当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであります。
(1)会社の経営方針・経営戦略等
当社グループは、「わたしたちは、MROを中心とする包括的な商品とサービスを提供することを通じ、サプライヤー、そしてパートナーとともに、お客様の価値の創造と間接コストの削減を実現し、日本の産業の変革と再活性化に貢献します」を基本理念として掲げております。
当社グループの対象市場は、多品種・少量かつ一件あたりが少額という特徴を持っており、当社グループの主要顧客である大企業グループにとって、①内部統制上の適切な購買管理と、②商品選定から、購買、支払までに至る購買プロセスコストや人手の削減、および③購買単価の低減は大きな課題となっています。一方、当社グループでは、MRO、FMの調達に特化したITシステムとサプライヤーの全国ネットワークを持ち、顧客グループからサプライヤーまでを含む多数当事者間のITシステムを相互接続するシステム運用能力を持つことから、多品種・少量・少額市場において、全ての取引当事者のDX(Digital Transformation)化を支援することができます。当社グループでは、このIT技術と事業の仕組みを用いて、多品種・少量・少額市場における「規模の経済」と「DX」を実現することを通じ、日本の産業界全体の効率化を実現するとともに、当社グループ自体の業績を向上させることを目指してまいります。
また、「私たちが大切にすること」という企業グループ共有の価値観については、
・新しい価値の創造に向けた強い情熱
・変革を実現するための機動性と柔軟性
・全ての業務における卓越性と誠実性のたゆまぬ追求
・仕事を通じた一人ひとりの成長と幸福の実現
の4点を掲げております。
当社グループの基本理念および私たちが大切にするものは、2006年に制定したものですが、現在もその経営の基本理念および企業グループとしての価値観に関する変更はありません。
(2)経営環境
MROの物販市場における近年の大きな変化は、個人および中小事業者向けのBtoC(個人向け)型オンライン販売の急速な普及です。株式会社MonotaRO、株式会社ミスミグループ本社、株式会社大塚商会などの電子商取引のプラットフォームベンダーが、従来、MRO商品販売の担い手であった機械卸商社などのシェアを奪い、売上を伸ばしています。これは、個人および中小事業者向け市場において、それまでオンラインでMRO商品を買える適切な仕組みがなかったためと考えられます。一方、日本の大企業グループでは、以前より企業グループ毎に独自のITシステムを活用しており、また、それぞれ異なる社内ルールでMRO商品の購買を行っております。
このような事業環境の下で、当社グループは、大企業グループの既存のITシステムや大手ERP(Enterprise Resources Planning:統合業務基幹システム)ベンダのシステムと共存、あるいは一部機能を置き換えることが可能な電子購買プラットフォームを提供していることから、大企業グループ向けのMRO物販市場で、一定の地位を占めています。しかしながら、2024年の大企業向けMRO物販の内、電子商取引化が取引効率改善に大きく寄与するロングテール(多品種・少量・少額)型MRO物品の市場規模を当社グループでは約1兆円と推計しています。その前提に立つならば、現状の当社グループの総合シェアは4~5%にとどまることから、需要開拓の余地は極めて大きいと考えております。特に、当社グループのお客様の中心である大企業グループの連結内部統制強化へのニーズは年々高まっており、多品種・少量・少額品に対する購買プロセスを子会社、関係会社を含む連結グループ会社全体でシステムの管理下に置くことができるという当社グループのITシステムと仕組みへの関心が自ずと高まると考えております。
FM事業の顧客である国内の商業施設市場は、新型コロナウイルス感染症の収束に向かいつつあった2022年後半からは、本格的な人の屋外活動増やインバウンドの増を期待したホテルの改装案件などの需要回復も始まりました。2023年においては新型コロナウイルス感染症が本格的に収束に向かい、ビジネスホテル向けの大型改装案件が急増した事に加え、多店舗展開のコンビニエンスストアの清掃・修繕案件やファストフード店舗の改装・新規開店件数も高止まりを維持しました。しかしながら2024年においてはインバウンド需要の拡大により、商業施設市場自体は好調だったものの、店舗の稼働が高止まりしたことによる改装控えや、一部の顧客において改装を後ろ倒しする事象が発生するなど、当社にとっては厳しい経営環境となりました。
(3)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループの経営上の目標は、当社グループが提供するITシステムと仕組みを通じて、日本の産業界全体の効率化とDXを進めることを通じて、当社グループ自体も収益を上げることであり、その目標達成状況を計る指標は、当社グループのサービスの普及度を測ることができる連結売上高と当社グループの連結営業利益額となります。
(4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当社グループが優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題は以下の項目と認識しております。
当社グループにとって、DX(Digital Transformation)市場の拡大は大きなビジネスチャンスになっています。また、人手不足や働き方改革の進展、企業の間接材購買における効率向上や高度な内部統制の必要性は、当社の独自の強みをアピールし、事業を拡大する上での絶好の機会になります。
このような環境の下、当社グループにおきましては、以下の3項目を対処すべき課題と認識しております。
①知名度の向上による新規顧客の更なる開拓
当社は2022年12月の東京証券取引所スタンダード市場への上場により、一定の知名度向上は実現しましたが、未だに社名が浸透していると言える状況にはございません。
当社グループの顧客は大企業に限定されますが、日本には売上規模1千億円以上の規模の大企業が約1千社あります。当社が現在、サービスを提供しているお客様の数は、その1割以下であり、顧客数の拡大こそが当社グループ最大の課題です。そのため、広報活動、IR活動の充実化による知名度向上に加え、特にMRO事業においてはデジタルマーケティングやセミナー開催などの個別のプロモーション施策を展開し、広報・IR活動との相乗効果を通じて、新規の大企業グループの顧客開拓を進めてまいります。
②IT人財、およびコンサルティング人財の獲得とスキルの向上
MRO事業において当社グループの新規顧客開拓を加速するためには、顧客企業グループのニーズを的確に捉えた提案を行い、かつ、その提案を顧客グループのITシステムと当社グループが提供するITプラットフォームの連携により、短期間で実現できる人財を質と量の両面で増員することが必要です。またFM事業においても、ローコード・アプリプラットフォームを活用した顧客毎の専用アプリの開発等、IT技術の積極的な活用を進めることができる人財が必要となります。
そうした人財需要に応えるためには、高ポテンシャル人財の新卒段階での採用に加え、中途での優秀人財の採用が必須となります。新卒および中途の優秀人財獲得のためには、当社グループの魅力を強く訴求する必要があり、当社グループが上場を果たし、コンプライアンスや財務基盤において不安がないことに加え、成長途上の企業であることから、新たに当社に入社する従業員にとって絶好の成長の場となることを採用活動において示してまいります。また、新卒と中途のIT、コンサルティング人財候補につき、教育と実践の機会を十分に与えることで優秀人財に育ててまいります。
