第一部 【企業情報】

 

第1 【企業の概況】

 

1 【主要な経営指標等の推移】

 

回次

第9期

第10期

第11期

第12期

第13期

決算年月

2018年12月

2019年12月

2020年12月

2021年12月

2022年12月

売上高

(千円)

26,123

121,810

137,484

708,245

374,477

経常利益又は

経常損失(△)

(千円)

383,622

369,495

327,492

144,914

433,165

当期純利益又は

当期純損失(△)

(千円)

385,631

371,504

329,501

142,905

473,962

持分法を適用した

場合の投資利益

(千円)

資本金

(千円)

100,000

100,000

100,000

100,000

1,272,005

発行済株式総数

 

 

 

 

 

 

普通株式

(株)

1,001

1,001

1,001

1,001

7,773,300

A種優先株式

 

1,637

1,637

1,637

1,637

B種優先株式

 

3,125

3,125

3,125

3,125

C種優先株式

 

3,337

3,337

3,337

3,337

D種優先株式

 

76

1,410

1,610

1,910

E種優先株式

 

110

純資産額

(千円)

1,483,464

1,778,959

1,549,458

1,900,114

3,769,801

総資産額

(千円)

1,750,418

2,037,902

2,196,213

2,646,232

4,815,337

1株当たり

純資産額

(円)

2,034,415.12

2,405,548.48

5,469.44

5,183.91

484.88

1株当たり配当額

(1株当たり中間

配当額)

(円)

()

(-)

(-)

(-)

(-)

1株当たり当期純利益又は1株当たり当期純損失(△)

(円)

385,245.79

371,133.37

658.34

285.53

177.67

潜在株式調整後

1株当たり

当期純利益

(円)

自己資本比率

(%)

84.7

87.2

70.5

71.8

78.3

自己資本利益率

(%)

8.3

株価収益率

(倍)

配当性向

(%)

営業活動による

キャッシュ・

フロー

(千円)

294,001

161,537

403,596

投資活動による

キャッシュ・

フロー

(千円)

264

50,583

430,674

財務活動による

キャッシュ・

フロー

(千円)

488,905

229,206

2,658,538

現金及び現金同等物の期末残高

(千円)

1,272,879

1,613,040

3,437,307

 

 

従業員数

〔外、平均臨時

雇用者数〕

(名)

21

19

19

22

21

2

3

2

2

1

株主総利回り

(比較指標:―)

(%)

(%)

(-)

(-)

(-)

(-)

(-)

最高株価

(円)

2,468

最低株価

(円)

1,230

 

(注) 1.当社は連結財務諸表を作成しておりませんので、連結会計年度に係る主要な経営指標等の推移については記載しておりません。

2.第11期、第12期及び第13期の財務諸表については、「財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則(昭和38年大蔵省令第59号)に基づき作成しており、金融商品取引法第193条の2第1項の規定に基づき、第11期は有限責任 あずさ監査法人、第12期及び第13期は東邦監査法人の監査を受けております。なお、第9期及び第10期については、会社計算規則(平成18年法務省令第13号)の規定に基づき算出した各数値を記載しております。また、当該各数値については、金融商品取引法第193条の2第1項の規定に基づく監査を受けておりません。

3.持分法を適用した場合の投資利益については、関連会社がないため記載しておりません。

4.1株当たり純資産額については、優先株主からの払込金額を控除して算定しております。

5.1株当たり配当額及び配当性向については、配当を実施していないため、記載しておりません。

6.第9期から第12期の潜在株式調整後1株当たり当期純利益については、潜在株式は存在するものの、当社株式は非上場であり、期中平均株価が把握できないため、記載しておりません。また、第13期の潜在株式調整後1株当たり当期純利益については、潜在株式は存在するものの、1株当たり当期純損失であるため、記載しておりません。

