第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものです。

 

(1) 会社の経営の基本方針

当社グループは、「50代からの女性がよりよく生きることを応援します」を経営理念とし、シニア女性に「これからのために生きてきた」と感じて頂けるよう、以下のビジョンを掲げ、経営を行っております。

① シニア女性がよりよく生きるために必要な、さまざまなコンテンツを厳選して提供します。
② バリューチェーンのすべてを自社で行い、個々のお客様に最適なコンテンツを提供します。
③ 単にコンテンツを届けるだけでなく、シニア女性が安心・信頼できるコミュニティを作ります。
④ 当社グループのプラットフォームを活用して、自社コンテンツのみならず、他社の優れたコンテンツを厳選して提案し提供します。
⑤ グループ社員には、仕事の楽しさ・やりがいと生活の安定を提供します。

経営理念の実現のために、既存事業領域である「情報コンテンツ」「物販」「コミュニティ」の一層の強化に努めています。また、SDGsの社会課題の中でも、シニア女性を心身ともに健康にするための商品・サービスづくり、気候変動等の環境への配慮のためのリサイクルや環境にやさしい商品・サービスづくりに積極的に取り組んで参りたいと存じます。こうした取組みを実現するためにイノベーションを生み出す組織能力をより強化し、持続的な成長を可能にする事業ポートフォリオを構築していきます。

 

(2) 目標とする経営指標

当社グループは、シニア女性が人生のさまざまな場面で信頼し頼りにしてくださる、シニア女性向けビジネスNo.1企業を目指しております。そのため、現時点で当社グループが重視する経営指標は読者数(注1)と顧客数(注2)であります。

(注) 1.雑誌「ハルメク」の購読者数

2.当社グループのサービスを1年間で1回以上利用したことのある顧客数

 

 

(3) 経営環境、経営戦略等

① 経営環境

当社グループが対象としている50歳以上の女性人口は2020年の32百万人から2030年34百万人とゆるやかに増加していくことが見込まれています。(出所:国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(令和5年)」)

また、当社主要顧客である50歳以上の金融資産は約1,800兆円であると推計しており、50歳未満の金融資産約400兆円を大きく上回り、負債も少ないという特徴もあります(出所:日本銀行「資金循環統計」(2024年3月末)、内閣府「令和5年版高齢者白書」から当社推計)。

当社グループの情報コンテンツが属する紙の書籍・雑誌市場は2024年の市場規模では1.0兆円(前年比5.2%減)、紙の雑誌は前年比6.8%減と下げ止まっておらず、紙を前提にしたコンテンツ提供は厳しい状況が続いています。(出所:出版科学研究所「出版指標」)

また、当社グループの物販が属する通販の市場規模は2023年度は13兆5,600億円(前年比6.7%増)と増加傾向が続いています。(出所:日本通信販売協会「2023年度通販市場売上高調査」)

 

 


 

シニアビジネスとして、ケアシニアサービスは増えつつありますが、ハルメクの事業領域は市場ポテンシャルが大きい「プレシニア~アクティブシニア市場」です。

 


 

 

② 顧客基盤

ハルメク事業顧客の平均年齢は72歳ですが、その顧客年齢分布は以下のとおりです。

 


 

(注) ハルメクは2025年3月期に一度でもハルメク事業のサービスを利用したことがある顧客の年齢

HALMEK upは2025年3月末のMAU年齢別構成比を適用して推計したもの

 

ハルメク事業では、これらのシニア女性の生の声を聴きつつ、そのニーズを充足するサービスの提供に努めてまいりました。その結果として、顧客数(注)は2021年3月期の58万人から2025年3月期の95万人と4期にわたって年平均成長率+13%成長を実現しております。

 

 


 

 

(注) ハルメク事業のサービスを1年間で1回以上利用したことのある顧客数(ユニークユーザー数)

 

ハルメク事業の新規顧客獲得チャネルは、従来の新聞・折込といった紙媒体から、TVやWebなど多様な媒体へと広がりを見せております。新聞による新規顧客獲得数はいまだ最大のチャネルであるものの、新聞の発行部数自体が減少傾向にあることを背景に、2023年3月期以降は新聞媒体経由の獲得数が減少に転じております。こうした状況を受けて、新たなチャネルの開拓を進めております。さらに、コロナ禍が明けてからは百貨店への店舗展開を加速させており、店舗経由での新規顧客獲得数は年々増加しております。

 


 

(注) 各事業年度において新規に契約した顧客について、契約時に取得したチャネルの回答を集計しています。

 

 

また、ハルメク事業の顧客の金融資産は、非顧客と比較して多いという特徴があります。これは、ハルメク事業が提供する商品やサービスの質が支持され、中高価格帯のものでも販売力があることを表していると考えられます。このため、ハルメク事業の顧客数を増加させることは、収益性の向上につながることを意味しており、当社グループとしては如何にハルメク事業を強化するかが事業展開上の要点となります。

 

(ハルメク事業の顧客の金融資産)

 


 

(出所) 2024年7月に郵送・Webにて非顧客は50歳~79歳、ハルメク顧客は50歳~89歳の全国の女性の顧客777名・非顧客6,048名に対して実施した「ハルメクブランド調査2024」より抜粋

 

ハルメク事業の強みは、「情報コンテンツ」、「物販」及び「コミュニティ」の3つの事業の相乗効果によるものですが、顧客数の継続的な増加に向けてこの長所をさらに強化する必要があると考えております。

 

③ 経営戦略
(ア) 顧客エンゲージメントの更なる向上

当社グループの事業の基盤は、「思い込みを捨てる」「わかった気にならない」というポリシーに立脚してお客様の生の声を収集し、それらを活用することにあります。このポリシーに至った経緯として、シニア女性に対する以下のような「思い込み」を排除したことで当社グループの事業が成長軌道に乗ったという実体験が存在します。

・ 時間やゆとりがある

・ おしゃれや美容への関心が薄い

・ 和食が好き

・ 恋愛しない

・ 割引やお得になびきやすい

・ 孫が大好き

過去には事業を進めるにあたりこのような思い込みに基づき当社グループの一方的な方針で顧客へサービスを提供していた時代がありました。しかしながら、例えば雑誌「ハルメク」の購読部数の伸び悩み等が見られるようになり、お客様の生の声の重要性に気付くに至りました。それ以降は「思い込みを捨てる」「わかった気にならない」のポリシーのもと、顧客エンゲージメントを重視した事業を推進しております。お客様の生の声を収集するための具体的な施策には以下のようなものがあります。

