第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

  当社の経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。

(1)企業理念、行動基準/行動指針

 当社は、「わたしたちはお客様を念(おも)い、仲間を想(おも)い、社会を憶(おも)い、高度情報通信ネットワーク社会のラストワンマイルである人と人との接点に新たな価値を創造していきます。」を企業理念として掲げております。

 当社の活動する現場は、人と人との接点の場であり、お客様、仲間、社会それぞれへの思いを大切に活動してまいります。

◆お客様 = 最も大切な存在  『念う(一心に思う)』

◆仲間  = お互いに尊敬しあい、大切にする存在  『想う(感情をこめて思う)』

◆社会  = 深い問題意識を持ちつつ貢献していく  『憶う(深く思う)』

 当社の保守サービス事業、ソリューション事業、人材サービス事業の現場は、人と人との接点にこそあります。

 医療機関に導入されている電子カルテシステムやレセプトコンピュータ等の機器、あるいは企業に導入されているパソコン、サーバ等のIT機器の設置や保守といった業務は、実際に病院やクリニック、企業に当社の社員が出向いて作業を行います。そこで機器を利用する方々の使用状況を伺いながら、エンジニアの視点からの機器使用についてのアドバイスを行うこと、顧客の要望に応えるべく現場ごとに適切な作業を行うこと、それが高度情報通信ネットワーク社会のラストワンマイルを担う当社に求められた使命であると考えております。

 

 上記企業理念に加えて、以下6項目を行動基準/行動指針として掲げております。

わたしたちは、お客様第一で行動します。
    そのために、お客様の期待を超えるサービスを提供します。
わたしたちは、プロフェッショナルとして行動します。
    そのために、日々の研鑽を怠らず、スキルの習得に努めます。
わたしたちは、チャレンジ精神で行動します。
    そのために、前向きに努力し、常に挑戦し続けます。
わたしたちは、コンプライアンス意識をもって行動します。
    そのために、ルールを正しく理解し厳守します。
わたしたちは、チームワークを大切に行動します。
    そのために、仲間の個性と価値観を尊重します。
わたしたちは、社会貢献を喜びとして行動します。
    そのために、社会の一員として責任を果たします。

 

これらを実現することにより、法令を遵守した継続的かつ安定的な企業成長を目指し、社会的責任を果たしてまいります。

 

(2)経営環境

 当社の事業領域である国内IT市場の2024年は、新型コロナウイルス感染症が収束し、観光、インバウンド需要も回復傾向にあり、関連する産業分野の企業では業績が回復を見せております。このような環境において、多くの企業ではDX推進の取り組みの加速が見られ、既存システムの見直し、新規ビジネス展開のためのIT支出を拡大しており、その市場規模は前年比7.2%増の23兆4,589億円、また2023年~2028年の年間平均成長率は4.9%と予測されております。(出典:IDC Japan, 2024年4月「国内IT市場産業分野別/従業員規模別/年商規模別予測、2024年~2028年」(JPJ50712324))

 当社が約50年にわたって関わりのある医療分野においては、2022年10月に内閣総理大臣を本部長とする医療DX推進本部の設置が閣議決定され、政府が推進する医療DXは、2023年1月の電子処方箋の情報を皮切りに、電子カルテ情報、予防接種情報の共有拡大を検討しており、将来的には全国医療情報プラットフォームの適切かつ効率的な運用の実現を目指しております。2024年にはマイナンバーカードと保険証の一体化が予定されており、当社においても2023年3月期に開始した医療機関、薬局におけるオンライン資格確認導入作業を皮切りに、2024年からは訪問看護事業所におけるオンライン資格確認の導入が本格化し、今後も医療DXに関連した業務の依頼が増加することが期待されます。また、医療機関を対象とした深刻なサイバーセキュリティ被害が多発していることから、セキュリティ対策への支出も拡大傾向にあります。当社へは病院内のネットワーク構築の依頼に加えてセキュリティ対策への相談も増加傾向にあることから、医療分野における事業拡大の機会は今後も大いにあると予測しております。

 また、DXによる企業変革、新たなビジネス展開に向けた取り組みが本格化し、業務効率化や既存システムのクラウドシフトを推進するIT支出の拡大が見込まれ、データの増加に伴いインフラストラクチャの拡張需要も予測されております。更に、2025年10月にWindows10のサポートが終了することに伴う需要が2024年から増えることが見込まれることに加え、GIGAスクール構想(文部科学省が推進する小中学校へのパソコンやタブレット端末の配備)の端末の更新需要により、機器の販売、キッティング、設置等の需要が増加することが予測されます。そこに付随して保守サービスに事業においてはオンサイト保守の他、故障機器を送付し修理や代替品との交換を受けるセンドバック修理の需要が増加することも期待されます。

 大都市圏を除いた地域では、人口減少、ならびに企業流出が深刻化しており、地域経済は停滞が継続しているという一面もありますが、医療、教育、地方自治体といった各地に不可欠な分野におけるIT支出の機会はあることから、全国拠点を生かして新規開拓、事業拡大の余地は今後もあると期待しております。

 また、今後すべての産業分野でIT投資はプラス成長になる見込みであることから、新たな分野における新規ビジネス展開の機会もあると考えられます。

 このようにDXの進展に伴いIT人材の需要が増加する一方、経済産業省の調査では、2030年には全体需要が129.7万人から192.0万人に対し、16万人から79万人の人材不足が予測されており、(経済産業省ホームページ https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/jinzai/houkokusyo.pdf 2019年3月時点データ)IT人材不足が深刻な課題となっております。これにより当社の人材サービス事業では、今後もCE、SEの派遣需要が増加することが見込まれます。

 

(3)経営戦略

 当社は、DX改革の一翼を担い、事業の成長を継続し、ステークホルダーの期待に応えていくことを目標と定め、総合ITソリューション企業を目指しITネットワーク技術と全国ネットワークの強みを活かし、DXを推進する医療機関、企業を全面的にサポートしております。

