当社の経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。
(1)経営方針
当社は「Create the Future to Overcome Cancer」「がんを克服できる社会の創生に貢献する」という経営理念の下、がん治療とがん免疫療法の現状と課題を熟知した医師達が、「No illness(がんという病を根絶させたい)」「No immunity, No life(免疫なくして生命は成り立たず)」という想いより、2015年4月に「ノイルイミューン・バイオテック」という社名にて当社を創業しました。PRIME技術という革新的な治療プラットフォームを利用した効果的ながん治療法を開発し、多くの患者へ届け、がんを克服した社会の実現に貢献して参ります。
(2)経営戦略
革新性の高いPRIME技術を中核として、ライセンス又は販売による大型の収入が期待でき高い成長性を持つ「自社創薬」と、多数の契約候補先・パイプライン候補・収益機会候補を持ち早期の収益確保が可能な「共同パイプライン」の2つの創薬ビジネスモデルを組み合わせることにより、安定感のある事業ポートフォリオを構成していきます。
一般的に創薬バイオベンチャーは自社パイプラインの開発のために先行投資がかさみ損益分岐点が高く、黒字化が遅れる場合がありますが、当社はPRIME技術による「共同パイプライン」を併せ持つため、より早期の黒字化を可能としていく戦略を選択しております。
また、当社による医薬品の研究開発においては、PRIME技術に関するものを中心とした知的財産権やノウハウが重要な経営資源となります。当社は、事業の運営及び拡大に必要な特許権等の知的財産権を、国内外において適時適切に出願及び登録することにより、知的財産権の保護の最大化を図る方針です。当社が出願人である又は当社がライセンスを有する登録済もしくは出願中の特許については、上記「第1 企業の概況 3 事業の内容 (8)知的財産権(特許等)について」をご参照ください。
当社は、その経験とPRIME技術を活かし、固形がんに対する次世代細胞療法を開発すべく、技術、創薬、製造、そして人材の確保と定着に継続的に投資することを通じて、最適な標的抗原の選定を含め、新たな分野である固形がんに対する遺伝子改変免疫細胞療法の研究開発を推し進めることにより、固形がん治療の領域における当社のプレゼンスの向上・確立を図ります。
(3)経営上の目標の達成状況を把握するための客観的な指標等
当社は、現在研究開発段階にあり、売上高、利益率、ROA/ROEその他の数値的な目標となる経営指標等は用いておりません。当社は、「自社創薬」と「共同パイプライン」のハイブリッドビジネスモデルに基づき、PRIME技術の市場への展開や周知を加速化して早期の収益確保を図ると同時に、長期的には大型の販売収益を確保することにより、事業経営におけるリスク分散及びサステナブルな事業成長を実現することを目指し、当社の開発パイプライン及び他社との共同プロジェクトの進捗及びより一層のパイプラインの拡充を目標として事業活動を推進しています。開発中の自社パイプラインについて、非臨床試験の段階においては開発段階を詳細に区切った作業工程表を作成しており、定期的なモニタリングを行い開発の進捗状況を適宜確認し管理しております。第I相臨床試験など臨床試験においては、医療機関での治験実施の患者数等を目標管理しております。
共同パイプラインについては、提携した製薬企業等からの定期的な報告を受け、開発の進捗状況を適宜確認しております。
(4)経営環境
①がん罹患率・生存率について
日本国内において、がんの死亡数と罹患数は、人口の高齢化を主な要因としてともに増加し続けております。男女ともがんの死亡数は増加し続けており、2023年のがん死亡数は、38万人以上と報告されております(出典:国立がん研究センターがん情報サービス「がん統計」(厚生労働省人口動態統計))。同様に、男女ともにがんの罹患数は1985年以降増加し続けており、2020年のがん罹患数は94万人以上と報告されております(国立がん研究センターがん情報サービス「がん統計」(全国がん登録))。また、日本人が生涯でがんに罹患する確率は、男性で62%、女性で49%と報告されており、(出典:国立がん研究センターがん情報サービス「がん統計」(累積罹患リスク(グラフデータベース)))、世界の2022年がん罹患者数は約1,996万人(出典:GLOBOCAN 2022)とされております。また、各がん腫の5年生存率は、特にステージの進んだがんにおいて依然として低く、有効な治療法の開発が急務であります。
②世界のCAR-T細胞療法の市場について
がんによる死亡数は、2022年において世界で約970万人とされております(WHO CANCER Tomorrow)。世界におけるがん治療薬の市場規模は拡大傾向にあり、2018年にはがん免疫療法の研究開発に対してノーベル生理学・医学賞が授与されたこともあり、がん免疫療法に対する期待が大いに高まっております。さらに、最先端のがん免疫療法として遺伝子改変免疫細胞療法が製薬業界で存在感を高めており、中心となるCAR-T細胞療法の世界市場は年平均成長率23.35%(2024-2033年)で伸長し、2033年において302.5億ドルに達するとも予測されています(Vision Research Reports (Report Code:40008))。
③薬価の動向について
CAR-T細胞療法は、固形がんに対する治療法として上市されたものは現時点では存在しないものの、再発又は難治性のB細胞性急性リンパ芽球性白血病やびまん性大細胞型B細胞リンパ腫といった血液がんに対する治療法として実用化されており、スイスの大手製薬企業のノバルティスファーマが開発したキムリア(一般名:チサゲンレクルユーセル)は、高い完全寛解率(※1)と比較的長期の寛解維持(※2)が臨床試験で実証され、医薬品として2017年8月に米国承認、2018年8月に欧州承認、2019年3月に日本承認となりました。米国での薬価は475,000ドル(約5,200万円)、日本での薬価は3,349万円(収載時の薬価。その後の改定により2021年7月時点では3,264万円)と決定されました。また、日本においては、イエスカルタ(一般名:アキシカブタゲン シロルユーセル)とブレンヤンジ(一般名:リソカブタゲン マラルユーセル)が再発又は難治性の大細胞型B細胞リンパ腫に対して承認されており、アベクマ(一般名:イデカブタゲン ビクルユーセル)が再発又は難治性の多発性骨髄腫に対して承認されています。薬価はキムリアと同額となっております。
※1 完全寛解率:全てのがん病変が消失した患者の割合
※2 寛解維持:全てのがん病変が消失し、再発が確認されていない状態
④希少疾病用品目・先駆的品目の指定制度や早期承認制度等について
厚生労働省が2015年度より試行的に実施していた先駆け審査指定制度は、薬機法において先駆的品目の指定制度として法制化され、2020年9月より施行されております。これは、一定の要件を満たす画期的な医薬品等について、開発の比較的早期の段階から先駆的品目指定制度の対象品目に指定し、薬事承認に関する相談・審査における優先的な取扱いをするものです。加えて、薬機法においては、対象となる患者数が少ないために開発のインセンティブが小さい医薬品等について、一定の要件を満たす場合に、希少疾病用品目としての指定を受けることができるとされております。希少疾病用品目として指定を受けた場合には、優先審査の対象となるほか、助成金の交付や税制上の優遇措置等を受けることができ、これにより、希少疾病に関する医薬品等の開発にインセンティブを付与し、そのアンメットメディカルニーズを解消することが企図されています。当社で現在開発中のCAR-T製剤は、これらの指定制度の対象となりうる品目であることから、当社は研究開発を迅速化させるため、これらの指定制度(海外における同様の制度を含みます。)を活用する可能性があります。
また、当社で現在開発中のCAR-T製剤は、薬機法上の再生医療等製品に該当するものであり、その性質上、製品の有効性を確認するための臨床データの収集、評価に長期間を要する場合があります。他方で、再生医療等製品には条件及び期限付承認制度が存在し、限られた数の症例から有効性が推定でき、安全性が確認された場合には、その適正な使用の確保のために必要な条件及び7年を超えない範囲内の期限付きの承認を得られる可能性があります。
⑤CAR-T細胞療法のグローバルでの開発競争の現状
革新的ながん治療法であるCAR-TやTCR-Tといった遺伝子改変免疫細胞療法はグローバルで開発競争が過熱しており、大手製薬メーカーでは自社での内部開発から他社との共同開発、又は買収による研究開発のスピードアップ戦略に切り替える事例も出始めております。海外のCAR-T研究開発を行うベンチャー企業の大型の買収事例も増えており、2017年8月に米ギリアド・サイエンシズがカイトファーマを約119億ドル(約1兆5,289億円)で買収、2018年1月には米セルジーンがジュノ・セラピューティクスを約90億ドル(約1兆1,563億円)で買収しました。
また、近年では特に固形がんの治療を対象に、新たな技術を用いたCAR-T細胞療法の開発を実施するベンチャー企業が国内外で精力的に研究開発を実施しております。中でも当社のPRIME技術はCAR-T細胞を強化するだけでなく体内の免疫も誘導するユニークな技術であります。
(5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当社は、固形がんに対する遺伝子改変免疫細胞療法の研究開発を推進すべく、以下の取組みを進めております。
①自社パイプラインの開発の推進
当社は自社創薬パイプラインについて、共同開発を含めたあらゆるアプローチを介して開発の推進を目指すとともに、NIB104やNIB105の早期の臨床ステージ移行に取り組んで参ります。
②PRIME技術の基礎研究体制の拡大及び国内外の学術機関、民間機関等との共同研究開発の推進
当社は山口大学との共同研究により、これまで複数のパイプラインを構築しております。また、中核技術であるPRIME技術の改良や応用についての基礎研究を進めております。今後も山口大学との緊密な連携や国内外の学術機関、民間機関等との共同研究開発により、より一層のパイプラインの拡充、及びPRIME技術の周辺知財の構築を図る方針であり、研究体制の拡充を図って参ります。
③臨床試験の推進
当社は複数のパイプラインを構築しております。これらのうち、NIB103を最優先のパイプラインとして臨床試験を推進し、臨床試験より得られたデータを評価することで、ライセンス先における開発も加速度的に進むものと考えております。
なお、当事業年度より当社パイプラインNIB103について、タカラバイオ株式会社と共同で開発を進めております。
④ライセンス先に対する支援
PRIME技術のライセンス契約を締結した製薬企業に対し、臨床開発が滞りなく進められるよう、当社が技術的アドバイスを行い、また契約によっては分担業務を行い、ライセンス先との協力を継続的に行っていく方針であります。
⑤ライセンス契約の拡大に向けた体制拡充
安定した事業ポートフォリオの構築とさらなる収益機会の獲得を目指すため、また当社パイプラインまたは技術のライセンスをより多くの国内外の製薬企業に広めるため、適切な人材確保を図って参ります。
⑥新しい事業機会を得るための外部機関との新たな連携
当社はパイプライン拡充とともに、新たな形態のパイプラインの構築や、細胞医薬製造の効率化を目指しております。そのため、新たなゲノム編集技術や、遺伝子導入法、自動培養装置などの技術を持つ外部機関との連携の拡大を図っております。
⑦財務基盤の強化
当社技術の改良や応用に係る基礎研究、及び開発活動には多額の資金を必要とします。これまで数度にわたるエクイティファイナンスやパートナー企業からのライセンスに関する収入により資金を調達して参りましたが、2023年6月には東証グロース市場上場に伴う増資により更なる財務体制の強化を実現いたしました。2024年度は外部からの資金調達はせず手許資金にて研究開発活動を進めて参りました。2025年度以降、研究開発の推進及び加速化に併せ、必要に応じて適切な時期に資金調達を実施し、財務的基盤の強化を図ります。