③上場企業としての積極的なIR活動への取り組み
当社グループは、上場企業として、法令や取引所規則にもとづく正確な情報開示を行うことはもとより、広く市場に流通する当社株式の取引を活発化し、その取引価格を合理的な水準にするためのIR活動を積極的に推進していく必要があります。上場企業としての当社は、本源的な企業価値の増大を図るのみならず、その第三者評価としての株式時価総額等の市場評価を適切なものにしていく責務があり、そのための適切なIR活動の推進が、当社にとっての対処すべき課題になると認識しております。
当社グループはこれらの課題を解決し、従来以上に新規顧客の開拓に注力して、売上の拡大およびそれに伴う営業利益の拡大を目指してまいります。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、以下のとおりであります。
なお、当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、中核会社である当社においてとりまとめたものであることから、当社の考え方及び取組を記載します。また、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社が判断したものであります。
(1)ガバナンス
当社はサステナビリティ経営を推進するにあたり、下記のサステナビリティ基本方針を策定し、取締役会で決議しております。この基本方針のもと、サステナビリティに関する重要事項については執行役員会で審議し、必要に応じて取締役会に報告いたします。
<サステナビリティ基本方針>
アルファパーチェスは「基本理念」に基づく経営の推進、および「私たちが大切にすること」に基づく行動の実践を通じ、持続的に企業価値を向上し、持続的な社会の発展に貢献します
・新たなサービスを創造し、お客様の課題解決、社会の持続的発展に貢献します
・商品とサービスの提供を通じ、お客様、サプライヤー、パートナーの環境改善活動に貢献します
・多様性を尊重し、個々人の能力を最大限に発揮できる環境を実現します
・コンプライアンスを重視し、誠実な個人行動、誠実な企業活動を実践します
・すべてのステークホルダーに対して適切な情報開示に努め、公正で透明性の高い経営を実現するとともに
信頼される企業を目指します
(2)戦略
当社のサステナビリティに関する取組は、上記の<サステナビリティ基本方針>に掲げた各項目そのものであり、短期、および中長期にわたって継続してまいります。特に商品とサービスの提供の場面においては、当社のITシステムを活用いただくことを通じ、お客様のグリーン調達の支援や、サプライヤーに環境にやさしい商品の提供を促すなどの施策を実行いたします。
(3)リスク管理
当社は、サステナビリティ関連のリスクにおいて重要事項については、執行役員会で審議し、必要に応じて取締役会に報告いたします。
(4)指標及び目標
女性活躍推進法における女性管理職比率の達成目標は以下のとおりであります。
|
指標 |
|
2024年12月末 (実績) |
|
|
|
|
また一般事業主行動計画に記載した目標達成に向けての取組は以下のとおりであります。
・2022年4月~管理職候補者への研修実施
・2024年4月~管理職候補者へのロールモデルの紹介
当社の女性管理職比率は2024年12月末において既に25.9%を達成しております。今後更に比率を高めるべく、上記の取組を継続して行ってまいります。
当社グループの経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性のあるリスクのうち、投資者の投資判断に重要な影響を及ぼす可能性のあるリスクは以下のようなものがありますが、これらに限定されるものではありません。また、そのようなリスク要因に該当しない事項につきましても、投資者の投資判断上、重要であると考えられる事項につきましては、投資者に対する積極的な情報開示の観点から以下に開示しております。
なお、本文中における将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであり、将来において発生の可能性があるリスクを全て網羅的に記載したものではありません。
(1)事業環境に係るリスクについて
①市場全般の景気変動によるリスク
(発生可能性:中、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中)
当社グループは、MRO事業、FM事業分野に関する取引先顧客グループのニーズ全般に応えることを目指しており、当社グループと取引がある顧客グループ内での当社グループのシェアは、拡大傾向にあることに加えて、景気悪化時においても顧客企業における間接材の需要は継続的に発生すること等から、当社グループの業績は相対的に景気変動の影響が受け難い傾向にあるものと考えております。しかしながら、国内における景気動向の変化に伴い、当社グループの主要な顧客対象である大企業の企業グループの業績が急速に悪化する可能性は否定できず、また、販売先の一部を構成する中小企業は、大企業グループ以上に景気に敏感に反応して当社グループの商品やサービスの購入を減らす可能性があります。かかる場合において、当社グループが迅速かつ十分に対応できない場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。そのため、当社グループではマクロ景気や特定市場の景気が落ち込む局面においても、その影響をカバーできるだけの新規顧客の獲得を続け、景気悪化局面においても売上成長を確実に維持することを目指しています。
②地政学的なリスク顕在化に伴う業績変動リスク
(発生可能性:中、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:大)
現在、世界経済において、新たに発生する可能性のある最も大きな地政学的リスクは、中国と台湾との間で武力衝突が発生することであり、これにより台湾における半導体製造が停止し、世界中のサプライチェーンが麻痺する事が考えられます。万一、このようなリスクが顕在化した際には、世界中の生産活動が急激に縮小するため、当社グループにとっても、新規顧客の獲得を続ける等では対応しきれない需要減が発生する可能性があり、結果的に当社グループの経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。また、台湾と地理的に近い日本においては、それ以外にも紛争の影響が発生することが予見され、事態は更に悪化するリスクがあります。この種の地政学リスクの顕在化に対しては、当社グループの日常のオペレーション施策では十分な対応ができないため、一定の余裕資金を持ち、固定費を常に低い水準に置くことにより損益分岐点を引き下げ、更に固定費の変動費化が可能な工夫をしておくことで対応してまいります。
③ESG対応の遅れによるリスク
(発生可能性:中、発生可能性のある時期:5年以内、影響度:中)
近年、ESG(Environment、Social、Governance)に関する関心の高まりから、原材料の分野では、製造地や製造方法、製造過程における二酸化炭素の発生量などの適切な表示が重要になってくることが想定されています。当社グループの扱うMRO事業の分野は、商品の品目数は膨大な割に、各商品のエネルギー消費量は小さいことから、現時点においては、顧客グループから、商品毎にESGに関する表示や対応を行うことは求められていません。しかしながら、将来、ESGに関する表示のみならず、ESG活動全般に対するコミットメントが、当社グループの事業継続の要件になることが予測され、その対応が遅れることは当社グループの事業展開上のリスクとなり、将来の業績にマイナスの影響を与える可能性があります。当社グループではそのための対策の検討を開始しており、今後、当社グループならではのESG対応施策を実行すべく、努力してまいります。
