第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであります。

 

(1) 経営の基本方針

当社は、ミッションとして、「Delight customers with innovation イノベーションで顧客を感動させる」を掲げております。当社は、宿泊施設に対し、「tripla Book」を基本とし、様々なサービスを提供しております。宿泊施設が、自社予約を増やすことで収益を増加させ、費用を削減し、生産性を高めるよう、宿泊業界のDX(デジタルトランスフォーメーション)を支える総合的なエコシステムを提供して参ります。

また、当社のCore Value(行動指針)として、7つを掲げております。特に、「Market-In for Customer Satisfaction」については、顧客にとって必要なものを開発するという思想を徹底し、新しいサービス・プロダクトの開発を進めております。世界15ケ国から集まった多様性が高い企業文化、多言語でのコミュニケーションを行いながら、ミッションの達成を追求いたします。

 


 

Core Value(行動指針)

・Market-In for Customer Satisfaction(顧客満足実現へのマーケットイン)

マーケットイン思考を徹底し、顧客満足を常に追い求めます。市場が真に望むものを私達は提供します。

・Ownership(オーナーシップ)

自らの担当領域は当然に自らが責任を持ちつつ、会社全体のために当事者意識を持って行動します。

・Actions with Results(結果に拘るアクション)

行動し、行動により結果を出します。求められる結果は何かを常に考え行動します。

・Challenge for Innovation(イノベーションへの挑戦)

常に革新と改善を続けます。環境は変わり続けます。現時点における最善が今後も最善であるとは考えません。

・Stretch the Team & Yourself(チームと自信の成長)

常に学び、自分自身を成長させ続けます。チームに良い影響を与えることを約束し、チームも成長させ続けます。

・More with Less(生産性の追求)

効率よく、より少ないリソースでより多くのことを実現するチームを作ります。

・Humility, Respect & Trust(謙虚、尊敬、信頼)

謙虚、尊敬、信頼をバランスよく持ち、他者と接し、強いチームを作ることに貢献します。

 

(2) 経営環境

①市場環境について 
 当社ホスピタリティソリューション事業と関連性がある宿泊業界においては、コロナ禍による大きな打撃を受けて参りました。2020年10月期の延べ宿泊者数については、2019年の同月対比において、60.6%(日本人宿泊者数は67.4%、外国人宿泊者数は32.5%)となりました。また、2021年10月期の延べ宿泊者数については、2019年の同月対比において、51.8%(日本人宿泊者数は63.3%、外国人宿泊者数は4.0%)となりました。一方、2022年10月期については、オミクロン株のまん延はあったものの、2020年10月期、2021年10月期と比較すると、回復傾向にあり、73.3%となりました。そして、2023年10月期については、さらに回復が進み、97.7%とコロナ禍前の水準に近い結果となりました。2023年10月期上期(11月~4月)においては90%を下回る月もありましたが、下期(5月~10月)においては安定して95%を超過しており、延べ宿泊者数については回復が鮮明になりました。

 一方、需要の回復に対し、宿泊業界には人材不足が起こっており、客室の一部を稼働させることができない宿泊施設もあり、稼働率はコロナ禍前の水準には戻らない一方、インバウンド復調と円安による客室単価の上昇が起きています。

 上記の宿泊者数の数値は、国土交通省観光庁「宿泊旅行統計調査」に基づいて記載しております。

 

②市場規模について

 コロナ禍の前である2019年の日本の宿泊市場の規模としては、6.5兆円です(e-Stat 政府統計の総合窓口よりデータ抽出)。また、同じく2019年の世界の宿泊市場の規模としては、166兆円です(statistaよりデータ抽出。2019年の1.52兆USDを為替レート109.05として算出いたしました。)。


③競争優位性について

 当社が提供する「tripla Book」は類似サービスを提供する事業者が複数存在する業界であります。その中の当社の優位性としましては、拡張性の高さ、多機能であることにあると考えております。

 

(拡張性の高さ)

 当社の「tripla Book」はクラウド型で提供しており、機能を開発後、速やかにローンチすることが可能です。開発速度としては平均30機能を月間でリリースしております。今後も、当社のCore Value(行動指針)である「Market-In for Customer Satisfaction」に基づき、当社の顧客、もしくは潜在的な顧客に対して徹底したヒアリングを行い、優先順位を付けた上で、求める機能の開発を進めて参ります。汎用的に使える機能の開発についてはすべて内製で開発する方針であります。また、「tripla Bot」、「tripla Connect」等と連携しており、今後導入を計画している「tripla Analytics」、「tripla Page」等とも連携することにより、拡張性を高め、当社のミッションである「Delight customers with innovation イノベーションで顧客を感動させる」を実現して参ります。

 

(多機能)

 単に予約をするのみでなく、「第1 [企業の概況] 3 事業の内容 (2)サービス概要」に記載のとおり、複数の機能があります。

 

④主要製品・サービスの内容について

 当社の主要なサービスの内容につきましては、「第1 [企業の概況] 3 事業の内容 (2)サービス概要」に記載しております。


⑤顧客基盤及び販売網について

 当社は主に、宿泊施設向けにサービスを提供しており、宿泊施設からの問い合わせや当社からの提案等により、受注しております。

 

(3) 中期的な経営戦略

当社の営業収益は、2022年10月期から2023年10月期にかけて43.8%の成長率となっております。今後の成長戦略としては、現状提供している「tripla Book」、「tripla Bot」、「tripla Connect」、「tripla Pay」の導入施設数の拡大、取扱高・GMVの増加を行うことによる単価の向上を継続的に成長させることを重視して参ります。これらと並行し、ミッションである「Delight customers with innovation イノベーションで顧客を感動させる」の実現のため、「tripla Book」、「tripla Bot」、「tripla Connect」、「tripla Boost」等に加えて、「tripla Analytics」、「tripla Link」、「tripla Page」等の新サービスの開発も進めております。個々のサービスが収益を上げることは当然として、tripla Botのみを利用している顧客に対してtripla Bookを販売するといったクロスセルによる営業収益の増加、tripla Connectやtripla Boost等を用いて、顧客である宿泊施設の自社予約を増加させtripla Bookの収益を増加する等、各サービスが相互に関連し、一体となって顧客である宿泊施設の自社予約増加、収益最大化を図り、宿泊施設、当社の収益がともに最大化するWin-winのビジネスモデルを目指します。そのために必要なエンジニア等の人材を積極的に採用して参ります。

