第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 

文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであります。

 

(1) 経営方針

当社は「つくろう。世界が愛するカルチャーを。」を企業ミッションとしております。日本発のエンターテインメント・カルチャーを作り出し世界中のユーザーに広めていくことにより、日本のユニークな強みであるアニメ、ゲームといった文化に関わるクリエイターの活動の場を増やしていくことを目指しております。

 

(2) 中長期的な経営戦略等

当社は中長期戦略として、①付加価値の高いIPの開発とファンベースの確立、②コマース展開と先行投資、③メタバースサービスの展開の3段階の事業拡大戦略を掲げております。

 

① 付加価値の高いIPの開発とファンベースの確立

デジタル・エンターテインメントにおいて高い成長性と収益性を安定的に維持するには、付加価値の高いIPを保有し、継続的に生み出す仕組みの確立が重要と考えております。付加価値の高いIPを自社で多数保有し、それらを活かした関連ビジネスを多面的に展開することにより、収益基盤の確立と消費者からの継続的な認知拡大を両立することが可能になると考えております。

 

当社ではYouTube等の動画配信プラットフォームを通じて、高頻度にVTuberのライブ配信、3Dモーション・キャプチャー・スタジオを用いたバーチャルライブ・コンサート、IPアセットを用いたアニメーション・コンテンツ等の供給を行っており、当社所有YouTubeチャンネルの累積動画コンテンツ供給数は約6.8万本、それらの動画コンテンツの累計再生回数は約106億回に上ります(注1)。

 

また、当社では二次創作ガイドラインを定めた上でファンによる二次創作活動を幅広く奨励しており、YouTube上での当社コンテンツの字幕翻訳等の二次創作動画の累計再生回数は主要な二次創作者によるものだけでも72億回以上(注2)に上ります。

 

こうした、大規模なPGC(注3)供給及びそれに呼応するUGC発信の文化形成の結果として、当社のVTuberは幅広いファンからの支持を得ていると認識しております。当社が保有するホロライブプロダクションのYouTubeチャンネル登録数は延べ7,500万以上、VTuberあたりの当社年間収益は2023年3月期において約2.7億円(注4)となっており、大きなファンベースの存在が魅力的な演者や国内外の主要なクリエイターとの継続的な共創を可能としています。結果として、当社は2023年3月時点で日本、北米(英語圏地域)、東南アジア地域それぞれにおいてYouTubeチャンネル登録数No.1(注5)のVTuber IPを有しております。

 

今後もクリエイターやファンとの共創により、付加価値の高いIPを継続的に開発することで日本発のエンターテインメント・カルチャーを世界に広め、クリエイターの活躍や日本文化のさらなる発展を後押しすることを目指しております。

 

(注) 1.2023年3月31日時点。

2.出所:ユーザーローカル。2023年4月17日時点。YouTube上に存在する当社コンテンツの切り抜きを扱うチャンネルのうち、総再生回数が上位の200チャンネルについて実績を集計しております。

3.PGCとはProfessionally Generated Contentsの略称であり、プロフェッショナルにより製作されたコンテンツを指すことであります。

4.VTuberあたり収益は当該期間の売上高を当該期末の在籍VTuber数で除して算出。

5.出所:ユーザーローカル。2023年4月17日時点、VTuberランキング(ファン数ランキング)、現在活動休止中のVTuberを除く順位。

 

 

② コマース展開と先行投資

VTuberの特徴の一つとして、コマース展開の多様性が挙げられます。アニメルック・アバターで活動するVTuberはキャラクター・コンテンツIPとしての側面を持つため、漫画、アニメ、ゲームといったコンテンツIPと同様に、必ずしも演者の稼働を前提とせずに多様なコンテンツや商品としての展開が可能です。

今後こうした多面的なIP展開の更なる拡大を企図して、足許ではIPコンテンツ開発、モーション・キャプチャー・スタジオ拡充、統合IDサービス開発(注6)、及び2024年内の一般向けサービス開始を目指すメタバースサービスの開発等に係る先行投資を行っております。

 

(注) 6.統合IDサービスとはECやメタバース等の当社が提供する複数のサービスに関するユーザー情報をサービス横断で統合されたIDとアカウントで管理するサービスのことであります。

 

グループIP及びユニットIPのプロデュース

当社では個別のVTuber IPの開発に加えて、VTuber・バーチャルアイドルグループ「hololive」のようなグループIP、及び統一感のあるキャラクター・コンセプトや世界観を前提とした「秘密結社holoX(ホロックス)」のようなユニットIPのプロデュースを行っており、これにより個別のVTuberのファン層に留まらない幅広な顧客層へのリーチが可能となっている他、世界観を活かしたメディアミックス展開(注7)や外部グローバルブランドとのコラボレーションなどの多面的な事業展開にもつながっております。具体的な事例として、2022年には「秘密結社holoX」を題材としたコミカライズ企画「ホロックスみーてぃんぐ!〜holoX MEETing!〜」が集英社の配信・発行する「少年ジャンプ+」及び「ウルトラジャンプ」にて連載された他、Red Bullとのタイアップ広告やInnerSlothの展開するオンラインゲーム「Among Us」におけるゲーム内コラボのような国際的に認知度の高いブランドとのコラボレーション企画も行われております。

 

グループ又はユニットIPのコマース展開については、それらをプロデュースする企画運営、及びそうしたIPに蓄積されたブランド力の重要性が高く、関連するグッズ等のマーチャンダイジング展開においても個別VTuberの集客稼働のみに依存した展開よりも収益性が高くなっております。

また、グループ又はユニットIPのプロデュースにおいては、複数のVTuberが共演可能な大型のモーション・キャプチャー・スタジオの活用やそれに伴う技術開発も重要となっていることから、2023年春からは多人数のVTuberの共演及びライブ配信が可能な、国内でも有数の大型モーション・キャプチャー・スタジオの稼働を開始しております。

 

加えて、当社はVTuber IPの3Dモデルを活用したアニメーションやライブコンサートの制作チームを有しており、YouTube上での3Dアニメーションの累計コンテンツ数は約207作品、YouTube上での3Dライブコンサートの配信数は年間約90件に上ります(注8)。こうした3Dアニメーション展開や臨場感のある3Dモデル・ライブパフォーマンスが、視聴者のVTuber IPへの接点の増加、エンゲージメントの向上、及びIPのコンセプトや世界観の浸透等に寄与すると考えております。

 

コマースのグローバル展開

当社はECを通じたVTuber IPグッズの国内外各地域への販売、国内外のメーカーや小売企業等への当社IPのライセンスアウト等を通じてグローバルにコマースの展開を行っております。2023年3月期においてECからの海外顧客に向けた販売額は全体の約3割となっております。

