第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)会社の経営の基本方針

 当社は創業以来、理念経営を推進しており、「人が活きる、人を活かす。~人的資本の最大化・最適化・再配置~」をミッションとし、「事業を通じて、新しい価値を創造し、すべての人が活き活きと働く社会創りをめざします。」をビジョンとして掲げております。

 企業を取り巻く環境は大きく変化し、社会の課題解決と新しい価値やイノベーションの創出が求められております。当社グループは、そのような変化に向けて、私達が持続可能な未来に新しい企業価値を提供していくために、当社グループのパーパス(存在意義)をコーポレートステートメント「あらゆる課題は、人で解決する。」に込め、経営の基本方針として、あらゆる企業や組織の課題解決と価値創造のパートナーとして寄り添ってまいります。そして、働く一人ひとりに、柔軟な働き方や自律的なキャリア形成、活躍の場の広がりを提供してまいります。

 

<コーポレートステートメント>

 

「あらゆる課題は、人で解決する。」

 

私たちはこの日本の社会が抱える多くの課題を解決し、新しい価値の創造を促すことで

すべての人が幸福に暮らし、活き活きと働くことができる社会の実現に貢献したいと考えています。

 

そのためには人材を資源(Human Resources)より資本(Human Capital)と捉え、

この国で不足、偏在するコンサルタントなどの高いレベルの専門性と能力を持った人材を最適配置し、

企業や社会の課題解決、価値創造を推進、その価値がシェアされ

循環し続けてゆくような社会をつくる必要があります。

 

そこで当社は課題の発見、解決、さらに新しい価値の創造に答えるため

正社員採用、フリーコンサル、スポットコンサルなどの複合的なサービスを展開。

あらゆる企業や組織の課題解決と価値創造にパートナーとして寄り添うと同時に、

働く一人ひとりに柔軟な働き方や自律的なキャリア形成、活躍の場の広がりを提供しています。

 

これら活動を通じて課題解決につながるコンサルティングがもっと身近になり、

誰もが自由に活用できる世の中となることが、

企業、産業、社会の課題の解決と新しい価値やイノベーションの創出を促し、

この国によりよい未来をもたらすと、私たちは信じます。

 

(2)経営環境及び中長期的な経営戦略

 当社グループの主要顧客である国内コンサルティング市場は、企業のDX等に関わる活発な需要を背景に、今後も成長を維持するものと考えております。また、企業側も優秀な外部人材の活用を模索する動きが進んでおり、従業員の副業・兼業を容認する企業も近年増加傾向にあります。これらのことから、ハイエンド人材領域の人材紹介及びスキルシェアのニーズは今後も高まっていくと考えております。

 このような環境下において、当社グループは成長戦略として、「リカーリングビジネス推進によるスキルシェア及び事業会社向けサービスの拡大」を掲げております。主力であるコンサルティングファーム向けの人材紹介に継続して注力しつつ、市場成長率の高いスキルシェア、成長余地の大きい事業会社向けサービスを拡大させることで、当社グループが蓄積してきたデータベースをさらに充実・拡大させ、その利用率を高め、人材紹介とスキルシェアの複合サービスを効果的且つ効率的に提供してまいります。

 

(3)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

① 成長戦略の推進

 当社グループの成長戦略である「リカーリングビジネス推進によるスキルシェア及び事業会社向けサービスの拡大」を実現するため、次の重点施策に取り組んでまいります。

(a) 副業サービスの強化

 「コンパスシェア」を通じて副業という新たな登録動機を提供することで、従来の転職やフリーランスにおける案件獲得よりも広く人材との接点を確保し、人材データベースの充実を図ります。そのために、「コンパスシェア」のサービスメニューを充実させるとともに、ユーザーの利便性を高め、当社グループの強みを構成する現役コンサルタント及びコンサルティングファーム経験者の登録シェアを高める施策を実施してまいります。

(b) 事業会社を中心としたアップセル・クロスセルの推進

 事業会社向けサービス拡大のため、各サービス間の連携を一層向上させ、ポストコンサルの転職支援を含め、アップセル・クロスセルを可能とする体制の強化を図ります。

(c) マーケティング強化

 当社グループが持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を図るためには、当社グループ及び提供サービスの認知度を向上させ、継続的な顧客の獲得及び人材登録数の増加により、データベースを充実・拡大していくことが重要であります。従来のSNSやウェブ広告による人材獲得施策に加え、企業顧客の獲得のための広告宣伝、コーポレートブランディングや広報活動等を推進し、認知度向上に取り組んでまいります。