また、APAC(アジア太平洋地域)へ販路拡大を目標としており、2023年3月には韓国支店の設立を行いました。また、2023年11月にはBOOKANDLINK PTE. LTD.及び同社の子会社であるPT. SURYA JAGAT MANDIRI(以下「BookandLink社」と言います。)の株式取得及び子会社化を行い、2023年12月には旭海國際科技股份有限公司(英文名称:Surehigh International Technology Inc. 以下「Surehigh社」と言います。)の株式取得に関する契約を締結いたしました。事業展開する地域を拡大することにより営業収益、営業利益の拡大を図るとともに、サービス・プロダクトの販路拡大(当社のサービスを海外子会社の販路で拡販するとともに、海外子会社のサービスを当社の販路で拡販する)、プロダクトの強化、エンジニアリングリソースの効率化等、グループ一体となってシナジーを創出して参ります。

 

 

(4) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

2023年10月期において、当社の営業収益の97.6%は、「tripla Book」、「tripla Bot」により構成されており、毎月経常的に得られる基本料収入が発生いたします。「tripla Book」、「tripla Bot」による基本料収入を「固定収益」として分類しております。また、tripla Bookは宿泊による取扱高・GMV(Gross Merchandise Value)、tripla Botはチャットの回答数(以下、「リクエスト数」)によって従量課金の収益が発生いたします。tripla Bookの宿泊による取扱高・GMV(Gross Merchandise Value)による営業収益を「従量収益」、tripla Botのリクエスト数によって発生する営業収益を「変動収益」、その他の営業収益を「その他収益」として分類しております。なお、「第1 [企業の概況] 3 事業の内容 (2)サービス概要 ②「tripla Bot」 f」に記載したとおり、現在はAI限定プランを主力として販売していること及び既存のフルサービスプランについてもAI限定プランへの移行を進めていることから、2024年10月期以降については、tripla Botについて、固定収益と変動収益で分けず一括して表示する予定です。

当社の経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標として、営業収益、営業利益を重視しております。当該指標を採用した理由は、投資家が当社の経営方針・経営戦略等を理解する上で重要な指標であり、当社の成果を端的に表すことができるためです。

 また、営業収益の達成状況を判断する上で、導入契約施設数、取扱高・GMV、リクエスト数を重要な指標としております。導入施設数を増加させることで固定収益を増加させ、取扱高・GMVを増加させることで従量収益を増加させることで、当社の目標である営業収益を達成いたします。ただし、取扱高・GMVが低い場合には、当社の目標である営業収益を達成しない可能性があります。導入契約施設数を増やすのみならず、取扱高・GMVも増やすことが重要となるビジネスモデルです。当該指標を拡大させることで、営業収益の継続的かつ累積的な増加を実現して参ります。

 なお、各指標については「第1 [企業の概況] 3 事業の内容 (2)サービス概要」に記載しております。

 

(5) 経営環境並びに事業上及び財務上の対処すべき課題

当社が事業を行っているホスピタリティソリューション事業の関連する市場は、宿泊市場です。

「(2) 経営環境 ①市場環境について」に記載のとおり、2023年10月期において、延べ宿泊者数は大きく回復に向かいました。その一方、稼働率はコロナ禍前まで回復しておらず、当社の従量課金率・take rateは低い状態で推移しております。今後の市場の客室稼働率、客室単価については不透明な状況であり、このような環境の下、当社としては、対処すべき課題として以下の点に取り組んでおります。

 

1 サービス・プロダクトの強化

当社は、さらなる事業成長のためには、サービス・プロダクトの強化が必要であると認識しております。「tripla Book」、「tripla Bot」について、その契約施設数を順調に伸ばしております。2023年10月期においては大口チェーンホテル等への導入が進むとともに、2023年10月期の月次解約率(注1)はそれぞれ0.4%と、0.5%と大きく減少いたしました(2022年10月期においてはtripla Bookの解約率が0.5%、tripla Botの解約率が0.9%)。さらなる契約の増加、既存契約の解約抑止のため、競合や顧客要望を意識しながら継続的に機能強化をしていくことが必要であると考えております。2022年10月期に販売を開始した「tripla Connect」についても、「tripla Book」、「tripla Bot」のように契約施設数拡大のため、さらなる機能強化を進めて参ります。また、2023年11月に発表した「tripla Boost」の他、「tripla Analytics」、「tripla Link」、「tripla Page」等については、今後の販売開始を計画しております。従量課金率・take rateの改善のためには、「tripla Boost」による広告代行サービスの拡販と利用、「tripla Success」により、当社の各種サービスを顧客が最大限に活用できるようサポートを行うことで当社の各プロダクトを顧客にいっそう利用して頂くことを目指して参ります。

 2023年11月にBookandLink社の株式を取得し子会社化いたしました。また、2023年12月にSurehigh社の株式取得に関する契約を締結したことを公表し、2024年2月以降に子会社化することを計画しております。各社が提供しているサービス・プロダクトを日本で展開するとともに、日本で展開しているサービス・プロダクトを海外販路で展開する等の相互連携を今後進める予定です。

 

tripla Boost

tripla Boostは、公式ウェブサイトへの外部集客を支援する広告代行サービスです。従来、「tripla Agent」という名称でサービス展開していましたが、2023年11月にリブランディングの上、ローンチいたしました。メタサーチサービス(注2)広告、Google、Yahoo!、Instagram、Facebook等へのリスティング広告やディスプレイ広告等のオンライン広告出稿が可能となるサービスです。また、当該広告運用についても、当社が代行を行います。宿泊施設が宿泊客を獲得するにあたっての施策の設計から運用までを当社が担うことで、宿泊施設の人材不足やノウハウ不足を補い、取扱高(GMV)の増加、自社予約比率の向上を目的といたします。料金体系としては、実広告費、宿泊料金等の宿泊施設が実際に利用した費用に当社の利益分を加算した従量料金の料金体系となります。

 

・tripla Analytics

tripla Analyticsは、当社及び各宿泊施設が持つデータを活用したBIツール(注3)です。宿泊施設の中には、ユーザー(宿泊客)の分析、レベニューマネジメント(注4)を積極的に行っていない施設もあります。tripla Analyticsにより、tripla BookやOTA等のユーザー(宿泊客)のデータが、ダッシュボード(図やグラフ等の簡単な作成が可能)、レポート等により可視化され、分析が容易に行えるようになることを予定しております。当該分析に基づき、その時々に応じた最適な宿泊代金を設定し、各宿泊施設の収益の最大化を図るレベニューマネジメントが可能です。また、顧客である宿泊施設のレベニューマネジメントにより自社予約の収益を増加させることで、当社のtripla Bookの収益も増加いたします。

