第2 【事業の状況】

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

下記の文中における将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであり、その達成を保証するものではありません。

 

(1) 経営方針

当社は2024年4月8日をもって設立10周年を迎え、次の新たなステージに向けて企業ビジョン・ミッション・バリューおよび組織体制も含めて抜本的に刷新いたしました。「Where it Starts / ことのはじまり」というビジョンのもと、「Get Together / 和をひろげる」をミッションとし、人と人のつながりや一人ひとりの無限の可能性をひろげる機会やきっかけを提供することで、多様な「はじまり」に満ち溢れた世界の実現を目指しております。

 


 

インターネットの普及により、世界中の人々があらゆる情報にアクセス可能となり、加えてSNSの発達によって個人による情報発信が世界中に波及する時代となっております。それだけ一人の個人が多くの人に与える影響力が増大してきていると言えます。実際にインフルエンサーや YouTuber のように影響力を持つ個人が現れ、新たな職業となり、新たなワークスタイル・ライフスタイルが確立されてきております。

当社は設立から10年間、ビジョンである「一人ひとりの『らしさ』であふれる世界」を実現するために、「『できる』をあたりまえに」することをミッションとし、「場所の制限をなくし、誰もがやりたいことにチャレンジできる」環境を構築してまいりました。これまでの10年間をふりかえり、より飛躍的な成長を遂げるため、方針と体制の再構築をいたしました。

ビジョンの実現に向けて、レンタルスペースのマッチングプラットフォームである「インスタベース」により、ありとあらゆる場所で、フレキシブルに使えるスペースを提供していくとともに、「インスタベース」の周辺領域における新たなサービスである「TOIRO」や、他の新サービスを展開していくことで、一人ひとりが思う存分、場所の制限なく、活動できる・自身を表現できる世界を創造してまいります。

 

(2) 経営環境及び経営戦略等

当社は、成長期待が高い環境を捉え、事業運営を行っていくなかで、中長期的に安定して売上を拡大させることが重要であると考えております。そのため、「インスタベース」のさらなる成長と「インスタベース」により蓄積された有用なデータやノウハウをもとに、中長期的に新たな収益の柱となるサービスを確立・拡充し、さらなる事業拡大と最適な事業ポートフォリオを構築してまいります。

当社は創業以来、レンタルスペースのマッチングプラットフォーム「インスタベース」を運営し、スペース利用者とスペース掲載者をマッチングするサービスを提供しており、スペース利用者とスペース掲載者双方の課題を解決するプラットフォームとなっております。検索エンジンからの流入及びWebマーケティングの強化による利用者獲得にて幅広い用途で予約を獲得できる集客網を構築し、スペース利用者にニーズに合わせた魅力的なスペースの獲得、より快適なサービス利用を実現するUI/UXの改善を継続的かつ着実に行ってまいりました。さらに当社では、検索意図と異なる結果が表示されることによる離脱防止のため、AI画像判定を活用した検索結果の最適化(特許出願中)により、利用者が求めているスペース(例えば貸し会議室)を画像認識を通してスコアリング評価し、より精度高く最適なスペース候補を提供する等、新たなアイデアや技術を活用した取り組みも積極的に行い、他にはない価値提供に努めております。

2020年3月に発生した新型コロナウイルス感染症が終息してなお、働き方においては、テレワークやリモートワークが恒常的になり、ワークスペースの柔軟かつ多様な選択肢が増え始め、空きスペースを利活用する機会が増加しております。また、生活様式においては、趣味や各種イベント、パーティー、フィットネスなど、ライフスタイルの充実を求める機運も高まっております。

現在、「インスタベース」では、フリーランスの教室の先生やレッスン講師が自身の講座を実施するための場所として、また、アーティストによる作品や写真などの展示会や販売会、新商品のプロモーションなどの場所として、多岐にわたる用途でスペースが利用されております。

また、掲載スペースにおいては多種多様なスペースが掲載されており、遊休不動産に手を加えずそのままの状態でレンタルスペースとして貸し出すこともできる一方で、特定の用途に特化したスペース(例: ダンススタジオ、サロンスペースなど)や多用途で利用できるスペース(例: パーティースペース、多目的スペースなど)のように特徴のあるスペースに高い利用ニーズがあります。「インスタベース」では日々数千件の予約が発生しており、これらのスペース利用に関するデータを解析することにより、スペース利用を最大化するために最適な内装や備品、運営などが提案可能となります。このことから現在遊休不動産となっている空き家や空き物件とリフォームやリノベーションをマッチングすることで最適な空間作りの支援が行えると考えております。

このように、「インスタベース」は人と場所を繋ぐレンタルスペースのマッチングサービスではありますが、「インスタベース」を通じたスペース利用においては、スペースシェア市場だけではなくフリーランス市場やスキルシェア市場のみならず、クリエイターエコノミー市場、さらにはプロモーション関連市場もターゲット市場となっております。「インスタベース」を通じたスペース利用におけるターゲット市場へのアプローチを強化すべく、今後新たな機能やサービスの展開を検討しております。

レンタルスペース市場を含めた周辺領域の市場規模は以下となります。

シェアリングエコノミー市場

「インスタベース」に関連する市場としてシェアリングエコノミー(※1)市場におけるスペースシェア領域と、スペース利用者が属するスキルシェア領域があります。これらの市場規模は、2022年度に6,546億円(サービス提供者と利用者の間の取引金額ベース)と推計され、現状のペースで成長した場合、2032年度に3兆9,965億円(2022年度比6.1倍、内訳 スペースシェア市場2兆5,384億円・スキルシェア市場1兆4,581億円)に、さらに新型コロナウイルス感染症による不安、シェアリングエコノミーサービスの認知度が低い点等の課題が解決した場合、同7兆6,953億円(同11.8倍、内訳 スペースシェア市場4兆8,458億円・スキルシェア市場2兆8,495億円)に達すると予測されています。(※2)

