当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において、当社グループが判断したものであります。
(1)企業理念・企業行動規範
『Professionalな最新技術を世界から日本へ、日本から世界へ』という企業理念のもと、以下の企業行動規範を定めております。
1.法律を遵守し、オープンでフェアな企業活動を通じて、国際社会から信頼される企業、市民を目指す。
2.各国、各地域の文化・慣習を尊重し、経済・社会の発展に貢献する。
3.歯科矯正分野で、最先端技術の研究と開発に努め、世界中のお客様の要望にお応えする魅力あふれる製
品・サービスを提供する。
4.グローバルで革新的な経営により、社会との調和ある成長を目指す。
5.公明正大な取引を通じて取引先との信頼関係を築き、相互の発展を図る。
6.公正かつ透明な企業経営により、利害関係者の理解と支持を得るよう努める。
7.個人等の情報、自社の秘密情報を適正に管理する。
8.地域の発展と快適で安全な生活に資する活動に協力するなど、地域社会との共生を目指す。
9.違法行為や反社会的行為に関わらないよう、基本的な法律知識、社会常識と正義感を持ち、良識ある行動に
努める。反社会的勢力には毅然として対応し、関係を持たない。
(2)経営方針
当社グループは、上記企業理念に基づき、全従業員が一丸となり「高品質」で「高付加価値」の『アソインターナショナルにしかできないこと』を追求してまいりました。
全従業員の人格・品格形成に努め、世の中の役に立つ企業として持続成長し、世界規模で歯科矯正業界に貢献することが当社グループの経営方針です。
(3)経営環境及び中長期的な経営戦略
株式会社グローバルインフォメーションによる「歯科矯正の世界市場:製品別、患者別、エンドユーザー別 - 予測(~2030年)」(2023年5月17日出版)によると、2023年〜2030年に年率14.6%で成長することを見込んでおり、2030年までに世界の歯科矯正の市場規模は302億ドルに到達すると予想しております。また、株式会社アールアンドディ「歯科機器・用品年鑑2024年版」によれば、2022年度日本国内における歯科矯正装置に使用する材料・消耗品、器械・器具の市場規模について、2021年度の108億円と比べ5.5%増の114億円に達しており、引き続き日本国内の市場について、拡大の余地があると考えております。
また、厚生労働省による「患者調査」によると、以下のとおり、直近10年で日本における歯科診療患者数はほぼ横ばいで推移している中、機能回復を目的とする「歯の欠損補綴」患者の占める割合は過去10年で減少しており、一方「歯科矯正」患者の割合は増加しております。
12歳を対象とした永久歯の1人当たりの虫歯の数は、文部科学省が実施した令和3年度学校保健統計調査によれば、1984年では4本以上あった数が、2021年では0.6本と減少したこととなりました。また令和4年度学校保健統計調査から、幼稚園から高校までの虫歯発生率は平成24年度の全年齢層平均50.47%から令和4年度の全年齢層平均32.12%までに低下しているという結果から、8020運動(注1)をはじめとした予防歯科の発展・普及による成果が大きいと考えております。このような歯科業界の大きな環境変化により、従来の虫歯治療等の一般診療を中心としていた歯科医療機関(GP(注2))が、歯科矯正分野等の自由診療への事業拡大を想定しております。
更に、公益社団法人日本臨床矯正歯科医師会による「後悔しない矯正歯科へのかかり方(2020年11月13日)」によると、以下のとおり、40歳未満の男女の約半数が矯正歯科治療の経験や矯正歯科治療への関心があることがわかって
おります。
当社グループは、歯科矯正を治療の専門としないGPが自由診療の歯科矯正の市場へと参入してきていることから、GPへ向けて「歯科矯正治療を円滑に行うための支援サービス」を当社グループアドバイザー矯正専門医と提携し展開しており、矯正歯科技工物の提供だけでなく、総合的なサービスの提供を行っております。
当連結会計年度における世界経済は、ロシア・ウクライナ情勢の長期化、パレスチナ・ガザ地区の軍事衝突がもたらした中東情勢の緊迫、米中経済摩擦等地政的、経済的リスクにより資源エネルギー価格やインフレ率が高止まり等楽観視できない状況が続いております。
一方、我が国の経済は、諸外国からの力強いインバウンド需要や海外投資資金の日本証券市場への流入により、活況を呈していますが、慢性的な円安や原材料価格高騰がもたらしたインフレ圧力等の影響で、依然として先行きが不透明な状況が続いております。
このような状況の中、コロナ禍後の国内における審美的な意識は継続的に高まり、未病改善への取り組み拡大等を背景として矯正歯科業界の事業環境は順調に推移していることから歯科矯正治療のニーズが引き続き高いことにより、矯正歯科領域における矯正歯科技工物・矯正材料マーケットの増加傾向は続く見通しと考えております。
当社グループがこれらの環境と需要を的確に把握し、持続的な成長を続けるためには、経営方針である「高品質」で「高付加価値」の『アソインターナショナルにしかできないこと』を追求してまいりますが、具体的な経営戦略は以下と捉えており、全社一丸となって当社グループの体制強化に努めてまいります。特に、製品の更なる品質向上と、今後も見込まれる需要増加に対応できるよう効率化を目的とした作業工程の機械化・デジタル化を積極的に導入、推進してまいります。さらに歯科矯正における世界市場のビジネス機会は大きいため、新しい海外拠点の設立や欧米企業との資本業務提携を検討しながら、海外の販売体制を構築し、ASO INTERNATIONAL MANILA, INC.を製造中心拠点として、海外への事業展開を拡充していく方針であります。
①人材の確保と育成
当社グループが安定的な成長を確保していくためには「高い専門知識と技術を持つ歯科技工士」及び「市場のニーズを引き出す高度なコミュニケーション能力を持つ営業人材」を確保することが重要と考えております。また、人材を育成するうえで「部署・役職ごとに期待役割の要件定義」「属人的作業を生まないための作業工程標
準化」「明確な評価制度による自走型組織構造の構築」が必須だと捉えております。矯正歯科技工物は医療器具・医療機器と同様に歯科矯正治療の結果に直接的に関わる製品として、品質管理はもとより市場からの改善及び改良の要求には早急に対応する必要があるため、当社グループにおいて製造及び営業で情報の伝達を早める風通しの良い組織体制を構築しております。
一方、一定の技術を習得した歯科技工士の独立開業支援をするなど、独立後に当社グループの外注先となる協力パートナーとして取引できるように図っております。
a.歯科技工士の確保