・ お客様からのはがき(雑誌によるもの:月平均約2,000枚、商品によるもの:月平均約1,000枚)

・ お客様センターへ寄せられる声(月平均約25,000件)

・ アンケート調査(紙面調査14回、インターネット調査115回)

・ ワークショップ等のインタビュー(41回)

・ モニターによる試作品の使用

・ 顧客宅の訪問調査

・ 当社グループの社員によるイベントへの参加

(注) 2025年3月期実績

 

さらに、「ハルトモ」と呼ばれる雑誌「ハルメク」の企画や商品開発等をサポートするハルメクファンの関与も当社グループの事業の質を高めるものとなっております。

これに加え、顧客理解を徹底するために「生きかた上手研究所」を設置し、その品質を担保しております。「生きかた上手研究所」では、PDCAの段階毎にハルトモを活用した調査やテストを実施し、事業部門がお客様の信頼を裏切らない・期待を超える商品・サービスの提供ができるよう、調査支援をはじめとしたシンクタンク活動を行っております。具体的には、「ハルトモ」約5,100名(2025年3月末時点)を活用し、以下のPDCAサイクルを実行しています。

企画

・グループインタビュー(生活調査等)

・コンセプト受容性調査(注)

制作・開発

・独自の厳しい品質基準への適合性の確認

・サンプルテスト

販売

・テストマーケティング

評価

・お客様の声ハガキ

・満足度調査アンケート

・クレームゼロ会議

改善

・顧客インサイトを組織知として共有・蓄積

 

(注) コンセプト受容性調査とは、新商品やサービスのアイディアが複数存在する際に、どの案が顧客に一番受け入れられるかを検証する調査方法のことをいいます。

 

 

これらの施策により当社グループの顧客エンゲージメントは高水準で維持できていると認識しております。

現実として、当社グループのサービスを利用したお客様の満足度に関するアンケートでは、以下のような 結果を得られています(出所はいずれも当社アンケート)。

 

(満足度推移)

雑誌                            通信販売

 

 


 


 

 

(注) 1.当社が2024年7月に郵送・Webにて非顧客は50歳~79歳、ハルメク顧客は50歳~89歳の全国の女性の顧客777名・非顧客6,048名に対して実施した「ハルメクブランド調査2024」より抜粋

2.5段階評価で「大変よかった」及び「よかった」の比率の平均値の推移を記載しております。

 

 

講座や旅行

 

 


 

 

 

(注) 開催の都度調査を実施しており、5段階評価の平均値の推移を記載しております。

 

これらの施策の継続及び強化を図ることにより、顧客エンゲージメントをより強固なものとする必要があると考えており、ひいてはそれが当社グループの継続的な成長に寄与することとなります。

 

(イ) クロスセル及びLife Time Value(LTV)の強化

前述のとおり、当社グループの強みは、「情報コンテンツ」、「物販」及び「コミュニティ」の3つの事業が連動し相乗効果を生んでいることにあります。これを裏付けるものとして、クロスセル率及びLTVの状況にも着目しております。

クロスセル率(注1)及びLTV(注2)は以下のようになっており、各数値は良好であると評価しております。他方で、これらの数値は引き上げの余地があるとも考えており、顧客エンゲージメントの強化により、これらの数値の更なる上昇を目指します。

(注) 1.雑誌購読者が購読開始月から通販を一度でも利用した割合の月次累計(2024年3月期に獲得した12冊コース新規読者)

2.雑誌購読者の月次LTV(CFベース)=雑誌購読料(年)-雑誌費用(年)-初回獲得コスト+月次売上(雑誌除く)-原価(雑誌除く)-受注・物流・決済手数料-カタログコスト(印刷・配送)の累計(2024年3月期に獲得した12冊コース新規読者)

 

(クロスセル率、雑誌読者が購読開始月から通販を利用する率)

 


 

(LTV、雑誌購読者のキャッシュ・フローベースの月次LTV)

 


 

(ウ) 3つの事業の進化及びサービス領域の強化

「情報コンテンツ」、「物販」及び「コミュニティ」の3つの事業については、現状に満足することなく強化を図ってまいります。「情報コンテンツ」については、リッチコンテンツ(注1)化を企図しサブスクリプション型のサービス「HALMEK up(旧:ハルメク365)」を立ち上げました。「物販」については、現在のオリジナル商品やナショナル・ブランドの取り扱いに加え、当社ブランドの靴、インナーのような特定商品の事業展開も進めてまいります。「コミュニティ」については、例えば習い事のマルチレイヤー組織のような自律成長するコミュニティの仕組みを開発しております。

これらに加え、ヘルスケア・終活分野の強化を含むシニア女性のニーズにより広く応えるサービスの導入を進めてまいります。例えば、相続、金融、保険、住宅、不動産、お見合い、婚活等のサービスを想定しております。これらのサービスは、自社開発によるだけでなく、他社又は他ブランドとのコラボレーションも含みます。

(注) 1.リッチコンテンツとは、複数の事業が連動し相乗効果を生み出すコンテンツのことです。情報コンテンツをリアルやオンラインで体験する場を設ける事例などがあります。

 


 

(エ) 新規事業(HALMEK up)

2022年8月より、サブスクリプション型の動画及び音声サービスをローンチし、情報コンテンツを強化いたしました。本サービスの目的としては、お客様のデジタルシフトに対応、プレシニア層(注)の獲得強化、より魅力的なコンテンツの提供、ハルメクで扱っている全ての商品・サービスの入口であるポータルサイト化、情報コンテンツビジネス単体の収益性強化等が挙げられます。2024年12月には大規模なリニューアルを実施し、コンテンツ拡充、UI/UXの改善に取り組んでおります。サービス内容は以下のとおりです。

 


(注) 当社グループでは50~64歳をプレシニア層と定義づけております。

 

 

(オ) 既存ビジネスの更なる拡大とB2Bビジネスの強化

2022年8月に開始したHALMEK upでは、様々な顧客データを収集しています。ここで蓄積した顧客データを活用し、お客様の理解をより深化させ自社サービスの拡大と㈱ハルメク・エイジマーケティングで事業展開しているB2Bビジネスを他社とのアライアンスを含め、強化してまいります。ここでのデータとは基本属性、興味関心分野・テーマ、購読・購入履歴、接点履歴、価値観・趣味等を指します。これにより、情報コンテンツの強化、物販及びサービスの拡充、お客様の興味ないし関心別のアプローチ強化が当社の既存ビジネスで可能となり、コミュニティの多層化及び充実等によって得られる興味ないし関心がある記事のデータ、商品及びサービスの利用データ並びにロイヤリティの向上が期待できます。シニア向けの事業展開を希望する企業に対しては、エンゲージメントの強いシニア女性へのアクセス、顧客ニーズ及びインサイト並びにお客様の声に基づく継続的な改善についてのデータを提供し、当該企業に対するコンサルティングサービスの提供だけでなく、シニア向け新規事業の共同企画、商品及びサービスの共同開発並びに顧客接点又は販売チャネルの提供を受けることが可能となります。

