第2 【事業の状況】

 

1 【事業等のリスク】

当中間会計期間において、新たな事業等のリスクの発生、又は、前事業年度の有価証券報告書に記載した事業等のリスクについての重要な変更はありません。

 

2 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

文中の将来に関する事項は、当中間会計期間の末日現在において当社が判断したものであります。

 

(1) 財政状態及び経営成績の状況

当中間会計期間における我が国経済は、インバウンド需要の増加等、景気の持ち直しの動きがみられ、緩やかな回復傾向となりました。一方で、原材料価格の高止まりや国際情勢の不安定化が引き続き国際的なサプライチェーンに影響を与え、また、主要国における金融政策の動向や為替市場の変動といった外部環境が企業活動に与える影響により、先行きには依然として不透明感が残る状況が続いております。

国内動向においては「スタートアップ育成5か年計画」が発表されて以降、スタートアップ企業への支援がより一層推進傾向にあり、特に再生医療・遺伝子治療等のバイオ分野は国益に直結する科学技術・イノベーション分野として、重点投資分野に指定されており、新たな再生医療等製品の上市と本分野の市場拡大及び今後の経済成長が期待されております。

このような環境下において、当社では、独自の基盤技術を用いた革新的な再生医療等製品や3D細胞製品の創出を通じて、新たな再生医療・細胞医療の実用化・産業化に貢献するべく、研究・技術開発を中核とする事業活動を推進してまいりました。また、細胞製品開発と並行して、デバイス販売や共同研究活動等により、次世代製品候補の探索や当社の基盤技術を国内外に普及させる事業活動にも取り組んでまいりました。

具体的には、①再生医療領域において、再生医療等製品の実用化へ向けたパイプライン開発及び3D細胞製品の各種受託、②創薬支援領域において、製薬企業・非臨床試験受託企業等の創薬活動を支援する3D細胞製品の開発・販売、③デバイス領域において、基盤技術を搭載したバイオ3Dプリンタ等の三次元細胞積層システム機器の開発・販売等を多面的に展開しております。

このような状況のもと、当中間会計期間における経営成績及び進捗の概況は、以下のとおりです。

 

①再生医療領域

当社では、成長市場である再生医療分野において、主要な再生医療パイプライン(末梢神経再生、骨軟骨再生、血管再生等の革新的な再生医療等製品)について、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(以下、「AMED」という。)等の公的機関の支援のもと、再生医療等製品の承認取得・実用化を目指し、各大学・研究機関及び連携企業等の共同開発パートナーとともに臨床開発及び研究開発を進めております。

これまでに、当社のバイオ3Dプリンタを用いた再生医療等製品に係る臨床開発において、世界で初めて実際の患者さまへ、患者さまご自身より採取した細胞から製造した三次元神経導管を移植することに成功し、治療効果を上げる等、産学官一体で取り組む新たな再生医療等製品の製品開発が順調に進展しております。

また、当社のパートナー企業との協業を通じたパートナーシップの拡大により、本分野における事業基盤(サプライチェーン)の整備・確立に係る取り組みが進んでおります。

さらに、本臨床試験の成果を含む当社の再生医療等製品の開発に関しては、国際学術誌への掲載や学会での発表等を通じて、学術的・科学的なエビデンスを国内外に広く公表し、また、展示会等においても製品周知及び価値向上に向けて様々な活動を行いました。

その結果、当社の製品開発活動やバイオ3Dプリンティング技術をはじめとした基盤技術に対するメディアでの取り上げが増加する等、今後の製品上市へ向けた事業化活動も進展いたしました。