「令和4年衛生行政報告例(就業医療関係者)」(厚生労働省2023年12月21日公表)によれば、2022年度の歯科技工士業界において就業中の歯科技工士は32,942名のうち54.1%(計17,807名)が50歳以上と高齢化が進んでおります。また、歯科技工士の従事者数も年々減少傾向にあります(同衛生行政報告例によると2000年の37,244名(平成16年公表より)から2022年までで32,942名(令和4年公表より)まで減少、また39歳以下の歯科技工士人数は2020年の8,839名から2022年の8,135名まで減少)。その中で矯正装置を作れる歯科技工士はもっと限定的であり、このままでは日本の歯科技工業界が歯科技工士の絶対数の減少により衰退していく可能性があります。
歯科技工業界において、プロフェッショナルな技術を持つ一流人材を育成することは、当社グループの使命だと考えております。そのために当社グループでは機械化による作業工程の効率化と、短期間での基礎技術習得を目的とした歯科技工士育成プログラムにより、生産性の向上と高いレベルでの業務標準化を推進しております。今後はキャリア断絶を防止するための休暇制度や勤務時間の自由度を高めていき、ワークライフバランスを推進してまいります。
また、歯科技工士の技術習得のみならず、歯科医師をはじめとした歯科医療従事者と対等な関係性を構築するための教養とコミュニケーション能力の向上を目指しております。
b.次世代リーダーの育成
当社グループでは、人材育成を目的とした研修を実施しております。具体的には、社内研修の他、外部機関を活用したマネジメント研修、役職ごとに設定した期待役割と業務遂行上必要である製品知識、部署ごとに異なる専門知識・資格習得のための研修、国内外歯科学会・講演会での依頼講演、業界紙・商業誌への依頼原稿執筆を行っております。また、幹部候補人材には、国内外製品の材料・器材・技術の輸出入と販売を行うためにメーカーとの折衝から薬機法許認可申請業務を経て、販売までを自身で社内からメンバーを選抜し進行管理を担当する機会を設けており、ジョブローテーションの実施による能力開発と管理者適性を判断する機会となっております。
c.能力開発と育成を目的とした施策、制度
高い専門知識と技術を持つ歯科技工士を確保するために、以下の取り組みを行うことで、能力開発並びに育成に努めております。
・当社グループ契約技工所としての開業支援
・国内希望転勤
・海外希望出向
・知識、技術の向上を目的とした、国内外歯科学会参加研修
・技術研修のための海外出張
・外国語学力向上のためのミーティング参加
②製品企画強化
当社グループ製品の品質は、患者の治療結果に大きく影響を与えるものと考えており、既存製品の精度・品質をより向上させるために、デジタル化・機械化による最新デジタル技術の導入を今後も推進します。
歯科診療のデジタル化に対する顧客ニーズが高まることを踏まえ、AI技術を用いて正常歯列を仮想構築し、矯正歯科技工物へ反映させる仕組みや、クラウド基盤を活用した歯科医療機関と当社グループ間でのデータ連携サービスの開発に取り組んでまいります。
当社グループのマウスピース型矯正装置「AsoAligner DIGITAL」につきましては、100種類以上の多種多様な矯正歯科技工物を製作可能という当社グループの強みを活かし、他の矯正歯科技工物と複合的に治療に使用してもらえる当社グループ独自のパッケージや、製品の適応症例をより拡張するための開発に取り組んでまいります。
③セールスプロモーション
当社グループの顧客となり得る歯科医師は歯科大学附属病院で研修を行い、歯科医療機関開業後には出身大学のコミュニティや歯科医師会等、何らかのグループに所属しております。従って、歯科医師同士のネットワーク内での顧客紹介が当社グループの新規顧客獲得の源泉であり重要な営業戦略として位置付けております。
2020年のコロナ禍以降において、日本矯正歯科学会をはじめとした当社グループをとりまく環境における主要歯科学会の開催がリモート化され、緊急事態宣言中には訪問営業の自粛等、以前とは営業活動の範囲が異なっている状況においても売上に大きな影響を受けていないことから、顧客である歯科医師の口コミによる顧客紹介が当社グループの強みでもあると自負しております。口コミから新規に顧客を獲得し続けるには、市場のニーズを的確に捉え、高品質・高付加価値の製品を安定して供給し続けることが重要だと考えております。
また将来患者となり得る消費者層では、インターネット及びスマートフォンの普及により主体的に歯科矯正治療に係る情報を収集することが一般化しております。SNSや動画投稿サイト等といったメディアを通した消費者の購買行動に影響を及ぼすインフルエンサーが、歯科矯正治療についての体験談や治療に使用している製品について言及することなど、消費者層の購買行動において大きな役割を担うようになり、市場の需要の高まりの後押しとなっていると認識しております。今後は歯科矯正治療やその治療方法に対する消費者からの興味関心が高くなることを予測しており、当社グループを取り巻く市場の環境を常に分析し、歯科医師のみではなく消費者層の行動変容を起こすために経営リソースの比重を割いていくことが、今後のセールスプロモーションにおいて重要な課題と考えております。
(4)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標
当社グループの経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標として、取引歯科医療機関数及び取引歯科医療機関あたりの売上高を重視しております。また、その結果として売上高、並びに収益力を判断するための指標として、売上高営業利益率を重要な経営指標と位置付けております。当連結会計年度の数値については、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容 ③当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容」に記載のとおりです。
(5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当社グループの優先的に対処すべき事業上の課題は以下のとおりであります。なお、財務上の課題については、当社グループにおいて内部留保が十分確保されており、また借入等による機動的な資金調達も可能であることから、特段の課題事項はありません。
①優秀な人材の確保と育成
今後の事業拡大や継続的な成長を目指すにあたって、優秀な人材の確保や育成は必要不可欠であると考えております。特に「(3)経営環境及び中長期的な経営戦略 ①人材の確保と育成」に記載のとおり、歯科技工士の確保と育成は今後の当社グループの安定的な成長にとって欠かせないものとなっております。そのため、当社グループでは機械化による作業工程の効率化と短期間での基礎技術習得を目的とした歯科技工士育成プログラムにより、生産性の向上と高いレベルでの業務標準化を推進しているほか、能力開発に向けた研修制度の充実にも努めております。今後はキャリア断絶を防止するための休暇制度や勤務時間の自由度を高めていき、ワークライフバランスを推進することで、歯科技工士の確保・育成に努めてまいります。
②内部統制の強化とコーポレート・ガバナンス