④優秀な人材の採用、および定着のリスク
(発生可能性:高、発生可能性のある時期:5年以内、影響度:中)
当社グループにおける新規顧客獲得の局面では、顧客企業グループの課題を深く理解し、その課題解決に向けたソリューションとして、当社グループの財・サービス購入の仕組みとITシステムの導入を一括して提案する必要があり、コンサルティング能力に優れた人材が必要です。また、バックオフィス業務においても、最新のIT技術による不断の生産性向上施策を立案し、実行に移せる人材が必要であり、優秀な人材の確保が極めて重要です。一方で、日本全体のDX化の推進が産業界全体のテーマとなっているため、現在、優秀なDX人材の採用と、採用後の離職防止のハードルは急激に高くなりつつあります。このDX人材の確保が難しいことに対して、採用活動の強化と教育研修の充実を推進しておりますが、適切な人材を十分に確保できず、あるいは在職中の従業員が退職するなどした場合には、当社グループの経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(2)当社グループ事業固有のリスクについて
①当社グループと競合するシステムの普及に伴う解約リスク
(発生可能性:低、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中)
当社グループの主要顧客層である大企業グループ向け市場で、当社グループのMRO事業向け事業モデルと直接競合するシステムや事業者は存在しません。しかしながら、当社グループの主要顧客である大企業グループは、SAP SEやOracle Corporationなどが提供する基幹ITシステムであるERP(Enterprise Resource Planning)を採用し、そのERPは購買管理の付加機能を年々充実させており、当社グループが提供する価値や機能と部分的には競合が発生します。当社グループでは、このような顧客の基幹ITシステムの機能追加に対応し、当社専用システムの機能を充実させるとともに、顧客の基幹ITシステムと当社の電子カタログシステムを接続することにより、相互補完関係を構築し、共存する戦略を採っています。ただし、その戦略が奏功しない場合には、顧客の基幹システムの機能追加に伴って、当社グループのシステムの利用と、そのシステム上でのMRO商品売買契約の解約がなされる可能性は否定できず、かかる事態となった場合には、当社グループの経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
②システムのグローバル統一化に伴う解約リスク
(発生可能性:低、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中)
前項で述べた顧客グループの基幹システムの最大の特徴は、世界中の拠点を同一のシステムでカバーできるという点です。一方、当社グループのシステムは、日本および東アジア地区においては活用が可能ですが、まだ、それ以外の地域での活用ができておりません。複数言語、通貨対応仕様の開発は完了しており、日本から距離が近く、時差も小さい東アジアまでの展開はできていますが、欧米を含む他地域へのシステム展開のためには、通信距離を短縮するための現地のクラウド上へのシステム展開や、現地対応のサポートデスクが必要であり、それらの海外投資は、現時点においては時期尚早として具体的な計画がありません。したがって、早急にグローバル対応を求める顧客グループが出てきた場合には、その対応に苦慮する事態が予想され、短期間で海外対応の準備を行う場合には、システム自体と現地サポート体制の構築に緊急投資が必要となり、当社グループの経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
③特定顧客への依存に伴う業績変動リスク
(発生可能性:低、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:大)
当社グループの売上の10%以上を占める顧客グループ、もしくはフランチャイズ企業を含む取引グループはアスクル、ならびに日本マクドナルド株式会社およびそのフランチャイズ企業の2グループのみですが、他にも大手の顧客グループが多数存在します。当社グループと大手顧客グループとはITシステム間の密な連携を行っている例が多いため、当社グループのサービスに関する解約率は低く、突然の解約はきわめて稀ですが、当該顧客グループからの解約があった場合には、当社グループの経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
④ITシステム費用の高騰による業績悪化のリスク
(発生可能性:中、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中)
当社グループは、MRO商品と役務を販売するためにIT技術を用いた購買管理システムを顧客グループおよび仕入先(サプライヤー)に提供しています。その結果、購買管理システム提供の専門業者と一部の領域では競合が発生しており、専門業者と同水準のシステムプラットフォームの開発と提供を継続していく必要があります。一方で、近年、当社グループのITシステム開発費と運用費は高騰しており、固定費が増加して損益分岐点も上昇しています。そのため、当社グループでは積極的な拡販を行い、売上増による収益性改善を目指していますが、固定費増に対する売上増が不十分な場合、当社グループの経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
⑤無形固定資産における減損のリスク
(発生可能性:中、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中)
当社グループの無形固定資産は、その大部分が内製ソフトウエアです。市場競争力を強化・維持するためソフトウエアへの投資を進めており、将来の収益獲得又は費用削減が確実であると認められた開発費用をソフトウエア(ソフトウエア仮勘定含む)として無形固定資産計上しております。
これらのソフトウエアは業務遂行のために基本的なインフラストラクチャーであり、事業継続に必須なものですが、当該ソフトウエアシステムで営む事業が赤字に陥り、キャッシュを回収できない局面が継続すると、事業用の無形固定資産につき、会計上の減損を実施する必要がでてくる可能性があります。また、当社グループの内製ソフトウエアは、アジャイル型開発の手法(仕様や設計の変更があり得る前提で、当初から厳密な仕様は決めることをせずに、小規模な開発に着手し、機能単位での実装と評価を繰り返しつつ、徐々に全体機能の開発を進めていく手法)で開発しておりますが、試作・評価の過程で大幅な仕様変更が必要となった場合等に、開発中のソフトウエアが実用に供されずに廃棄される可能性があります。
ソフトウエアの開発に際しては、市場性等を慎重に見極めておりますが、市場や競合状況の急激な変化などにより、利用が見込めなくなった場合や、収益性の低下により投資額の回収が見込めなくなった場合には、除却あるいは減損の対象となる可能性があり、当社グループの経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
⑥法規制の変更に伴う取扱品目減少のリスク
(発生可能性:中、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中)
