当中間会計期間において、新たな事業等のリスクの発生、又は、前事業年度の有価証券報告書に記載した事業等のリスクについての重要な変更はありません。
文中の将来に関する事項は、当中間会計期間の末日現在において当社が判断したものであります。
当中間会計期間における我が国経済は、新型コロナウイルス感染症の5類移行による社会経済活動の正常化が一層進み、景気は緩やかに持ち直す動きがみられました。その一方で、不安定な世界情勢や物価上昇により、先行きについては依然として不透明な状況が続いております。
国内における再生・細胞医療、遺伝子治療分野では、厚生労働省 薬事・食品衛生審議会 再生医療等製品・生物由来技術部会において、再生医療等製品の製造販売承認が了承された製品が追加され、新たな再生医療等製品の上市と本分野の拡大成長が加速しております。
このような環境の下、当社では、独自のプラットフォーム技術を用いた革新的な再生医療等製品や3D細胞製品の創出を通じて、新たな再生医療・細胞医療の実用化・産業化に貢献するべく、研究・技術開発を中核とする事業活動を推進してまいりました。また、細胞製品開発と並行して、デバイス販売や共同研究活動等により、次世代製品候補の探索や当社の基盤技術を国内外に普及させる事業活動にも取り組んでまいりました。
具体的には、①再生医療領域において、再生医療等製品の実用化へ向けたパイプライン開発及び研究用細胞製品の各種受託、②創薬支援領域において、製薬企業・非臨床試験受託企業等の創薬活動を支援する3D細胞製品の開発・販売、③デバイス領域において、基盤技術を搭載したバイオ3Dプリンタ等の三次元細胞積層システム機器の開発・販売等を多面的に展開しております。
このような状況の下、当中間会計期間における各事業における経営成績及び進捗の概況は、以下のとおりです。
当社では、主要な再生医療パイプライン(末梢神経再生、骨軟骨再生、血管再生等の革新的な再生医療等製品)について、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(以下、「AMED」という。)等の公的機関の支援のもと、再生医療等製品の承認取得・実用化を目指し、各大学・研究機関及び連携企業等の共同開発パートナーとともに臨床開発及び研究開発を進めております。
これまでに、当社のバイオ3Dプリンタを用いた再生医療等製品に係る開発は、世界で初めて実際の患者さまへ移植を行う臨床試験に成功する等、成長市場である再生医療分野において、産学官一体となって順調に進展しております。また、当社のパートナー企業との協業により、本分野の事業基盤(サプライチェーン)の整備・確立へ向けた取り組みについても進めております。
当中間期においては、本臨床試験の成果を含む当社の再生医療等製品の開発に関して、英国の国際学術誌「Communications Medicine」への掲載や第23回日本再生医療学会総会における発表等を通じて、国内外に広く公表し、製品周知及び価値向上に向けて様々な活動を行いました。その結果、当社の製品開発活動やバイオ3Dプリンティング技術をはじめとした基盤技術に対するメディアでの取り上げが増加する等、今後の製品上市へ向けた事業化活動も進展いたしました。
末梢神経再生については、京都大学医学部附属病院とともに実施した「末梢神経損傷を対象とした三次元神経導管移植による安全性と有効性を検討する医師主導治験」が完了したことを受け、国立大学法人京都大学から公表された論文内容をもとに本治験結果の報告を行い、当社のパートナー企業である太陽ホールディングス株式会社及び太陽ファルマテック株式会社とともに、今後の産学官連携による社会実装に向けた取り組み等について報道発表を行いました。
今後も、京都大学をはじめとする医療機関及びパートナー企業と協働し、本細胞製神経導管について再生医療等製品としての製造販売承認取得並びに社会実装を目指し、引き続き開発を進めてまいります。
骨軟骨再生については、今年度新たにAMED橋渡し研究プログラム「バイオ3Dプリンター技術を用いた膝関節特発性骨壊死に対する骨軟骨再生治療」に採択され、慶應義塾大学病院とともに次相臨床試験開始に向けた開発を進めております。また、前事業年度に採択された経済産業省「令和4年度 第二次補正予算『再生・細胞医療・遺伝子治療の社会実装に向けた環境整備事業』」において、藤田医科大学及び慶應義塾大学病院とともに骨軟骨再生の社会実装に向けて基盤整備に取り組んでおります。