当社グループは、株主をはじめ顧客、従業員、地域社会といった様々な利害関係者への社会的責任を果たすため、意思決定プロセスにおける透明性の確保や迅速化など経営の効率性を高めると同時に、業務執行における内部統制機能の充実を図ることがコーポレート・ガバナンスの基本となり、経営上重要な課題と考えております。そのため、取締役の監督責任の明確化、コンプライアンス体制の強化、迅速かつ正確な情報開示の充実に努め、コーポレート・ガバナンスを強化してまいります。
③グローバル展開および事業の多角化
当社グループはこれまで製造や材料調達では海外拠点を積極的に活用してまいりました。ASO INTERNATIONAL HAWAII, INC.及びASO INTERNATIONAL MANILA, INC.の海外拠点において、本書提出日現在、合計約300名の従業員が業務にあたっております。一方、当社グループにおける海外売上高は当連結会計年度において4.6%となっております。以下のとおり、海外売上高比率は徐々に増加傾向にあるものの、依然として全体売上高に占める割合が低い水準に留まっておりますが、当連結会計年度においてアメリカ本土に新たな子会社を設立し、今後のアメリカ本土市場への本格的進出により、グローバル事業展開を加速させて、海外売上高比率の上昇を目指してまいります。
ゆくゆくは、アメリカを始め世界各国から収集・蓄積した歯科矯正データを人工知能により分析し、患者ごとに症例に適した各種技工物の組み合わせプランを設計・提案し、ASO INTERNATIONAL MANILA, INC.において製造するような体制を整備することを目指しております。
また、当社グループはこれまで主に多種多様な矯正歯科技工物製作として事業を営んでまいりましたが、今後国内歯科技工士の絶対数が減る中、矯正歯科技工物の製作だけでは国内におけるこれまで通りの売上増加率を維持するのが難しくなることを予想し、今後の会社の更なる発展のために、タイミングを見計らった事業展開の多角化を検討してまいります。
(用語解説)
本項「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」において使用しております用語の定義について以下に記します。
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No. |
用語 |
用語の定義 |
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注1 |
8020運動 |
「80歳になっても自分の歯を20本以上保とう」という運動のこと。愛知県で行われた疫学調査の結果などを踏まえて、平成元年(1989年)に厚生省(現厚生労働省)と日本歯科医師会が提唱して開始されている。 |
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注2 |
GP |
一般臨床歯科医師(General Practitioner)をいう。GPではない歯科医師とは、大学の教授や研究者、矯正専門医ほか自費専門に行う歯科医師をいう。 |
当社のサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。
経営の健全性、透明性および効率性を推進し、株主、従業員および取引先等の社会の期待に応え、将来に向けて持続的に発展する会社となるために、当社では、全役職員がそれぞれの求められる役割を理解し、法令順守のもと正確かつ迅速に、適正かつ効率的に経営活動に取り組めるよう取締役会、監査役会、経営会議を中心として、コーポレート・ガバナンス体制を構築し、強化に取り組んでおります。
当社グループでは、現時点において、サステナビリティに関する基本方針を定めておらず、前述のコーポレート・ガバナンスに関する基本的な考え方に則して、サステナビリティに関する課題について、当社が具体的に対処すべき課題を明確にし、その具体的な対処法をリスク管理と収益化の観点を含め、開示できるような取り組みを、継続的に検討してまいります。なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであります。
(1)ガバナンス
社会環境の変化に伴い当社グループを取り巻く環境も変化しており、持続的な成長を実現するうえで必要となる課題も変化しております。サステナビリティに関連した課題については、取締役会の中で、その内容及び当該課題に対する取組について所管の取締役が報告し、重要な課題については対応策等の検討を行っております。
なお、当社グループのコーポレート・ガバナンス全般の詳細は、
(2)戦略
当社グループは、様々なリスクを一元的に俯瞰しリスクを洗い出し、リスク一覧表を作成することとし、リスクを予防し、またリスクが発生した場合は迅速かつ的確に対応することにより被害を最小限にくい止め、再発を防止、当社の企業価値を保全するために、「コンプライアンス委員会」を設置し、定期的にリスクの見直しを行っております。
サステナビリティ関連のリスクにつきましても、同委員会において、中長期的な事業継続に関するリスクの一環として検討がなされている状況にて、その主な内容は、「
(3)リスク管理
当社は、不測の事態または危機の発生に備え、「リスク管理規程」を定め、関連会社を含む企業集団全体のリスクを網羅的に把握・管理する体制の構築を行っておりますが、サステナビリティに関連するリスクにつきましても当該規程に基づきリスク管理を行っております。また、今後の状況に応じて、サステナビリティに関連するリスク管理の強化を検討してまいります。
(4)指標及び目標
サステナビリティ関連のリスク及び機会に関して、当社グループの実績を長期的に評価し管理・監視するために用いられる情報のうち重要なものについて、今後、必要な場合には設定を行ってまいります。
当社グループの事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。また、必ずしもそのようなリスク要因に該当しない事項につきましても、投資判断上重要であると考えられる事項につきましては、投資者に対する積極的な情報開示の観点から以下のとおり記載しています。当社グループはこれらのリスクの可能性を十分認識したうえで、発生の回避及び発生した場合の迅速な対応に努める方針です。具体的には、当該リスクを把握し、管理する体制・枠組みとして当社内にリスクマネジメント委員会を設置し、対応に努めております。詳細は「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等 (1)コーポレート・ガバナンスの概要 ②企業統治の体制の概要及び当該体制を採用する理由 g.リスクマネジメント委員会、③企業統治に関するその他の事項 b.リスク管理体制の整備状況」をご参照ください。
なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであり、将来において発生の可能性のあるすべてのリスクを網羅するものではありません。
(1)事業に関するリスク
① 販売業等の許可等に関するリスク(発生可能性:低、発生する時期:特定時期なし、影響度:高)
