文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 経営方針
当社グループは1906年の創業以来、化学品メーカーとして歩み続けてきました。現在は、「化学品事業を通じて地球環境と豊かな社会の創生に貢献する」を企業理念に掲げ、様々な製品の基礎原料として使われる苛性ソーダや殺菌、消毒に使われる次亜塩素酸ソーダをはじめとする「基礎化学品事業」、酢酸ナトリウム(食品用日持ち向上剤)、グルコサミンをはじめとする「機能化学品事業」、土壌殺菌剤として使われる農薬クロルピクリンをはじめとする「アグリ事業」、廃硫酸のリサイクルを中心とする「環境リサイクル事業」、及び塩の加工・販売に関する「各種塩事業」の5事業を展開しています。
特に、2013年にそれまでの親会社であった㈱中山製鋼所から独立したタイミングを機に、それまでの化学品のシナジーを生かしたプロダクトアウト型から、顧客のニーズをふまえ商品開発を行うマーケットイン型の企業へと大きく企業体質を転換しており、顧客に近接した工場立地と、硫黄、水素などの原料を自社製造できるコスト競争力を強みに、商品提案力に磨きをかけ、さらなる発展に繋げていく方針です。
(2) 経営環境及び中長期的な経営戦略
当社グループを取り巻く経営環境は、新型コロナウイルス感染症の感染症法上の分類が5類へと移行し、社会・経済活動の正常化が進展したことに伴い、穏やかな回復傾向にありますが、ロシア・ウクライナ情勢の長期化や中東地域の地政学的リスクの高まり、中国経済の減速、急速な円安の進行に伴う物価上昇による個人消費への影響が懸念されるなど、先行きは依然として不透明な状況が続いております。円安の進行による原材料コストの不透明感や、人手不足による物流費の増加懸念が継続すると見込まれ、安定的な収益の確保が喫緊の課題となっています。
このような環境のもと、当社グループは2023年4月に東京証券取引所スタンダード市場に上場を果たし、上場企業として相応しいガバナンスの強化とコンプライアンスの徹底の下でステークホルダーの満足度向上に向けた施策を実施してまいります。
(3) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは、企業価値の向上と株主利益の増大を図るため、事業の収益性と設備投資を効果的に実施しながら成長性を高めるため、主な経営指標(KPI)として、売上高、経常利益及び資産効率を示すROE(自己資本利益率)を掲げております。2024年度の目標値は売上高21,030百万円、経常利益1,200百万円、ROE9.2%であります。当該KPIの各数値については有価証券報告書提出日現在において予測できる事情等を基礎とした合理的な判断に基づくものであり、その達成を保証するものではありません。
(4) 経営上及び財務上の対処すべき課題
当社は2023年4月に東京証券取引所スタンダード市場に上場を果たし、今後も引き続き上場企業として相応しいガバナンスの強化とコンプライアンスの徹底の下でステークホルダーの満足度向上に向けた施策を実施してまいります。
具体的には、2025年3月期を初年度とする3ヵ年の新中期経営計画に基づいた各施策を実行してまいります。
① 収益基盤の強化~強い事業を更に強く
事業ポートフォリオの入れ替え、並びにあらゆる効率化の推進による収益力向上に取り組んでまいりま
す。加えて、当社の強みである地域立脚を活かし差別化が図れる事業へのリソース集中にも注力してまいり
ます。
② 環境リサイクル事業領域拡大~成長への布石造り
当社の環境リサイクル事業の中心である廃硫酸リサイクル事業を伸長させていくとともに、2023年10月
から当社土佐工場にて開始いたしました脱塩事業を拡大してまいります。加えて、当社の強みを活かした
新たなリサイクル事業の創出にも取り組んでまいります。
③ サステナブル経営の推進~経済価値・社会価値・環境価値の同時実現
環境リサイクル事業は、その先駆者として事業拡大を通じて環境・社会に貢献してまいります。また、BCP
も念頭に置いた安心・安全な持続的製販体制の強化に努めてまいります。加えて、人材育成、DE&I施策推進
により、人的資本投資も拡充していきます。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取り組みは、次のとおりであります。詳細については当社ホームページをご参照ください。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当社グループは「化学品事業を通じて地球環境と豊かな社会の創生に貢献する」という企業理念のもとに事業活動を行っており、1906年の創業以来100年以上にわたり基礎化学品の製造をものづくりの基盤として、数々の技術を蓄積し、永きにわたって人々の快適な生活を支え、顧客の信頼に応えてきた歴史は、「水をつくり、土を活かし、人を育む」という現在の経営に生かされております。
環境・社会課題の解決を志向した事業領域の拡大と事業構造の変革により成長軌道を築き、安定的かつ持続的な利益成長を通じて企業価値の向上と持続可能な社会の実現を目指しており、1959年より開始した廃硫酸ばい焼による硫酸リサイクル事業では事業そのものがサステナビリティと直結しており、環境リサイクルの先駆者として今後も継続的、発展的に事業を行っていくことが、環境負荷の削減に寄与し、ステークホルダーの皆様にも評価していただけるものと考えております。
