第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)  経営方針

当社グループは1906年の創業以来、化学品メーカーとして歩み続けてきました。現在は、「化学品事業を通じて地球環境と豊かな社会の創生に貢献する」を企業理念に掲げ、様々な製品の基礎原料として使われる苛性ソーダや殺菌、消毒に使われる次亜塩素酸ソーダをはじめとする「基礎化学品事業」、酢酸ナトリウム(食品用日持ち向上剤)、グルコサミンをはじめとする「機能化学品事業」、土壌殺菌剤として使われる農薬クロルピクリンをはじめとする「アグリ事業」、廃硫酸のリサイクルを中心とする「環境リサイクル事業」、及び塩の加工・販売に関する「各種塩事業」の5事業を展開しています。

特に、2013年にそれまでの親会社であった㈱中山製鋼所から独立したタイミングを機に、それまでの化学品のシナジーを生かしたプロダクトアウト型から、顧客のニーズをふまえ商品開発を行うマーケットイン型の企業へと大きく企業体質を転換しており、顧客に近接した工場立地と、硫黄、水素などの原料を自社製造できるコスト競争力を強みに、商品提案力に磨きをかけ、さらなる発展に繋げていく方針です。

 

(2)  経営環境及び中長期的な経営戦略

当連結会計年度における世界経済は、全体として緩やかな成長を維持したものの、世界情勢の緊迫化、米国の通商政策を巡る動き、中国経済の減速など依然として先行き不透明な状況が続きました。日本国内においても、個人消費の回復に伴う緩やかな回復基調が見られる一方、原材料価格の高止まりによる物価の上昇、海外からの安価な化学品の流入、為替相場の大幅な変動、政局の不安定化など、依然として先行き不透明な状況が続きました。

このような経済情勢のもと、当社グループは2027年3月期までの中期経営計画の初年度として「サステナブルな明日を創る」のスローガンのもと、重点施策である、①収益基盤の強化、②環境リサイクル事業領域拡大、③サステナブル経営の推進の達成に向け、諸施策を適切に実施いたしました。

 

(3)  経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

当社グループは、企業価値の向上と株主利益の増大を図るため、事業の収益性と設備投資を効果的に実施しながら成長性を高めるため、主な経営指標(KPI)として、売上高、経常利益及び資産効率を示すROE(自己資本利益率)を掲げております。2025年度の目標値は売上高22,900百万円、経常利益1,750百万円、ROE11.2%(土地売却影響を除く)であります。当該KPIの各数値については有価証券報告書提出日現在において予測できる事情等を基礎とした合理的な判断に基づくものであり、その達成を保証するものではありません。

 

(4)  経営上及び財務上の対処すべき課題

当社は2023年4月に東京証券取引所スタンダード市場に上場を果たし、今後も引き続き上場企業として相応しいガバナンスの強化とコンプライアンスの徹底の下でステークホルダーの満足度向上に向けた施策を実施してまいります。

具体的には、2026年3月期が2年目となる3ヵ年の新中期経営計画に基づいた各施策を実行してまいります。

 

① 収益基盤の強化~強い事業を更に強く

事業ポートフォリオの最適化を常に意識し、あらゆる業務の効率化の推進による筋肉質な体質強化に取り組んでまいります。加えて、当社の強みである地域立脚を活かし差別化が図れる事業や、顧客ニーズに応える既存製品の高付加価値化へのリソース集中にも注力してまいります。

 

② 環境リサイクル事業領域拡大~成長への布石造り

当社の環境リサイクル事業の中心である廃硫酸リサイクル事業を伸長させていくとともに、2023年10月から当社土佐工場にて開始いたしました脱塩事業を拡大してまいります。加えて、当社の強みを活かした新たなリサイクル事業の創出にも取り組んでまいります。

 

③ サステナブル経営の推進~経済価値・社会価値・環境価値の同時実現

環境リサイクル事業は、その先駆者として事業拡大を通じて環境・社会に貢献してまいります。また、BCPも念頭に置いた安心・安全な持続的製販体制の強化に努めてまいります。加えて、人材育成、DE&I施策推進により、人的資本投資も拡充していきます。

 

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取り組み】

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取り組みは、次のとおりであります。詳細については当社ホームページをご参照ください。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