 

当社は(i)翻訳等を通した既存IPコンテンツの海外ローカライズとSNS等を通した現地コミュニティ形成(ii)海外現地言語話者のVTuber IPの開発や現地イベント開催による海外地域への本格進出(iii)海外現地向けのコマース展開の本格化と現地サプライチェーンの構築というステップを踏むことにより、着実な海外展開を実施しております。海外地域の顧客層の潜在的な消費余力に対してコマースの拡大余地は大きいと考えられることから、今後も積極的な海外向け商品及びサービスの開発を予定しております。

 

また、グローバルなユーザーコミュニティの拡大と多面的なコマース展開戦略の一環として、ファン向けの統合IDサービスの提供を予定しております。これにより、特定のVTuber又はVTuberグループ・ユニットのファン毎に最適化された商品・サービスの提供を行うことができるようになる他、動画配信プラットフォーム等でのコンテンツ視聴、ファンコミュニティでの交流、ECでの購買、及びメタバースサービスの利用等においてより統合的な体験の提供を目指します。

 

(注) 7.メディアミックス展開とは、原作のIPを漫画やアニメといった複数のメディアで多面的に展開することであります。

8.2023年3月31日時点。

 

③ メタバースサービスの展開

当社は、アニメルックの3D空間でVTuberやそのファン同士が交流できるサービスプラットフォームとして、メタバースサービス「ホロアース」の開発を行っており、2024年内の一般向けサービス開始を目指しています。これまでのYouTube等の複数のプラットフォームでのVTuberやファンの活動及び交流に加え、ホロアース上では同時性を持った臨場感のあるコミュニケーションが可能となり、より豊かな体験価値をファンへ提供可能となる予定です。

 

ホロアースについて「ロビー」「バーチャルライブ」「サンドボックスゲーム」の3つの機能を基礎として構成される想定です。

 

「ロビー」では独自のアニメルック・3Dアバターをベースとした参加者同士での同時性を持った臨場感あるコミュニケーションが可能となり、アバター向けのモデルや衣装等デジタルアセットの販売も行われる予定です。

 

「バーチャルライブ」では、ユーザーがVTuberと同じ3D空間に参加しながらVTuberによるライブコンサートを楽しむことが可能となります。バーチャル空間での提供を前提としたライブコンサートはオフライン会場での提供を前提としたものとは異なるユニークな演出も可能であり、視聴者は同一バーチャル空間上で参加することでより没入感と臨場感のある体験が可能となります。

 

「サンドボックスゲーム」では、ユーザーが広い3Dバーチャル空間を自由に散策しながら、空間内での創作活動を楽しむことが可能になる想定です。広大な世界でのサバイバル生活という自由度の高いゲーム体験があることにより、ユーザーがアバターは自身の分身であることの認識を深める機会となる他、ゲーム内で手に入れたものをロビーに持ち帰ることにより、ただゲームで遊ぶだけではなく仮想世界で過ごした実感を得ることができます。また、当社の所属VTuberがライブ配信の舞台装置としてサンドボックスゲームを活用することにより、ユーザーはリアルタイムでドラマが生まれていく過程を同一の3Dバーチャル空間内で共有することができるようなユニークな体験の提供を企図しております。

 

他のメタバースサービスの開発・運営者と比較した当社の独自性として、当社がVTuber IPを自社で保有しており、平時からVTuberと世界中のファンのリアルタイムな交流を運営していることが挙げられます。そうしたユーザー体験と統合的なサービスとしてホロアースを自社で開発・運営することにより、コミュニティ・サービスとしてホロアースの継続的な集客と拡大を行うことを想定しております。

 

(3) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

当社はVTuberのファン数の直接的な指標である「YouTubeチャンネル登録数」、並びに魅力的なコンテンツ制作の原資となる「売上高」及び「サービス別売上高」を重要な経営指標と位置づけ、企業価値の向上を図って参ります。

 

(4) 経営環境

当社が提供するVTuber事業は、VTuberというキャラクターIPを中心として、配信/コンテンツ、ライブ/イベント、マーチャンダイジング、ライセンス/タイアップ、及び開発中のメタバースサービスと多岐にわたる領域に広がっております。VTuber市場は比較的新しい市場であるもののその潜在市場規模や動向は広義のアニメ関連IPビジネス市場から類推可能であると考えております。

 

 

2021年の同市場については動画配信プラットフォーム等を通じたアニメコンテンツ配信市場規模は1,543億円程度となっており、その他各種メディアでのコンテンツ提供、商品化、音楽、イベント興行等を含む広義アニメ市場は国内で1.4兆円程度、海外も含むグローバルで2.7兆円程度となっております(注9)。新型コロナウイルス感染症の影響により、屋内型の消費行動が増加する中、アニメ関連コンテンツのインターネット動画配信を通じた消費は、テレビや映画等の他のメディアを通じた消費を代替しながら国内及び海外で拡大しており、日本のアニメ文化は以前にも増して広く国際的に受け入れられている状況にあります。

 

市場全体が好調に推移する中、当社事業の直接競合他社も複数確認されている状況にありますが、日々ライブ配信コンテンツを提供する当社のVTuberとそれに呼応する形でソーシャルメディア等を通じた自律的な発信を行うファンからなる大規模なファンコミュニティの存在が新規参入事業者に対する当社の競争優位性として機能していると当社は考えております。

 

また、現在開発中のメタバースサービスが提供する体験価値はゲームに近い物になると想定しており、その潜在市場規模はグローバルのゲームコンテンツ市場規模約21.9兆円(注10)の一部を置き換えて行くものと想定しております。

 

当社事業は、VTuberによるライブ配信を通じた付加価値の高いIPの開発とファンベースの確立を軸に、足許で広義アニメ市場におけるグローバルかつ多面的展開を行っている段階にあり、今後はメタバースサービスによるゲーム市場への展開により更に大きな事業機会を捉えることを計画しております。

 

(注) 9.出所:一般社団法人日本動画協会「アニメ産業レポート 2022」2021年のアニメ関連市場規模。(アニメに関連したTV、映画、ビデオ、配信、商品化、音楽、遊興、ライブ・イベント等のビジネスの売上高から推定)

10.2021年のゲームコンテンツ市場規模。(出所:株式会社角川アスキー総合研究所「ファミ通ゲーム白書2022」)

 

(5) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

① 魅力的なIPの開発

VTuberの人気はアニメルック・アバターや関連するグループ又はユニットIPの魅力の影響を大きく受けるため、付加価値の高いVTuber IPを継続的に開発することは当社の経営課題です。当社は、IPやコンテンツを共創するクリエイターにとっても意義深い活動の機会を継続的に提供するために、当社IPの認知及びブランド価値の一層の向上に努めております。