末梢神経再生については、京都大学医学部附属病院において実施した「末梢神経損傷を対象とした三次元神経導管移植による安全性と有効性を検討する医師主導治験」が完了したことを受け、国立大学法人京都大学及び当社のパートナー企業である太陽ホールディングス株式会社並びに太陽ファルマテック株式会社とともに、企業治験開始に向けた準備を進めております。また、同種細胞を用いた再生医療等製品の研究開発についても順調に進展しており、AMED事業「末梢神経損傷に対する同種臍帯由来間葉系細胞を用いた三次元神経導管移植治療法の開発」において、開発パートナーである国立大学法人京都大学及び国立大学法人東京大学とともに非臨床試験等を実施し、神経再生が確認されたという研究成果が米国の国際学術誌「PLOS One」に掲載されました。現在、治験製品の製造体制を整備し、製造施設でのプロセス検証を実施しており、治験開始に向け着実に準備を進めております。

このように当社では、再生医療業界では初となる、同一基盤技術に基づいた自家細胞製品及び同種(他家)細胞製品の同時開発並びに製品化の実現を通じ、再生医療等製品の価値最大化を図り、再生・細胞医療への貢献を目指して、引き続き、開発に取り組んでまいります。

骨軟骨再生については、AMED橋渡し研究プログラム「バイオ3Dプリンター技術を用いた膝関節特発性骨壊死に対する骨軟骨再生治療」において、開発パートナーである慶應義塾大学病院及び藤田医科大学病院とともに治験製品の製造体制を整備し製造施設でのプロセス検証を行い、早期の治験開始に向け開発を進めました。また、経済産業省「令和4年度 第二次補正予算『再生・細胞医療・遺伝子治療の社会実装に向けた環境整備事業』」により基盤整備を進めた神奈川県川崎市殿町及び東京都大田区羽田エリアにおいて、藤田医科大学及び慶應義塾大学病院、慶應義塾大学再生医療リサーチセンターとともに骨軟骨再生の社会実装に向けて継続して基盤整備に取り組んでおります。

血管再生については、国立大学法人佐賀大学とともに臨床試験を継続し開発を進めました。

今後も、開発パートナー及び医療機関並びにパートナー企業と協働し、細胞製神経導管をはじめとする革新的な再生医療等製品としての製造販売承認取得並びに社会実装を目指し、新たな治療法の選択肢を増やすべく、引き続き開発を進めてまいります。

また、主要パイプラインに加え、次世代パイプラインの育成及び探索開発についても進捗しており、共同研究先である国立大学法人広島大学が採択されたAMED事業「バイオ3Dプリンターで作製した三次元移植組織を用いる革新的歯周再生療法の開発」に引き続き参画し、歯周組織再生療法に関する研究開発を進めており、第24回日本再生医療学会総会(2025年3月開催)において、共同研究パートナーとともに開発成果の公表等を行いました。今後も引き続き、次世代パイプラインの研究開発を進めるとともに、新たなシーズ探索・基礎研究を進めてまいります。

パートナー企業との連携に関しては、細胞製品の製造に関する包括的パートナーシップ契約を締結している太陽ホールディングス株式会社及びその子会社である太陽ファルマテック株式会社とともに、将来の再生医療等製品の実用化を見据えた、製造販売体制構築に向けて準備を進めました。その他にも、ZACROS株式会社とともに、細胞の大量培養に関する共同技術開発を、岩谷産業株式会社とともに、3D細胞製品の凍結保存に関する共同開発を進める等、当社が開発を進める再生医療等製品及び3D細胞製品の実用化に向けたパートナー企業との共同開発の進展により、将来的な産業応用も視野に入れた産学官エコシステムでの取り組みも加速しております。PHCホールディングス株式会社及びその子会社であるPHC株式会社とは、第24回日本再生医療学会総会(2025年3月開催)において学術セミナーを共催するとともに、再生医療等製品の商業生産へ向けた共同開発の開発成果として、3D細胞製品の商業化へ向けた新生産技術についての成果発表及びプレスリリースを行いました。また、バイオ3Dプリンタのマーケティングをはじめ、様々な関係機関や企業等とのコラボレーションの機会探索の拡大等、今後の商業化及びグローバル展開へ向けた協業も進捗しております。具体的には、日立グローバルライフソリューションズ株式会社、MetaTech (AP) Inc.及びTaiwan Hitachi Asia Pacific Co., Ltd.との台湾地域での協業展開や、Centre for Immunology & Infection Limited(C2i)の子会社であるC2iTech Limited(香港)、及び日立グローバルライフソリューションズ株式会社との間で、当社の独自技術「バイオ3Dプリンティング」を活用した今後のアジア地域における戦略的協業に向けた交渉を進める等、バイオ3Dプリンティング技術をはじめとする当社の基盤技術のアジア展開が進展いたしました。当社では、これらの事業活動と並行して、日本の再生医療に関する情報を世界へ向けて発信する取り組みも行っております。