(d) システム投資

 リカーリングビジネスをさらに活性化させるためのデータベースの開発と整備、及びサービス拡充のためのシステム投資を実施してまいります。

 

② 持続的な成長のための人的資本投資

 当社グループの事業を牽引する人材の確保と育成は当社グループの成長の礎であり、さらなる事業拡大及び経営体質の強化を図るうえで重要な経営課題であると認識しております。そのため、人材の採用強化及び育成を推進して生産性を高めるとともに、将来の経営を担う中核人材の育成等を進めてまいります。また、従業員がその能力を存分に発揮できるよう、業務効率化や勤務環境の整備等、働きやすい環境づくりを推進し、人的資本の価値最大化に努めてまいります。

 

③ 内部管理体制の強化とコーポレート・ガバナンスの充実

 当社グループは、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を実現するためには、ステークホルダーからの信頼を得ることが不可欠であると考えております。そのため、経営の効率性及びリスク管理能力を高め、財務・非財務情報を適切に開示し、健全性及び透明性を確保できる管理体制の整備を行うことで、内部管理体制の強化及びコーポレート・ガバナンスの充実を進めてまいります。

 

④ 財務上の課題

 財務基盤の安定性を維持しながら、事業上の課題を解決するための事業資金を確保し、新たな事業創出のために機動的な資金調達を実施できるよう、内部留保の確保と株主還元の適切なバランスを模索していくことが、財務上の課題であると認識しております。

 

(4)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 当社グループは、人材紹介及びスキルシェアの複合サービスを展開しており、独自のポジショニングをさらに強固なものとしていくため、売上高を重要な経営指標と位置づけ、目標達成に向けて取り組んでおります。また、事業を継続的に発展させていくためには、収益力を高め、適正な利益確保を図ることも必要であることから、営業利益についても重要な経営指標と位置づけております。これに加え、人材紹介においては入社決定人数、スキルシェアの「フリーコンサルBiz」においてはフリーコンサルタントの稼働人数を各サービスの売上成長を測定する指標として重視しております。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)ガバナンス

 当社グループは、サステナビリティに係る対応を含む経営上の重要な課題について、取締役会等において基本的な方針を審議し、具体的な取り組みに対して実効的な監督に努めております。

 

(2)戦略

 当社グループは、事業を通じて働く一人ひとりに柔軟な働き方や自律的なキャリア形成、活躍の場の広がりを提供することによって、社会課題の解決に取り組んでおります。

 また、当社グループにおける人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針は、「1経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (3)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題 ②持続的な成長のための人的資本投資」に記載のとおりであります。当該方針に基づき、フルフレックスや在宅勤務制度の運用による働きやすい環境づくりへの取り組みや、外部講師を招いた専門性の高い研修の実施などによる人材育成、業務を通じたキャリア形成促進のための人事評価制度の導入など適性と能力に応じて多様な人材が活躍できるよう社内環境整備に努めております。

 なお、気候変動などの環境問題については、当社グループが事業を通じて直接貢献できる範囲が限定されることから、記載を省略しております。

 

(3)リスク管理

 当社グループは、「4コーポレート・ガバナンスの状況等 (1)コーポレート・ガバナンスの概要 ④リスク管理体制」に記載のとおり、コンプライアンス・リスク管理委員会を設置し、主要なリスクの状況に関する定期的なモニタリングや評価・分析などを行っており、その審議・活動の内容を定期的に取締役会に報告する体制により、サステナビリティに係る対応を含む経営上の様々なリスクを管理しております。

 

(4)指標及び目標

 当社グループでは、上記「(2)戦略」において記載した、人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針について、具体的な取り組みとして実行に移しているものの、測定可能な目標は設定しておりません。今後具体的な取り組みが指標として開示できるよう、測定可能な目標の設定の検討を進めてまいります。

 

3【事業等のリスク】

 事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)事業環境の変化に関するリスク

① 経済状況変動・景気変動について

(発生可能性:中、発生する可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中)