 

② 住宅リフォーム市場

「インスタベース」の周辺領域の市場として住宅リフォーム市場があります。現在日本では、少子高齢化や都心一極集中、地方の過疎化が進むなか、全国的に空き家が増加しており、「令和5年住宅・土地統計調査(3)」によると、空き家率は過去最高の13.8%となり、歯止めがかからない状態となっています。また、空き家特措法施行後の既存住宅の除却や住宅用途以外への有効活用の傾向が今後続いたとしても空き家率の上昇は避けられず、世帯数減少が加速する2033年には空き家率17.9%へ上昇する見込みとなっております。(4)


※総務省 令和5年住宅・土地統計調査 住宅数概数集計(速報集計)結果より当社作成

https://www.stat.go.jp/data/jyutaku/2023/pdf/g_kekka.pdf

 

このように我が国の社会的課題となっている空き家問題に対して、的確な解決策の一つとして考えられているのがリフォームやリノベーションであり、住宅リフォーム市場規模は2020年6.5兆円から2030年には7.1兆円に拡大する予測(5)となっております。また、「2050年カーボンニュートラル」の宣言とともに、住宅・建築物等においても、さらなる省エネルギー化や脱炭素化に向けた取組の一層の充実・強化が不可欠となっております。古い住宅・建築物等を壊して建て替えるより、活かせるものは極力残してリフォームする方がCO2排出量が少ないという研究結果(6)もあり、さらに現有資産を有効利用するストック活用は、SDGsの目標の一つである「つくる責任、つかう責任」に合致することから、リフォーム・リノベーションの脱炭素化への貢献度は高いものと考えられております。

当社では住宅リフォーム市場をターゲット市場としたサービスの展開を検討しており、リサーチを含めたテストマーケティングを実施しております。

 

③ フリーランス市場

「インスタベース」の周辺領域の市場としてフリーランス市場があります。日本のフリーランス人口は2020年から500万人以上増加し、2021年に1,577万人になっており、フリーランス人口が増加傾向にあり、その経済規模も拡大していく見通しとなっております(7)。

 


 

また、スキルシェアの市場規模は、2022年度に2,749億円(非対面・対面)と推計され、現状のペースで成長した場合、2032年度に1兆4,581億円(2022年度比5.3倍)に、さらに新型コロナウイルス感染症による不安、シェアリングエコノミーサービスの認知度が低い点等の課題が解決した場合、同2兆8,495億円(同10.4倍)との試算(2)も出ており、副業フリーランスやパラレルワーカー(8)が増加するなかで、個人の活動を支援するサービスが必要とされていると捉えております。

フリーランス人口の増加には、日本に限らず世界におけるインターネットを活用したSNSサービスの台頭、さらに「YouTuber」など新たな職業やお金の稼ぎ方が現れてきたことも一つの要因となっており、一個人が社会や世界中の人々に対して大きな影響を与えられる環境が整備されてきていると言えます。

当社ではフリーランス市場をターゲットとしたサービスの展開を検討しており、リサーチを含めたテストマーケティングを実施しております。新サービス「TOIRO」は、その取組の一環であります。

 

※1.シェアリングエコノミーとは、個人や企業が持つモノや場所、スキルなどを、インターネット上のプラットフォームを介して必要な人に提供したり、共有したりする新しい経済の動きのことや、そうした形態のサービスのこと

2.一般社団法人シェアリングエコノミー協会 株式会社情報通信総合研究所共同調査
「シェアリングエコノミー関連調査結果(2022年)」
https://sharing-economy.jp/ja/20230124

3.総務省 令和5年住宅・土地統計調査 住宅数概数集計(速報集計)結果

4.株式会社野村総合研究所 第276回NRIメディアフォーラム「2019年度版 2030年の住宅市場と課題」

5.株式会社矢野経済研究所 2021年版 住宅リフォーム市場の展望と戦略からの抜粋
https://www.yano.co.jp/press-release/show/press_id/2757

6.東京大学・武蔵野大学・住友不動産株式会社による建物改修による脱炭素効果の研究成果
https://www.k.u-tokyo.ac.jp/information/upload/b469e367eaae75cd0fa744f66eafe8a7c26429cf.pdf

7.ランサーズ株式会社 新・フリーランス実態調査 2021-2022年版
https://www.lancers.co.jp/news/pr/21013/

8.ひとつの企業に所属・依存するのではなく、複数の仕事やキャリアを持って働く人

 

当社は今後も拡大が見込まれるレンタルスペース市場を中心として、さらにはその周辺領域における市場において、より多くのスペース利用者とスペース掲載者の課題を解決し、新たな社会インフラとしてビジネスや日常における更なる価値を提供することで優位性を確保し、事業の拡大・成長を推進してまいります。

 

(3) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

① 当社の収益構造

当社の売上高は、レンタルスペースのマッチングプラットフォームである「インスタベース」の売上高が97.4%(2024年3月期実績)を占めております。このサービスの売上高は、スペース掲載者からいただくスペース利用料に対する手数料収益であるため、利用総額を増加させることが売上高拡大に直結すると考えております。

 

② 重要なKPI

上記の当社収益構造を踏まえ、当社は「利用総額」を重要指標と考えております。「利用総額」は利用数に予約単価を乗じた数値となり、利用数を増加させるためには予約可能な掲載スペース数の増加が重要と考えております。予約単価は短期的な変動が小さいことから、「利用総額」を最大化するために、「利用数」と「掲載スペース数」の最大化を中心とした取り組みを行っております。各指標の具体的な内容については以下のとおりです。

・利用総額

「インスタベース」においてスペース利用者がスペースを利用したスペース利用料の総額(税抜)