7.当社は、2022年8月12日開催の取締役会決議により2022年9月2日付で株式1株につき500株の株式分割を行っておりますが、第11期の期首に当該株式分割が行われたと仮定し、1株当たり純資産額、1株当たり当期純利益金額又は1株当たり当期純損失金額を算定しております。

8.第9期、第10期、第11期及び第13期の自己資本利益率については、当期純損失を計上しているため記載しておりません。

9.第9期から第12期の株価収益率については、当社株式は非上場であるため、記載しておりません。第13期の株価収益率については、当期純損失のため、記載しておりません。

10.第9期及び第10期は、キャッシュ・フロー計算書を作成しておりませんので、営業活動によるキャッシュ・フロー、投資活動によるキャッシュ・フロー及び財務活動によるキャッシュ・フロー並びに現金及び現金同等物の期末残高については記載しておりません。

11.定款に基づき、2022年8月19日付でA種優先株主、B種優先株主、C種優先株主、D種優先株主及びE種優先株主の株式取得請求権に応じたことにより、すべてのA種優先株式、B種優先株式、C種優先株式、D種優先株主及びE種優先株式を自己株式として取得し、対価として当該A種優先株式、B種優先株式、C種優先株式、D種優先株主及びE種優先株式1株に対し普通株式1株を交付しております。また、その後、2022年8月19日付で当該A種優先株式、B種優先株式、C種優先株式、D種優先株主及びE種優先株式をすべて消却しております。なお、当社は2022年9月2日付で種類株式を発行する旨の定款の定めを廃止しております。

12.「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を第13期の期首から適用しており、第13期に係る主要な経営指標等については、当該会計基準等を適用した後の指標等となっております。

13.第9期から第13期の株主総利回り及び比較指標については、2022年12月1日に東京証券取引所グロース市場に上場したため、記載しておりません。

14.最高・最低株価は、東京証券取引所グロース市場における株価を記載しております。ただし、当社株式は2022年12月1日から東京証券取引所グロース市場に上場したため、それ以前の株価については該当ありません。

 

 

2 【沿革】

株式会社サイフューズは、再生・細胞医療分野、創薬支援分野等をはじめとする先端医療分野においてヒトの細胞のみから作製した組織・臓器を新しい製品として、患者さまへの移植や新薬開発等の研究開発現場へご提供し、医療に貢献することを目指して、創業いたしました。

当社設立以降の会社沿革は、以下のとおりであります。

 

年月

概要

2010年8月

東京都新宿区に株式会社サイフューズを設立

2010年9月

骨軟骨再生の細胞製品開発プロジェクトが国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(以下、NEDO)の委託事業(橋渡し推進技術開発)に採択

2011年4月

本店を東京都新宿区から東京都千代田区へ移転

2011年11月

立体組織再生に関する基本特許(三次元細胞積層技術)に関し、国立大学法人九州大学と独占ライセンス契約を締結

2012年12月

細胞版の3Dプリンタ(バイオ3Dプリンタ)「Regenova®(レジェノバ)」の販売開始

2013年4月

本店を東京都文京区へ移転。東京大学アントレプレナープラザ内に「東京ラボ」を開設。

2014年4月

NEDOの委託事業(橋渡し推進技術開発)(2015年から国立研究開発法人日本医療研究開発機構(以下、AMED)の委託事業に移行)「立体造形による機能的な生体組織製造技術の開発/細胞を用いた機能的な立体組織作成技術の研究開発」(代表:佐賀大学)に採択

2014年4月

NEDO(2015年からAMED委託事業に移行)の委託事業「再生医療の産業化に向けた細胞製造・加工システムの開発」(代表:京都大学)に採択

2015年5月

ベンチャー起業への国際的表彰「アジア・アントレプレナーシップ・アワード2015」((主催:アジア・アントレプレナーシップ・アワード運営委員会、共催:三井不動産株式会社、国立大学法人東京大学産学協創推進本部、一般社団法人TXアントレプレナーパートナーズ、一般社団法人日本ベンチャー学会、独立行政法人日本貿易振興機構))にて事業の革新性や事業の実行力に対する評価を受け、優勝

