第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 当社の経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。

 

(1)経営方針

 当社は「ゆたかな世界を、実装する」を企業理念に掲げ、テクノロジーの産業界への社会実装を支援することにより、産業横断的なイノベーションを創出し、社会に貢献し続けることを目指しております。どのような素晴らしいテクノロジーであっても、それが社会に実装されていない場合は価値を見出すことはできない、という背景に基づいております。

 そのため、当社は「テクノプレナーシップ」(進化するテクノロジーを用いて(Technology)、どのような社会を実現していくかを問い続ける姿勢(Liberal Arts)、そしてこの円環を推進する力(Entrepreneurship)の造語)を行動精神とし、「テクノロジーの力で産業構造を変革する」というミッション、「イノベーションで世界を変える」というビジョンのもと、事業活動に取り組んでおり、これらの活動が企業価値の最大化につながると考えております。

 

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図1:テクノプレナーシップ概念図

 

 

(2)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 当社は中長期的な企業価値の向上を図るため、デジタルプラットフォーム事業における「トランスフォーメーション領域」、「オペレーション領域」のビジネスを成長させるとともに、2領域で得た知見を事業基盤であるABEJA Platformに蓄積し、継続的に強化・発展するサイクルを形成することが重要と考えております。このため、当社は顧客支援の総量である売上高、当社事業の基盤となるABEJA Platformの活用を示すABEJA Platform関連売上比率、安定的な収益獲得を示す継続顧客からの売上比率、当社の収益力を示す営業利益を重要な指標としております。

 

(3)経営環境

 当社が創業した2012年は、AI、機械学習の研究分野において、ディープラーニングが登場し大きなブレークスルーが起きた年であり、それまでと比べ、AIを活用できる事業領域が大幅に拡大したといわれております。

 産業界においては、「第4次産業革命」と呼ばれるAI、IoT、ビッグデータ、ロボットの活用が成長戦略の中核として捉えられるようになり、労働力が減少する市場において、生産性の向上や技術の継承、ビジネスモデル自体の変革を目的として、デジタルトランスフォーメーションの推進が重要なテーマとして掲げられております。

 足元、LLM活用は企業ごとにトライアルや業務内の個人利用から業務組込みまで段階差はあるものの、需要は堅調に推移しています。LLM活用の重心は「単発の個別業務・個人利用」から「業務の中核」へ移行しつつあり、デジタル空間での取り組みは深化・拡大しています。

 こうした潮流のもと、当社はこれまでミッションクリティカル業務に対し、業務構造を踏まえたAI導入を積み上げてきました。中核業務でのLLM導入が進む深化・拡大局面において、この蓄積は当社の競争優位として一層の価値を発揮できると考えております。

 加えて、当社はLLMの知見をAIロボティクスへ展開する取り組みを強化しています。この取り組みを背景に当社は加入する一般社団法人AIロボット協会(AIRoA)を通じて、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)のプロジェクト「ロボティクス分野の生成AI基盤モデルの開発に向けたデータプラットフォームに係る開発」に参画しています。AIロボティクスは、ディープラーニングやLLMによるデジタル側の意思決定を実世界での行動へ接続することで、AIの適用領域をデジタル空間からリアル空間(フィールドオペレーション)へ広げる次の成長領域と捉えています。

 また、研究開発は当社の技術的優位の源泉であるため、中長期の競争力確保に向け、重点領域を定め、継続的に推進していきます。現在は国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)のプロジェクト「ロングコンテキスト対応基盤モデルとAIエージェント構築に関する研究開発」(2025年7月採択、2026年2月まで実施予定)や、小型LLMの高精度化、AIロボティクス適用等も並行して推進しています。

 全体としては、良好な事業環境のもとでLLMは深化・拡大局面にあり、AIロボティクスにより事業領域はリアル空間まで拡張されていきます。このような中、当社はエンタープライズ案件と公的プロジェクトを並行して推進し、LLMを成長ドライバーに据え、AIロボティクスを次の柱として育成してまいります。

 なお、当社は「ABEJA Platform」を中心とした「トランスフォーメーション領域」、「オペレーション領域」において、様々な段階・ニーズの企業に対してサービス提供を行っており、一気通貫型で顧客を長期的に支援したいと考えております。個々のサービスを単独で比較した場合、コンサルティングファームやシステムインテグレータなどの競合は存在しますが、当社は一気通貫型の「ABEJA Platform」とそれに紐づく実装ノウハウを有しており、上流から下流まで一元的にサービス提供できる強みがあり、当該観点から参入障壁は高いと考えております。

 

(4)経営戦略

 当社は今後も拡大を続けるデジタルトランスフォーメーション市場の中で、さらなる事業成長を目指すため、ABEJA Platformの技術力・導入実績、テクノプレナーシップに基づく優秀な人材等の強みを背景に経営戦略を立案しております。

 

① 生成AI、LLMと周辺領域、AIロボティクス

 足元では生成AI、特にLLMの技術進化は顕著で、適用領域も拡大しており、当社ではよりミッションクリティカル性の高い業務へのAI導入が進むと見込んでおりました。現状はこの見立てに沿って推移していることから、引き続き、LLMとその周辺領域の機能・技術を注力領域としております。

 基盤モデルにつきましては、LLMの社会実装を意識しますと、コスト対精度が重要になることから、当社は特定タスクに特化したコストパフォーマンスの高い大規模・中規模基盤モデルを注力領域としております。現状、経済産業省「GENIAC」に採択されるなど、当社は大規模・中規模基盤モデルの構築実績と技術力を有しており、今後も継続的な研究開発を進めてまいります。