 

・tripla Link

tripla Linkは、チャネルマネージャー(注5)です。BookandLink社は「Channel Ku」という名称でインドネシアでチャネルマネージャーのサービスを展開しております。また、Surehigh社は「HOTEL NABE」という名称で台湾でチャネルマネージャーのサービスを展開しております。これらのエリアのサービスを統合し、日本、韓国のローカル予約サイトとの連携を進めます。また、各社がインドネシア、台湾等で展開しているチャネルマネージャーのサービスを元に、日本でも展開することを計画しております。

 

・tripla Page

tripla Pageは、公式ウェブサイトを簡単に作成することができるサービスです。小規模な宿泊施設の中には、公式ウェブサイトを開設していない施設、多額の外注費を掛けて開設している宿泊施設もあります。そのような施設に対し、複数のテンプレートから選択していくだけで、簡単に公式ウェブサイトを作成することができるサービスです。公式ウェブサイトを構築する際、外注すれば、1施設100万円程度掛かる場合があります。また、更新も外注する場合、都度、費用と時間が発生いたします。小規模な施設であれば、自社内で行うことが困難な場合もあり、簡単かつ安価にウェブサイトを構築・運用したいという課題に対応するものです。なお、Surehigh社は「微官網」という名称で台湾でウェブサイトビルダーのサービスを展開しており、同社取得後は当社グループとしてのサービス展開を進める予定です。

 

tripla Success

tripla Successは、当社の各種サービスを顧客が最大限に活用できるようにするための業務代行サービスです。人手不足の宿泊業界において、宿泊プランの編集、更新に時間が掛かってしまう、triplaのサービスを契約したものの機能を十分に使いこなせていない等の課題があります。そのような課題に対し、当社が代替してプラン、ルームタイプ、料金・在庫等の設定や予約エンジンの機能設定、メールマガジンの配信等を代行するサービスです。2024年10月期においては、tripla Botのオペレーターの業務を外部の事業者に業務委託し、従来tripla Botのオペレーターであった人員を配置替えしtripla Successの対応人員に回すことで、tripla Successのサービス拡充を図る予定です。

 

2 内部管理体制の強化  

当社及びその子会社が安定してサービスを提供し、継続的に成長し続けるためには、コンプライアンスを重視した内部管理体制の強化、日本及び海外での法令準拠及びコーポレート・ガバナンスの充実に向けた取組が重要だと考えております。今後も事業規模の拡大に合わせ、管理部門の一層の体制強化を図り、企業価値の最大化に努めて参ります。

 

3 顧客基盤の拡大

当社は、事業成長のためには、契約施設数の増加が必要であると認識しております。顧客基盤の拡大を行うためには、プロダクトの強化を行うとともに、営業等の人材の確保と在籍する人材の継続的な強化に努めて参ります。

 

4 利益及びキャッシュ・フローの創出

2023年10月期においては、当社の営業収益の大部分は、tripla Book、tripla Botによって構成されております。tripla Connect、tripla Boostについては、2022年10月期以降に販売開始したプロダクトであり、今後の拡販とともに収益貢献を進めて参ります。tripla Book、tripla Botの収益構造としては、ユーザーの利用の多寡にかかわらず発生する定額の基本料金とユーザーの利用の多寡(tripla Bookの取扱高・GMV、tripla Botのリクエスト数等)によって発生する従量料金の段階的な収益構造となっております。基本料金については、契約施設数を増加させることにより、毎月の収益が積み上がる構造であり、従量料金については、契約施設数の拡大とユーザーの利用の双方を促進することで当該収益が増加いたします。当社においては、プロダクト開発やユーザーの獲得に関する投資を先行して行い、事業拡大を図ったことから、2021年10月期までは営業損失を計上しておりましたが、事業の拡大に伴い、契約施設数が順調に積み上がり、ユーザーの利用を促進することで、先行投資として計上される開発費用やユーザーの獲得費用を含む営業費用が営業収益に占める割合は低下したことから、2022年10月期及び2023年10月期は黒字となりました。2024年10月期も継続的な黒字を計画しております。利益及びキャッシュ・フローの改善に努めて参ります。

 

5 財務上の課題

当社は2022年10月期以降黒字であるものの、2021年10月期までは営業赤字が継続しておりました。また、tripla Bookによる宿泊予約についてのユーザーからの預り金の増加を除くと、営業活動によるキャッシュ・フローは赤字が継続しておりました。今後、計画している十分な営業収益が獲得できない場合には営業赤字、営業活動によるキャッシュ・フローは赤字となる可能性があります。そのような場合に備え、常に一定水準の手元流動性を確保し、信用獲得に努めて参ります。手元流動性確保のため、金融機関との良好な取引関係の継続や内部留保の確保を継続的に行い、財務基盤のさらなる強化を図って参ります。

 

(注) 1.月次解約率:契約施設における直近12か月の月次平均解約率です。

2.メタサーチ:複数の検索エンジンから選んだ検索結果を表示するシステムのことを言います。Google Hotel Ads、フォートラベル、tripadvisor、trivago等といったサービスがあります。

3.BIツール:Business Inteligenceツールの略称。組織が持つ様々なデータを分析・見える化して、経営や業務に役立てるソフトウェアのことです。

4.レベニューマネジメント:需要と供給に応じて価格を変動させ、収益を最大化させるための販売管理を行うことです。

5.チャネルマネージャー:OTAや予約システム等の複数の宿泊予約情報とPMSを連携することで、在庫、プラン、価格等をまとめて管理するシステムのことを言います。

6.PMS:Property Management Systemの略称です。宿泊施設が、部屋在庫、予約情報、請求情報等の情報を管理し、売上情報を連携する基幹システムのことを言います。

 

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社のサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。

 

(1) ガバナンス

 サステナビリティ関連のリスクや機会を抽出し、対応する取組を事業・経営戦略に統合することで、事業活動とサステナビリティを一体化しております。事業・経営戦略の進捗管理は、経営会議、リスク・コンプライアンス委員会等において行われております。また、コンプライアンス、及び公平で透明性の高い経営を確保していくことがコーポレート・ガバナンスの基本であると考え、内部統制システムの基本方針を定め、必要な体制の整備を図って参ります。詳細は「第4[提出会社の状況] 4 [コーポレート・ガバナンスの状況等] (1) [コーポレート・ガバナンスの概要] ③ 企業統治に関するその他の事項 a.内部統制システムの整備の状況」に記載のとおりです。