 当社グループは、国内において人材紹介及びスキルシェアを展開していることから、国内景気の減速やそれに伴う採用動向が悪化した場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 このリスクへの対応として、景気変動リスクを比較的受けにくいハイエンド人材を中心とした領域でサービスを展開するとともに、多様な業界での取引先開拓を進めております。

 

② 同業他社との競合について

(発生可能性:中、発生する可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中)

 当社グループが展開する人材紹介及びスキルシェアに類するサービスを個別で展開している企業は多数存在することから、今後それら企業による新たな付加価値の提供等により当社グループの競争力が低下した場合には、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 このリスクへの対応を強固なものとするために、当社グループが独自のポジションを築いているハイエンド人材領域における各サービスの機能強化とサービス間の連携向上に取り組んでまいります。またデジタルプラットフォームへの投資等を通じ、データベースを核としたリカーリングビジネスを推進することで、顧客の課題解決に寄り添い、長期的な収益獲得につなげてまいります。

 

③ 自然災害、有事及び未知の感染症等について

(発生可能性:低、発生する可能性のある時期:特定時期なし、影響度:小)

 当社グループの事業拠点の設備については、当社の本社所在地である東京都千代田区にあり、当該地区において大地震、台風等の自然災害及び事故、火災等により、業務の停止、設備の損壊や電力供給の制限等の不測の事態が発生した場合、当社グループの事業活動に支障をきたす可能性があることから、業績に影響を及ぼす可能性があります。また、テロリズム、戦争等の有事や未知の感染症の蔓延が生じた場合には、外出制限による事業活動の停滞、従業員の全面的な在宅勤務への移行等で当社グループの事業活動に支障をきたす可能性があるとともに、業績に影響を与える可能性があります。

 このリスクへの対応として、当社グループでは緊急事態対応規程で緊急事態発生時における対応を予め定めております。また平時より出社勤務と在宅勤務を組み合わせた働き方を取り入れており、緊急事態の発生により全面的な在宅勤務の移行が必要となる場合においても、事業活動が継続できる体制を構築しております。

 

(2)事業活動に関するリスク

① 登録者数・取引先企業数について

(発生可能性:中、発生する可能性のある時期:特定時期なし、影響度:大)

 当社グループの人材紹介及びスキルシェアにおいては、その事業の性格上、登録者の確保が非常に重要であることから、国内における少子高齢化による将来の労働人口の減少、または労働市場の変化等によって、企業からの求人を満足させる人材が確保できない場合には、成約数の減少により当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

 このリスクへの対応として、当社グループではSNS等を活用した広告宣伝により新規登録者を獲得しておりますが、今後より積極的な広告宣伝活動により当社グループの認知度を向上させ、登録者及び取引先企業の確保に努めてまいります。

 

② 特定の取引先への依存について

(発生可能性:低、発生する可能性のある時期:特定時期なし、影響度:大)

 当社グループは、ハイエンド人材領域における人材紹介及びスキルシェアを行っており、コンサルティングファームとの取引が多くなっております。当社グループはコンサルティングファームと良好な関係を構築していると考えておりますが、取引先上位のコンサルティングファームにおける予期せぬ方針の変更や業績不振等により、円滑な取引継続が困難な事態となった場合には、当社グループの事業活動及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。なお、最近2連結会計年度における販売実績の最上位先はPwCコンサルティング合同会社で、各年度の総販売実績に対する割合は第21期連結会計年度 29.1%、第22期連結会計年度 23.8%であります。

 このリスクへの対応として、コンサルティングファーム以外の事業会社向けサービスを拡大することで、相対的に特定の取引先への依存度を低下してまいります。

 

③ 特定の人物への依存について

(発生可能性:低、発生する可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中)

 代表取締役社長 山尾幸弘は当社の創業者であり、経営方針や事業戦略等について、経営の重要な役割を果たしております。現在、当社では同氏に過度に依存しないよう、内部管理体制の整備、人材の育成等体制の整備に努めておりますが、現在の状況においては、何らかの理由により、同氏が当社の業務を遂行することが困難となった場合には、当社の事業活動及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

④ システムトラブル・データ管理について

(発生可能性:低、発生する可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中)

