当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)経営方針
当社グループは、社会的使命、永続的な目標および企業としての姿勢を「The TECNISCO WAY」として企業理念に掲げており、その社会的使命として掲げた「高度なクロスエッジ®Technologyへの継続的なチャレンジによって人びとの喜びの実現の一助となる」を果たすため、「切る」「削る」「磨く」「メタライズ」「接合」を中心とした複数の先端加工技術を融合させた「クロスエッジ®Technology」で、真の顧客ニーズと市場ニーズを捉えたモノづくりに取り組んでおります。また、永続的な目標の“いつの時代にも人びとから「次も」期待される存在となる”において、顧客より求められる部品加工の領域は幅広くありますが、当社グループはその中でも高機能ヒートシンク及びガラスの領域においては、顧客が困ったときには当社に相談したいと思わせられる存在になりたいと考えており、企業としての姿勢の“誠実な企業として生きる 独創の企業として生きる”を基に、世の中の快適につながる部品加工の技術開発を進めております。
なお、企業を構成する主要な要素と当社を取り巻くステークホルダーとの関係性という観点から、当社グループが2023年度に実現すべき姿を「VISION 2023」として定義し、その具現化を継続して進め、景気の波に左右されず着実に成長・拡大するビジネスモデルを構築すること、企業としての基礎体力を強化して安定的な収益構造を実現することを中期的な課題として継続的に取り組んでおります。
(2)経営戦略等
果たすべき社会的使命、「高度なクロスエッジ®Technologyへの継続的なチャレンジによって人々の喜びの実現の一助になる」の実現を目指す上で、当社グループは、中長期のマイルストーンとして「VISION 2023」を策定しています。その策定にあたっては、「VISION 2018」の活動の振り返りを行い、進化を目指して未来からの視点で描かれており、売上高や利益などの定量的な要素によらず、より定性的な要素も含めた内容になっています。事業や技術、会社、文化といった企業を構成する様々な要素の姿と「顧客」「サプライヤー」「従業員」「株主」などのステークホルダーとの関係性から、当社グループの2023年度末(2024年6月期)の到達点を定義しています。例えば中長期の経営指標に関して、事業の姿においては7つの事業の柱をもっていること、独自の製品が事業の柱の1つとなっていること、リスクマネジメントの仕組みが構築・運用されていることを掲げています。
現在、当社グループは、ヒートシンク製品、ガラス製品の製造販売を主な事業として、産業機器市場、自動車市場、光・無線通信市場、ライフサイエンス市場、航空宇宙市場、環境エネルギー市場の合計6つの市場を主な展開領域として当社製品の浸透を図っております。そのためには、これまで取引先からのニーズに対し、どうやって作るか(HOW)に主眼を置いた受託加工を主体としたビジネスモデルから、新たに何を作るか(WHAT)を主眼にした自社素材及び自社製品の開発、製造も並列させたビジネスモデルへの転換に取り組んでまいります。
これらを実現させるために、ヒートシンク製品においては産業機器市場、自動車市場、光・無線通信市場及び航空宇宙市場でのサーマルマネジメント用途に向けた高性能ヒートシンク材料の開発、また、複合加工技術の開発による高機能ヒートシンク製品の製造、ガラス製品においてはライフサイエンス市場に向けた高信頼性製品の開発、さらに、成長市場である環境エネルギー市場へ独自加工技術による展開など、技術開発と製造の効率化を継続的に実施してまいります。
また、社会的使命を果たすために、企業体質の強化は不可欠ですが、リスクマネジメントシステムの推進、働き方改革の推進、健康経営の推進、人材の育成開発、スピーディな情報連携、内部統制整備運用などを継続的に実施してまいります。特に果たすべき社会的使命について、継続的なチャレンジによって「人々の喜びの実現の一助になる」と定義しているように、人々の喜びを実現するのは、顧客です。すなわち当社グループが「クロスエッジ®Technology」を求める先端製品開発に携わる人々から、認められた存在であることがマテリアリティ(最重要課題)です。当社グループは、これを推進する体制として「テクニスコCSマネジメントシステム」という全社的な体制にて、顧客の正直な声を全従業員に届け、CS向上のための活動を行ってまいります。