また、当中間期においては、厚生労働省が推進する情報発信事業への協力を通じて、2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)にて、バイオ3Dプリンタや基盤技術を用いて作り出される新たな3D細胞製品等の展示を行いました。

以上のように、今後もパートナー企業との間で戦略的パートナーシップの強化を進め、革新的な再生医療等製品の早期の実用化に向けた開発を進めるとともに、商業化へ向けた企業間連携をより一層強化してまいります。

 

 

②創薬支援領域

当社では、独自の基盤技術により、スキャフォールドを使用せずヒト細胞のみから成る「ヒト3Dミニ肝臓®」をはじめとした、臓器が有する機能を体外で再現する3D細胞製品「機能性細胞デバイス」(Functional Cellular Device:FCD®)の製品開発を進めております。

当中間期においては、FCDシリーズの第一弾製品として販売を開始している「ヒト3Dミニ肝臓®」について、MPS実用化推進協議会 第2回学術シンポジウム(2025年1月開催)の企業展示ブースへの出展やウェビナーの開催による製品周知、マーケティング及び販路拡大に向けた活動を行うとともに、新たな販売提携先である極東製薬工業株式会社からの製品販売開始による販路拡大が進みました。また、本製品に関する特許権を日米両国において取得完了したことで、日本に加え米国市場での更なる展開へ向けたマーケティング活動にも本格的に着手できる見通しを得ました。

本製品は、製薬企業や非臨床試験受託企業等から、創薬研究のニーズに応える高いユーザービリティに対する評価をいただくとともに、将来的には、サステナビリティの観点からも動物実験代替法としての活用可能性等の大きな社会的意義を有しております。また、「ヒト3Dミニ肝臓®」に続くFCD製品のラインナップ拡充に関しても、APPW2025(第130回日本解剖学会/第102回日本生理学会/第98回日本薬理学会合同大会)(2025年3月開催)において、今後の新製品に繋がる研究成果の発表及び企業展示ブースでの紹介等を行い、製薬企業向けのマーケティング活動を進めました。さらに、FCD製品の医療分野以外の領域への拡大展開を目的として、食品製造で最大級の展示会FOOMA JAPAN2025(一般社団法人日本食品機械工業会 主催)に出展する等、マーケティング活動を拡充いたしました。

 

③デバイス領域

当社では、再生医療領域・創薬支援領域と併せてデバイス領域においても、独自の基盤技術を搭載したバイオ3Dプリンタに代表される自動化装置や関連周辺機器及び専用消耗品類の開発・製造・販売等の事業活動を進めております。また、本事業活動を通じてバイオ3Dプリンタを介した基盤技術の普及促進を図ることで、再生・細胞医療領域における新たなシーズ探索や様々な製品開発に寄与する有力な技術としてのポジション確立を目指しております。その他、再生医療等製品の製造工程の機械化・自動化等の生産技術開発、3D細胞製品の実用化に必要となる技術応用及び新技術開発にも取り組んでおります。

当中間期においては、再生医療領域の生産技術支援として、末梢神経再生や骨軟骨再生等の主要パイプラインにおける治験開始に向けた製造環境整備を進めました。併せて、再生医療領域における次世代パイプラインの研究開発や創薬支援領域のFCD開発を加速させるための生産技術開発も進めました。