 当社グループは、事業運営において社外のクラウドサービスを利用し情報システムを構築しております。このため、当該クラウドサービスでシステム障害が生じた場合や悪意ある第三者による不正アクセスを受けた場合など何らかのトラブルが発生することにより、当社グループのサービスの運営に障害が生じ、業績に影響を及ぼす可能性があります。

 また、今後デジタルプラットフォームの開発等を進めていく中で、システムに関するリスクが増大していくことが見込まれることから、このリスクへの対応として、定期バックアップの実施や障害発生時の社内体制の構築精度を高めていくとともに、今後ISMS(情報セキュリティマネジメントシステム)認証を取得しリスクを適切に管理するIT統制の実効性向上と内容の充実を図ってまいります。

 

⑤ 機密情報の管理について

(発生可能性:低、発生する可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中)

 当社グループの人材紹介及びスキルシェアは、顧客先において事業戦略策定や業務改革支援、新商品・サービス開発支援、大規模システム構築支援、基幹システム導入支援等に関与・従事しており、機密性の高い情報を取り扱っております。このため、顧客企業の機密情報等の流出が生じた場合には、当社グループに対する社会的信用が損なわれ、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 このリスクへの対応として、当社グループにおいては、全従業員及び業務を委託しているフリーコンサルタントに対して入社・登録時及び定期的に機密情報の取扱いに関する指導・教育を行っております。

 

⑥ コンプライアンス遵守について

(発生可能性:低、発生する可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中)

 当社グループは、関係者の不正行為等が発生しないよう、国内外の法令及び社内規程、ルール等のコンプライアンス遵守を行動基準として定め、内部監査等で遵守状況の確認を行っております。しかしながら、法令等に抵触する事態や関係者による不正行為が発生する可能性は否定できず、これらの事態が生じた場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑦ 労務管理について

(発生可能性:低、発生する可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中)

 労働時間・環境の管理についての労働基準監督署等の調査の結果、当社グループに違反等が認められ、当社グループが行政指導を受けた場合には、当社グループの事業運営に大きな支障をきたすとともに、業績及び財務状況に大きな影響を与える可能性があります。

 このリスクへの対応として、社会保険労務士法人と顧問契約を締結し、人事労務問題全般について助言・指導を受け法令に則り適正な対応を行っております。また、時間外労働時間の管理や年次有給休暇の取得状況については、関係部署に勤怠等の状況を定期的に配信することで違反の未然防止を図るとともに、経営会議で結果を報告することにより、法令遵守に努めております。

 

⑧ 人材の確保及び育成について

(発生可能性:中、発生する可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中)

 当社グループは、事業拡大のために優秀な人材の確保及び育成が重要な課題であると認識しており、当社グループが求める人材を適切な時期に確保、育成ができなかった場合、また、社外流出等の事由により既存の人材が業務に就くことが困難になった場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 このリスクへの対応として、人材の採用強化及び社内研修プログラム等による育成を推進するとともに、多様な働き方を支える人事制度導入に向けて取り組んでいく方針であります。

 

⑨ 内部管理体制について

(発生可能性:低、発生する可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中)

 当社グループは、今後の事業運営及び事業拡大に対応すべく、管理部門の人員を増加していくことで内部管理体制について一層の充実を図る方針であります。しかしながら、事業規模に適した内部管理体制の構築に遅延が生じた場合、当社グループの事業展開及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑩ 大株主について

(発生可能性:低、発生する可能性のある時期:特定時期なし、影響度:小)

 当社の代表取締役である山尾幸弘及び同氏の資産管理会社である株式会社創が、当連結会計年度末現在で発行済株式総数の65.9%を所有しております。同氏は、安定株主として引き続き一定の議決権を保有し、その議決権行使にあたっては、株主共同の利益を追求するとともに、少数株主の利益にも配慮する方針であります。同氏は、当社の代表取締役であることから、当社といたしましても安定株主であると認識している一方、将来的に何らかの事情により同氏により当社株式が売却された場合には、当社株式の市場価格及び流通状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑪ 求職者の自己都合退職による求人企業への返金について

(発生可能性:低、発生する可能性のある時期:特定時期なし、影響度:小)