2015年9月

北米でバイオ3Dプリンタ「Regenova®(製品名:レジェノバ)」の販売開始

2017年6月

AMEDの委託事業「革新的医療技術創出拠点プロジェクト/HDMAC技術応用による変形性膝関節症における広範囲骨軟骨再生」(代表:九州大学)に採択

2017年7月

AMEDの委託事業「革新的医療シーズ実用化研究事業/バイオ3D プリンタにより作製した三次元神経導管(Bio 3D Conduit)を用いた革新的末梢神経再生法の臨床開発」(代表:京都大学)へ参画

2017年8月

「大学発ベンチャー表彰2017」(主催:国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO))にて優れた大学発ベンチャーとしての評価を受け、「科学技術振興機構理事長賞」を受賞

2017年8月

「第15回産学官連携功労者表彰」(主催:内閣府、総務省、文部科学省、厚生労働省、農林水産省、経済産業省、国土交通省、環境省、一般社団法人日本経済団体連合会、日本学術会議)にて産学官連携活動の推進に多大な貢献をした優れた企業としての評価を受け、「日本学術会議会長賞」を受賞

2017年10月

富士フイルム株式会社と血管再生の細胞製品開発に関する業務提携

2018年8月

積水化学工業株式会社と肝臓構造体の細胞製品開発に関する業務資本提携

2018年10月

肝臓構造体の細胞製品開発プロジェクトが、NEDO公募事業「研究開発型ベンチャー支援事業/企業間連携スタートアップに対する事業化支援」に採択

2019年1月

新型のバイオ3Dプリンタ「S-PIKE®(製品名:スパイク)」の販売開始

2019年2月

「Japan Venture Award 2019」(主催:独立行政法人中小企業基盤整備機構)にて革新的かつ潜在成長力の高い事業や、社会的課題の解決に資する事業を行う、志の高いベンチャー企業の経営者としての評価を受け、「中小機構理事長賞」を受賞

2019年2月

太陽ホールディングス株式会社と再生・細胞医療分野における再生医療等製品の製品製造に関する資本業務提携

2019年5月

東京都の「TOKYO働き方改革宣言企業」に認定

2019年6月

経済産業省のスタートアップ支援プログラム「J-Startup」企業に選定

2019年7月

本店を東京都文京区へ移転

 

 

年月

概要

2019年11月

AMEDの委託事業「バイオ3Dプリンタを用いて造形した小口径Scaffold free細胞人工血管の臨床研究」(代表:佐賀大学)へ参画

2020年5月

AMEDの委託事業「末梢神経損傷を対象とした三次元神経導管移植による安全性と有効性を検討する医師主導治験」(代表:京都大学)へ参画

2020年6月

岩谷産業株式会社と再生・細胞医療分野における技術開発に関する業務資本提携

2020年10月

太陽ホールディングス株式会社と再生・細胞医療分野における包括的パートナーシップ締結

2020年11月

京都大学医学部附属病院とバイオ3Dプリンタを用いた末梢神経損傷に対する三次元神経導管の医師主導治験を開始

2020年12月

藤森工業株式会社と再生・細胞医療分野における技術開発に関する業務資本提携

2021年12月

株式会社メディパルホールディングスと再生・細胞医療分野における再生医療等製品の安定流通に関する開発投資契約締結

2022年4月

本店及び東京ラボを東京都港区へ移転

2022年9月

福岡ラボを福岡県福岡市中央区へ移転

2022年12月

東京証券取引所 グロース市場に上場(証券コード:4892)

 

 

 

3 【事業の内容】

1.当社の事業概要

当社『サイフューズ(Cyfuse)』は、2010年の創業以来、「革新的な三次元細胞積層技術の実用化を通じて医療の飛躍的な進歩に貢献する」という企業理念のもと、細胞のみから作製した立体的な組織・臓器を新しい「3D細胞製品」として、再生医療・創薬分野をはじめとする先端医療の現場へお届けすることで、社会に貢献することを目指す再生医療ベンチャーです。