当社グループはFM事業において大型工事も請け負えるよう、建設事業に関する許可を取得しております。それ以外にもMRO事業において幅広い商品を扱うために、古物商の許可や医療用機器販売に関する許可等、商品販売に必要となる様々な許認可の下で事業を行っております。これらの許認可の義務に違反した場合や、許認可の更新が遅れた場合には、当該事業を一時停止する必要があり、当社グループの商品やサービスの品ぞろえが不十分となります。当社グループはコンプライアンスの重要性を強く認識し、既存法規則等の規制はもとより、規則の改廃、新たな法規制が生じた場合も適切な対応を取るとともに新規商品を取り扱う際に、抵触する法規制の確認を行う体制の拡充を推進してまいります。しかしながら、何らかの事由によりこれらの法規制に抵触する等問題が発生した場合、またはこれらの法規制の改正により不測の事態が発生した場合は、当社グループの経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
⑦サプライヤーおよびパートナー会社との取引継続に関するリスク
(発生可能性:低、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:大)
当社グループが商品を仕入れるサプライヤーや、当社グループが業務委託を行うパートナー会社の中には、当社グループとの取引規模が大きい事業者が一定程度存在します。当社グループのビジネスの仕組みは、特定のサプライヤーやパートナー会社への質的な依存が小さく、随時、取引先を変更できる構造にはなっているものの、取引額の大きなサプライヤーやパートナー会社の変更には一定の時間が必要となるため、先方から突然の契約解約の申し入れがあった場合には、当社グループの経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
⑧大手取引先の破綻による代金貸し倒れのリスク
(発生可能性:低、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:大)
当社グループのFM事業においては、ビジネスホテルの内装工事等で、1億円以上の大型案件を受注する場合があります。これらの工事案件においては、基本は完工・検収後の支払となるため、売掛金の金額も億円単位となり、万一、顧客企業が破綻した場合には、代金貸し倒れのリスクも億円単位となるため、当社グループの経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。当社グループでは、このような事態を避けるため、常に与信管理には細心の注意を払っており、売掛金の貸し倒れは、極めて低頻度かつ少額です。ただし、過去の与信管理が適切であったからといって、将来も大きな貸し倒れが発生しないとは言い切れず、貸し倒れのリスクについては、常に細心の注意を払ってまいります。
⑨事故発生のリスク
(発生可能性:低、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:大)
当社グループのFM事業のうち、建設および修繕においては商業施設の工事を行うため、場合により役務サプライヤーに委託して高所足場を組む作業を行います。このような大型工事においては、道路の使用や占用を行うため、現場の通行人に事故が発生する可能性があります。また、工事の作業員自身にも転倒事故や落下事故の可能性、更には現場に向かう途上での交通事故などの発生の可能性があります。これらの人身事故は、その内容によっては当社グループの信用の失墜につながり、当社グループの経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。このような事態を避けるべく、当社グループでは工事の安全確保に最大限の注意を払い、また、役務サプライヤーへの教育の徹底等安全確保のための体制を常に見直す等、労働災害を未然に防止するよう努めております。
⑩アスクルとの関係について
(発生可能性:低、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中)
アスクルは、2024年12月31日現在、当社の議決権の62.45%を保有しているため、当社の親会社に該当いたします。
一方、当社グループは、更なる成長を実現するためには、上場会社グループの子会社としてではなく、当社自体の上場を通じて、知名度・信頼性を向上させるとともに、投資資金も獲得する必要があるとの判断に至り、その手段として株式上場を選択したため、結果として親子上場となっています。
当社グループの知名度が高ければ、顧客グループのシステム切り替え時に、当社グループへの問い合わせ等から当社グループが商談の存在を知る可能性が高まります。また、新卒社員を含め、優秀な人材の当社グループへの採用には、当社の上場企業としての信用が大きく寄与します。
ただし、アスクルは、株主総会の普通決議を必要とする事項(例えば、取締役の選解任、剰余金の処分や配当等を含みますが、これらに限りません。)に関する決定権および拒否権を有しており、株主総会の承認を必要とする事項に関し、アスクルが当社の意思決定に影響を及ぼす可能性があります。
このような立場の違いはあるものの、当社とアスクルは業務・資本提携契約を締結し、両社が得意とする領域での強みを生かした提携、協力関係を構築することにより、両社の企業価値向上を目指すことに合意しております。当該提携契約においては、両社それぞれの企業価値の増大を通じて、両社が属する企業グループ全体の価値向上が実現されることに鑑み、提携契約期間中、かかる親子会社としての資本関係を維持するものとしておりますので、アスクルは当面の間当社の議決権の過半数を保有する方針であります。その他の関係は以下のとおりとなります。
a.親会社における当社の位置付け及び親会社からの独立性の確保について
当社グループは、親会社グループにおいて、eコマース事業に区分されております。
同社グループにおいて当社グループと同様の事業を展開しているグループ企業は存在しますが、当社グループと親会社グループでは、顧客へのサービス提供にあたり担っている役割等が異なるため類似性が低く、親会社グループ各社によって、当社グループの自由な事業活動や経営判断が阻害されるような状況は生じておらず、自らの意思決定により事業展開しております。
また、親会社からの独立性の確保に向けて、上場取引所の定めに基づく独立役員として指定する独立社外取締役2名が就任しており、取締役会においてより多様な意見が反映される状況にあります。なお、当社がアスクルに対し事前承認を必要とする事項はなく、またアスクルが法令等(東京証券取引所の定める有価証券上場規程を含む)に基づく開示に必要な情報以外は報告を求められておらず、独立性・自立性を確保しております。
b.当社との人的関係について
当社の役員(本書提出日現在:取締役6名、監査役3名)のうち、取締役1名はアスクルの取締役を兼任しております。豊富な経営知識から、当社グループ事業に関する助言を得ることを目的として招聘したものであります。なお、アスクルからの出向者等の受け入れはなく、今後も原則として同社グループからの出向者の受け入れは行わない方針であります。
c.当社との取引関係について