南海化学ホームページ「サステナビリティサイト」
https://www.nankai-chem.co.jp/sustainability/

(1) ガバナンス
当社グループは、サステナビリティに関する課題について、中期経営計画においても、重要課題の1つとして掲げております。また、代表取締役を委員長とするサステナビリティ委員会を設置し、当社グループを含めた各組織から選出されたサステナビリティリーダーを中心に全社的な活動の推進と、年4回の委員会開催を経て、その内容は年2回、取締役会に報告され、取締役会の監督が適切に図られる体制を取っております。
(2) 戦略
2024年度に向こう3か年の中期経営計画を策定し、「サステナブルな明日を創る」をスローガンに掲げ、サステナブル経営の推進を力強く後押しするために、主力事業である基礎化学品事業では基盤事業の強化に加え、いかなる環境下でも安定的に商品を供給できる体制を整え収益力を固める一方、中期経営計画の重点施策として「今後の成長をけん引するリサイクル事業の先駆者としての環境・社会への貢献」及び「人財の育成、DE&I施策推進による人的資本投資の拡充」に戦略的に取り組む3年間と位置付けております。
(a) 気候変動への対応
GHG(温室効果ガス)排出について、統一した評価方法を持つため算定会社と契約し、南海化学グループGHG排出量の評価を進めており、2024年度はSCOPE1,2の算定及び主要製品のLCA算定を実施して参ります。また、2025年度はSCOPE3の算定も実施して参ります。それらの算定に基づき、GHG排出量の見える化を進め、生産工程改善や省エネ機器活用に繋げることで排出量削減を進めて参ります。
(b) 人的資本・多様性への対応
① 健康経営への取り組み
当社は、2021年10月、社員の心身の健康づくりに取り組み、社員の働きがいと経済成長に貢献することを表明する「健康経営宣言」を策定し、社内外に公開し、従業員の健康意識の向上や生活習慣の改善、グループ全社員に対するストレスチェックの実施によるメンタルヘルス対策の強化といった施策に取り組み、2022年度から継続して「健康経営優良法人」の認定を受けております。
社員の健康状況を把握し、継続的に改善する取り組みを、個人と組織のパフォーマンスの向上に向けた重要な投資と捉え、健康経営への投資に戦略的かつ計画的に取り組んでおります。
また、女性活躍推進については、2018年7月より組織横断的な会議体である「女性活躍推進タスクフォース」を発足し、これまで継続的な議論を通じて、働き方改革に資する制度改定提案、女性管理職の登用に向けた環境づくりと意識醸成などにも取り組んでおります。
② 女性の活躍推進を含む社内の多様性への取り組み
当社グループは、サステナビリティの実現のために必要となる多様な人財の確保を目的に、性別や国籍等にかかわらず、採用活動を行っております。また、女性にとって働きやすい職場環境をつくることは、ジェンダーにかかわらず、多様な背景をもつ社員全員にとって働きやすい職場となることと考えており、女性活躍推進タスクフォースでは社員のニーズを把握し、社員一人ひとりに対し仕事と育児の両立支援、多様な働き方に対応した社内環境の整備に取り組んでおります。
また、多様な人財が安心して存分に活躍できる職場環境を構築すべく、年次、職位、職能ごとに求められる能力・専門知識の習得を目的とした研修制度を実施し、継続的な人財の育成に取り組んでおります。
(3) リスク管理
当社グループは、事業活動に潜在する様々な内外リスクを全体的かつ適切に管理するために「リスクマネジメント基本規程」を定め、代表取締役を委員長としたリスクマネジメント委員会を設置しております。リスクマネジメント委員会においては、サステナビリティ委員会との連携を図り、サステナビリティの観点から当社及び当社グループ会社の業務に関連するリスクの抽出と評価を行ったうえで優先的に管理するリスクの特定を行い、リスクの予
防、軽減、移転及び回避措置を講じるなどの平時のリスク管理活動を推進しております。
(4) 指標と目標
(a) 気候変動への対応
2050年のカーボンニュートラルに向けて、当社グループのGHG排出量を実質ゼロにすることを目指して、まずは2030年の排出削減目標(2013年基準39%削減)に取り組んでおります。現在、エネルギーロス削減のため電力使用量や都市ガス使用量の工程での見える化を実施し、運転最適化による省エネ活動を進めGHG排出削減に関して、目標の見直しを進めております。
(b) 人的資本・多様性への対応
上記「(2)戦略」において記載した、人的資本・多様性への対応に関する人財確保、及び社内環境整備に関する方針について、次の指標を用いております。当該指標に関する目標及び実績は次の通りであります。
なお、当連結会計年度における当社グループの管理職及びリーダーに占める女性の割合は7.8%、外国人の割合は1.3%であり、今後はこの比率をさらに高めるよう取組みを進めてまいります。
本書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。
当社グループでは、これらのリスク発生の可能性を認識した上で、発生の回避や発生した場合の対応に最善を尽くす方針としております。