 

(2) 戦略

(人的資本に関する戦略)

 当社では、人的資本が事業運営上重要であると考えており、人材の多様性の確保、働きやすい制度構築及び運用に努めております。具体的には、在宅勤務制度、フレックス制度の導入等によりワークライフバランスの向上を図っております。また、多くの従業員に対してストックオプションを付与しており、インセンティブ効果や退職抑止を図るとともに、業務に役立つ資格を取得するための支援制度等も行っております。これらの制度は、既存の従業員の退職抑止、採用競争に勝ち事業活動を運営する上での基礎になると考えております。

(気候変動等に関する戦略)

 当社は宿泊業界に対してITサービスを提供する事業を運営しており、気候変動等が当社に与えるリスクは限定的であると考えておりますが、事業運営上、DXの推進によりペーパーレス化、節電等の環境負荷低減に取組んでおります。

 

(3) リスク管理

 取締役会、経営会議のほか、リスク・コンプライアンス委員会等の各種の専門委員会の合議により、具体的な執行内容の決定と進捗管理が行われ、必要に応じてリスク管理体制の見直しを行っております。各部門においては、決定された事項、具体的な施策及び効率的な業務の執行と進捗の報告が行われておりリスクに応じた適切な対応を行っております。

 

(4) 指標及び目標

 当社では、配置・昇進等の各段階において性別、国籍、年齢等による区別なく実力や成果に応じた評価・処遇を行っているため、属性による目標値等は定めておりませんが、外国人や女性の従業員が多く活躍しております。今後も継続してより多様な人材の確保・育成、多様な人材が活躍できる環境の整備に取り組んでまいります。

 これらの取組に係る指標及び目標については、当社の人的資本規模に対して特定の数値的目標を採用することが困難であるため現在のところ具体的な設定はございませんが、今後も各取組の継続や見直しを通じて、持続可能な社会の発展への貢献と、企業価値の向上を目指して参ります。

 

3 【事業等のリスク】

本書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が提出会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであり、将来において発生する可能性があるすべてのリスクを網羅するものではありません。また、当社がコントロールできない外部要因や必ずしもリスク要因に該当しない事項についても記載しております。当社はこれらのリスク発生の可能性を十分に認識した上で、「第4[提出会社の状況] 4 [コーポレート・ガバナンスの状況等] (1) [コーポレート・ガバナンスの概要] ③ 企業統治に関するその他の事項 b.リスク管理体制の整備の状況等」に記載のとおり、リスク・コンプライアンス委員会にて協議の上リスク回避あるいは発生時に迅速に対応する所存ですが、当社の経営状況、将来の事業についての判断及び当社株式に対する投資判断は、本項記載内容を慎重に検討した上で行われる必要があると考えます。

 

各リスクについて、発生可能性、発生する可能性のある時期、影響度、総合的な重要性については、下表のとおりです。

No.

リスク

発生可能性

時期

影響度

重要性

宿泊市場について

特定時期なし

重要

新規事業・サービスの立上げに伴うリスクについて

短期的

特に重要

海外事業におけるリスクについて

短期的

特に重要

競合について

特定時期なし

重要

 

大口・大手(注)の契約先の倒産・廃業について

 

特定時期なし

設備及びネットワークシステムの安定性について

短期的

特に重要

個人情報保護について

特定時期なし

重要

法的規制について

期的

特に重要

知的財産について

期的

10

新型コロナウイルス感染症以外の感染症について

長期的

11

業績の季節偏重について

短期的

重要

12

新株予約権の行使による株式価値の希薄化について

短期的

重要

13

配当政策について

特定時期なし

14

社歴が短い、小規模組織であることについて

長期的

重要

15

特定人物への依存について

長期的

重要

16

税務上の繰越欠損金について

長期的

17

過年度業績等について

特定時期なし

重要

 

各リスクの具体的な内容は、下記のとおりです。

 

1 宿泊市場について

新型コロナウイルス感染症のまん延前である2019年までにおいては、訪日外国人数の増加もあり、年ごとの延べ宿泊者数は継続的に増加してまいりました(国土交通省観光庁「宿泊旅行統計調査」によります)しかしながら、2020年以降、新型コロナウイルス感染症のまん延により宿泊業界は大きな影響を受けました。新型コロナウイルス感染症以外にも様々な要因により、宿泊市場が影響を受ける可能性があります。たとえば、自然災害などの天変地異、新型コロナウイルス感染症以外のウイルス性の疾患の流行、国際紛争等の不測の事態による国内旅行者、訪日外国人の減少等により、宿泊施設の収益を悪化させ、宿泊施設のDXへの取組が減衰するような場合には、当初計画していたような営業収益の成長が見込めず、当社の事業及び業績に影響を与える可能性があります。当該リスクは完全に排除できる性格のものでないことから、市況の急変等の場合においては、顕在化する可能性があると認識しております。

 

2 新規事業立上げに伴うリスクについて

当社はさらなる事業の拡大を目指し、新規サービスを視野に入れ事業展開を行っております。早期の収益化ができるよう、事前にサービス、プロダクトを綿密に検討の上で実施していく方針です。しかしながら、新規事業においては、安定して収益を生み出すまである程度の時間がかかることも予想され、その結果当社の営業収益率の低下を招く可能性があります。また、tripla Analytics、tripla Link、tripla Page等の新規サービスは販売開始前であり、採算性には不透明な点があるため予想した収益が得られない可能性があります。

このようなリスクが顕在化する可能性は、翌期においても相応に存在すると認識しております。当社は、新規事項の概況及び市場動向を注視しながら、適切なタイミングで事業の再編や構造改革を実施するよう努めております。

 

3 海外事業におけるリスクについて

当社は2023年11月に、BookandLink社の株式取得を完了し、BookandLink社及びSJM社を子会社といたしました。
また、2023年12月に、Surehigh社の株式を取得する契約を締結いたしました。Surehigh社の株式取得も契約どおり完了した場合には、インドネシア、台湾を中心として海外に多くの顧客が増え、営業収益に占める海外子会社の割合も増加することとなります。当社は、株式取得時点におけるDDにおいて、リスクをDDで把握した上で、将来の事業計画を策定の上、事業計画を策定しております。しかしながら、シナジーを生み出すには時間が掛かることも予想され、その結果、当初の事業計画の遅れを招き、株式やのれんの減損損失が発生し、財務面に影響を与える可能性があります。また、法務DDは行った上で買収を行っておりますが、海外の法令等の変更に関するリスク、重要な従業員の退職等が影響を与える可能性があります。
 このようなリスクが顕在化する可能性は、翌期においても相当に存在すると認識しております。当社は、各子会社及び弁護士事務所を含めた外部の専門家との各種連携を進め、事業計画の達成に努めます。 