 国内IT市場において、医療DX、教育DX、自治体DX、企業DXが推進される中、今後情報通信量は増加し、インフラの刷新が不可欠となります。機器の選定、設定(キッティング)、設置から運用保守、そして2023年に古物商(事務機器商)許可を取得したことにより製品の3R(リデュース・リユース・リサイクル)までワンストップで対応が可能となったことを強みとし、今後も引き続き、取引先企業の成長を更に支援し、新たな付加価値を提供できる会社であり続けるため、一層の変革を進めるべく、事業セグメントごとに戦略を立てております。

 

 保守サービス事業では既存パートナーからの保守エリアの拡大及び取扱機器の種類の増加依頼の他、ソリューション事業での機器設置展開後の保守委託が毎年増加しております。2023年3月期下期より、ソリューション事業においてオンライン資格確認のための機器の導入案件が多くありましたが、それらは保守契約を締結し、引き続き保守サービス事業において機器の保守サービスを提供しております。

 これら多くの需要に対応するに当たり、業務効率化及び品質の平準化を目指し、前事業年度よりスマートグラスを用いた遠隔支援システムを導入いたしました。従来の保守作業においては、その機器の保守対応に長けたエンジニアのみを選定しアサインしており、それにより特定のエンジニアに業務が偏り、移動時間等の都合により1日に対応できる件数に制限がありました。遠隔支援システムを導入することにより、テクニカルセンターあるいは各拠点の管理者やスキル習熟者からの支援が可能となり、エンジニアの効率的なアサインが実現します。今後活用機会を増やしていくことにより、業務効率が向上し、延いては利益率の向上に繋がると考えております。また、技術資料、マニュアル、作業チェックシート等の電子化を進めると共に、業務報告書等の事務処理等の業務プロセスの更なる効率化を目指し、品質管理システムの刷新を計画しており、2024年7月の利用開始に向けて準備を進めております。

 さらに、医療機器修理業においても更なる事業拡大を目指し、現在北海道、宮城県、東京都、長野県、大阪府、広島県、福岡県において取得している医療機器修理業の許可を全国にて取得することを目指しております。医療分野においては、医療従事者不足への対応策が課題となっている中で、医療機関の労働時間上限の規制対応といった制度対応が行われ、人材不足がより深刻化しております。そのような中、医療従事者間での情報共有基盤の構築や、IoT、AIを活用した診療の効率化やミスを防止する取り組みが増えております。当社は医療機関における保守実績から、同業他社からの協業依頼も含め、医療機器メーカーからの保守の相談も増加傾向にあることから、医療機器修理業を活用した保守サービス事業の拡大に取り組んでまいります。

 

 ソリューション事業では、継続的に取引のある企業との関係性の維持・構築に尽力する一方、高いスキルが求められる高単価案件の獲得を目指し、SEの専門部隊を設置し、現場作業のみの受託から、全体のシステム構築、手順書作成、工事業者等の外注コントロール、全国展開作業のマネジメントまでをワンストップで受けることができる体制を整える取り組みを行っております。また、2023年には古物商許可を取得し、パソコンやその周辺機器のLCMサービス(ライフサイクルマネジメント:PCの調達や運用保守、廃棄までの各プロセスの管理業務を最適化するためのサービス)の展開も可能となりました。

 今後、エンジニアのスキル教育の充実及びテクニカルセンターからの技術支援体制を強化し、役務案件におけるオンサイト作業回数を減らすことにより、利益率向上を図ってまいります。

 GIGAスクール構想やオンライン資格確認等のようにソリューション事業において機器やシステムの設計、設定、構築、展開を行った案件は、その後保守サービス事業に繋がるケースが多くあります。2025年3月期においては、訪問看護事業者のオンライン資格確認のための機器の導入案件や、小中学校や専門学校における電子黒板の需要、快適な授業環境の実現に繋がる教育機関専用インターネット回線の需要が増加傾向にあることから、これらを保守サービス事業に繋げられるような取り組みを強化してまいりたいと考えております。

 

 人材サービス事業では、社内教育により公的資格やベンダー資格(ネットワークスペシャリスト、CCNA、LPI、CompTIA等)の取得を促進しております。これらの資格を有することで、企業からの派遣要請にスムーズに対応できております。また、昨年より派遣を開始した空港や企業からの追加の派遣要請も順次あることから、絶えず予備人材を確保することにより、機会損失の軽減を図ってまいります。

 

(4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

①価格転嫁と収益率の改善のための取り組み

 物価上昇が続く中、当社にとっては価格転嫁は重要な課題であると捉えております。前事業年度において、メーカーの人件費増加に加え、円安で外国製品や部品の輸入費用が膨らんだ結果、パソコン及びその周辺機器の値上げが段階的に行われ、利益減少の要因ともなりました。今後は仕入原価や販管費の増加分を適切に転嫁するための活動に取り組んでまいります。また、前事業年度において一部利益率が当初想定を下回る案件がありました。今後収益率改善のために、スキル教育、研修の実施によるエンジニアのスキルアップや遠隔支援システムの活用により生産性向上に取り組んでまいります。

 

②生産性向上のためのシステムの見直し

 当社が今後生産性の向上を図るには、業務の効率化が必要であると考えております。現在、営業支援システムを利用して日々の営業活動、案件の管理を行っておりますが、更なる効率化を目指し、システムの機能の拡充を図ってまいります。その他、会計システムの入替、不正アクセス対策の強化等も実施してまいります。

 

③優秀な人材の採用と育成

 DX推進ニーズが高まる一方で直面する課題としてIT人材不足があります。中途採用やスタートアップ企業との連携により、自社内でDXを推進する人材の育成に着手し成果をあげている一部企業を除き、人材不足がDXの推進を停滞させる要因の一つになっております。このような環境において、今後SE、CE派遣の需要が増加していくことが予想されます。取引先企業からの要請に対して速やかに適切な人員を派遣することが、人材サービス事業の安定的な成長に繋がることから、事業の要となる人材の採用と育成が重要な課題と認識し、採用活動を強化しております。その一つの取り組みとして、近年は大学就職活動支援を実施しております。具体的には、当社人財開発推進室が自己分析、業界職種研修、企業面接対策、ビジネスマナー講座や、就職に有利な技術スキル習得のためのITパスポート、Microsoft Office Word Specialist、Microsoft Office Excel Specialist等の資格の研修を、要請のあった大学の学生に対して提供しております。2024年3月期はキャリアプラン講義を3件、ITパスポート研修を2件、Microsoft Office Professional研修を1件実施いたしました。受講した学生からは非常に高い満足度評価を得ており、研修を実施した大学からの新卒応募が増加しております。