 

② コンテンツ・クリエイターの発掘及び育成

VTuberの活動はアニメルック・アバターを用いて活動するコンテンツ・クリエイターの創作活動に依存しているため、能力のあるコンテンツ・クリエイターの発掘、及びその能力を一層開花させるための育成は当社の課題です。

当社では定期的なオーディションの実施により新しいコンテンツ・クリエイターの発掘ができるよう努めている他、採用後も社内外のクリエイター・企画チームを活用し、継続的なグッズ企画・衣装企画・ライブ企画等の多様な活動支援によってコンテンツ・クリエイターの個性をより発揮できるような環境を構築しております。

 

③ 事業拡大と収益性向上を両立した事業運営

当社は付加価値の高いVTuber IPの継続的な開発と育成を主軸に、動画配信プラットフォーム上でのサービス展開のみに留まらない、多面的なIPビジネス市場での事業展開を推進しております。そのため、より大きな市場を捉えるために複数の先行投資を実施しております。具体的には、より付加価値の高いIP開発と集客力の向上に向けた、3Dモデリング、3Dアニメーションに関する人材投資、大型モーション・キャプチャー・スタジオの取得、統合IDサービスの開発及びユーザーの体験価値の向上に向けたメタバースサービスの開発を行っております。

大型モーション・キャプチャー・スタジオの取得については、ライブコンサート制作の内製化により、コンテンツの表現の自由度の向上に加えて中長期的なコスト改善も目指しております。

また、マーチャンダイジングにおいてはグループ及びユニットの企画性とブランドを活かした収益性の高い商品の開発に注力し、持続可能な成長を企図して参ります。

 

④ 組織体制の整備

当社の成長には多様な専門性を持った優秀な人材を採用し、組織体制を整備していくことが重要であると考えております。積極的な採用活動を行っていくとともに、従業員が中長期的に働きやすい職場環境や人事制度を整備して参ります。

 

⑤ 技術力の強化

当社はコンテンツ・クリエイターの活動について、モーション・キャプチャー技術を駆使した自社開発のアプリケーション等で支えており、今後の継続的な技術改善が視聴者に新しいエンターテインメント体験を届けるために重要であると考えております。

高度なスタジオ配信を可能にするアプリケーションのアップデート等、継続的な技術改善を進めて参ります。

 

⑥ コミュニティの健全性維持

当社は多数のVTuberを擁しており、それぞれのコンテンツ・クリエイターの裁量で日常的に膨大な数の視聴者との双方向コミュニケーションがライブ配信を通して行われています。

継続的な創作活動や視聴者とのコミュニケーションが維持されるよう、誹謗中傷対策などのコミュニティ健全化の施策は重要であると考えております。

外部専門家と連携しての誹謗中傷対策等、コンテンツ・クリエイター保護のための施策を継続的に実施して参ります。

 

⑦ その他財務上の課題

当社は、これまで金融機関からの借入に大きく依存せず、資金需要は自己資金及び営業活動によるキャッシュ・フローを源泉とした財務基盤を維持していることから、先述の「事業拡大と収益性向上を両立した事業運営」の他には、優先的に対処すべき財務上の課題はありませんが、上記事業上の課題に対する対処及び継続的な成長に資する設備投資を実行できるよう、内部留保の確保と株主還元の適切なバランスを検討し、既存事業の営業キャッシュ・フローの改善等に対処するなど、財務体質のさらなる強化に努めて参ります。

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社のサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。

 

(1)ガバナンス及びリスク管理

当社では持続可能性の観点から企業価値を向上させるため、サステナビリティ推進体制を強化しており、代表取締役社長谷郷元昭がサステナビリティ課題に関する経営判断の最終責任を有しております。取締役会においては、サステナビリティに係る当社の在り方を提言することを目的として、以下の内容の協議を行っております。

 

①中長期的な視点を持った、サステナビリティに関する重要課題の特定

②サステナビリティに関する重要課題のリスク及び機会の識別

③サステナビリティに関する重要課題のリスク及び機会への対応の基本方針の策定

 

リスク管理については取締役会主導のもと、体制強化を進めております。リスク管理は、リスクの発見・分析・評価・対応の4つのステップを通して行われており、特別な対応が必要なリスクはリスクオーナーを選定したうえで、取締役会のみならず、リスク・コンプライアンス委員会にて進捗管理をしております。各部門で管理可能なリスクは、各組織が中心となって対応しており、必要に応じて取締役会への報告を行っております。

 

(2)重要なサステナビリティ項目

上記ガバナンス及びリスク管理を通じて識別された当社における重要なサステナビリティ項目は「インターネット上の誹謗中傷を通じた人権侵害への対応」であります。

 

①戦略

当社は「つくろう。世界が愛するカルチャーを。」を企業ミッションとしており、日本発のエンターテインメント・カルチャーを作り出し世界中のユーザーに広めていくことにより、日本のユニークな強みであるアニメ、ゲームといった文化に関わるクリエイターの活動の場を増やしていくことを目指しております。

ESG戦略の重要性が高まっている現在において、当社は社会的な課題解決と当社事業のリスク低減を共に達成する項目として、「インターネット上の誹謗中傷による人権侵害」を重要課題として捉えており、リスク管理のうえ対応する戦略の策定を進めております。

 

私たちの社会においては、インターネット上での誹謗中傷、プライバシーの侵害、差別的言動等により、インターネットに参加している人々の生活や、クリエイターの活動を脅かす事象が散見されております。

こうした事象を看過していると、長期的にインターネットを通じたコミュニケーションの発達や、イノベーションの創出、カルチャーの創造が妨げられることとなり、当社のミッション達成のみならず社会全体の発展を阻害する可能性があります。

そこで当社では社会に対する啓発活動や、人権侵害行為に対する法的措置といった活動を戦略的に遂行することにより、社会課題の解決と当社の持続的な成長を共に達成できるものと考えております。

 

②指標及び目標

当社では課題の解決に向けた目標指標はまだ策定されておりませんが、結果指標として誹謗中傷に対する法的措置の回数を集計しております。

実績として、2022年1月~2022年12月においては、殺害予告や書き込みによる権利侵害行為に対する法的措置を合計146件対応してまいりました。

また、誹謗中傷対策に関する声明文を発表したほか、自社独自のサポーターガイドラインを展開することにより、誹謗中傷行為に関する理解と抑制を呼び掛けております。

今後もクリエイターエコノミー協会、セーファーインターネット協会といった業界団体と共に、活動の領域を広げてまいります。

 

 