・利用数

「インスタベース」においてスペース利用者がスペースを利用した件数

・掲載スペース数

スペース掲載者が「インスタベース」にスペース情報を登録し、「インスタベース」でスペースページを公開した数


 

 


 

 


 

 


 

 

(4) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題等

当社が優先的に対処すべき主な課題は以下のとおりです。

① 優秀な人材の発掘及び育成

今後の持続的な事業成長を目指す上で、開発部門・営業部門・管理部門それぞれの職種における優秀な人材を十分に確保し、その人材を育成するとともに、効果的かつ効率的な人員配置と体制整備を行っていくことが重要であると捉えております。

特に、スペース掲載者及びスペース利用者の顕在化したニーズに合わせながらも、潜在的なニーズに対して先行してサービスを提供していけるよう企画・開発していくことが重要と考えており、顧客ニーズを適切に把握できる人材を強化・育成することが必要であります。当社のビジョン・ミッション・バリューや事業内容に共感し、意欲が高く優秀な人材を採用していくために採用活動を積極的に進めるとともに、一人ひとりの強みを活かしてモチベーション高く働ける環境や仕組みの構築に取り組んでまいります。

 

② 技術力及び開発力の強化

当社の提供するサービスはインターネット関連事業を主たる事業としているため、顧客ニーズに即して迅速なサービス・機能提供や改善、大量のトラフィックにも耐えられるシステム設計、環境変化に対応した新規サービス開発などを必要としており、そのためにも技術力及び開発力の強化が重要であると考えております。

また、急速な技術革新が進む中、常に新しい技術・ノウハウを収集し活用していけるよう、技術力及び開発力の強化を目的とした教育・研修の充実を図るとともに、優秀なエンジニアの採用も積極的に行うことで、開発に必要な環境への投資も含め、迅速かつ適切なサービス開発が行える体制や仕組みの構築に取り組んでまいります。

 

③ 情報セキュリティの強化

当社の提供するサービスにおいて多くの個人情報を取得しており、これらの情報を保護・管理するために、情報管理体制の継続的な強化と情報セキュリティシステムの構築等を行っていくことが重要であると考えております。

当社では個人情報保護方針を策定し、社内規程に基づきサービスを運営しており、2021年12月にプライバシーマークを取得するなど、適切な個人情報の取扱いを行える情報管理体制を整備しております。さらに外部のセキュリティ診断なども実施することで、システムとしての安全性と堅牢性の向上を図っております。

これらの取り組みにより、情報管理体制を強化するとともに、従業員への継続的な情報セキュリティ教育を実施することで、情報セキュリティ体制を強化してまいります。

 

④ システムの安定性の確保

当社では、サービス・機能リリースにあたり動作チェック等の事前テストや、過負荷や不正アクセスのログ監視、システム障害等に関する社内アラート通知などにて安定したシステム稼働が行える体制を整えております。

しかしながら当社の予測不可能なコンピュータウイルスの感染や不正アクセス、急激なアクセス増加など様々な要因においてサービスの停止や不具合が生じる可能性があります。

不測の事態を想定して未然に防ぐ対策として、安定的に稼働できるようにシステムに冗長性を持たせ、稼働環境の見直しを継続的に行っております。また、セキュリティ対策の強化とともに、定期的なサービスの脆弱性診断等、外部の専門家による検証も実施しております。

 

⑤ 認知度の向上

当社では、これまでテレビや新聞、交通広告等の大規模なマスメディア向け広告の出稿を実施しておらず、主にSEOを中心とした検索エンジンからの流入及びWebマーケティングの有効活用により、各サービスのユーザー獲得を図ってまいりました。そのため、サービスの認知度は、同業他社と比較して高くありません。

各サービスの更なる事業拡大を目指すためにも、当社ブランドのより一層の認知度向上とブランド力強化が重要であると認識しております。

今後は積極的にPR活動にも投資し、当社ブランドの認知度の向上を図ることで、中長期的・継続的にユーザー基盤の拡大に努めてまいります。

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社のサステナビリティに関する考え方と取り組みは、次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。

 

(1) ガバナンス

当社は「Where it Starts/ことのはじまり」というビジョンのもと、「Get Together / 和をひろげる」をミッションとし、人と人のつながりや一人ひとりの無限の可能性をひろげる機会やきっかけを提供することで、多様な「はじまり」に満ち溢れた世界の実現を目指しております。

物理的な場所を通して生まれる「和(わ)」をひろげていくことを軸に、そこからうまれる「こと」を継続的に促進するサービスを提供していくことで、中長期的な企業価値の向上に努めてまいります。サステナビリティ経営の推進および具体的な取り組み施策については、常勤取締役、常勤監査役およびディレクターが出席し週次で開催している経営会議や半期に一度開催しているリスク・コンプライアンス委員会にて協議・決議しております。取締役会は、経営会議およびリスク・コンプライアンス委員会で協議・決議された内容の報告を受け、当社におけるサステナビリティに関する課題への対応方針等についての議論・監督を行っております。

 

(2) 戦略

人材の育成及び社内環境整備に関する方針、戦略

当社ではビジョン・ミッションに紐づく形で、以下のとおり、バリューを定めております。

<Rebaseバリュー>

1.We Are Mission Driven. 私たちはミッションドリブンです。

2.We Are Passionate. 私たちは情熱的です。

3.We Exceed Expectations. 私たちは期待を超えます。

4.We Scale.  私たちはスケールします。

相互に切磋琢磨して、協力し合い、チームで成果を出すため、主語は「わたしたち/We」で統一しています。新たなビジョン・ミッションのもと、常にミッションを軸にした意思決定を行うことで事業をスピード感をもって推進し、飛躍的に成長してまいります。

また、eラーニングシステムの導入や技術書籍の購入補助制度、資格取得支援制度など、会社として従業員のスキルセット向上をサポートする環境も提供しています。

人材採用においては、当社の採用は中途採用が中心となっており、今後も多様なバックグラウンドの人材の活躍を促進していきながら、新卒採用も新たに取り組んでいくことで、人材の多様性確保に努めて参ります。