 


 

(カ) 基盤事業の収益性の強化及び法人事業の成長継続、先行投資事業への投資継続

ハルメクホールディングスの業績はマネジメントアプローチに基づき、「ハルメク事業」と「ことせ事業」に分けて管理しているほか、事業特性に応じて「基盤事業」「法人事業」「先行投資事業」という区分で経営方針を策定しております。基盤事業は、「情報コンテンツ」、「ハルメク物販」及び「ことせ物販」で構成し、法人事業は㈱ハルメク・エイジマーケティングのB2Bビジネスです。また、「HALMEK up」「押花事業」等は先行投資事業として位置付けております。基盤事業及び法人事業、先行投資事業の収益性は以下の状況です。

 


 

(注) 1.上記の収益性の情報は事業区分別の内訳を表示したものであり、売上高合計額、EBITDA及びEBITDA率並びにこれらの内訳額については、PwC Japan有限責任監査法人による監査を受けておりません。

2.当社ではEBITDA=営業利益+償却費と定義しており、各事業から生み出されるキャッシュ・フローの規模をより適切に把握することができるため、各事業の収益性を測るための指標として記載しております。

 

現在は「基盤事業」の利益をもって先行投資事業の費用を賄っている状況です。このため、先行投資事業の投資を継続しつつ、早期に利益を生み出す事業化を目指します。また、既存事業の収益性を高めることにより、当社グループの利益成長を推進してまいります。

 

 

(キ) セグメント別の業績

当社グループのセグメント別の業績については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 6.事業セグメント」に記載のとおりです。2025年3月期において、ハルメク事業は増収増益、ことせ事業は減収減益となっております。ハルメク事業については増収を維持しつつ、広告効率の低下に伴う収益力の回復を図ってまいりました。改善途上にはあるものの2026年3月期以降は収益化フェーズと位置付け、引き続き広告効率の改善に取り組むことや原価率の改善等を通して筋肉質な経営基盤を築いていきます。また、ことせ事業においては、完売に伴う売り逃しが多数発生し、収益改善を目的として広告投資の抑制により業績が悪化いたしました。完売による機会損失を防ぐチェック体制の見直しを行い、収益性の改善を図ってまいります。

ハルメク事業においては、現時点における最大の収益源は物販です。雑誌「ハルメク」により獲得した読者の方々に雑誌の世界観を実体験して頂けるような商品を販売することで売上を伸ばしております。2024年3月期における収益性の低下に対しては、広告戦略の見直しと、効率的なカタログ配布手法の確立を通じ収益性の改善を図ります。変わらず重視していることは「シニア世代の信頼を裏切らない」ことです。品質管理を最重要視し、過剰表現は避け、一時的ではなく長く売れるものを中心にオリジナル商品を開発し販売することを基本戦略としております。雑誌と物販が事業推進における両輪でありますが、他社とも協業しながら雑誌と連動した講座(オンライン/リアル)やイベント、旅行等を企画・開催することにも取り組んでおり、シニア女性に対してあらゆるものを提供するプラットフォームビジネスとして、事業拡大に注力しております。

ことせ事業の主要顧客はハルメク事業同様にシニア女性となります。ただし対象は「60歳代以上の女性」としているなど、ややハルメクよりも年齢が高い方々にご支持頂いているほか、ハルメク事業に比べるとお求めやすい価格帯での商品提供を行っております。また、ファッション/アパレル商品をハルメク・ことせともに主力商材として販売しておりますが、ナチュラル志向の商品が多いハルメクに対し、ことせの商品はよりトレンドを重視したものとなっているなど、取扱商品のテイストが異なることも両事業の違いとなっております。

ことせ事業の場合、ハルメク事業のようなコンテンツによる集客はありませんが、1970年の創業以来ご支持頂いてきたお客様が多くいらっしゃることから、通信販売でありながらも外商営業的な要素も取り入れた独自のスタイルで「今いるお客様を最大限に大切にする」という「顧客満足経営」を基本戦略とし、その中で経営基盤を確立したうえで、顧客理解に基づき商品選定やお客様のライフスタイルを提案するカタログ誌面の魅力の向上及びサービスレベルの向上により、新規顧客獲得を進め、事業拡大を図ってまいります。

 

(4) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
① 競争力の高い商品の展開力強化

当社グループは従来、ファッション、コスメ、インナー、食品など複数の商品群を掲載した通販カタログによる通信販売を中心に物販事業を拡大してまいりました。なかでもインナーなどの一部の商品群においては、シニア女性の体型やニーズに寄り添った機能性の高い商品を開発することにより、売上を大きく伸ばすとともに収益性も高めてまいりました。一方で、複数の商品群が掲載されるカタログでは「優れた商品が他の商品に埋もれてしまい、気づいてもらえないことがある」といった課題も出てまいりました。こうした状況を踏まえ、インナーなどの競争力がある商品について、展開力の強化に向けた検討を開始しております。

 

② 収益性の改善

当社グループは2023年秋以降、主に物販事業において収益性の悪化が見られました。その主な原因は、カタログをお送りしたお客様の購買率が低下し、売上に対するカタログコストの割合(媒体費率)が悪化したことにあります。さらにその原因を確認したところ、過去の取引状況から購買確率が低いと予想されるお客様へのカタログ送付が増加していたことが要因であると判明いたしました。この状況を受けて、当連結会計年度の途中からは、購買確率が一定基準より低いお客様へのカタログ送付を中止いたしました。また、「おしゃれ」と「健康と暮らし」の2種類あるカタログのうち、一定期間内に一方のカタログからしか購入履歴がないお客様については、購入履歴がある方のカタログのみをお届けするよう配布基準を変更しております。これらの取り組みにより、媒体費率と収益性は改善傾向にありますが、これらの配布施策をブラッシュアップするとともに、カタログに掲載する商品力を一層高め、より魅力的なカタログ誌面やECサイトを用意することで、さらなる収益性の改善を図ってまいります。