当社グループは「化学品事業を通じて地球環境と豊かな社会の創生に貢献する」という企業理念のもとに事業活動を行っており、1906年の創業以来100年以上にわたり基礎化学品の製造をものづくりの基盤として、数々の技術を蓄積し、永きにわたって人々の快適な生活を支え、顧客の信頼に応えてきた歴史は、「水をつくり、土を活かし、人を育む」という現在の経営に生かされております。

環境・社会課題の解決を志向した事業領域の拡大と事業構造の変革により成長軌道を築き、安定的かつ持続的な利益成長を通じて企業価値の向上と持続可能な社会の実現を目指しており、1959年より開始した廃硫酸ばい焼による硫酸リサイクル事業では事業そのものがサステナビリティと直結しており、環境リサイクルの先駆者として今後も継続的、発展的に事業を行っていくことが、環境負荷の削減に寄与し、ステークホルダーの皆様にも評価していただけるものと考えております。

 

南海化学ホームページ「サステナビリティサイト」

https://www.nankai-chem.co.jp/sustainability/

 


(1) ガバナンス

当社グループは、サステナビリティに関する課題について、中期経営計画においても、重要課題の1つとして掲げております。また、代表取締役を委員長とするサステナビリティ委員会を設置し、当社グループを含めた各組織から選出されたサステナビリティリーダーを中心に全社的な活動の推進と、年4回の委員会開催を経て、その内容は年2回、取締役会に報告され、取締役会の監督が適切に図られる体制を取っております。

 

(2) 戦略

2024年度に向こう3か年の中期経営計画を策定し、「サステナブルな明日を創る」をスローガンに掲げ、サステナブル経営の推進を力強く後押しするために、主力事業である基礎化学品事業では基盤事業の強化に加え、いかなる環境下でも安定的に商品を供給できる体制を整え収益力を固める一方、中期経営計画の重点施策として「今後の成長をけん引するリサイクル事業の先駆者としての環境・社会への貢献」及び「人財の育成、DE&I施策推進による人的資本投資の拡充」に戦略的に取り組む3年間と位置付けております。

 

 

(a) 気候変動への対応

GHG(温室効果ガス)排出について、統一した評価方法を持つため算定会社と契約し、南海化学グループGHG排出量の評価を進めており、2024年度はSCOPE1、2の算定を実施し、主要製品のLCA算定を継続実施して参りました。また、2025年度はそれら主要製品のLCA算定に加え、SCOPE3の算定を実施したうえで、算定結果に基づき、GHG排出量の見える化を進め、生産工程改善や省エネ機器活用に繋げることで排出量削減を進めてまいります。

 

(b) 人的資本・多様性への対応

① 健康経営への取り組み

当社は、2021年10月、社員の心身の健康づくりに取り組み、社員の働きがいと経済成長に貢献することを表明する「健康経営宣言」を策定し、社内外に公開し、従業員の健康意識の向上や生活習慣の改善、グループ全社員に対するストレスチェックの実施によるメンタルヘルス対策の強化といった施策に取り組み、2022年度から継続して「健康経営優良法人」の認定を受けております。

社員の健康状況を把握し、継続的に改善する取り組みを、個人と組織のパフォーマンスの向上に向けた重要な投資と捉え、健康経営への投資として社外福利厚生サービスへの加入により従業員とその家族への厚生機会の提供など、戦略的かつ計画的に取り組んでおります。

 

② 女性の活躍推進を含む社内の多様性への取り組み 

当社グループは、サステナビリティの実現のために必要となる多様な人財の確保を目的に、性別や国籍等にかかわらず、採用活動を行っております。また、女性にとって働きやすい職場環境をつくることは、ジェンダーにかかわらず、多様な背景をもつ社員全員にとって働きやすい職場となることと考えており、2018年7月より組織横断的な会議体である「女性活躍推進タスクフォース」を発足し、これまで継続的な議論を通じて、働き方改革に資する制度改定提案などにも取り組んでおります。

また、社員のニーズを把握し、社員一人ひとりに対し仕事と育児の両立支援や、多様な人財が安心して存分に活躍できる職場環境を構築すべく、年次、職位、職能ごとに求められる能力・専門知識の習得を目的とした研修制度を実施し、継続的な人財の育成にも取り組んでおります。

 

(3) リスク管理

当社グループは、事業活動に潜在する様々な内外リスクを全社的かつ適切に管理するために「リスクマネジメント基本規程」を定め、代表取締役を委員長としたサステナビリティ委員会を設置しております。サステナビリティ委員会においては、サステナビリティの観点から当社及び当社グループ会社の業務に関連するリスクの抽出と評価を行ったうえで優先的に管理するリスクの特定を行い、リスクの予防、軽減、移転及び回避措置を講じるなどの平時のリスク管理活動を推進しております。