就労環境としてはオフィス出社を基本とし、少人数組織かつ成長フェーズであることから対面でのコミュニケーションを活発におこなうことで結束力を高め、スピード感をもって業務推進や課題解決に取り組んでおります。また、フレックスタイム制の導入により出勤・退勤時間の柔軟性をもたせながら、コアタイム(12:00-16:00)以外においてはリモート勤務も可能とし、各自の生活環境に合わせた働き方ができるように制度設計しております。

オフィス環境においては、従業員ごとの固定席に加え、フリースペースや個室ブースを設けており、1人で集中したり、社員同士のコミュニケーションを活性化するような環境を整備しております。

当社での様々な業務やチームでの取り組みを通じて、一人ひとりの経験の幅を広げ、能力だけではなく、人としての成長を促進しながら、安心して働ける環境整備に努めてまいります。

 

(3) リスク管理

当社では、当社の経営または事業に関するリスクやサステナビリティに関連するリスクを適切に認識、管理、対処できるように、リスク・コンプライアンス委員会を設置し、全社的なリスクの評価、管理、対応策の検討および実施状況のモニタリングを行っております。また、事業環境の変化等による新たなリスクの可能性が生じた場合やリスク発生の兆候を把握した場合はリスク・コンプライアンス委員会を随時開催するとともに、週次で開催している経営会議にて個別のリスクについて議論、検討し、リスクを積極的に予見することにより、会社に及ぼす影響を最小限に抑えるための体制作りを推進しております。

なお、当社におけるリスクマネジメントの取組みについては「3 事業等のリスク」に記載しております。

 

(4) 指標及び目標

当社は、少人数規模にも関わらず、多様な個を活かし、適材適所を実現してビジネスを成長させてまいりました。

一方で、人材採用(増員)によって多様性を確保していくことの重要性を認識しており、事業計画に基づく人員計画を推進していく上で実践に繋げております。ただし、人員数に頼ったビジネスモデルや業務設計は行わず、効率性を重視しておりますので、人員を急増させることはせず、最適な人数規模にて採用をして参ります。

 

人材の育成及び社内環境整備に関する方針に関する指標の内容並びに当該指標を用いた目標及び実績、指標及び目標

指標:「採用人数」

推移および目標:

6期

9名

7期

9名

8期

7名

9期

7名

10期

6名

11期

12名(計画)

 

 

10期の採用人数に関しては、期中11期からの新組織体制に合わせて採用の見直しがあったこともあり、期初に掲げた10名という指標に対し、採用人数9名、退職人数3名(退職率8.3%)という実績になっております。

また、従業員の年齢と共にライフステージも変化し、結婚、出産、介護など、個々の多様な人生の選択がなされるように変化してきており、その上で当社は個人の選択を最優先に尊重しております。今後は、様々なライフステージにも適切な選択を取りながら、当社で働くことをメリットに感じられる制度の導入を検討して参ります。

 

3 【事業等のリスク】

当社の事業展開上のリスク要因となる可能性があると考えられる主な事項を以下に記載しております。また、必ずしもそのようなリスク要因に該当しない事項についても投資判断の上で、あるいは当社の事業活動を理解する上で重要と考えられる事項について、投資家に対する積極的な情報開示の観点から以下に開示しております。当社は、これらのリスク発生の可能性を認識した上で、発生の回避及び発生した場合の対応に努めております。なお、文中における将来に関する記載事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであり、将来において発生する可能性のあるすべてのリスクを網羅するものではありません。

当社は、リスクを適切に把握するため、「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等 (1) コーポレート・ガバナンスの概要 ② 企業統治の体制の概要及び当該体制を採用する理由 イ.企業統治の体制の概要 e.リスク・コンプライアンス委員会」に記載しておりますリスク・コンプライアンス委員会を設置し、日常的にリスクの把握に努めております。

 

<事業環境等に関するリスク>

(1) サービスの健全性・適切性について(顕在化の可能性:中、顕在化の時期:短期、影響度:小)

当社の提供するサービスでは、スペース掲載者に対しては、本人確認書類の提出を前提とした反社チェックを網羅的に実施し、メールアドレスの実在確認や電話番号認証などをおこなうことでスペース掲載者と連絡が取れる状態を整備しております。また、スペース利用者に対しては、スペース予約時にスペースごとに設定された用途を制限し、用途の詳細の記載を促すなど、利用規約違反の予防や問題が発生した際に予約内容が確認できるよう努めております。さらに、監視カメラなどIoT機器とのシステム連携などを進め、スペース掲載者がリアルタイムでスペースの利用状況を確認し、録画画像を事後確認できるような仕組みの提供も開始しております。当社においてはクレーム管理マニュアルを策定し、適宜適切にクレームのエスカレーションが行われる体制や口コミのモニタリング体制など、サービス利用の健全性維持の体制や仕組みを構築しており、サービス利用規約やスペース掲載規約において、第三者の権利を侵害する行為や虚偽の情報の登録などの禁止事項を明記するとともに、違反者に対してはサービスの利用停止や登録の抹消等の厳正な対応を講じる方針であることを明確にしております。このように健全性・適切性が保たれるよう取り組んでおりますが、悪質な行為等により当社サービスに対する信頼性が低下した場合には、当社の事業及び業績に影響が及ぶ可能性があります。

 

(2) 競争環境について(顕在化の可能性:中、顕在化の時期:中期、影響度:中)

当社が提供するサービスについては、類似会社や競合が存在するものの、サービスコンセプトやターゲット ユーザー(スペース利用者)、Webサービスとしての機能、顧客対応など多面的に差別化を図っております。しかしながら、同業他社において同様の方針転換や対応をおこなってくる可能性も考えられ、さらには新規参入の増加等による競争の激化や技術革新、業界規制の変更等により、当社事業の優位性が保てなくなった場合には、当社の事業及び業績に影響が及ぶ可能性があります。