⑧当社の正社員の採用、育成、登用
当社の主要な業務は、原則として正社員によって運用することを基本方針としております。その理由は、当社の経営理念に深く共感する当社のチームメンバーが、主体性をもって研究開発を行うこと、またライセンス先の製薬企業と接することが、事業推進の品質とスピードを向上させ、競合他社に対して大きな差別化の要素となり、当業界における最も優れた競争優位性であると考えているためです。
当社への入社志望者については、それまでの経歴や能力、潜在性を評価・選考し、最終面接時に当社の経営理念の説明を行い、候補者にとって共感できているかどうかを、当社の採用基準としております。採用後の育成については、現場での上長によるOJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)や、部門長によって個人別に計画した教育研修スケジュールを実施しております。
社内登用については、事前に策定した個人別の目標管理シートに基づいて一定の成果をあげているかどうかを確認し、さらに重ねて当社の経営理念に沿った日常的な行動規範をしているかどうかについて、人事評価委員会による評価会議を経て、部門配置や昇格・昇給及び降格・降給を決定しております。
今後も上記の方法に基づき、研究開発の加速化、パイプラインの進捗等に対応し、必要に応じて適切かつ十分な人材確保に努めて参ります。
当社のサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。
(1) サステナビリティに関する考え方
当社は、PRIME技術を応用したCAR-T細胞という最新のがん免疫療法を介して、固形がんに対する安全かつ有効な治療薬を開発する事業を展開し、「がんを克服できる時代」の到来に貢献することを目指しています。当社の研究開発活動は、国連で定められたSDGs(持続可能な開発目標)「17の目標」に含まれる「3 すべての人に健康と福祉を」に通ずるものです。当社の事業活動を支えるのは当社で働くすべての従業員であり、従業員がいきいきと力を発揮できるような「働きやすい職場づくり」及び「人事育成」を目指し整備してまいります。
(2) サステナビリティに関する取組
① ガバナンス
当社ではサステナビリティ関連のリスク及び機会を、その他の経営上のリスク及び機会と一体的に監視及び管理しております。詳細は、
② リスク管理
当社では、リスク管理規程を設け、特に管理すべきリスク項目を列挙・定義し、各所管部署が適切なリスク管理に責任をもっています。また、それを適切に実施するため、代表取締役を議長とし、各部門長をメンバーとするリスクマネジメント会議を2か月に一度以上開催し、新リスクの洗い出しと評価及びリスクへの対応を決定し、リスク管理の事例共有等を行い、またリスク実現時にはその根本原因の解明と対応を協議することによりリスク管理の向上に努めています 。
(3) 人的資本に関する戦略(方針)、指標及び目標
① 戦略(方針)
従業員30名弱の当社にとり必要な人材を採用し、その従業員がいきいきと働き、成長していくことは事業の成長にとり最も重要なドライバーです。そのため当社のバリューの一つであるConsideration(許容)に基づき、多様な国籍・バックグラウンド・スキル・経験・性別・家族構成・生活環境を持った社員が働きやすく魅力を感じる職場づくり及び人事制度を目指しています。
働きやすい職場づくりにおいては、複数国籍の従業員の採用も始まり、従業員の状況に応じた多様な働き方に対するため、リモートワーク制他を維持しそれを進化させ、高度プロフェッショナル制度を含めた従業員一人一人に適した雇用形態を目指していきます。
人事育成面では、育成プランを個々の従業員と話し合いながら全員に設定しそれに基づいた日々のレビューを推進し、それに必要なトレーニングプログラムの充実を図ります。
当社のサステナビリティへの取組みに係るリスクの評価と対応については、影響の重要性に応じて取り組むべき優先順位を決定し、目標を設定することとしております。当社では、「①戦略(方針)」において記載した、人材の多様性の確保を含む人材の育成及び社内環境整備に係る指標について、具体的な取り組みを行っているものの、本報告書提出日現在においては、当該指標についての目標を設定しておりません。今後、関連する指標のデータの収集と分析を進め、目標を設定し、その進捗に合わせて開示項目を検討してまいります。
当社の事業の運営及び展開等について、リスク要因として考えられる主な事項を以下に記載しております。
当社は、これらのリスクの発生の可能性を十分に認識した上で、発生の回避及び発生した場合の適切な対応に努める方針ですが、このような諸策の成否には不確実性が存在します。また、当社の事業はこれら以外にも様々なリスクを伴っており、以下の記載はかかるリスクを網羅するものではありません。
当社は、医薬品等の開発を行っておりますが、医薬品等の開発には長い歳月と多額の研究費用を要し、また、各パイプラインの開発が成功するとは限りません。特に、研究開発段階のパイプラインを有する研究開発型バイオベンチャー企業は、その性質上、様々な不確実性とリスクを有するものであり、かかる企業に対する投資は、事業のステージや状況によっては、一般投資者の投資対象としては相対的にリスクが高いものといえます。当社のパイプラインはいずれも研究開発段階にあり、臨床試験の終了、規制当局による製造販売承認の取得又は販売開始に至っているものはありません。当社への投資は、かかる当社の事業の性質、ステージ、状況、不確実性、リスク等を踏まえて行う必要があります。
なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。
(1)医薬品の研究開発事業一般に関するリスク
①医薬品開発の不確実性について
一般に、医薬品の開発には多額の研究開発投資と長い時間を要するだけでなく、その成功確率も他産業に比して著しく低い状況にあります。
医薬品の製造販売を行うためには、規制当局から製造販売承認を取得する必要がありますが、そのためには多くの経営資源や時間を要する上、製造販売承認を適時に得られる保証はありません。また、製造販売承認がなされる場合にも、当社の想定よりも限定された適応症に対してのみ承認がなされたり、医薬品の使用及び投与等について条件や制約が付加されたりする可能性もあります。さらに、ある国又は地域で製造販売承認が得られたとしても、他の国又は地域で同様の承認が得られるとは限りません。
これらの事由により、研究開発の期間が延長された場合には、追加の資金投入が必要になるほか、特許権の存続期間満了までの期間が短くなり、投資した資金の回収に影響を及ぼします。また、研究開発を中止した場合には、それまでに投じた研究開発資金を回収できなくなることになります。
また、当社は、国内外の研究開発を迅速化させるために、再生医療等製品の条件及び期限付承認制度、希少疾病用再生医療等製品の指定制度並びに先駆的再生医療等製品の指定制度等(海外における同様の制度を含みます。以下同じ。)を活用する可能性がありますが、これらの制度の適用は規制当局の裁量に基づくため、当社の想定どおりにこれらの制度を活用できる保証はなく、研究開発、導出、製造販売承認の取得又は上市に当社の想定よりも長い期間と多額の費用が必要となる可能性があります。さらに、規制当局から早期に条件及び期限付承認を取得できた場合であっても、製造販売開始後に有効性・安全性に関する追加調査を行うことが必要であり、かかる調査において有効性及び安全性が最終的に確認されなければ、承認は取り消される可能性があり、その場合には、当社の事業、財政状態及び経営成績に重大な悪影響を及ぼす可能性があります。
当該リスクに対しては、パイプラインの拡充を図るとともに、医薬品の開発や事業化について経験を有する人材を社内外に確保してプロジェクトを推進する体制の構築に努めております。また、開発にあたっては、対象疾患に精通した医師等からの情報収集に努めるとともに、臨床試験の計画・実施に当たっては、規制当局との事前相談等を通じて適切な助言を得て開発を推進して参りますが、これらの施策が奏功しない可能性があります。
②臨床試験の計画及び実施並びに製造販売承認について
医薬品の開発及び規制当局からの製造販売承認の取得に当たっては、臨床試験により、当該医薬品の有効性や安全性を確認する必要がありますが、臨床試験の計画及び実施は複雑なプロセスであり困難が伴います。
当社は臨床試験を完了した実績がなく、現在開発中のパイプラインにおいても、第I相臨床試験開始の準備を進めているものが存在するにとどまるため、臨床試験の経験が限定的であり、臨床試験を適切に計画・実施できない可能性があります。また、臨床試験の設計及び実施に際しては、規制当局との折衝、臨床試験の手続に関する規制の遵守、被験者の確保及び維持等に関して、様々な問題や課題が生じる可能性があります。臨床試験の被験者の確保及び維持に関しては、当社のPRIME CAR-T細胞療法に関する臨床試験は、標準治療に不応又は不適のがん患者を対象とするため、被験者となり得る候補者の数が限定的であり、一般的な医薬品の開発に比して被験者の確保が一層困難となる可能性があり、特に後期臨床試験においては、初期の臨床試験より規模が大きくなる結果、より多くの被験者の確保が必要となる可能性があります。また、実施中の臨床試験における治療薬の有効性や安全性に関する否定的な結果が報告された場合や、遺伝子改変免疫細胞療法を含むバイオテクノロジーを用いた医薬品の安全性に関する社会の認識、新型コロナウイルス感染症等の公衆衛生上の問題の影響等により、PRIME CAR-T細胞療法に係る臨床試験の被験者となることを希望する者が減少した場合等には、当社はPRIME CAR-T細胞療法に関する臨床試験に必要な被験者を確保及び維持できない可能性があります。
また、研究開発の初期段階や前臨床試験での成功は、必ずしもその後の臨床試験の成功や規制当局の製造販売承認等が得られることを保証するものではありません。研究開発の初期段階や前臨床試験で有望な結果が得られた場合であっても、その後の臨床試験で想定した結果が得られるとは限らず、また、製造販売承認に必要な有効性と安全性を実証するための十分なデータが得られるとは限りません。加えて、ある段階の臨床試験の結果やその中間結果が仮に有望なものだったとしても、その後の段階の臨床試験においても有望な結果が得られることを示唆するものでもありません。
さらに、医薬品の承認審査過程は規制当局の大幅な裁量に服しており、前臨床試験及び臨床試験の結果について、規制当局により当社の想定と異なる解釈がなされたり、当社が提出したデータが不十分であるとして追加の試験が要求されたりする可能性や、開発期間中に規制当局の政策が変更される可能性があり、その場合には製造販売承認まで想定以上の時間を要し、また、追加の試験等のための費用が必要となります。
これらの事象等により、当社のパイプラインにおける臨床試験に想定以上の期間を要した場合には、医薬品の製造販売承認の取得及び上市のタイミングが当初の想定より遅れる結果、当社が収受するマイルストン収入やロイヤリティ等の受領時期も遅れる可能性があり、また、製造販売承認及び上市に至らなかった場合には、これらの収入が得られない可能性があり、当社の事業、財政状態及び経営成績に重大な悪影響を及ぼす可能性があります。
③副作用発現・製造物責任について
医薬品には、臨床試験段階から上市後に至るまで、予期せぬ副作用が発現する可能性があります。特に、当社のPRIME CAR-T細胞療法については、NIB102以外のパイプラインは第Ⅰ相臨床試験を完了しておらず、ヒトへの投与に関する安全性及び有効性は今後も継続的に検証されることから、その過程で予期せぬ副作用等の有害事象が発現する可能性があり、このような場合には、当該パイプラインの開発が遅延もしくは中止され、又は規制当局により追加の臨床試験もしくは非臨床試験が必要とされ、また、製造販売承認の取得後においても、追加調査が求められ、その結果によっては承認が取り消される可能性があります。