 

4 競合について

当社が事業を行っているtripla Bookやtripla Botは、コアな特許等による参入障壁が存在しない業界であるため、当該市場にも競合他社が複数存在しております。当社は競合他社のプロダクト、サービスの情報を把握の上、日々改善に努めておりますが、競合他社のプロダクト、サービスのレベルが大幅に上昇すること、強力な新規参入者が市場参入することにより、当社の優位性が損なわれるような場合、当社の営業収益が低下し、業績に影響を与える可能性があります。

このようなリスクが顕在化する可能性は低いものの、中長期的に顕在化する可能性があると認識しております。当社は技術力の強化、サービス品質の向上等により、競争力の維持に努めております。

 

5 大口・大手(注)の契約先の倒産・廃業について

当社は、2023年10月末時点において、2,897施設の宿泊施設を顧客として、事業を展開しております。当社の顧客の中には、複数の施設を抱えるチェーンホテルブランドもあります。新型コロナウイルス感染症のさらなる拡大を始めとした様々な要因により、このようなチェーンホテルが倒産・廃業となる可能性があります。このような場合、当社の営業収益が低下し、業績に影響を与える可能性があります。

このようなリスクが顕在化する可能性は低いと予想しております。当社は特定の大口顧客には依存しておらず、営業収益の10%を超える取引先としては、「4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」の「4 生産、受注及び販売の実績」に記載のとおり、2022年10月期及び2023年10月期にはありませんでした。特定の大口顧客に依存せず、宿泊施設に広くあまねく利用して頂くよう努めております。

 

(注) 大口・大手は、当該顧客への営業収益の割合が、営業収益全体の10%を超える取引先を言います。

 

6 設備及びネットワークシステムの安定性について

当社のサービスは「tripla Book」、「tripla Bot」、「tripla Connect」を含め多くがクラウド型のシステムの提供であるため、常時、宿泊施設、ユーザーとの通信が発生いたします。また、当社のサービスはAmazon Web Service(以下、「AWS」という。)等の外部クラウドサーバを利用しております。そのため、当社の事業は通信ネットワーク及びAWSに依存しており、システムに障害が生じた場合、当社のサービスが停止する可能性があるため、不正アクセスに対するモニタリング、ファイヤーウォールの設定など、システム障害を未然に防ぐための取組を行っております。しかしながら、上記の取組をもってしても、すべての可能性を想定しての対策は困難であり、火災、地震などの自然災害や外的破損、人為的ミスによるシステム障害、想定外の長期間に渡る停電、コンピュータウイルスの侵入やクラッカーによる妨害等、その他予期せぬ事象の発生により、万一、当社の設備及びネットワークの利用に支障が生じた場合には、当社はサービスの停止を余儀なくされることとなり、当社の営業収益が低下するとともに営業費用が増加し、事業及び業績に影響を与える可能性があります。

このようなリスクが顕在化する可能性は低いものの、翌期においてもリスクは常に存在すると認識しております。当社は、障害に対して迅速に対応すべく、システム稼働状況のモニタリングを継続的に行っており、障害の発生又はその予兆を検知した場合には速やかに連絡が入り、早急に復旧を行うための体制を整備・運用しております。これにより、障害発生の未然防止及び障害発生時の影響最小化に努めております。なお、AWSはFISC安全対策基準(注)を満たす安全性を備えております。

(注)「FISC」とは、金融情報システムに関連する様々な問題についての研究調査や、安全対策の普及・推進活動を行うため、1984年に設立された財団法人(2011年に公益財団法人へと移行)であり、「FISC安全対策基準」とは高い信頼性とセキュリティが求められる金融情報システムを構築する際の、安全対策の共通の指針となることを目的に、1985年に策定されたものです。

 

7 個人情報保護について

当社は、当社ウェブサイト上の各サービスの中で、ユーザーの個人情報を取得し、また保有しております。その個人情報の管理は、当社にとって重要な責務と認識しており、厳重なアクセス管理を行うとともに、各種不正アクセス防止対策を行うなど、ネットワークセキュリティの向上に努めております。一方、「個人情報の保護に関する法律」(個人情報保護法)は、個人情報を利用して事業活動を行う法人及び団体等に対して、個人情報の適正な取得、利用及び管理等を義務付け、個人情報の有用性に配慮しつつ、個人の権益保護をはかることを目的とした法律であり、当社においても個人情報取扱事業者としての義務が課されているため、当該法律の規定を踏まえた個人情報の取扱いに関して、個人情報保護の方針(以下「プライバシーポリシー」という。)を定め、運用しております。また、プライバシーポリシーの運用を徹底するとともに社内の情報アクセス権を管理し、かつ個人情報の取扱いに関する社内教育を行うなど、管理運用面についても、慎重を期しております。しかしながら、個人情報が外部に流出したり悪用されたりする可能性が皆無とは言えず、かかる事態が発生した場合には、当社の風評の低下によるサービス利用者の減少、当該個人からの損害賠償請求等が発生し、当社の事業及び業績に影響を与える可能性があります。

このようなリスクが顕在化する可能性は、コンピュータウイルスによる被害等が社会的に発生しており、コロナ禍により在宅勤務が増加している昨今、当社においても翌期以降、相応に存在すると認識しております。当社では、システム上のセキュリティ対策やアクセス権限管理の徹底に加え、プライバシーマークの取得、当該公的認証に準拠した規程・マニュアルの整備・運用、各従業員への研修等を行うことで、個人情報管理体制の強化に努めております。

 

8 法的規制について

当社はインターネットを通じて、インターネットユーザーに各種サービスを提供しておりますが、インターネットに関しては法的整備の不備が各方面から指摘されており、当社事業を規制する法令等が今後新たに制定される可能性があります。このような場合、当社の事業展開に制約を受け、当社の事業及び業績に影響を与える可能性があります。宿泊業界においては、「旅行業法」、「旅館業法」等関連事業法令の規制があります。これらの法令等の改正や新たな法令等の制定により規制強化が行われた場合、当社の事業展開に制約を受け、当社の事業及び業績に影響を与える可能性があります。また、「住宅宿泊事業法」もあり、同法については規制が強く事業展開については慎重に見極めながら行ってまいります。