 当社入社後、社員にはビジネスマナー等の基礎教育からスタートし、IT基礎教育、派遣予定先企業での業務を踏まえての取扱機器の実機研修やネットワーク構築基礎教育、公的資格取得研修等、入社後約3ヶ月でエンジニアとして活躍できるITエンジニア育成プログラムを用意しております。

 また、全国に拠点があることを生かし、Uターン、Iターン、Jターン希望にジョブローテーションを活用して応えていくことで、従業員がライフスタイルに合わせて長く働ける環境を作っていきたいと考えております。

 

④エンジニアのスキルアップと活用

 ソリューション事業の成長、特に利益率の向上には、より高度なスキルを必要とする案件に対応できるよう、エンジニアのスキルアップが必要と考えております。当社のエンジニアは、多種多様な現場作業案件に携わることで、機器の保守から導入設計、設置展開等マルチなスキルや対応力を身に付けておりますが、今後はネットワークやサーバの設計、開発、提案等といった分野にも業務を拡大できるよう、テクニカルセンターを中心にSEの専門部隊を設置し、経験豊富なSEを中心としてOJTを兼ねた高レベルな案件対応や技術支援を行い、スキルアップを図っております。また、定期的にネットワークスキル資格取得のための教育研修を実施しており、これにより全世界共通のネットワークスキルを証明するシスコ技術者認定CCNA、CCNP Enterpriseや、IT運用スキルを証明するCompTIA A+等の資格を取得するエンジニアが増えております。

 

下記は当社従業員が保有する資格の一例とその保有人数です。(2024年4月30日時点)

IPA ネットワークスペシャリスト試験(NW)

7名

IPA 応用情報技術者試験(AP)

12名

CompTIA Project+

2名

CCNP Enterprise

5名

CCNA

58名

CompTIA A+

30名

CompTIA CySA

1名

人材サービス事業において、派遣に際して上記資格を有することがエンジニアの条件として求められることが多々あるため、今後も求められる必要な技術の教育及び資格取得促進に向けた制度の確立を行ってまいります。

 

⑤医療機器修理業受託のための体制整備

 医療機器修理の分野に進出することで、既存のレセプトコンピュータや電子カルテだけではなく、その他病院、診療所内のネットワークに繋がる全ての機器やシステムの保守を当社が一括して受託することが可能となり、結果として全導入機器のヘルスチェックや予防的対策も可能となります。この実現には社内体制の強化も必要であり、医療機器修理業の全国エリアでの許可取得と、エンジニアのスキルアップを図ってまいります。

 

⑥リソースコントロール

 当社の経営資源は「人」であります。当社では利益拡大のために人的リソースの有効活用に取り組んでおります。当社が受託する全国規模の大型案件は本社及びテクニカルセンターを中心に全拠点のリソースを管理しながら対応しております。特にソリューション事業では、年度末に案件が集中する傾向があり、全国規模の案件と各拠点で受託した個別案件と通常業務が重複することにより人員不足となり、急遽外注によりリソースを確保せざるを得ない状況が発生する場合があります。テクニカルセンターが中心となり、案件管理及び支店間の支援体制を組み、リソースコントロールを実施することで、内製化を進め、それにより業務効率化を図ってまいります。

 

⑦パートナー企業とのグリップ強化

 日本電気株式会社、KDDI株式会社をはじめとする、継続的に取引のある企業からの受注拡大のため、機会損失のない営業体制を構築します。

 

⑧品質の向上、効率化の実現

 サービス品質の向上は、顧客の当社に対する信頼性を高めることに繋がることから、品質管理システムを活用し、全社的なサービスレベルの底上げと業務効率化を目指します。2024年7月に品質管理システムの刷新を予定しており、現在導入に向けた準備を進めております。

 

⑨財務上の課題

現在、運転資金は自己資金で賄えておりますが、大規模なシステム・整備への投資等を行った場合、運転資金が不足する可能性があります。その手当として金融機関からの借入を想定しております。

 

(5)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 当社の経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標としては、売上高、セグメント利益を設定し、企業規模の拡大、企業価値の向上を目指しております。

項目

前事業年度

(自 2022年4月1日

  至 2023年3月31日)

当事業年度

(自 2023年4月1日

  至 2024年3月31日)

売上高

全社

15,948,715

16,145,670

(千円)

保守サービス事業

4,557,688

4,750,124

 

ソリューション事業

9,212,092

9,248,112

 

人材サービス事業

2,178,933

2,147,433

セグメント利益

営業利益

752,829

627,159

(千円)

保守サービス事業

705,932

778,354

 

ソリューション事業

865,249

718,137

 

人材サービス事業

318,027

309,185

 

調整額※1

△1,136,380

△1,178,518

※1 セグメント利益の調整額は、報告セグメントに配賦していない本社費用であり、本社管理部門に係る人件費、

    不動産賃借料等の販売費及び一般管理費です。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社のサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものです。

 

 地球環境問題、人権、従業員の健康や労働環境への配慮および公正・適切な処遇、取引先との公正・適正な取引、自然災害への危機管理等、サステナビリティをめぐる課題への対応は、リスクを減少させるだけでなく企業の持続可能性と企業価値の向上にもつながる重要な経営課題と認識しております。このような認識の下、これまで当社は以下のとおり取り組んでまいりました。

 

(1)ガバナンス

 当社では常勤取締役と執行役員を構成員とするESG委員会を2024年1月より設置いたしました。サステナビリティについての戦略の立案、目標の設定等はこの委員会の中で行っています。活動内容については取締役会に報告されており、適宜必要な指示・助言を受け、活動を推進していきます。