また、「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」(全国中小企業団体中央会/中小企業庁/経済産業省)の支援のもと開発を進めてきた『バイオ3Dプリンタ用資材製造・保守レポート管理システムの構築』に関して、周辺機器類を含めたデバイス製品の生産性・品質向上に取り組みました。今後は本事業を通じて得られた開発の成果をもとに、商業生産を見据えた実用化を目指してまいります。

加えて、業務提携パートナーである日本精工株式会社との間では、前年度に共同リリースを行った、3D細胞製品の製造工程の機械化・自動化へ向けた新技術開発を実施しております。今後も引き続き、業務提携パートナー企業とともに新技術開発を進展させ、当社が開発を進める各種3D細胞製品の生産技術・設備としての応用展開を視野に入れ、製品製造工程に係る様々な技術開発を継続し、将来の商業生産体制の構築に向けた準備を進めてまいります。

その他、各種学会や展示会へのバイオ3Dプリンタの出展、メディア等の媒体を通じたPRの拡大等、更なる基盤技術の普及・周知に繋げる活動に関しても継続して取り組んでおります。

当社では、今後も引き続き、様々なパートナー企業との連携を通じて各種3D細胞製品の実用化に向けた生産技術開発、並びに将来の商業化を見据えた新たな技術開発にも積極的に取り組んでまいります。

 

以上の結果、当中間会計期間の財政状態及び経営成績は以下のとおりとなりました。

 

a. 財政状態

(資産)

 当中間会計期間末における総資産は、前事業年度末に比べ285,664千円減少し、3,232,337千円となりました。主な減少要因は、現金及び預金の減少353,899千円であります。

(負債)

 負債については、前事業年度末に比べ73,706千円減少し、901,888千円となりました。主な要因は、短期借入金の減少77,800千円であります。

(純資産)

 純資産については、前事業年度末に比べ211,957千円減少し、2,330,448千円となりました。主な減少要因は、中間純損失の計上402,521千円であります。

 

b. 経営成績

当中間会計期間における売上高は29,420千円、販売費及び一般管理費として485,912千円を計上した結果、営業損失は471,248千円(前年同期は448,964千円の営業損失)となりました。

また、営業外収益84,083千円(前年同期比550.0%増)、営業外費用14,085千円(前年同期比41.3%増)を計上したことから、経常損失は401,250千円(前年同期は445,993千円の経常損失)、中間純損失は402,521千円(前年同期は447,213千円の中間純損失)となりました。

なお、当社の事業は細胞製品等の研究開発及び製造販売並びにこれらの付随業務の単一セグメントであるため、セグメント別の記載を省略しています。

 

(2) キャッシュ・フローの状況

 当中間会計期間における現金及び現金同等物(以下、「資金」という)の残高は1,698,671千円となり、前事業年度末と比較して353,899千円減少となりました。当中間会計期間における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は以下のとおりであります。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動により支出した資金は284,320千円(前年同期は371,740千円の支出)となりました。

これは主に、補助金の受取額81,596千円があった一方で、税引前中間純損失401,250千円を計上したこと等によるものです。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動により支出した資金は44,269千円(前年同期は7,821千円の支出)となりました。

これは有形固定資産の取得による支出43,844千円があったことによるものです。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動により支出した資金は25,308千円(前年同期は108,809千円の支出)となりました。

これは主に、短期借入金及び長期借入金の返済による支出91,536千円があった一方で、株式の発行による収入57,828千円を計上したこと等によるものです。

 

(3) 経営方針・経営戦略等

当中間会計期間において、当社が定めている経営方針・経営戦略等について重要な変更はありません。

 

(4) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

当中間会計期間において、当社が優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題について重要な変更はありません。

 

(5) 研究開発活動

当中間会計期間における当社の研究開発活動の金額は、232,506千円であります。なお、当中間会計期間において、当社の研究開発活動の状況に重要な変更はありません。

 

3 【経営上の重要な契約等】

当中間会計期間において、経営上の重要な契約等の決定又は締結等はありません。