当社の経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。
(1)企業理念、行動基準/行動指針
当社は、「わたしたちはお客様を念(おも)い、仲間を想(おも)い、社会を憶(おも)い、高度情報通信ネットワーク社会のラストワンマイルである人と人との接点に新たな価値を創造していきます。」を企業理念として掲げております。
当社の活動する現場は、人と人との接点の場であり、お客様、仲間、社会それぞれへの思いを大切に活動してまいります。
◆お客様 = 最も大切な存在 『念う(一心に思う)』
◆仲間 = お互いに尊敬しあい、大切にする存在 『想う(感情をこめて思う)』
◆社会 = 深い問題意識を持ちつつ貢献していく 『憶う(深く思う)』
当社の保守サービス事業、ソリューション事業、人材サービス事業の現場は、人と人との接点にこそあります。
医療機関に導入されている電子カルテシステムやレセプトコンピュータ等の機器、あるいは企業に導入されているパソコン、サーバ等のIT機器の設置や保守といった業務は、実際に病院やクリニック、企業に当社の社員が出向いて作業を行います。そこで機器を利用する方々の使用状況を伺いながら、エンジニアの視点からの機器使用についてのアドバイスを行うこと、顧客の要望に応えるべく現場ごとに適切な作業を行うこと、それが高度情報通信ネットワーク社会のラストワンマイルを担う当社に求められた使命であると考えております。
上記企業理念に加えて、以下6項目を行動基準/行動指針として掲げております。
わたしたちは、お客様第一で行動します。
そのために、お客様の期待を超えるサービスを提供します。
わたしたちは、プロフェッショナルとして行動します。
そのために、日々の研鑽を怠らず、スキルの習得に努めます。
わたしたちは、チャレンジ精神で行動します。
そのために、前向きに努力し、常に挑戦し続けます。
わたしたちは、コンプライアンス意識をもって行動します。
そのために、ルールを正しく理解し厳守します。
わたしたちは、チームワークを大切に行動します。
そのために、仲間の個性と価値観を尊重します。
わたしたちは、社会貢献を喜びとして行動します。
そのために、社会の一員として責任を果たします。
これらを実現することにより、法令を遵守した継続的かつ安定的な企業成長を目指し、社会的責任を果たしてまいります。
(2)経営環境
当社の事業領域である国内IT市場の2025年は、前年比9.7%増の27兆8,593億円、2024年~2029年の年平均成長率は6.4%と予測されております。2025年は、原材料価格高騰、人件費高騰によって一部の産業分野の企業で影響がおよんでいるものの、各産業分野の企業、公的部門で生産性向上や企業成長を図るためのデジタル化の取り組みが進められています。(出典:IDC、国内IT市場産業分野別/従業員規模別/年商規模別/地域別予測、2025年~2029年、Doc#JPJ52157925、2025年5月)
当社が約50年にわたって関わりのある医療分野においては、マイナンバーカードの健康保険証利用の本格運用を始めとした医療DXの推進が引き続き政府主導で進められることや、2024年に施行された医療機関の労働時間上限の規制により多くの病院やクリニックで医療従事者不足への対応策が課題となっており、IoTやAIを活用した診療の効率化やミス防止のための取り組みが増えています。また、サイバー攻撃への対応の強化も図られており、IT支出は2025年以降増加していくと予測されております。
2025年10月に「Windows10」のサポート終了が予定されていること、GIGAスクール構想(文部科学省の取り組みにより2020年~2021年にかけて小中学校へパソコンやタブレット端末が配備された。)第2期(NEXT GIGA)における更新需要により、2025年のPC市場は大幅に拡大することが予測されており、当社においてもパソコン等端末やその周辺機器の販売、キッティング作業の依頼などが増加すると考えております。
また、官公庁におけるデジタルガバメント政策では、既存システムの刷新、業務のデジタル化が加速しており、2025年だけではなく2026年以降も継続的なIT支出が予測されております。
各分野においてデジタル化が推進されることにより、データが爆発的に増加し、それによりインフラストラクチャの拡張需要もますます増加することが考えられます。
このようにDXの進展に伴いIT人材の需要が増加する一方、経済産業省の調査では、2030年には全体需要が129.7万人から192.0万人に対し、16万人から79万人の人材不足が予測されており、(経済産業省ホームページ https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/jinzai/houkokusyo.pdf 2019年3月時点データ)IT人材不足が深刻な課題となっております。これにより当社の人材サービス事業では、今後もCE、SEの派遣需要が増加することが見込まれます。
当社は引き続きDXを推進する医療機関・企業等を全面的にサポートし、成長を図ってまいりたいと考えております。
(3)経営戦略
当社は、2024年7月に新中期経営計画を発表いたしました。DX改革の一翼を担い、事業の成長を継続し、ステークホルダーの期待に応えていくことを目標と定め、総合ITソリューション企業を目指し、ITネットワーク技術と全国ネットワークの強みを活かし、DXを推進する医療機関、企業を全面的にサポートすることを宣言しております。
新中期経営計画1年目は、医療DXの一環である訪問看護ステーション向けオンライン資格確認用機器の導入推進を始め、様々な分野におけるDX推進をサポートし、前期比で増収増益の実績を残すことができました。最重要テーマとして定めた「成長と収益力向上」への取り組みは、一定の成果を出すことができ、また事業間シナジーを活かした事業基盤拡大についても、ソリューション事業から保守案件受託が順調に進み、着実に進展しております。
国内IT市場において、DXが推進される中、経営環境は極めて良好であると考えております。今後も引き続き、取引先企業の成長を更に支援し、新たな付加価値を提供できる会社であり続けるため、一層の変革を進めるべく、事業セグメントごとに戦略を立てております。
保守サービス事業における当社の強みは、全国9支店、49営業所に社員を配置した全国ネットワークを有していることと、それにより全てのエリアにおいて同一品質でのサービスを提供できるということがあります。
人材不足の市場において、保守サービス事業からの撤退を検討する企業が増える中、当社は保守サービス事業からスタートしたため体制が整っていることと、ソリューション事業とのシナジー効果もあり効率化が図れていることから、コスト面でも競争力があると考えております。
上場により認知度が上がったことによる問合せ件数の増加や、テクニカルセンターをショールーム化し、保守を見える化したことによる取引先からの新たな保守業務の依頼、営業力強化の取り組みにより、保守サービス事業は毎年堅調に成長しております。
医療分野における保守については、長年の保守実績とその品質を評価され、医療機器メーカー等からの問合せが増えております。医療機器修理業許可の取得やエンジニアのスキル教育等により、対応できる機器の種類は毎年拡大しております。
これら多くの需要に対応するに当たり、業務効率化及び品質の平準化を目指し、2023年度よりスマートグラスを用いた遠隔支援システムを導入いたしました。従来の保守作業においては、その機器の保守対応に長けたエンジニアのみを選定しアサインしており、それにより特定のエンジニアに業務が偏り、移動時間等の都合により1日に対応できる件数に制限がありました。遠隔支援システムを導入することにより、テクニカルセンターあるいは各拠点の管理者やスキル習熟者からの支援が可能となり、エンジニアの効率的なアサインが実現します。今後活用機会を増やしていくことにより、業務効率が向上し、延いては利益率の向上に繋がると考えております。また、技術資料、マニュアル、作業チェックシート等の電子化を進めると共に、業務報告書等の事務処理等の業務プロセスの更なる効率化を目指し、2024年7月には品質管理システムを刷新いたしました。