 従業員の健康や労働環境については、安全衛生委員会において、労働安全衛生に関する状況の把握と対策に取り組んでいます。適宜、担当取締役により他の取締役に情報が共有され、必要に応じて取締役会において報告がなされ、モニタリングが行われています。

 

(2)戦略

①環境との共生

 CO2排出量の削減への取り組みとして、社有車のエコカー導入の推進とPC等のリユースを中心としたLCMサービスの展開を行ってまいります。

②インクルージョン、ダイバーシティの推進(人材の多様性を含む人材育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針)

 当社の経営資源は「人」であります。引き続き従業員の職制や社歴に応じた教育・研修を実施し能力開発に努めるほか、すべての従業員がその持てる力を十分に発揮できる環境を整えるべく、従業員のエンゲージメントの向上に力を入れてまいります。働きやすい職場環境の整備を進め、ES(従業員満足度)アンケートの結果を積極的に活用してまいります。

 また、ダイバーシティ推進の一環として女性活躍を進めてまいります。そのためにも働きやすい職場環境の整備は重要であると考えております。

 

(3)リスク管理

 当社では、リスク管理規程を定め、リスク管理を推進する組織としてコーポレートスタッフ統括ユニット長を委員長とするリスク管理委員会を設置しております。構成員は常勤取締役のほか、統括ユニット長及び委員会が指名する者となっています。同委員会では気候変動リスクや自然災害リスクを含む経営リスク全般の洗い出しや評価、対応策の審議を行うものであり、必要に応じて取締役会に報告することとしています。

 今後は、お客様に満足いただけるサービス品質の維持・向上のため、人材の確保・育成に係るリスクの低減に向けた取り組みを進めるとともに、リスクを具体化、細分化して対策を進めてまいります。

 

(4)指標及び目標

 当社では、(2)の①と②で掲げた戦略に対応し、次の指標を用いております。当該指標に関する目標及び実績は、次のとおりであります。

指標

2026年3月期目標

当事業年度実績

1.社有車におけるエコカー(HV車、EV車)の割合 (注)1

25%以上(100台以上)

12.95%(47台/363台)

2.LCMサービスによるPC等のリユース及びリサイクルの推進事業

6件

1件

3.ESアンケートにおける肯定率(当社で働くことについて「満足(5点)」、「やや満足(4点)」を選ぶ割合)及び平均値(5点満点)

肯定率44.0

平均値3.50

肯定率39.7

平均値3.19

4.男性育児休業取得率 (注)2

取得率30

取得率20

5.平均年間有給取得日数

16

11.9

6.女性管理職人数 (注)3

13

6

 

(注)1.社有車のリース契約更新の際に約半数をエコカーにすることを目指して設定した目標値です。

2.前事業年度の男性育児休業取得率は46.15%でした。当事業年度において取得率が低下した原因として2022年10月の育児休業等期間中の社会保険料免除要件の見直しがあります。目標値はこの影響を加味して設定したものです。社内報における男性従業員の育児休業取得者の紹介や社内研修を行うことにより取得率の向上を図ります。

3.当事業年度末における従業員811人の女性従業員の割合は11.1%(90人)です。また、男性従業員における管理職割合は23.9%(172人/721人パートタイマーの管理職を除く)であり、女性従業員における管理職割合は6.7%(6人/90人)です。将来的には女性従業員における管理職割合を男性従業員に近づける方向で目標値を設定していきます。

 

3【事業等のリスク】

 当社の事業の状況、経理の状況に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。またリスク要因に該当しない事項についても、投資者の投資判断上重要であると考えられる事項については、投資者に対する積極的な情報開示の観点から開示しております。

当社はこれらのリスク発生の可能性を認識したうえで、発生の回避及び発生した場合の対応に努める方針であります。当社におけるリスク管理を適切に実施、管理するためリスク管理委員会を設置しております。リスク管理委員会については、「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等 (1)コーポレート・ガバナンスの概要 ②企業統治の体制の概要及び当該体制を採用する理由 6.リスク管理委員会」に、リスク管理体制の整備の状況については、「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等 (1)コーポレート・ガバナンスの概要 ④リスク管理体制の整備の状況」に記載しております。

なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであります。

 

事業戦略リスク

(1)事業環境について(発生可能性:高/影響度:中)

 当社が事業展開している市場は、技術革新と変化が激しいため、常に市場に適応した新サービスを提供する必要があります。当社が魅力ある新サービスを提供できない場合、競合他社が新たな技術を利用した新サービスを提供した場合、当社サービスのニーズが減少し当社の業績並びに財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。当社では、新たな技術の情報収集と習得に努め、技術革新に対応したサービスの提供と競争力の確保に努めています。

 また、当社の保守サービスの料金は、対象機器の障害発生率やSLA(Service Level Agreementの略で、サービスの提供事業者とその利用者の間で結ばれる、サービスのレベル(定義、範囲、内容、達成目標等)に関する合意サービス水準、サービス品質保証)により設定されます。今後クラウドへの移行が進み、使用機器(タブレット等)のセンドバック保守がメインとなり、オンサイトサービスの需要が低下した場合、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性がありますが、当社の保守サービス事業の主要取引先である医療機関等においては、即時対応が求められるケースが多く、オンサイトの需要は今後も継続してあると予測しております。

 当社は、業務の効率化と技術力の向上により利益確保と受注拡大に努めています。

 

(2)経営成績の季節変動性に関するリスク(発生可能性:中/影響度:中)

 当社の保守サービス事業、人材サービス事業は、季節による大きな変動はありませんが、ソリューション事業は作業完了時期や機器の納期が年度末に集中することから、年度末に売上が集中する傾向があります。

 社内で対応できない事情により作業の完了や機器の調達が遅れた場合、納品が翌期となり当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 そのため当社では、業務の進捗管理を徹底し作業遅延に繋がる事象の早期発見に努めるとともに、協力会社や機器の調達先を多様化し期限内の納品や作業完了に努めています。

 

(3)主要株主であるPHC株式会社との関係について(発生可能性:低/影響度:大)