当社はアスクルとの取引として、アスクルの顧客に対する商品販売及びアスクルを物品サプライヤーとした商品仕入を行っています。これらの取引については、親会社からの独立性確保の観点も踏まえ、第三者取引と同様の一般的な取引条件で行っております。取引条件の適切性を確保するため、当社が定める関連当事者取引管理規程に基づき、取引開始前に取引の相手方が関連当事者等に該当しないかを主管部門である人事総務グループが確認します。その後、取引の合理性、妥当性、適法性等について、出席した独立社外取締役および監査役に意見を求めた上で、取締役会で決議するものとしております。また、継続的に発生する取引は過去の取引実績から予め取引想定額等を定め、新規取引と同様に合理性、妥当性等の審議を行い、取締役会にて実施可否を決議しておりますが、取引の開始後においても定期的なモニタリングを実施のうえ、取引想定額の超過等が見込まれる場合、あらためて取締役会にて決議するものとしております。
当社グループの売上高のうち12.2%(2024年12月期)は、アスクル向けです。この販売ルートは、アスクルから同社の販売店であるエージェントへ販売され、そこから多数のエンドユーザーへの再販が行われる再販チャネルです。多数のエージェントやエンドユーザーが関係する取引ルートですので、この購入契約の全てが解約される可能性は低いと考えておりますが、一部の商品につき、アスクルが当社の仕入先から、直接、当社を介さずに仕入れることは可能です。その場合は、アスクルにとって、当社が仕入商品に対して行っている電子カタログの整備等の作業を自ら行う必要が発生しますが、アスクルによる直接の購買を禁止する契約はございませんので、アスクルが当社を介さない商流へと取引ルートを変更する可能性があります。
また、当社グループは、アスクルの取り扱う商品を仕入れています。この購買ルートは、当社グループの顧客が選択したことに伴うアスクルからの仕入取引であり、顧客がアスクルの取り扱う商品を選択する限りにおいて当該取引が発生しております。
従って、当社グループとアスクルは営業取引上重要な関係を有していることから、アスクルと当社グループの関係の変化によって、当社グループの経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(3)その他
①コンプライアンス違反による信用失墜のリスク
(発生可能性:低、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:大)
当社グループは会社設立以来、各種コンプライアンス上の法令、慣習、常識を厳守すべく、各種規程の整備やグループの役職員への継続的な教育等、最大限の努力を重ねてまいりました。しかしながら、コンプライアンスのルールは年々、高度化し、深化していることもあり、法令の改正等による事業活動の影響を通じて、当社グループの経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。そのため、社内外の関係者からの問い合わせ、通報、苦情を受け付けるヘルプラインを常備するとともに、複数の専門家および専門事務所と契約して最新の法令および各種ルールに対する情報収集に努め、四半期毎のコンプライアンス委員会において、最新の状況を確認し、更なる改善を目指すべく、意識の高揚を図っております。
②システム障害やサイバー攻撃によるリスク
(発生可能性:中、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:大)
当社グループは、電子商取引プラットフォームを取引先に提供しており、そのITシステム上で取引を成約させています。これらの基幹システムのハード、ソフトの障害や、専用線を含むネットワークの障害、利用中の外部クラウドサービスのインシデント、外部からのサイバー攻撃、コンピューターウィルスの侵入とその活動等により、ITシステムの停止、破壊、情報の誤りや改ざん、あるいは流出といった事態が引き起こされる可能性があります。その場合には当社グループの事業の一時的な停止や当社グループのサービスに対する信用の失墜が発生し、当社グループの経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。これらの事態を防ぐべく、当社はISMS(情報セキュリティマネジメントシステム、ISO/IEC 27001)の認証を取得して、組織的にシステムと情報の安全性を維持し、改善する活動を行っております。また、顧客に提供する電子商取引システムについては、毎年、第三者機関によるセキュリティ診断を受け、最新技術を反映した安全対策の追加実装を継続しております。しかしながら、標的型メールを経由したランサムウェア等の悪意のある攻撃を完璧に防ぐことは難しく、的確な防御と同時に、システムが被害を受けた場合の対応についても事前に想定し、代替システムの立ち上げ策の検討等を重ねております。
③情報漏えいにより信用を失墜するリスク
(発生可能性:低、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:大)
当社グループは、事業展開に必須となる取引先の機密情報や、稀には個人情報をお預かりするとともに、当社グループ自体の機密情報を保有、管理しています。これらの情報の外部への流出、破壊、改ざん等を防止すべく、当社グループ全体で、委託先を含めた管理体制を構築し、各種規程の整備やグループの役職員への継続的な教育を行っております。しかしながら、万一、当社グループの役員ないし従業員の故意や過失により、これらの情報の外部への流失を発生させた場合には、当社グループの信用低下のほか、被害を受けた事業者や関係者による損害賠償の請求を受ける可能性があり、その場合は当社グループの経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。更に、情報流出の原因調査の過程においては、通常業務の遂行に多大な影響を受ける可能性があります。
④事業継続計画(BCP)に関するリスク
(発生可能性:低、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中)
当社グループは事業継続に関する不測の事態に対する事業継続計画を立案しておりますが、最大級のリスクの一つとして、事業拠点である事業所やIT機器を置いているデータセンターが、地震、火災等によって稼働が停止する事態を想定しています。クラウド化を推進することによりデータセンターへの依存度を減らす施策を実行しておりますが、仮にデータセンターが停止した場合において、当社グループのシステムは、災害時に即時にバックアップシステムに切り替わるホットスタンバイにはなっておらず、一定の時間内に代替システムを立ち上げるコールドスタンバイ方式になっています。このコールドスタンバイからのシステム立ち上げの過程において、想定された時間内に代替システムを立ち上げることに失敗した場合、当社グループは顧客からの信頼を失い、当社グループの経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
⑤第三者の知的所有権を侵害するリスク
(発生可能性:低、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:大)
当社グループの業界においては、特許や実用新案の取得例は稀であり、これまで知的所有権に関する大きな紛争例はありませんでした。しかしながら、今後のIT技術の進歩によって、当業界においても有力なソフトウエア特許やビジネスモデル特許が申請される可能性があり、その特許の成立や侵害警告をめぐる紛争が発生する可能性があります。当社グループではそのような事態を避けるために、自社による特許サーチや自社特許の申請や取得を実施しておりますが、第三者から特許権侵害や商標権侵害を理由とする損害賠償請求や差止請求を受ける可能性が完全には否定できず、その場合には、当社グループの経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
⑥潜在株式の顕在化による1株当たりの指標悪化のリスク
(発生可能性:高、発生可能性のある時期:5年以内、影響度:中)