今後も引き続きこれらの取り組みを強化し、新規取引先を拡大してくと共に、ソリューション案件からの保守受託も引き続き目指しながら、当社の安定基盤として拡大を図ってまいります。
ソリューション事業では、様々なDXが推進される中で、当社の700名を超えるエンジニアのオンサイト作業実績を評価いただいており、新規取引先はもちろん、大手企業との長年のリレーションの中で、当社の技術力を期待して大型の官公庁案件等の協業の機会も増えてまいりました。
今後も営業力を更に高め、パートナー各社とのグリップを強化するとともに、エンジニアのスキルアップにより対応できる作業範囲を広げていくことで、事業の成長を図ってまいります。
ソリューション事業の拡大はシナジー効果により保守サービス事業の拡大、延いては事業基盤の拡大にもつながるため、当社の成長ドライバーとして特に注力してまいりたいと考えております。
人材サービス事業では、社内教育により公的資格やベンダー資格(ネットワークスペシャリスト、CCNA、LPI、CompTIA等)の取得を促進しております。これらの資格を有することで、企業からの派遣要請にスムーズに対応できております。また、派遣先である空港や企業において、当社のエンジニアの実績が評価され、追加の派遣要請も順次あることから、絶えず予備人材を確保することにより、機会損失の軽減を図ってまいります。
(4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
①価格転嫁と収益率の改善のための取り組み(適切な外注費コントロール)
物価上昇が続く中、当社にとって価格転嫁は重要な課題であると捉えております。2024年3月期は、メーカーの人件費増加に加え、円安で外国製品や部品の輸入費用が膨らんだ結果、パソコン及びその周辺機器の値上げが段階的に行われ、利益減少の要因ともなりました。前事業年度は仕入原価や販管費の増加分を適切に転嫁するための活動に取り組み、一定の成果を上げることができましたので、今後も継続してまいりたいと考えております。
一方で、自社内で対応できない工事案件の比重が増え、それに伴い外注費が増加したことから、当初想定していた利益率には及びませんでした。今後も同様の電気通信工事に係る案件は増加していくことが期待されることから、自社内のエンジニアのスキル向上等の取り組みも含め、適切な外注費コントロールを図ってまいります。
また、収益率改善のために、スキル教育、研修の実施によるエンジニアのスキルアップや遠隔支援システムの活用により生産性向上に取り組んでまいります。
②生産性向上のためのシステムの見直し
当社が今後生産性の向上を図るには、業務の効率化が必要であると考えております。現在、営業支援システムを利用して日々の営業活動、案件の管理を行っておりますが、更なる効率化を目指し、システムの機能の拡充や他のシステムとの連携による効率化を図るなど、社内のDX推進にも取り組んでまいります。
当事業年度においては、テクニカルセンターにおいてAIを活用したコール情報要約システムの試験導入を検討しております。
③優秀な人材の採用と育成、従業員エンゲージメントの向上
DX推進ニーズが高まる一方で直面する課題としてIT人材不足があります。中途採用やスタートアップ企業との連携により、自社内でDXを推進する人材の育成に着手し成果をあげている一部企業を除き、人材不足がDXの推進を停滞させる要因の一つになっております。このような環境において、今後SE、CE派遣の需要が増加していくことが予想されます。取引先企業からの要請に対して速やかに適切な人員を派遣することが、人材サービス事業の安定的な成長に繋がることから、事業の要となる人材の採用と育成が重要な課題と認識し、採用活動を強化しております。その一つの取り組みとして、近年は大学就職活動支援を実施しております。具体的には、当社人財開発推進室が自己分析、業界職種研修、企業面接対策、ビジネスマナー講座や、就職に有利な技術スキル習得のためのITパスポート、Microsoft Office Word Specialist、Microsoft Office Excel Specialist等の資格の研修を、要請のあった大学の学生に対して提供しております。受講した学生からは非常に高い満足度評価を得ており、研修を実施した大学からの新卒応募が増加しております。
当社入社後、社員にはビジネスマナー等の基礎教育からスタートし、IT基礎教育、派遣予定先企業での業務を踏まえての取扱機器の実機研修やネットワーク構築基礎教育、公的資格取得研修等、入社後約3ヶ月でエンジニアとして活躍できるITエンジニア育成プログラムを用意しております。
また、全国に拠点があることを生かし、Uターン、Iターン、Jターン希望にジョブローテーションを活用して応えていくことで、従業員がライフスタイルに合わせて長く働ける環境を作っていきたいと考えております。
当社にとって人材は事業の維持、拡大の基盤であるため、人材の採用はもちろん、従業員エンゲージメントの向上が全社的な課題であると考えております。当事業年度においてはES(従業員満足度)向上委員会を立ち上げ、ESアンケート実施に留まらず、現場の声を直接吸い上げる機会を定期的に設ける等の活動をいたしました。その結果、離職率の低下という成果を上げております。そのような中、2025年春季生活闘争の第4回回答集計結果は、5.37%と、昨年同時期を上回っております。人材不足の市場において、大手企業を中心に初任給の引き上げが進んでおります。当社においては、定期昇給、ベースアップと併せて、賞与支給額を基本給の3か月分から4か月分に増額することを計画しております。また、ES向上委員会の活動を継続し、更なるエンゲージメント向上に努めてまいります。
当社の強みの一つに、24時間365日オンサイトサービスがあります。夜間にシステムのトラブルが発生した場合でも電話による相談受付やエンジニアが駆けつけるサービスを提供しております。前事業年度はテクニカルセンターに夜間当番センターを立ち上げました。これは夜間の問合せやオンサイトの要請を集約することにより、エンジニアの負担軽減を図ることを目的としております。東京を中心にスタートしたこの体制を他のエリアに拡大していくことは、ESの向上にもつながると考えておりますので、今後取り組みを継続してまいりたいと考えております。
④エンジニアのスキルアップと活用
ソリューション事業の成長、特に利益率の向上には、より高度なスキルを必要とする案件に対応できるよう、エンジニアのスキルアップが必要と考えております。当社のエンジニアは、多種多様な現場作業案件に携わることで、機器の保守から導入設計、設置展開等マルチなスキルや対応力を身に付けておりますが、今後はネットワークやサーバの設計、開発、提案等といった分野にも業務を拡大できるよう、テクニカルセンターを中心にSEの専門部隊を設置し、経験豊富なSEを中心としてOJTを兼ねた高レベルな案件対応や技術支援を行い、スキルアップを図っております。また、定期的にネットワークスキル資格取得のための教育研修を実施しており、これにより全世界共通のネットワークスキルを証明するシスコ技術者認定CCNA、CCNP Enterpriseや、IT運用スキルを証明するCompTIA A+等の資格を取得するエンジニアが増えております。
下記は当社従業員が保有する資格の一例とその保有人数です。(2025年4月30日時点)
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IPA ネットワークスペシャリスト試験(NW) |
8名 |
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IPA 応用情報技術者試験(AP) |
14名 |