当社グループが提供する歯科矯正事業は、「歯科技工士法」、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」(以下「医薬品医療機器等法」という。)等の関連法規の規制の下にあります。
当社においては歯科技工士法上、法令の要件を充たした社内設備を歯科技工所として届出を行い、歯科技工士の免許を取得している当社の従業員が、顧客である歯科医療機関から、矯正歯科技工物の製作工程の一部を受託し、矯正歯科技工物の製作を行っております。当社グループでは、これらの法規制を遵守した営業を続けておりますが、万が一、歯科医療又は歯科技工の業務に関する犯罪又は不正の行為があった場合などの欠格事由に該当する等、当該法規制に違反し、歯科技工士である当社従業員の大半について歯科技工士免許が取り消されたり、業務停止を命じられたりした場合、または歯科技工所の構造設備に不備があり、その結果として、当社グループが製作した矯正歯科技工物等が衛生上有害なものとなるおそれがあるなどの理由により歯科技工所の使用の禁止を命じられるなどした場合、当社グループの事業の継続にとって重大な影響を及ぼす可能性があります。
また、当社グループの販売する歯科材料や歯科用機械器具類は、人の口腔内疾患の診断、治療若しくは予防等に使用されるため、開発・製造段階から流通(販売後)に至るまで、細部にわたって医薬品医療機器等法の規制を受けており、同法により医療機器としての規制がされています。また製造・製造販売・販売の各段階に応じて、医薬品医療機器等法に定める許可取得や登録等を行う必要があります。これらの許可要件としては、申請者の役員が禁固刑に処される等の欠格要件が無いことや、製造管理・品質管理等について法令上の基準に適合する体制が構築されていること等が課されています。また、販売にあたっては、医療機器の種別に応じて、販売業許可・届出が必要とされます。当社グループではこれらの許可等の継続は事業にとって最重要課題の一つとして認識し、対応しておりますが、当該法令に違反した場合や当該法令の違反にかかる処分に従わない等の理由により、これらの許可等を取り消される事態に至った場合、当社グループの事業の継続にとって重大な影響を及ぼす可能性があります。上記許可等の有効期間は、医療機器の販売業許可が6年、医療機器の製造販売業許可が5年、医療機器の製造業の登録が5年であり、法令で定める許可要件等を満たさなくなった場合には、許可の取消がなされる可能性がありますが、本書提出日現在において、その継続に支障を来す要因は発生しておりません。
なお、主な免許・許認可・登録・届出等は以下のとおりであります。
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免許・許認可・登録・届出等の名称 |
対象者 |
所管 官庁等 |
許認可等の内容 (有効期限) |
法令違反の要件及び主な許認可取消事由 |
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歯科技工士免許 |
株式会社アソインターナショナル |
厚生労働省 |
有効期限なし |
歯科技工士の欠格事由に該当した場合(歯科技工士法第4条及び第8条) |
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歯科技工所届出 |
株式会社アソインターナショナル |
中央区保健所 |
有効期限なし |
歯科技工士の欠格事由に該当した場合(歯科技工士法第4条及び第8条)、歯科技工所の使用禁止事項に該当した場合(歯科技工士法第25条) |
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医療機器製造業登録 |
株式会社アソインターナショナル |
東京都知事 |
第13BZ200826号 (2025年1月21日) |
医薬品医療機器等法その他薬事に関する法令若しくはこれに基づく処分に違反する行為があったとき、又は役員等が欠格条項に該当したとき(医薬品医療機器等法第75条) |
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高度管理医療機器等販売業許可 |
株式会社アソインターナショナル |
中央区保健所 |
第5502155142号 (2027年7月29日) |
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第一種医療機器製造販売業許可 |
フォレスタデント・ジャパン株式会社 |
東京都知事 |
第13B1X10233号 (2026年11月24日) |
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医療機器製造業登録 |
フォレスタデント・ジャパン株式会社 |
東京都知事 |
第13BZ200371 (2029年7月12日) |
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高度管理医療機器等販売業許可 |
フォレスタデント・ジャパン株式会社 |
港区みなと保健所 |
3港み生機器第52号 (2027年7月12日) |
② 法的規制に関するリスク(発生可能性:低、発生する時期:特定時期なし、影響度:高)
当社グループが取り扱う歯科矯正装置については、「歯科技工士法」、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」及び「下請法」等の様々な法的規制に関連しております。新たな法規制の制定や改廃により、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
また、当社グループでは法令遵守をはじめコンプライアンスを常に考慮した経営に努めておりますが、意図せざる理由により法令違反または訴訟提起が生じた場合、その結果によって当社グループの今後の事業展開、財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。
③ 国際的な事業活動に関するリスク(発生可能性:低、発生する時期:特定時期なし、影響度:高)
当社グループは、日本国内以外ではフィリピン共和国に製造子会社、米国ハワイ州に製造販売子会社及び米国カリフォルニア州に米国患者データ収集・製品受注子会社を有しております。特に、当社グループにとって重要な製造子会社があるフィリピン共和国において予期しない法律または規制の変更や、政情不安・テロ・暴動・戦争及び自然災害・パンデミック等が発生した場合、当社グループへの材料及び製品の供給が一時滞るおそれがあり、当社グループの今後の事業展開、財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。
④ 外国為替変動に関するリスク(発生可能性:中、発生する時期:特定時期なし、影響度:中)