また、必ずしも事業上のリスクに該当しない事項であっても、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項については、投資者に対する情報開示の観点から積極的に開示しております。
なお、文中の将来に関する事項は、提出日現在において当社グループが判断したものであり、当社グループに係る全てのリスクを網羅したものではなく、記載された事項以外にも予測が困難な事業等のリスクがあるものと考えられます。
(1) 突発的な事故や災害の発生 影響度:大、発生可能性:低、発生時期:特定時期なし
当社グループでは、全ての製造設備を対象とした定期的な点検や必要に応じての修繕を行うことにより、安全かつ安定的な工場設備の操業に努めておりますが、不具合や事故による製造設備の損壊に起因する生産活動の中断により、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
また、当社グループの製造拠点は主に和歌山県及び高知県に立地しており、南海トラフを震源とする地震災害の影響を受ける可能性があり、また台風による風水害の影響を受けやすいことからBCP策定ワーキンググループによる対策検討を実施し、その影響の最小化を図っておりますが、当該製造設備の損壊に起因する生産活動の中断により、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(2) 競争の激化 影響度:中、発生可能性:低、発生時期:短期
当社グループでは、総合化学メーカーとして苛性ソーダ、次亜塩素酸ソーダ、水処理剤など各種無機化学工業製品を取り扱う基礎化学品事業、酢酸ナトリウム、グルコサミン、染料及び電子材料製品など有機化学工業製品を取り扱う機能化学品事業、農薬を取り扱うアグリ事業及び廃硫酸のリサイクルなどを取り扱う環境リサイクル事業、塩製品を取り扱う各種塩事業を営んでおり、古くからの関西地区をターゲットとした地域密着型の事業展開によって一定の存在感を確立しているという強みを有しております。しかしながら、近年の原材料や燃料等の高騰により、販売価格への転嫁が急務となっております。市況及び他社動向を注視しつつ適正な利潤を確保するため、販売先との価格交渉を継続的に実施しておりますが、調達価格と販売価格の価格変動にタイムラグが生じた場合は、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(3) 原材料及び製商品に係る相場変動並びに原材料の減耗 影響度:中、発生可能性:大、発生時期:短期
当社グループでは、事業の特性上、恒久的に塩やニトロメタンを中心とした原材料の調達が必要となっております。このため、常時複数の調達チャネルを確保した上で調達価額の低廉化を主眼としつつ、全体最適を図りながら安定調達に努めておりますが、自助努力にてコントロールできない急激な為替変動や市況価格の変動により、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。とりわけ原材料のうち塩につきましては、岸壁の貯塩場に大量に保管しており、シート掛けを行うなどの措置を講じておりますが、風雨により流出し減耗することで当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
また、製造の過程において電力を大量に使用することから、電力価格の変動により、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があり、電力の安定的な供給が達成されない場合には、生産活動の中断により、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(4) 製造拠点の稼働 影響度:大、発生可能性:低、発生時期:特定時期なし
当社グループでは、営業部門からの需要動向や原材料の調達状況を踏まえ、生産計画を策定のうえ、製造設備の稼働を実施しております。さらに計画的な保全計画を策定実施し安定稼働に取り組んでおりますが、製造設備のトラブル等により生産が停止した場合には、製品供給がされず、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(5) 製品の品質 影響度:小、発生可能性:低、発生時期:特定時期なし
当社グループでは、品質管理体制を整備し品質の維持に努めておりますが、予期できない品質トラブルが発生した場合には、顧客からの信用の低下や当社グループの社会的信用の低下を招く可能性があります。これらに対しては、製造物責任保険に加入し、影響額を最小限にとどめる取組みを行っているものの、損害賠償や補償の履行により当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(6) 知的財産の保護 影響度:大、発生可能性:低、発生時期:特定時期なし
当社グループでは、事業の優位性確保の観点から開発を通じて獲得した技術について、特許を出願するなど知的財産の保護に努めておりますが、開発した技術や各種ノウハウの外部への流出、知的財産権に係る係争案件や侵害の発生により、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