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CompTIA Project+ |
2名 |
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CCNP Enterprise |
3名 |
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CCNA |
85名 |
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CompTIA A+ |
25名 |
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CompTIA CySA |
1名 |
人材サービス事業において、派遣に際して上記資格を有することがエンジニアの条件として求められることが多々あるため、今後も求められる必要な技術の教育及び資格取得促進に向けた制度の確立を行ってまいります。
⑤医療機器修理業受託のための体制整備
医療機器修理の分野に進出することで、既存のレセプトコンピュータや電子カルテだけではなく、その他病院、診療所内のネットワークに繋がる全ての機器やシステムの保守を当社が一括して受託することが可能となり、結果として全導入機器のヘルスチェックや予防的対策も可能となります。この実現には社内体制の強化も必要であり、医療機器修理業の全国エリアでの許可取得と、エンジニアのスキルアップを図ってまいります。
⑥リソースコントロール
当社の経営資源は「人」であります。当社では利益拡大のために人的リソースの有効活用に取り組んでおります。当社が受託する全国規模の大型案件は本社及びテクニカルセンターを中心に全拠点のリソースを管理しながら対応しております。特にソリューション事業では、年度末に案件が集中する傾向があり、全国規模の案件と各拠点で受託した個別案件と通常業務が重複することにより人員不足となり、急遽外注によりリソースを確保せざるを得ない状況が発生する場合があります。テクニカルセンターが中心となり、案件管理及び支店間の支援体制を組み、リソースコントロールを実施することで、内製化を進め、それにより業務効率化を図ってまいります。
⑦パートナー企業とのグリップ強化
日本電気株式会社、KDDI株式会社をはじめとする、継続的に取引のある企業からの受注拡大のため、機会損失のない営業体制を構築、強化してまいります。
⑧品質の向上、効率化の実現
サービス品質の向上は、顧客の当社に対する信頼性を高めることに繋がります。品質管理システムを活用し、全社的なサービスレベルの底上げと更なる業務効率化を目指すべく、2024年7月には品質管理システムを刷新いたしました。
⑨財務上の課題
現在、運転資金は自己資金で賄えておりますが、大規模なシステム・整備への投資等を行った場合、運転資金が不足する可能性があります。その手当として金融機関からの借入を想定しております。
(5)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社の経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標としては、売上高、セグメント利益及び営業利益率を設定し、企業規模の拡大、企業価値の向上を目指しております。
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項目 |
前事業年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
当事業年度 (自 2024年4月1日 至 2025年3月31日) |
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売上高 |
全社 |
16,145,670 |
16,904,476 |
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(千円) |
保守サービス事業 |
4,750,124 |
4,923,593 |
|
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ソリューション事業 |
9,248,112 |
9,815,785 |
|
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人材サービス事業 |
2,147,433 |
2,165,097 |
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セグメント利益 |
保守サービス事業 |
778,354 |
873,014 |
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|
ソリューション事業 |
718,137 |
789,532 |
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(千円) |
人材サービス事業 |
309,185 |
304,061 |
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調整額※1 |
△1,178,518 |
△1,278,916 |
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営業利益 |
627,159 |
687,690 |
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営業利益率 |
3.9% |
4.1% |
※1 セグメント利益の調整額は、報告セグメントに配賦していない本社費用であり、本社管理部門に係る人件費、
不動産賃借料等の販売費及び一般管理費です。
当社のサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものです。
地球環境問題、人権、従業員の健康や労働環境への配慮および公正・適切な処遇、取引先との公正・適正な取引、自然災害への危機管理等、サステナビリティをめぐる課題への対応は、リスクを減少させるだけでなく企業の持続可能性と企業価値の向上にもつながる重要な経営課題と認識しております。このような認識の下、これまで当社は以下のとおり取り組んでまいりました。
(1)ガバナンス
当社では常勤取締役と執行役員を構成員とするESG委員会を2024年1月より設置いたしました。サステナビリティについての戦略の立案、目標の設定等はこの委員会の中で行っています。活動内容については取締役会に報告されており、適宜必要な指示・助言を受け、活動を推進していきます。
当社は、倫理的措置の遵守に関する方針を全従業員に周知し、不適合事象の報告を奨励しています。匿名通報を含む複数の手段を整備し、通報や懸念を提起した従業員が不利益を受けない環境づくりに努めています。
従業員の健康や労働環境については、安全衛生委員会において、労働安全衛生に関する状況の把握と対策に取り組んでいます。適宜、担当取締役により他の取締役に情報が共有され、必要に応じて取締役会において報告がなされ、モニタリングが行われています。
(2)戦略
①環境との共生
CO2排出量の削減への取り組みとして、社有車のエコカー導入の推進とPC等のリユースを中心としたLCMサービスの展開を行ってまいります。また、テナントビル会社と連携し、再生可能エネルギー適用率向上を推進します。
②インクルージョン、ダイバーシティの推進(人材の多様性を含む人材育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針)
当社の経営資源は「人」であります。引き続き従業員の職制や社歴に応じた教育・研修を実施し能力開発に努めるほか、すべての従業員がその持てる力を十分に発揮できる環境を整えるべく、従業員のエンゲージメントの向上に力を入れてまいります。働きやすい職場環境の整備を進め、ES(従業員満足度)アンケートの結果を積極的に活用してまいります。