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループは、企業活動を通じ、環境と社会の課題解決に取り組むとともに、ESG(環境・社会・ガバナンス)を重視した経営を行っております。特に重視しているのは、事業を通じて社会の持続的な発展に寄与することです。具体的には、当社グループは「50代からの女性がよりよく生きることを応援します」を企業理念に掲げて事業活動を行っており、高齢化が進む日本において、当社グループが提供する商品・サービスを通じて「よりよく生きる人々」が増えることによって、社会が豊かになることを目指しております。

また、当社グループが高品質な商品・サービスを提供するためには、人的資本が最重要であると認識しており、人的資本の拡充に積極的に取り組んでおります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

ガバナンス

当社グループは、企業理念を持続的に遂行するため、顧客満足度調査などを定期的に行うと共に、クレームゼロ委員会/クレーム削減会議を毎週開催し、商品・サービスの品質の維持・向上に努めております。これらの調査結果や取り組みは取締役会で報告が行われ、適宜、協議がなされております。

 

戦略

当社グループは、お客様であるシニア女性の声を大切にし、ニーズを正確に把握して、それに応えることが当社グループの企業理念において最も重要な戦略であると認識しております。その実現のために、「ハルトモ(※当社が提供する雑誌の誌面作りや商品・サービス開発に参加していただくモニター組織)」と共に各種調査やテストを行い、シニア女性の声やニーズの把握に努めている他、当社グループ内の人的資本の拡充、特に女性社員の活躍推進を進めております。女性活躍推進のため、待遇や業務内容等において男女の区別なく、機会の平等を確保するとともに、能力・職責等に基づき適切に評価しております。

労働安全衛生面においても社内美化を徹底することで働く環境を良好に保ち、労働環境の改善・向上を図るとともに、ストレスチェックを実施するなど、社員の心身の健康を維持できるよう努めております。また、在宅勤務や時短勤務、フレックスタイム制など、社員が状況に応じて柔軟に働ける仕組みも用意しております。

そのほか、社員の能力開発・研鑽のため、e-Learningを活用した社内研修の充実化や、外部研修への参加を支援する取り組みを行っております。

 

リスク管理

当社グループは、リスク・コンプライアンス委員会において、主要なリスクの状況を定期的にモニタリング、評価・分析し、必要な指示、監督を行うとともに、その内容を定期的に取締役会に報告する体制を整えております。

また、当社グループは、リスク・コンプライアンス委員会において識別されたリスクを評価・管理するとともに、関係する各部門が取締役会で報告・検討された内容に従って適切に対応しております。

 

指標及び目標

当社グループでは、上記「戦略」において記載した、人的資本の拡充及び社内環境整備に関する方針について、次の指標を用いております。当該指標に関する目標及び実績は、次のとおりであります。

指標

目標

実績 (当連結会計年度)

女性管理職比率

2026年3月まで30以上

30.5

有給休暇取得率

2026年3月まで75以上

69.6

男性育休取得率

2026年3月まで80以上

33.3

 

 

3 【事業等のリスク】

本書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

当社のリスク管理体制に関しましては、「4 コーポレート・ガバナンスの状況等、(1)コーポレート・ガバナンスの概要、② 企業統治の体制の概要及び当該体制を採用する理由、ⅵ リスク・コンプライアンス委員会」に記載のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、提出日現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) 経済状況・競合に関するリスク

当社グループの主要顧客であるシニア女性を含むシニア市場は、高齢化の進展に伴い拡大し続けている成長市場であり、その傾向は今後も継続する見通しであります。シニア市場の中でも介護、葬儀、お墓等に代表されるライフエンディングサービスは近時において企業の参入が増えつつあるとの認識ですが、当社グループの事業領域は50代から80代までを中心としたアクティブな女性をターゲットとしており、成長市場でありつつも競合他社が少ないところと考えております。その成長市場において、当社グループは雑誌「ハルメク」を中心に認知度を高め、シェアを拡大しておりますが、当社グループの提供する雑誌及び通信販売のシナジーを生かした事業展開の有用性を低下させるような法規制の変化や、IT技術の進化などが起こった場合、もしくは当社が提供する情報や商品、サービスを凌ぐ画期的な情報媒体、商品もしくはサービスを具備した競合の参入などがあった場合、当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。これらのリスクが顕在化する可能性は高くないと認識しておりますが、顕在化に備え収益性や健全性を確保するとともに、事業環境についてはマーケティング部門が、法規制については法務部門が最新の情報や将来の見通しの把握に努め、必要な対応を適時にとれる体制を構築してまいります。

 

(2) システムに関するリスク

① セキュリティに関するリスク

当社のサービスはコンピュータシステムを結ぶ通信ネットワークを利用して提供されており、商品の調達や販売等多岐にわたるオペレーションをコンピュータシステム上で実施しております。そのため、当社では、それらのシステム全体にセキュリティ対策を施し、かつシステム部門において最新のセキュリティリスク情報を毎週集約し、バッチプログラムの実行などの必要な措置を講じております。また、当社は外部機関のセキュリティアセスメントを受けており、その指摘に従い、セキュリティ強化方針を見直したうえで、更なるセキュリティ強化を進めております。セキュリティの保全状態及び強化の進捗状況は四半期に一度、リスク・コンプライアンス委員会で報告・討議され、改善が必要な事象が認識された場合、システム部門を中心として改善対応が実施されております。しかし、IT関連の技術革新により、不正アクセスやハッキング等の行為を完全に排除することはできません。第三者からのサイバー攻撃によるシステム障害、情報漏洩等の問題が発生した場合、業務停止等の事態が生じる可能性があり、当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

  ② システムに関するリスク

当社グループは、最適なマーケティング施策を推進するため、多数のシステムを採用しております。しかしながら、市場環境の急激な変化への対応や、サービス停止に伴うバージョンアップの停止等によって、システムのリプレイス等にかかるコスト負担の増加や除却損が発生し、当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。システムの定期的な見直し・評価を継続するとともに、必要に応じて代替手段の検討や事前の予算措置を講じるなど、影響の極小化に努めております。
 

③ システム障害に関するリスク

当社のシステムは、定期的なデータバックアップ等の対策を講じており、システム上のトラブルが発生しても日常の業務に影響が起こらないよう対策を講じておりますが、故意、過失に関わらず、大規模なシステム障害等が発生した場合、業務を停止せざるを得ず、当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。これらのリスクが顕在化する可能性は高くなく、発生したとしてもバックアップデータのリストアにより影響を最小限に抑えられると認識しておりますので、顕在化に備え、バックアップデータからのリストア訓練などを定期的に実施しております。

 