(3)人材の育成及び社内環境整備に関する方針に関する指標の内容並びに当該指標を用いた目標及び実績、指標及び目標

当社における、人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針は、以下のとおりであります。

 

①人材育成方針

当社のミッションを達成するためには、世界に向かって挑戦していく人材の確保が重要であるという認識のもと、人材育成を行っております。具体的な施策例としては以下のとおりです。

 

a.企業ミッション・バリューによる意識の統一

多様な社員の意識統一を図るため、企業ミッションを毎月の全社会議で共有するほか、バリューに沿った人事評価、アワード制度を設けることにより、当社の目標や行動指針を共通化する施策を積極的に行っております。

b.体系化された研修コンテンツの提供

一定の等級以上の人材には同一の研修コンテンツを提供することにより、専門知識の習得のみを目的とするのではなく、組織間で共通の価値観やスキルを醸成することを心がけています。

c.専門性に沿った外部教育機会の提供

各職種の専門性に応じた外部研修・セミナーへの参加を促進することで、それぞれの業務専門性を高める制度も導入しています。

d.キャリアパスの複線化

キャリアの観点では、マネジメントに特化したキャリアコース(M等級)と、専門性に特化したキャリアコース(P等級)の二種類を用意しており、各社員の志向や適性に応じたキャリアパスを描いていける制度を用意しています。

 

②社内環境整備方針

世界中のユーザーに楽しんでもらえるコンテンツを継続的に提供するためには、多様な人材の掛け合わせから生じるイノベーションが不可欠です。こうした多様な人材が継続的に当社で活躍できるように、社内環境整備に関する施策にも取り組んでおります。具体的な施策例としては以下のとおりです。

 

a.社内規定に基づいた副業・兼業の実施

社員が企業や社会に貢献しようとする意志を尊重すると共に、各自のスキルを高める機会として多様な働き方を選択できるよう、環境を整備しております。

b.帰省時のリモートワーク制度の導入など、海外社員に配慮した施策の実施

海外国籍社員など、特に帰省が難しい社員に対し、休暇期間を超えて帰省先でのリモートワークを認めることで、社員のモチベーション改善を図っております。

c.フレックスタイム制による出勤と育児休業取得の奨励

各部門別に設定されたコアタイム以外の出勤時間を社員が選択できることで、ワークライフバランスを確保しやすくすると共に、育児休業の取得を奨励しております。

d.社員のエンゲージメントレベルの把握

サーベイツールを継続的に活用することで、社員の業務に対するエンゲージメントを把握し、エンゲージメントレベルを向上させるための施策検討に活用しております。

 

③指標及び目標

当社では、上記「(3)①人材育成方針」及び「(3)②社内環境整備方針」において記載した、人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針について、次の指標を用いております。当該指標に関する目標及び実績は、次のとおりであります。

指標

目標

実績

労働者の育児休業取得率

2024年3月までに80%

71%

従業員エンゲージメントスコア

2024年3月までに偏差値53

偏差値 51.2

入社1年後定着率

2024年3月まで90%を維持

92.1%

外国籍社員の比率

2024年3月までに15%

11.1%

 

 

 

 

3 【事業等のリスク】

本書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のようなものがあります。

なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであり、将来において発生の可能性があるすべてのリスクを網羅するものではありません。

また、顕在化可能性又は影響度が「小」と記載されたリスクについても、現に当該リスクが発生し又は当社の事業、業績及び財政状態等に重大な影響を及ぼす可能性を否定するものではなく、発生時期の記載と異なる時期に当該リスクが発生する可能性を否定するものではありません。

当社は、これらのリスク発生可能性を十分に認識した上で、発生の回避及び発生した場合の対応に努める方針ではありますが、当社株式に関する投資判断は、本項及び本書中の本項以外の記載事項を慎重に検討した上で行われる必要があると考えております。

 

(1) 事業環境に関するリスク

① 外部の動画配信プラットフォームへの依存について(顕在化可能性:中、影響度:中、顕在化の時期:長期)

当社はYouTube等の動画配信プラットフォームを通じて視聴者にライブ配信コンテンツを提供しております。これらの動画配信プラットフォーム事業者の動向及び事業戦略並びに当社との関係の変化等により、当社のライブ配信コンテンツ提供の継続が困難になった場合、又は経済条件に大幅な変更があった場合には、当該プラットフォーム経由で当社のコンテンツを消費していた顧客層からの収益の減少を通じて当社の事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

なお、当社では、ライブ配信のみに依存せず、マーチャンダイジング、イベント、ライセンスアウトといった収益機会の多様化が進んでいる他、コンテンツ・クリエイターの活動もYouTube以外を含む複数の動画配信プラットフォーム上で行われており、また開発中の自社プラットフォームでの活動も予定されていることから、単一のプラットフォームのみに依存することの無い体制となっています。

 
② 外的要因による消費者需要動向の変化について(顕在化可能性:中、影響度:中、顕在化の時期:中期)

当社は動画配信プラットフォーム上でのVTuberによるライブ配信、関連グッズ及びコンテンツの販売等を主な収益としております。近年のインターネット上での動画メディア視聴の世界的な広がり、また、アニメ、ゲーム等のコンテンツ消費の国際的な拡大などを背景として、当社コンテンツの視聴者数や当社の売上高も順調に拡大を続けており、今後も当面はこの傾向は継続するものと認識しております。

しかしながら、関連する法規制、景気動向、個人の嗜好等の変化等により、関連市場の成長が鈍化し、それに伴い、当社コンテンツの視聴者数の減少が起きる等、当社のビジネスモデルを長期的に維持できない場合や、これらの変化に対応した新しいビジネスモデルを十分に構築できない場合には、顧客数の減少を背景とした売上高成長の鈍化等を通じて当社の事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

当社では事業展開を行う領域の多面化、及び地域の多様化を行うことにより、当該リスクの軽減を企図しています。

 

③ 広告市場動向の変化について(顕在化可能性:中、影響度:小、顕在化の時期:中期)

当社のサービスの一部であるタイアップ広告の受注高は企業の広告出稿予算の変化等の影響を受けることが予想され、景気変動等の要因によって企業の広告出稿予算が増減した場合には、当社の事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

当社ではタイアップ広告以外にも、自社所有IPに基づく商品販売等収益源の多角化を行うことにより、当該リスクの軽減を企図しています。

 

 

④ 法規制・動向について(顕在化可能性:中、影響度:中、顕在化の時期:長期)

当社が提供するサービスを規制する主な法律として「個人情報の保護に関する法律」、「特定商取引に関する法律」、「下請代金支払遅延等防止法」、及び「不当景品類及び不当表示防止法」等があります。