当社では、従来技術・従来製品との比較優位性を背景に、世界初の革新的な「3D細胞製品」の実用化を主軸として戦略的・多面的に事業展開を進めております。

当社事業領域は、3D細胞製品、バイオ3Dプリンタ等の研究開発及び製造販売並びにこれらの付随業務の単一セグメントであり、(1)再生医療領域において、再生医療等製品の承認取得へ向けたパイプライン開発及び研究用細胞製品の受託、(2)創薬支援領域において、製薬企業等を相手方とした創薬支援用のツールとしての細胞製品の開発、(3)デバイス領域において、基盤技術を搭載した三次元細胞積層システム機器(バイオ3Dプリンタ及び消耗品)等の開発・販売及び細胞製品開発のための技術応用や新技術開発等を展開しております。

 

(1) 再生医療領域

再生医療とは、細胞や組織を用いて、病気やケガなどにより機能を失った組織や臓器を修復・再生させる医療であり、患者さまに対して新たな治療法の選択肢を提供し、国民の健康増進に大きく寄与することが期待される新しい医療領域です。ヒト又は動物の細胞に培養等の加工を施したもので、身体の構造・機能の再建・修復・形成するものや疾病の治療・予防を目的として使用するものを総称して「再生医療等製品」といいます。

① 当社の開発する再生医療等製品

従来、再生医療に用いることを目指した組織や臓器の開発では、ゲルやコラーゲンといった人工材料が用いられることが一般的でしたが、当社では人工材料を使用することなく、細胞のみで立体的な組織や臓器を作製することを可能にする独自の基盤技術を有しております。

現在、当社では「患者さまから採取した細胞のみを材料として、バイオ3Dプリンタを使用して立体的な組織・臓器を作製し、患者さまご自身の体内へ移植することで、患者さまご自身の体内の組織・臓器が有する機能を回復・再生させる」という新しい治療コンセプトの再生医療等製品の開発を進めております。

当社が開発する製品は、液体での細胞を投与する製品(1D製品)やシート状に加工した細胞製品を組織や臓器に貼付する製品(2D製品)などの従来の再生医療等製品と異なるコンセプトの立体的な組織・臓器(3D製品)です。

具体的には、細胞のみから成る細胞塊(スフェロイド)及び自社で製品化した細胞版の3Dプリンタ(バイオ3Dプリンタ)を使用して立体的な組織や臓器を作製するという点に特徴と強みを有しております。

この基盤技術及びバイオ3Dプリンタを使用して細胞のみで作製された組織や臓器は、移植後の拒絶反応や感染症のリスクなどの患者さまに対する負担を軽減し、また、人工材料や生体材料を使用しないため高い安全性を有する点、生体との親和性が高く患者さまご自身の組織や臓器が持つ組織・臓器本来の機能を再生させる可能性が大きい点等、既存の医療機器等が有しない機能(再生能力)を有する点において、これまでの製品とは大きく異なる特徴を有しております。

現在、当社では、「患者さま自身の」生きた細胞を用いて、自身の細胞を自身の体内に戻す自家細胞移植をターゲットとした「自家細胞製品」の開発を中心に様々なパイプライン開発を進めており、非臨床試験(動物への移植試験)において、安全性と有効性を十分に確認し、再現性のあるデータを取得したうえで、臨床試験(患者さまへの移植)の段階へ開発を進めております。

また、任意の形状、立体構造の造形が可能であり、様々なサイズ(口径・長さ)の組織を作製することが可能であるというバイオ3Dプリンタの特徴を活かし、あらゆる領域の組織・臓器へ適用拡大することや同じ構造を有する組織・臓器を様々な疾患への製品として、適用拡大することも視野に入れた製品開発を行っております。