このようなリスクが顕在化する可能性は低いと予想しております。当社は、法制改正の動向などの情報収集を適宜行い、適時に対応できるようにすることによりリスクの軽減を図っております。

 

9 知的財産権について

当社は、当社が提供するサービスに関し、知的財産権を登録しておりません。現時点において、当社は第三者の知的財産権は侵害していないものと認識しておりますが、万一、知的財産権の侵害を理由として、第三者より損害賠償請求及び使用差止請求等を受けた場合には、当社の事業及び業績に影響を与える可能性があります。当社が属するIT事業において知的財産権の状況を完全に把握することは困難であり、当社の事業に関連する知的財産権について第三者の特許取得が認められた場合、あるいは将来特許取得が認められた場合、当社の事業遂行の必要上これらの特許権者に対してライセンス料を負担する等の対応を余儀なくされる可能性があり、当社の事業及び業績に影響を与える可能性があります。

このようなリスクが顕在化する可能性は低いと予想しております。当社は、第三者の知的財産権を侵害しないよう調査を行っております。また、必要に応じて専門家と連携を取りリスクの軽減を図って参ります。

 

10 新型コロナウイルス感染症以外の感染症について

2020年から新型コロナウイルス感染拡大が始まり、旅行需要に対して大きな影響を与えましたが、新型コロナウイルス感染症以外にも、感染症が流行する可能性があります。2003年に重症急性呼吸器症候群(SARS:Severe Acute Respiratory Syndrome)、2012年に中東呼吸器症候群(MERS:Middle East Respiratory Syndrome)が海外で流行しました。新たな感染症の発現、流行により、予約数に応じた従量収益の減少、及び新規契約獲得の鈍化や閉館等による契約数の減少等による営業収益の減少等の当社の事業及び業績に影響を与える可能性があります。

このようなリスクが顕在化する可能性は低いと予想しております。顕在化した場合には、新型コロナウイルス感染症で培った対応を活かし感染予防策を取ることに加え、状況に応じて有効な対策を取ることによりリスクの軽減を図って参ります。

 

11 業績の季節偏重について

当社の営業収益の一部は宿泊チェックアウト時に発生する取扱高・GMVに連動して課金しています。そのため、旅行需要が多いシーズン(8月等)に営業収益も多くなる傾向にあります。そのため、新型コロナウイルス感染症をはじめとする感染症の蔓延など何らかの理由により、旅行シーズンの営業収益が計画どおりに進捗しなかった場合、当社の営業収益が低下し、業績に影響を与える可能性があります。

新型コロナウイルス感染症は感染症法上の位置付けも5類へ移行され、社会活動が正常化に向かっていることから、新型コロナウイルス感染症及び新たな感染症の拡大により、このようなリスクが顕在化する可能性は低いと予想しております。なお、第8期(2022年10月期)及び第9期(2023年10月期)における当社の四半期の営業収益の推移は下記のとおりです。

 

・第8期(2022年10月期)

 

 

第1四半期

(11月~1月)

 

 

第2四半期

(2月~4月)

 

 

第3四半期

(5月~7月)

 

 

第4四半期

(8月~10月)

 

通期

営業収益(千円)

176,651

163,757

214,363

263,018

817,791

構成比(%)

21.6

20.0

26.2

32.2

100.0

 

(注)上記第1四半期及び第2四半期の金額については、監査法人によるレビューは受けておりません。

 

 

・第9期(2023年10月期)

 

 

第1四半期

(11月~1月)

 

 

第2四半期

(2月~4月)

 

 

第3四半期

(5月~7月)

 

 

第4四半期

(8月~10月)

 

通期

営業収益(千円)

263,667

276,157

290,424

345,959

1,176,209

構成比(%)

22.4

23.5

24.7

29.4

100.0

 

 

12 新株予約権の行使による株式価値の希薄化について

当社は、役員及び従業員に対するインセンティブを目的として新株予約権を付与しており、本書提出日現在における付与数は340,400株であり、本書提出日現在における発行済株式総数に対する潜在株式数の割合は、6.12%となります。これらの新株予約権が行使された場合、当社株式が発行され、既存株主が保有する株式の価値及び議決権割合が希薄化する可能性があります。

当社では適切な資本政策により、新株予約権の付与割合(将来株式価値の希薄化程度)をコントロールしております。

 

13 配当政策について

当社は、株主に対する利益還元については経営の重要課題の一つと位置付けておりますが、当社は現時点において配当を実施しておりません。今後におきましては、経営成績、財政状態、事業計画の達成状況等を勘案しながら、株主への利益配当を検討していく方針であります。しかしながら、当社の事業が計画どおり推移しない場合など、配当を実施できない可能性があります。

当社は未だ成長過程にあり、将来の事業展開と財務体質強化のために必要な内部留保の確保を優先することが、株主への最大の利益還元につながるものと判断しております。

 

14 社歴が短い、小規模組織であることについて

当社は、2023年10月期が設立第9期目であり、社歴は短く、組織体制は未だ小規模であり、業務執行体制及び内部管理体制もそれに準じたものとなっております。当社は、今後の業務拡大に伴い、内部管理体制及び業務執行体制の充実を図っていく方針ではありますが、これらの施策に対し十分な対応ができなかった場合は、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

このようなリスクが顕在化する可能性は低いと予想しております。当社は、事業拡大に応じて人員の増強や内部管理体制の一層の充実を図って参ります。

 

15 特定人物への依存について

当社の創業者であり、代表取締役でもある高橋和久、鳥生格の両氏は、当社事業に関する豊富な経験と知識を有しており、経営方針や事業戦略構築など、当社の事業活動全般において重要な役割を果たしております。代表取締役CEOである高橋和久は、全社的な経営戦略全般において重要な役割を果たしております。代表取締役CTOである鳥生格は、全社的な経営戦略及びサービス・プロダクトの戦略において重要な役割を果たしております。当社は事業拡大に伴い、取締役会等における役員及び幹部社員との情報共有や経営組織の強化を図り、両氏に依存しない経営体制の構築を進めておりますが、何かしらの理由により両氏のうちいずれかが業務を継続することが困難となった場合には、当社の経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