当社は、これらの規制に準拠したサービス運営を実施しており、今後も法令順守体制の強化や社内教育の実施などを行って参りますが、新たな法規制の制定や改正が行われ、当社が運営するサービスが新たな法規制の対象となる場合、当社の事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑤ 海外ユーザーに向けたサービスのリスクについて(顕在化可能性:中、影響度:中、顕在化の時期:中期)

当社は、視聴者層の拡大に向けて英語及びインドネシア語をメインにライブ配信を行うVTuberグループ「hololive English」、「HOLOSTARS English」及び「hololive Indonesia」を展開しています。

外国語圏の視聴者に向けたサービスの提供にあたっては、文化・ユーザーの嗜好・商習慣の違い、為替変動、法制度・税制度を含む各種規制、経済的及び政治的不安等の様々な潜在的リスク、事業展開に必要な人材の確保の困難性、及び展開言語地域において競争力を有する競合他社との競争リスク等が存在します。当社がこのようなリスクに対処できない場合、当社の事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

当社では現地文化や法令規制等に精通した外部専門家との協働や展開地域の多角化により当該リスクの軽減を企図しています。

 

⑥ 競合他社の動向について(顕在化可能性:中、影響度:中、顕在化の時期:中期)

現在、VTuber事業を含む動画配信関連事業を展開する競合企業は国内外に複数存在しております。

当社は、今後とも優れたIPの開発や技術的改善等により市場における優位性を維持しつつ競争力を向上させていく方針ですが、これらの取り組みが予想通りの成果を上げられない場合や、より競争力のある競合他社の出現により、当社が提供するコンテンツの視聴者離れ等につながる場合、又は魅力的なコンテンツ・クリエイターの継続的な確保が難しくなる場合には、当社の事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑦ 新型コロナウィルス感染症に関するリスクについて(顕在化可能性:中、影響度:小、顕在化の時期:中期)

新型コロナウィルス感染症の感染拡大に対し、当社では社員及び関係者への感染防止措置をとっておりますが、直接の感染や各国の水際対策の影響がコンテンツ・クリエイターの活動の障害となった場合、及びライブ・イベント興行に対する消費者需要の縮小がみられた場合等においては、当社の事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

当社では、社内関係者の感染症対策実施の他、ライブ・イベント興行のオフライン、オンライン同時実施による感染症事由でのイベント中止リスクへの対策等により、当該リスクの軽減を企図しております。

 

(2) 事業に関するリスク

① 所属VTuberの人気、活動頻度、活動継続等に係るリスクについて(顕在化可能性:中、影響度:中、顕在化の時期:中期)

当社の業績は、当社所属のVTuberの人気及びコンテンツ供給頻度に一定程度依存しております。

当社は平時から、当社所属のVTuberに関するスキャンダル、炎上、誹謗中傷等に対処し、健康的な活動をサポートする技術的、組織的体制の拡充等を通じて対策を図っておりますが、VTuberの活動内容や頻度はアニメルック・アバターを用いて活動するコンテンツ・クリエイターの動向に依存しており、不適切なコンテンツの配信、スキャンダル、炎上、誹謗中傷、その他健康上の理由等により、当社所属コンテンツ・クリエイターが視聴者からの継続的な支持を得ることができなくなった場合、活動頻度が著しく低下した場合、又は活動の継続が困難になった場合等には、関連するIP、コンテンツ又は商品等の付加価値の低下を通じて当社のレピュテーション、事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

個別のコンテンツ・クリエイターを見た場合、これらのリスクは高くない頻度で顕在化する可能性がありますが、当社では健全なコンテンツ配信を推進し、スキャンダル、炎上、誹謗中傷等に対処し、コンテンツ・クリエイターの健康的な活動をサポートする技術的、組織的体制の拡充、関連する業界団体との連携、及び多様な人気VTuberによるプロダクション全体としてのコンテンツ供給の安定化等により対策を図っております。

 

 

② 動画内容に不適切な内容が入ることによるレピュテーションリスクについて(顕在化可能性:中、影響度:中、顕在化の時期:中期)

当社は所属するコンテンツ・クリエイターによる公序良俗の違反や知的財産権の侵害が発生することを未然に防止するために、ガイドライン等の拡充やコンテンツ・クリエイターの指導に努めております。また、そのような事象若しくはその兆候が発生した場合には、速やかにそれを認識し対処を行うための配信動画のモニタリング等の管理体制の整備にも努めております。しかしながら、日々のコンテンツ配信の中で予期せぬ事象が発生した場合には、当社や所属コンテンツ・クリエイターのレピュテーションの低下や紛争につながる等、当社の事業展開、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

③ 情報セキュリティについて(顕在化可能性:小、影響度:小、顕在化の時期:中期)

当社は事業活動を通して、顧客や取引先の個人情報及び機密情報を入手することがあり、また、営業上の機密情報を保有しています。情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)認証を取得し社内で運用する他、従業員研修の実施等、これらの情報管理には万全な方策を講じておりますが、万一当社の従業員や業務の委託会社等が情報を漏洩又は誤用した場合には、当社が企業としての社会的信用を喪失し、当社の財政状態や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

④ 知的財産権について(顕在化可能性:小、影響度:小、顕在化の時期:中期)

当社は当社が運営する事業に関する知的財産権の取得に努め、当社が使用する商標・技術・コンテンツ等についての保護を図っておりますが、模倣品の流通、海賊版の制作等により当社の知的財産権が第三者の侵害から保護されない場合、又は知的財産権の保護のために多額の費用が発生する場合には、当社の業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。また、当社が使用する技術、コンテンツについて、知的財産権の侵害を主張され、当該主張に対する防御又は紛争の解決のための費用又は損失が発生し、当社の事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑤ 顧客、取引先又はその他第三者との係争について(顕在化可能性:中、影響度:中、顕在化の時期:中期)

当社は、法令及び契約などの遵守のため、リスク・コンプライアンス管理規程を定めて社内教育やコンプライアンス体制の充実に努めております。しかしながら、今後当社が事業活動を行うなかで、顧客、取引先又はその他第三者との間で予期せぬトラブルが発生し、訴訟に発展する可能性があり、係る訴訟の内容及び結果によっては、当社の財政状態や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。また、多大な訴訟対応費用の発生や当社の社会的信用の毀損によって、当社の事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑥ 新規事業について(顕在化可能性:中、影響度:中、顕在化の時期:中期)

当社はUGCコミュニティの強化及びファン層の拡大・維持を企図して、新規事業としてメタバースサービスの開発を行っております。同サービスにより、3D仮想空間の中でVTuberとファンが直接交流できる機会等を提供できるようになる予定です。