また、現在販売されている他社の血液がんに対するCAR-T製品について、米食品医薬品局(FDA)は、添付文書にてT細胞性悪性腫瘍が生じる可能性が有る旨を追記する要求を行っています。一方で、FDAはこれらの製品により患者様が得られる全体的な利益は、潜在的なリスクを引き続き上回っているとしておりますが、入院や死亡などの重篤な有害事象を伴うT細胞悪性腫瘍のリスクを調査し、規制措置の必要性を評価するとしています。
これらの副作用が発現した場合、当社は、臨床試験の被験者や上市後に医薬品の投与を受けたがん患者その他の関係者から、高額な損害賠償請求を受ける可能性があります。当社はこうした事態に備えて、一定の臨床試験に関する賠償責任保険に加入しておりますが、最終的に当社が負担する賠償額の全てに相当する保険金が支払われる保証はありません。
これらの副作用等が生じた場合、当社の業績に直接的な悪影響を及ぼすばかりか、副作用によるネガティブなイメージにより、当社並びに当社が開発を行う医薬品及び関与する免疫細胞療法等に対する信頼に悪影響が生じるとともに、当社の事業、財政状態及び経営成績に重大な悪影響を及ぼす可能性があります。
④国内外の薬事法その他の薬事に関する法規制について
医薬品業界は、研究、開発、製造及び販売のそれぞれの事業活動において、各国の薬事法(わが国においては「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」)、労働関連法令、個人情報保護法令、環境法令及びその他の関連法規等により、様々な規制の適用を受けております。当社が適用される規制を遵守できない場合、規制当局から行政処分その他の措置を受ける可能性や、民事、刑事上の責任を問われる可能性があり、その結果、当社や当社の製品に対する信頼や評価を毀損するほか、事業、財政状態及び経営成績に重大な悪影響を及ぼす可能性があります。
現在のところ、当社のパイプラインは研究開発段階にあり、わが国の厚生労働大臣、アメリカ食品医薬品局(FDA)、欧州医薬品庁(EMA)等から、製造販売等に係る認可は受けておりませんが、今後、パイプラインの進捗に応じて、パイプラインの製造販売承認申請を国内外で行う可能性があります。その場合には、製造販売のための体制整備が求められますが、かかる体制を適時かつ適切に構築できる保証はなく、その結果、製造販売承認が適時に得られない可能性があります。また、当社の開発する医療用医薬品は、規制当局による製造販売承認が得られた場合でも、製造、表示、広告、市販後調査の実施、安全性や有効性等に関する情報の提出、薬機法上の広告規制など、様々な規制の適用を継続して受け、当社はこれを遵守する必要があります。加えて、当社又は当社のライセンス先と、医療関係者等との間の取引関係は、反キックバックや詐欺防止等の販売活動への規制を含む国内外の薬事関連法規の適用を受ける可能性があります。近年、多くの国の規制当局が承認後のモニタリングの強化に取り組んでおり、その結果、規制当局から製品使用の一時停止などの勧告がなされる可能性もあります。
さらに、国内外の薬事法及びその他の関連法規等は随時改定がなされるものであり、これらの変化が当社のPRIME CAR-T細胞療法に基づく治療薬の開発並びに製造及び販売にとって不利に働いたり、さらなる体制の整備・変更を求められることが考えられます。また、当社は、国内外の研究開発において早期承認制度等を活用する可能性がありますが、かかる制度の利用も、関連法規等の改定による影響を受けることが考えられます。こうした規制への対応は、当社の事業戦略に悪影響を与え、また、これに対応するために多額の費用を要するなど、当社の事業、財政状態及び経営成績に重大な悪影響を及ぼす可能性があります。
⑤医薬品行政について
医療用医薬品の販売価格は、日本及びその他各国政府の薬価に関する規制の影響を受けます。近時、医療費の抑制に向けた動きは世界的な動向となっており、国内においては医療費抑制策が継続的に行われ、定期的な薬価改定のほか、高額医薬品の利用の制限等を検討する政策動向も見られます。かかる動向を受け、当社製品の薬価が当社の想定を下回り、又は当社製品への需要が減退した場合には、当社の事業、財政状態及び経営成績に重大な悪影響を及ぼす可能性があります。当社は、PRIME CAR-T細胞療法を自社開発し、当該製品の販売により売上を得ること、又は国内外の製薬会社にライセンスを付与し、当該ライセンス先から上市後の販売額に応じたロイヤリティや、販売目標の達成に応じたマイルストン収入等を得ることを、基本的な事業方針としております。そのため、当社は、国内外の薬価政策やライセンス先の薬価戦略の影響を受ける立場にあります。当社の開発製品が上市された場合において、当該製品にとってネガティブな薬価改定やその他医療保険制度の改定がなされた場合は、当社の事業、財政状態及び経営成績に重大な悪影響を及ぼす可能性があります。
⑥医薬品の製造及び販売に関するリスクについて
当社のCAR-T免疫細胞療法に用いる免疫細胞の製造は、複雑かつ時間を要するものであり、また、多額の費用を要します。特に、当社の開発パイプラインにおいては、患者自身の免疫細胞から製造する自家のPRIME CAR-T細胞が先行しているところ、その製造に当たっては、対象患者から免疫細胞を採取する必要があり、また、採取した当該細胞の状態に影響されることから、本質的に複雑かつ時間を要し、その品質に不均一が生じ得ます。また、免疫細胞の製造工程は、細胞の生存率の低下、細菌等の混入による汚染、機器の故障や不適切な操作等の影響を極めて受けやすく、かかる事象が生じた場合には、生産性や品質の低下、製造施設の閉鎖等による供給の停止又は遅延等につながる可能性があります。加えて、免疫細胞の品質の維持が重要であるため、製造施設や供給網の整備も重要となります。
これらの事由により、当社の免疫細胞の製造に支障が生じた場合には、当社の研究開発又は製造販売の継続等に悪影響を及ぼす可能性があるほか、製薬企業や医療機関等における当社及び当社製品に対する評価及び信頼性が低下すること等により、当社の事業、財政状態及び経営成績に重大な悪影響を及ぼす可能性があります。
加えて、当社のPRIME CAR-T細胞療法に基づく治療薬の販売については、公的保険の適用の有無を含む薬価、対象患者の人数、医療機関に求められる設備等の体制、使用及び投与等についての条件や制約、副作用の有無を含む安全性及び有効性、販売促進活動等の要因により、医療業界において当該治療薬が受け入れられない可能性があります。また、当社は、製造販売承認を経て、医療用医薬品の製造及び販売に至った実績がないため、当社が製造販売承認を取得したとしても、当該医薬品の製造販売体制を適時かつ適切に構築できない可能性があります。これらの事情により、当社の製品が十分に普及しない場合、当社の想定した売上を得ることができず、当社の事業、財政状態及び経営成績に重大な悪影響を及ぼす可能性があります。
(2)事業環境に由来するリスク
①がんを対象とする医薬品に関する市場について
近年、がんを対象とする医薬品に関する市場は急速に変化しており、CAR-T細胞療法を含む遺伝子細胞療法の分野についても市場規模の拡大が見込まれております。他方で、かかる市場においては、国内企業のみならず、海外の大手製薬メーカー又はバイオベンチャー等の参入も拡大しており、当社は、今後もこのような傾向が継続するものと想定しております。このように、市場の拡大は、参入企業又は潜在的な競合企業の増加の要因となる可能性があります。
また、当社の研究開発活動は、技術の革新及び進歩の度合いが著しく速いバイオテクノロジー分野に属しており、異業種間の連携等により技術革新等が飛躍的に進展する可能性があり、当社のPRIME技術を上回る新たな技術が開発され得るなど、当社を取り巻く事業環境に急激な変化を生じさせるものと考えられます。
当社はこれら業界の動向について、積極的に情報収集を行う等の取組みを推進してまいりますが、当社がこうした事業環境の変化に柔軟に対応できなかった場合、新規治療法の開発等によりCAR-T細胞療法の市場における有用性が相対的に低下した場合や、世界経済や金融市場の変化に伴う患者の経済状態の悪化、ロシアとウクライナの軍事衝突や米国と中国の緊張関係をはじめとした地政学的な動向その他の理由によって当社の想定どおりに市場が拡大しない場合等には、当社の事業戦略が予想どおり進捗せず、又はその変更を余儀なくされる可能性があり、当社の事業、財政状態及び経営成績に重大な悪影響を及ぼす可能性があります。
②他社との競合について
当社が事業を展開するCAR-TやTCR-Tといった遺伝子改変免疫細胞療法の研究分野は今後の市場規模の拡大が見込まれているところ、既に国内外の製薬企業及びバイオベンチャー等が参入しており、今後更に競争が激化する可能性があります。競合他社は、当社や当社のライセンス先よりも多くの経営資源又は研究開発や販売に関する豊富な経験を有している場合があり、これらの企業が当社や当社のライセンス先に先んじて製造販売承認を取得した場合のほか、当社が研究開発の過程で必要とする第三者の知的財産権について独占的なライセンスを受け、又は他の大手製薬企業と提携すること等を通じて、当該分野において当社よりも先行した場合、当社事業の競争上の優位性が低下する可能性や、当社の事業展開において当社が想定する以上の資金が必要となる可能性があります。以上のとおり、今後の競争激化により、当社の事業、財政状態及び経営成績に重大な悪影響を及ぼす可能性があります。
③為替変動について
当社は、国内企業に限らず、海外の製薬企業との提携も積極的に行っており、かかる海外の製薬企業との提携に基づく収入は、米ドル等の外貨建てで収受することになります。当社は、為替変動について、その動向を注視し、必要に応じて為替予約等のリスク低減手段を講じることもありますが、かかる手段は為替変動リスクの全てを回避するものではなく、急激な為替変動が生じた場合等には、当社の財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
④市場規模の推計について
当社は、TAM(Total Addressable Market)について、一定の仮定及び前提の下、第三者機関の提供する推計値等に基づき推計しています。当社は、推計に当たり当社が信頼できると考えるデータを用いておりますが、推計値の正確性には限界があります。当社のパイプラインの対象となるがんに対して新たに画期的な治療法が導入された場合や、薬価が想定より低額となった場合等、かかる将来予想に用いられたデータ、仮定又は前提が不正確又は不適切であった場合、実際の当該潜在的市場の規模は推計を大きく下回る可能性があります。さらに、仮に潜在的市場の推計値が正確であった場合でも、競争やその他の要因により、当社のパイプラインが十分な市場シェアを獲得できる保証はありません。
(3)事業内容に由来するリスク
①山口大学との関係について
当社は、山口大学及び同大学の技術移転機関である有限会社山口ティー・エル・オーからPRIME技術に関する特許のライセンスを受けているほか、同大学との間で共同研究に基づく特許権を共同保有するなどしているため、当社の事業上、同大学との関係が非常に重要となっております。同大学との間では、PRIME技術に係る同大学出願の特許及び同大学との共有特許について、日本国内における専用実施権を含む独占的ライセンスの許諾を受け、その対価として、契約一時金、マイルストン金及びかかる特許権を実施したことによる売上の一定料率に相当する金額を山口大学の技術移転機関としての有限会社山口ティー・エル・オーに支払うこと等を定めた以下の契約を締結しており、これらは当社の事業の根幹に関わる重要な契約であると認識しております。
当社は、現時点において、山口大学との取引については良好な関係を維持しつつ、当社又は当社の株主の利益を害することのないよう法規制を遵守するとともに、取締役会による監視等を通じて十分留意しておりますが、今後、当社と山口大学との間で問題が生じない保証はありません。
また、現時点で以下の契約の継続に支障をきたす要因として当社が認識しているものはありませんが、今後、同大学との関係性が悪化する等により以下の契約が終了もしくは解除された場合、又は当社にとって不利な契約改定が行われた場合には、当社のパイプラインに関する研究開発及び製造販売に支障が生じるほか、それにより当社の社会的信用が損なわれる可能性もあり、その結果として当社の事業、財務状況及び経営成績に重大な悪影響を及ぼす可能性があります。