このようなリスクが顕在化する可能性は低いと予想しております。当社は、両氏に過大な依存をしない経営体制を構築すべく、幹部社員の情報共有や権限委譲等によって両氏への過度な依存の脱却に努めております。

 

16 税務上の繰越欠損金について

2023年10月期末時点において、当社に税務上の繰越欠損金が存在しております。当社の経営成績が順調に推移することにより、繰越欠損金が解消した場合には、通常の税率に基づく法人税、住民税及び事業税が計上されることとなり、当期純損益及びキャッシュ・フローに影響を与える可能性があります。

このようなリスクが顕在化する可能性は、高いと認識しております。

 

17 過年度業績等について

当社の過去5期間における主要な経営成績の推移は、「第1 企業の概況 1 主要な経営指標等の推移」に記載のとおりであります。第7期(2021年10月期)までの期間においては、継続的に営業損失、経常損失、当期純損失を計上しておりました。また、第6期(2020年10月期)及び第7期(2021年10月期)においては、tripla Bookによる宿泊代金の預り金を除くと継続的に営業キャッシュ・フローの赤字を計上しておりました。一方、宿泊市場向けに市場展開を行っており、新型コロナウイルス感染症の影響下にあっても、導入施設数、営業収益を拡大させるとともに、営業損失の額を減少させて参りました。

第8期(2022年10月期)においては営業利益、経常利益、当期純利益とも黒字化し、tripla Bookによる宿泊代金の預り金を除いた営業活動によるキャッシュ・フローもプラスに転じました。また、第9期(2023年10月期)においては営業収益、経常利益、当期純利益とも第8期を上回りました。

当社は、今後も導入施設数の拡大、取扱高・GMVの増加等により収益獲得を進めるとともに、規律あるコスト管理を行うことで黒字を維持していく方針でありますが、計画が想定どおりに進まない場合には、当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす可能性があります。当該リスクが顕在化した場合でも会社運営が行えるよう、手元流動性を確保いたします。

このようなリスクが顕在化する可能性は、中程度と認識しております。

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という)の状況の概要は次のとおりであります。

 

1.財政状態の状況

(資産)

事業年度末における資産合計は、前事業年度末に比べ3,924,417千円増加し、5,805,200千円となりました。流動資産は3,887,910千円増加し、5,736,898千円となりました。主な要因は、現金及び預金の増加3,791,509千円であり、tripla Bookにおける宿泊代金の決済の増加等による預り金3,124,531千円の増加、株式の発行による645,019千円の増加等によるものであります。固定資産は36,507千円増加し、68,302千円となりました。主な要因は、繰延税金資産の増加26,919千円によるものであります。

(負債)

事業年度末における負債合計は、前事業年度末に比べ3,113,506千円増加し、4,769,534千円となりました。流動負債は3,144,190千円増加し、4,592,849千円となりました。主な要因は、tripla Bookにおける宿泊代金の決済の増加等による預り金の増加3,124,531千円となります。固定負債は前事業年度末に比べ30,684千円減少し、176,685千円となりました。これは借入金の返済によるものです。

(純資産)

事業年度末における純資産合計は、前事業年度末に比べ810,910千円増加し、1,035,665千円となりました。主な要因は、株式の発行による645,019千円の増加、当期純利益165,987千円の計上による増加によるものです。

 

2.経営成績の状況

当事業年度におけるわが国経済は、物価高が継続する中でも、新型コロナウイルス感染症に関する各種行動制限の緩和が進み、経済活動の正常化による個人消費やインバウンドなどの持ち直しがみられました。その一方で、円安基調の経済情勢を背景としたエネルギー価格の高騰、物価の上昇、各国の金利政策等により、景気の先行きは不透明な状況が継続しております。

当社のホスピタリティソリューション事業と関連性がある宿泊業界においては、行動制限の解除、入国規制の緩和に続き、2023年3月13日から、マスクの着用は個人の判断に委ねる方針を発表、2023年5月8日に、新型コロナウイルス感染症を2類相当(新型インフルエンザ等感染症)から5類感染症へ移行する等、正常化に向けた動きが進んでいく中、宿泊者数は回復に向かいました。観光庁の統計によると、当事業年度における延べ宿泊者数(訪日外国人旅行者を含む)は、新型コロナウイルス感染症拡大前の2019年の同月と比較し、98%まで回復いたしました。内訳としては、日本人の宿泊者数は100%となり2019年の水準まで回復した一方、訪日外国人の宿泊者数においては86%に留まりました。ただし、訪日外国人の宿泊者数についても、2022年10月期が7%であったものの、2023年7月以降は2019年同月を上回る宿泊者数が継続しております。なお、延べ宿泊者数については、国土交通省観光庁の発表する数値に基づき集計しております。

 新型コロナウイルス感染症によって生活様式の変化を強いられていた状況から正常化へ向けて進行する中、当社ホスピタリティソリューション事業においては、顧客価値向上のため、前事業年度に引き続き、主要サービスである「tripla Book」及び「tripla Bot」、2022年10月期にローンチした宿泊業界特化型のCRM・MAツールである「tripla Connect」等の機能改善を行うとともに、新サービスの開発に注力いたしました。tripla Bookの機能改善として、株式会社ホワイト・ベアーファミリーが提供するダイナミックパッケージとの連携を開始いたしました。また、施設数を積み上げる営業活動に注力し、ルートインホテルズを始めとした多くの契約を獲得いたしました。加えて、2023年3月には韓国の宿泊施設への販売を目的とし韓国支店を設立、2023年7月には台湾で「tripla Connect」の販売を開始、2023年11月には「tripla Boost」の販売を開始いたしました。当社の成長戦略の柱である海外展開を進めて参ります。

 このような取組の結果、tripla Bookの施設数は、当事業年度において、前事業年度末より861施設増の2,485施設、tripla Botの施設数は、当事業年度において、前事業年度末より558施設増の1,666施設となりました。また、取扱高・GMV(Gross Merchandise Value)も、当事業年度において、前事業年度比95.5%増の64,369百万円となりました。

以上の結果、当事業年度の営業収益は1,176,209千円(前事業年度比43.8%増)となりました。利益面については、営業利益は177,115千円(前事業年度比111.7%増)、経常利益は166,692千円(前事業年度比121.7%増)、当期純利益は165,987千円(前事業年度比121.6%増)となりました。

なお、当社はホスピタリティソリューション事業の単一セグメントであるため、セグメント毎の記載はしておりません。

 