 保守サービス事業の中心は当社の主要株主であるPHC株式会社の関連会社であるウィーメックス株式会社(PHC株式会社メディコム事業部とPHCメディコム株式会社が2023年4月に統合)製電子カルテシステム、レセプトコンピュータ等及びPHC株式会社製適温配膳車、注射払出機等の保守であります。当事業年度の保守サービス事業の売上高に占める両社製品を使用するクリニックや調剤薬局等の売上割合は61.7%、当事業年度の保守サービス事業の仕入高に占める両社からの仕入割合は41.5%となっております。また、ソリューション事業及び人材サービス事業でも両者へサービスを提供しており、当事業年度の売上高に占めるPHC株式会社及びウィーメックス株式会社の売上割合は16.8%となっております。

 このような取引関係にあることから、PHC株式会社に当社普通株式の14.5%を保有いただいております。

 現在、PHC株式会社及びウィーメックス株式会社との関係は良好ですが、仮に関係が悪化するような事態が発生した場合、売上高が減少し、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 当社は、今後もサービス品質の維持向上を図りPHC株式会社及びウィーメックス株式会社の期待に応え、良好な関係維持に努めてまいります。

 

(4)特定会社への依存について(発生可能性:低/影響度:大)

 人材サービス事業の主な顧客はKDDI株式会社、NECフィールディング株式会社の2社であり、当事業年度の人材サービス事業の売上高に占める割合は、KDDI株式会社が35.8%NECフィールディング株式会社が50.3%となっております。なお、当事業年度の売上高に占めるウィーメックス株式会社、KDDI株式会社及びNECフィールディング株式会社の3社の売上割合は30.9%となっております。

 今後上記3社からの受託業務等が、サービス品質や料金等で折り合わず他社に変更される、取引先の経営方針により受託業務等が縮小又は終了される等の事態が生じた場合、売上高が減少し当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 当社は、サービス品質の維持向上に努め受注の継続を図るとともに、新たな取引先を積極的に開拓し特定会社への依存度を低めるよう努めております。

 

(5)人材サービスについて(発生可能性:低/影響度:大)

 当社は、人材サービス事業として労働者派遣事業と委任契約による役務の提供を行っておりますが、派遣するスタッフは無期雇用の従業員であり人件費が固定的に発生いたしますので、派遣先の経営状況や経営方針の変更により派遣及び役務依頼が減少した場合、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。また、顧客ニーズに対応する人材が確保できなかった場合、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 このため当社は、新たな派遣先の開拓に努めるとともに、派遣を終了した従業員が社内で就業できるよう請負業務の受注拡大に努めています。また、技術者の中途採用や社内の教育研修により顧客ニーズに対応する人材の確保に努めております。

 

(6)事業の許認可と法的規制について(発生可能性:低/影響度:中)

 当社の事業を規制する主な法律として、保守サービス事業の特にヘルスケア関連(医療機器修理及び販売)においては「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」(医薬品医療機器等法)、ソリューション事業(電気工事、電気通信工事、古物商)においては「建設業法」及び「古物営業法」、人材サービス事業(労働者派遣)においては「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律」(労働者派遣法)及び「職業安定法」(有料職業紹介事業)があります。

 当社は許認可を取得し必要な資格者、責任者等を置き、事業を推進しておりますが、資格者や責任者等が退職する等の当該法令に抵触する事態が生じ営業停止又は許可取消等により事業活動に支障が出た場合、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 許認可に必要な資格者や責任者等が欠員となることが無いよう資格者や責任者等を十分確保する、法令に抵触するような事態が生じないよう社員への教育を徹底する等、事業の許認可と法的規制遵守の体制を強化し

事業を継続してまいります。

許認可の名称

関連法規制

有効期間

登録交付者

取消理由

高度管理医療機器等
販売業・貸与業
(許可)

医薬品医療機器等法

6年間

各所轄保健所長

営業所の構造設備が、厚生労働省令で定める基準に適合しないとき

医療機器修理業
(許可)

医薬品医療機器等法

5年間

各都道府県知事

許可行政庁が許可の審査に当たって必要とする事項についての虚偽の記載、記載漏れ等

一般建設業
(許可)

建設業法

5年間

国土交通大臣

許可行政庁が許可の審査に当たって必要とする事項についての虚偽の記載、記載漏れ等

古物商

(許可)

古物営業法

なし

都道府県公安委員会

六月以上の営業の休止、営業所の不確知等

労働者派遣事業
(許可)

労働者派遣法

5年間

厚生労働大臣

労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律に違反したとき

有料職業紹介事業

(許可)

職業安定法

5年間

厚生労働大臣

法令違反や不正行為(虚偽の報告、不適切な求職者紹介、労働条件の明示義務違反等)があったとき

 

(7)コンプライアンスについて(発生可能性:低/影響度:大)

 万一重大なコンプライアンス違反や法令違反により取引先等との間に問題が生じた場合、損害賠償を請求される、あるいは訴訟を提起されることで、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 当社は、コンプライアンス規程を制定し、教育・研修等により従業員のコンプライアンス意識を高めるとともに、内部通報窓口を設置し、コンプライアンス違反の把握と未然防止に努めております。

 

 

(8)人材の確保・育成について(発生可能性:中/影響度:大)

 当社事業の中心は人的サービスであり、顧客に満足いただける品質のサービスを提供できる高スキル技術者の確保・育成が、事業の継続と発展を左右するものと認識しております。高い技術を持った人材を確保・育成できなかった場合、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 当社は、事業計画の重要項目の一つとして人材採用と教育研修を位置づけており、採用計画に基づき予算を計上し人材の確保と育成に努めております。

 

オペレーションリスク

 (9)品質管理について(発生可能性:中/影響度:大)

 品質面で重大な瑕疵があった場合、取引先への損害賠償や信用失墜による受注の減少等が発生する可能性があります。このような事態が発生した場合、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 このため当社は、業務研修やミーティングにより従業員への業務マニュアルの教育、作業上の注意事項についての周知の徹底を図り、作業ミスの防止と作業品質の均一化に努めております。