さらに、使用する細胞の種類に制限はなく、細胞塊を作製することができるあらゆる細胞から立体的な組織・臓器を作製することが可能という基盤技術の特徴を活かし、将来的には、iPS細胞や他人の細胞を用いて立体的な組織・臓器を作製し、疾患ごとに様々な製品を展開することも視野に入れた製品開発を行っております。

当社ではこの独自の基盤技術を用いて、ヒト細胞のみから成る移植可能な臓器を再生医療等製品として患者さまへお届けすることで、再生・細胞医療分野において、病気やケガで機能不全になった組織・臓器等を再生する新しい治療法の選択肢を提供し、医療の発展に貢献することを目指しています。

現在、実用化に向け開発を進めている細胞製の神経、骨軟骨、血管のような「再生医療等製品」により、従来の治療法では困難であった組織・臓器再生という新たな治療法の選択肢が誕生することで、QOL(Quality of Life)を大きく向上させることが期待されています。

 


図1.再生医療等製品開発例

 

② 主要パイプラインと開発進捗状況

当社の企業成長を中長期的に牽引する再生医療等製品の開発においては、従来の再生医療等製品とは異なり、人工の足場材料を使用せずに患者さまの細胞のみで作製された3D組織・臓器を、新たな再生医療等製品として製品化することを目指して、複数のパイプライン(末梢神経再生、骨軟骨再生、血管再生等の新たな再生医療等製品の開発品ラインナップ)の臨床開発を進めております。

また、この主要パイプラインに続く次世代のパイプライン(研究開発シーズ)の探索及び基礎開発を進めております。

本書提出日現在での開発計画に基づく、当社のパイプラインの開発ステータスは以下のとおりです。

 


図2.当社のパイプラインの開発ステータス

 

 

a.末梢神経再生

末梢神経再生については、これまでに国立大学法人京都大学とともにAMED委託事業「革新的医療シーズ実用化研究事業/バイオ3Dプリンタにより作製した三次元神経導管(Bio 3D Conduit)を用いた革新的末梢神経再生法の臨床開発」において、末梢神経損傷を受けた患者さまへ移植するための「細胞製神経導管」の開発に取り組んでまいりました。また、当事業年度においては、AMED委託事業「末梢神経損傷を対象とした三次元神経導管移植による安全性と有効性を検討する医師主導治験」において、京都大学とともに臨床試験を実施いたしました。現在、本医師主導治験に関するデータを集積しており、次相臨床試験開始に向けた準備を進めております。

なお、本細胞製神経導管の開発背景や開発状況の進捗については、「第21回日本再生医療学会総会」をはじめとする学会や文部科学省の特別展示「情報ひろば」等の展示会等で発表いたしました。

 

b.骨軟骨再生

骨軟骨再生については、軟骨だけでなく軟骨下骨まで損傷が進行している患者さまへ軟骨と軟骨下骨とを同時に再生させることが可能な「細胞製骨軟骨」の開発に取り組んでおります。

これまでに九州大学病院において、変形性膝関節症をはじめとする患者さまへ細胞製骨軟骨を移植する臨床試験(プロジェクト名:「高密度スキャフォールドフリー脂肪由来幹細胞構造体(HDMAC)を用いた骨軟骨組織再生の臨床研究」)を、AMED委託事業「再生医療実用化研究事業/高密度スキャフォールドフリー脂肪由来幹細胞構造体を用いた骨軟骨組織再生の実用化推進臨床研究」による支援を受け実施してまいりました。

当事業年度においては、AMED橋渡し研究プログラム「バイオ3Dプリンタ技術を用いた膝関節特発性骨壊死に対する骨軟骨再生治療」に事業採択される等、次相臨床試験開始に向けて、慶應義塾大学病院とともに開発を進めました。