 

(4) 指標と目標

(a) 気候変動への対応 

2050年のカーボンニュートラルに向けて、当社グループのGHG排出量を実質ゼロにすることを目指して、まずは2030年の排出削減目標(2013年基準39%削減)に取り組んでおります。2024年までの実績及び目標値は次の通りであります。

年度

2013

2023

2024

2030

排出量トン/年

60,900

47,300

44,300

37,100

削減率(%)

0.0

22.3

27.3

39.1

 

 

(b) 人的資本・多様性への対応  

上記「(2)戦略」において記載した、人的資本・多様性への対応に関する人財確保、及び社内環境整備に関する方針について、次の指標を用いており、今後も当該指標をさらに高めるよう取り組みを進めてまいります。

指標

実績(当連結会計年度)

採用者に占める女性割合

17.1

管理職及びリーダーに占める女性割合

6.6

男性社員育児休業平均取得率

66.7

 

 

 

3 【事業等のリスク】

本書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。

当社グループでは、これらのリスク発生の可能性を認識した上で、発生の回避や発生した場合の対応に最善を尽くす方針としております。

なお、文中の将来に関する事項は、提出日現在において当社グループが判断したものであり、当社グループに係る全てのリスクを網羅したものではなく、記載された事項以外にも予測が困難な事業等のリスクがあるものと考えられます。

 

(1) 国内外の経済情勢・需要変動・競争

国内外の顧客や市場の動向、経済情勢の変動により、当社グループの製品マーケットの縮小や市況の下落が生じた場合は、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。また、競合他社による生産能力増強や低価格販売などの事業展開により、当社グループの製品マーケットのシェア低下や需給バランスが崩れることによる製品価格の下落が生じた場合は、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

 

(2) 原材料の調達

当社グループの製品で使用する原材料が確保できない場合、あるいは原材料価格が急激に変動した場合は、当社グループの経営成績及び財政状態に重要な影響を及ぼす可能性があります。このため、調達先の分散化や多様化により、原材料の安定的な調達に努めるとともに、原材料価格の上昇に対しては、原価の低減や販売価格の改定などの施策を行うことにより経営成績及び財政状態への影響の軽減を図っております。

 

(3) 製品の品質

当社グループでは、品質管理体制を整備し品質の維持に努めておりますが、予期せぬ品質トラブルが発生した場合には、顧客からの信用の低下や当社グループの社会的信用の低下を招く可能性があります。これらに対しては、製造物賠償責任保険に加入し、影響額を最小限にとどめる取組みを行っているものの、損害賠償や補償の履行により当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(4) 法的規制・環境規制

当社グループでは、法令や規則の遵守徹底を基本として事業活動を行うとともに、化学物質を製造し、又は取り扱う事業者として、化学物質の開発から製造・流通・使用・最終消費を経て廃棄に至る全ライフサイクルにわたって「環境・安全・健康」を確保することを経営方針として公約し、環境・安全・健康面の対策を実行し、改善を図っていく自己管理活動である「レスポンシブル・ケア活動」を推進しておりますが、これらの規制の動向により、過去、現在及び将来の当社グループの事業活動に関し、法的又は社会的責任の観点から対応を行う場合には、事業活動に対する制約の拡大やコストの増加が発生し、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(5) 訴訟等

当社グループでは、コンプライアンスの徹底が最重要かつ第一義であると役職員が認識した上で各自の職務にあたっておりますが、当社グループの事業活動に関連して訴訟、その他の法的手段が提起された場合は、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(6) 知的財産の保護

当社グループは、知的財産権の重要性を認識し、知的財産の権利化、第三者が保有する知的財産権の侵害防止に取り組んでおります。しかしながら、広範囲に事業を展開する中で、当社グループの知的財産権が侵害される可能性や第三者が保有する知的財産権を侵害する可能性があり、こうした場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