(3) 特定人物への依存に関するリスク

当社グループの運営は、代表取締役社長である宮澤孝夫に大きく依存しております。当社は事業の拡大に伴い、過度に経営陣に依存しない体制を構築すべく、経営組織の強化を図っており、少なくとも短期間の不在であれば問題なく事業運営が行える体制になっておりますので、現時点において顕在化のリスクは高くないと考えておりますが、何らかの理由により、突然、長期的に当人の業務遂行が困難となった場合、当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

(4) レピュテーションリスク

当社グループに関して様々な情報が流れることがあります。この情報については必ずしも事実に基づいているとは限りませんが、真偽に関わりなくステークホルダーを含む第三者の行動に影響を与える可能性があります。この場合、当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。当社に関する風評状況については毎月モニタリングしており、問題となるような風評がネット空間などで流されていないことは確認できておりますので、このリスクが顕在化する可能性は高くないと認識しておりますが、今後も日頃から風評の発見及び影響の極小化に努め、当社グループ又は当社グループが提供する商品・サービスについて否定的な風評が拡大した場合には、リスク・コンプライアンス委員会での討議を経て対応にあたる方針となっております。

 

(5) 自然災害等に関するリスク

地震、台風、津波等の自然災害、火災、各種感染症の拡大等が発生した場合、当社グループの事業運営に深刻な影響を及ぼす可能性があります。特に大規模な自然災害が発生した場合、正常な事業運営が行えなくなる可能性があり、当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。一部地域において、これらのリスクが顕在化する可能性はある程度高くございますが、顧客接点であるお客様センターを東京・大阪・鹿児島・秋田に設置し、物流拠点を神奈川と兵庫に設置することで、一部地域が機能不全となっても、他の地域で補完できる体制にするなど、グループ全体に与える影響を極小化する対策を進めております。

 

(6) 仕入に関するリスク

当社グループが取り扱う商品の価格は国内外の商品市況や為替変動の影響を受けて、上下することがあります。また、仕入先の地域や国における情勢により、仕入先の工場の稼働が影響を受けることがあります。当社グループは、こうした影響を極力抑えるため、早い段階で発注を行い、価格変動リスクを負う期間を短縮し、欠品リスクを低減させる取り組みを行っております。しかし、想定を超える大幅な市況の変化や為替変動が生じた場合や、工場の長期停止などが起こった場合には、仕入れ価格の高騰や欠品により、当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。これらのリスクが顕在化する可能性は一定程度ありますが、仕入先国の分散や国内取引先の活用により、影響を極小化する対策を進め、リスクを低減できていると認識しております。

 

(7) 在庫に関するリスク

当社グループでは、仕入・販売・在庫計画の精緻化や在庫コントロールの強化など、在庫の抑制、商品回転率の向上に努めると共に、毎年2回のセール期間(6月、11~12月)の後に、毎年2回(8月、2月)のアウトレットセールにより在庫を圧縮するプロセスを導入していることから、リスクは適切にコントロールできていると認識しておりますが、販売の予期せぬ変動により在庫が過剰となった場合、その削減が進まなければ廃棄処分や評価損によって、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(8) 業績の季節的変動

当社グループは、第1四半期(6月)と第3四半期(11月・12月)に大きなセールを行うことから、第1四半期と第3四半期の売上収益及び利益が大きくなる一方で、第2四半期(8月)と第4四半期(2月)においてはアウトレットセールを行うことも加わり、売上収益及び利益が小さくなる傾向があり、四半期ごとの業績に季節的変動があります。

 

(9) 商品の品質に関するリスク  

当社グループは、お客様の信頼を第一に考え、関連法規を遵守した安全な高品質な商品の提供に努めております。その実現のため、当社に設置した品質保証部門が、各子会社が提供する商品の品質を確認しております。地域や国における情勢などにより真にやむを得ない理由がある場合を除いて、工場監査も実施し、書面による確認と合わせて事前チェックを念入りに行うと共に、商品提供開始後においては、毎週のクレームゼロ会議において、当社代表取締役社長も出席する中で、お客様から頂いたクレームを確認し、「お客様からの信頼第一」を判断の基軸にしながら対応を検討・決定しております。これらの取り組みにより、商品の品質に関するリスクは大きく低減できていると認識しておりますが、商品の品質に関する大きな問題が発生してしまった場合においては、当社グループのイメージ低下による売上高の減少などにより、当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

(10) 配送に関するリスク

当社グループは、商品の配送を全面的に外部の運送業者へ委託しております。全般に運送業者とは良好な関係を構築しておりますが、運送業者における人手不足が深刻化した場合などには、当社グループが負担する配送費の大幅増や、商品を配送する運送業者を確保できなくなることによる配送不能等により、当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。これらのリスクが顕在化する可能性は高くはありませんが、顕在化した場合に備え、複数の運送業者と取引をし、状況の変化に柔軟に対応できる体制の構築を進めております。

 

(11) 法的規制等に関するリスク

当社グループは、商品の販売などを行うにあたり、景品表示法、特定商取引法、薬機法等、非常に多くの法的規制を受けております。当社グループにおいては、コンプライアンスの重要性についての教育を行い、日常行動の基本的な考え方や判断基準を定めたコンプライアンス規程に基づき行動しております。また、商品やサービスの選定においては「シニア世代の信頼を裏切らない」ことを最重要基準として判断しております。更に、今後の法的規制等の検討状況についても、法務部門を中心に情報収集し、事前に対応策の検討を進めております。しかし、今後これらの法的規制の強化や新たな規制により事業活動が制限された場合、当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。これらのリスクが顕在化する可能性は低いと考えておりますが、顕在化した場合、「シニア世代の信頼を裏切らない」ことを最重要判断基準として、誠実な対応を行う方針であります。

 

(12) 個人情報に関するリスク

当社グループは事業を通じて取得した個人情報を所有しております。個人情報の管理は厳重に行っており、「個人情報の保護に関する法律」の規定に則って作成した個人情報保護規程に沿って管理すると共に、必要なグループ企業においては「プライバシーマーク」の付与認定を受け、個人情報の保護に取り組んでおりますが、故意、過失もしくはサイバー攻撃などにより個人情報が漏洩した場合や、個人情報の収集過程で問題が生じた場合、当社グループへの損害賠償請求や社会的信用の失墜、業務停止などの損害が発生し、当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。これらのリスクが顕在化しないよう、「(2)システムに関するリスク」に記載のとおり、セキュリティ対策を講じ、顕在化リスクの低減に努めております。

 