また当社グループでは、各種製品の研究開発段階において、当社研究開発本部にて他の者が所有する知的財産権を侵害していないか確認並びに調査を実施しておりますが、結果として他の者が所有する知的財産権を侵害するに至った場合やその他知的財産権に係る紛争が発生した場合には、当社グループの製品の生産活動が制約を受けたり、損害賠償金の支払が発生することにより、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(7) 事業の前提となる許認可、届出並びに法令や規則の遵守
影響度:中、発生可能性:中、発生時期:特定時期なし
当社グループでは、各種工業化学製品の製造・販売を営んでおり、事業を遂行するために以下のような法令や規則に基づく許認可等を取得し、当該法令や規則の遵守徹底を基本として事業活動を行っております。
これらの許認可等については、各種法令にて定める手続きを適切に実施しなかった場合、その効力を喪失いたします。また、万が一各種法令に違反した場合、許認可等の取消や期間を定めて対象となる業務の全部若しくは一部の停止を命ぜられる旨が定められております。当社グループにおいては、現時点では許認可等の取消や業務の停止となる事実は存在しないものと認識しておりますが、将来許認可等の取消や業務の停止が命ぜられた場合、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(主な許認可等の取消や業務の停止事由)
(許認可等の有効期限(注))
(注)当社グループの主要な製造拠点(当社和歌山工場及び土佐工場)と販売拠点(当社本社)につき、記載しています。
(8) 法的規制 影響度:中、発生可能性:中、発生時期:特定時期なし
「(7) 事業の前提となる許認可、届出並びに法令や規則の遵守」にも記載のとおり、当社グループは法令や規則の遵守徹底を基本として事業活動を行っておりますが、過失あるいは政策、実務慣行、解釈変更により発生する事態が、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。また、将来において当該法令や規制が強化されることも想定され、このような場合には事業活動に対する制約の拡大やコストの増加が発生し、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(9) 環境規制 影響度:中、発生可能性:中、発生時期:特定時期なし
当社グループでは、化学物質を製造し、又は取り扱う事業者として、自己決定・自己責任の原則に基づき、化学物質の開発から製造・流通・使用・最終消費を経て廃棄に至る全ライフサイクルにわたって「環境・安全・健康」を確保することを経営方針として公約し、環境・安全・健康面の対策を実行し、改善を図っていく自己管理活動である「レスポンシブル・ケア活動」を推進しておりますが、万が一、有害物質が当社グループ外に流出した場合には、損失補償や損害賠償の発生や生産活動の中断により、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
また、当社グループは、土壌汚染・大気汚染・水質汚濁・産業廃棄物処理等各種の環境規制を遵守のうえ、業務を行っておりますが、これらの規制の動向により、過去、現在及び将来の当社グループの事業活動に関し、法的又は社会的責任の観点から対応を行う場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(10) 借入金と金利変動について 影響度:小、発生可能性:低、発生時期:特定時期なし
当社グループは、設備投資資金、運転資金を銀行からの借入により賄っており、業容拡大等に伴う設備投資、運転資金の増加は今後も想定されます。当社グループは借入金比率の低減を図り財務体質の強化に努めてまいりますが、金利の上昇傾向が続いた場合、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。
(11) 情報セキュリティ 影響度:中、発生可能性:中、発生時期:特定時期なし
当社グループでは、コンピュータシステムによって、販売・受注・出荷・生産・在庫・購買・給与・財務・経理といった事業活動に必要な業務情報の一元管理を行っており、当該管理体制には万全を期しております。さらに、情報セキュリティを含めたコンプライアンス研修などを実施しておりますが、予期せぬコンピュータシステムの停止、誤作動や不正使用、又は外部からのサイバー攻撃などにより、業務運営に支障をきたし、あるいは重要情報の漏えいや紛失による対外的信用の低下により、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。
(12) 人材の採用及び育成 影響度:中、発生可能性:低、発生時期:特定時期なし
当社グループは、今後の事業展開に応じて、積極的な人材の採用及び育成に取り組む方針であり、新卒社員向けのメンター制度や階層別研修の実施などに取り組んでいるものの、人材の採用及び技術の継承が順調に進まなかった場合や、既存の人材が当社グループ外に流出した場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。
(13) 労働災害 影響度:小、発生可能性:中、発生時期:特定時期なし