なお、以下の契約には、契約条項の違反を一定期間内に是正しない等の事由が、当事者の双方における契約解除事由として定められております。当社が何らかの理由により当該条項に抵触するなどにより、これらの契約が解除された場合には、当社の事業、財政状態及び経営成績に重大な悪影響を及ぼす可能性があります。
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契約書名 |
契約当事者 (契約締結日) |
契約内容 |
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共同研究契約書 |
山口大学 (2016年8月1日) |
後述の「5 経営上の重要な契約等 (1)共同研究開発に関する契約」をご参照ください。 |
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共同研究契約書 |
山口大学 (2016年8月1日) |
後述の「5 経営上の重要な契約等 (1)共同研究開発に関する契約」をご参照ください。 |
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共同研究契約書 |
山口大学 (2018年3月30日) |
後述の「5 経営上の重要な契約等 (1)共同研究開発に関する契約」をご参照ください。 |
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実施許諾契約書 |
山口大学、 有限会社山口ティー・エル・オー (2018年10月1日) |
後述の「5 経営上の重要な契約等 (2)ライセンスインに関する契約」をご参照ください。 |
②PRIME技術を利用したCAR-T細胞療法を基盤とした事業に特化していることについて
当社において、「PRIME技術」は重要な事業基盤であります。当社は、当該技術を活用することにより、がん免疫細胞療法領域において、CAR-T細胞療法に基づく治療薬の自社創薬及び第三者への技術提供による共同パイプラインとしての展開を行っており、当該技術への依存度は極めて高いものと考えております。
CAR-T細胞療法は新しいがん免疫細胞療法であり、固形がんに対するCAR-T細胞療法については、当社のPRIME技術に基づくものか否かにかかわらず、現時点において、その有効性・安全性が臨床試験で確認済みのものや、規制当局による製造販売承認の取得又は販売開始に至っているものはありません。そのため、当社のPRIME CAR-T細胞療法は、研究開発、臨床試験、規制当局からの製造販売承認の取得、安定的な製造・販売体制の確立、医療業界における受入れ・浸透の各プロセスにおいて、通常の医薬品等よりも時間及び費用を要する可能性があるうえ、その予測も困難です。
今後の臨床試験又は市販後調査において、PRIME CAR-T細胞療法について、治療効果等の有効性が十分に確認できない場合や副作用等による安全上の問題が発生した場合、当社の他のパイプラインを含む研究開発又は製造販売の継続等に影響を及ぼす可能性があるほか、製薬企業等における当社技術への評価及び信頼性が低下すること等により、当社の事業、財政状態及び経営成績に重大な悪影響を及ぼす可能性があります。特に、安全性について、PRIME技術の構造・作用機序又は機能等に由来する重大な問題が判明した場合、当社基盤技術の信頼性及びその評価等を著しく毀損することから、特定のパイプラインに限らず、当社の全てのパイプラインに支障が波及する可能性があり、当社の今後の事業展開及び事業の継続性に重大な悪影響が生じ、事業、財政状態及び経営成績に重大な悪影響を及ぼす可能性があります。
なお、当社は、販売開始に至ったパイプラインを持たない研究開発型バイオベンチャー企業であり、経営資源が限定的であるため、特定のパイプラインの開発を優先的に進めております。そのため、後に大きな市場規模を有することとなるパイプラインについて、開発の機会を逃し、又は自社創薬ではなく共同パイプラインとして開発することとした結果、当社が得られる収益が限定的となる可能性があります。
③PRIME技術について有効性・安全性が確認されていないことについて
当社は、これまでのPRIME CAR-T細胞療法に関する研究開発において、動物モデルを用いた試験では、がん治療等に係る一定の有効性を確認するとともに、当該試験において毒性・安全性に係る重篤な問題が生じていないことを確認しておりますが、その後の臨床試験において、人体に対する有効性・安全性が確認される保証はありません。当社のパイプラインに関しても、現在進行中の第I相臨床試験において、PRIME CAR-T細胞のヒトへの投与が行われておりますが、現時点において、その臨床実績は数例と限定的であり、ヒトに対する有効性・安全性が確認できる試験結果の獲得には至っておりません。
④製薬企業等のライセンス先について
当社の事業は、PRIME技術や自社パイプラインに係る特許権等の第三者へのライセンスにより対価を得ることを基本的な事業方針としており、Adaptimmune Therapeutics plcの完全子会社であるAdaptimmune Limited、Autolus Therapeutics plcの完全子会社であるAutolus Limited及び中外製薬との間で、それぞれライセンスアウトに関する契約を締結しております(後述の「5 経営上の重要な契約等 (3)ライセンスアウトに関する契約」をご参照ください。)。かかる方針については、既存のライセンス先を失い又は新たなライセンス先を確保できない可能性や、仮に新たなライセンス先と契約を締結できた場合でも、当社に有利な条件ではない又は将来的に契約を維持できない可能性があります。特に、当社のライセンス先は独自の創薬開発ターゲットを保有しており、当社は対象となる標的抗原を特定してPRIME技術のライセンスを独占的に許諾することになりますが、各企業がライセンスを希望する標的抗原が競合することがあり、その場合には、当社が選定したライセンス先以外の企業へのライセンスが制約される可能性があります。当社は、標的抗原情報を管理することでかかる重複を未然に防止しておりますが、今後、企業がライセンスを希望する標的抗原が特定の抗原に集中するなど調整が困難になる事態が生じた場合、新たなライセンス先との契約に支障が生じるなど、当社の事業、財政状態及び経営成績に重大な悪影響を及ぼす可能性があります。
また、当社の事業収益の既存ライセンス先に対する依存度は高いものとなっております。当社は、今後も新たなライセンス先を開拓することで各ライセンス先への依存度の分散・低下を図る方針でありますが、ライセンス先は一定の製薬企業等に限定されることなどから、当社の想定どおりに新たなライセンス先と契約を締結できる保証はありません。加えて、ライセンス先の経営方針に著しい変更等が生じた場合については、契約が途中で終了する可能性があり、当社の事業及び経営成績に重大な悪影響を及ぼす可能性があります。
さらに、共同パイプラインや、自社創薬において当社がライセンスアウトした後のパイプラインについては、ライセンス先が各パイプラインの研究開発、製造及び販売に関する意思決定権を有しております。当社は、ライセンス先による臨床試験の計画、製造販売承認の取得及びその後の販売促進活動をコントロールすることができないため、ライセンス先との関係性の悪化のほか、ライセンス先における研究開発戦略や事業方針の変更(ライセンス先のパイプライン間における優先順位の変更及び財務上の理由等による研究開発の中止、延期及び開発予算の見直し、並びにライセンス先によるサブライセンスの成否等を含みますが、これらに限られません。)等により、各パイプラインの研究開発、製造及び販売の中止や遅延が生じる可能性があり、これにより、当社の事業、財政状態及び経営成績に重大な悪影響を及ぼす可能性があります。また、当社によるライセンス先の開発状況及び商業化に関する情報へのアクセスは限られており、当社は将来の収益を正確に予測できない可能性があるほか、当社が当社の株主に提供できる情報も、ライセンス先が公表した情報及び当社がライセンス先から取得した情報のうちライセンス先との契約上開示可能なものに限られます。なお、当社のライセンス先は、当社との間のライセンス契約に基づいて支払われる可能性のあるマイルストン収入等の総額を公表する場合がありますが、かかる総額は、当該契約上設定された全ての支払条件の充足やオプションの行使を前提としており、当社が実際に受領する収入はこれよりも少額となる可能性があります。
⑤収益計上及びその変動性について
当社事業において、ライセンス先である製薬企業等から受領する対価は、各ライセンス先との個別契約ごとに決定されており、主として、契約一時金、共同研究収入、マイルストン収入及びロイヤリティ等を、研究開発、製造販売承認の取得、販売開始等の進捗に応じて段階的に受領することが想定されます。
一般的に、医薬品等の開発期間は、基礎研究開始から上市まで非常に長期間に及ぶものです。そして、上記の収益の発生については、その多くがライセンス先の製薬企業等の研究開発の進捗、製造販売承認の取得及び製造販売の状況等に依存しております。したがって、これらが事業収益として計上されるには長期間を要する可能性があり、その時期を予見することはできず、また、各収入の支払条件を満たす進捗に至らず、これらの事業収益が計上されない可能性もあります。
このように、製薬企業等との契約締結の可否、契約締結時期及び研究開発等の進捗状況によって、当社の業績は大きく変動する傾向にあり、これによる業績の上期又は下期への偏重が生じる可能性、決算期ごとの業績変動要因となる可能性、又は各ライセンス先への事業収益の依存度が事業年度ごとに大きく変動する可能性があります。
⑥共同研究開発契約先への依存について
当社は、複数の大学や民間企業等との共同研究開発を実施しております。特に、山口大学とは、当社の事業の基盤であるPRIME技術の開発や改良に関する重要な共同研究を実施しております。当社は、今後も、研究体制の充実と円滑な推進のため、共同研究先との間で良好な関係を維持し、当社又は株主の利益を害することがないよう、法規制を遵守するとともに、取締役会の監視等を通じて十分留意しつつ、当社の事業基盤となる共同研究を継続していく方針であります。さらには、CAR-T細胞療法等の遺伝子改変免疫細胞療法の研究開発や、固形がんの治療法の問題点を克服する研究開発をより加速・拡大する目的で、大学及び公的研究機関並びに民間企業及び医療機関等との新たな共同研究開発や連携を、必要に応じて積極的に模索していきます。
しかしながら、これらの共同研究開発が当社の想定どおりに進捗しない可能性があるほか、契約内容によっては、当社において相応の費用負担が生じる可能性があります。さらに、当該契約の更新が困難となった場合又は解除その他の理由により契約が終了した場合においては、当社事業に悪影響を及ぼす可能性があります。
また、当業界においては組織再編やM&Aが盛んであり、共同研究先が組織再編を行ったり、競合他社を買収し又は競合他社から買収されたりするなど、業界における競争の構図が短期間に塗り替えられる可能性があります。こうした大規模な企業組織再編が当社の共同研究先に及んだ場合、当社の事業戦略及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
⑦海外での事業展開について
当社は、当社の開発するPRIME CAR-T細胞療法は、国内のみならず、海外のがん患者にとっても需要があるものと考えているため、米国や欧州等の海外での事業展開も進めており、現時点で複数の海外製薬企業に技術ライセンスを行っております。しかし、海外における医薬品等の研究開発、製造及び販売等の過程においては、製造販売承認、公的保険や知的財産保護等に関する特有の法的規制及び取引慣行並びに政治・経済情勢等による制約を受ける可能性があり、その場合、当社の経営成績及び今後の事業展開に重大な悪影響を及ぼす可能性があります。