また、ダイバーシティ推進の一環として女性活躍を進めてまいります。そのためにも働きやすい職場環境の整備は重要であると考えております。
③健康と安全
当社は、全従業員に対し、差別や非人道的な待遇のない安全・清潔な職場環境を提供し、適正な賃金と福利厚生により健康と経済的安定を支援しています。また、定期的な監査により危険要因を特定・対処しています。必要に応じて保護具や訓練を提供し、従業員の安全確保とリスク低減に努めています。これらの取り組みは継続的に見直しを行っています。
④情報保護
当社は、情報セキュリティ基本方針に基づき、提供するサービスにおいて取り扱う情報資産(顧客情報、社内データ、情報システム等)を保護対象とし、不正アクセスや情報漏洩を防ぐための対策を継続的に実施しております。また、従業員に関する個人情報を適切に管理・保管するとともに、全従業員に対して情報セキュリティに関する教育を行っています。加えて、個人情報保護に関する法令・ガイドライン等を遵守し、情報セキュリティマネジメントシステムの見直しと改善に継続的に取り組んでおります。
(3)リスク管理
当社では、リスク管理規程を定め、リスク管理を推進する組織としてコーポレートスタッフ統括ユニット長を委員長とするリスク管理委員会を設置しております。構成員は常勤取締役のほか、統括ユニット長及び委員会が指名する者となっています。同委員会では気候変動リスクや自然災害リスクを含む経営リスク全般の洗い出しや評価、対応策の審議を行うものであり、必要に応じて取締役会に報告することとしています。
今後は、お客様に満足いただけるサービス品質の維持・向上のため、人材の確保・育成に係るリスクの低減に向けた取り組みを進めるとともに、リスクを具体化、細分化して対策を進めてまいります。
(4)指標及び目標
当社では、(2)の①と②で掲げた戦略に対応し、次の指標を用いております。当該指標に関する目標及び実績は、次のとおりであります。
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指標 |
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当事業年度実績 |
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1.社有車におけるエコカー(HV車、EV車)の割合 (注)1 |
25%以上(100台以上) |
22.6%(85台/376台) |
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2.LCMサービスによるPC等のリユース及びリサイクルの推進事業 |
6件 |
3件 |
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肯定率 平均値3.50 |
肯定率 平均値3.08 |
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取得率 |
取得率 |
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(注)1.社有車のリース契約更新の際に約半数をエコカーにすることを目指して設定した目標値です。
2.前事業年度の男性育児休業取得率は20%でした。取得率が前事業年度と同等となった原因として2022年10月の育児休業等期間中の社会保険料免除要件の見直しがあります。目標値はこの影響を加味して設定したものです。社内報における男性従業員の育児休業取得者の紹介や社内研修を行うことにより取得率の向上を図ります。
3.当事業年度末における従業員860人の女性従業員の割合は11.9%(102人)です。また、男性従業員における管理職割合は23.4%(177人/758人パートタイマーの管理職を除く)であり、女性従業員における管理職割合は6.9%(7人/102人)です。将来的には女性従業員における管理職割合を男性従業員に近づける方向で目標値を設定していきます。
当社の事業の状況、経理の状況に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。またリスク要因に該当しない事項についても、投資者の投資判断上重要であると考えられる事項については、投資者に対する積極的な情報開示の観点から開示しております。
当社はこれらのリスク発生の可能性を認識したうえで、発生の回避及び発生した場合の対応に努める方針であります。当社におけるリスク管理を適切に実施、管理するためリスク管理委員会を設置しております。リスク管理委員会については、「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等 (1)コーポレート・ガバナンスの概要 ②企業統治の体制の概要及び当該体制を採用する理由 6.リスク管理委員会」に、リスク管理体制の整備の状況については、「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等 (1)コーポレート・ガバナンスの概要 ④リスク管理体制の整備の状況」に記載しております。
なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであります。
事業戦略リスク
(1)事業環境について(発生可能性:高/影響度:中)
当社が事業展開している市場は、技術革新と変化が激しいため、常に市場に適応した新サービスを提供する必要があります。当社が魅力ある新サービスを提供できない場合、又は競合他社が新たな技術を利用した新サービスを提供した場合、当社サービスのニーズが減少し当社の業績並びに財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。当社では、新たな技術の情報収集と習得に努め、技術革新に対応したサービスの提供と競争力の確保に努めています。
また、当社の保守サービスの料金は、対象機器の障害発生率やSLA(Service Level Agreementの略で、サービスの提供事業者とその利用者の間で結ばれる、サービスのレベル(定義、範囲、内容、達成目標等)に関する合意サービス水準、サービス品質保証)により設定されます。今後クラウドへの移行が進み、使用機器(タブレット等)のセンドバック保守がメインとなり、オンサイトサービスの需要が低下した場合、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性がありますが、当社の保守サービス事業の主要取引先である医療機関等においては、即時対応が求められるケースが多く、オンサイトの需要は今後も継続してあると予測しております。
当社は、業務の効率化と技術力の向上により利益確保と受注拡大に努めています。
(2)経営成績の季節変動性に関するリスク(発生可能性:中/影響度:中)
当社の保守サービス事業、人材サービス事業は、季節による大きな変動はありませんが、ソリューション事業は作業完了時期や機器の納期が年度末に集中することから、年度末に売上が集中する傾向があります。
社内で対応できない事情により作業の完了や機器の調達が遅れた場合、納品が翌期となり当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
そのため当社では、業務の進捗管理を徹底し作業遅延に繋がる事象の早期発見に努めるとともに、協力会社や機器の調達先を多様化し期限内の納品や作業完了に努めています。
(3)主要取引先であるPHC株式会社及びウィーメックス株式会社との関係について(発生可能性:低/影響度:大)