 また、基盤モデル単体とは別に、社会実装には周辺領域の機能・技術(AIエージェント、データベースとの連携、ユーザーとの連携、ガードレール、プライバシー保護等)が重要となります。周辺領域の機能・技術についてはABEJA Platformに搭載し、顧客企業の利用も進んでおりますが、基盤モデルの進化に適応していくため、継続して研究開発を行ってまいります。

 加えて、次の戦略領域として、当社の事業領域の拡張にもつながるAIロボティクスの実装・利活用に向けた取り組みを進めていきます。

 これら取り組みと、これまでABEJA Platformに搭載してきたHuman in the Loopなどの当社の強みを組み合わせて提供することにより、より付加価値の高いサービスを提供できると考えております。

 

② ABEJA Platformの拡充

 デジタルトランスフォーメーションやAI導入の進展に伴い、企業の抱える課題やニーズは多様化・複雑化することが見込まれます。当社はABEJA Platformの機能追加と、既存機能の改善を継続的に行い、多様化する顧客ニーズに対応し、提供価値の向上を図ってまいります。

 

③ 顧客基盤の拡大と深耕、ミッションクリティカル業務におけるサービス提供の拡大

 今後も国内デジタルトランスフォーメーション市場の拡大は見込まれており、当社の一層の成長・拡大の機会が存在しております。当社はこれまでの実績から得た知見を推進力として、新規顧客の獲得(顧客基盤の拡大)、既存顧客との取引関係の多様化(深耕)を図り、収益基盤の拡大を目指してまいります。また、技術の適用領域が拡大していることから、よりミッションクリティカル性が高い業務へのAI導入を実現してまいります。

 

④ 人材の採用、育成とカルチャーの醸成

 今後の市場拡大と当社の業容拡大に向けて、継続的に優秀な人材を採用、育成し、組織力の強化を図ることが重要と認識しております。当社の魅力である「最先端技術を活用した案件が多数あること」、「実運用を目指す思想とノウハウを有していること」、「技術に対する意識が高く、職種の垣根なく幅広い経験を積めるCDO輩出集団であること」を発信、アピールすることにより、人材の獲得につなげてまいります。

 

(5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

 当社はこのような経営環境等を踏まえ、さらなる事業成長を支えるため、以下の課題につき、優先的に対処してまいります。

 

① 人材の採用・育成

 当社は顧客ニーズの多様化、生成AI(特にLLM)及びAIロボティクス並びにそれらの周辺領域の機能・技術の進化に迅速に対応するため、多様な経歴、専門性を持つ「テクノプレナー人材」の確保、育成が必要と考えております。当社の企業理念や事業内容に共感し、高い意欲を持った優秀な人材を採用していくため、積極的な採用活動を進めるとともに、働きやすく自己研鑽できる環境・仕組みの整備に取り組んでまいります。

 

② 認知度の向上

 当社はこれまで自社カンファレンスの開催、広報活動、技術ブログの発信、研究開発活動の公開、マーケティング活動等を通じて、認知度の向上に取り組んでまいりました。今後も、より一層の当社及び当社サービスの認知度向上のため、これらの施策を推進し、人材の採用や新規顧客獲得につなげてまいります。

 

③ システムの安定性強化

 当社はインターネットを介したサービス提供を行っているため、当該システムを安定的に稼働させることが重要と考えております。そのために、サーバー設備の強化や、システム安定稼働のための人員確保等に努めてまいります。

 

④ 情報管理体制の強化

 当社はシステム運用やサービス提供の過程において、機密情報や個人情報を取り扱う可能性があり、その情報管理を強化していくことが重要であると考えております。現在、情報セキュリティに関する社内規程に基づき管理を徹底しております。また、当社は2018年にプライバシーマークを取得、2025年にISMS認証(ISO/IEC27001)を取得しております。今後も社内教育やシステムの整備等に継続して取り組んでまいります。

 

⑤ 内部管理体制の強化

 当社は成長段階にあり、業務運営の効率化やリスク管理の観点から、内部管理体制の強化が重要な課題であると考えております。このため、コーポレート機能を充実させ、経営の公平性・透明性の確保に向け、内部統制の整備・運用を強化し、コーポレート・ガバナンスの充実に取り組んでまいります。

 

⑥ 財務の充実と非連続的成長を支える資金の確保

 当社は今後の事業拡大に伴う人材採用及び継続的な研究開発などに加え、非連続的成長を目的とした戦略的M&Aの実行に備え、財務の充実と安定化を進めていくことが重要と考えております。今後も多様な資金調達手法を検討し、長期的な成長の実現に努めてまいります。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社のサステナビリティに関する考え方及び取り組みは、以下のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。

 

 当社は「ゆたかな世界を、実装する」を企業理念に掲げ、「テクノプレナーシップ」(「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題 (1)経営方針」参照)の行動精神に基づき、ミッションクリティカル業務へのAI導入支援等の事業活動を通じて、顧客企業のSDGs(持続可能な開発目標)の目標達成への取り組みに貢献してまいりました。SDGsが示す17の目標のうち、当社のサービスが利用されている主な項目は以下のとおりです(図1)。

 

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図1:当社のサービスが利用されているSDGsの項目と具体的な事例

 

 当社は、引き続き事業活動を通じたSDGsへの貢献を進めるとともに、以下の取り組み等により、さらなる提供価値の向上と当社の持続的な成長を図ってまいります。

 

(1)ガバナンス及びリスク管理

 当社では、サステナビリティに関する事項を含む全社的なコンプライアンス及びリスク管理について、代表取締役CEOを議長とするコンプライアンス・リスク管理委員会で整理、確認等を行っております。

 また、社会課題の解決にAIが寄与する一方、情報管理やプライバシー等の問題も指摘されるようになっている現状を踏まえ、当社では、AIに関する課題について外部の有識者が倫理、法務的観点から協議する委員会「Ethical Approach to AI(EAA)」を設置し、委員からの意見や知見を、経営や事業へ反映できるよう努めております。