また、PRIME CAR-T細胞療法に基づく治療薬を海外で製造・販売するには、原則として、当該国又は地域においてヒトを対象とした臨床試験を実施し、かかる臨床試験の結果を踏まえて、現地法に基づく規制当局の製造販売承認等を取得する必要があります。仮に、日本において臨床試験により有効性・安全性が確認され、また、製造販売承認が得られたとしても、他の国又は地域において、同様に臨床試験で有効性・安全性が確認され、製造販売承認が得られる保証はありません。他方、ある国又は地域において、有効性・安全性が確認できず、製造販売承認が取得できなかった場合等においては、他の国又は地域における製造販売承認の審査に悪影響を及ぼす可能性があります。
⑧環境問題について
当社の研究開発活動においては、特定の危険物を管理・使用しており、それに伴い生じる廃棄物については法令に従った処理が求められております。当社がそのような危険物等の取扱い及び処分に関して採用している安全策が、政府の求める基準に適合していないと判断された場合、規制当局から行政処分その他の措置を受ける可能性や、民事、刑事上の責任を問われる可能性があり、その結果、当社や当社の製品に対する信頼や評価を毀損するほか、事業、財政状態及び経営成績に重大な悪影響を及ぼす可能性があります。また、当該危険物等による環境汚染、人身事故等が発生した場合、多額の賠償責任又は罰金が発生し、当社の事業、財政状態及び経営成績に重大な悪影響を及ぼす可能性があります。
(4)知的財産権に関するリスク
①当社の保有する特許等の知的財産権について
当社は、事業において様々な発明を行い、その発明を基に特許出願しております。これらには、当社単独で出願しもしくは登録されているものや、共同研究先である山口大学により出願されもしくは登録されているもの、又は共同研究先である山口大学やその他の第三者と共同で出願されもしくは登録されているものがあります。また、山口大学が出願・登録している権利については、ライセンス契約により当社に独占的な実施権が許諾されているものが存在します。当社が他者と共有している特許権については、第三者へのライセンス等に際して他の共有者の同意が必要となる場合があり、また、当社がライセンスを受けている特許権については、第三者へのサブライセンス等に際して特許権者の同意が必要となる場合があるため、当社の想定どおりにライセンス先候補へのライセンスを実施できない可能性があります。
特許権の取得及び維持には一定のコストと時間を要し、出願中の発明全てについて特許査定がなされるとは限らず、法令上の手続の不備により出願が失効する可能性もあります。また、特許権の登録がなされた場合でも、登録された特許権の範囲が十分でない可能性、特許異議申立てや特許無効審判が請求されることにより特許権の全部又は一部が無効と判断される可能性や、特許権について研究開発及び製造販売承認の取得に必要な存続期間を確保できない可能性などがあり、そのため、事業の保護や競争上の優位性をもたらさない場合もあります。加えて、第三者より訴訟が提起された場合において、特許権の有効性や帰属などに関する法的な紛争が生じ、当社が実施する権利や当社の社会的信用に何らかの悪影響が生じる可能性があります。さらに、当社が実施可能な特許に係る発明を上回る優れた技術の出現により、当社が実施可能な特許に係る技術が陳腐化する可能性があります。こうした事態が生じた場合には、当社の事業戦略及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
また、当社が保有する又はライセンスを受けている知的財産権が第三者により侵害される可能性もあります。当社としては、このような場合には知的財産権保護のために必要な法的措置を検討していく方針ですが、費用対効果や当該第三者から特許無効審判等を提起される可能性なども勘案し、あえて法的措置に踏み切らない可能性も否定できず、また、法的措置を行った場合でも当社の請求又は主張が認められるとは限りません。加えて、契約等に基づき、法的措置を行うこと等についてライセンス元又はライセンス先が当社に優先して判断できる権利を有している場合には、当社の意向どおりの対応が行われない可能性もあります。これらの場合、当該第三者が当社と競合する製品の商業化を行う可能性も否定できず、そのような場合には、当社の事業及び経営成績に重大な悪影響を及ぼす可能性があります。
なお、特許権に関する法律もしくはその解釈等の変更が行われ、又は、特許権者が第三者に対して実施許諾を与えることを強制する法律が適用された場合や、一部の国・地域において、米国、日本又は欧州諸国の法令と同程度の保護が与えられない場合には、当社による特許権の取得、実施又は保護に支障が生じ、当社の事業、業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
②第三者の知的財産権について
当社は、特許権又は実施権などの一定の排他的権利を確保した上で事業を行っておりますが、当社が保有し又は第三者よりライセンスを受けている権利の行使が、当社の知らない間に第三者の権利を侵害している可能性があります。当社では、第三者の知的財産権に抵触することを回避するため、調査、検討及び評価等を随時実施し、必要に応じて遅滞なくライセンス契約を締結しており、当社の事業に関連した特許権等の知的財産権について、これまで第三者との間で訴訟等の問題が発生したことはありませんが、今後もこれらの問題が発生しない保証はありません。また、製薬企業等の第三者から、当社が当該第三者の企業秘密等を不正に使用している旨の主張がなされる可能性もあります。今後、第三者から当社による権利侵害に関する訴訟等が提起された場合、当社は、弁護士や弁理士と協議の上、その内容に応じて個別具体的に対応策を検討していく方針でありますが、当該第三者の主張に合理的理由があるか否かにかかわらず、解決に多大な時間及び費用を要する可能性や、司法機関等からパイプラインの開発の停止等を命ぜられる可能性があり、当社の社会的信用が悪化するほか、当社の事業、財政状態及び経営成績に重大な悪影響を及ぼす可能性があります。
加えて、当社が、当社の研究開発上必要な知的財産権のライセンスを第三者から取得・維持できるとは限らず、また、仮に当該第三者よりライセンスを取得できたとしても、かかるライセンスの範囲が不十分である可能性、当社に不利な条件を余儀なくされる可能性や非独占的な許諾にとどまり競合他社も当該知的財産権を利用できるなど、当社による当該知的財産権の利用に制約が生じる可能性があり、これにより、パイプラインの研究開発や上市が当社の想定より遅延し、当社の競争上の優位性が低下し、又は想定外の費用が生じること等により、当社の事業、財政状態及び経営成績に重大な悪影響を及ぼす可能性があります。
③職務発明に関する社内対応について
当社が、職務発明規程に基づいて、職務発明の発明者である役職員・従業者等から特許を受ける権利を譲り受けた場合、当社は特許法第35条第4項に定める相当の利益を支払うことになります。また、当社の元従業員や共同研究先等から、職務発明者又は共同発明者等として、当社の所有する又はライセンス付与された特許等について何らかの権利を有する旨の主張がなされ、当社への報酬その他の対価の支払請求がなされる等の問題が生じた場合には、当社の事業、財政状態及び経営成績に重大な悪影響を及ぼす可能性があります。
(5)人材及び組織に由来するリスク
①特定人物への依存について
当社の次世代型CAR-T細胞療法の重要な基盤であるPRIME技術は、当社代表取締役であり、山口大学大学院医学系研究科免疫学教授の玉田耕治らが開発したものであり、当社は、玉田らの研究成果であるPRIME CAR-T細胞療法を事業化することを目的として設立され、現在においても、玉田の成果が当社の研究開発活動の基盤となっております。また、玉田は、当社の最高経営責任者として、当社の経営戦略の決定、研究開発、事業開発及び管理業務の遂行に大きな影響力を有しております。当社では、特定人物に過度に依存しない体制を構築すべく、経営組織の強化を図っておりますが、当面の間は玉田をはじめとする特定人物への依存度が高い状態で推移すると見込まれます。このような状況のなかで、当該特定人物が何らかの理由により当社の役職員としての地位を喪失し、又は当社の業務を継続することが困難になった場合には、当社の研究開発等に重大な支障が生じるほか、当社と山口大学との関係にも悪影響を及ぼすなど、当社の事業戦略や経営成績に重大な悪影響を及ぼす可能性があります。
②人材の確保・育成等について
当社の事業は、その大半が研究者や技術者等の専門性を有する人材に依存しており、かかる専門性を有する人材の獲得とOJT等を通じた人材育成に努めております。しかしながら、投資に見合う人材の確保ができない場合、適切な人材育成が図れない場合、又はコア人材が社外流出した場合には、当社の業務遂行上の支障が生じ、又は事業拡大の制約要因となり、当社の事業、財政状態及び経営成績に重大な悪影響を及ぼす可能性があります。
また、当社は、医薬品業界における豊富な経験を有する経営陣及び研究開発担当者により運営されておりますが、当社経営陣は、上場企業の経営経験については十分とはいえないこと等により、企業組織として未経験のトラブルに適時・適切に対応することができなかった場合には、当社の事業、財政状態及び経営成績に重大な悪影響を及ぼす可能性があります。
③小規模組織について
当社は、取締役5名、監査役3名及び従業員25名(2024年12月31日現在)の小規模組織であり、現在の内部管理体制はこのような組織規模に応じたものとなっております。今後、パイプラインの進捗及び拡大、海外展開といった事業の進展に伴う業容拡大に応じて、内部管理体制の拡充を図る方針でありますが、そのためには費用その他の経営資源を要します。また、当社の事業活動は、事業を推進する各部門の責任者及び少数の研究開発担当者に強く依存しております。現時点では、社内の限られた人員にて業務を遂行していくために、外部の人材を効率的に活用しておりますが、重要な役職員による職務遂行が困難となった場合や、事業の進展に応じて必要な人材や経営資源を適時かつ適切に拡充できない場合には、当社の事業、財政状態及び経営成績に重大な悪影響を及ぼす可能性があります。
(6)第三者への依存に関するリスク
当社は、医薬品の研究開発や製造など当社事業に係る多くの工程において、委託先等の第三者に依存しております。
当社は、国立がん研究センター又は当社のライセンス先が選定した施設を治験実施施設として臨床試験を行っており、また、開発業務受託機関(CRO)に臨床試験に関する業務を一部委託しております。また、当社は免疫細胞の製造設備を有しておらず、開発中の全てのパイプラインに関する化合物の製造及び供給を第三者の医薬品製造受託機関(CMO)に委託しております。さらに、当社の開発する医薬品につき規制当局から製造販売承認を取得した場合においても、当該医薬品の製造及び販売については、第三者に委託することを想定しております。これらの工程に関して、当社が適時かつ適切な条件で第三者に対する委託等を行えない場合には、当社の研究開発や製造・販売等に支障が生じる可能性があります。
また、委託先等の事業活動を当社がコントロールすることはできないため、治験実施施設又は開発業務受託機関(CRO)による臨床試験の実施や医薬品製造受託機関(CMO)による製造及び供給等に係る法令の遵守を完全に確保することは困難であります。加えて、医薬品の販売においても、販売委託先の販売活動を全て当社が管理することは困難であるため、効果的な販売活動が行われない可能性があります。さらに、委託先等において法令に基づく体制整備の不備が発覚する等により、委託業務の遂行に支障・遅延をきたす事態となった場合や、委託先等との関係悪化等を理由に契約関係が解消され、当社が適時に代替策を講じることができなかった場合には、当社の事業、財政状態及び経営成績に重大な悪影響を及ぼす可能性があります。特に、医薬品の製造委託先の変更が必要となった場合には、CAR-T細胞の製造能力を有する事業者は限られている上、製造委託先の変更には長期間にわたる検証及び技術移転並びに規制当局による承認が必要とされることから、必要な規模及び生産能力を有する製造委託先を適時・適切に確保できない可能性があり、その場合、研究開発、製造販売承認の取得、製造及び販売が遅延する可能性があり、当社の事業、財政状態及び経営成績に重大な悪影響を及ぼす可能性があります。