 当社グループの人材紹介においては、求職者が求人企業に入社後一定期間内に自己都合により退職した場合、紹介手数料の一部を返金する契約を締結しております。何らかの理由により早期自己都合退職者が増加した場合には、返金額の増加により当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

 このリスクに対応するため、当社グループでは転職のその次までをスコープに入れたキャリアパスを、転職希望者のキャリアプランに照らして提案を行っており、求人企業でご活躍いただけるよう努めております。

 

⑫ 転職サイト運営企業の利活用について

(発生可能性:低、発生する可能性のある時期:特定時期なし、影響度:大)

 当社グループでは当社グループのウェブサイトへ直接、会員のご登録いただくほかに、他社が運営する転職サイトを利活用して求職者の転職をご支援しております。このため、何らかの理由により他社が運営する転職サイトが停止または廃止となった場合には、ご支援できる求職者数の減少により当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

 このリスクに対応するため、今後より積極的な広告宣伝活動により当社グループの認知度を向上させ、会員登録者数の増加に努めてまいります。

 

(3)財務活動に関するリスク

① 新株予約権の行使による株式価値の希薄化について

(発生可能性:高、発生する可能性のある時期:数年以内、影響度:小)

 当社グループは役員及び従業員に対し、長期的な企業価値向上に対するインセンティブとして新株予約権を付与しております。このため、現在付与している新株予約権について行使が行われた場合には、保有株式の価値が希薄化する可能性があります。なお、当連結会計年度末現在、新株予約権による潜在株式数は159,510株であり、発行済株式総数及び潜在株式の合計5,078,910株の3.1%に相当しております。

 

② 配当政策について

(発生可能性:低、発生する可能性のある時期:特定時期なし、影響度:小)

 当社は、株主への利益還元を重要な課題として認識しております。現在当社グループは成長過程にあり、財務基盤の安定化のための内部留保の充実を勘案しつつ、事業の拡充や組織体制の整備への投資に充当していくことが株主への利益還元につながると考え、配当を実施しておりません。今後、事業基盤の整備等を進め、財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況を勘案し、株主に対して利益還元策を実施していく方針でありますが、現時点において配当の実施時期等については未定であります。

 

③ 当社株式の流動性について

(発生可能性:低、発生する可能性のある時期:特定時期なし、影響度:小)

 当社は、当社株式の流動性の確保に努めることとしておりますが、株式会社東京証券取引所の定める流通株式比率は2023年6月末時点において28.5%にとどまっております。

 今後は、当社役員等への一部売出しの要請、新株予約権の行使による流通株式数の増加等により流動性の向上を図っていく方針ではありますが、何らかの事情により流動性が低下する場合には、当社株式の市場における売買が停滞する可能性があり、それにより当社株式の需給関係にも悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(4)法的規制・訴訟に関するリスク

① 法的規制について

(発生可能性:低、発生する可能性のある時期:特定時期なし、影響度:大)

 当社グループは、職業安定法に基づいて事業を営んでおり、有料職業紹介事業者として、厚生労働大臣の許可を受けて事業を行っております。本書提出日現在における当該許可にかかる有効期限は、当社が2025年6月30日まで、当社子会社の株式会社ケンブリッジ・リサーチ研究所が2026年5月31日までで、継続して有効期限を適宜更新しております。当社グループは関係法令を遵守して事業を運営しており、現時点において同許可の継続に支障を来す要因は発生しておりませんが、職業安定法第32条の9に定める有料職業紹介事業者としての欠格事由に該当もしくは法令に違反する事項が発生した場合、事業の停止や有料職業紹介事業者の許可の取り消しをされる可能性があり、その場合には当社グループの事業運営に大きな支障を来す結果、業績及び財政状態に大きな影響を及ぼす可能性があります。また、将来これらの法令ならびにその他の関係法令が、労働市場をとりまく社会情勢の変化などに伴って、改正若しくは解釈の変更などがあり、それが当社グループの営む事業に不利な影響を及ぼすものであった場合、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

② 個人情報について

(発生可能性:低、発生する可能性のある時期:特定時期なし、影響度:大)