同新規事業は、そのリスク等について企画及び開発段階から十分な検討を行うことによりリスク低減を図る方針であります。

しかしながら、同新規事業の展開においては、不確定要素が多く存在することから、当社の想定通りに進捗しない、期待するシナジーが得られない又は法的若しくは事業上の新たなリスク要因が発生する等の可能性があり、当社の事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑦ 新スタジオの稼働について(顕在化可能性:中、影響度:中、顕在化の時期:中期)

当社は配信コンテンツの拡充及び制作リソースの拡充を企図して、2023年4月より新しい配信用スタジオの稼働を開始しております。稼働開始後は十分な人員を確保したうえで、投資回収を図っていく想定でおりますが、人的リソースの不足や、稼働管理の不備等により期待した機能を達成できない可能性があり、減損損失の発生等による当社の事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(3) 会社組織に関するリスク

① 人材の確保・育成について(顕在化可能性:中、影響度:中、顕在化の時期:中期)

当社が今後とも企業規模を拡大し、より良いサービスを提供していくためには、個性豊かなコンテンツ・クリエイター、専門性の高い技術者等の他、コーポレート部門等においても当社の理念に共感し高い意欲を持った優秀な人材を確保することが必要不可欠です。

当社は、規模拡大やサービス向上に必要な人材確保のために、今後もより一層積極的な採用活動を行っていく予定ではありますが、人材獲得競争の激化や市場ニーズの変化等により、想定通りの採用が進まない等優秀な人材の獲得が困難となる場合や、現在在職する人材の社外への流出が生じた場合には、当社の事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

② レピュテーションリスクについて(顕在化可能性:中、影響度:中、顕在化の時期:中期)

当社の事業においては、当社及び当社が提供するサービスの認知度、ブランドイメージや社会的信用の維持及び向上に努めておりますが、当社によるプロモーション活動が奏功する保証はありません。

また、当社サービスの欠陥や個人情報及び機密情報の流出等並びに当社や当社が提供するサービスに関する風評被害の発生等により、ブランドイメージや社会的信用が低下し、当社の事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

③ 事業体制及び内部管理体制について(顕在化可能性:小、影響度:小、顕在化の時期:中期)

当社は2016年6月に設立され、未だ社歴が浅く成長途上にあり、今後の事業運営及び事業拡大に対応するため、当社の事業体制及び内部管理体制について一層の充実を図る必要があると認識しております。事業規模に適した事業体制及び内部管理体制の構築に遅れが生じた場合、当社の事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(4) 経営成績及び財政状態などについて

① 社歴が浅いことについて(顕在化可能性:中、影響度:中、顕在化の時期:中期)

当社は2016年6月に設立されており、設立後の経過期間は7年程度と社歴の浅い会社であります。また、当社は急速な成長過程にあり、業績は新規IPの公表や大型イベントの実施等に関連した季節性にも依存するため、過年度の経営成績は期間業績比較を行うための十分な材料とはならず、過年度の業績のみでは今後の業績を判断する情報としては不十分な可能性があります。

 

② 業績の季節変動について(顕在化可能性:大、影響度:中、顕在化の時期:短期)

当社の業績は消費者の長期休暇期間や大型イベントの実施時期等に関連した売上高の季節性に依存するため、特定の四半期業績のみをもって当社の通期業績見通しを判断することは困難であります。

 

③ 配当政策について(顕在化可能性:小、影響度:小、顕在化の時期:未定)

当社は、株主に対する利益還元と同時に、財務体質の強化及び競争力の確保を経営の重要課題と位置づけております。現時点では、当社は成長過程にあると考えており、内部留保の充実を図り、事業拡大と事業の効率化のための投資に充当していくことが株主に対する最大の利益還元に繋がると考えております。このことから、創業以来配当は実施しておらず、今後においても当面の間は内部留保の充実を図る方針であります。将来的には、各事業年度の経営成績を勘案しながら株主への利益還元を検討していく方針ですが、現時点においては配当実施の可能性及びその実施時期等については未定であります。

 

(5) その他

① 新株予約権の行使による株式価値の希薄化について(顕在化可能性:中、影響度:大、顕在化の時期:中期)

当社は取締役及び従業員に対し、長期的な企業価値向上に対するインセンティブとして新株予約権を付与している他、今後も優秀な人材確保のため新株予約権その他のエクイティ・インセンティブプランを発行する可能性があります。これらの新株予約権が権利行使された場合等には、当社株式が新たに発行又は交付されることにより、既存の株主が有する株式の価値及び議決権割合が希薄化する可能性があるとともに、係る株式が一度に大量に市場へ流出することとなった場合などには、適切な株価形成に影響を及ぼす可能性があります。本書提出日現在でこれらの新株予約権に係る潜在株式数は5,968,900株であり、発行済株式総数及び潜在株式数の合計67,093,100株の8.9%に相当します。

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という)の状況の概要は次のとおりであります。

① 財政状態の状況

(資産)

当事業年度末における流動資産は11,740,862千円となり、前事業年度末に比べ4,572,415千円増加いたしました。これは主に事業規模の拡大に伴う、税引前当期純利益の増加に加え、自社ECサイトの前受金の増加による現金及び預金の増加が3,148,586千円、2023年3月に開催された大型イベントの収益発生に伴う売掛金の増加が1,246,320千円生じたことによるものであります。固定資産は4,146,146千円となり、前事業年度末に比べ3,076,472千円増加いたしました。これは主に、新スタジオ建設に伴う建設仮勘定の増加が1,687,435千円、新規事業の開発に伴うソフトウエア仮勘定の増加が804,918千円生じたことによるものであります。

この結果、総資産は、15,887,009千円となり、前事業年度末に比べ7,648,887千円増加いたしました。

 

(負債)

当事業年度末における流動負債は8,838,207千円となり、前事業年度末に比べ4,100,028千円増加いたしました。これは主に自社ECサイトの受注販売による前受金の増加が1,875,299千円、2023年3月に開催された大型イベントの費用発生に伴う買掛金の増加が601,280千円、事業規模拡大と連動した販売費及び一般管理費の増加に伴う未払費用の増加が532,358千円生じたことによるものであります。固定負債は42,493千円となり、前事業年度末から増減はありません。

この結果、負債合計は、8,880,701千円となり、前事業年度末に比べ4,100,028千円増加いたしました。

 

(純資産)

当事業年度末における純資産合計は7,006,308千円となり、前事業年度末に比べ3,548,859千円増加いたしました。これは、当期純利益2,508,234千円の計上による利益剰余金の増加、上場に伴う増資により資本金が520,312千円、資本剰余金が520,312千円増加したことによるものであります。

 