(7)業績等に関するリスク
当社の過去5事業年度の業績等の概要は、以下のとおりであります。
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回次 |
第6期 |
第7期 |
第8期 |
第9期 |
第10期 |
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決算年月 |
2020年12月 |
2021年12月 |
2022年12月 |
2023年12月 |
2024年12月 |
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事業収益 |
(千円) |
97,277 |
100,732 |
625,783 |
316,818 |
7,587 |
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研究開発費 |
(千円) |
413,060 |
514,827 |
334,804 |
646,705 |
579,875 |
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経常損失(△) |
(千円) |
△604,610 |
△792,615 |
△384,202 |
△1,127,594 |
△962,035 |
|
当期純損失(△) |
(千円) |
△636,649 |
△795,035 |
△386,622 |
△1,130,014 |
△964,455 |
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純資産額 |
(千円) |
2,598,379 |
4,185,334 |
4,300,617 |
5,687,452 |
4,725,497 |
|
総資産額 |
(千円) |
2,674,261 |
4,271,049 |
4,641,032 |
5,778,946 |
4,800,172 |
(注)1.第6期(2020年12月期)については、「財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則」(昭和38年大蔵省令第59号)に基づき算出した各数値を記載しております。当該各数値については、金融商品取引法第193条の2第1項の規定に基づく有限責任監査法人トーマツの監査を受けておりません。
2.第7期、第8期、第9期及び第10期については、「財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則」(昭和38年大蔵省令第59号)に基づいて作成しており、金融商品取引法第193条の2第1項の規定に基づき、有限責任監査法人トーマツの監査を受けております。
①社歴の浅さについて
当社は、2015年4月に設立された社歴の浅い企業であって、その全てのパイプラインは研究開発段階にあり、また、上記「(3)事業内容に由来するリスク ⑤収益計上及びその変動性について」に記載のとおり、当社の業績は、製薬企業等との契約締結の可否、契約締結時期及び研究開発等の進捗状況によって、大きく変動する傾向にあります。当社の直近3事業年度の業績は、2022年12月期、2023年12月期及び2024年12月期は、それぞれ、386,622千円、1,130,014千円、964,455千円の当期純損失となっております。このように、過年度の業績から当社の将来の業績等を推測することは困難であります。
②多額の研究開発費に伴う損失計上の見通しについて
当社は、CAR-T細胞療法研究分野における事業を展開するバイオベンチャー企業であります。一般的に、医薬品の研究開発には多額の初期投資を要し、その投資資金回収も他産業と比較して相対的に長期に及ぶため、ベンチャー企業が当該事業に取り組む場合は、期間損益の損失が先行する傾向にあります。
当社は、研究開発費として、2022年12月期では334,804千円、2023年12月期では646,705千円、2024年12月期では579,875千円をそれぞれ計上しております。また、臨床試験のコストは、臨床試験を実施する開発パイプラインの進展や拡大、自社の創薬研究への積極的な取組み等により増加する可能性があり、多額の研究開発費が必要となると想定しております。
他方、当社も、ライセンス先との契約締結や開発の進捗に応じて、契約一時金や開発マイルストン収入などの収益を一時的に計上することがあるものの、開発マイルストン収入の一部やロイヤリティについては、臨床試験で有効な結果が得られ、又は製造販売承認が得られるまで受領することができません。上記のとおり、当社では、主に自社創薬事業において多額の研究開発費が継続して必要となるため、現時点においても研究開発費等を賄う十分な事業収益の計上には至っておらず、2022年12月期、2023年12月期及び2024年12月期において、多額の当期純損失を計上しております。また、今後も安定した収益が獲得できるとは限らず、仮に安定した収益獲得を実現できたとしても、それに至るまでには相応の期間が必要であり、加えて、他の製薬企業との契約締結が進まない可能性や既存のライセンス先との契約解消等が生じる可能性もあるため、投下した研究開発費用を回収できる保証はありません。当社は、今後も当面は損失の計上を想定しており、開発中の医薬品が上市され安定的な収益基盤が確立されるまでは、事業収益、当期純利益(損失)は不安定に推移し、当社の資金調達、研究開発の継続や事業の継続・拡大に悪影響を及ぼす可能性があります。
③資金繰りについて
当社は、主に「自社創薬」における研究開発費用の負担により、長期に亘って先行投資の期間が続きます。この先行投資期間においては、継続的に営業損失を計上し、営業活動によるキャッシュ・フローもマイナスとなる傾向があります。また、開発中のパイプラインが製造販売承認の取得に至らなかった場合、先行投資された資金は回収不能となります。このため、当社製品が上市され、安定的な収益源が確保されるまでの期間においては、当社の資金繰りは極めて高いリスクに晒されており、財務基盤の強化のため、必要に応じて資金調達等を実施する可能性があります。しかし、適切なタイミング及び条件で資金調達できる保証はなく、当社が必要な資金を調達できなかった場合は、当社の事業の継続に重大な懸念が生じる可能性があります。
④調達資金使途について
株式上場時における公募増資による調達資金の使途については、医薬品の研究開発を中心とした事業費用に充当する計画です。ただし、医薬品開発に関わる研究開発活動の成果が収益に結びつくには長期間を要する一方で、研究開発投資から期待した成果が得られる保証はなく、また、当社の判断により調達資金を上記以外の目的で使用する可能性があり、その結果、調達した資金の投資が期待される利益に結びつかない可能性があります。
(8)その他のリスク
①山口大学をはじめとする各大学・研究機関教職員の兼業に係る利益相反の回避について
当社は、自社での研究開発活動のほか、山口大学と共同研究を実施しております。また、同大学は当社の新株予約権を、同大学の技術移転機関である有限会社山口ティー・エル・オーは当社株式を、それぞれ保有しております。
加えて、当社の代表取締役である玉田耕治は山口大学大学院医学系研究科免疫学教授を兼業しているほか、各大学・研究機関の研究者が同様に当社顧問等として兼業しております。
上記に対しては、利益相反等の行為の発生を防止するため、社外役員が半数を占める任意の利益相反委員会を設置し、当該委員会が確認主体となって利益相反取引の有無や取引条件の妥当性に係る協議を行い、取締役会に報告する体制を整備しております。
このように、当社としては、利益相反等の行為が発生しないように法規制等を遵守するとともに、当社の企業運営上取締役会の監視等を通じて十分留意しておりますが、このような留意にかかわらず、利益相反等の行為が発生した場合には、当社の利益を損ねる可能性があるほか、社会的に指弾を受ける等の不利益を被り、その結果として、当社の業績等に悪影響を及ぼす可能性や当社の事業の継続に重大な懸念が生じる可能性があります。
②資金調達について
当社は、主に「自社創薬」事業において多額の研究開発費用を要します。当社に資金需要が生じた場合は、増資を含む資金調達を検討する可能性がありますが、市場における需給環境の悪化等により、当社に有利な条件で適時に必要な資金を調達できる保証はありません。また、増資を通じた資金調達の実施により、新規の投資家に対して既存株主より有利な条件で株式等が発行される可能性や、当社の発行済株式数が増加することにより、1株当たりの株式価値が希薄化するとともに、当社株式の市場価格が下落する可能性があります。また、負債性の資金調達を行う場合には、当社の事業活動を制約する契約条件が付される可能性もあります。
当社が機動的な資金調達を行うことができなかった場合には、当社の研究開発体制及び計画の見直しが必要となり、当社製品の上市が延期されるなど、当社の事業、財政状態及び経営成績に重大な悪影響を及ぼす可能性があります。
③新株予約権の行使による希薄化について
当社は、会社の利益と役員及び従業員個々の利益を一体とし、職務に精励する動機付けを行うため、また、社外のリソースを有効に活用し当社事業の円滑な遂行を図る目的で、当社の役員、従業員及び社外協力者等に対し新株予約権を付与しております。また、今後もインセンティブプランとしての新株予約権制度を継続していく方針であります。
当事業年度末現在における当社の発行済株式総数は43,301,765株でありますが、これに対して、新株予約権の対象である株式数の合計は2,691,500株であります。当該新株予約権が行使された場合は、当社の株式価値は希薄化することとなり、株価へ影響を及ぼす可能性があります。
④感染症の感染拡大及び自然災害等の発生について
高毒性の変異株等による新型ウイルス感染症の感染拡大及び長期化により、世界経済や金融市場に重大な支障が生じ、また、各国政府の行動制限等の施策により、企業の生産活動が停止し又は制約を受ける可能性があります。
また、当社やライセンス先等の関係者の各事業所並びに当社や関係者が関与する研究、臨床試験及び製造を実施又は準備している地域において、高毒性の変異株等による新型コロナウイルス感染症その他の感染症の拡大、地震・風水害・火災等の大規模な自然災害や戦争・紛争等の人的災害が発生した場合には、従業員への被害、設備等の損壊やインフラの機能停止等が生じる可能性があります。
これらの事象により、当社や関係者の事業活動や臨床試験が停止し、又はその開発する医薬品の製造に支障が生じた場合には、当社の事業、財政状態及び経営成績に重大な悪影響を及ぼす可能性があります。
⑤配当政策について
当社は、株主の皆様への利益還元を重要な経営課題の一つとして認識しており、財政状態及び経営成績を勘案しつつ利益配当を検討する所存です。しかしながら、現時点では、自社パイプラインは研究開発段階にあるため、当面は内部留保に努め、研究開発資金の確保を優先する方針でおります。このため、当社はこれまで剰余金の配当を実施しておらず、研究開発活動の継続のために経営資源を投入して、医薬品の製造販売承認の取得及び上市を達成することが、企業価値向上、ひいては株主利益の最大化に繋がるものと考えております。
⑥情報管理について
当社は、当社が関与する臨床試験に関する情報、その他の個人情報、個人遺伝情報を含む機密情報、事業上のノウハウや営業秘密の管理について、社内規程等を整備し、役員及び従業員に対し情報管理の重要性を周知徹底するとともに、システムのセキュリティを高く設定し常時監視しておりますが、そのために多額のコストを要する可能性があり、また、通信インフラの破壊や故障、当社の役職員又はライセンス先等の故意又は不注意、事故、セキュリティ障害、サイバーアタック等により、当社が利用しているシステム全般が正常に稼働しない状態に陥った場合、又は情報漏えい及び不具合が発生した場合等には、当社の社会的信用、事業、財政状態及び経営成績に重大な悪影響を及ぼす可能性があります。