 なお、当社のリスク管理体制の詳細については、「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等 (1)コーポレート・ガバナンスの概要」の「②企業統治の体制の概要及び当該体制を採用する理由」及び「③企業統治に関するその他の事項 a 内部統制システムの整備の状況」もご参照ください。また、当社のリスク管理の詳細は、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク (2)事業体制に関するリスク」に記載のとおりであります。

 

(2)人的資本に関する戦略

 当社は持続的な成長にあたり、市場の拡大や顧客ニーズの多様化に迅速に対応していくため、「テクノプレナーシップ」の行動精神を体現する「テクノプレナー人材」(テクノロジーを使ってビジネスにイノベーションをもたらす人材)を継続的に創出していくことが必要であると考えております。

 その実現に向けて、高い意欲を持つ多様性に富んだ優秀な人材の採用を行い、入社後に活躍できるよう定着や育成に関する様々な施策に取り組んでおります。

 

① 採用

 性別、年齢、国籍、新卒や中途採用等による区別なく、当社の企業理念や事業内容に共感し、多様な経験や価値観を有する優秀な人材を獲得するため、人材紹介や各種採用媒体等を通じた採用のほか、従業員からの紹介によるリファラル採用やインターンシップの受入れに取り組む等、積極的な採用活動を行っております。

 あわせて、当社のカルチャーや魅力をより理解してもらうために、従業員のインタビュー記事や従業員が執筆する技術関連の記事の発信等にも取り組んでおります。

 

② 定着

 働きやすく自己研鑽できる環境や、入社直後からモチベーション高く活躍できる仕組みを構築し、人材の定着に取り組んでおります。以下の施策以外にも、当事業年度における新たな取り組みとして、従業員持株会を設立し、同制度の運用の一環として奨励金を支給しております。これにより、従業員の財産形成の支援と、自社株保有を通じた会社への関心・エンゲージメント向上を図っております。

 

a.働き方

 各自のライフステージやライフプランに合わせた多様な働き方を実現するため、テレワークやフレックスタイム制度を導入し、地方在住を含むハイブリッドな働き方を選択することができる環境を整備しております。また、当事業年度は新たに、従業員の心身のリフレッシュを目的として、連続の休暇取得者に対して手当を支給する制度を導入いたしました。

 

b.コミュニケーション

 入社者への施策として、所属部署外に入社後のサポーターとして社内情報共有や関係者とつなげる役割等を持つ「コネクター」を据える制度や、入社者と所属部署や全社との関係構築を目的とした支援(飲食費補助等)等、社内交流を促進する様々な仕組みを用意しております。あわせて全社施策として、当社の行動精神を体現するメンバーの表彰制度や、従業員がプレゼンターとなり、開発中の自社サービスや新技術等、様々なテーマについて自由に話し、学びあう「ABECON」等の取り組みを行っております。

 

c.人事評価制度

 各自が担う職務役割の期待等を基にしたミッショングレード制を採用しており、客観的な評価や柔軟な人材任用を可能としております。また、半期ごとの目標に対しての達成結果によるパフォーマンス評価、当社の行動精神に関する360度多面評価を運用し、そのすべての結果を総合することによって適切な人事評価を行っております。

 

③ 育成

 一人ひとりの成長が、企業理念の実現や当社の持続的な成長につながると認識しており、テクノプレナー人材の創出に繋がる仕組みや自発的な成長を支援する制度等の構築に取り組んでおります。

 

a.成長促進に関する取組み

 当事業年度においては、社内DX、データ利活用や人材育成等に関する全社横断のプロジェクトを複数立ち上げ、特に人材育成に関しては成長促進に関するプロジェクトを推進してまいりました。技術、営業やマネジメントスキル等の領域ごとに所属部署の縛りなく組成されたプロジェクトチームにより、様々な施策の企画・運営を行っております。

 

b.成長支援に関する取組み

 自発的な学習や新技術に関するキャッチアップを支援するため、各自の成長やミッション遂行に必要となる書籍代やオンライン講座受講料等を支援するほか、新しい技術やサービスの検証を促進するための取り組みを行っております。

 

c.人材プロデュース会議

 メンバーのキャリアビジョン、現時点のスキルや取り組み状況等をもとに、マネージャ以上が中長期的な視点から成長支援の方針や具体的な方策を議論し、その結果をプロデューサーとしてコミットして推進しております。

 

 

(3)人的資本に関する指標及び目標

① 採用

 採用活動としては、以下の指標をモニタリングしております。

 ・従業員数

 ・男性従業員比率

 ・女性従業員比率

 ・外国籍従業員比率

 ・新卒採用数

 

② 定着

 現時点では、以下の指標をモニタリングしております。

 将来的には、ミッションへの共感や理解度、働きやすさ等に関するエンゲージメントサーベイの結果を指標とすることについても検討してまいります。

 ・平均年齢

 ・平均勤続年数

 ・平均年間給与

 ・有給休暇取得率

 ・男性労働者の育児休業取得率

 

③ 育成

 現時点では具体的な指標を設定しておりませんが、育成に関する取り組みについても、組織や従業員の状況を把握し会社の取り組みに反映していくため、関係するエンゲージメントサーベイの結果を指標とすることを検討してまいります。

 

 各指標の状況は下表のとおりであります。

 以下の指標をモニタリングするとともに、人的資本に関する戦略を踏まえ、各数値の維持又は改善を図ってまいります。

 

項目

指標

2022年8月期

2023年8月期

2024年8月期

2025年8月期

従業員数

82

103

125

133

男性従業員比率

87.8

89.3

89.6

88.0

女性従業員比率

12.2

10.7

10.4

12.0

外国籍従業員比率

4.9

2.9

1.6

1.5

新卒採用数

2

4

4

平均年齢

36.7

36.1

36.5

36.7

平均勤続年数

2.1

2.4

2.5

2.7

平均年間給与千円

8,590

8,879

9,062

9,527

有給休暇取得率)(注)