 

c.血管再生

血管再生については、人工透析患者さまへ移植可能な細胞製の血管構造体「小口径細胞製人工血管」の開発に取り組んでおります。

当事業年度においては、国立大学法人佐賀大学と共同で進めるAMED委託事業「バイオ3Dプリンタを用いて造形した小口径Scaffold free細胞人工血管の臨床研究」において、株式会社ジャパン・ティッシュエンジニアリングとともに臨床試験を継続実施してまいりました。引き続き、国立大学法人佐賀大学との連携を図りながら、臨床試験の完了に向けて今後も開発を続けてまいります。

 

d.次世代パイプライン

現在、臨床開発段階にある再生・細胞医療分野における主要パイプラインに加え、次世代のパイプライン(研究開発シーズ)の育成及び探索開発が進捗しております。引き続き、共同研究パートナーとの研究開発を進めるとともに、新たなシーズ探索・基礎研究を進めてまいります。

 

e.その他

当社が実用化を目指す細胞製品の開発においては、基盤技術を用いて細胞のみで立体的な構造体を作製するコアプロセス(スフェロイドの作製~三次元細胞積層による立体化~立体構造体の組織化)が極めて重要です。当社では、細胞製品の実用化・産業化に向け、このコアプロセスの機械化及び生産設備開発に取り組んでおり製造設備及び製造設備等のインフラに関する技術・ノウハウ等を有する企業とのパートナーシップ強化を加速し、必要となる培養技術やプロセス開発等、商業化に必要となる技術開発を進めております。

当事業年度においては、当社と細胞製品の製造に関する包括的パートナーシップ契約を締結している太陽ホールディングス株式会社の子会社である太陽ファルマテック株式会社の高槻工場内の「次世代モジュール型CPC」(細胞加工施設)において、製造体制を整備いたしました。本「次世代モジュール型CPC」は当社の業務提携先である日立グローバルライフソリューションズ株式会社と共同で構築した、コンパクトかつシームレスな製造設備であり、3社共同体制に基づき製造施設構築の実現にいたっております。

そのほか、藤森工業株式会社との間では細胞の大量培養に関する共同技術開発を、また、岩谷産業株式会社との間では凍結保管技術の開発を進めてまいりました。

以上のように当社では、今後もパートナー企業との間で戦略的パートナーシップの強化を進め、当社の革新的な再生医療等製品の早期の実用化に向け開発を進めてまいります。

 

(2) 創薬支援領域

当社は、創薬支援領域において、製薬企業等を相手方とした創薬支援用のツールとしての細胞製品の開発を進めております。

現在の一般的な新薬開発においては、主にシャーレ上で培養されたマウス由来細胞又はヒト初代培養肝細胞を用いて新薬候補化合物の毒性試験や代謝物の評価を行いますが、その細胞が有する薬物代謝機能は2~3日で低減してしまうことから、開発現場では、より長期間機能が持続する肝臓サンプルの開発が待ち望まれています。

当社では、新薬創出の開発現場における大きな課題の1つとして挙げられる肝毒性評価系の不足に対する取り組みとして、ヒト肝臓を用いた場合と同様の毒性評価結果が得られ、高い肝機能が長期間にわたり発現する新たなツールとして、ヒト肝細胞等の細胞のみからなるヒト肝臓構造体を開発しました。

当事業年度においては、これまで国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(以下、「NEDO」といいます。)による「研究開発型ベンチャー支援事業/企業間連携スタートアップに対する事業化支援」の支援を受け開発した「3D肝臓構造体による毒性評価モデル」について、業務提携パートナーである積水化学工業株式会社、大阪サニタリー株式会社及び株式会社SCREENホールディングスとともに、3D肝臓構造体の事業化に向けた共同開発を進めてまいりました。

今後も、これまで動物試験では検出できなかったヒト特異的な毒性の検出を早期に行い、臨床試験の前にヒト肝臓で起こりうる有害事象を事前に予測することが可能なヒト肝臓構造体の開発を進め、製薬企業や非臨床試験受託会社等の創薬研究のニーズに応えるとともに、将来的には、再生医療領域への応用も視野に実際の患者さまへの移植可能な肝臓構造体の研究開発を進めてまいります。