② 経営成績の状況

当事業年度における国内外の経済環境は、国内においては年度末にかけて新型コロナウィルス感染症に関する防疫措置の緩和が推進された一方で、ウクライナを巡る地政学リスクの影響や国際的なインフレの進行等により、引き続き先行き不透明感が強くなっております。

 

このような環境のもと、当社はミッションとして「つくろう。世界が愛するカルチャーを。」を掲げ、日本発のエンターテインメント・カルチャーを作り出し世界中のユーザーに広めていくことにより、日本のユニークな強みであるアニメ、ゲームといった文化に関わるクリエイターの活動の場を増やしていくことを目指しております。

 

当事業年度につきましては、ライブ配信に加え、ショート動画や楽曲等を通じた多面的なコンテンツ供給にも注力し、結果として当社所属VTuberのYouTubeチャンネル登録総数(注1)は2023年3月末時点で7,558万人(前期比23.1%増)まで伸長致しました。新規デビューVTuberとしては、2022年7月及び2023年1月に英語圏向け男性VTuberグループ「HOLOSTARS English」より計8名をデビューさせており、所属VTuber及びそのファン層の多様化を企図しております。その結果当事業年度の配信/コンテンツ分野の売上高は通年で6,342,733千円(前期比20.8%増)となりました。ライブ/イベント分野におきましても、2023年1月に実施した、《星街すいせい2nd live「Shout in Crisis」》及び同年3月に実施した《hololive SUPER EXPO 2023 Supported By Bushiroad》、《hololive 4th fes. Our Bright Parade Supported By Bushiroad》といった大型イベントの盛況が寄与し、同分野の売上高は通年で3,429,004千円(前期比55.6%増)となりました。

 

また、当事業年度においては前述のサービス分野において高まったIPの付加価値をベースに、コマースビジネスの規模が大きく拡大しており、マーチャンダイジング分野の売上高は通年で8,003,091千円(前期比65.6%増)ライセンス/タイアップ分野の売上高は通年で2,676,183千円(前期比94.2%増)となりました。マーチャンダイジング分野においては、プロダクトミックスの改善により収益性の改善も進捗しております。

 

以上の結果、当事業年度における売上高は、20,451,013千円と前期と比べ6,787,284千円(前期比49.7%増)の増収、営業利益は、3,417,173千円と前期と比べ1,562,001千円(前期比84.2%増)の増益、経常利益は3,385,233千円と前期と比べ1,531,255千円(前期比82.6%増)の増益、当期純利益は2,508,234千円と前期と比べ1,263,768千円(前期比101.6%増)の増益となりました。

 

(注)1 YouTubeチャンネル登録総数は、2023年3月31日時点の所属VTuber及び公式のYouTubeチャンネル登録数の総和

 

③ キャッシュ・フローの状況

当事業年度末における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、7,793,282千円と前事業年度末と比べ3,148,586千円の増加となりました。

当事業年度における各キャッシュ・フローの状況とその要因は以下のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

当事業年度において、営業活動により獲得した資金は、4,866,720千円(前事業年度は3,537,470千円)となりました。

これは、主に事業規模の拡大に伴う、税引前当期純利益3,352,833千円の計上、自社運営ECサイトのグッズ販売受注時に受領する前受金の増加による収入1,875,299千円が発生した一方、大型イベントの収益発生に伴う売上債権の増加1,246,320千円が発生したことによるものであります。

 

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

当事業年度において、投資活動により使用した資金は、2,759,105千円(全事業年度は793,940千円)となりました。

これは、オフィスの新スタジオ建設に伴う建設仮勘定といった有形固定資産の取得による支出1,463,229千円、新規事業開発を目的としたソフトウエア開発や、商標権を始めとした知的財産権の取得による無形固定資産支出の899,184千円、オフィス増床に伴う敷金の差入による差入保証金の差入による支出478,511千円によるものであります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

当事業年度において財務活動による獲得した資金は、1,040,625千円となりました。これは、株式の発行によるものであります。

 

④ 生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

当社は生産活動を行っておりませんので、該当事項はありません。

 

b.仕入実績

当事業年度の仕入実績は、次のとおりであります。

サービスの名称

仕入高(千円)

(自 2022年4月1日 

    至 2023年3月31日

前期比(%)

マーチャンダイジング

2,228,230

151.3

合計

2,228,230

151.3

 

(注) 当社はVTuber事業の単一セグメントであるため、セグメントごとの記載はしておりません。

 

c.受注実績

当社は概ね受注から役務提供までの期間が短いため、受注実績に関する記載を省略しております。

 

d.販売実績

当事業年度における販売実績を主要サービスごとに示すと次のとおりであります。

サービスの名称

販売高(千円)

(自 2022年4月1日 

    至 2023年3月31日

前期比(%)

配信/コンテンツ

6,342,733

120.8

ライブ/イベント

3,429,004

155.6

マーチャンダイジング

8,003,091

165.6

ライセンス/タイアップ

2,676,183

194.2

合計

20,451,013

149.7

 

(注) 1.当社はVTuber事業の単一セグメントであるため、上記ではサービス別の販売実績を記載しております。

   2.主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合は以下のとおりであります。

 

相手先

前事業年度

(自 2021年4月1日 

 至 2022年3月31日

当事業年度

(自 2022年4月1日 

 至 2023年3月31日

販売高(千円)

割合(%)

販売高(千円)

割合(%)

Google LLC

4,659,360

34.1

5,327,163

26.0

ピクシブ株式会社

3,733,091

27.3

286,707

1.4

 

 (注)1. Google LLCは動画配信プラットフォーム提供会社であります。

        2. ピクシブ株式会社は当社のグッズ販売プラットフォームの提供会社であります。

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は、次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、提出日現在において判断したものであります。

 

① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社の財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。

財務諸表の作成において適用する会計基準等につきましては、「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項」の(重要な会計方針)、(重要な会計上の見積り)に記載のとおりです。

 

 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

(売上高)

当事業年度の売上高は、20,451,013千円(前期比49.7%増)となりました。

主な要因は、所属VTuber数の増員及び国内外を含めたYouTubeチャンネル登録者数の増加を背景とした、配信/コンテンツサービスの売上増1,093,050千円に加え、キャラクターグッズのラインナップ強化や、ファンベースの拡大によるグッズ販売の促進に伴うマーチャンダイジングサービスの売上増3,170,780千円によるものです。

 

(売上原価、売上総利益)

当事業年度の売上原価は、11,054,870千円(前期比31.8%増)となりました。

主な要因は、所属するVTuberへのサポート体制の拡充や、グッズ、デジタルグッズの販売拡大への対応、ライブイベントの開催に伴う費用の増加によるものです。

この結果、売上総利益は9,396,143千円(前事業年度は5,274,772千円)となりました。

 