67.7

66.7

78.4

75.5

男性労働者の育児休業取得率

14.3

25.0

80.0

75.0

(注)「有給休暇取得率」は、次の式により計算しております。

    対象事業年度の取得日数合計÷対象事業年度の付与日数合計×100

 

3【事業等のリスク】

 本書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が提出会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであり、将来において発生の可能性があるすべてのリスクを網羅することを保証するものではありません。また、リスクの発生可能性、発生時期及び影響度についても、当社が判断したものであり不確実性を内包しているため、実際の結果と異なる可能性があります。

 

(1)事業環境に関するリスク

① デジタルトランスフォーメーション関連市場、AI市場の動向(発生可能性:低~中、発生時期:特定時期なし、影響度:中~大)

 今後、多様な産業においてデジタルトランスフォーメーションへの取り組み、AI導入が一層進展し、当社事業が属する市場は拡大を続けるものと見込んでおります。当社では、市場の動向を調査しその兆候を経営に反映させるとともに、顧客基盤の拡充を図っておりますが、企業の景気動向による影響やその他の各種新技術に対する投資を受け、市場の成長ペースが大きく鈍化した場合は、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。また、市場が成熟していないため、新規参入の増加等による価格競争の激化等が起こった場合には、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

② 競合環境(発生可能性:中、発生時期:特定時期なし、影響度:中~大)

当社が提供している関連サービスについては、他業種大手企業から高度に専門化した新興企業に至るまで、様々な企業による新規参入が多く見受けられ、類似のサービスを提供している会社も複数存在しております。これらの会社が当社と同様のサービスへ参入し競争が激化した場合は、当社の期待どおりに顧客を獲得・維持できないことも考えられます。当社は、早い段階から「ABEJA Platform」への戦略的な投資を実行し、AI導入実績について他社に先駆けて積み上げることによって、他社との差別化・競争優位性の確立に努めておりますが、他社との競合環境の変化によっては、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

③ 技術・ビジネスモデルへの対応(発生可能性:低~中、発生時期:特定時期なし、影響度:大)

当社が事業を展開しているデジタルトランスフォーメーション関連産業は、市場が未成熟であり、グローバル市場において技術革新のスピードやビジネスモデルの移り変わりが早いため、当社では新技術及び新サービスの開発を継続的に行うとともに、優秀な人材の確保に取り組んでおります。しかしながら、今後何らかの事由によって当社が市場の動向に適した技術やビジネスモデルを創出できない場合、当社のサービスが市場での競争力を失い、顧客の維持・獲得が困難になる可能性があります。その結果、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

④ 当社のビジネスモデルについて(発生可能性:中、発生時期:特定時期なし、影響度:中)

顧客企業に対してABEJA Platformの導入やインテグレーション(システム連携や実際の現場への施工)を行う場合、顧客企業の現行システムの状況などによってプロジェクト進捗が遅延する可能性がございます。当社では、ABEJA Platformの導入やインテグレーションを簡易化する追加機能開発、コンサルティングフレームワークの充実により、負荷を軽減させる取り組みを行っておりますが、当社の想定を上回る顧客企業数において進捗遅延や想定を超える期間を要した場合には、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑤ AIロボティクスの社会実装について(発生可能性:低~中、発生時期:特定時期なし、影響度:中~大)

当社はAIロボティクスを戦略領域として推進しています。リアル空間での社会実装に際しては、安全・製造物責任、情報系・制御系のセキュリティ、調達・保守、人材・体制等の要因により、立上げ遅延・追加コスト・一時的な運用停止が生じるおそれがあります。当社は受入基準の標準化、責任分界の明確化、監視・冗長化、体制強化等により低減を図りますが、これらの要因が顕在化した場合には、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑥ 事業の拡大について(発生可能性:中、発生時期:特定時期なし、影響度:中~大)

当社では、今後の成長機会の創出に向けて、既存の顧客企業及び見込み顧客企業のニーズを前提とした新機能の開発等を実施しております。また、収益源の多角化の観点から、現在の事業領域と異なる分野にも進出する可能性があります。当社では、収益見通しを吟味した上でこれらの取り組みについて進めておりますが、開発遅延や、現在の事業領域と異なる分野に進出した場合において、当該分野における収益化が進まない場合、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

また当社は、非連続的な成長を含む自社の成長のため、M&Aや資本業務提携は有効な手段の一つと考えております。M&Aや資本業務提携の実施にあたっては、対象企業の財務内容や契約関係等について事前調査を行い、リスクを検討した上で進めてまいりますが、対象企業における偶発債務の発生や未認識債務の判明など事前の調査によって把握できなかった問題が生じた場合や、事業計画が予定どおり進捗しない場合には、株式やのれんの減損処理を行う等、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑦ システム障害等(発生可能性:低、発生時期:特定時期なし、影響度:中~大)

当社の事業は、サービスの基盤をインターネット通信網に依存しているため、自然災害や事故等により通信ネットワークが遮断された場合や、システムへの一時的な過負荷によって当社のサーバーが停止した場合には、サービスを提供することが不可能となる若しくはサービスの提供に支障を与える可能性があります。また、「ABEJA Platform」はGCP(Google Cloud Platform)やAWS(Amazon Web Services)等のクラウド上で運営されているため、何らかの事情で当該クラウドサービスに障害等が発生した場合には、サービスを提供することが不可能となる可能性があります。さらに、現場側機器(ロボット・センサー・エッジ端末)や通信遮断等に起因する停止リスクが増える可能性があります。当社としましては、データのバックアップ、データセンターへの分散配置などによってトラブルへの備えをしておりますが、システムエラー、人為的な破壊行為、自然災害等やその他当社の想定していない事象の発生によりクラウドサービスの稼働が停止した場合や、コンピュータ・ウイルスやクラッカー等の侵入、その他の不具合によりシステム障害が生じた場合、一時的なサービス提供の停止及びそのことに伴う当社のサービスに対するレピュテーションの悪化や顧客からの損害賠償請求などが想定され、結果として当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑧ 先行投資から得られる効果が期待どおりに実現しないリスクについて(発生可能性:中、発生時期:特定時期なし、影響度:中)