 

(10)内部管理体制について(発生可能性:低/影響度:中)

 当社は、今後も事業を拡大し円滑に運営していくためには管理体制の一層の充実を図る必要があると認識しております。管理体制と規程等の適正な整備に努めておりますが、今後、事業規模や人員数等が急激に変化し管理体制の整備が間に合わないような事態が生じた場合、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。今後も当社は、内部管理に必要な人材と要員を迅速適正に配置し管理体制に不備が生じないよう努めてまいります。

 

(11)自然災害について(発生可能性:低/影響度:大)

 地震、津波、台風等の想定外の大規模災害が発生した場合、事務所や設備の損壊、業務システムの停止、従業員の就労不能等により事業運営に支障をきたし、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 このため当社は、自然災害が発生した場合に備え、支店、営業所のハザードマップを確認して具体的な危険度を把握するほか、事業継続計画を策定し社員の安全確保と事業を継続するための社内対応を定めています。

 

(12)感染症について(発生可能性:中/影響度:中)

 当社の事業は顧客先での作業や役務の提供が主であるため、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のような未知の感染症が世界的に流行し、従業員が当該感染症に感染した場合は、サービスの提供ができず当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 そのため当社は、政府や都道府県等関係機関のガイドラインに沿った感染予防と感染拡大防止策について従業員に周知し、手洗いや消毒の励行、在宅勤務(テレワーク)の導入を実施しております。

 

(13)システム障害について(発生可能性:低/影響度:大)

 当社の事業の遂行にはコンピュータシステムとネットワークが不可欠であり、これらのシステムに障害が発生した場合、業務の一部遅延や停止等、業務に支障が出る可能性があります。これにより取引先からの損害賠償や当社への信頼低下による失注等が発生した場合、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 当社は、社内のシステムトラブルを未然に防止し、障害が発生した場合でも迅速に復旧できるよう社内情報システムの管理部門を置いております。情報システム部門は、常に社内システムとネットワーク機器の稼働状況を監視しており、外部アタックやウイルス等のセキュリティについても対策しています。また、地震や火災等に備え、業務システムサーバを外部のデータセンターに置き、システムの安全を図っております。

 

(14)情報セキュリティについて(発生可能性:中/影響度:大)

 当社の責により顧客からの預かり情報を紛失、あるいは機密とされている情報を漏洩した場合、顧客に重大な損害を与え、多額の損害賠償が発生し、当社の経営成績及び財政状態に大きな影響を及ぼす可能性があります。また、社内の機密情報や個人情報の流失や漏洩は、会社の信用失墜や重大な損害に繋がる可能性があります。ウイルスや外部ハッカーにより社内システムが破壊や使用不能となった場合、業務の停止や遅延等が発生し、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 当社では、ISO/IEC27001が規定する情報セキュリティマネジメント活動を通し、こうした情報リスクへの対策に取り組み、顧客情報、社内情報やハードウェア、ソフトウェア等の情報資産について、その機密性・完全性・可用性の保持を図り情報セキュリティの確保に努めております。

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

 当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

①財政状態の状況

(資産)

 当事業年度末における流動資産は5,298,563千円となり、前事業年度末に比べ154,184千円減少いたしました。これは主として、現金及び預金が579,787千円増加したものの、オンライン資格確認端末導入等大型案件の代金回収により売掛金が603,012千円、前事業年度末に仕掛となっていた大型案件の進捗により棚卸資産が135,628千円減少したことによります。固定資産は1,217,016千円となり、前事業年度末に比べ203,034千円増加いたしました。これは主として、事務所賃貸借契約に係る資産除去債務に対応する除去費用の単価見直しにより建物附属設備が137,984千円、遠隔作業支援システムの導入によりリース資産が29,160千円増加したことによります。

 この結果、総資産は6,515,580千円となり、前事業年度末に比べ48,850千円増加いたしました。

 

(負債)

 当事業年度末における流動負債は3,061,569千円となり、前事業年度末に比べ335,593千円減少いたしました。これは主として、テクニカルセンターの移転、拡充に伴う工事費用で未払金が80,403千円、翌期稼働となるソリューション案件の調達増加に伴い買掛金が65,425千円増加したものの、短期借入金300,000千円の返済、メディコムハード保守契約の契約方式切り替えに伴い前受金が101,196千円、納税に伴い未払法人税等が69,221千円減少したことによります。固定負債は1,539,469千円となり、前事業年度末に比べ95,167千円増加いたしました。これは主として、事務所賃貸借契約に係る資産除去債務に対応する除去費用の単価見直し等により資産除去債務が63,280千円、退職給付引当金が33,412千円増加したことによります。

 この結果、負債合計は4,601,038千円となり、前事業年度末に比べ240,425千円減少いたしました。

 

(純資産)

 当事業年度末における純資産合計は1,914,541千円となり、前事業年度末に比べ289,276千円増加いたしました。これは当期純利益410,621千円及び剰余金の配当125,580千円によるものであります。

 この結果、自己資本比率は29.4%(前事業年度末は25.1%)となりました。

 

②経営成績の状況

 わが国経済は、2024年3月の政府の月例経済報告によると、景気はこのところ足踏みもみられるが、緩やかに回復しているとあります。2023年5月には、新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けが5類感染症に移行し、3年ぶりに対面や移動の制限がなくなる等、様々な制限が緩和され、それに伴いインバウンド需要は大幅に回復しました。春闘での定昇込み賃上げ率は30年ぶりの高水準となり、企業の高い投資意欲等、前向きな動きがみられました。

 一方、原材料価格やエネルギー価格の上昇、物流コストの増加、円安による輸入品価格上昇等を主要な要因として、機器メーカーによる値上げが続きました。また、先行きのリスク要因をみると、海外景気の下振れリスク等には注意が必要な状況にあります。

 そのような中、コスト増加や労務賃金上昇の価格転嫁に向けた動きが政府主導で推進されております。中小企業庁では、エネルギー価格や原材料費、労務費等が上昇する中、中小企業が適切に価格転嫁をしやすい環境を作り、価格交渉・価格転嫁を促進するため、広報や講習会、業界団体を通じた価格転嫁の要請等を実施しており、今後適正価格での取引が増えていくことを期待しております。