当社グループは、当社グループ役職員に対し、長期的な企業価値向上に対するインセンティブを目的とし、新株予約権を付与しており、今後も継続的に実施していくことを検討しております。これらの新株予約権が権利行使された場合、当社の株式が新たに発行され、既存の株主が有する株式の価値および議決権割合が希薄化する可能性があります。本書提出日現在、新株予約権による潜在株式は665,000株であり、発行済株式数9,692,500株の6.9%に相当します。これらの新株予約権には行使条件が未達成のものや、行使期間が未到来のものが含まれていますが、これらの行使があった場合、1株当たりの株式価値が希薄化する可能性があります。
⑦訴訟等に関するリスク
(発生可能性:低、発生可能性のある時期:特定無し、影響度:中)
当社グループは、サービスの提供にあたって法令遵守の徹底及び取引先とのトラブル回避に努めており、本書提出日現在において提起されている訴訟等は発生しておりません。しかしながら、今後何らかの事由により、訴訟等が発生した場合、これらの訴訟等の内容及び結果によっては、当社グループの経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。当社グループでは、このような事態を避けるため、コンプライアンス委員会における研修等を通じて役職員のコンプライアンス意識を高めるほか、取引先等との間で良好な関係の構築に努めております。
⑧調達価格に関するリスク
(発生可能性:低、発生可能性のある時期:特定無し、影響度:低)
当社グループが販売している商品は、仕入商品の価格変動や市場・環境変化等の影響を受けた場合、速やかに価格転嫁を行うことで利益の確保を行っております。しかしながら、様々な要因によって販売価格がお客様の購買意欲にそぐわないほど高騰した結果、需要が減退した場合には当社グループの経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。当社グループでは、有事においても商品を適正な価格で安定的に供給できるよう仕入ルートの確保に努めております。
⑨自然災害等に関するリスク
(発生可能性:低、発生可能性のある時期:特定無し、影響度:低)
当社の本社は東京にあり、当地域内において地震、水害等の大規模災害が発生することにより拠点が被害を受けた場合、また当社施設内において、感染症が拡大する等、当社の想定を超える異常事態が発生した場合には、通常勤務が困難になることによりサービスレベルが低下する可能性等があり、その内容及び結果によっては当社グループの経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。このような事態を避けるため、勤務場所の分散化、リモートワーク時における安否確認方法の確立など異常事態が生じた場合でもできる限り業務への影響を低減することに引き続き努めてまいります。
⑩当社株式の流通株式比率について
(発生可能性:中、発生可能性のある時期:特定無し、影響度:低)
当社は、当社株式の流動性の確保に努めますが、東京証券取引所の定める流通株式比率は2024年12月31日時点において25.61%にとどまっております。当社は、流通株式数の変動の動向を注視し、必要に応じて主要な株主に保有株式の売出し等にご協力をいただくなど、当社株式の流動性向上に努めてまいる方針です。しかしながら、何らかの事情により更に流動性が低下する場合には、当社株式の市場における売買が停滞する可能性があり、それにより当社株式の需給関係にも悪影響を及ぼす可能性があります。
(1)経営成績等の状況の概要
当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 経営成績の状況
当連結会計年度(2024年1月1日~2024年12月31日)におけるわが国経済は、為替レートが概ね円安に振れたことから輸出主導型製造業の業績が堅調でした。またインバウンド需要が拡大したことから商業施設やサービス業が好調であったこともあり、企業業績は全般に好調でした。一方、円安定着や天候不順によるエネルギー価格や食料品を中心とした物価上昇、地政学的な紛争の継続、中国経済で強まるデフレ化圧力の懸念等により、先行きは依然として不透明な状況が続きました。
このような経済状況の下、当社の事業セグメントの一つであるMRO(Maintenance, Repair & Operations)事業における工具、消耗品、修繕部品、文具等の間接材の市場では、主力の大企業向け販売に関しては、一部の素材産業や内需向け産業の需要が伸び悩んだものの、自動車関連などの輸出主導型製造業を中心に当社サービスの利用が拡大し、強い成長が続きました。しかしながら、中小事業所向けの販売に関しては需要停滞とそれに伴う価格競争の激化により、売上は前年同期比割れとなりました。
もう一つの事業セグメントであるFM(Facility Management)事業における国内商業施設向けサービス市場では、インバウンド需要拡大を追い風として顧客である中大型店舗・施設の業績は好調であったものの、一部の大型施設の改装案件につき、実施時期の後ろ倒しが発生し、年初の想定より売上が大きく減少しました。また、個人消費の動向に敏感な小型店舗の改装案件数が前年同期より減少しました。
販売費及び一般管理費(販管費)については、賃上げに伴う人件費増や、クラウド使用料や外注人件費の上昇に伴うIT費用増があり、販管費の額が増加しましたが、その増加率は売上の増加率を下回っていることから、販管費率が低下し、費用構造が改善しています。
以上のような環境の下、当社グループの業況は前連結会計年度(以下「前期」)からの好調を持続し、売上高は55,952百万円(前期比7.7%増)、売上総利益は5,037百万円(前期比4.3%増)、販売費及び一般管理費は3,795百万円(前期比4.3%増)、営業利益は1,242百万円(前期比4.6%増)となりました。経常利益は、若干の輸入為替差損等を織り込み、1,227百万円(前期比3.8%増)となりました。親会社株主に帰属する当期純利益は、DX投資減税の適用終了などにより税負担率が上昇し、865百万円(前期比1.8%増)となりました。
各セグメントの業績は、次のとおりであります。
<MRO事業>
間接材購買のためのシステム提供と物品販売を行うMRO事業において、主要顧客である大企業向けでは、既存顧客に対して当社がシステム上で提供するMRO物品の販売増や、前年に当社との取引を開始した新規顧客による売上高の上積みにより、高い成長率を持続することができました。特に、大企業顧客の7割以上を占める製造業向けが成長の牽引役となりました。一方、中小事業所向けの販売は、親会社を経由する卸販売形態であり、この経路の顧客の内、製造業のお客様の比率は、全体の4分の1未満にとどまります。残りの4分の3以上は、比較的小規模で、個人消費の動向に敏感な販売・サービス業のお客様が中心で、この中小企業向け経路の売上が前期の実績を下回りました。費用面では、持続的な事業成長のためのITシステム投資を継続しておりますが、過去の大規模なIT投資の成果物である無形固定資産の一部につき、5年の減価償却期間が満了したことなどから、ITシステム運用のためのクラウド費用等の外部委託費用の増加を考慮しても、IT費用の増加率が減速してきており、セグメントの販管費率が低下しました。これらの結果、MRO事業の売上高は41,221百万円(前期比11.0%増)、セグメント利益は売上の増加率を大きく上回る769百万円(前期比20.9%増)となりました。
<FM事業>