当社グループでは、多くの生産設備や製造装置を用いて業務を行っており、従業員の安全管理が不可欠であると認識しております。このため、各製造拠点単位で安全衛生委員会を定期的に開催し、従業員への安全教育や危険予知活動といった啓発活動並びにトップ自らが点検パトロールを行い、事故防止の安全管理を徹底しております。しかしながら、万が一重大な事故や労働災害が発生し、一時的な復旧費用や補償金等の負担が生じた場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。
(14) 内部管理体制 影響度:小、発生可能性:低、発生時期:特定時期なし
当社グループは、「化学品事業を通じて地球環境と豊かな社会の創生に貢献する」の企業理念のもと、企業価値の継続的な向上を図るため、コーポレート・ガバナンスが有効に機能することが不可欠であると認識しております。業務の適正性及び財務報告の信頼性の確保のための内部統制システムの適切な運用、さらに健全な倫理観に基づく法令遵守を徹底するにあたり、現時点では十分な体制を構築していると考えておりますが、将来において法規制等が厳格化された場合や、事業環境の変化により内部管理体制の構築が追いつかない場合には、適切な業務運営が困難となり、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。
(15) 固定資産の投資 影響度:中、発生可能性:中、発生時期:特定時期なし
当社グループでは、各製造拠点から提出され、予算編成の過程での検討手続きを経た上で作成された設備投資計画に基づき、工場の建物や製造設備、工具器具備品に至るまで生産活動の維持・向上に必要な固定資産の投資を計画的かつ継続的に行っておりますが、何らかの要因により当該固定資産の投資がスケジュールどおりに完了しなかった場合、生産計画に影響を及ぼすため、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(16) 固定資産の減損 影響度:中、発生可能性:中、発生時期:特定時期なし
当社グループが保有する固定資産については、「固定資産の減損に関する会計基準」を適用しております。同会計基準では、減損の兆候が認められる資産又は資産グループについては、当該資産又は資産グループから得られる割引前将来キャッシュ・フローの総額が帳簿価額を下回った場合に、帳簿価額を回収可能価額(当該資産又は資産グループから得られる割引前将来キャッシュ・フローの総額若しくは当該資産又は資産グループの正味売却価額のいずれか高い方の金額)まで減額し、減額した当該金額を減損損失として計上することとなります。
また、当社グループは、キャッシュ・フローを生み出す資産又は資産グループの最小単位として、製造拠点単位を基本とした資産のグルーピングを行っております。
このため、当該資産又は資産グループが属する製造拠点の経営環境の著しい変化や収益状況の悪化等により、固定資産の減損損失を計上する必要が生じた場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(17) 経営成績の季節変動 影響度:小、発生可能性:低、発生時期:特定時期なし
当社グループの事業は、融雪などに用いられる各種塩や、農薬などの取扱製品の特性上、冬期から春先(11月から翌年5月頃)にかけて売上高及び利益が計上される結果、第1四半期(4~6月期)、第3四半期(10~12月期)及び第4四半期(翌1~3月期)が堅調に推移する一方で、夏場である第2四半期(7~9月期)は一時的に売上高及び利益が落ち込む傾向となっております。これに対応するため、夏場に需要の高まる水処理剤の営業強化に努め、年度を通じて売上高及び利益が安定するよう取り組んでおりますが、特定の四半期業績のみによって通期の経営成績を判断することは困難であります。さらに、先に述べた取扱製品の需要動向については、各年の気象条件にも左右されることから、特定の年度の四半期の経営成績をもって通期の業績見通しを判断することは困難であります。
なお、第73期(2024年3月期)連結会計年度の当社グループの経営成績は以下のとおりであります。
(18) 訴訟等 影響度:中、発生可能性:中、発生時期:短期
当社グループは、事業又は企業活動に関連して、製造物責任、環境、労務、商取引等、様々な訴訟や紛争その他法的手段(以下、「訴訟等」という。)が提起される可能性があります。これに対応するため、当社グループではコンプライアンスの徹底が最重要かつ第一義であると役職員が認識した上で各自の職務にあたっております。具体的には、取引先と「取引基本契約書」を締結し、商取引のルールを明確化することにより、無用の訴訟等を生じさせない取組みを講じており、また不測の事態に備えて各種保険の付保を実施し、損失を最小限にとどめるよう努めておりますが、訴訟等が提起された場合は、その対応により当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(19) 新株予約権(ストック・オプション)による希薄化 影響度:小、発生可能性:低、発生時期:特定時期なし
当社グループは、当社及び当社グループの役員及び従業員などに対するインセンティブを目的として、新株予約権(ストック・オプション)を付与しております。また、資金調達を目的として第三者に対し新株予約権を発行することがあります。当該新株予約権の発行については、必要最小限にとどめるなど、その影響を考慮した各種検討や取組みを実施しておりますが、これらの新株予約権が行使された場合、当社株式が新たに発行され、既存の株主が有する株式の価値及び議決権割合が希薄化する可能性があります。本書提出日現在、新株予約権の潜在株式数は48,300株にて、発行済株式総数2,330,330株の2.1%に相当しております。