 当社を取り巻くIT市場においては、様々な分野におけるDXが推進され、それに伴い多くの需要がありました。

 2023年4月に47名の新卒社員を迎えスタートした当事業年度は、上期においては、前事業年度下期から引き続き政府が推進する医療DXの皮切りとなるオンライン資格確認の導入が進みました。また、電子カルテ標準化に向けた動きの中で、電子カルテの販売と合わせて病院施設内のネットワーク構築、セキュリティ対策等の需要も増加してまいりました。介護施設においては介護業務支援ソフト、見守りシステムの導入依頼が多くありました。

 GIGAスクール構想を皮切りに推進されている教育DXにおいては、電子黒板の需要、快適な授業環境の実現に繋がる教育機関専用インターネット回線の需要が増えております。その他にも企業、自治体等、DXに関連したソリューション案件が多くあった一年でした。

 また、2024年2月には事業成長及び利益率向上を目指し、昨年3月に実施したIPOで調達した資金により、当社の保守及びソリューションサービスの全社サポート拠点であるテクニカルセンターを東京都江戸川区臨海町に移転、拡充し業務を開始しました。

 この結果、当事業年度の業績は、売上高16,145,670千円(前年同期比1.2%増)、営業利益627,159千円(同16.7%減)、経常利益634,787千円(同16.7%減)、当期純利益410,621千円(同14.7%減)となりました。

 営業利益、経常利益、当期純利益が前年を下回った要因は、機器の調達遅れ及び顧客都合による作業延期等が発生し、第4四半期に計画していた利益率の高いソリューション案件の納品が翌期となったこと、パソコンとその周辺機器販売の比重が増加し仕入原価が想定以上に増加したこと、また、売上高増加に伴い出張費等が当初予想よりも増加したこと、事業の維持、拡大の基盤である人材確保のため採用活動を積極的に行い、2024年新卒社員77名(前期47名)、中途社員30名(前期24名)を採用した結果、採用費等が増加したことによるものであります。

 セグメントの業績は、次の通りであります。

 なお、「セグメント利益」は、本源的な事業の業績を計るために、本社管理部門の販売費及び一般管理費配賦前の営業損益を示しており、各報告セグメントの全社への貢献を明確化した利益指標であります。

 

 保守サービス事業

 保守サービス事業では、ウィーメックス株式会社(PHC株式会社メディコム事業部とPHCメディコム株式会社が2023年4月に統合)の製品である、全国の医院・クリニックに導入されているメディコム(レセプトコンピュータ、電子カルテ)をはじめ、調剤薬局に導入されている薬歴システムや錠剤包装機、病院に導入されている注射薬払出システムや適温配膳車等の保守サービスを提供しております。

 事業の主軸であるウィーメックス株式会社製電子カルテシステム、レセプトコンピュータの保守は、既存顧客の機器リプレース時に契約形態を当社と顧客がメディコムハード保守契約を直接締結する方式から、顧客とウィーメックス株式会社が保守契約を締結し、ウィーメックス株式会社から当社がハードに係る保守を受託し保守料を受領するシステムサポート契約方式への切り替えが進んだため、売上実績は減少傾向にあります(図1)。一方でこの契約方式になることで、これまで未契約であった顧客との契約締結が促進されていることから、契約件数は増加傾向にあり、利益は増加しております。また、ウィーメックス株式会社以外では、既存取引先であるメーカーからの保守エリア拡大要請、新規取引先からの保守やヘルプデスク等の運用保守依頼、さらに2023年3月期下期及び2024年3月期上期にソリューション事業において設置展開したオンライン資格確認機器等の保守受託もあり、事業全体は順調に成長しております。

 この結果、当事業年度の業績は、売上高4,750,124千円(前年同期比4.2%増)、セグメント利益778,354千円(同10.3%増)となりました。

 

(図1)

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 ソリューション事業

 ソリューション事業では、主要取引先である日本電気株式会社、KDDI株式会社をはじめ、全国の企業、官公庁からの依頼により、IT機器の販売、設計・構築、設置展開作業を受注しております。

 当事業年度は、政府による医療DXの基盤となる2023年4月より義務化されたオンライン資格確認の導入のための、保険医療機関・保険薬局への顔認証付きカードリーダーの設置作業依頼が前事業年度に続き多くありました。また、電子カルテ標準化に向けた動きの中で、電子カルテの販売と合わせて病院施設内のネットワーク構築、セキュリティ対策、AIを活用した検査機器の導入作業等の需要も増加しました。その他、介護機器の導入やデジタル化に利用できる助成金・補助金である介護ロボット導入活用支援事業補助金、ICT導入支援事業補助金、IT導入補助金を活用した介護施設におけるDXの支援にも注力し、機器の導入案件が増加しました。

 教育DXにおいては、電子黒板の需要、快適な授業環境の実現に繋がる教育機関専用インターネット回線の需要が増加傾向にあり、学校、専門学校、教育委員会等から機器の販売やネットワーク構築の依頼が多くありました。

 この結果、当事業年度の業績は、売上高9,248,112千円(前年同期比0.4%増)、セグメント利益718,137千円(同17.0%減)となりました。原材料費、労務費等の上昇に伴い、原価が上昇したため、セグメント利益は前期比で減少する結果となりました。

 

 人材サービス事業

 人材サービス事業では、NECフィールディング株式会社へのカスタマエンジニア派遣、KDDI株式会社へのシステムエンジニア派遣、提案書作成等の業務請負、その他企業へもエンジニアを派遣しております。2024年3月31日時点で257名が従事しており、第2四半期以降、教育、研修を終えた新卒社員の派遣が開始し、前事業年度と比較して派遣者数は増加しております。

 当事業年度は、既存取引先からの要請により新たに空港や介護施設への派遣を開始しました。

 当事業年度は若手社員の比率が大きいため売上高は前事業年度と比較して減少しております。また、継続的な交渉により、2025年3月期からの派遣単価の増額が決定いたしましたが、当事業年度は賃上げによる影響があり、セグメント利益は減少しております。