保守サービス事業の中心は当社の主要株主であるPHC株式会社の関連会社であるウィーメックス株式会社製電子カルテシステム、レセプトコンピュータ等及びPHC株式会社製適温配膳車、注射払出機等の保守であります。当事業年度の保守サービス事業の売上高に占める両社製品を使用するクリニックや調剤薬局等の売上割合は59.3%、当事業年度の保守サービス事業の仕入高に占める両社からの仕入割合は37.6%となっております。また、ソリューション事業及び人材サービス事業でも両者へサービスを提供しており、当事業年度の売上高に占めるPHC株式会社及びウィーメックス株式会社の売上割合は16.4%となっております。
このような取引関係にあることから、PHC株式会社には当社普通株式の14.5%を保有いただいておりましたが、PHC株式会社より、同社が保有する当社普通株式について売却の意向を有している旨の連絡を受け、2024年11月15日に自己株式立会外買付取引(ToSTNeT-3)によりPHC株式会社が保有する266,000株全てを自己株式として取得いたしました。これにより、PHC株式会社は当社の主要株主に該当しないこととなりました。なお、当社とPHC株式会社は、株式保有比率にかかわらず、以降も良好な関係を継続しておりますが、仮に関係が悪化するような事態が発生した場合、売上高が減少し、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
当社は、今後もサービス品質の維持向上を図りPHC株式会社及びウィーメックス株式会社の期待に応え、関係維持に努めてまいります。
(4)特定会社への依存について(発生可能性:低/影響度:大)
人材サービス事業の主な顧客はKDDI株式会社、NECフィールディング株式会社の2社であり、当事業年度の人材サービス事業の売上高に占める割合は、KDDI株式会社が32.8%、NECフィールディング株式会社が52.6%となっております。なお、当事業年度の売上高に占めるウィーメックス株式会社、KDDI株式会社及びNECフィールディング株式会社の3社の売上割合は29.7%となっております。
今後上記3社からの受託業務等が、サービス品質や料金等で折り合わず他社に変更される、取引先の経営方針により受託業務等が縮小又は終了される等の事態が生じた場合、売上高が減少し当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
当社は、サービス品質の維持向上に努め受注の継続を図るとともに、新たな取引先を積極的に開拓し特定会社への依存度を低めるよう努めております。
(5)人材サービスについて(発生可能性:低/影響度:大)
当社は、人材サービス事業として労働者派遣事業と委任契約による役務の提供を行っておりますが、派遣するスタッフは無期雇用の従業員であり人件費が固定的に発生いたしますので、派遣先の経営状況や経営方針の変更により派遣及び役務依頼が減少した場合、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。また、顧客ニーズに対応する人材が確保できなかった場合、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
このため当社は、新たな派遣先の開拓に努めるとともに、派遣を終了した従業員が社内で就業できるよう請負業務の受注拡大に努めています。また、技術者の中途採用や社内の教育研修により顧客ニーズに対応する人材の確保に努めております。
(6)事業の許認可と法的規制について(発生可能性:低/影響度:中)
当社の事業を規制する主な法律として、保守サービス事業の特にヘルスケア関連(医療機器修理及び販売)においては「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」(医薬品医療機器等法)、ソリューション事業(電気工事、電気通信工事、古物商)においては「建設業法」及び「古物営業法」、人材サービス事業(労働者派遣)においては「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律」(労働者派遣法)及び「職業安定法」(有料職業紹介事業)があります。
当社は許認可を取得し必要な資格者、責任者等を置き、事業を推進しておりますが、資格者や責任者等が退職する等の当該法令に抵触する事態が生じ営業停止又は許可取消等により事業活動に支障が出た場合、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
許認可に必要な資格者や責任者等が欠員となることが無いよう資格者や責任者等を十分確保する、法令に抵触するような事態が生じないよう社員への教育を徹底する等、事業の許認可と法的規制遵守の体制を強化し
事業を継続してまいります。
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許認可の名称 |
関連法規制 |
有効期間 |
登録交付者 |
取消理由 |
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高度管理医療機器等 |
医薬品医療機器等法 |
6年間 |
各所轄保健所長 |
営業所の構造設備が、厚生労働省令で定める基準に適合しないとき |
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医療機器修理業 |
医薬品医療機器等法 |
5年間 |
各都道府県知事 |
許可行政庁が許可の審査に当たって必要とする事項についての虚偽の記載、記載漏れ等 |
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一般建設業 |
建設業法 |
5年間 |
国土交通大臣 |
許可行政庁が許可の審査に当たって必要とする事項についての虚偽の記載、記載漏れ等 |
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古物商 (許可) |
古物営業法 |
なし |
都道府県公安委員会 |
六月以上の営業の休止、営業所の不確知等 |
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労働者派遣事業 |
労働者派遣法 |
5年間 |
厚生労働大臣 |
労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律に違反したとき |
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有料職業紹介事業 (許可) |
職業安定法 |
5年間 |
厚生労働大臣 |
法令違反や不正行為(虚偽の報告、不適切な求職者紹介、労働条件の明示義務違反等)があったとき |
(7)コンプライアンスについて(発生可能性:低/影響度:大)
万一重大なコンプライアンス違反や法令違反により取引先等との間に問題が生じた場合、損害賠償を請求される、あるいは訴訟を提起されることで、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
当社は、コンプライアンス規程を制定し、教育・研修等により従業員のコンプライアンス意識を高めるとともに、内部通報窓口を設置し、コンプライアンス違反の把握と未然防止に努めております。
(8)人材の確保・育成について(発生可能性:中/影響度:大)
当社事業の中心は人的サービスであり、顧客に満足いただける品質のサービスを提供できる高スキル技術者の確保・育成が、事業の継続と発展を左右するものと認識しております。高い技術を持った人材を確保・育成できなかった場合、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
当社は、事業計画の重要項目の一つとして人材採用と教育研修を位置づけており、採用計画に基づき予算を計上し人材の確保と育成に努めております。
オペレーションリスク
(9)品質管理について(発生可能性:中/影響度:大)