(20) 繰延税金資産の取崩し 影響度:小、発生可能性:低、発生時期:特定時期なし
当社グループは、税務上の繰越欠損金及び将来減算一時差異に対して、将来の課税所得を合理的に見積り、回収可能性を検討した上で繰延税金資産を計上しておりますが、実際の課税所得が見積りと異なり、回収可能性の見直しが必要となった場合、又は税率変更を含む税制の改正等があった場合には、繰延税金資産の取崩しが必要となり、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 経営成績等の状況の概要
当連結会計年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症の感染症法上の分類が5類へと移行し、社会・経済活動の正常化が進展したことに伴い、穏やかな回復傾向が見られました。一方でロシア・ウクライナ情勢の長期化や中東地域の地政学的リスクの高まり、中国経済の減速、急速な円安の進行に伴う物価上昇による個人消費への影響が懸念されるなど、先行きは依然として不透明な状況が続いております。
このような経済情勢のもと、当社グループは中期経営計画「Fly Higher Nankai」の最終年度として、引き続き経営指針である、「想定力の向上で守りの成長と攻めの成長を実現する」の達成に向け、コア事業の基盤強化、適正な価格設定、効率経営による生産性向上、成長分野への経営資源(ヒト・モノ・カネ)の重点配分の諸施策を適切に実施いたしました。また、当連結会計年度において補助金収入を営業外収益に計上いたしました。
以上の結果、当連結会計年度の経営成績につきましては、売上高は19,987百万円(前期比2.0%増)となり、損益面につきましては、営業利益は1,564百万円(前期比96.4%増)、経常利益は1,780百万円(前期比101.0%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は1,158百万円(前期比129.9%増)となりました。
なお、当連結会計年度におけるセグメントごとの経営成績は次のとおりであります。
<化学品事業>
基礎化学品につきましては、地域に根ざした販売体制のさらなる強化と、シェア拡大による殺菌剤の増加、電解製品(苛性ソーダ誘導品、塩素誘導品)の価格是正の浸透や、輸出商材の販売国多角化、価格是正、円安効果等により、売上高は前連結会計年度実績を上回りました。
機能化学品につきましては、連結子会社である富士アミドケミカル㈱操業停止の影響により、売上高は前連結会計年度実績を下回りました。
アグリにつきましては、安定供給体制の構築に向けて、サプライチェーンの整備の継続に努めましたが、売上高は前連結会計年度実績を下回りました。
環境リサイクルにつきましては、廃硫酸リサイクルの新規顧客獲得推進に努めましたが、売上高は前連結会計年度実績を下回りました。
以上の結果、化学品事業における当連結会計年度の売上高は16,779百万円(前期比1.7%増)、セグメント利益は2,418百万円(前期比53.3%増)となりました。
<各種塩事業>
各種塩事業には、塩の製造や加工、販売が含まれております。暖冬の影響により、冬季の融雪塩の出荷量は減少しましたが、価格是正の浸透により、売上高は3,207百万円(前期比3.4%増)、セグメント利益204百万円(前期比91.1%増)となりました。
(2) 財政状態及び経営成績の状況
① 財政状態の状況
(資産)
当連結会計年度末の資産合計は20,258百万円となり、前連結会計年度末に比べ1,912百万円増加しました。流動資産につきましては、現金及び預金が408百万円、商品及び製品が136百万円、原材料及び貯蔵品が139百万円増加しましたが、売掛金が385百万円減少したことなどにより、前連結会計年度末に比べ245百万円増加し9,096百万円となりました。また固定資産につきましては、建物及び構築物が550百万円、機械装置及び運搬具が262百万円、建設仮勘定が839百万円増加したことなどにより、前連結会計年度末に比べ1,668百万円増加し11,144百万円となりました。
繰延資産につきましては、16百万円となりました。
(負債)
当連結会計年度末の負債合計は12,756百万円となり、前連結会計年度末に比べ398百万円減少しました。流動負債につきましては、買掛金が573百万円、未払法人税等が331百万円増加しましたが、短期借入金が376百万円、未払金が381百万円減少したことなどにより、前連結会計年度末に比べ40百万円増加し7,990百万円となりました。また固定負債につきましては、リース債務が348百万円増加しましたが、長期借入金が751百万円減少したことなどにより、前連結会計年度末に比べ439百万円減少し4,766百万円となりました。
(純資産)
当連結会計年度末における純資産合計は7,501百万円となり、前連結会計年度末に比べ2,310百万円増加しました。これは主に親会社株主に帰属する当期純利益の計上等により利益剰余金が1,048百万円増加したことや、株式上場による自己株式の処分等1,258百万円によるものであります。
② 経営成績の状況
当社グループの売上高、売上総利益、営業利益、経常利益及び親会社株主に帰属する当期純利益は以下のとおりとなりました。