(13) 減損に関するリスク

当社グループが保有する資産のうち、減損リスクがあると考えられる資産として、有形固定資産、使用権資産、のれん及び無形資産(商標権、ソフトウェア等)があります。

この中でも、のれんについては当連結会計年度末現在4,452百万円計上しており、総資産に占める割合が21.3%と高くなっております。

当社グループはIFRSを採用しているため当該のれんの毎期の償却負担は発生しませんが、対象となる事業の収益力が低下し、減損損失を計上するに至った場合には、当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。これらのリスクが顕在化する可能性は高くないと認識しておりますが、顕在化に備え収益性や健全性を確保してまいります。

 

(14) 人材確保・育成に関するリスク

当社グループが長期的な成長を続けるためには、優秀な人材の確保と育成が不可欠であると考えています。このため、当社グループの将来を担う優秀な人材を積極的に採用すると共に、社内外での教育・研修を実施し、社員の育成を図っております。特に、当社グループのお客様が主に50代以上の女性であることを鑑み、管理職である課長以上における女性の比率も重視しており、当連結会計年度末における比率は30.5%であり、この数値の引き上げも並行して目指してまいります。これらの取り組みから、顕在化するリスクは高くないと判断しておりますが、当社グループの求める優秀な人材が十分に確保できなかった場合、当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

(15) 新株予約権に関するリスク

当社グループは、企業価値の向上を意識した経営の推進を図ると共に、当社グループの業績に対する役職員の意欲を高めることを目的として、ストック・オプション制度を採用しております。

これらのストック・オプションの行使が行われた場合、発行済株式総数が増加することにより1株当たりの株式価値が希薄化し、株価形成に影響を及ぼす可能性があります。

 

(16) 当社株式の流動性について

当社グループは、事業計画に沿った成長資金の公募増資による調達、大株主への一部売り出しの要請、ストック・オプションの行使による流通株式数の増加等により、流動性の向上を図っていく方針でありますが、何らかの事情により上場時よりも流動性が低下する場合には、当社株式の市場における売買が停滞する可能性があり、それにより当社株式の需給関係にも悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(17) 新規事業について

当社グループは、事業規模の拡大と収益源の多様化を実現するために、新規事業への取り組みを進めていく方針です。新規事業が安定して収益を生み出すまでには一定の期間と投資を要することが予想され、全体の利益率を低下させる可能性があります。また、将来の事業環境の変化等により、新規事業が当初の計画どおりに推移せず、新規事業への投資に対し十分な回収を行うことができなくなる可能性があります。予算統制により、新規事業から発生する損失は一定額以下にコントロールしているため、これらのリスクが顕在化する可能性は高くはないですが、顕在化した場合、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(18) M&A及び資本業務提携等のリスク

当社グループは、持続的な成長のため、M&Aや資本業務提携等を行うことがあります。これらの実施にあたっては、事前に対象企業の財務内容や契約内容等の審査を十分に行い、各種リスクの低減に努める方針です。しかしながら、これらの調査後の事業環境の変化等により、当初想定していた成果が得られない場合や、資本業務提携等を解消・変更する場合等には、当社グループの財務状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

当該リスクが顕在化する可能性は、当該M&Aが実施される時期及びM&A実施後の事業展開に起因することから、合理的な予測は困難であると認識しております。当社では当該リスクに対し、継続的な業績のモニタリングを行っており、のれんや固定資産に関する減損損失が発生する前に対策を講じるように努めております。

 

(19) 大株主との関係について

当社の大株主である松島陽介氏、山元雄太氏はエンジェル投資家であり、松島氏は1,900,000株(発行済株式総数の17.27%)、山元氏は1,520,000株(同13.82%)を所有しております。両氏は安定株主として引き続き一定の議決権を有し、その議決権行使に当たっては、株主共同の利益を追求するとともに、少数株主の利益にも配慮する方針を有しております。また、当社といたしましても、両氏は安定株主であると認識しておりますが、将来的に何らかの事情により大株主である両氏の保有株式数が減少した場合には、当社株式の市場価格及び議決権行使の状況等に影響を及ぼす可能性があります。

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という)の状況の概要は次のとおりであります。

 

① 財政状態の状況及び経営成績の状況

当連結会計年度(2024年4月1日から2025年3月31日まで)におけるわが国経済は、雇用や所得環境において改善が見られる反面、円安やエネルギー価格高騰などに起因する物価上昇が継続していることから、個人消費は緩やかな改善に留まっております。また、インバウンド需要は活性化しておりますが、不安定な海外情勢の長期化や中国経済の減速、米国の関税政策などもあり、依然として先行き不透明な状況が続いております。

このような環境のもと、当社グループにおきましては、雑誌「ハルメク」が国内全雑誌における販売部数でNo.1(※)を維持し、読者数は2024年10月から2025年3月までの半年平均で46万人(前年同期:45万人)となっております。(※出所:一般社団法人日本ABC協会「発行者レポート」(2024年上期実績))

物販におきましても、健康志向に対応した健康サポートインナーやリカバリーウェア、夏場には猛暑に対応した涼感インナー、冬場には裏起毛の暖かインナーなど多くの商品がご好評をいただいたほか、8月に南海トラフ地震に関する特別な注意の呼びかけが行われたことなどから、防災用品の販売が大きく増加し、年末にはおせち料理の販売が過去最高を更新するなど、売上が着実に伸長いたしました。

今期の重要施策のうち、「顧客数を安定的に増やしファン化する」ことを目的とした、新聞広告及び新店舗展開による新規顧客の獲得は順調に進捗しております。なお、当連結会計年度にオープンした新店舗は、藤崎仙台店(4月開設、宮城)、日比谷シャンテ店(5月開設、東京)、熊本鶴屋店(9月開設、熊本)、東武船橋店(9月開設、千葉)、東武池袋店(10月開設、東京)、松坂屋上野店(10月開設、東京)及び小倉井筒屋店(3月開設、福岡)の7店舗となります。また、TV広告等を活用したクロスマーケティングによる新規顧客の獲得手法の確立についても、鋭意取り組みを進めております。

もう一つの当期の重要施策である広告効率の改善も順調に進捗しております。特に売上に対するカタログ費用の割合を示す媒体費率については、2024年5月に公表した業績予想をやや上回るペースで改善が進みました。

このほか、前年度において基幹システムのバージョンアップを実施しましたが、バージョンアップ後のシステムが想定よりも安定的に稼働していることから、基幹システムの安定性の抜本改善を目指して、並行して進めていた次期基幹システムの開発は、完全に中止することを決議いたしました。これにより、10億円程度の追加投資を回避できる一方で、既に開発済みであった投資額を除却することとなり、当連結会計年度において226百万円の除却損(※)が発生しております。(※IFRSにおいては「その他の費用」に計上され、営業利益に影響します。)