(販売費及び一般管理費、営業利益)

当事業年度の販売費及び一般管理費は、5,978,969千円(前期比74.8%増)となりました。

主な要因は、グッズの販売に関する諸経費、オフィス移転に伴う地代家賃、事業規模拡大に伴う人件費、支払報酬等の増加によるものです。この結果、営業利益は、3,417,173千円(前事業年度は1,855,171千円)となりました。

 

(営業外収益、営業外費用及び経常利益)

当事業年度において、営業外収益は2,372千円、営業外費用は34,312千円発生しました。

主な要因は、上場関連費用22,423千円が発生したことによるものです。この結果、経常利益は、3,385,233千円(前事業年度は1,853,978千円)となりました。

 

 

(特別損益、当期純利益)

当事業年度において、減損損失が特別損失として、29,626千円発生しました。

税金費用(法人税、住民税及び事業税並びに法人税等調整額)を844,599千円計上した結果、当期純利益は2,508,234千円(前事業年度は1,244,465千円)となりました。

 

なお、財政状態の分析については、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ① 財政状態の状況」に、キャッシュ・フローの状況については、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ③ キャッシュ・フローの状況」に記載しております。

 

③ キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

当社の事業年度のキャッシュ・フローの状況につきましては、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ③ キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

当社の運転資金需要のうち主要なものは、所属VTuberへの報酬やグッズ制作原価等の売上原価の他、人件費や地代家賃、グッズ販売に伴う倉庫費用や決済手数料等の販売費及び一般管理費といった営業費用であります。

投資を目的とした資金需要は、配信用スタジオの設備更新や新規事業・新規サービスの開発費用等であります。

 

当社は、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としており、短期運転資金及び設備投資資金共に自己資金での運用を基本としておりますが、資金繰りが悪化する傾向が見受けられる場合には、金融機関による借入やエクイティファイナンスによる外部からの資金調達についても資金需要の額や用途、当該タイミングにおける金利及び資本コストを比較した上で実施する想定です

なお、第7期事業年度末(2023年3月31日)における現金及び現金同等物の残高は7,793,282千円となっております。

 

④ 経営成績に重要な影響を与える要因について

経営成績に重要な影響を与える要因については、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおり、当社の経営成績に影響を与えるおそれがあるリスクが存在していることを認識しております。

これらリスク要因の発生を回避するためにも、運営する事業の強化、人員増強、財務基盤の安定化等、継続的な経営基盤の強化が必要であるものと認識し、実行に努めております。

 

⑤ 経営者の問題意識と今後の方針について

経営者の問題意識と今後の方針については、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」をご参照ください。

 

⑥ 経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等につきましては、「第2事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等(3) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な経営指標等」に記載のとおり、主な経営指標としてYouTubeチャンネル登録数、売上高、サービス別売上高を経営上重要な指標として位置付けております。

当社ではYouTube等の動画配信プラットフォームを通じて、所属VTuberによる高頻度なライブ配信、3Dモーション・キャプチャー・スタジオを用いたバーチャルライブ・コンサート、IPアセットを用いたアニメーション・コンテンツ等の供給を行うことに加え、二次創作ガイドラインを定めた上でファンによる二次創作活動を幅広く奨励しております。この結果、当社のVTuberは幅広いファンからの支持を得ていると認識しており、当社が保有するホロライブプロダクションのYouTubeチャンネル登録数は延べ7,200万登録を超えました。こうした大きなファンベースの存在が魅力的な演者や国内外の主要なクリエイターとの継続的な共創を可能としております。

 

YouTubeチャンネル登録数の推移

                                  (単位:人)

2022年3月

2023年3月

61,377,800

75,577,500

 

 

サービス別売上の推移

(単位:千円)

サービスの名称

2022年3月

2023年3月

配信/コンテンツ

5,249,683

6,342,733

ライブ/イベント

2,203,839

3,429,004

マーチャンダイジング

4,832,311

8,003,091

ライセンス/タイアップ

1,377,894

2,676,183

合計

13,663,728

20,451,013

 

 

5 【経営上の重要な契約等】

(1) バーチャルYouTuber基本契約

契約締結日

コンテンツクリエイターにより異なる

契約の名称

バーチャルYouTuber基本契約

相手方の名称

コンテンツクリエイター

契約期間

コンテンツクリエイターにより異なる

契約の概要

当社はコンテンツクリエイターに対し、動画配信その他のコンテンツクリエイター活動を委託し、コンテンツクリエイター活動に用いる立ち絵を含む当社著作物及びアプリケーションの利用等を許諾する。

 

対価:

コンテンツクリエイター活動によって当社が得た収益のうち一定の料率を乗じたものをコンテンツクリエイターに支払う。

 

 

(2) Live2D利用契約

契約締結日

2018年6月1日

契約の名称

Live2D出版許諾契約

相手方の名称

株式会社Live2D

契約期間

期間の定めのない契約

契約の概要

 株式会社Live2Dが保有する許諾SDK(ソフトウエア開発キット)を組み込んだアプリケーション(以下、「派生アプリケーション」という)を制作し、派生アプリケーションを使用してYouTube等の動画配信プラットフォームで動画配信等を行う。
 
対価:
派生アプリケーションを使用して得た収益に一定の料率を乗じたものを株式会社Live2Dに支払う。

 

 

(3) YouTube上でのコンテンツ管理契約

契約締結日

2021年12月9日

契約の名称

CONTENT LICENSE AGREEMENT

相手方の名称

Google LLC

契約期間

契約締結日から1年間(自動更新あり)

契約の概要

当社が著作権を有する動画コンテンツの利用許諾を行い、Google LLCから提供されるツールを使用してYouTube上で当該コンテンツを管理し、当該コンテンツから生じる広告収益を受領する。

 

 

 

 

 

 

6 【研究開発活動】

当社は新規事業としてメタバースプラットフォームの研究開発に力を入れており、専門の事業部を立ち上げて開発を進めております。同プラットフォームではVTuberとファンが画面越しではなく、同じ3D仮想空間上で出会える特別な体験の提供やアバター衣装の製作・販売など、ユーザーがコンテンツ作りに参加できる環境の提供を目指しております。ユーザーとVTuberがコミュニケーションを取ることが出来るサンドボックスゲームのプロトタイプの開発が完了しております。

当事業年度のこれらの研究開発活動による支出は、「第3 設備の状況 2主要な設備等の概要」に記載の通りソフトウエア仮勘定に計上しております。

なお、当社はVTuber事業の単一セグメントであるため、セグメント情報に関連付けた記載を行っておりません。