(売上高)
当連結会計年度の売上高は19,987百万円(前期比2.0%増)となりました。シェア拡大による殺菌剤の増加、電解製品(苛性ソーダ誘導品、塩素誘導品)の価格是正の浸透や、輸出商材の販売国多角化等により、増収となりました。
(売上原価、売上総利益)
当連結会計年度の売上原価は14,482百万円(前期比4.1%減)、売上総利益は5,504百万円(前期比22.2%増)となりました。価格是正の浸透、輸出品の増加等により、売上原価は減少しました。
(販売費及び一般管理費、営業利益)
当連結会計年度の販売費及び一般管理費は3,940百万円(前期比6.3%増)、営業利益は1,564百万円(前期比96.4%増)となりました。主に賞与引当金繰入額等の増加による人件費が増加しました。
(営業外損益、経常利益)
当連結会計年度の経常利益は1,780百万円(前期比101.0%増)となりました。営業外損益におきましては、営業外収益は補助金収入229百万円の計上などにより前期比184百万円の増加、営業外費用は連結子会社である富士アミドケミカル㈱操業停止に関わる費用を休止固定資産費用として85百万円計上したことなどにより前期比57百万円の増加となりました。
(特別損益、税金等調整前当期純利益)
当連結会計年度の税金等調整前当期純利益は1,662百万円(前期比150.5%増)となりました。特別損益におきましては、特別利益は投資有価証券売却益76百万円の計上などにより前期比81百万円の増加、特別損失は固定資産除却損が増加したものの、減損損失やその他に含まれている事業整理損の減少等により、前期比22百万円の減少となりました。
(親会社株主に帰属する当期純利益)
当連結会計年度の親会社株主に帰属する当期純利益は1,158百万円(前期比129.9%増)となりました。法人税、住民税及び事業税429百万円、法人税等調整額55百万円の計上により法人税等合計は前期比331百万円増加しました。
③ キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は1,710百万円となり、前連結会計年度末と比較して408百万円の増加となりました。当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は、次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動により得られた資金は2,654百万円(前年同期は1,769百万円の収入)となりました。これは主に税金等調整前当期純利益1,662百万円、減価償却費1,022百万円などによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動により支出した資金は1,944百万円(前年同期は371百万円の支出)となりました。これは主に有形固定資産の取得による支出2,067百万円、投資有価証券の売却による収入102百万円などによるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動により支出した資金は327百万円(前年同期は1,404百万円の支出)となりました。これは主に自己株式の処分よる収入1,918百万円、短期借入金の純増減額の減少376百万円、長期借入金の返済による支出851百万円などによるものであります。
(3) 生産、受注及び販売の実績
① 生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注)金額は製造原価によっており、セグメント間の取引については相殺消去しております。
② 受注実績
当社グループは見込生産を行っていることから、当該記載を省略しております。
③ 販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注)セグメント間の取引については相殺消去しております。
(4) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は以下のとおりであります。文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであります。
① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
財政状態及び経営成績の状況につきましては、「(2) 財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりであります。
② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
キャッシュ・フローの状況の分析につきましては、「(2) 財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりであります。
当社グループは、化学工業薬品の製造・販売業務を営んでおり、原材料の仕入れから製造工程を経て販売に至るまでにおいて支払と売上代金回収の間には一定期間タイムラグが生じることから、運転資金が必要となっております。また、製造においては設備投資が発生するため設備資金が必要となっており、これらの所要資金については、銀行からの借入を基本としております。