当社において、先行的に研究開発費、広告宣伝費、人件費を投下し、研究開発と顧客企業獲得を進めることが必要であります。今後も、収益性の向上に努めながらも、事業成長のための投資を継続する方針です。

しかしながら、予期せぬ経営環境の変化、追加開発の必要性やその他の理由により、これらの先行投資が想定どおりの成果につながらなかった場合、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす場合があります。

 

⑨ 大規模な自然災害等について(発生可能性:低、発生時期:特定時期なし、影響度:中~大)

当社は、有事に備えた危機管理体制の整備に努め対策を講じておりますが、台風、地震、津波等の自然災害が想定を大きく上回る規模で発生した場合、当社又は当社の取引先の事業活動に影響を及ぼし、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(2)事業体制に関するリスク

① 優秀な人材の確保及び育成(発生可能性:中、発生時期:特定時期なし、影響度:中)

当社が今後更なる事業の拡大に対応するためには、優秀な人材の採用・育成が重要であります。具体的には、生成AI(特にLLM)のエンジニアやデータサイエンティストに加え、AIロボティクス関連の人材が必要であり、当社はこれらの人材の獲得・定着・育成に積極的に取り組んでおります。しかしながら、高度な技術を持つ人材の獲得競争は激化しており、事業規模の拡大に応じた社内における人材育成、外部からの優秀な人材の採用等が計画どおりに進まず必要な人材を確保することができない場合には、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

② 内部管理体制(発生可能性:低、発生時期:特定時期なし、影響度:中)

当社は、企業価値の持続的な増大を図るためにはコーポレート・ガバナンスが有効に機能することが不可欠であるとの認識のもと、業務の適正性及び財務報告の信頼性の確保、さらに法令遵守の徹底が必要と認識しております。そのため、当社では内部管理体制の強化に努めております。しかしながら、今後の事業の急速な拡大等により、十分な内部管理体制の構築が追いつかない状況が生じる場合には、適切な業務運営が困難となり、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

③ 特定の人物への依存(発生可能性:低、発生時期:特定時期なし、影響度:中)

当社の代表取締役CEOであります岡田陽介は、創業者であると同時に最高経営責任者として経営戦略、事業戦略等、当社の業務に関しての専門的な知識を有し、重要な役割を果たしております。当社では、他役員や社員への情報共有や権限委譲を進めるなど、代表取締役CEOに過度に依存しない経営体制の整備を進めております。しかしながら、何らかの理由により代表取締役CEOが当社の経営執行を継続することが困難になった場合には、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

④ 機密情報や個人情報に関わる情報管理及びプライバシー権の保護(発生可能性:低、発生時期:特定時期なし、影響度:中~大)

当社は、その業務の性格上、顧客側で保有している機密情報や個人情報に触れる場合があります。具体的には顧客の販売データ等の機密情報、顔認証に用いる画像データ等の個人情報を扱っております。情報の取扱いについては、情報セキュリティに関する規程、個人情報保護規程等を整備するとともに、プライバシーマーク及びISMS認証(ISO/IEC 27001)を取得することによって、適切な運用に努めております。しかしながら、このような対策にも関わらず当社の人的オペレーションのミス等、その他予期せぬ要因等により情報漏洩が発生した場合には、当社が損害賠償責任等を負う可能性や顧客からの信用を失うことにより取引関係が悪化する可能性があり、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑤ コンプライアンス体制(発生可能性:低、発生時期:特定時期なし、影響度:中)

当社は、今後企業価値を高めていくためにはコンプライアンス体制が有効に機能することが重要であると考えております。そのためコンプライアンスに関する社内規程を策定するとともに適宜研修を実施し、周知徹底を図っております。しかしながら、コンプライアンス上のリスクを完全に解消することは困難であり、今後の当社の事業運営に関して法令等に抵触する事態が発生した場合には、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑥ 小規模組織であること(発生可能性:低、発生時期:特定時期なし、影響度:中)

当社は小規模な組織であり、内部管理や業務執行についてもそれに応じた体制になっております。当社では、今後の業務拡大に対応するため、人員の増強や内部管理体制及び業務執行体制の一層の充実を図っていく方針でありますが、何らかの事由でこれらの施策が適時適切に進行しなかった場合には、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑦ 業績変動について(発生可能性:中~大、発生時期:特定時期なし、影響度:中)

当社の事業の中には、案件ベースで受注をし、成果物の提出とサービスの提供完了をもって収益認識をしているものがあるため、案件によっては数か月分の稼働に対する売上高が1か月にまとまって計上されることがあります。当社では、各月の売上が平準化するよう努めていますが、個別案件によっては売上高が非連続となる場合や、案件の進行が遅れることで売上高の計上タイミングが想定より遅くなる場合には、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。なお、これにより四半期・月次ごとに業績が変動し、期間分析が困難となる可能性があります。

 

⑧ プロジェクト管理について(発生可能性:中、発生時期:特定時期なし、影響度:中)