血管再生については、国立大学法人佐賀大学とともに臨床試験を継続し開発を進めてまいりました。
主要パイプラインに加え、次世代のパイプラインの育成及び探索開発についても進捗しており、前事業年度に共同研究先である国立大学法人広島大学が採択されたAMED事業「バイオ3Dプリンターで作製した三次元移植組織を用いる革新的歯周再生療法の開発」に引き続き参画し、歯周組織再生療法に関する研究開発を進め、第23回日本再生医療学会総会において、共同研究先とともに開発成果の公表等を行いました。今後も引き続き、共同研究パートナーとの研究開発を進めるとともに、新たなシーズ探索・基礎研究を進めてまいります。
パートナー企業との連携に関しては、細胞製品の製造に関する包括的パートナーシップ契約を締結している太陽ホールディングス株式会社及びその子会社である太陽ファルマテック株式会社とともに、将来の再生医療等製品の実用化を見据えた、製造販売体制構築に向けて準備を進めました。さらに、PHCホールディングス株式会社及びその子会社であるPHC株式会社とともに、再生医療等製品の商業生産体制構築へ向けた共同開発を進めました。そのほか、藤森工業株式会社との間では、細胞の大量培養に関する共同技術開発を、また、岩谷産業株式会社との間では、凍結保管技術の開発を進めております。各共同研究及び共同開発については、第23回日本再生医療学会総会において、共同研究先とともに開発成果の公表等を行いました。
その他、米国で開催された国際学会、ISSCR・Organoidシンポジウム2024(2024年4月開催)及び 7th TERMIS 2024 World congress(2024年6月開催)に参加し、バイオ3Dプリンタのマーケティングをはじめ、様々な関係機関や企業等とのコラボレーションの機会探索を拡大しました。また、前事業年度に、日立グローバルライフソリューションズ株式会社、MetaTech (AP) Inc.及びTaiwan Hitachi Asia pacific Co., Ltd.との間で締結した、基本合意書に基づき台湾地域での協業展開へ向けた交渉を進める等、今後のグローバル展開へ向けた協業も進捗しております。
以上のように、今後も当社ではパートナー企業との間で戦略的パートナーシップの強化を進め、当社の革新的な再生医療等製品の早期の実用化に向け、開発を進めてまいります。
当社では、独自の基盤技術により、スキャフォールドを使用せず、ヒト細胞のみから成る「ヒト3Dミニ肝臓」をはじめとした、臓器が有する機能を体外で再現する3D細胞製品の開発を進めております。
当中間期においては、前事業年度より販売を開始した「ヒト3Dミニ肝臓」について、富士フイルム和光純薬株式会社他、数社との提携を行い、マーケティング及び販路拡大を進めました。
本製品は2018年度に採択された国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)事業により開発を進めてきた成果のひとつであり、その後、積水化学工業株式会社、大阪サニタリー株式会社及び株式会社SCREENホールディングス等のパートナー企業との協業により製品実用化を達成したものとなります。また、本製品とともに開発された新しいアプリケーションについて、学会及び展示会での技術紹介を行い、次世代製品の販促活動を進めております。
本創薬支援製品は、製薬企業や非臨床試験受託会社等の創薬研究のニーズに応える高いユーザービリティを発揮する特徴を有するとともに、将来的には動物実験代替法として利用できる可能性を有する点で、サステナビリティに関しても大きな社会的意義を有するものであります。
当社では、再生医療領域・創薬支援領域と併せてデバイス領域においても、独自の基盤技術を搭載したバイオ3Dプリンタに代表される自動化装置や関連周辺機器及び専用消耗品類の開発・製造・販売等の事業活動を進めております。また、本事業活動を通じてバイオ3Dプリンタを介した基盤技術の普及促進を図ることで、再生・細胞医療領域における新たなシーズ探索や様々な製品開発に寄与する有力な技術としてのポジション確立を目指しております。その他、再生医療等製品の製造工程の機械化・自動化等の生産技術開発、3D細胞製品の実用化に必要となる技術応用及び新技術開発にも取り組んでおります。