運転資金については、毎月月末に資金繰りを勘案した上で当座貸越により調達しております。また設備資金については、大規模な設備投資が発生した場合に設備投資の支払時期に長期借入金にて調達することを基本としております。
上記記載のとおり、当社グループの事業運営を円滑に遂行するための資金調達チャネルは十分に確保されており、適正な水準の資金の流動性を維持・確保できているものと認識しております。
③ 重要な会計方針及び見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたっては、会計上の見積りを行う必要があり、固定資産の減損会計、繰延税金資産の回収可能性の判断、環境対策引当金等の検討や見積りについては、過去の実績や合理的な基準に基づいて実施しておりますが、見積りには不確実性があるため、前提条件や事業環境の変化により見積りと将来の実績が異なる場合があります。会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。
④ 経営成績に重要な影響を与える要因
当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。
⑤ 経営戦略の現状と見通し
経営戦略の現状と見通しについては、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」をご参照ください。
⑥ 経営者の問題意識と今後の方針
当社の経営者は、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおり、当社グループが今後さらなる成長を遂げるためには、様々な課題に対処することが必要であると認識しております。
当社の経営上の重要な契約は以下のとおりであります。
(注) 中外製薬㈱との契約締結日に手付金20%が入金済みで、2025年9月30日の引渡しと引換えに残代金が入金される予定であります。当社として、一切の契約不適合責任は負わず、契約不履行による契約解除の場合は手付金相当額の売買代金20%を請求できることとなっております。
当社グループにおける研究開発は、当社研究開発本部及び土佐工場品質技術部にて実施しております。研究開発本部は、環境リサイクル事業を中心とする新規事業に関する調査・企画・研究、受託品の合成検討・中規模試作、既存製品の改善及び製品分析を主業務とし、当社グループの成長及び、当社グループの顧客の要望にいち早く応えるべく、スピーディーな対応に努めております。また当社土佐工場については、顧客へのよりスピーディーな対応と研究開発業務のさらなる効率化を目的として品質技術部技術開発グループを設置し、対応力の向上を図っております。
当連結会計年度の研究開発費の総額は
当社グループは、既存事業の強化と事業領域の拡大を図る目的で、既存事業の周辺領域への展開も含めた以下の研究開発テーマに取り組んでおります。
(1) 廃硫酸・硫酸リサイクル領域への展開(新技術導入)
石油精製業者などの廃硫酸供給業者より廃硫酸を引き取り、硫酸を精製し、各種メーカーへ販売する現行のリサイクル事業に対し、新技術導入による処理量並びに受入れ廃硫酸の種類の拡大、さらには廃硫酸以外の含硫黄廃棄物からの硫酸産出など、さらなるリサイクル源の拡大に向けた研究開発を進めております。また、受け入れる廃棄物の種類拡大だけでなく、再生硫酸の純度向上による用途拡大を目的とした研究開発にも取り組んでいます。
(2) 既存製品の抜本的なコスト低減技術・安定製造化技術の開発
塩水の電気分解により生成される苛性ソーダ、併産される塩素や水素の生成比率に応じた高付加価値機能化学品製造技術の研究を進めております。
(3) ニッチ市場に特化した事業の強化・新製品開発
工場排水や下水排水に利用されている水処理凝集剤について、水処理凝集剤の安定性向上や、高凝集性の付与により顧客側で使用量を削減できることを提供価値とした製品開発に向けた研究開発を進めております。また、健康食品関連食品用の日持ち向上剤分野においては、利用対象食品の拡大の観点での顧客価値向上を目指した研究開発を進めております。加えて、他社からの製造開発委託案件の事業化に向けた研究開発にも取り組んでおります。
(4) 脱塩素セメント原料リサイクル事業の開始
セメント工場から排出される焼却飛灰の塩素・重金属を除去し、セメント原料としてリサイクルするための脱塩事業を2023年3月期に開始いたしましたが、これに加えて、地方公共団体から排出される一般廃棄物由来の飛灰をリサイクルする技術を確立すべく、研究開発を進めております。
(5) 当社製造製品販売後の回収・再利用検討
当社製造品目として販売を行っている水硫化ソーダ・水酸化アルミ・酢酸ナトリウムについて、顧客側で廃棄される廃棄物を引き取り、当社での製造時の原料としてリサイクルするための研究開発を進めております。現時点においてはラボベースではありますが、一部製品はリサイクルを実証済みであり、事業化の可能性検討とマーケティングを並行して実施しております。
(6) 次世代電池領域でのリサイクル
次世代電池の開発時及び普及後に排出される廃棄物の処理には、硫黄化合物やナトリウム化合物の処理が課題となるため、現在、電池一般のリサイクルの将来像調査、レアメタル回収事業の可能性調査、事業化に向けた研究開発を産学連携のもとで進めております。
(7) 各種塩事業における生産性向上技術検討、新用途の開発支援
品揃え充実を目指し、微粒塩や飼料塩等の製造技術確立に向けた研究開発を進めております。