 

<事業運営に関するリスク>

(3) 事業展開の遅延発生について(顕在化の可能性:小、顕在化の時期:長期、影響度:中)

当社では、「インスタベース」及び新規事業の構築・成長拡大・機能改善などサービス展開に関する計画に基づき、プロジェクトリーダーが各種KPIやプロジェクトの進捗を管理徹底し、計画に対する遅延発生を未然に防止するよう努めておりますが、予測できない要因により、計画に対する遅延が発生した場合には、当社の事業及び業績に影響が及ぶ可能性があります。

 

(4) システム障害及び情報セキュリティについて(顕在化の可能性:小、顕在化の時期:短期、影響度:大)

当社のサービスは、通信事業者が提供する公衆回線、専用回線及びインターネット回線等の利用を前提としたものであるため、自然災害または事故・外部からの不正な手段によるコンピュータへの侵入・コンピュータウイルス・サイバー攻撃等により、通信ネットワークの切断やアプリケーションの動作不良が発生する可能性があります。また、予期せぬシステム障害や当社のシステムの欠陥により当社サービスが停止する可能性もあります。このようなリスクを回避するため、外部・内部からの不正侵入に対するセキュリティ対策、24時間のシステム監視、システム構成の冗長化、保険への加入等により然るべき対応を図っております。しかしながら、このような事象が発生した場合は、当社への損害賠償請求や障害事後対応等により、営業活動に支障をきたし、機会損失が発生し、さらに当社サービスへの信用が失墜することにより、当社の事業及び業績に影響が及ぶ可能性があります。

 

(5) データセンターにおける障害について(顕在化の可能性:小、顕在化の時期:短期、影響度:大)

当社が提供するサービスは、「Amazon Web Services」や「Google Cloud Platform」などのクラウドサービスに各種データが格納されております。当社は外部のクラウドサービスを活用し、それぞれのクラウドサービスが提供する最新のセキュリティ対策サービスを積極的に活用し、常時セキュリティチェックを稼働させ、セキュリティ改善を続けることで、安全性を確保しております。また、自然災害に対する対策として、本番環境を物理的に冗長化させて運用する Multi-AZ (Available Zone) を採用し対策をおこなっております。さらに、極力ベンダーに依存しないインフラ設計をしており、特定のクラウドサービスが恒久的にサービス停止に陥った場合でも他のクラウドサービスで運用を引き継ぐことが可能な対応を行っております。しかしながら、大地震、火災、その他の自然災害及び設備の不具合、運用ミス等が発生した場合、外部のクラウドサービスの障害等によりサービスの提供や格納された情報に重大な支障が生じ、当社サービスへの信用が失墜することにより、当社の事業及び業績に影響が及ぶ可能性があります。

 

(6) サービスの不具合について(顕在化の可能性:小、顕在化の時期:短期、影響度:中)

当社が提供するWebサービスやアプリケーションにおいて、リリース前にテスト等をおこなうことで万全を期しているものの、完全に不具合を解消することは不可能であります。そのため、サービスの大規模な不具合が発生した場合、顧客の信頼を喪失し、当社の事業及び業績に影響が及ぶ可能性があります。

 

(7) 特定のプラットフォーム事業者の動向について(顕在化の可能性:小、顕在化の時期:長期、影響度:小)

当社の事業は、スマートフォン向けアプリケーションを提供しており、Apple Inc.及びGoogle LLCが提供するプラットフォームを通じてアプリケーションを提供することが現段階における当社の事業の重要な前提条件であります。当社は、常にApple, IncやGoogle LLCのルール変更の動向について情報収集、調査を行い、両社の変更に対して迅速に対応できる体制を整備しておりますが、これらプラットフォーム事業者の事業戦略の転換並びに動向によっては、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(8) 人材の確保について(顕在化の可能性:中、顕在化の時期:長期、影響度:中)

プロジェクト管理能力を有するリーダークラスや組織マネジメント能力を有するマネージャークラスの従業員を中心に人材の採用を積極的に行っており、また、従業員の教育にも力を入れておりますが、採用マーケットの状況によっては、計画どおりに希望するレベルの従業員が採用できず、当社の事業及び業績に影響が及ぶ可能性があります。

 

(9) 小規模組織について(顕在化の可能性:小、顕在化の時期:長期、影響度:小)

当社の役員及び従業員数は、本書提出日現在、役員8名、従業員38名と小規模組織であり、内部管理体制も組織規模に応じたものとなっております。当社は、内部管理体制の充実、業務遂行能力の向上に努め、業務が属人化しないようマニュアル等の作成による業務の平準化、特定人物に権限が集中しないように規程に基づく権限移譲を図っております。

また、今後の事業の拡大及び多様化に対応して、人員の増強と内部管理体制の一層の充実を図っていく方針でありますが、限りある人的資源に依存しているため、急激な事業拡大を図り人員増加が進んだ場合には人件費等の負担増加や内部管理体制の不足など、または、規模縮小等に伴い当該人的資源の流出が生じた場合には事業の運営人員の不足など、当社の事業及び業績に影響が及ぶ可能性があります。

 

 

(10) 当社サービスへの集客における外部検索エンジンへの依存について(顕在化の可能性:小、顕在化の時期:中期、影響度:中)

当社サービスにおける顧客獲得チャネルのうち多くの割合が外部検索エンジンとなっており、当社では外部検索エンジンにおける最新の検索ロジックへの技術的対応、既存顧客との関係性強化や認知拡大による他社プラットフォームに依存しない利用拡大等の対応に努めております。しかしながら、今後、検索エンジンの運営会社による検索結果の表示ロジックの変更などにより、検索エンジン経由の集客力が低下した場合、当社の事業及び業績に影響が及ぶ可能性があります。