 人材サービス事業への需要は多くありますが、それに応える人員を確保できていないことが課題となっております。

 この結果、当事業年度の業績は、売上高2,147,433千円(前年同期比1.4%減)、セグメント利益309,185千円(同2.8%減)となりました。

 

③キャッシュ・フローの状況

 当事業年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という)の残高は1,509,381千円となり、前事業年度末に比べ579,787千円増加いたしました。

 なお、当事業年度における各活動によるキャッシュ・フローは以下のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動による資金は、1,134,931千円の増加(前事業年度は、401,526千円の減少)となりました。これは主として、税引前当期純利益634,777千円の収入、オンライン資格確認端末導入等大型案件の代金回収に伴う売上債権の減少による収入624,052千円、前事業年度末に仕掛となっていた大型案件の進捗に伴う棚卸資産の減少による収入135,628千円があったことによります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動による資金は、114,046千円の減少(前事業年度は、29,778千円の減少)となりました。これは主として、調剤監査システムaudit-iデモ機の購入及び関西支店レイアウト変更等に伴う有形固定資産の取得による支出33,728千円、主に品質管理システムの入れ替え(7月稼働予定)に伴う無形固定資産の取得による支出27,776千円、テクニカルセンターの移転等に伴う敷金の差入による支出54,213千円があったことによります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動による資金は、441,097千円の減少(前事業年度は、439,905千円の増加)となりました。これは主として、短期借入金300,000千円の返済、配当金の支払い125,283千円があったことによります。

 

④生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

該当事項はありません。

 

b.受注実績

 当社で行う事業は、提供するサービスの性格上、受注実績の記載になじまないため、当該記載を省略しております。

 

c.販売実績

 当事業年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当事業年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

前年同期比(%)

保守サービス事業(千円)

4,750,124

104.2

ソリューション事業(千円)

9,248,112

100.4

人材サービス事業(千円)

2,147,433

98.6

合計(千円)

16,145,670

101.2

 (注)1.セグメント間の取引については発生しておりません。

2.最近2事業年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。

相手先

前事業年度

(自 2022年4月1日

 至 2023年3月31日)

当事業年度

(自 2023年4月1日

 至 2024年3月31日)

金額(千円)

割合(%)

金額(千円)

割合(%)

ウィーメックス株式会社 (注)1

2,074,030

13.0

2,489,070

15.4

KDDI株式会社

1,356,650

8.5

1,335,351

8.3

 (注)1.ウィーメックス株式会社は、PHC株式会社メディコム事業部とPHCメディコム株式会社が2023年4月に統合し、設立された新会社です。前事業年度の金額は当時のPHC株式会社への販売実績を記載しております。

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

 経営者の視点による当社経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

 なお文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものであります。

 

①重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この財務諸表の作成にあたりましては、経営者が採用した会計方針及びその適用方法並びに経営者によって行われた見積りや評価が含まれております。これらの見積りにつきましては、過去の実績等を勘案して合理的に判断しておりますが、不確実性を伴うため、実際の結果はこれらとは異なる場合があります。
 詳細につきましては、「第5 経理の状況 1 財務諸表等(1)財務諸表 注記事項 重要な会計方針」及び「第5 経理の状況 1 財務諸表等(1)財務諸表 注記事項 重要な会計上の見積り」に記載しております。

 

②経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

a.経営成績等に関する分析

イ.経営成績

 当該事項につきましては、本書の「第2 事業の状況 4.経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ②経営成績の状況」に記載のとおりであります。

 

ロ.財政状態

 当該事項につきましては、本書の「第2 事業の状況 4.経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態の状況」に記載のとおりであります。

 

ハ.キャッシュ・フローの状況

 当該事項につきましては、本書の「第2 事業の状況 4.経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ③キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

 

③資本の財源及び資金の流動性についての分析

 当社の運転資金、設備資金等の所要資金につきましては、営業活動で得られた資金を財源としております。大規模なシステム・整備への投資に伴い資金の不足が見込まれる場合には金融機関からの借入による手当を想定しております。また、ソリューション事業の拡大に伴い、大型案件の商品調達に係る資金需要が見込まれますが、こちらについても金融機関からの借入により所要資金の確保を行ってまいります。

 季節的な変動に伴う資金需要に機動的に対応する為、取引先金融機関2行と当座貸越契約を締結しております。当座貸越枠の合計は1,000,000千円であり、当事業年度において、本契約に基づく当座貸越残高は1,000,000千円となっております。

 また、当社の現金及び現金同等物により、現在必要とされる資金水準を満たす流動性を保持していると考えております。

 当社は前事業年度において、東京証券取引所スタンダード市場へ上場いたしました。その際、新株の発行により161,920千円の資金調達を行いました。調達した資金は、当事業年度に実施したテクニカルセンター拡張のための設備資金に114,215千円を充当いたしました。また、翌事業年度に計画している品質管理システム更新のための設備資金に充当する予定であります。

 

④経営成績に重要な影響を与える要因について

 経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。

 

⑤経営方針・経営戦略等又は経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等の分析について

 経営方針・経営戦略等又は経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標は、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (5)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等」に記載のとおりです。

当社の経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標としては、売上高、セグメント利益を設定し、経営上の目標としております。

 売上高は保守サービス事業、ソリューション事業においてはDX推進により機器の販売案件の増加、それに付随する保守案件の増加等により順調に伸長しておりますが、人材サービス事業は前事業年度にエンジニアの退職が例年よりも多くあった影響が尾を引き、前年同期比98.6%となりました。同様にセグメント利益についても前年同期比97.2%となりました。ソリューション事業においては、パソコン及び周辺機器の販売案件の比重が大きく、また機器代金の値上げにより仕入が増加したこと等が影響し、セグメント利益は前年同期比83.0%となりました。

 

 

5【経営上の重要な契約等】

該当事項はありません。

 

 

6【研究開発活動】

該当事項はありません。