当中間期においては、製品の生産性・品質向上を目的とした新技術開発に関して、新たに「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」(全国中小企業団体中央会/中小企業庁/経済産業省)に事業採択され、当社の再生医療等製品の実用化に向けた生産技術開発が加速いたしました。
また、業務提携パートナーである日本精工株式会社との間では、当社の3D細胞製品の製造に関する新技術開発を継続して進めております。その他、各種学会や展示会へのバイオ3Dプリンタの出展等、さらなる基盤技術の普及・周知に繋げる取り組みも継続して進めてまいりました。
当社では、今後も引き続き、3D細胞製品の実用化に向けた様々なパートナー企業との連携を通じて、各種製造工程における機械化・自動化を目的とした装置開発、開発パイプラインの実用化に向けた生産技術開発、並びに将来の再生医療の商業化を見据えた新たな技術開発にも積極的に取り組んでまいります。
以上の結果、当中間会計期間の財政状態及び経営成績は以下のとおりとなりました。
(資産)
当中間会計期間末における総資産は、前事業年度末に比べ370,058千円減少し、3,844,751千円となりました。主な減少要因は、現金及び預金の減少488,370千円であります。
(負債)
負債については、前事業年度末に比べ97,621千円減少し、913,717千円となりました。主な要因は、短期借入金の減少100,000千円及び前受収益の増加20,000千円であります。
(純資産)
純資産については、前事業年度末に比べ272,436千円減少し、2,931,033千円となりました。主な減少要因は、中間純損失の計上447,213千円であります。
当中間会計期間における売上高は、研究用細胞製品の販売及びデバイス関連部品の販売等により18,042千円、販売費及び一般管理費として456,294千円を計上した結果、営業損失は448,964千円(前年同期は363,656千円の営業損失)となりました。
また、研究開発に係る助成金受領等により、営業外収益12,936千円(前年同期比17.0%増)、借入金の利息等の支払により営業外費用9,965千円(前年同期比3.8%減)を計上したことから、経常損失は445,993千円(前年同期は362,953千円の経常損失)、中間純損失は447,213千円(前年同期は364,606千円の中間純損失)となりました。
なお、当社の事業は細胞製品等の研究開発及び製造販売並びにこれらの付随業務の単一セグメントであるため、セグメント別の記載を省略しています。
当中間会計期間における現金及び現金同等物(以下、「資金」という)の残高は2,385,402千円となり、前事業年度末と比較して488,370千円減少となりました。当中間会計期間における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は以下のとおりであります。
営業活動により支出した資金は371,740千円(前年同期は315,940千円の支出)となりました。
これは主に、補助金の受取額31,021千円があった一方で、税引前中間純損失445,993千円を計上したこと等によるものです。
投資活動により支出した資金は7,821千円(前年同期は11,347千円の支出)となりました。
これは有形固定資産の取得による支出6,796千円があったことによるものです。
財務活動により支出した資金は108,809千円(前年同期は53,418千円の支出)となりました。
これは主に、短期借入金及び長期借入金の返済による支出113,789千円があったことによるものです。
(3) 経営方針・経営戦略等
当中間会計期間において、当社が定めている経営方針・経営戦略等について重要な変更はありません。
当中間会計期間において、当社が優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題について重要な変更はありません。
当中間会計期間における当社の研究開発活動の金額は、231,804千円であります。なお、当中間会計期間において、当社の研究開発活動の状況に重要な変更はありません。
当中間会計期間において、経営上の重要な契約等の決定又は締結等はありません。