このように、当社独自の基盤技術は、再生医療の分野での実用化のみならず、創薬支援の分野においても、新薬開発における薬剤の評価や、疾患メカニズムの解明へのニーズに対する需要、及び臨床入り後の開発リスクの低減、コスト削減や研究効率向上に多面的に貢献することが期待されています。

 

(3) デバイス領域

当社は、デバイス領域において、細胞製品開発を進展させる基礎となる基盤技術を普及させるため、バイオ3Dプリンタ等のデバイスの開発・販売とともに、細胞製品開発に必要となる技術応用や新技術開発等を進めております。

当社は、上記の①再生医療領域及び②創薬支援領域に記載する細胞製品を作製するためのデバイスとして、バイオ3Dプリンタ「Regenova®(製品名:レジェノバ)」の販売を行っております。

これらのデバイスは、専用3Dソフトウエアでスフェロイドの三次元配置を指定して3Dデータを入力し、使用する剣山とスフェロイドをセットし稼働させることで、自動的に細胞の立体積層を行うことが可能となっており組織工学・再生医療分野でのニーズが高まっております。。

当社は、これらのデバイスの販売を行うとともに、大学等の研究機関や企業の研究所等のデバイス利用者(ユーザー)向けに立体組織の作製に関するトレーニングメニューの提供をはじめ、ユーザーの研究を継続的に支援するためのサポート、消耗品、周辺機器の提供もあわせて行っております。

また、基盤技術の技術応用により開発された、再生医療等製品の開発における臨床用三次元細胞積層システムが、各再生医療プロジェクトの臨床試験において稼働しております。

さらに、再生・細胞医療分野の研究開発促進及び基盤技術普及を拡大することを目的として、新技術方式を搭載した新型バイオ3Dプリンタ「S-PIKE®(製品名:スパイク)」を販売しております。

なお、「S-PIKE®(製品名:スパイク)」の製品販売については、シスメックス株式会社との販売提携による共同販売を行い、基盤技術の普及を進めております。

当社では、これらデバイスによる基盤技術のグローバル展開を進めることで、様々な分野・領域での共同研究や共同開発が拡大し、新たなユーザーへの技術周知やシーズの開拓、細胞製品開発が大きく促進するものと見込んでおります。

 


図3.バイオ3Dプリンタを用いた製造プロセス全体図

 

 

2.事業戦略

(1) 当社の事業戦略

当社では、当社独自のビジネスモデルを発展拡大させ、デバイス普及により「ベース収益の確保」と「シーズ探索の拡大」を図り、創薬支援用途等の研究用組織による「早期マネタイズ」の実現を経て、中長期的には「再生医療等製品の承認取得」を目指し、再生医療ベンチャーとしての事業価値最大化を図ってまいります。

当社独自の基盤技術を中核とした中長期的な事業展開としては、以下を想定しており、現状は、STEP2からSTEP3に移行している段階にあります。

 

<STEP1>

複数の大学等の開発パートナーと共同研究を実施し、それらを通じて当社研究開発の中核となるパイプラインの構築を図ってまいります。また、バイオ3Dプリンタ「Regenova®(製品名:レジェノバ)」及び「S-PIKE®(製品名:スパイク)」の販売を通じて当社基盤技術の普及を目指します。

 

<STEP2>

複数の企業パートナーとの提携により、各パイプラインの製品実用化に向けた臨床開発を進めてまいります。また、細胞製品開発に必要となる基盤技術を応用した臨床用装置や将来の商業生産を想定した新技術の発明や次世代デバイスの技術開発を進めてまいります。

 

<STEP3>

再生医療領域の中核パイプラインの実用化に向けた開発を進め、企業パートナーとともに再生医療等製品の承認取得を目指してまいります。また、細胞製品実用化に必要となる基盤技術の開発や新技術開発を継続し、細胞製品及びその用途の拡大を図ってまいります。さらに、当社が培ってきた基盤技術を新たな領域にも拡大するべく、次世代パイプラインの探索及び拡充を図ってまいります。