 当社グループは、事業運営にあたり多くの求職者に関する個人情報を保有しており、何らかの原因により個人情報が外部に流出した場合は、当社グループの信用低下を招くとともに損害賠償請求訴訟の提起等により、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 このリスクへの対応として、「個人情報の保護に関する法律」(平成17年4月施行)の規定に則って作成したプライバシーポリシー等の規程に沿って個人情報を管理し、また、従業員に対する個人情報の取り扱いに関する教育を行い、個人情報の適切な取り扱いに努めております。またプライバシーマークの付与認定取得(当社は2006年10月、株式会社ケンブリッジ・リサーチ研究所は2018年5月に取得し以後2年毎に更新)等、情報セキュリティ対策の強化に取り組んでおります。

 

③ クレーム・訴訟の発生

(発生可能性:低、発生する可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中)

 当社グループは、コンプライアンス研修の推進等、役職員の法令違反等の低減努力を実施しております。しかしながら、当社グループの役職員の法令違反等の有無にかかわらず、取引先、その他第三者との予期せぬトラブル、訴訟等が発生する可能性があり、これらに起因した損害賠償の請求、訴訟を提起される可能性があります。その場合、損害賠償の金額、訴訟内容及び結果によっては、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

 当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

① 経営成績の状況

 当連結会計年度における我が国経済は、新型コロナウイルス感染症に係る制限の段階的緩和により経済活動の正常化が進んだことで、景気は緩やかな回復基調で推移し、雇用情勢にも改善の動きがみられました。一方で、世界的な金融引締め等が続くなか、海外景気の下振れが我が国の景気を下押しするリスクとなっており、物価上昇、金融資本市場の変動等の影響も懸念されるなど、依然として先行きは不透明な状況が続いております。このような環境のなか、企業におけるDX(デジタルトランスフォーメーション)を軸としたビジネスの変革と創造に係るコンサルティング需要が高まっていることや、産業や社会課題の解決に向けた取り組みに活発化の動きが見られることなどから、引き続きハイエンド人材に対する需要が堅調に推移していることを受け、当社グループの主要なビジネスである人材紹介及びスキルシェアともに、経営成績は好調に推移しました。

 この結果、当連結会計年度における当社グループの売上高は4,342,372千円(前期比23.6%増)、営業利益は673,813千円(同34.5%増)、経常利益は644,373千円(同30.6%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は418,802千円(同28.9%増)となりました。なお、当社グループはヒューマンキャピタル事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載を省略しております。

 

② 財政状態の状況

 当連結会計年度末における流動資産は3,349,554千円となり、前連結会計年度末に比べ1,423,059千円増加いたしました。これは主に、新規上場に伴う公募増資及び第三者割当増資等により現金及び預金が1,413,634千円増加したことによるものです。固定資産は148,306千円となり、前連結会計年度末に比べ29,921千円減少いたしました。これは主に、減価償却の進行等により有形固定資産が4,343千円、無形固定資産が3,231千円減少し、繰延税金資産が22,179千円減少したことによるものです。この結果、資産合計は3,497,860千円となり、前連結会計年度末に比べて1,393,138千円増加いたしました。

 当連結会計年度末における流動負債は768,495千円となり、前連結会計年度末に比べ307,187千円減少いたしました。これは主に、1年内返済予定の長期借入金が76,338千円減少、未払金が159,245千円減少及び未払法人税等が40,473千円減少したことによるものです。固定負債は74,833千円となり、前連結会計年度末に比べ91,528千円減少いたしました。これは主に、長期借入金が87,434千円減少したことによるものです。この結果、負債合計は843,328千円となり、前連結会計年度末に比べ398,716千円減少いたしました。

 当連結会計年度末における純資産合計は2,654,532千円となり、前連結会計年度末に比べ1,791,854千円増加いたしました。これは主に、公募増資及び第三者割当増資により資本金及び資本準備金がそれぞれ679,477千円増加し、親会社株主に帰属する当期純利益の計上により利益剰余金が418,802千円増加したことによるものです。

 

③ キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)の期末残高は2,898,956千円(前連結会計年度末は1,485,322千円)となりました。当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりです。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動の結果、増加した資金は221,840千円(前連結会計年度は657,378千円の収入)となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益644,373千円を計上した一方で、法人税等の支払額296,335千円、主に未払金の減少によるその他の負債の減少額131,872千円が生じたことによるものです。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動の結果、減少した資金は11,501千円(前連結会計年度は33,353千円の支出)となりました。これは主に、情報管理システムの改修等に伴う無形固定資産の取得による支出2,256千円、従業員向けPCの購入に伴う有形固定資産の取得による支出8,890千円によるものです。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動の結果、増加した資金は1,203,295千円(前連結会計年度は166,183千円の支出)となりました。これは主に、株式の発行による収入1,358,955千円、新株予約権の行使による株式の発行による収入14,214千円及び長期借入金の返済による支出163,772千円によるものです。

 

④ 生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

 当社の行う事業は提供するサービスの性質上、生産実績の記載になじまないため、記載を省略致します。

 

b.仕入実績

 当社の行う事業は提供するサービスの性質上、仕入実績の記載になじまないため、記載を省略致します。

 

c.受注実績

 人材紹介において該当事項はございません。また、スキルシェアにおいては、受注から売上計上までのリードタイムが短く、事業年度において受注高と売上高に重要な乖離は生じないため、当該記載を省略しております。

 

d.販売実績

 当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2022年7月1日

至 2023年6月30日)

金額(千円)

前年同期比(%)

ヒューマンキャピタル事業

4,342,372

123.6

 (注)1.当社グループはヒューマンキャピタル事業の単一セグメントであります。

2.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。

相手先

前連結会計年度

(自 2021年7月1日

至 2022年6月30日)

当連結会計年度

(自 2022年7月1日

至 2023年6月30日)

金額(千円)

割合(%)

金額(千円)

割合(%)

PwCコンサルティング合同会社

1,022,030

29.1

1,034,382

23.8

アビームコンサルティング株式会社(注3)

589,792

13.6

デロイトトーマツコンサルティング合同会社(注3)

487,640

11.2

3.前連結会計年度の販売実績及び総販売実績に対する割合については、総販売実績に対する割合が100分の10以上ではないため、記載を省略しております。

 

 なお、サービス別売上高は以下の通りです。

サービスの名称

当連結会計年度

(自 2022年7月1日

至 2023年6月30日)

金額(千円)

前年同期比(%)

人材紹介

2,918,104

124.7

スキルシェア

1,424,268

121.4

 

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものであります。

① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づいて作成されており、その作成にあたっては、経営者による会計方針の選択と適用を前提として、資産・負債及び収益・費用の金額に影響を与える見積りを必要とします。当社グループの連結財務諸表の作成にあたり採用した重要な会計方針と会計上の見積りの詳細につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項」の(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)及び(重要な会計上の見積り)に記載しております。

 なお、引当金の計上や資産の評価等の見積りについては、当社グループにおける過去の実績や将来の計画を勘案し判断しておりますが、見積り特有の不確実性が存在するため、実際の結果とは異なる場合があります。当社グループの連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものは以下のとおりであります。

 

(繰延税金資産の回収可能性)

 繰延税金資産は、将来減算一時差異の解消により、将来の税金負担額を軽減する効果を有すると認められる範囲を回収可能性があると判断し計上しております。具体的には、将来の一時差異回収スケジュール、タックス・プランニング及び収益力に基づく課税所得の見積り等に基づいて判断しております。課税所得の見積りは、事業計画を基礎としており、人材紹介の市場動向、正社員採用サービスにおける入社決定数、スキルシェアにおけるフリーコンサルタントの稼働人数を主要な仮定として、将来の収益及び費用の見積りを行っております。ただし、実際の経済環境や損益の状況がこれらの仮定と大きく乖離した場合には、翌連結会計年度以降の繰延税金資産の回収可能性に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

② 経営成績等の状況に関する認識及び分析・結果内容

a 売上高

 当連結会計年度の売上高は、人材紹介及びスキルシェアともに好調に推移しました。人材紹介につきましては、コンサルティングファームの採用需要が高い水準で継続するなか、戦略的なアカウントマネジメントにより、採用意欲が旺盛なクライアントに注力して入社決定人数を伸ばすとともに、採用難易度が高く且つ高年収のコンサルティングファームのマネージャー以上の案件が好調に推移したことが奏功し、売上高は2,918,104千円(前期比24.7%増)となりました。スキルシェアにつきましては、「フリーコンサルBiz」が需要の高いコンサルティングファーム向けの案件を中心に稼働人数を伸ばしつつ、利益構造の改善を図り比較的稼働率の高い案件への移行を進めたことにより、売上高は1,424,268千円(前期比21.4%増)となりました。また、2022年7月にサービスを開始した「コンパスシェア」は、業績貢献には至らないものの、サービスメニュー等の充実に努め、想定を上回る企業及びコンサルタントの登録を獲得しております。この結果、当連結会計年度における当社グループの売上高は4,342,372千円(前期比23.6%増)となりました。