当社は、品質・コスト・進捗などに対するプロジェクト管理体制を整備・強化しておりますが、当初想定した以上の開発工数の増加及び機能改善などにより、当初見積ったコストを上回り採算が悪化することがあります。また、納入及び売上の確定後における瑕疵補修などによって追加費用が発生することもあり、これらのことにより、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑨ SOMPOホールディングス株式会社及びSOMPO Light Vortex株式会社との関係について(発生可能性:低、発生時期:特定時期なし、影響度:中)

a.資本的関係

 当事業年度末現在、SOMPO Light Vortex株式会社(以下「SOMPO Light Vortex」)は当社の議決権の17.37%を保有しており、当社のその他の関係会社になります。また、SOMPO Light Vortexの100%親会社は、SOMPOホールディングス株式会社(以下「SOMPOホールディングス」)となります。

b.役員派遣

 当社社外取締役1名は、SOMPOホールディングス及びSOMPO Light Vortexからの派遣役員となります。

c.承認等

 当社には、SOMPOホールディングス及びSOMPO Light Vortexの事前承認又は事前報告を必要とする取引や業務は存在しません。

d.取引関係

 当社とSOMPOホールディングスは、2021年4月にデジタルトランスフォーメーション推進等を目的とし、業務提携基本契約を締結しました。当社の売上高に占めるSOMPOホールディングス向けの売上高は、2025年8月期において12.9%であります。なお、SOMPOホールディングスとの取引にあたっては、当社の関連当事者取引管理規程に則り適切に実施しております。

 当社は、SOMPOホールディングス及びSOMPO Light Vortexと良好な関係を維持しておりますが、今後も新規顧客の開拓を実施し、特定の取引先への依存度を低減させる方針です。しかしながら、当面は特定の取引先への依存が高い水準で推移することが考えられ、この間に同社の事業戦略方針の転換等により、同社との関係に変化が生じ受注が減少した場合には、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
 

⑩ 特定の取引先への依存について(発生可能性:中、発生時期:特定時期なし、影響度:中)

 当社の売上高に占めるさくらインターネット株式会社向けの売上高は、2025年8月期において17.2%であります。同社の代表取締役社長 最高経営責任者である田中邦裕氏は、当社の社外取締役であり、また同社は当社の株主であります。同社との取引にあたっては、会社法その他の関係法令及び当社の関連当事者取引管理規程に則り適切に実施しており、良好な取引関係にあります。現時点において取引関係に支障をきたす事象は生じておりませんが、今後は依存度の低減に向け、他の既存顧客との取引拡大や新規顧客の開拓を進め、リスク低減に努めてまいります。もっとも、何らかの理由により、同社との取引関係が継続困難となる、又は取引が大幅に減少する場合には、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(3)法的規制に関するリスク

① 法的規制・制度動向による影響(発生可能性:低~中、発生時期:特定時期なし、影響度:中~大)

現在、日本国内においてインターネットに関連する主要な法規制は電気通信事業法となっておりますが、インターネット上の情報流通のあり方についても様々な議論がなされている段階であります。また、AI倫理やAIロボティクス等に関する法令・指針(ガイドラインを含む)・業界規範等についても、今後、制定又は改定される可能性があります。当社では、これらの制定・改定について事前に事業に及ぼす影響や対応策等を検討しておりますが、追加的な対応が必要となり事業が制約を受ける場合には、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

② 知的財産権(発生可能性:低、発生時期:特定時期なし、影響度:中~大)

当社における第三者の知的財産権侵害の可能性については、調査可能な範囲で対応を行っておりますが、当社の事業領域に関する第三者の知的財産権の完全な把握はその性質上困難であります。このため、当社が認識せずに他社の特許を侵害してしまう可能性があります。その結果、損害賠償請求や知的財産権の使用に係る対価の支払い等により、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

③ 訴訟等(発生可能性:低、発生時期:特定時期なし、影響度:中~大)

当社では、当事業年度末現在において業績に影響を及ぼす訴訟や係争は発生しておりません。また、当社は法令違反となるような行為を防止するための内部管理体制を整備しております。しかしながら、当社及び当社の役員、従業員による法令違反の有無にかかわらず、予期せぬ訴訟等が発生する可能性があります。係る訴訟等が発生した場合は、その内容によって、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(4)その他のリスク

① ストック・オプションの行使による株式価値の希薄化(発生可能性:高、発生時期:短期、影響度:低)

当社は役職員等に対し、長期的な企業価値向上に対するインセンティブ等を目的として、ストック・オプション(新株予約権)を発行しております。ストック・オプションが権利行使された場合には、当社株式が新たに発行され、既存の株主が有する株式の価値及び議決権割合が希薄化する可能性があります。なお、当事業年度末現在、新株予約権による潜在株式数は714,100株であり、発行済株式総数である9,764,800株の7.31%に相当しております。

 

② 配当政策(発生可能性:低、発生時期:特定時期なし、影響度:低)

当社は、設立以来配当を実施した実績はありませんが、株主に対する利益還元を経営の重要課題として認識しております。しかしながら、当社は、成長過程にあると考えており、内部留保の充実及び事業拡大のための投資等に充当することが、株主に対する利益還元につながると考えております。将来的には、事業環境及び財政状態を勘案しながら、株主に対して利益還元を実施していく方針ではありますが、現時点において配当実施の可能性及び実施時期については未定であります。

 

③ 税務上の繰越欠損金、繰延税金資産について(発生可能性:低、発生時期:中期、影響度:中)

当社は、当事業年度末現在、税務上の繰越欠損金が3,697百万円存在しております。そのため、現在は通常の税率に基づく法人税、住民税及び事業税が課せられておりません。今後、繰越欠損金の使用、又は期限切れによる繰越欠損金の解消により、課税所得の控除が受けられなくなった場合には、通常の法人税率に基づく法人税、住民税及び事業税の負担が発生し、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

また当社は、将来の課税所得に関する予測等に基づき回収可能性を検討し、繰延税金資産を計上しています。しかしながら、将来の課税所得が予測と異なり回収可能性の見直しが必要となった場合、また、税率変更を含む税制の改正等があった場合には、繰延税金資産の取崩しが必要となり、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