以上の結果、当連結会計年度の売上収益は、33,930百万円(前年同期比2,514百万円増、8.0%増)、営業利益は、1,068百万円(前年同期比210百万円増、24.5%増)、税引前利益は、1,020百万円(前年同期比338百万円増、49.7%増)、親会社の所有者に帰属する当期利益は、623百万円(前年同期比147百万円増、31.0%増)となりました。

 

セグメントごとの経営成績は次のとおりであります。

中間連結会計期間より、従来「全国通販事業」としていた報告セグメントの名称を「ことせ事業」に変更しております。この変更によるセグメント情報に与える影響はありません。

なお、セグメント別の売上収益及びセグメント利益又は損失は社内の迅速な意思決定に資するため、会計処理の一部について、IFRSと異なる処理を採用しております。

 

<ハルメク事業>

当連結会計年度においては、深い顧客理解に基づく読者に寄り添った誌面作りにより、雑誌「ハルメク」において想定どおりに読者数を確保したこと、2024年1月に雑誌「ハルメク」の購読料を値上げしたこと、新聞広告や店舗において新規顧客を順調に獲得したこと、及び機能面で優れた商品をライフスタイルとともに提案したことなどにより、情報コンテンツ及び物販において、売上を大きく伸ばすことができました。また、販売費及び一般管理費については、2023年秋以降に悪化していた広告効率の改善に取り組んでおり、2024年5月に公表した業績予想を上回るペースで改善が進みました。

以上の結果、売上収益は26,750百万円(前年同期比2,720百万円増、11.3%増)、セグメント利益は1,302百万円(前年同期比185百万円増、16.6%増)となりました。

 

<ことせ事業>

当連結会計年度においては、アパレルを中心に魅力的なオリジナル商品を増やしたこと、積極的な新聞広告投資を行ったことにより、新規顧客獲得が順調に進みましたが、完売による売り逃しが多数発生してしまったことなどから、セグメント利益は大きく減少しております。

以上の結果、売上収益は7,567百万円(前年同期比154百万円減、2.0%減)、セグメント損失は39百万円(前年同期比70百万円減)となりました。

 

また、財政状態については次のとおりであります。

(資産)

当連結会計年度末における資産合計は、前連結会計年度末と比べ778百万円増加し20,893百万円となりました。

流動資産は1,362百万円増加し、7,591百万円となりました。主な要因は、現金及び現金同等物の増加1,456百万円、棚卸資産の増加181百万円、営業債権の減少204百万円であります。

非流動資産は584百万円減少し、13,301百万円となりました。主な要因は、無形資産の減少593百万円、使用権資産の減少149百万円であります。

 

(負債)

当連結会計年度末における負債合計は、前連結会計年度末に比べ138百万円増加し12,697百万円となりました。

流動負債は135百万円増加し、8,919百万円となりました。主な要因は、契約負債の増加226百万円、その他の流動負債の増加198百万円、未払法人所得税の増加186百万円、営業債務及びその他の債務の減少496百万円であります。

非流動負債は2百万円増加し、3,777百万円となりました。主な要因は、繰延税金負債の増加110百万円、リース負債の減少157百万円であります。

 

(資本)

当連結会計年度末における資本合計は、前連結会計年度末に比べ639百万円増加し8,195百万円となりました。主な要因は、親会社の所有者に帰属する当期利益623百万円の計上によるものであります。

 

② キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ1,456百万円増加し、2,394百万円となりました。

当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動の結果、得られた資金は2,395百万円(前年同期は152百万円の獲得)となりました。主な増加要因は、減価償却費及び償却費1,108百万円(前年同期は915百万円)、税引前利益1,020百万円(前年同期比338百万円増)、営業債権の減少額322百万円(前年同期は340百万円の増加)、有形固定資産及び無形資産除却損238百万円(前年同期は580百万円)であり、主な減少要因は、営業債務及びその他の債務の減少額438百万円(前年同期は80百万円の減少)、法人所得税の支払額253百万円(前年同期は937百万円)であります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動の結果、使用した資金は344百万円(前年同期は414百万円の使用)となりました。主な内訳は、無形資産の取得による支出185百万円(前年同期は278百万円)、有形固定資産の取得による支出153百万円(前年同期は104百万円)であります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動の結果、使用した資金は593百万円(前年同期は3,836百万円の使用)となりました。支出の内訳は、リース負債の返済による支出585百万円(前年同期は457百万円)であります。

 

③ 生産、受注及び販売の状況

a.仕入実績

当連結会計年度における仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 

セグメントの名称

仕入高(百万円)

前期比(%)

ハルメク事業

9,153

7.3

ことせ事業

3,128

△13.2

合計

12,282

1.2

 

(注) 1.金額は、仕入価格によっております。

2.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。

 

b.受注実績

受注生産を行っておりませんので、受注実績に関する記載はしておりません。

 

c.販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 

セグメントの名称

販売高(百万円)

前期比(%)

ハルメク事業

26,750

11.3

ことせ事業

7,567

△2.0

報告セグメント計

34,317

8.1

調整額

△386

合計

33,930

8.0

 

(注) 1.総販売金額に対する割合が10%以上を超える相手先はありません。

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものであります。

 

① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、IFRSに基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたって、決算日における財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を与えるような会計上の見積り及び判断を必要としております。当社グループは、過去の実績や状況を踏まえ合理的と判断される前提に基づき、会計上の見積りを行っておりますが、見積りの不確実性により、実際の結果がこれら見積りと異なる可能性があります。

なお、当社グループの連結財務諸表の作成にあたって用いた重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記4.重要な会計上の見積り及び見積りを伴う判断」に記載しております。

 

② 経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
a.経営成績

(売上収益)

売上収益は33,930百万円(前連結会計年度比8.0%増)となりました。これは主に定期購読の雑誌「ハルメク」の読者数が2024年10月から2025年3月までの半年平均で46万人と前年同期を上回ったこと、更に通信販売も新聞広告や自社ECサイトを通じて顧客数を増やしたことによるものです。

 

(売上原価・売上総利益)

売上収益の増加により、売上原価は14,835百万円(前連結会計年度比8.6%増)となり、売上総利益は19,095百万円(前連結会計年度比7.5%増)となりました。

 

(販売費及び一般管理費・その他の収益・その他の費用・営業利益)