当社グループの材料及び商品仕入れに関して、ドル建て及びユーロ建てでの取引を行っております。当社グループにおける、当連結会計年度の仕入取引全体に占めるドル建てでの取引比率は15.2%、ユーロ建てでの取引比率は37.7%となっております。これらの外貨建取引において、為替変動の影響を受ける可能性があります。
また、決算時においては、当社の在外連結子会社の外貨建て資産、負債、収益ならびに費用は、為替換算ルールに基づき各々円貨換算されます。その円貨換算額は、為替換算レートに応じて増減するため、これらの結果、急激な為替変動により、為替損失等が発生した場合には、当社グループにおける財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。
⑤ 競合について(発生可能性:中、発生する時期:特定時期なし、影響度:中)
当社グループは、歯科矯正市場における矯正歯科技工物の製作を事業領域としておりますが、同様の事業領域において、競合企業が存在しております。特に、マウスピース型矯正装置の市場に関して、競合の歯科技工所が当該市場へ新規参入してきており、当社グループの「AsoAligner DIGITAL」やその他の矯正装置の顧客が奪われる可能性があります。当社グループは、引き続き歯科医師・歯科医療機関等の顧客のニーズを掴み、矯正歯科技工物の製作を推進していく方針であります。また、適応症例及び非適応症例を歯科医師に理解して使用いただけるよう周知を行うことにより治療トラブルを極力回避し、歯科医師・歯科医療機関のニーズに応え競合他社との差別化が可能であると考えております。しかし、これらの競合企業に対して効果的な差別化を行うことができず、当社グループが想定している事業展開が図れない場合、当社グループの今後の事業展開、財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。
⑥ 営業活動について(発生可能性:中、発生する時期:特定時期なし、影響度:中)
当社グループの顧客となり得る歯科医師は歯科大学附属病院で研修を行い、歯科医療機関開業後には出身大学のコミュニティや歯科医師会等、何らかのグループに所属しております。従って、歯科医師同士のネットワーク内での「口コミによる顧客紹介」が当社グループの新規顧客獲得の源泉であり重要な営業戦略として位置付けております。従って、歯科医師のみならず歯科大学附属病院との安定かつ継続的な取引関係を構築することが重要であると捉えて、積極的な営業活動を行っております。しかしながら、当社グループが企図する営業活動を推進できずに十分な顧客獲得が継続的にできなかった場合、当社グループの今後の事業展開、財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。
⑦ 製品開発の強化について(発生可能性:中、発生する時期:特定時期なし、影響度:高)
当社グループが提供する矯正歯科技工物の品質は、患者の治療結果に大きく影響を与えるものであり、その精度・品質の更なる向上に取り組むこと、また今後も見込まれる需要増加に対応できるよう効率化を図るために、3Dプリンター等を利用したデジタル化・機械化による最新デジタル技術の導入をしておりますが、技術の日進月歩により製造技術レベル及びそれに伴う品質の更なる向上が重要であると考えております。
当社グループとしては、歯科診療のデジタル化に対する顧客ニーズが高まることを踏まえ、AI技術を用いた正常歯列を仮想構築し矯正歯科技工物へ反映させる仕組みや、クラウド基盤を活用した歯科医療機関と当社グループ間でのデータ連携サービスの開発に取り組んでまいります。しかしながら、これらの取り組みが、想定どおりの効果を上げることができず、品質の更なる向上や作業の効率化に寄与しない場合には、当社グループの今後の事業展開、財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。
⑧ 外注先の確保について(発生可能性:低、発生する時期:特定時期なし、影響度:高)
当社グループが行う歯科矯正事業では、必要に応じて、矯正歯科技工物の製作等について外部の歯科技工所等(協力パートナー)に外注委託しております。現状では、外注委託している協力パートナーとは良好かつ安定的な取引関係を保っておりますが、協力パートナーとの関係が維持できず、外部の歯科技工所が確保できない場合及び外注コストが高騰した場合、製造能力の確保と拡大がなされず、当社グループの今後の事業展開、財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。
⑨ 特定の仕入先への依存度について(発生可能性:低、発生する時期:特定時期なし、影響度:中)
当社グループは、ドイツ連邦共和国に本社を置くFORESTADENT Bernhard Förster GmbH (FORESTADENT社)と distribution contract(販売代理契約)において日本での独占販売権を締結しております。本契約に基づき、矯正装置製作の原材料等を同社から仕入れており、同社からの仕入割合は当連結会計年度において、36.9%であります。同社とは良好な取引関係が継続しており、同社からの原材料仕入品は汎用品であることから、同様の原材料等を取り扱う企業があり、代替先の確保は容易であるものと考えていますが、同社との契約が解除された場合、同社に不測の事態が生じた場合や、一時的に供給が滞り原材料仕入ができなくなった場合には、当社グループの今後の事業展開、財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。
(2)経営管理体制に関するリスク
① 人材の確保及び育成について(発生可能性:中、発生する時期:特定時期なし、影響度:高)
当社グループでは、今後の事業拡大のためには、人材の確保・育成は重要な経営課題であると認識しております。特に歯科矯正事業の特性上、歯科技工士の確保・育成は最重要課題であります。当社グループでは、継続的に採用活動を行い優秀な人材確保に注力しておりますが、計画どおりに人材が確保できない場合には、当社グループの今後の事業展開、財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。
② 特定人物への依存について(発生可能性:中、発生する時期:特定時期なし、影響度:中)
当社の代表取締役社長である阿曽敏正は、当社グループの創業者であり、当社グループの経営方針や経営戦略の立案及び決定をはじめ、営業戦略や業務遂行等の経営全般において重要な役割を果たしております。当社グループは、ノウハウの共有、人材の獲得及び育成等により組織体制の強化を図り、同人に過度に依存しない経営体制の構築を進めてまいります。しかしながら、不測の事態により同人の当社における職務執行が困難となった場合は、当社グループの今後の事業展開、財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。
③ 情報セキュリティについて(発生可能性:低、発生する時期:特定時期なし、影響度:中)