(7) 突発的な事故や災害の発生

 当社グループでは、全ての製造設備を対象とした定期的な点検や必要に応じての修繕を行うことにより、安全かつ安定的な工場設備の操業に努めておりますが、不具合や事故による製造設備の損壊に起因する生産活動の中断により、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 また、当社グループの製造拠点は主に和歌山県及び高知県に立地しており、南海トラフを震源とする地震災害の影響を受ける可能性があり、また台風による風水害の影響を受けやすいことからBCP策定ワーキンググループによる対策検討を実施し、その影響の最小化を図っておりますが、当該製造設備の損壊に起因する生産活動の中断により、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(8) 設備投資

当社グループは、今後の需要予測、損益等を総合的に勘案して、戦略的に設備投資を実施しております。しかしながら、人手不足による建設費・物流費の高騰などにより実際の投資額が予定額を大幅に上回った場合や、製品・原燃料市況の変化等により計画通りの収益が得られなかった場合は、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

 

(9) 固定資産の減損

当社グループが保有する固定資産については、「固定資産の減損に関する会計基準」を適用しておりますが、固定資産又は資産グループが属する製造拠点の経営環境の著しい変化や収益状況の悪化等があった場合には、固定資産の減損損失が発生し、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(10) 経営成績の季節変動及び天候影響

当社グループの事業は、降雪時の路面凍結防止剤などに用いられる各種塩製品や、農薬などの取扱製品については、その特性上、冬期から春先(11月から翌年5月頃)にかけて売上高及び利益が計上される結果、夏場である会計期間第2四半期は収益が減少する傾向となっております。また、降雪時の路面凍結防止剤などに用いられる各種塩製品は天候に左右されやすい傾向があるため、天候の変動により当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(11) 情報セキュリティ

当社グループでは、コンピュータシステムによって、販売・受注・出荷・生産・在庫・購買・給与・財務・経理といった事業活動に必要な業務情報の一元管理を行っており、当該管理体制には万全を期すとともに、情報セキュリティを含めたコンプライアンス研修などを実施しております。しかしながら、予期せぬコンピュータシステムの停止や外部からのサイバー攻撃などによる事業活動の停滞、あるいは重要情報の漏えいや紛失による対外的信用の低下により、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

 

(12) 人材の採用及び育成

当社グループは、人材戦略を事業活動における最重要課題の一つとして捉えており、今後の事業展開には適切な人材の確保・育成が必要と認識しております。多様な人材の積極的な採用や育成を通じた最適な人材の確保、生産工程の省人化等による人的資源の有効活用に努めておりますが、適切な人材を十分に確保できなかった場合、当社グループの事業遂行に制約を受け、または機会損失が生じるなど、売上高の減少等により、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

 

(13) 金利変動

当社グループは、設備投資資金、運転資金を銀行からの借入により賄っており、業容拡大等に伴う設備投資、運転資金の増加は今後も想定されます。当社グループは借入金比率の低減を図り財務体質の強化に努めてまいりますが、金利の上昇傾向が続いた場合、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

 

(14) 繰延税金資産の取崩し

当社グループは、税務上の繰越欠損金及び将来減算一時差異に対して、将来の課税所得を合理的に見積り、回収可能性を検討した上で繰延税金資産を計上しておりますが、実際の課税所得が見積りと異なり、回収可能性の見直しが必要となった場合、又は税率変更を含む税制の改正等があった場合には、繰延税金資産の取崩しが必要となり、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

なお、当事業年度の記載項目につきましては、改めてリスクの精査を行った結果、昨年までの記載項目を整理するとともに、「内部管理体制」については一定の整備が完了したこと、「新株予約権(ストック・オプション)による希薄化」については株式への転換が進み個数が減少したことを踏まえ、項目を削除いたしました。

 


 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) 経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における世界経済は、全体として緩やかな成長を維持したものの、世界情勢の緊迫化、米国の通商政策を巡る動き、中国経済の減速など依然として先行き不透明な状況が続きました。日本国内においても、個人消費の回復に伴う緩やかな回復基調が見られる一方、原材料価格の高止まりによる物価の上昇、海外からの安価な化学品の流入、為替相場の大幅な変動、政局の不安定化など、依然として先行き不透明な状況が続きました。

このような経済情勢のもと、当社グループは2027年3月期までの中期経営計画として「サステナブルな明日を創る」のスローガンのもと、重点施策である、①収益基盤の強化、②環境リサイクル事業領域拡大、③サステナブル経営の推進の達成に向け、諸施策を適切に実施いたしました。