また、当社は、諸外国の法令を含め、変化の激しいデータプライバシー及びセキュリティに関する規制等の適用を受けますが、これらの規制等を遵守できなかった場合、当社の社会的信用が悪化し、又は当社が業務停止を含む法令上の措置・制裁や訴訟の対象となる可能性があり、当社の事業、財政状態及び経営成績に重大な悪影響を及ぼす可能性があります。
⑦風説・風評の発生
当社や当社の関係者、当社の取引先等に対する否定的な風説や風評が、マスコミ報道やインターネット上の書き込み等により発生・流布した場合、それが正確な事実に基づいたものであるか否かにかかわらず、当社の社会的信用に悪影響を与え、当社の事業、財政状態及び経営成績に重大な悪影響を及ぼす可能性があります。
⑧訴訟・紛争について
当社は、事業活動を行う中で第三者から訴訟を提起される可能性があり、かかる訴訟において当社に不利な判決等又は和解がなされた場合には、当社は多額の金銭の支払義務を負い、又は当社の社会的信用が毀損される可能性があります。また、訴訟対応のため、時間、費用その他の経営資源を費やす必要が生じます。その結果、当社の事業、財政状態及び経営成績に重大な悪影響を及ぼす可能性があります。
⑨内部統制について
当社は、法令に基づき、財務報告の適正性確保のために内部統制システムを構築し運用する予定ですが、当社の財務報告に重大な欠陥が発見される可能性は否定できず、また、将来にわたって常に有効な内部統制システムを構築及び運用できる保証はありません。さらに、内部統制システムには内在する固有の限界があるため、今後、当社の財務報告に係る内部統制システムが有効に機能しなかった場合や、財務報告に係る内部統制システムに重大な不備が発生した場合には、当社の財務報告の信頼性に悪影響を及ぼす可能性があります。
⑩大株主との関係について
武田薬品工業株式会社は、当事業年度末現在、当社議決権の18.75%を所有する大株主であります。また、同社は、当社パイプラインのライセンス先の地位にありましたが、2023年12月15日付で武田薬品よりライセンス契約を解消し開発と商業化に関する権利を当社へ返還する旨の通知を受け、2024年6月22日にライセンス契約を終了いたしました。
当社は、同社との間で特段の人的関係を有しておりません。また、同社グループとは今後も協力関係を維持していく方針でありますが、同社グループによる当社経営への関与は特になされておらず、当社は、同社グループにおいて今後も当社経営に積極的に関与する等の意向はないものと認識しております。
また、株式会社鶴亀は、同社の代表取締役を務める荻原弘子氏が全ての議決権を所有する、同氏の資産管理会社であり、当事業年度末現在、当社議決権の16.53%を所有する大株主であります。なお、荻原弘子氏は、当事業年度末現在、当社議決権の2.30%を所有しております。
株式会社鶴亀は、当社の創業時に資金援助等を行った投資家でありますが、本書提出日現在、当社との人的関係、取引関係及び経営上の関与は特にありません。
これらの株主は、当社株式の上場後においても、当社の取締役の選解任を含む株主の承認を必要とする事項について引き続き一定の影響力を有します。さらに、これらの株主は、当社の運営その他の事項に関し、当社の一般株主と異なる利害関係を有している可能性があり、これらの株主が保有する株式に係る議決権行使は、一般株主の利害と異なる可能性があります。
⑪ベンチャーキャピタル等について
当事業年度末における当社の発行済株式のうち、ベンチャーキャピタル及びベンチャーキャピタルが組成した投資事業組合(以下総称して「VC等」という。)が所有している株式の所有割合は5.09%です。
一般に、VC等が未公開株式に投資を行う目的は、株式公開後に保有株式を売却してキャピタルゲインを得ることであり、VC等は、株式公開後にそれまで所有していた株式の一部又は全部を売却します。現在、VC等が所有している当社の株式についても、今後売却することが想定されます。なお、当該株式売却によっては、短期的な需給バランスの悪化が生じる可能性があり、当社株式の市場価格が低下する可能性があります。
⑫株式価値評価について
当社の有するPRIME技術は先端技術であり、それに対する専門家の技術評価も分かれる可能性があります。また、当社のパイプラインは、最も開発が進んでいるものでも第I相臨床試験の段階にあり、今後の臨床試験の結果や臨床応用の可能性等について不確実性が存在します。そのため、当社の株式価値の評価は難しく、機関投資家又は一般投資家の見解が分かれた場合には、株価が大きく変動する可能性があります。
(1)経営成績等の状況の概要
当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。なお、当社は、がん免疫療法創薬事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載を省略しております。
①経営成績の状況
当社は、「がんを克服できる社会の創生に貢献する」という経営理念の下、当社の独自技術であるPRIME (Proliferation-inducing and migration enhancing) 技術を用いた固形がんに対するCAR-TやTCR-Tなどの遺伝子改変免疫細胞療法の研究開発に取り組んでおります。
当事業年度における当社事業の概況としまして、PRIME技術を基盤とした自社創薬事業及び共同パイプラインを引き続き推進いたしました。自社創薬事業におきましては、当社パイプラインNIB102及びNIB103の武田薬品からの返還が完了し、武田薬品から移管されたデータの評価結果を基に、当社が保有する臨床ステージのパイプラインNIB101、NIB102及びNIB103、また、非臨床ステージのパイプラインNIB104及びNIB105の各開発進捗状況を踏まえ、今後当社が主体となって進める開発品目として、NIB103の新たな第Ⅰ相臨床試験の開始を最優先事項として取り組む方針を決定いたしました。また、タカラバイオ株式会社との間でNIB103の共同開発に関する提携を行い、国内におけるNIB103の製造体制を確立すると同時に、開発のさらなる効率化、加速化を進めております。なお、NIB103以外の自社創薬パイプラインについては、共同開発を含めたあらゆるアプローチを介して開発の推進を目指すとともに、NIB104やNIB105の早期の臨床ステージ移行に取り組んで参ります。また、当社はこれらに続く新たなパイプラインや次世代技術に関する研究について引き続き実施しております。2017年より継続している国立大学法人山口大学との共同研究においては、引き続きCAR-TやTCR-Tを中心とした次世代型遺伝子改変細胞療法、他家細胞を利用したがん免疫細胞療法、次世代型PRIME技術に関する研究を実施しております。
共同パイプラインにおきまして、従前よりPRIME技術をライセンスしているAdaptimmune therapeutics plc, Autolus therapeutics plc及び中外製薬による研究開発が引き続き進行しております。また、技術評価に関する契約を締結している第一三共において評価研究を実施中です。
以上の結果、当事業年度における事業収益は7,587千円(前年同期比97.6%減少)を計上した一方で、開発の継続により営業損失は1,069,183千円(前事業年度は775,391千円の営業損失)、パイプラインの優先順位の変更に伴う開発委託先との契約解消により受取精算金106,915千円が発生し、経常損失は962,035千円(前事業年度は1,127,594千円の経常損失)、当期純損失は964,455千円(前事業年度は1,130,014千円の当期純損失)となりました。
なお、当社は、がん免疫療法創薬事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載を省略しております。
②財政状態の状況
(資産)
当事業年度末の総資産は4,800,172千円となり、前事業年度末に比べ978,774千円減少しました。これは主に、現金及び預金が884,751千円減少したこと等によるものであります。
(負債)
当事業年度末の負債は74,675千円となり、前事業年度末に比べ16,819千円減少しました。これは主に、未払金が10,226千円、未払法人税等が6,593千円減少したこと等によるものであります。
(純資産)
当事業年度末の純資産は4,725,497千円となり、前事業年度末に比べ961,955千円減少しました。これは主に、当期純損失の計上により利益剰余金が964,455千円減少したこと等によるものであります。
③キャッシュ・フローの状況
当事業年度末における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、4,670,939千円となり、前事業年度末に比べ884,751千円減少しました。当事業年度におけるキャッシュ・フローの状況は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動に使用した資金は、887,809千円(前事業年度は873,076千円の使用)となりました。これは主に、税引前当期純損失962,035千円の計上等によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動で得た資金は、557千円(前事業年度は5,316千円の使用)となりました。これは主に、研究施設減床のための差入保証金の回収による収入567千円等によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動で得た資金は、2,500千円(前事業年度は1,913,086千円の収入)となりました。これは、新株予約権の行使に伴う株式の発行による収入2,500千円によるものであります。
④生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当社は生産活動を行っておりませんので、該当事項はありません。
b.受注実績
当社は受注生産を行っておりませんので、該当事項はありません。
c.販売実績
当社の販売実績は、次のとおりであります。なお、当社はがん免疫療法創薬事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載を省略しております。
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セグメントの名称 |
当事業年度 (自 2024年1月1日 至 2024年12月31日) |
前年同期比(%) |
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がん免疫療法創薬事業 (千円) |
7,587 |
△97.6 |
|
合計 (千円) |
7,587 |
△97.6 |
(注)最近2事業年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
|
相手先 |
前事業年度 (自 2023年1月1日 至 2023年12月31日) |
当事業年度 (自 2024年1月1日 至 2024年12月31日) |
||
|
金額(千円) |
割合(%) |
金額(千円) |
割合(%) |
|
|
中外製薬 |
301,405 |
95.1 |
- |
- |
|
第一三共 |
10,499 |
3.3 |
7,500 |
98.9 |
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものであります。
①重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に基づき作成されております。その作成には、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りを必要とします。経営者は、これらの見積りについて過去の実績等を勘案し合理的に判断していますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、特に重要なものの内容及び金額は下記「第5 経理の状況 1 財務諸表等(1)財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。