当社グループは、歯科矯正事業の特性上、取引先の情報や患者情報(氏名、年齢、症例等)といった個人情報を取り扱っているため、「個人情報の保護に関する法律」が定める個人情報取扱事業者としての義務を課されております。具体的には、個人情報の保護に関する法律、医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取り扱いのためのガイダンス及び医療情報を取り扱う情報システム・サービスの提供事業者における安全管理ガイドラインへの遵守が求められております。これら各種情報の取扱いには、細心の注意を払っており、情報への不正なアクセス、改ざん、漏洩、紛失等を防ぐために、情報管理体制の構築及び「個人情報保護規程」、「情報システム管理規程」を定め、適切な措置を講じております。
また、当社グループの海外事業展開により、国外の患者個人情報の越境移転が発生することを想定しております。特にEUからはEU域内の個人情報を利用しているすべての企業に対して、特にEU域内から海外への個人情報移転の際に一定水準の情報保護体制づくりを要請しております。これに関して、当社グループはEU一般データ保護規則(GDPR)に基づき当社及び海外子会社と共に、EU域内からの患者情報の取扱いにつきまして、細心の注意を払っており、情報への不正なアクセス、改ざん、漏洩、紛失等を防ぐための情報保護・管理体制を構築しております。
しかしながら、IT技術の目覚しい進化とその悪用によって不測の事態が起こりうる可能性があり、万一情報漏洩等が発生し、当社グループの社会的信用が低下した場合には、当社グループの今後の事業展開、財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。
④ 誤配送や矯正歯科技工物の取り違えについて(発生可能性:中、発生する時期:特定時期なし、影響度:中)
当社グループは、歯科医療機関から委託を受け、患者の矯正歯科技工物を製作し、歯科医療機関に配送・納品しておりますが、矯正歯科技工物は一般に要配慮個人情報となります。したがって、検収や配送に当たっては複数名によるチェック体制を構築する等誤配送や取り違えの防止策を講じておりますが、当連結会計年度においては、毎月約数万件程度の配送業務を行っており、十分に留意はしているものの、納品先の歯科医療機関を誤ったり、矯正歯科技工物を取り違えたりといったことが発生することがあります。極力誤配送や取り違え等を防止する取組みを行ってはいるものの、予期せぬ人的ミス等により、患者情報の漏洩が発生し、当社グループの社会的信用が低下するような場合には、当社グループの今後の事業展開、財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。
⑤ コンピューター情報セキュリティに関するリスク(発生可能性:低、発生する時期:特定時期なし、影響度:中)
当社グループは、ネットワークへのセキュリティ対策を施しておりますが、コンピュータウイルス等の侵入やハッカー等による妨害の可能性が全く排除されている訳ではありません。もしこれらの被害にあった場合は、当社グループの今後の事業展開、財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。
⑥ 知的財産に関するリスク(発生可能性:低、発生する時期:特定時期なし、影響度:低)
当社グループは、第三者の知的財産権を侵害しないように、また当社グループの知的財産権が第三者に侵害されないように、知的財産保護のための体制を整備しております。しかし、第三者から知的財産権の侵害を理由とする訴訟が提起されたり、また第三者から知的財産権の侵害を受けたり可能性を排除することは不可能であるため、このような事態が生じた場合、その結果によっては当社グループの今後の事業展開、財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。
(3)その他のリスク
① 自然災害について(発生可能性:低、発生する時期:特定時期なし、影響度:高)
当社グループが行う歯科矯正事業は、火災・地震・台風等大規模な自然災害の影響を受ける可能性があります。災害の状況によっては、在庫商品が被害に遭うことにより価値が減少する可能性や、商品の確保が困難になる可能性があります。このため万一に備えて各種保険への加入や倉庫等の設備の充実に努めておりますが、予測を超えた事態が生じた場合には、当社グループの今後の事業展開、財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。
② 訴訟などの可能性について(発生可能性:低、発生する時期:特定時期なし、影響度:中)
当社グループでは、コンプライアンス経営の重要性を認識しており、コーポレート・ガバナンスの強化に努めております。今後もコンプライアンス経営を推進してまいりますが、当社グループが製造販売した製品の品質に起因する訴訟等が発生する可能性があります。訴訟等の内容及び結果によっては、当社グループの今後の事業展開、財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。
③ 配当政策について(発生可能性:中、発生する時期:特定時期なし、影響度:中)
当社グループは、株主への利益還元を経営上の重要な課題として認識しており、事業環境や財政状況、経営成績を考慮のうえ、内部留保と配当のバランスを考えた利益配分を行うことを基本的な方針としております。
しかしながら、重要な事業投資を優先する場合やキャッシュ・フローの状況によっては、配当を実施しない、あるいは予定していた配当を減ずる可能性があります。
④ ストック・オプション行使による株式価値の希薄化について(発生可能性:高、発生する時期:数年以内、影響度:低)
当社では、取締役、従業員に対するインセンティブを目的としたストック・オプション制度を採用しています。本書提出日現在における新株予約権の目的となる株式の総数は135,700株であり、発行済株式総数4,884,300株の2.8%に相当します。また、今後においてもストック・オプション制度を活用していくことを検討しており、現在付与している新株予約権に加え、今後付与される新株予約権について行使が行われた場合には、既存株主が保有する株式の価値が希薄化する可能性があります。
⑤ 大株主との関係について(発生可能性:低、発生する時期:特定時期なし、影響度:低)
当社の代表取締役社長である阿曽敏正は、当社の大株主であり、本書提出日現在において自身が発行済株式総数の8.2%を保有するとともに、同人の資産管理会社である株式会社ASOの所有株式数を含めると発行済株式総数の65.5%を所有しております。
同人は安定株主として引続き一定の議決権を保有し、その議決権行使にあたっては、株主共同の利益を追求するとともに、少数株主の利益にも配慮する方針を有しておりますが、双方の意見が必ずしも一致するわけではないため、支配株主の利益追求により当社の少数株主の利益が害される可能性があります。