品質面で重大な瑕疵があった場合、取引先への損害賠償や信用失墜による受注の減少等が発生する可能性があります。このような事態が発生した場合、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
このため当社は、業務研修やミーティングにより従業員への業務マニュアルの教育、作業上の注意事項についての周知の徹底を図り、作業ミスの防止と作業品質の均一化に努めております。
(10)内部管理体制について(発生可能性:低/影響度:中)
当社は、今後も事業を拡大し円滑に運営していくためには管理体制の一層の充実を図る必要があると認識しております。管理体制と規程等の適正な整備に努めておりますが、今後、事業規模や人員数等が急激に変化し管理体制の整備が間に合わないような事態が生じた場合、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。今後も当社は、内部管理に必要な人材と要員を迅速適正に配置し管理体制に不備が生じないよう努めてまいります。
(11)自然災害について(発生可能性:低/影響度:大)
地震、津波、台風等の想定外の大規模災害が発生した場合、事務所や設備の損壊、業務システムの停止、従業員の就労不能等により事業運営に支障をきたし、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
このため当社は、自然災害が発生した場合に備え、支店、営業所のハザードマップを確認して具体的な危険度を把握するほか、事業継続計画を策定し社員の安全確保と事業を継続するための社内対応を定めています。
(12)感染症について(発生可能性:中/影響度:中)
当社の事業は顧客先での作業や役務の提供が主であるため、コロナウイルス感染症(COVID-19)のような未知の感染症が世界的に流行し、従業員が当該感染症に感染した場合は、サービスの提供ができず当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
そのため当社は、政府や都道府県等関係機関のガイドラインに沿った感染予防と感染拡大防止策について従業員に周知し、手洗いや消毒の励行、在宅勤務(テレワーク)の導入を実施しております。
(13)システム障害について(発生可能性:低/影響度:大)
当社の事業の遂行にはコンピュータシステムとネットワークが不可欠であり、これらのシステムに障害が発生した場合、業務の一部遅延や停止等、業務に支障が出る可能性があります。これにより取引先からの損害賠償や当社への信頼低下による失注等が発生した場合、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
当社は、社内のシステムトラブルを未然に防止し、障害が発生した場合でも迅速に復旧できるよう社内情報システムの管理部門を置いております。情報システム部門は、常に社内システムとネットワーク機器の稼働状況を監視しており、外部アタックやウイルス等のセキュリティについても対策しています。また、地震や火災等に備え、業務システムサーバを外部のデータセンターに置き、システムの安全を図っております。
(14)情報セキュリティについて(発生可能性:中/影響度:大)
当社の責により顧客からの預かり情報を紛失、あるいは機密とされている情報を漏洩した場合、顧客に重大な損害を与え、多額の損害賠償が発生し、当社の経営成績及び財政状態に大きな影響を及ぼす可能性があります。また、社内の機密情報や個人情報の流失や漏洩は、会社の信用失墜や重大な損害に繋がる可能性があります。ウイルスや外部ハッカーにより社内システムが破壊や使用不能となった場合、業務の停止や遅延等が発生し、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
当社では、ISO/IEC27001が規定する情報セキュリティマネジメント活動を通し、こうした情報リスクへの対策に取り組み、顧客情報、社内情報やハードウェア、ソフトウエア等の情報資産について、その機密性・完全性・可用性の保持を図り情報セキュリティの確保に努めております。
(1)経営成績等の状況の概要
当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
①財政状態の状況
(資産)
当事業年度末における流動資産は5,061,674千円となり、前事業年度末に比べ236,889千円減少いたしました。これは主として、現金及び預金が25,031千円増加したものの、前事業年度末に完了した案件の代金回収により売掛金が128,346千円、前事業年度末に仕掛となっていた大型案件の完了により棚卸資産が138,886千円減少したことによります。固定資産は1,307,955千円となり、前事業年度末に比べ90,938千円増加いたしました。これは主として、2025年10月のWindows10のサポート終了を見据えた段階的な業務用パソコンの入替えによりリース資産が22,035千円、前事業年度より進めてまいりました品質管理システムの更新によりソフトウエアが17,905千円、繰延税金資産が55,433千円増加したことによります。
この結果、総資産は6,369,629千円となり、前事業年度末に比べ145,950千円減少いたしました。
(負債)
当事業年度末における流動負債は3,063,861千円となり、前事業年度末に比べ2,292千円増加いたしました。これは主として、前事業年度に大型案件で調達した商品等の支払いにより買掛金が100,203千円、テクニカルセンターの移転、拡充に伴う工事費用の支払いにより未払金が78,190千円減少したものの、自治体を中心とした保守サービスの増加に伴い前受金が106,422千円、翌事業年度の賞与支給額増額分の積立てにより賞与引当金が94,103千円増加したことによります。固定負債は1,554,942千円となり、前事業年度末に比べ15,472千円増加いたしました。これは主として、役員の退任による退職金の支払いにより固定負債その他が10,633千円減少したものの、2025年10月のWindows10のサポート終了を見据えた段階的な業務用パソコンの入替えによりリース債務が20,849千円、退職給付引当金の積立てにより退職給付引当金が11,566千円増加したことによります。
この結果、負債合計は4,618,804千円となり、前事業年度末に比べ17,765千円増加いたしました。
(純資産)
当事業年度末における純資産合計は1,750,825千円となり、前事業年度末に比べ163,716千円減少いたしました。これは主として、自己株式の取得529,872千円、当期純利益512,872千円、剰余金の配当146,717千円によるものであります。
この結果、自己資本比率は27.5%(前事業年度末は29.4%)となりました。
②経営成績の状況
わが国経済は、2025年3月の政府の月例経済報告によると、「景気は、一部に足踏みが残るものの、緩やかに回復している。」とあります。
2024年の春季労使交渉においては、33年ぶりとなる高水準の賃上げ率となり、所得環境が改善される一方、食料品など身近な物価の上昇が個人消費の伸びを緩やかなものに留まらせています。また、急激な円安、原材料価格高騰、人件費高騰によって一部企業に影響が出ているものの、観光、インバウンド需要は回復傾向にあります。
2024年8月には日経平均株価が前日終値比4,451円と12.4%下落し、1987年10月20日の暴落幅を超え過去最大となりました。2025年1月にはドナルド トランプ氏がアメリカの第47代大統領に就任し、1週間で30を超える大統領令に署名しました。地球温暖化対策の「パリ協定」からの離脱、政府機関における多様性の撤回等の大幅な政策転換を進め、外国からの輸入品に課す「関税」と、アメリカ国内の企業への「減税」によって、貿易赤字の削減や製造業の強化を目指す姿勢を示しています。今後これらの政策が日本経済及び当社に及ぼす影響は不透明であり、注視していく必要があると感じております。