以上の結果、当連結会計年度の経営成績につきましては、売上高は20,900百万円(前期比4.6%増)となり、損益面につきましては、営業利益は1,306百万円(前期比16.5%減)、経常利益は1,456百万円(前期比18.2%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は1,015百万円(前期比12.4%減)となりました。

なお、当連結会計年度におけるセグメントごとの経営成績は次のとおりであります。

 

<化学品事業>

基礎化学品につきましては、一部製品においては需要減により販売数量が減少したものの、地域に根ざした販売体制のさらなる強化に取り組みました。

機能化学品、およびアグリにつきましては、安定供給体制の構築に向けて、サプライチェーンの整備に努めました。

環境リサイクルにつきましては、廃硫酸リサイクルの新規顧客獲得推進等を積極的に行いました。

以上の結果、化学品事業における当連結会計年度の売上高は16,346百万円(前期比2.6%減)、セグメント利益は2,108百万円(前期比12.8%減)となりました。

 

<各種塩事業>

各種塩事業には、降雪の影響を受けて凍結防止剤の出荷が増加した結果、売上高は4,553百万円(前期比42.0%増)、セグメント利益359百万円(前期比75.6%増)となりました。

 

(2) 財政状態及び経営成績の状況

① 財政状態の状況

(資産)

当連結会計年度末の資産合計は22,471百万円となり、前連結会計年度末に比べ2,213百万円増加しました。流動資産につきましては、売掛金が117百万円、原材料及び貯蔵品が307百万円増加したことなどにより、前連結会計年度末に比べ408百万円増加9,505百万円となりました。また固定資産につきましては、建物及び構築物が237百万円、建設仮勘定が1,672百万円増加したことなどにより、前連結会計年度末に比べ1,806百万円増加12,951百万円となりました。

繰延資産につきましては、14百万円となりました。

(負債)

当連結会計年度末の負債合計は13,967百万円となり、前連結会計年度末に比べ1,211百万円増加しました。流動負債につきましては、連結子会社である富士アミドケミカル㈱において受領した不動産売買契約に係る手付金の入金及び長期前受金からの振り替えにより、前受金が2,798百万円増加しました。一方で買掛金が298百万円、短期借入金が512百万円減少したことなどにより、前連結会計年度末に比べ1,847百万円増加9,837百万円となりました。また固定負債につきましては、長期借入金が901百万円増加しました。一方で長期前受金が流動負債の前受金に1,300百万円振り替え、減少したことなどにより、前連結会計年度末に比べ635百万円減少4,130百万円となりました。

(純資産)

当連結会計年度末における純資産合計は8,503百万円となり、前連結会計年度末に比べ1,001百万円増加しました。これは主に親会社株主に帰属する当期純利益の計上等による利益剰余金が894百万円増加したことなどによるものであります。

 

 

② 経営成績の状況

当社グループの売上高、売上総利益、営業利益、経常利益及び親会社株主に帰属する当期純利益は以下のとおりとなりました。

 

(売上高)

当連結会計年度の売上高は20,900百万円(前期比4.6%増)となりました。シェア拡大による殺菌剤の増加、電解製品(苛性ソーダ誘導品、塩素誘導品)の価格是正の浸透や輸出商材の販売国多角化、各種塩事業における冬季の路面凍結材の増加等により、増収となりました。

 

(売上原価、売上総利益)

当連結会計年度の売上原価は15,388百万円(前期比6.3%増)、売上総利益は5,512百万円(前期比0.1%増)となりました。価格是正の浸透、輸出品の増加等により、売上総利益が増加しました。

 

(販売費及び一般管理費、営業利益)

当連結会計年度の販売費及び一般管理費は4,206百万円(前期比6.8%増)、営業利益は1,306百万円(前期比16.5%減)となりました。主に退職給付費用等の増加による人件費が増加しました。

 

(営業外損益、経常利益)

当連結会計年度の経常利益は1,456百万円(前期比18.2%減)となりました。営業外損益におきましては、営業外収益は補助金収入や持分法投資利益等の減少などにより前期比105百万円の減少、営業外費用は連結子会社である富士アミドケミカル㈱操業停止に関わる休止固定資産費用が減少したことなどにより前期比39百万円の減少となりました。

 

(特別損益、税金等調整前当期純利益)

当連結会計年度の税金等調整前当期純利益は1,347百万円(前期比18.9%減)となりました。特別損益におきましては、特別利益は環境対策引当金戻入額や受取保険金等の発生により前期比微増、特別損失は減損損失の減少や、前連結会計年度その他に含まれる棚卸資産除却損の発生がなかったこと等から、前期比8百万円の減少となりました。