また当社といたしましては、同人及び同社は安定株主であると認識しておりますが、何らかの事情により、同人及び同社の株式の多くが減少した場合等には、当社株式の市場価格及び議決権行使の状況等に影響を及ぼす可能性があります。
(1)経営成績等の状況の概要
当社グループ(当社、連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 経営成績の状況
当連結会計年度における世界経済は、ロシア・ウクライナ情勢の長期化、パレスチナ・ガザ地区の軍事衝突がもたらした中東情勢の緊迫、米中経済摩擦等地政的、経済的リスクにより資源エネルギー価格やインフレ率が高止まりする等、楽観視できない状況が続いております。
一方、我が国の経済は、諸外国からの力強いインバウンド需要や海外投資資金の日本証券市場への流入により、活況を呈していますが、慢性的な円安や原材料価格高騰がもたらしたインフレ圧力等の影響で、依然として先行きが不透明な状況が続いております。
このような状況の中、当連結会計年度におきましては、社会における審美的な意識の高まり、未病改善への取り組み拡大等を背景として矯正歯科業界の事業環境は順調に推移してまいりました。
当社グループにおきましては、顧客である歯科医療機関に対し高品質な矯正歯科技工物の提供や継続的営業活動等を通じて引き続き顧客満足度の向上に努めてまいりました。また、コロナ禍にブームとなった歯科矯正治療の認知度は定着し、主力商品であるアライナー(マウスピース型矯正装置)のほか、IDB(インダイレクト・ボンディング)やアプライアンス等の矯正装置の売り上げも順調に拡大しております。加えて、2023年6月に一部製品の値上げを実施したことも売上高を押し上げました。
そして、矯正歯科業界のDX化推進及び矯正歯科技工物製作効率向上のため、口腔内スキャナー(WE SCAN)の代理販売及び拡販ルートの開拓並びに3Dプリンター等の設備の追加導入を行っております。
続いて、当社グループの海外事業展開の一環として、本年4月にアメリカのカリフォルニア州サンノゼ市に現地法人「ASO INTERNATIONAL USA, INC.」を設立し、本格的にアメリカ本土市場に参入する準備を整えました。
また、将来的な技工物受注数量の増加を見据えて、引き続き海外製造拠点の人員拡充等積極的な製造キャパシティの拡大を進めてまいりました。
以上の結果、当連結会計年度における経営成績は売上高3,544,750千円(前期比11.1%増)、営業利益545,318千円(前期比18.5%増)、経常利益555,355千円(前期比28.0%増)、親会社株主に帰属する当期純利益386,406千円(前期比14.3%増)となり、増収増益となりました。
当社グループの事業は、単一のセグメントであるため、セグメント別の記載を省略しています。
② 財政状態の状況
(資産)
当連結会計年度末における総資産は、前連結会計年度末と比較して358,610千円増加し、3,184,903千円となりました。これは主に、現金及び預金が172,100千円、投資有価証券が101,980千円及び保険積立金が36,496千円それぞれ増加したことによるものであります。
(負債)
当連結会計年度末における負債は、前連結会計年度末と比較して61,032千円増加し、421,747千円となりまし
た。これは主に、買掛金が6,866千円、契約負債が11,708千円、未払金が8,035千円及び未払法人税等が3,213千円それぞれ増加したことによるものであります。
(純資産)
当連結会計年度末における純資産は、前連結会計年度末と比較して297,577千円増加し、2,763,156千円となりました。これは主に、親会社株主に帰属する当期純利益386,406千円を計上した一方、剰余金の配当101,967千円の支払により、利益剰余金が284,439千円増加したことによるものであります。
この結果、自己資本比率は86.8%(前連結会計年度末は87.2%)となりました。
③ キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末と比較して172,100千円増加し、1,899,993千円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動におけるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果取得した資金は437,152千円(前期比77.9%増)となりました。これは主に税金等調整前当期純利益555,875千円及び減価償却費46,575千円を計上した一方、売上債権の増加83,231千円を計上したことによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は179,277千円(前期比97.8%増)となりました。これは主に有価証券取得による
100,000千円、有形固定資産の取得による50,713千円及び保険積立金の積立による36,496千円の支出によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果使用した資金は93,801千円(前期は276,624千円を取得)となりました。これはストックオプションの行使による収入8,166千円を計上した一方、配当金の支払101,967千円によるものであります。
④ 生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当連結会計年度における生産実績は、次のとおりであります。なお、当社グループは、歯科矯正事業の単一セグメントであるため、セグメントごとの記載はしておりません。
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セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2023年7月1日 至 2024年6月30日) |
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生産高(千円) |
前年比(%) |
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歯科矯正事業 |
1,609,473 |
112.7 |
|
合計 |
1,609,473 |
112.7 |
(注) 金額は製造原価によっております。
b.受注実績
当社グループが行う事業は、受注から売上計上までの期間が短いため、記載を省略しております。
c.販売実績
当連結会計年度における販売実績を売上区分ごとに示すと、次のとおりであります。なお、当社グループは、歯科矯正事業の単一セグメントであるため、セグメントごとの記載はしておりません。
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売上区分 |
当連結会計年度 (自 2023年7月1日 至 2024年6月30日) |
|
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金額(千円) |