(3)経営環境
当社グループの主要製品であるヒートシンク製品は、産業機器市場、自動車市場、光・無線通信市場等において、様々な領域の機器の一部を構成する部品として利用されております。
現況において、当社グループは、半導体レーザーの市場セグメント、材料処理、医療、光通信、LiDARセンサー、ディスプレイと照明など様々な分野における主要な半導体レーザーメーカーと取引実績があります。現在、地域別売上では、特に中国メーカーの顧客から旺盛な需要がありますが、競合である日米欧等の主要メーカーも当社グループの顧客であり、その需要を確実に取り込めるように、既存取引先との関係強化及び新規取引先開拓に取り組んでまいります。また、半導体レーザー用途以外でもパワー半導体、MPU向けの高機能ヒートシンク製品を提供しておりますが、これらを含めた半導体市場全体は、デジタル革命の進展に伴い今後も右肩上がりで成長し、2030年には、現在(2020年)の約2倍に匹敵する約100兆円(経済産業省:2021年6月 半導体戦略 参考資料より)に達すると言われています。半導体の微細化、極小化により大容量、高速、高信頼性や低消費電力、性能比低価格化など、半導体の進化に向けた追求は止まることがありません。当社グループは、顧客の最先端製品のR&D・開発担当者と直接対話し、共に解決する提案型の営業を行うことで、顧客製品の信頼性、長寿命化に必要不可欠な電気の放熱問題を解決する、ヒートシンク製品を提供してまいります。
もう一つの当社グループの主要製品であるガラス製品は、自動車市場、ライフサイエンス市場等における様々な領域の機器の一部を構成する部品として利用されております。
ガラス製品は、光透過性、電気的絶縁性、気密性、耐薬品性などの特徴を持つ電子部品用ガラスに、微細な形状加工や金属回路形成加工を行い、電子デバイスと組み合わせることで電子デバイスの小型化、高機能化を可能とする構成部品です。特に車の自動運転技術が進む自動車市場向けの各種センサーやモバイル機器向け、バイオ・医療向け等に精密ガラス製品を提供しております。それぞれの市場においては、顧客製品の高性能化、小型化が進んでおり、当社グループは顧客ニーズを確実に取り込めるように、取り組んでおります。
(4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当社は、株式会社ディスコの研削切断加工技術をもとに受託加工を提供しておりましたが、2000年代、顧客ニーズも踏まえてコーティング技術である薄膜の設備を導入し、新たな加工技術を身に付けました。その後、技術開発を繰り返し、さらなるコア技術を中心に複数工程を組み合わせ、独創的な加工技術を生み出し製品化へとつなげ、専業メーカーでは対応できない技術力を蓄積してまいりました。当社の強みである「クロスエッジ®Technology」は、このように確立された歴史があります。当社グループでは、下記の事項を対処すべき課題と認識して、さらなる進化のためにコア技術を増やし、レベルアップを図る研究開発活動に取り組み、安定的な収益構造の実現を推進してまいります。
①ヒートシンク製品でのサーマルマネジメント用途に向けた高性能ヒートシンク材料の活用・開発
当社グループの主力製品であるレーザー機器用ヒートシンクは、現在は主に窒化アルミニウム(AIN)、銅タングステン(CuW)が原材料ですが、高出力用レーザーを出す半導体素子に直接接合されるため、熱膨張が半導体素子に近くないと、素子自体を損傷します。一方でレーザー加工機は、用途の多様化により高出力化や微細加工のために信頼性が求められ、機器や部品の冷却需要が高まっております。当社グループは、より効率よく熱を吸収し、放熱する高性能ヒートシンク材料の活用(SiC等の新素材)や開発に注力しております。
②ヒートシンク製品での複合加工技術の開発による高機能ヒートシンク製品の製造