 

<経営体制に関するリスク>

(11) 特定人物への依存について(顕在化の可能性:小、顕在化の時期:長期、影響度:中)

当社の代表取締役であります佐藤 海は、当社の共同創業者であるとともに、大株主であり、創業以来当社の経営方針や事業戦略の立案及び遂行において重要な役割を果たしております。

また、当社の取締役であります髙畠 裕二は、当社の共同創業者であるとともに、大株主であり、創業以来当社のシステム開発全般において重要な役割を果たしております。

そのため、各事業部門長である役職員に権限委譲を行い、両氏への過度な依存を回避すべく、経営管理体制の強化、人材の育成を進めておりますが、何らかの理由により両氏が当社業務を継続することが困難になった場合には、当社の事業及び業績に影響が及ぶ可能性があります。

 

(12) 特定サービスへの依存について(顕在化の可能性:小、顕在化の時期:長期、影響度:中)

当社の売上について、創業以来サービス提供している「インスタベース」に大きく依存しており、全体の売上高に対して97.4%(2024年3月期実績)を占めております。既存サービスと新規サービスのシナジーを創出し、継続的に顧客ニーズと新たな価値提供を目指した事業を積極的に展開し、競合企業との差別化を図ってまいりますが、競合企業との競争激化や新たな企業による参入、その他市場環境の変化により、当社の事業及び業績に影響が及ぶ可能性があります。

 

<内部統制に関するリスク>

(13) ソフトウエア資産の減損について(顕在化の可能性:小、顕在化の時期:長期、影響度:小)

当社で開発したソフトウエアについては、将来の収益獲得が確実であると認められたものを資産計上しております。しかしながら、事業計画の変更などにより当初予定の収益が得られない場合、資産の償却または減損が必要となり、当社の事業及び業績に影響が及ぶ可能性があります。

 

(14) 知的財産権の侵害等について(顕在化の可能性:小、顕在化の時期:短期、影響度:中)

当社は、運営するサービスに関する知的財産権の取得に努め、使用する商標や技術等の保護を図っておりますが、知的財産権が第三者に侵害された場合には経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

また、弁護士や弁理士等の外部の専門家と連携して、第三者の知的財産権を侵害することがないように細心の注意を払っておりますが、当社が使用する技術やコンテンツについて、第三者から知的財産権の侵害を主張され、当該主張を退けるための費用または損失が発生した場合、事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

さらに、当社サービスのユーザーが掲載したコンテンツについて第三者の知的財産権が侵害されていた場合に、当該サービスに対する信頼の低下が発生した場合、当社の事業及び業績に影響が及ぶ可能性があります。

 

(15) 法令等について(顕在化の可能性:中、顕在化の時期:長期、影響度:中)

当社の事業は、企業活動に関わる各種法令のほか、不動産関連法令や旅行業・旅館業関連法令など、直接的・間接的を問わず様々な法令の規制を受けております。したがって、コンプライアンス体制の充実が重要であると考えており、社内規程を整備し、適宜研修を実施して周知徹底を図っております。しかしながら、今後国内において新たに当社の事業に関連した法規の制定やインターネット関連事業者を規制する新たな法律等による法的規制の整備が行われる場合、当社の事業及び業績に影響が及ぶ可能性があります。

 

 

(16) 内部管理体制の確立について(顕在化の可能性:小、顕在化の時期:長期、影響度:小)

当社は、業容の拡大及び従業員の増加に合わせて内部管理体制の整備を進めており、今後も一層の充実を図る予定ですが、適切な人的・組織的な対応ができずに、事業規模に応じた事業体制、内部管理体制の構築が追いつかない場合には、当社の事業及び業績に影響が及ぶ可能性があります。

 

(17) 配当政策について(顕在化の可能性:中、顕在化の時期:中期、影響度:小)

当社は、創業以来配当を実施しておりませんが、株主に対する利益還元は経営の重要課題であると認識しております。しかしながら、当社は未だ成長過程にあると考えており、さらなる内部留保の充実を図り、経営体質の強化、事業拡大のための投資等に充当していくことが企業価値の向上、ひいては株主に対する最大の利益還元につながると考えております。将来的には、収益力の強化や事業基盤の整備を実施しつつ、内部留保の充実状況及び当社を取り巻く事業環境を勘案したうえで、株主に対して安定的かつ継続的な利益還元を実施する方針でありますが、現時点において配当実施の可能性及びその実施時期については未定であります。

 

(18) 個人情報の取り扱いについて(顕在化の可能性:小、顕在化の時期:短期、影響度:大)

当社は、各サービスにおいて取得した個人情報及び機密情報を保有しており、「個人情報の保護に関する法律」の適用を受けております。これらの個人情報については、個人情報保護方針に基づき適切に管理するとともに、社内規程として「個人情報保護規程」を定め、さらに2021年12月に「プライバシーマーク」を取得しており、社内教育の徹底と適切な個人情報の取扱いをおこなえる管理体制の構築に努めております。

しかしながら、コンピュータウイルスの感染、不正アクセスや盗難、その他不測の事態により個人情報または機密情報が消失、または社外に漏洩した場合には、企業としての社会的信用力が低下することにより、当社の事業及び業績に影響が及ぶ可能性があります。

 

(19) 新株予約権の行使による株式価値の希薄化について(顕在化の可能性:大、顕在化の時期:短期、影響度:小)

当社の役員及び従業員等に対するインセンティブを目的として新株予約権を付与しております。提出日現在、新株予約権の目的である普通株式の数は370,700株であり、当社発行済株式総数4,608,800株の8.04%に相当しております。これらの新株予約権、また、今後付与される新株予約権の行使が行われた場合、当社の株式価値を希薄化させる可能性があります。