 当社の経営成績、財政状態及びキャッシュ・フローの状況の概要は以下のとおりであります。

 

① 経営成績の状況

 当社は「ゆたかな世界を、実装する」を企業理念に掲げ、テクノロジーの産業界への社会実装を支援することにより、産業横断的なイノベーションの創出を目指しています。その実現に向け、ミッションクリティカル業務へのAI導入支援のため、基盤システムとなるABEJA Platformの開発・導入・運用を行っております。

 当事業年度におけるわが国経済は、雇用・所得環境の改善やインバウンド需要の拡大により、国内景気には緩やかな回復の動きがみられます。一方で物価上昇、米国の政策動向、為替動向、ウクライナ・中東情勢等の影響により、先行きは依然として不透明な状況が続いております。

 当社の事業環境におきましては、ビジネスプロセスのデジタル化や既存のビジネスモデルを変える新たな試み、大規模言語モデル(Large Language Model:LLM)等の生成AIへの関心・利活用は広がりをみせ、企業のIT投資意欲は引き続き強い状況にあります。今後は少子高齢化に伴う労働生産人口の減少等を背景に、LLMの利活用に加え、AIロボティクスの検討・適用も着実に広がっていくものと捉えております。

 このような環境のもと、当社はミッションクリティカル業務における堅牢で安定的な基盤システムとアプリケーション群であるABEJA Platformを提供し、生成AIをはじめとする最先端技術による運用を「人とAIの協調」により実装してまいりました。

 当事業年度はエンタープライズ案件と公的プロジェクトを並行して推進し、社会実装の加速に取り組みました。研究開発では、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の枠組みで、高精度な小型LLMを構築し、コスト対精度におけるブレークスルーを確認しています。また、2025年3月に一般社団法人AIロボット協会(AIRoA)に加入するなど、AIロボティクスへの取り組みを強化しています。LLMの知見をロボティクスに展開することで、当社の事業領域はデジタル空間からリアル空間のフィールドオペレーションへ拡大していきます。組織面では、主要アカウントのレビュー体制強化、小規模チーム運営によるマネジメント品質の向上、ミドルマネジメントの育成等が取引の量と質の両面を押し上げました。その結果、課題としていた「リソース拡大(人件費)と売上拡大のバランス」は改善傾向にあります。

 こうした取り組みにより、当事業年度は増収増益となりました。売上高は各四半期とも前年同期を上回り、主にLLM案件が成長を牽引しました。売上総利益率は前事業年度を下回ったものの、戦略的案件への取り組みに伴う想定内の水準です。販管費の伸びは売上高の伸びを下回り、営業利益も増加しました。

 以上より、当事業年度の経営成績は、売上高3,585,409千円(前期比29.6%増)、営業利益445,886千円(前期比53.6%増)、経常利益451,978千円(前期比57.7%増)、当期純利益448,268千円(前期比105.0%増)となりました。

 なお、当社はデジタルプラットフォーム事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載は省略しております。

 

② 財政状態の状況

 (資産)

 当事業年度末の資産合計は5,318,174千円となり、前事業年度末に比べ1,078,355千円増加いたしました。これは主に未収入金の回収により現金及び預金が1,717,107千円増加したこと、公的プロジェクトに関する助成金の回収により未収入金が684,118千円減少したこと等によるものです。

 (負債)

 当事業年度末の負債合計は、846,438千円となり、前事業年度末に比べ504,679千円増加いたしました。これは主に契約負債が132,447千円増加したこと、未払消費税等が118,037千円増加したこと、未払法人税等が72,373千円増加したこと等によるものであります。

 (純資産)

 当事業年度末の純資産の残高は、4,471,736千円となり、前事業年度末に比べ573,675千円増加いたしました。これは主に新株予約権行使により資本金及び資本剰余金がそれぞれ63,654千円増加したことに加え、当期純利益を448,268千円計上したことにより利益剰余金が増加したこと等によるものであります。

 

③ キャッシュ・フローの状況

 当事業年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という)は、前事業年度末に比べ1,717,107千円増加し、当事業年度末には4,586,017千円となりました。

 当事業年度における各キャッシュ・フローの状況は以下のとおりであります。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動により得られた資金は、1,621,241千円となりました(前事業年度は760,011千円の支出)。これは主に税引前当期純利益451,978千円の計上、公的プロジェクトに関する助成金の回収による未収入金の減少額684,118千円等によるものであります。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動により使用した資金は、28,412千円となりました(前事業年度は28,569千円の支出)。これは主に有形固定資産の取得による支出15,928千円及び差入保証金の差入による支出12,484千円によるものであります。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動により得られた資金は、124,278千円となりました(前事業年度は116,955千円の収入)。これは新株予約権の行使による株式の発行による収入124,550千円等によるものであります。

 

④ 生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

 当社で行う事業は、提供するサービスの性質上、生産実績の記載になじまないため、当該記載を省略しております。

b.受注実績

 当社で行う事業は、提供するサービスの性質上、受注実績の記載になじまないため、当該記載を省略しております。

c.販売実績

 販売実績を領域別に示すと以下のとおりであります。なお、当社はデジタルプラットフォーム事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載を行っておりません。

領域の名称

前事業年度

(自 2023年9月1日

 至 2024年8月31日)

当事業年度

(自 2024年9月1日

 至 2025年8月31日)

金額

(千円)

前年同期比

(%)

割合

(%)

金額

(千円)

前年同期比

(%)

割合

(%)

トランスフォーメーション領域

2,104,350

92.8

76.1

2,746,630

130.5

76.6

オペレーション領域

661,901

130.6

23.9

838,779

126.7

23.4

合計

2,766,251

99.7

100.0

3,585,409

129.6

100.0

 

