたSoCや先端パッケージング/高密度実装(3D-IC/チップレット)技術への対応、低消費電力化や設計期間短縮のための新たな設計技術/手法の導入等、各サプライヤーの最先端技術を実際のSоC開発に適用するための先行開発を積極的に実施しております。当連結会計年度の先行開発の成果の例は以下のとおりです。

・EDAベンダーと連携した大規模先端カスタムSoCへ適用する3D-IC/チップレット技術の研究開発

 当社グループは、EDAベンダーと連携して積極的にAI技術を活用し3D-IC/チップレット設計環境を立ち上げ、ソリューションSoC設計技術強化を進めています。ここで立ち上げた設計環境を、今後の製品開発に適用していきます。

 

<製品開発>

 2020年3月期以降、オートモーティブ、データセンター/ネットワーク、スマートデバイス、産業機器の注力分野で、商談獲得が進んでいます。またそれらの分野で、5nm、3nmプロセスや高密度実装技術を使用する大規模な開発案件が増加しております。特に、当連結会計年度においては、最新の車載プロセスを採用したAD(自動運転)/ADAS(先進運転支援システム)向けのカスタムSoCの開発にも着手しました。また、注力分野を中心に先端テクノロジー(7nm、5nm)、高密度実装(2.5D-IC)を使用した大規模なカスタムSoCのテープアウトも複数完了しております。