 

<その他のリスクについて>

(20) 訴訟等について(顕在化の可能性:小、顕在化の時期:長期、影響度:中)

本書提出日現在において当社を当事者とする訴訟等の法的手続はありません。しかしながら、将来訴訟等による請求を受け、またはその他の形で当社を当事者とする訴訟等の法的手続が行われる可能性はあります。

また、当社サービスの利用者による違法行為やトラブル、第三者の権利侵害があった場合には、当社の利用規約において当社は損害賠償責任を負わない旨を定めておりますが、当社サービスの利用者による違法行為等により、当社に対する訴訟を提起される可能性があります。このような事態が生じた場合、当社の事業及び業績に影響が及ぶ可能性があります。

 

 

(21) 当社株式の流動性について(顕在化の可能性:小、顕在化の時期:長期、影響度:小)

当社の株主構成は当社代表取締役 佐藤海と同氏の資産管理会社、取締役 髙畠裕二と同氏の資産管理会社等であり、株式会社東京証券取引所の定める上場維持基準は25%であるところ、2024年3月31日現在、当社の流通株式比率は32.28%となっております。今後は、ストックオプションの行使による流通株式数の増加等により流動性の向上を図っていく方針ではありますが、何らかの事情により上場時よりも流動性が低下する場合には、当社株式の市場における売買が停滞する可能性があり、それにより当社株式の需給関係にも悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(22) M&A等によるリスクについて(顕在化の可能性:中、顕在化の時期:中期、影響度:中)

当社が出資した関連会社において、当社が当初想定したシナジーや事業拡大等の効果が得られないことや当該事業領域の市場変化などの事業固有のリスクによる事業計画の未達などにより減損損失を計上した場合、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。こうした減損リスクへの対応策として、弁護士・税理士・公認会計士等の外部専門家の助言を含めたデューデリジェンスを実施し、その結果を踏まえて取締役会や経営会議にて検討・議論を実施しております。また、買収後の事業計画実現に向けたPMI(ポスト・マージャー・インテグレーション)への注力や、取締役会へのオブザーバーとしての参加等により、業績のモニタリングに関する体制の強化を図ってまいります。

 

(23) 自然災害等によるリスクについて(顕在化の可能性:中、顕在化の時期:中期、影響度:中)

想定外の大規模地震・津波等の自然災害や火災等の事故災害、また、感染症の世界的流行(パンデミック)、その他の要因による社会的混乱等が発生したことにより、当社の業務やサービス運営に支障が生じた場合、当社の事業及び業績に影響が及ぶ可能性があります。

こうしたリスクへの対応策として、システムやデータ等における定期的なバックアップやモニタリングの実施、従業員の安否確認等の災害対策等により災害等発生時の影響を最小限に止めるられるよう事前対応に努めております。

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

当社の経営成績、財政状態及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

①  経営成績の状況

当事業年度(2023年4月1日〜2024年3月31日)におけるわが国の経済は、新型コロナウイルス感染症の五類感染症移行により、行動制限が緩和されたことで経済社会活動の正常化が進み、景気は緩やかな回復傾向が続きました。

一方で、長期化するロシアによるウクライナ侵攻や中東情勢の緊迫化といった地政学的緊張、原材料価格の高騰、円安の進行など、依然として、今後の動向や影響についての予測が困難な状況が続いており、海外景気の下振れがわが国の景気を下押しするリスクとなっております。

このような環境の中、当社のマッチングプラットフォーム事業である「インスタベース」に関連するシェアリングエコノミー市場におけるスペースシェア領域の市場規模は、2021年度3,564億円から2022年度3,797億円へ成長し、今後も中長期的に、継続的な成長が見込める予測となっております。(※)

当事業年度においては、テレワークやリモートワークのみならず、行動制限の緩和に伴い、大人数利用の各種イベント、個人によるパーティーの需要増に加えて、法人によるセミナー開催等、多様且つ多岐にわたり、空きスペースを利活用する需要が見られました。

このような状況下において、「インスタベース」では、Webマーケティングの有効活用をはじめ、IoTサービスとの連携や、大手企業及び地方自治体とのアライアンスに継続的に取り組むとともに、カラオケ、メタバース、サウナといった、スペースカテゴリの拡充により、スペース利用による体験価値向上を図ることで、2023年11月に掲載数が30,000件を突破し、その後も継続的に拡大しております。

また、2023年11月には新サービスとなるコミュニティイベントサービス「TOIRO」をリリースいたしました。「TOIRO」を通じて、「インスタベース」において獲得してきた「場とコト」の需要に加えて「人とコト」の需要を喚起することで、場所を使う目的の上流から需要を創出していくことを目指しております。

以上の結果、当事業年度における売上高は1,490,080千円(前期比28.4%増)、営業利益は335,109千円(前期比31.2%増)、経常利益は336,468千円(前期比35.4%増)、当期純利益は228,784千円(前期比44.4%増)となりました。

 

※一般社団法人シェアリングエコノミー協会および株式会社情報通信総合研究所の共同調査:
2022年1月「シェアリングエコノミー関連調査2021年度調査結果」、2023年1月「シェアリングエコノミー関連調査2022年度調査結果」

 

 

②  財政状態の状況

(資産の部)

当事業年度末における総資産は、前事業年度末と比較して386,416千円増加し、1,466,299千円となりました。これは主に、「インスタベース」の事業収益により現金及び預金332,297千円増加したことによるものであります。

 

 

(負債の部)

当事業年度末における負債合計は、前事業年度末と比較して156,539千円増加し、495,570千円となりました。これは主に、「インスタベース」の事業拡大に伴うスペース掲載者への支払予定額増加により預り金が87,194千円増加したこと、未払金が40,224千円増加したこと、税引前当期純利益が増加したことに伴い未払法人税等が21,269千円増加したことによるものであります。