 (注)主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は以下のとおりであります。

相手先

前事業年度

(自 2023年9月1日

 至 2024年8月31日)

当事業年度

(自 2024年9月1日

 至 2025年8月31日)

金額(千円)

割合(%)

金額(千円)

割合(%)

さくらインターネット株式会社

615,205

17.2

SOMPOホールディングス株式会社

565,376

20.4

461,580

12.9

味の素株式会社

311,278

11.3

 (注)前事業年度及び当事業年度のいずれかが10%未満の場合、記載を省略し、「-」表示しています。

 

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

 経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は以下のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において判断したものであります。

 

① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この財務諸表の作成にあたり、見積りが必要な事項につきましては、合理的な基準に基づき、会計上の見積りを行っておりますが、実際の結果は特有の不確実性があるため、見積りと異なる場合があります。なお、当社における重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定については、「第5 経理の状況 1 財務諸表等(1)財務諸表 注記事項」の「重要な会計上の見積り」に記載のとおりであります。

 

② 経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

 経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容につきましては、前記「(1)経営成績等の状況の概要 ① 経営成績の状況」をご参照ください。

 

③ 財政状態の分析

 財政状態の分析につきましては、前記「(1)経営成績等の状況の概要 ② 財政状態の状況」をご参照ください。

 

④ キャッシュ・フローの分析

 キャッシュ・フローの分析につきましては、前記「(1)経営成績等の状況の概要 ③ キャッシュ・フロー

の状況」をご参照ください。

 

⑤ 資本の財源及び資金の流動性

 当社における主な資金需要は、継続的なサービス提供のための開発・研究に関する費用や人件費、人員獲得のための採用費、当社の認知度向上及び潜在顧客獲得のための広告宣伝費であります。これらの資金需要に対しては、自己資金、金融機関からの借入及びエクイティファイナンス等で調達していくことを基本方針としております。なお、これらの資金調達方法の優先順位等に特段方針はなく、資金需要の額や使途に合わせて柔軟に検討を行う予定です。

 

⑥ 経営成績に重要な影響を与える要因について

 当社は、前記「3 事業等のリスク」に記載のとおり、事業環境、事業体制、法的規制、その他の様々なリスク要因が当社の経営成績に重要な影響を与える可能性があると認識しております。

 そのため、当社は常に市場動向に留意しつつ、内部管理体制を強化し、優秀な人材を確保し、市場のニーズに合ったサービスを展開していくことにより、経営成績に重要な影響を与えるリスク要因を分散・低減し、適切に対応を行ってまいります。

 

⑦ 経営者の問題意識と今後の方針に関して

 経営者の問題意識と今後の方針については、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」をご参照ください。

 

⑧ 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等の分析・検討内容

 当社は経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標として、顧客支援の総量である売上高、当社事業の基盤となるABEJA Platformの活用を示すABEJA Platform関連売上比率、安定的な収益獲得を示す継続顧客からの売上比率、当社の収益力を示す営業利益を重要な指標としております。

 当事業年度における売上高は3,585,409千円(前事業年度2,766,251千円)、前期比29.6%増となりました。内訳として、トランスフォーメーション領域は30.5%増、オペレーション領域は26.7%増となり、バランスよく伸長しております。さらに、年間取引額5,000万円以上の取引先も41.7%増となり、取引規模の拡大が進みました。加えて、新規・既存双方で取引ボリュームが増加し、継続顧客比率も上昇しました。当該拡大の主な要因は以下のとおりです。

・需要面:LLM需要の高まりを背景に、顧客課題の把握から提案・案件化・拡大へ適切に繋げられたこと。

・技術面:NEDOの枠組みで推進した研究開発において、当社小型LLMが一部ベンチマークで良好な結果を示し、その成果の公表が案件化の促進に寄与したこと。

 

・組織面:主要アカウントのレビュー体制強化、小規模チーム運営によるマネジメント品質の向上、ミドルマネジメントの育成等が取引の量と質の双方を押し上げたこと。

 これら成長の原動力はLLM案件であり、売上高に占める構成比は前期の20%超から今期は50%超へ上昇しました。量的拡大に加え、取引の大口化・継続化・新規開拓が進み、質的向上にもつながっております。

 この結果、営業利益は445,886千円(前事業年度290,341千円)、前期比53.6%増となりました。今後の各指標の向上の施策については前記「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」をご参照ください。

5【重要な契約等】

 当社は以下のとおり業務提携に関する契約を締結しております。

相手方の名称

契約の名称

契約内容

契約期間

SOMPOホールディングス株式会社

業務提携基本契約

当社のAIプラットフォームを活用し、SOMPOグループのデジタルトランスフォーメーションの推進等を図る。

自2021年5月

至2026年5月

(自動更新あり)

 

 

6【研究開発活動】

 当社は2012年の創業時より、コンピュータサイエンスを専門とする多数の大学教授陣と共同で研究開発を行っており、自社開発のABEJA Platformを基盤に、AI導入を推進しております。

 当事業年度の主な取り組みとして、経済産業省GENIACの枠組みにおける国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)プロジェクトとして、「特化型モデル開発のためのモデルの小型化」(2024年10月採択、2025年4月まで実施)及び「ロングコンテキスト対応基盤モデルとAIエージェント構築に関する研究開発」(2025年7月採択、2026年2月まで実施予定)を推進しました。加えて、小型LLMのさらなる高精度化やAIロボティクスへの適用等にも継続的に取り組んでおります。これらの取り組みにより当事業年度の研究開発費の総額は66,090千円となりました。

 また、研究開発は当社の技術的優位の源泉であることから、中長期の競争力確保に向けて重点領域を定め、継続して推進していきます。

 なお、当社はデジタルプラットフォーム事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載を省略しております。