当社を取り巻くIT市場においては、人材不足の中、生産性向上や収益拡大のためのDX推進を目的としたIT支出が拡大しており、それに伴い当社にも多くの需要がありました。
当事業年度は、2024年4月に77名の新卒社員を迎えスタートしました。4月から12月にかけては、医療DXの推進に伴い、訪問看護ステーションにおけるオンライン資格確認用の機器の導入が進みました。また、介護機器の導入やデジタル化に利用できる助成金・補助金である、介護ロボット導入活用支援事業補助金、ICT導入支援事業補助金、IT導入補助金を活用した介護ソフトや見守りシステムの販売も順調に進み、当事業年度において当社の成長を牽引いたしました。また、電子カルテ標準化に向けた動きの中で、電子カルテの販売と併せて病院施設内のネットワーク構築、セキュリティ対策等の需要が増加しており、対応件数の増加が当社エンジニアのスキルアップにもつながっております。
2024年2月に東京都江戸川区臨海町に移転、拡充したテクニカルセンターでは、ショールームとしての機能を活かし、年間71件の見学会を開催し、新規案件の受託に繋がっております。
2024年7月には前事業年度の進捗で明らかになった課題への対策を検討したうえで、最重要テーマを「成長と収益力向上」とした新中期経営計画を発表しました。当社はこの3年間を事業基盤拡大の3ヶ年と位置付けております。初年度である当事業年度においては、医療DX、教育DX、自治体DX、企業DX等の推進に伴う需要に積極的に対応していくことで、着実に事業基盤を拡大してまいりました。
当社の成長は人材が鍵を握ることから、当事業年度においても新卒及び中途社員の採用、教育、エンジニアの育成に注力しながら、従業員満足度の向上にも努めてまいりました。この効果により、当事業年度の離職率は5.9%と、前事業年度から2.6ポイント改善いたしました。また、新中期経営計画に織り込み済みの人的投資の一環として、翌事業年度の賞与支給額を従来の3か月から4か月に増やすべく、賞与引当金の積立て金を増額いたしました。
この結果、当事業年度の業績は、売上高16,904,476千円(前年同期比4.7%増)、営業利益687,690千円(同9.7%増)、経常利益691,573千円(同8.9%増)、当期純利益512,872千円(同24.9%増)となりました。
当事業年度は、第3四半期において中部支店の移転等を、第4四半期において渉外用端末の修理受付拠点として稼働している拠点を、機器の保守終結とともに閉鎖することを決定したため、移転後継続使用しない資産を減損損失として特別損失に計上いたしました。
セグメントの業績は、次の通りであります。
なお、「セグメント利益」は、本源的な事業の業績を図るために、本社管理部門の販売費及び一般管理費配賦前の営業損益を示しており、各報告セグメントの全社への貢献を明確化した利益指標であります。
保守サービス事業
保守サービス事業では、システムのサポート、機器の保守、コールセンター、ヘルプデスクサービス等を提供しております。
事業の主軸であるウィーメックス株式会社製電子カルテシステム、レセプトコンピュータの保守は、既存顧客の機器リプレース時に契約形態を当社と顧客がメディコムハード保守契約を直接締結する方式から、顧客とウィーメックス株式会社が保守契約を締結し、ウィーメックス株式会社から当社がハードに係る保守を受託し保守料を受領するシステムサポート契約方式への切り替えが、当事業年度においても進んだため、売上実績は減少傾向にあります。一方でこの契約方式になることで、これまで未契約であった顧客との契約締結が促進されていることから、契約件数は増加傾向にあり、利益は増加しております。
ウィーメックス株式会社製品の保守以外では、ソリューション事業において設置展開した訪問看護ステーション向けオンライン資格確認用機器の保守件数が増加し、売上が拡大いたしました。また、クリニックや調剤薬局で導入された自動精算機の保守案件の増加、新たな医療機器の保守を一部エリアにて開始したほか、空港内におけるシステムの保守も本格的に全国に拡大いたしました。引き続き既存取引先であるメーカーからの保守エリア拡大要請、小売店ネットワーク機器保守の拡大、医療機器メーカーからの保守やヘルプデスク等の運用保守依頼も増加し、事業全体は順調に成長しております。
この結果、当事業年度の業績は、売上高4,923,593千円(前年同期比3.7%増)、セグメント利益873,014千円(同12.2%増)となりました。
(図1)
ソリューション事業
ソリューション事業では、主要取引先である日本電気株式会社、KDDI株式会社をはじめ、全国の企業、官公庁からの依頼により、IT機器の販売、設計・構築、設置展開作業を受注しております。
当事業年度は、2024年12月に訪問看護ステーションにおけるオンライン資格確認及びオンライン請求が義務化されるのに伴い、導入に必要なレセプト作成用のソフト、パソコン、ネットワーク回線整備の需要が増加し、本社及び全国の拠点において対応してまいりました。また、2025年10月にWindows10のサポートが終了することに伴う、パソコンの新規導入や入替えに係る案件も徐々に増えてまいりました。
また、介護事業所向け介護機器の導入やデジタル化に利用できる介護ロボット導入活用支援事業補助金、ICT導入支援事業補助金、IT導入補助金を活用した介護ソフトや見守りシステムの導入が進みました。
医療DXの推進に伴い、病院における電子カルテ導入及びネットワーク構築の依頼が増えており、それに伴いエンジニアのスキル向上が図れております。更に医療機関におけるネットワークセキュリティへの意識向上に伴い、当社の医療機関向けサイバーセキュリティ対策商品である「MSK@あんしんバックアップサービス」の導入が多くありました。
そのほか、教育DXの推進に伴う電子黒板導入や、教育機関専用インターネット回線「MSK@ひかり」の需要、情報通信量の増加に伴い、低軌道衛星を用いた大容量通信を可能とする「Starlink」の設置工事の依頼も増加しました。
この結果、当事業年度の業績は、売上高9,815,785千円(前年同期比6.1%増)、セグメント利益789,532千円(同9.9%増)となりました。
人材サービス事業
人材サービス事業では、2025年3月31日時点で263名が従事しております。当社エンジニアの努力により既存取引先において、スキルや対応力が評価され、当事業年度において増員の依頼を頂くことができました。この結果派遣従事者数は、前事業年度より6名増加しております。
配置転換や育児休業取得等により、派遣従事者数は第2四半期末日時点よりは減少しておりますが、派遣単金増額の効果により、売上高は前年同期比で増加しております。
IT人材が不足する中、既存及び新規取引先より派遣要請がありますので、今後も継続して採用活動及び派遣従事者のケアに取り組むとともに、ジョブローテーションにより派遣人員の増員を図ります。
この結果、当事業年度の業績は、売上高2,165,097千円(前年同期比0.8%増)、セグメント利益304,061千円(同1.7%減)となりました。
③キャッシュ・フローの状況
当事業年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という)の残高は1,534,412千円となり、前事業年度末に比べ25,031千円増加いたしました。