商業施設向けにサービスの提供を行うFM事業においては、1件当たりの受注金額が大きい大型施設の改装に関して、実施時期の後ろ倒しが発生し、加えて小型店舗の案件が減少したことから、売上高は前期比微減となりました。また、売上構成差によってセグメント全体の粗利益率が低下し、セグメントの利益率が3.3%から2.7%へと悪化しました。この結果、FM事業の売上高は14,665百万円(前期比0.4%減)、セグメント利益は389百万円(前期比19.0%減)となりました。
<その他>
セグメント区分の「その他」の売上は、当社の子会社であるATC株式会社のソフトウエア事業の外販売上(連結内部控除される当社向けのITサービス事業売上を除く売上)が計上されていますが、当社向けITサービスへの集中に伴い、当連結会計年度は65百万円(前期比17.2%減)となりました。一方、「その他」の営業利益には、ATC株式会社の当社向けサービス事業の利益等が含まれるため、セグメント利益は83百万円(前期比17.3%増)となりました。
② 財政状態の状況
(資産)
当連結会計年度末における流動資産は15,925百万円となり、前連結会計年度末に比べ1,229百万円増加いたしました。現金及び預金が1,589百万円増加し、売掛金及び契約資産が358百万円、棚卸資産が261百万円減少したことが主な要因です。固定資産は2,455百万円となり、前連結会計年度末に比べ36百万円増加しました。無形固定資産が230百万円増加し、有形固定資産が33百万円、投資その他の資産が160百万円減少したことが主な要因です。これらの結果、総資産は、18,381百万円となり、前連結会計年度末に比べ1,265百万円増加しました。
(負債)
当連結会計年度末における流動負債は12,274百万円となり、前連結会計年度末に比べ584百万円増加しました。これは1年内返済予定の長期借入金が33百万円、未払消費税等が128百万円減少しましたが、買掛金が737百万円、未払金が39百万円、賞与引当金が21百万円増加したことなどによるものです。固定負債は34百万円となり、前連結会計年度末に比べ19百万円減少いたしました。これは主に長期借入金が19百万円減少したことによるものです。これらの結果、負債合計は、12,309百万円となり、前連結会計年度末に比べ564百万円増加しました。
(純資産)
当連結会計年度末における純資産合計は6,071百万円となり、前連結会計年度末に比べ701百万円増加しました。親会社株主に帰属する当期純利益865百万円の計上による増加、剰余金の配当211百万円による減少が主な要因です。これらの結果、自己資本比率は33.0%(前連結会計年度末は31.4%)となりました。
③ キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物は5,759百万円となり、前連結会計年度末に比べ1,589百万円増加いたしました。なお、当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローは、2,471百万円の収入超過となりました。その主な要因は、税金等調整前当期純利益1,227百万円、売上債権の減少197百万円、仕入債務の増加737百万円、棚卸資産の減少261百万円、減価償却費613百万円の収入要因があった一方、未払消費税等の減少128百万円、法人税等の支払額389百万円の支出要因があったこと等によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローは、665百万円の支出超過となりました。その主な要因は、差入保証金の返還143百万円の収入要因があった一方、当社グループの内製ソフトウエア開発増加に伴う無形固定資産の取得による支出798百万円の支出要因があったこと等によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローは、217百万円の支出超過となりました。その主な要因は、株式の発行による収入47百万円の収入要因があった一方、長期借入金の返済による支出53百万円、配当金の支払額211百万円の支出要因があったこと等によるものであります。
④ 生産、受注及び販売の実績
a 生産実績
当社グループの事業は、提供するサービスの性格上、生産実績の記載に馴染まないため、記載をしておりません。
b 受注実績
当社グループの事業は、提供するサービスの性格上、受注実績の記載に馴染まないため、記載をしておりません。
c 販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2024年1月1日 至 2024年12月31日) |
|
|
販売高(百万円) |
前年同期比(%) |
|
|
MRO事業 |
41,221 |
111.0 |
|
FM事業 |
14,665 |
99.6 |
|
報告セグメント計 |
55,886 |
107.7 |
|
その他 |
65 |
82.8 |
|
合計 |
55,952 |
107.7 |
(注)1.その他セグメントはITシステム開発運用部門であり、MRO事業、FM事業とセグメント間の取引がありますが、全額内部消去されるため、ITシステムの外販事業のみの金額を表示しております。
2.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
|
相手先 |
前連結会計年度 (自 2023年1月1日 至 2023年12月31日) |
当連結会計年度 (自 2024年1月1日 至 2024年12月31日) |
||
|
金額(百万円) |
割合(%) |
金額(百万円) |
割合(%) |
|
|
アスクル株式会社 |
7,560 |
14.6 |
6,841 |
12.2 |
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりでありま
す。なお、文中の将来に関する事項は、提出日現在において判断したものであります。
① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
a 「経営成績等」及び「財政状態」並びに「セグメントごとの経営成績の状況」に関する分析・検討内容
(売上高)
当連結会計年度の売上高は、55,952百万円(前年同期比7.7%増)となりました。
売上高の分析・検討内容につきましては、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要① 経営成績の状況」に記載のとおりであります。
(売上原価、売上総利益)
当連結会計年度の売上原価は、売上の増加に伴い50,915百万円(前年同期比8.0%増)となりました。
この結果、売上総利益は、5,037百万円(前年同期比4.3%増)となりました。
(販売費及び一般管理費、営業利益)
当連結会計年度の販売費及び一般管理費は、3,795百万円(前年同期比4.3%増)となりました。
主な要因は、賃上げに伴う人件費増や、クラウド使用料や外注人件費の上昇に伴うIT費用増です。
この結果、営業利益は、1,242百万円(前年同期比4.6%増)となりました。
(営業外収益、営業外費用、経常利益)
当連結会計年度において、営業外収益は6百万円(前年同期比118.0%増)、営業外費用は21百万円(前年同期比162.0%増)発生しました。
主な要因は、為替差損19百万円が発生したことによるものです。
この結果、経常利益は、1,227百万円(前年同期比3.8%増)となりました。
(法人税等、親会社株主に帰属する当期純利益)
上記の結果、税金等調整前当期純利益は、1,227百万円(前年同期比3.8%増)となり、税金費用(法人税、住民税及び事業税並びに法人税等調整額)を361百万円計上した結果、親会社株主に帰属する当期純利益は、865百万円(前年同期比1.8%増)となりました。