 

(親会社株主に帰属する当期純利益)

当連結会計年度の親会社株主に帰属する当期純利益は1,015百万円(前期比12.4%減)となりました。法人税、住民税及び事業税273百万円、法人税等調整額23百万円の計上により法人税等合計は前期比187百万円減少しましたが、税金等調整前当期純利益の減少等により、前期比減少となりました。

 

③ キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は1,703百万円となり、前連結会計年度末と比較して7百万円の減少となりました。当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は、次のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動により得られた資金は181百万円(前年同期は2,654百万円の収入)となりました。これは主に税金等調整前当期純利益1,347百万円、減価償却費1,136百万円、その他に含まれる連結子会社である富士アミドケミカル㈱の土地の売却原価となる土壌対策工事代金の増加1,595百万円などによるものであります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動により支出した資金は490百万円(前年同期は1,944百万円の支出)となりました。これは主に有形固定資産の取得による支出2,035百万円、有形固定資産の売却に係る手付金収入1,500百万円などによるものであります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動により得られた資金は243百万円(前年同期は327百万円の支出)となりました。これは主に短期借入金の純増減額の減少512百万円、長期借入れによる収入2,006百万円、長期借入金の返済による支出899百万円などによるものであります。

 

 

(3) 生産、受注及び販売の実績

① 生産実績

当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

金額(百万円)

前年同期比(%)

化学品事業

9,520

97.2

各種塩事業

1,615

120.7

報告セグメント計

11,135

100.1

合計

11,135

100.1

 

(注)金額は製造原価によっており、セグメント間の取引については相殺消去しております。

 

② 受注実績

当社グループは見込生産を行っていることから、当該記載を省略しております。

 

③ 販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

金額(百万円)

前年同期比(%)

化学品事業

16,346

97.4

各種塩事業

4,553

142.0

報告セグメント計

20,900

104.6

合計

20,900

104.6

 

(注)セグメント間の取引については相殺消去しております。

 

 

(4) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は以下のとおりであります。文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであります。

 

① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

財政状態及び経営成績の状況につきましては、「(2) 財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりであります。

 

② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

キャッシュ・フローの状況の分析につきましては、「(2) 財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりであります。

当社グループは、化学工業薬品の製造・販売業務を営んでおり、原材料の仕入れから製造工程を経て販売に至るまでにおいて支払と売上代金回収の間には一定期間タイムラグが生じることから、運転資金が必要となっております。また、製造においては設備投資が発生するため設備資金が必要となっており、これらの所要資金については、銀行からの借入を基本としております。

運転資金については、毎月月末に資金繰りを勘案した上で当座貸越により調達しております。また設備資金については、大規模な設備投資が発生した場合に設備投資の支払時期に長期借入金にて調達することを基本としております。

上記記載のとおり、当社グループの事業運営を円滑に遂行するための資金調達チャネルは十分に確保されており、適正な水準の資金の流動性を維持・確保できているものと認識しております。

 

③ 重要な会計方針及び見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたっては、会計上の見積りを行う必要があり、固定資産の減損会計、繰延税金資産の回収可能性の判断や見積りついては、過去の実績や合理的な基準に基づいて実施しておりますが、見積りには不確実性があるため、前提条件や事業環境の変化により見積りと将来の実績が異なる場合があります。会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。

 

④ 経営成績に重要な影響を与える要因

当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。

 

⑤ 経営戦略の現状と見通し

経営戦略の現状と見通しについては、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」をご参照ください。

 

  ⑥ 経営者の問題意識と今後の方針

当社の経営者は、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおり、当社グループが今後さらなる成長を遂げるためには、様々な課題に対処することが必要であると認識しております。

 

 

5 【重要な契約等】

当社の経営上の重要な契約は以下のとおりであります。

 

(連結子会社の不動産売却)

契約相手先

契約当事者

契約締結日

契約期間

契約内容

中外製薬㈱

富士アミドケミカル㈱

2022年10月28日

不動産売買契約

(1) 売主:富士アミドケミカル㈱

(2) 買主:中外製薬㈱

(3) 連帯保証人:南海化学㈱

(4) 売却額:6,500百万円

 