なお、当事業年度における各活動によるキャッシュ・フローは以下のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動による資金は、921,745千円の増加(前事業年度は、1,134,931千円の増加)となりました。これは主として、税引前当期純利益675,566千円の収入、介護見守りシステム等の期末大型案件代金回収に伴う売上債権の減少による収入106,931千円、前事業年度末に仕掛となっていた訪問看護ステーション向けオンライン資格確認端末導入等の案件の進捗に伴う棚卸資産の減少による収入138,886千円があったことによります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動による資金は、186,750千円の減少(前事業年度は、114,046千円の減少)となりました。これは主として、テクニカルセンターの入居工事及び備品購入等に伴う有形固定資産の取得による支出110,455千円、品質管理システムの入れ替え等に伴う無形固定資産の取得による支出60,069千円、中部支店の移転等に伴う敷金の差入による支出23,205千円があったことによります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動による資金は、709,963千円の減少(前事業年度は、441,097千円の減少)となりました。これは主として、配当金の支払い146,108千円、自己株式の購入による支払534,872千円があったことによります。
④生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
該当事項はありません。
b.受注実績
当社で行う事業は、提供するサービスの性格上、受注実績の記載になじまないため、当該記載を省略しております。
c.販売実績
当事業年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
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セグメントの名称 |
当事業年度 (自 2024年4月1日 至 2025年3月31日) |
前年同期比(%) |
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保守サービス事業(千円) |
4,923,593 |
103.7 |
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ソリューション事業(千円) |
9,815,785 |
106.1 |
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人材サービス事業(千円) |
2,165,097 |
100.8 |
|
合計(千円) |
16,904,476 |
104.7 |
(注)1.セグメント間の取引については発生しておりません。
2.最近2事業年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
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相手先 |
前事業年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
当事業年度 (自 2024年4月1日 至 2025年3月31日) |
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金額(千円) |
割合(%) |
金額(千円) |
割合(%) |
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ウィーメックス株式会社 |
2,489,070 |
15.4 |
2,547,366 |
15.1 |
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KDDI株式会社 |
1,335,351 |
8.3 |
1,270,444 |
7.5 |
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
経営者の視点による当社経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものであります。
①重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この財務諸表の作成にあたりましては、経営者が採用した会計方針及びその適用方法並びに経営者によって行われた見積りや評価が含まれております。これらの見積りにつきましては、過去の実績等を勘案して合理的に判断しておりますが、不確実性を伴うため、実際の結果はこれらとは異なる場合があります。
詳細につきましては、「第5 経理の状況 1 財務諸表等(1)財務諸表 注記事項 重要な会計方針」及び「第5 経理の状況 1 財務諸表等(1)財務諸表 注記事項 重要な会計上の見積り」に記載しております。
②経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
a.経営成績等に関する分析
イ.経営成績
当該事項につきましては、本書の「第2 事業の状況 4.経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ②経営成績の状況」に記載のとおりであります。
ロ.財政状態
当該事項につきましては、本書の「第2 事業の状況 4.経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態の状況」に記載のとおりであります。
ハ.キャッシュ・フローの状況
当該事項につきましては、本書の「第2 事業の状況 4.経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ③キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
③資本の財源及び資金の流動性についての分析
当社の運転資金、設備資金等の所要資金につきましては、営業活動で得られた資金を財源としております。大規模なシステム・整備への投資に伴い資金の不足が見込まれる場合には金融機関からの借入による手当を想定しております。また、ソリューション事業の拡大に伴い、大型案件の商品調達に係る資金需要が見込まれますが、こちらについても金融機関からの借入により所要資金の確保を行ってまいります。
季節的な変動に伴う資金需要に機動的に対応する為、取引先金融機関2行と当座貸越契約を締結しております。当座貸越枠の合計は1,000,000千円であり、当事業年度において、本契約に基づく当座貸越残高は1,000,000千円となっております。
また、当社の現金及び現金同等物により、現在必要とされる資金水準を満たす流動性を保持していると考えております。
④経営成績に重要な影響を与える要因について
経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。
⑤経営方針・経営戦略等又は経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等の分析について
経営方針・経営戦略等又は経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標は、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (5)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等」に記載のとおりです。
当社の経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標としては、売上高、セグメント利益及び営業利益率を設定し、経営上の目標としております。
売上高は保守サービス事業、ソリューション事業においてはDX推進により機器の販売案件の増加、それに付随する保守案件の増加等により順調に伸長しております。人材サービス事業は派遣単金アップの交渉が成功したことにより売上高は前年同期比で増加しましたが、セグメント利益については派遣者の育児休暇取得や休業、人事ローテーション等の影響があり前年同期比98.3%となりました。価格転嫁の交渉等の成果もあり、営業利益率は前年同期比で0.2%改善し、4.1%となりました。
該当事項はありません。
該当事項はありません。