②経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社は、がん免疫療法分野において次世代を担うリーディングカンパニーを目指し、事業に取り組んでおります。PRIME技術により固形がんに対するCAR-Tの有効性を高め、様々な固形がんに対するCAR-T細胞療法を創成するとともに開発能力を拡大するため、日々研究開発を進めております。
当事業年度の経営成績及び財政状態に関する認識及び分析・検討内容については、上記「(1)経営成績等の状況の概要 ①経営成績の状況」に記載しております。
③キャッシュ・フローの状況の分析
キャッシュ・フローの状況に関する認識及び分析・検討内容につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要③キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
④経営成績に重要な影響を与える要因について
上記「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。
⑤資本の財源及び資金の流動性についての分析
当社はがん免疫療法に特化した研究開発型ベンチャー企業であり、資金需要の主なものは、研究人員にかかる人件費、研究用設備費用や研究開発のための外部委託費用などの研究開発費や、経営管理にかかる販売費及び一般管理費などの運転資金(事業費用)であります。
当社は、今後の外部環境の変化に備えて、事業上必要な資金については手元資金で賄う方針としており、事業収益が限定される現在では、事業収益による資金の獲得のほか、第三者割当増資による調達を行っております。手元資金については、資金需要に迅速かつ確実に対応するため、流動性の高い銀行預金により管理しております。
今後は、さらなる新規パイプラインの獲得に向けて一時的に資金を要する場合や、急激な景気変動等により手元資金が不足する場合には、経費コントロールによる支出の抑制や第三者割当増資に伴う新株発行によるエクイティファイナンスを含めた多様な調達方法を、資金需要の額や使途に合わせて柔軟に活用し、対応していく予定であります。
⑥経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等についての分析
上記「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (3)経営上の目標の達成状況を把握するための客観的な指標等」に記載のとおりであります。
(1)共同研究開発に関する契約
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相手先の名称 |
契約の名称 |
契約期間 |
契約内容 |
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山口大学 |
共同研究契約書 |
2016年8月1日から 2025年3月31日まで |
がん抗原を標的とする免疫機能制御因子発現キメラ抗原受容体発現T細胞療法の臨床応用を目指した研究開発 |
|
山口大学 |
共同研究契約書 |
2016年8月1日から 2025年3月31日まで |
免疫機能制御因子を利用したキメラ抗原受容体発現T細胞療法を含む免疫細胞療法の臨床応用を目指した研究開発 |
|
山口大学 |
共同研究契約書 |
2018年4月1日から 2025年3月31日まで |
免疫機能制御因子を利用したがん免疫療法の臨床応用を目指した研究開発 |
(2)ライセンスインに関する契約
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相手先の名称 |
契約の名称 |
契約期間 |
契約内容 |
|
山口大学及び有限会社山口ティー・エル・オー |
実施許諾契約書 |
2015年10月1日から 特許権の存続期間満了まで |
PRIME技術の基本特許の独占的ライセンス契約 なお、各当事者は、他の当事者に契約違反があり、かつ所定の期間内に是正されない場合には、契約を解約することができる。 |
|
山口大学及び国立がん研究センター |
特許外国出願及び特許権実施許諾に関する契約 |
2018年4月23日から特許権等の存続期間満了日まで |
抗GPC3抗体に関する特許等の独占的ライセンス等に関する契約 なお、各当事者は、他の当事者に契約違反があり、かつ所定の期間内に是正されない場合には、契約を解約することができる。 |
(3)ライセンスアウトに関する契約
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相手先の名称 |
契約の名称 |
契約期間 |
契約内容 |
|
Adaptimmune Limited |
Collaboration agreement |
2019年8月26日から契約に定められた期間中 |
1.Adaptimmune Limitedにより選定された標的分子に対して、PRIME技術を導入した次世代型SPEAR T-cellsの全世界における医薬品用途での独占的な開発、製造、販売のための権利を付与する。 2.Adaptimmune Limitedより、契約一時金、開発段階及び上市後の売上高に応じたマイルストン収入、並びに上市後の売上に応じたロイヤリティを受領する。(※) 3.Adaptimmune Limitedは、事前に当社に通知することにより、同社に付与された上記の独占的ライセンスを終了させることができる。そのほか、契約当事者は、相手方に重大な義務違反等があった場合には、契約を解除することができる。 |
|
相手先の名称 |
契約の名称 |
契約期間 |
契約内容 |
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Autolus Limited |
License agreement |
2019年11月12日から契約に定められた期間中 |
1.Autolus Limitedにより選定された標的分子に対して、PRIME技術を導入したCAR-T細胞療法を開発、製造、販売するための権利を付与する。 2.Autolus Limitedは、2023年11月12日までの間、標的分子を最大2種類まで追加的に選定する権利を有する。 3.Autolus Limitedより、契約一時金のほか、開発段階及び上市後の売上高に応じたマイルストン収入並びに上市後の売上に応じたロイヤリティを受領する。(※) 4.Autolus Limitedは、事前に当社に通知することにより、契約の全部又は一部を解除することができる。そのほか、契約当事者は、相手方に重大な義務違反があった場合には、契約を解除することができる。 |
|
中外製薬 |
License agreement |
2022年8月20日から契約に定められた期間中 |
1.中外製薬に対し、PRIME CAR-T細胞の創製及び研究のためのPRIME技術の非独占的な使用権とともに、当該技術を用いて創製した特定の標的分子を対象とするPRIME CAR-T細胞製品及び療法を開発・製造・販売する独占的な権利を許諾する。 2.中外製薬より、契約一時金及び技術移転費用、開発段階及び上市後の売上に応じたマイルストン収入、並びに上市後の売上に応じたロイヤリティを受領する。(※) 3.特定の国又は製品に関して、所定のロイヤリティ支払期間の満了により、又はロイヤリティ支払期間が発生しない場合には、中外製薬による当社への各種対価の支払義務の全ての履行により、当該国又は製品について契約が終了する。中外製薬は、事前に当社に通知することにより、同社に付与された上記の開発・製造・販売に関する独占的ライセンスの全部又は一部を終了させることができる。そのほか、本契約の当事者は、相手方に重大な義務違反等があった場合には、契約の全部又は一部を解除することができる。 |
※ 共同パイプラインのロイヤリティは、通常一桁%台の前半から半ばです。
(4)当事業年度において解約した重要な契約
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相手先の名称 |
契約の名称 |
契約期間 |
契約内容 |
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Millennium Pharmaceuticals, Inc. |
Amended and restated collaborative research and option agreement |
2018年12月10日から定められた期間中 |
1.Millennium Pharmaceuticals, Inc.に対し、固形がんを治療対象としたNIB102、NIB103及びその他のメソセリン(Mesothelin)を標的抗原とするCAR-Tの開発、製造、販売に関する、全世界における独占的ライセンスを付与する。 2.当社は、2018年12月10日以降一定期間の間、原則として、上記標的抗原に係るCAR-T細胞を用いた医薬品等の研究開発及び商用化等を行うことができない。 3.Millennium Pharmaceuticals, Inc.より、契約一時金のほか、開発段階に応じたマイルストン収入及び上市後の売上高に応じたロイヤリティを受領する。(※) 4.Millennium Pharmaceuticals, Inc.は、上記標的抗原に係るCAR-T細胞を用いた医薬品が上市するまでの間、事前に当社に通知することにより、契約の全部又は一部を解除することができる。また、同社は、安全上の理由に基づき、事前に当社に通知することにより、契約を解除することができる。そのほか、契約当事者は、相手方に重大な義務違反等があった場合には、契約の全部又は一部を解除することができる。 |
※ 当社は、2018年12月のMillennium Pharmaceuticals, Inc.によるオプション行使時に、一時金合計1,300万ドルを受領しております。
当社は、がん免疫療法に特化した研究開発型ベンチャー企業として、設立以来積極的な研究開発を行っております。詳細は、上記「第1 企業の概況 3 事業の内容」をご参照ください。
研究開発費の主な内訳は、大学等の研究機関や製薬企業との共同研究を含む当社が保有するパイプラインの開発費、次期パイプラインの基礎研究及び創薬研究、創薬基盤技術の研究、並びに特許出額に係る費用で構成されております。
当事業年度における研究開発費の総額は
研究開発費の主な内容は、研究開発人員の人件費、研究施設に関する地代家賃、研究用材料費及び臨床開発の準備にかかる費用であります。自社創薬パイプラインについては、NIB102及びNIB103については武田薬品からの返還が完了し、武田薬品から移管されたデータの評価結果を基に、NIB103の新たな第Ⅰ相臨床試験の開始を最優先事項として取り組む方針を決定いたしました。また、タカラバイオ株式会社との間でNIB103の共同開発に関する提携を行い、国内におけるNIB103の製造体制を確立すると同時に、開発のさらなる効率化、加速化を進めております。NIB103について、当社は2025年の早い時期の治験届提出を目指し取り組んで参ります。なお、NIB103以外の自社創薬パイプラインについては、共同開発を含めたあらゆるアプローチを介して開発の推進を目指すとともに、NIB104やNIB105の早期の臨床ステージ移行に取り組んで参ります。また、当社はこれらに続く新たなパイプラインや次世代技術に関する研究について引き続き実施しており、相応の研究開発費の発生を見込んでおります。
共同パイプラインについては、2019年8月にAdaptimmune Therapeutics plc、2019年11月のAutolus Therapeutics plc及び2022年8月に中外製薬とライセンス契約を締結しており、各社が研究開発を実施しております。また、2021年10月に技術評価契約を第一三共と締結しております。