(注)中外製薬㈱との契約締結日に手付金として売却額の20%が入金済で、2025年9月30日の引き渡し期日に対象不動産と引き換えに残代金が入金される予定でありましたが、新たに中外製薬㈱と不動産売買契約の変更合意書を締結し、追加の手付金の入金と、引き渡し期日及び残代金の入金を2025年11月28日に変更しております。当社として、一切の契約不適合責任は負わず、契約不履行による契約解除の場合は当初手付金相当額の売買代金20%を請求できることとなっております。

 

(完全子会社の吸収合併)

当社は2024年12月16日開催の取締役会において、当社の完全子会社であるエヌシー環境株式会社を以下のとおり吸収合併することを決議し、同日付で吸収合併契約を締結し、2025年4月1日付で吸収合併いたしました。

詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等注記事項(重要な後発事象)」に記載の通りであります。

 

 

6 【研究開発活動】

当社グループにおける研究開発は、当社研究開発本部及び土佐工場品質技術部にて実施しております。研究開発本部は、環境リサイクル事業及び塩素チェーンを活用した機能品創出を中心とする新規事業に関する調査・企画・研究、当社の成長を支える基盤技術の強化、拡大、既存事業における収益性改善や、重要な品質課題の解決を主業務としております。土佐工場では、顧客へのよりスピーディーな対応と研究開発業務のさらなる効率化を目的として品質技術部技術開発グループを独自に設置し、研究開発本部と連携しながらより現場に密着した課題対応力の向上に努めております。

当連結会計年度の研究開発費の総額は257百万円でありますが、研究開発活動が各セグメント別に関連づけられないものもあるため、セグメント別の研究開発費の金額は記載しておりません。

 

当社グループは、既存事業の強化と事業領域の拡大を図る目的で、既存事業の周辺領域への展開も含めた以下の研究開発テーマに取り組んでおります。

 

(1) 廃硫酸・硫酸リサイクル領域への展開(新技術導入)

石油精製業者などの廃硫酸供給業者より廃硫酸を引き取り、硫酸を精製し、各種メーカーへ販売する現行のリサイクル事業に対し、次世代電池関連の想定廃棄物も含め、固形の含硫黄廃棄物に処理可能範囲を拡大すべく、新技術導入の検討を進めております。また、受け入れる廃棄物の種類拡大だけでなく、再生硫酸の純度向上による用途拡大を目的として、高度分析技術の獲得などの研究開発にも取り組んでおります。石油精製業者などの廃硫酸供給業者より廃硫酸を引き取り、硫酸を精製し、各種メーカーへ販売する現行のリサイクル事業に対し、新技術導入による処理量並びに受入れ廃硫酸の種類の拡大、さらには廃硫酸以外の含硫黄廃棄物からの硫酸産出など、さらなるリサイクル源の拡大に向けた研究開発を進めております。また、受け入れる廃棄物の種類拡大だけでなく、再生硫酸の純度向上による用途拡大を目的とした研究開発にも取り組んでいます。

 

(2) 既存製品の抜本的なコスト低減技術・安定製造化技術の開発

当社は苛性ソーダを目的生産物として塩水の電気分解を行っておりますが、併産される塩素を活用した合成技術を磨くことで、より付加価値の高い機能化学品分野の事業創出を目指した研究を進めております。

 

(3) 脱塩素セメント原料リサイクル事業(脱塩事業)の拡大

セメント工場から排出される焼却飛灰の塩素・重金属を除去し、セメント原料としてリサイクルするための脱塩事業を2023年3月期に開始いたしましたが、さらなる処理量の拡大、処理効率の向上のための技術を確立すべく、研究開発を進めております。

 

(4) 環境リサイクル事業を支える基盤技術の強化

処理対象物、排気、排水、処理残渣などに含まれる各種化学物質、微量元素の分析技術は、廃棄物処理を含む環境リサイクル事業の推進のために必須となる基盤技術の一つであり、これをさらに強化し、当社の競争力の源泉とすべく、大学など公的研究機関との連携も含め、研究、技術獲得に取り組んでおります。

 

(5) 新規環境リサイクル分野の開拓

廃硫酸からの硫酸リサイクル、脱塩事業に続く第3の環境リサイクル事業を立ち上げるべく、新たな処理対象元素、新たな処理技術の確立、獲得を目指した研究開発を進めております。

 

(6) 各種塩事業における生産性向上技術検討、新用途の開発支援

品揃え充実を目指し、微粒塩や飼料塩等の製造技術確立に向けた研究開発を進めております。