図4.中長期事業戦略(イメージ)

 

(2) 当社のアライアンス戦略

当社では、従来技術・従来製品との比較優位性を背景に、創薬系ベンチャーとは異なる事業戦略に基づき、世界初の革新的な再生医療等製品の実用化をコアコンポーネント戦略的・多面的に事業展開を進めております。

当社が開発を進める再生医療等製品においては、従来の医薬品とは異なり、原材料が生きた細胞であることから個体差のある細胞の培養、加工、品質検査、最終製品の出荷、医療機関への輸送、患者さまへの移植まで、製品が届くステップが個別具体的なものとなることが特徴です。

そのため、製品開発プロセスにおいても、単一の化合物についてのライセンスを保有するバイオベンチャー1社の企業が単独で、アウトソーシングやライセンスアウトに依存しながら開発を進めていく一般的な創薬系ベンチャーでの医薬品の開発とは異なり、再生医療等製品の製品化にあたっては、企業や医療機関との連携や技術・設備・装置等の共同開発体制構築が必要不可欠です。

また、医薬品におけるアライアンスは、ライセンスの権利付与を前提とするのに対して、再生医療におけるアライアンスは、単なる権利移転のみならず、製品製造にかかる技術やノウハウ等の移管を要することから、当社では、将来の製造販売体制構築を視野に入れた共同開発体制を構築する独自のアライアンス戦略をとっています。そして着実に開発を進めるため、製造設備等のインフラに関する技術やノウハウ・設備等を有する複数の医療機関・事業会社・行政機関等の外部パートナーとの共同開発体制(コンソーシアム)を形成することで、開発を加速させております。

このような当社独自のアライアンス戦略は、①1社単独による開発リスクを低減し、事業化パートナー企業と有機的に連携することにより、着実に製品化へ向けた確度の高い開発を進めることで、開発製品の上市の確度を大きく向上させるとともに、②実用化に近いパイプラインを複数有し、かつ、製品ごとにターゲットマーケット及び販売戦略をすみ分けることで、事業リスクを低減し、事業計画実現の確度を高めるものです。

再生・細胞医療分野において世界初の製品上市により事業計画を実現することを目指す当社においては、その独自のアライアンス戦略に基づき、最終製品化のためのライセンスパートナーへの技術移管を含めた製造販売体制を構築することが、結果として当社製品のライセンスの価値を高め、ひいては当社の事業価値を増加していくものと考えております。

したがって、当社の再生医療等製品の上市の蓋然性については、実際の共同開発体制や開発パートナーの開発力・技術力が重要な判断指標となります。双方が保有する技術・ノウハウをハイブリッドさせることで、当社製品が安定的に供給できる体制になること、及び双方の技術を補完することで新たな市場をともに開拓していくことができるポテンシャルを有していることを合意の上、患者さまに新しい治療法の選択肢を安心安全にお届けする体制を共同構築していく方針です。

 


 

 

4 【関係会社の状況】

該当事項はありません。

 

5 【従業員の状況】

(1) 提出会社の状況

2022年12月31日現在

従業員数(名)

平均年齢(歳)

平均勤続年数(年)

平均年間給与(千円)

21

(1)

39.3

4.7

7,637

 

 

事業部門の名称

従業員数(人)

研究開発部

(-)

システム開発部

(1)

事業推進部

(-)

経営管理部

(-)

合計

21

(1)

 

(注) 1.従業員数は就業人員であり、臨時従業員数(嘱託、パートタイマー及び派遣社員は含む。)は、年間の平均人員を( )内に、外数で記載しております。

2.平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでおります。

3.当社は細胞製品等の研究開発及び製造販売並びにこれらの付随業務の単一セグメントであるため、セグメント別の記載は省略しております。

 

(2) 労働組合の状況

労働組合は結成されていませんが、労使関係は円満に推移しております。