従業員給付費用が520百万円増加したこと、広告宣伝費が295百万円増加したことなどから、販売費及び一般管理費は17,813百万円(前連結会計年度比9.1%増)となりました。その他の収益は75百万円(前連結会計年度比106.4%増)、その他の費用は288百万円(前連結会計年度比52.4%減)となり、営業利益は1,068百万円(前連結会計年度比24.5%増)となりました。

 

(金融収益・金融費用・税引前利益)

金融収益は1百万円(前連結会計年度比5,259.3%増)、金融費用は49百万円(前連結会計年度比72.1%減)となりました。

以上の結果、税引前利益は1,020百万円(前連結会計年度比49.7%増)となりました。

 

(法人所得税費用・親会社の所有者に帰属する当期利益)

法人所得税費用は396百万円(前連結会計年度比93.1%増)となり、親会社の所有者に帰属する当期利益は623百万円(前連結会計年度比31.0%増)となりました。

 

 セグメントごとの経営成績は以下のとおりであります。

なお、セグメントごとの売上収益及びセグメント利益又は損失は社内の迅速な意思決定に資するため、会計処理の一部について、IFRSと異なる処理を採用しております。

 

[ハルメク事業]

当連結会計年度においては、深い顧客理解に基づく読者に寄り添った誌面作りにより、雑誌「ハルメク」において想定どおりに読者数を確保したこと、2024年1月に雑誌「ハルメク」の購読料を値上げしたこと、新聞広告や店舗において新規顧客を順調に獲得したこと、及び機能面で優れた商品をライフスタイルとともに提案したことなどにより、情報コンテンツ及び物販において、売上を大きく伸ばすことができました。また、販売費及び一般管理費については、2023年秋以降に悪化していた広告効率の改善に取り組んでおり、2024年5月に公表した業績予想を上回るペースで改善が進みました。

以上の結果、売上収益は26,750百万円(前年同期比2,720百万円増、11.3%増)、セグメント利益は1,302百万円(前年同期比185百万円増、16.6%増)となりました。

 

[ことせ事業]

当連結会計年度においては、アパレルを中心に魅力的なオリジナル商品を増やしたこと、積極的な新聞広告投資を行ったことにより、新規顧客獲得が順調に進みましたが、完売による売り逃しが多数発生してしまったことなどから、セグメント利益は大きく減少しております。

以上の結果、売上収益は7,567百万円(前年同期比154百万円減、2.0%減)、セグメント損失は39百万円(前年同期比70百万円減)となりました。

 

b.財政状態の分析

財政状態の分析については、「(1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態の状況及び経営成績の状況」に含めて記載しております。

 

c.キャッシュ・フローの状況の分析

キャッシュ・フローの状況の分析については、「(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に含めて記載しております。

 

d.経営成績に重要な影響を与える要因

当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因については、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」及び「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」をご参照ください。

 

③ 資本の財源及び資金の流動性

当社グループの運転資金需要の主なものは、商品仕入代金、用紙等仕入代金、人件費等であります。資金の流動性を安定的に確保することを目的とし、資金需要の額や使途に合わせて自己資金、金融機関からの借入及びエクイティファイナンス等で資金調達することを基本方針としております。なお、これらの資金調達方法の優先順位等に特段の方針はなく、資金需要の額や使途に合わせて柔軟に検討を行う予定です。

 

④ 経営方針、経営戦略又は経営上の目標の達成を判断するための客観的な指標等の分析

経営方針、経営戦略又は経営上の目標の達成を判断するための客観的な指標等につきましては、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおり、読者数と顧客数を経営指標として重視しております。読者数を重視する理由は、雑誌「ハルメク」の読者は、ハルメクの世界観に共感して頂いている非常にロイヤリティが高いお客様であり、「物販」「コミュニティ」といった他事業とのクロスセル率が高い、もしくは、今後、そういったお客様になって頂ける可能性が高い、非常に重要なお客様であるためであります。顧客数を重視する理由は、当社の経営理念は「50代からの女性がよりよく生きることを応援します」ですが、顧客数は「実際に当社が応援できている50代からの女性の人数」を表していると考えているからです。

 

各指標の実績等は以下のとおりであります。

経営指標

2021年3月期

2022年3月

2023年3月

2024年3月

2025年3月

実績

(万人)

前期比

(%)

実績

(万人)

前期比

(%)

実績

(万人)

前期比

(%)

実績

(万人)

前期比

(%)

実績

(万人)

前期比

(%)

読者数

37

121

42

112

46

111

48

104

45

95

顧客数

89

109

109

122

121

111

135

111

137

102

ハルメク事業

58

131

74

127

86

116

93

108

95

102

ことせ事業

30

83

35

114

35

101

41

118

42

101

 

 

読者数は、顧客のインサイトに基づくコンテンツの絶え間ない磨き上げ及びマーケティング手法の開拓、PRの強化により堅調に推移していると認識しております。

顧客数についても、ことせ事業の2021年3月期からの構造改革によって回復傾向、ハルメク事業は読者数及び新聞単品外販の伸長により、堅調に推移していると認識しております。

 

5 【重要な契約等】

株式会社みずほ銀行、株式会社三菱UFJ銀行、株式会社三井住友銀行との借入契約

当社は、2023年5月31日付で一年以内返済予定長期借入金及び長期借入金の全額を返済するとともに、事業資金の確保のため、以下の契約を締結し実行しております。

 

契約締結先

株式会社みずほ銀行

株式会社三菱UFJ銀行

株式会社三井住友銀行

借入極度額

1,500百万円

500百万円

1,000百万円

原契約締結日

2023年5月25日

2023年5月31日

2023年6月6日

契約期間

2023年5月31日から1年間

以降、1年ごとの自動更新

2023年5月31日から1年間

以降、1年ごとの自動更新

2024年6月26日から1年間

契約形態

個別相対方式

個別相対方式

個別相対方式

担保

無担保・無保証

無担保・無保証

無担保・無保証

財務制限条項

該当なし

該当なし

該当なし

 

 

6 【研究開発活動】

当連結会計年度の研究開発活動におけるセグメントごとの研究開発活動を示すと次のとおりであります。なお、中間連結会計期間より、従来「全国通販事業」としていた報告セグメントの名称を「ことせ事業」に変更しております。この変更によるセグメント情報に与える影響はありません。

 

(1) ハルメク事業

新たなデジタルコンテンツプラットフォーム(HALMEK up)に関する研究開発活動をしております。又、通販事業では新商品開発に関する研究開発活動をしております。当連結会計年度における研究開発費の金額は60百万円であります。

 

(2) ことせ事業

通販事業で新商品開発に関する研究開発活動をしております。当連結会計年度における研究開発費の金額は1百万円であります。