なお、財政状態の分析・検討内容につきましては、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ②財政状態の状況」に記載のとおりであります。
b 経営成績に重要な影響を与える要因
経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。
② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
a キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容
「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ③キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
b 資本の財源及び資金の流動性
当社グループでは、休前日を除く通常月においては、近年、売掛金と買掛・未払金の残高が、ほぼ拮抗していることから、運転資金需要のうち主なものは、人件費や賃借料といった営業固定費と業務委託費からなるITシステムに係る保守運用費用であり、費目としては販売費及び一般管理費となります。一方、投資を目的とした資金需要は、事業基盤を形成するITシステム、ソフトウエアへの投資であり、費目としては無形固定資産の取得となります。運転資金は、主として自己資金で調達することとしておりますが、投資については、一部は銀行等からの長期借入金により賄っております。
前連結会計年度末における有利子負債残高は76百万円で、全額が長期借入金ですが、返済により当連結会計年度末の有利子負債残高は23百万円となりました。当連結会計年度末における現金及び預金の残高は5,759百万円と余裕がありますが、今後も資金残高及び各キャッシュ・フローの状況を常時もモニタリングし、資本の財源及び資金の流動性の確保に努めてまいります。
③ 経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等につきましては、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (3)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等」に記載の通り、当社グループのサービスの普及度を測れる連結売上高と連結営業利益額となります。
連結売上高に関しては、MRO事業における中核分野である製造業の大企業向けが非常に好調で、同じくMRO事業における中小事業所向けの売上の不調であったことや、FM事業における大型改装案件の後ろ倒しの影響を吸収し、全体として前年比107.7%となりました。
また、連結営業利益額に関しては、前年比104.6%となりました。当社グループでは、人件費やIT関係費等の営業固定費の増加率以上の伸長率で、連結売上高を伸長させることにより、連結営業利益額を増加させることができると考えており、その達成状況を判断するために連結営業利益額を経営指標としています。
連結売上高と連結営業利益の推移及び前年比伸長率
|
|
2022年12月期 通期
|
2023年12月期 通期
|
2024年12月期通期
|
|
連結売上高(百万円) |
44,383 |
51,951 |
55,952 |
|
前年比(%) |
117.0 |
117.1 |
107.7 |
|
連結営業利益(百万円) |
1,042 |
1,188 |
1,242 |
|
前年比(%) |
120.6 |
114.0 |
104.6 |
④ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたり、資産及び負債又は損益の状況に影響を与える会計上の見積りは、過去の実績等連結財務諸表作成時に入手可能な情報に基づき合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積りによる不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。会計上の見積りおよび当該見積りに用いた仮定につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 重要な会計上の見積り」に記載しておりますが、重要なものは以下のとおりであります。
(繰延税金資産の回収可能性)
当社及び連結子会社は、グループ通算制度を採用しております。繰延税金資産の回収可能性は、グループ通算制度の適用対象会社の事業計画に基づく課税所得を基準として見積っております。繰延税金資産の計上にあたっては、その回収可能性について、将来減算一時差異、税務上の繰越欠損金の解消スケジュール及び将来課税所得の見積り等に基づき判断しております。また、将来課税所得の見積りは将来の事業計画を基礎として、将来獲得しうる課税所得の時期及び金額を合理的に見積り、金額を算定しております。
課税所得の見積りの基礎となる翌期以降の事業計画における主要な仮定は、事業セグメントごとかつ得意先別に集計した売上高と売上総利益率の予測であります。
売上高の予測は、過去の売上実績や新規顧客との商談状況、顧客の出店・改装計画などを基とし算出しております。また、売上総利益率の予測は、売上高の予測と過去の仕入実績などに基づいて売上原価を予測し算出しております。
なお、課税所得が生じる時期及び金額は、将来の不確実な経済条件の変動によって影響を受ける可能性があり、実際に生じた時期及び金額が見積りと異なった場合、翌連結会計年度において認識する繰延税金資産の金額に重要な変動を与えるリスクがあります。
該当事項はありません。
当社グループの勘定科目には研究開発費の項目はありませんが、当社グループのお客様向け販売、サービス提供、および社内業務に用いる内製ソフトウエアの多くは、アジャイル型開発と呼ばれる手法で開発しております。アジャイル型開発とは、仕様や設計の変更があり得る前提で、当初から厳密な仕様は決めることをせずに、小規模な開発に着手し、機能単位での実装と評価を繰り返しつつ、徐々に全体機能の開発を進めていく手法であり、開発のスピードアップに有効な手法として近年、産業界で広く採用されつつあります。特に、これまでの世の中にない新たなサービスを開発する場合に有効な手法で、当社グループでは、社内で十分な評価が行え、その評価結果を仕様変更にフィードバックができる分野のソフトウエアはこの方法で開発しております。
このアジャイル型でのソフトウエア開発における成果物としてのソフトウエアは、会計上も税務上も全体を投資として無形固定資産に計上しております。従って、一部に研究開発活動的な側面を含むソフトウエアの新機能開発であっても、期間費用となる研究開発費ではなく、無形固定資産に計上します。なお、お客様に新たな価値を提供し得る新機能を導入する開発案件に関しては、その方針や戦略を議論する場としてテクノロジー戦略会議を設置し、そこでの結論としての提言を執行役員会や取締役会で議論し、方針を確定しています。
当社グループが現在、力を入れているソフトウエア開発のテーマは、当社が「無限カタログ」と名付けた電子カタログシステムの機能強化です。商品の価格比較および最適購買品の推奨機能を強化する他、問い合わせ機能を付加することにより、顧客とサプライヤーが直接、電子プラットフォーム上で、商品やサービスの仕様や価格の照会、回答、交渉などの双方向コミュニケーションおよび取引の実行を行える環境を整えます。双方向コミュニケーションの導入により、電子カタログ化に必須な商品の仕様・価格・納期等の条件のいくつかが不明、未定、あるいは交渉したい場合に、相談・商談・合意を経て、個別の取引を実行できる仕組を構築します。