3.キャッシュ・フローの状況

事業年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という)は5,468,162千円となり、前事業年度末から3,791,509千円増加いたしました。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

事業年度において営業活動の結果獲得した資金は、3,191,288千円(前事業年度は944,437千円の獲得)となりました。これは主に、税引前当期純利益165,529千円による増加、預り金の増減額3,124,531千円による増加等によるものです。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

事業年度において投資活動の結果使用した資金は、8,859千円(前事業年度は5,000千円の使用)となりました。これは主に、有形固定資産の取得による支出5,715千円等によるものです。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

事業年度において財務活動の結果獲得した資金は、606,834千円(前事業年度は42,052千円の使用)となりました。これは主に、株式の発行による収入645,019千円によるものです。

 

4.生産、受注及び販売の実績
a 生産実績

当社は、インターネット上での各種サービスを主たる事業としており、生産に該当する項目がないため、生産実績に関する記載はしておりません。

 

b 受注実績

当社は受注生産をしておりませんので、受注実績に関する記載はしておりません。

 

c 販売実績

当社は、ホスピタリティソリューション事業の単一セグメントでありますが、以下のとおりサービスごとに記載しております。

なお、第9期事業年度における販売実績は次のとおりであります。

 

金額(千円)

前期比(%)

1,176,209

+43.8

 

(注) 1.上記の金額には、tripla Bookによる収益を含めております。当該金額は、第9期事業年度については766,060千円であります。当該数値は関連するオプションの収益を除いた数値であります。

2.上記の金額には、tripla Botによる収益を含めております。当該金額は、第9期事業年度については401,948千円であります。

3.上記の金額には、System Integrationに掛かる一時的な収益を含めております。当該金額は、第9期事業年度については8,200千円であります。

4.主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合

  主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合については、総販売実績に対する割合が10%以上を占める相手先がいないため記載を省略しております。

 

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は、次のとおりであります。

なお、本文中における将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものであります。

 

1 経営成績の分析

当社の当事業年度の営業収益は1,176,209千円千円(前事業年度比43.8%増%増)、営業利益は177,115千円(前事業年度比112円%増)、経常利益は166,692千円(前事業年度比122円%増)、当期純利益は165,987千円(前事業年度比122円%増)となりました。

 

(営業収益)

当事業年度の営業収益は1,176,209千円千円(前事業年度比43.8%増)となりました。これは、tripla Bookの施設数が前事業年度から861施設増加し、当事業年度末において2,485施設となったこと、tripla Botの施設数が前事業年度から558施設増加し、当事業年度末において1,666施設となったこと、取扱高・GMVが当事業年度において64,369百万円(前事業年度比95.5%増)となったことによるものであります。導入施設数については大手チェーンホテルへの導入等により堅調に推移したと考えております。一方、取扱高・GMVについては、コロナ禍の影響による宿泊需要の低迷が当期においても継続した結果、取扱高・GMVの下落圧力となりました。

 

(営業利益)

当事業年度の営業利益は177,115千円(前事業年度比111.7%増)となりました。営業力及び商品開発強化などに対応する体制強化を行う一方で、業務改善等による生産性の向上に努めた結果、営業利益が大きく増加したと考えております。

 

(営業外収益、営業外費用及び経常利益)

当事業年度の営業外損益は、主に、上場関連費用等による営業外費用5,747千円を計上いたしました。この結果、経常利益は166,692千円(前事業年度比121.7%増)となりました。

 

(特別利益、特別損失、当期純利益)

当事業年度の特別損益は、主に、減損損失1,111千円を計上いたしました。この結果、法人税等△457千円計上後の当期純利益は165,987千円(前事業年度比121.6%増)となりました。

 

2 キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

当事業年度のキャッシュ・フローの分析については、「(1) 経営成績等の状況の概要 3.キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

当社は、事業運営上必要な資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としております。短期運転資金、長期運転資金の調達について、自己資金又は金融機関からの借入を基本としており、都度最適な方法を選択しております。当社は設備投資については「第3 設備の状況」に記載のとおり少額であり、必要資金は具体的には、人件費、広告宣伝費等を含む運転資金、及び長期借入金の返済となります。特に、新しいサービス・プロダクトの開発、既存サービス・プロダクトの機能拡充のためのエンジニア採用等について資金配分を進めて参ります。

なお、当事業年度末における借入金の残高は207,369千円であります。また、当事業年度末における現金及び現金同等物の残高は5,468,162千円であります。

なお、当社は、ホスピタリティソリューション事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載を省略しております。

 

3 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社の財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この財務諸表の作成にあたりまして、事業年度末日における資産及び負債、会計期間における収益及び費用について会計上の見積りを必要としております。この見積りに関しては、過去の実績及び適切な仮定に基づいて合理的に計算しておりますが、実際の結果と相違する場合があります。

なお、財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 財務諸表等 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。

 

4 経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおり、当社は経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標として、導入施設数(tripla Book、tripla Bot、当社のサービスを複数導入している施設数)、取扱高・GMV等を重要な経営指標と位置付けております。当該指標の具体的な数値については、「(1) 経営成績等の状況の概要」に記載のとおりであります。

 

5 経営成績に重要な影響を与える要因について

経営成績に重要な影響を与える要因については、「3 事業等のリスク」に記載のとおり、様々なリスク要因が当社の経営成績に影響を与えるおそれがあることを認識しております。これらリスク要因の発生を回避するためにも、提供するサービスの機能強化、人員増強、財務基盤の安定化等、継続的な経営基盤の強化が必要であるものと認識し、実行に努めております。

 

5 【経営上の重要な契約等】

(1) 取得による企業結合①

 当社は、2023年9月13日開催の取締役会において、BOOKANDLINK PTE. LTD.の株式を取得し子会社化することを決議し、同日付で株式譲渡契約を締結し、2023年11月8日に株式を取得いたしました。

 なお、詳細につきましては、「第5  経理の状況  1 財務諸表等  (1)財務諸表  注記事項(重要な後発事象)」に記載のとおりであります。

 

(2) 取得による企業結合②

 当社は、2023年12月15日開催の取締役会において、旭海國際科技股份有限公司の株式を取得し子会社化することを決議し、同日付で株式譲渡契約を締結いたしました。

 なお、詳細につきましては、「第5  経理の状況  1 財務諸表等  (1)財務諸表  注記事項(重要な後発事象)」に記載のとおりであります。

 

6 【研究開発活動】

該当事項はありません。