前年比(%) |
|
矯正歯科技工物売上 |
|
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アナログ |
1,913,425 |
88.3 |
|
デジタル |
1,080,282 |
174.2 |
|
商品売上 |
530,022 |
140.1 |
|
その他 |
21,019 |
86.6 |
|
合計 |
3,544,750 |
111.1 |
(注) 1.主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合については、当該割合が100分の10
以上となる取引先が存在しないため、記載を省略しております。
2.売上区分の「矯正歯科技工物売上」のうち「アナログ」とは、矯正歯科技工物を製作する際に、患者の口
腔内情報について印象模型を利用したものを言い、「デジタル」とは、矯正歯科技工物を製作する際に、
患者の口腔内情報について、3Dスキャナー等で採取したデータを利用したものを言います。
3.売上区分の「商品売上」は、矯正関連材料及び歯科関連機器の販売に係る売上になります。
4.売上区分の「その他」は、主としてセットアップ用ソフトウエアのライセンス料が含まれております。
5.セットアップとは、患者の歯列を並び替えることをいいます。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されて
おります。この連結財務諸表の作成にあたっては、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費
用の報告金額及び開示に影響を与える見積りを必要としております。経営者は、これらの見積りに関して、過去の
実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積りによる不確実性のため、これらの見積りと異
なる可能性があります。なお、当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況
1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載し
ておりますが、連結財務諸表の作成に当たり会計上の見積りに用いた仮定のうち重要なものはないため、重要な会
計上の見積りを要する項目はないと判断しております。
② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当連結会計年度におけるキャッシュ・フローの概況については、「(1)経営成績等の状況の概要 ③ キャッシュ・フローの状況」をご参照ください。
③ 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
a.財政状態の分析
財政状態の分析については、「(1)経営成績等の状況の概要 ②財政状態の状況」に含めて記載しておりま
す。
b.経営成績の分析
(売上高、売上原価、売上総利益)
既存の歯科医療機関からの追加受注及び新規の歯科医療機関の獲得並びに矯正歯科技工物の受注が順調に積みあ
がったことと製品価格値上げにより、売上高は3,544,750千円(前期比11.1%増)となりました。
売上原価は主に商品収入、材料仕入、歯科技工士の労務費及び外注加工費を計上し、1,957,269千円(前期比
11.2%増)となりました。
この結果、売上総利益は1,587,481千円(前期比11.0%増)となりました。
(販売費及び一般管理費、営業利益)
販売費及び一般管理費は、1,042,162千円(前期比7.5%増)となりました。これは主に、営業部門や管理部門の
人員の給料及び手当402,549千円、運賃及び荷造費118,251千円を計上したことによるものであります。
この結果、営業利益は545,318千円(前期比18.5%増)となりました。
(営業外収益、営業外費用、経常利益)
営業外収益については、受取地代家賃4,620千円、受取手数料1,893千円及び雑収入5,563千円等により20,679千
円(前期比100.3%増)となりました。
営業外費用については、支払手数料955千円及びその他9,660千円等により10,643千円(前期比71.0%減)となり
ました。
この結果、経常利益は555,355千円(前期比28.0%増)となりました。
(特別利益、特別損失、法人税等合計、親会社株主に帰属する当期純利益)
特別利益は受取賠償金520千円によるものであります。
法人税等合計169,468千円を計上した結果、親会社株主に帰属する当期純利益は386,406千円(前期比14.3%増)
となりました。
c.経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループの、経営上の目標と達成状況を判断するための客観的な指標として、取引歯科医療機関数及び取引
歯科医療機関あたりの売上高を重視しております。取引歯科医療機関数及び取引歯科医療機関あたりの売上高は営
業活動の成果である売上高と密接に関係する指標であることから当該指標を採用しております。全国の歯科医療機
関のうち、矯正治療対応歯科医療機関は約25,000施設(出典:一般社団法人日本矯正歯科技工所協会)あります
が、当社グループは順調に取引歯科医療機関数を増やしており、当連結会計年度は、6,336施設の歯科医療機関と
取引実績があります。
また、取引歯科医療機関数及び取引歯科医療機関あたりの売上高と直結する売上高、並びに収益力を示す指標と
して、売上高営業利益率を重要な経営指標と位置付けております。当連結会計年度の数値については、次のとおり
となっております。
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当連結会計年度 |
前年比増減率 |
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売上高 |
3,544,750千円 |
11.1% |
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営業利益 |
545,318千円 |
18.5% |
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売上高営業利益率 |
15.4% |
1.0ポイント |
(注)各期において、1回以上取引があった歯科医療機関数
(注)各期の売上高を取引歯科医療機関数で除した数値
d.経営成績等に重要な影響を与える要因について
当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因については、「3 事業等のリスク」をご参照ください。ま
た、経営者の問題認識、今後の方針については、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」をご参照くだ
さい。
該当事項はありません。
該当事項はありません。