 

(参考)各サービスの指標

 

 

前連結会計年度

(2022年6月期)

当連結会計年度

(2023年6月期)

増減率

人材紹介

入社決定人数(人)(注1)

634

703

10.9%

フリーコンサルBiz

稼働人数(人)(注2)

762

826

8.4%

(注)1.求職者が求人企業に入社後一定期間内に自己都合により退職した場合、紹介手数料の一部を返金する契約を締結しておりますが、当該返金対象となった場合も入社決定数に含めております。なお、人材紹介(正社員採用サービス)の一部取引について外部提携する場合がありますが、当該提携先で決定した場合は、入社決定人数に含めておりません。

2.フリーコンサルタントの月次の稼働人数の合計となります。

 

b 売上総利益

 当連結会計年度の売上原価は、人材紹介における他社転職サイトの求職者情報登録者の転職決定に伴う手数料及びスキルシェアにおけるフリーコンサルタントへの業務委託費用等によって構成され、各サービスの売上高の増加と売上構成の変化により、1,464,414千円(前期比15.1%増)となりました。この結果、売上総利益は2,877,957千円(前期比28.4%増)となりました。

 

c 販売費及び一般管理費、営業利益

 当連結会計年度の販売費及び一般管理費は、企業認知度向上やコーポレートブランディングに係る広告宣伝を強化したこと及び人員増強に伴い人件費が増加したこと等により、2,204,144千円(前期比26.7%増)となりました。この結果、営業利益は673,813千円(前期比34.5%増)となりました。

 

d 経常利益

 当連結会計年度の営業外収益は受取補填金を計上したこと等により、1,720千円となり、営業外費用は上場関連費用を27,800千円計上したこと等により、31,160千円となりました。この結果、経常利益は644,373千円(前期比30.6%増)となりました。

 

e 特別損益、親会社株主に帰属する当期純利益

 当連結会計年度において特別利益、特別損失は発生しておりませんが、法人税、住民税及び事業税を203,391千円、税効果会計による法人税等調整額を22,179千円計上した結果、親会社株主に帰属する当期純利益は418,802千円(前期比28.9%増)となりました。

 

③ キャッシュ・フローの状況

 キャッシュ・フローの分析につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ③ キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

 

④ 資本の財源及び資金の流動性

(資金需要)

 当社グループの運転資金の主なものは、従業員の人件費、スキルシェアにおける登録コンサルタントへの業務委託費用、当社サービス浸透のための広告宣伝費、及び今後展開していくデジタルプラットフォームに係るシステム開発費等であります。

 

(財務政策)

 当社グループは、事業運営上必要な資金の流動性と財源を安定的に確保しながら、必要な資金は、自己資金、金融機関からの借入による資金調達を基本とし、新規サービスの展開等の初期開発費用等がかかるものについては、必要に応じてエクイティファイナンス等による資金調達を検討する予定です。当連結会計年度末における流動比率は435.9%であり、十分な流動性を確保していると認識しております。

 

⑤ 経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 当社グループでは、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (4)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等」に記載のとおり、売上高及び営業利益を重要な経営指標と位置づけております。これに加え、人材紹介においては入社決定人数、スキルシェアの「フリーコンサルBiz」においてはフリーコンサルタントの稼働人数を各サービスの売上成長を測定する指標として重視しております。

 

 

5【経営上の重要な契約等】

 該当事項はありません。

 

6【研究開発活動】

 当連結会計年度の研究開発費の総額は14,514千円であります。主な内容は、リカーリングによる複合サービス提供を支援する情報の生成や高度な経営指標獲得の基盤となる統合データベースの開発であります。

 なお、当社はヒューマンキャピタル事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載は省略しております。