 

(純資産の部)

当事業年度末における純資産合計は、前事業年度末と比較して229,876千円増加し、970,728千円となりました。これは主に、当期純利益の計上により利益剰余金が228,784千円増加したことによるものであります。

 

③  キャッシュ・フローの状況

当事業年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前事業年度末に比べ332,297千円増加し、1,124,927千円となりました。当事業年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりです。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動により得られた資金は、374,765千円(前期比152,958千円の増加)となりました。これは主として、税引前当期純利益336,468千円、預り金の増加額87,194千円、未払金の増加額37,842千円及び法人税等の支払額94,341千円によるものです。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動の結果として使用した資金は、43,559千円(前期比4,193千円の減少)となりました。これは主として、無形固定資産の取得による支出23,606千円及び有形固定資産の取得による支出17,501千円によるものです。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動の結果得られた資金は、1,090千円(前期比64,009千円の減少)となりました。これは主として、新株予約権の行使による株式の発行による収入1,155千円によるものです。

 

 

④  生産、受注及び販売の状況

イ.生産実績

当社の事業は、提供するサービスの性質上、生産実績の記載になじまないため、当該記載を省略しております。

 

ロ.受注実績

当社の事業は、提供するサービスの性質上、受注実績の記載になじまないため、当該記載を省略しております。

 

ハ.販売実績

当社の事業別の販売実績を示すと、次のとおりであります。なお、当社は、マッチングプラットフォーム事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載を省略しております。

事業の名称

金額(千円)

前年同期比(%)

マッチングプラットフォーム事業

1,490,080

128.4

 

(注) 主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合については、総販売実績に対する割合が10%以上の相手先がいないため記載を省略しております。

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は、次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものであります。

 

①  重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。この財務諸表の作成にあたって、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りを必要としております。経営者は、これらの見積りについて、過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積りによる不確実性のため、これらの見積りと異なる場合があります。

当社の財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況1財務諸表等(1)財務諸表注記事項 重要な会計方針」に記載しております。

会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定につきましては、「第5 経理の状況1財務諸表等(1)財務諸表注記事項 重要な会計上の見積り」に記載しております。

なお、財務諸表に与える影響が大きいと考えられる項目は以下のとおりです。

 

(固定資産の減損処理)

当社は、固定資産の減損の兆候がある資産または資産グループにつき、将来の収益性が著しく低下した場合には、固定資産の帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上することとしております。固定資産における回収可能価額の評価の前提条件は、決算時点で入手可能な情報に基づき合理的に判断していますが、これらの前提条件は長期的な見積りに基づくため、将来の経営環境の変化による収益性の変動や市況の変動により、回収可能性を著しく低下させる変化が見込まれた場合、減損損失の計上が必要となる場合があります。

 

(繰延税金資産の回収可能性)

当社は、将来の課税所得を合理的に見積り、回収可能性があると判断した将来減算一時差異については、繰延税金資産を計上することとしております。繰延税金資産の回収可能性は将来の課税所得の見積りに依存するため、その見積りの前提とした条件や仮定に変更が生じた場合、繰延税金資産の計上額に影響する可能性があります。

 

 

②  経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

(売上高)

当事業年度における売上高は、インスタベースにおける利用総額・利用数・掲載スペース数がそれぞれ堅調に増加したことにより、1,490,080千円(前期比28.4%増)となりました。

 

(販売費及び一般管理費、営業利益)

当事業年度における販売費及び一般管理費は、前事業年度に比べ216,708千円増加し、1,097,161千円となりました。これは主に、「インスタベース」の新規顧客の獲得を目的とした広告出稿の増加に伴い広告宣伝費が83,022千円、「インスタベース」の利用総額の増加による決済代行会社に対する決済手数料の増加に伴い支払手数料が36,756千円、事業拡大に伴う人員増加により給料及び手当が42,991千円、内部管理体制の充実を図るための役員増員に伴い役員報酬が15,377千円増加したことによるものです。

この結果、営業利益は335,109千円(前期比31.2%増)となりました。

 

(営業外損益、経常利益、当期純利益)

当事業年度における営業外損益は、営業外収益が前事業年度に比べ1,650千円増加し、1,659千円となりました。また、営業外費用は、前事業年度に比べ6,471千円減少し、301千円となりました。

この結果、経常利益は336,468千円(前期比35.4%増)、当期純利益は228,784千円(前期比44.4%増)となりました。

 

③  キャッシュ・フローの状況の分析

当社のキャッシュ・フローの状況の分析については、「(1) 経営成績等の状況の概要 ③キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。当社の資金需要の主なものは、当社サービスを拡大していくための開発及びマーケティング・営業・顧客対応等の事業運営に必要な人員の人件費、認知度向上及び顧客基盤拡大に係る広告宣伝費、当社サービス運営に必要な決済手数料に係る支払手数料であります。これらの資金需要に対しては、自己資金を基本とし、必要に応じて銀行借入により調達することとしております。

 

④  資本の財源及び資金の流動性について

当社の運転資金需要のうち主なものは、従業員の給与手当のほか、販売費及び一般管理費の営業費用であります。当社は、事業運営上必要な資金を安定的に確保するために、必要な資金は自己資金、金融機関からの借入等でバランスよく調達していくことを基本方針としております。なお、これらの資金調達方法の優先順位については、調達時期における資金需要の額、用途、市場環境、調達コスト等を勘案し、最適な方法を選択する方針であります。

 

⑤  経営成績に重要な影響を与える要因について

経営成績に重要な影響を与える要因については、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」をご参照ください。

 

⑥  経営者の問題認識と今後の方針について

経営者の問題認識と今後の方針については、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載しております。

 

 

5 【経営上の重要な契約等】

該当事項はありません。

 

6 【研究開発活動】

該当事項はありません。