上記研究開発の一環で、当社のシンガポール子会社であるTECNISCO Advanced Materials Pte. Ltd.において、さらに熱伝導が高い素材として、銀とダイヤモンドを原材料としたシルバーダイヤによる高機能ヒートシンクの製造開発を行っています。この製品は、熱膨張が様々な半導体素子の数値に近く、熱伝導が当社従来品の2~2.5倍の性能を有しています。今後の用途は、データセンターのサーバー、ハイパーフォーマンスコンピューティング、MPU向けヒートシンク、通信用RF増幅器、高出力レーザー用ヒートシンク、X線装置などで、将来性のある用途を見込んでおります。
③ガラス製品での高信頼性製品の開発
ガラス製品は、微細加工を施す精密部品で、当社グループは、顧客の真のニーズを引出し、提案、製品化しております。用途は、CMOSイメージセンサー、MEMS(微小機械システム)の各種センサー、半導体パッケージ等です。近年、使われる環境が人体である医療用チップや、自動運転車の各種センサー、LiDAR(レーザー光による距離計測システム他)など人命に係わる製品の部品になりますので、高い信頼性を備えた製品の開発に注力しております。
④ガラス製品での独自加工技術による展開
従来の機械加工技術に加えレーザー加工機の試験導入と、原点である「クロスエッジ®Technology」を併せ、それぞれのメリットを活かす複合加工へと発展させる取り組みを進めています。さらに将来的には、金属・ガラスとセラミック複合体など新たな技術開発の必要性も認識しており、将来的なお客様への提案力の強化に努めております。
⑤優秀な人材の確保
「クロスエッジ®Technology」を継続して進化し成長を続けるためには、優秀な人材の確保が重要であると考えております。当社ではこれまで、経験者を中心とした積極的な人員の確保に努めるとともに、社員に対してもハラスメントの防止や労働環境改善のES(従業員満足度)調査への配慮に加え、健康経営による働き方改革等を踏まえた人事施策を行っており、今後も継続、強化を図ってまいります。また、社員一人ひとりが独創的な挑戦を継続し、進化し続ける企業風土の醸成を推進してまいります。
⑥安定的な資金調達の構築
当社グループがメーカーとして最新の設備を保持し、生産設備を維持していくためには、安定的な資金調達が重要であります。今後の事業拡大に向けては、大きな資金需要を見込んでいることから、そのために、安定した調達能力を高め、十分な手許資金の確保を可能とすることに取り組んでまいります。
(5)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは、企業理念に掲げている「高度なクロスエッジ®Technologyへの継続的なチャレンジによって人びとの喜びの実現の一助となる」という社会的使命のもと、「切る」「削る」「磨く」「メタライズ」「接合」を中心とした複数の先端加工技術を融合させた「クロスエッジ®Technology」の提供により、“いつの時代にも人びとから「次も」期待される存在となる”の実現に向けて取り組んでおります。
このことから当社グループでは、現在展開している市場での事業規模拡大及び新たな市場への展開を推進し、安定的な収益構造を実現することを中期的な課題としていることから、売上総利益率の向上と経常利益の拡大を経営において重視しております。
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)ガバナンス
当社グループは、社会における存在意義や企業活動を行う上での基本となる考え方をThe TECNISCO WAYとして定めています。その中で当社の使命を「高度なクロスエッジ®Technologyへの継続的なチャレンジによって人びとの喜びの実現の一助となる」と明確化しています。ここに掲げられた「人びと」とは、 お客様をはじめ、テクニスコに関わる全てのステークホルダーを指します。ステークホルダーに対する「社会的責任と信頼」 は、The TECNISCO WAYの重要な要素であり、当社は事業経営、組織経営の両面で、The TECNISCO WAYに沿った経営を実践することで、持続的な社会の実現への貢献に取り組んでいます。
(2)戦略
お客様、サプライヤ、株主、従業員など、ステークホルダーの皆様とさらなる持続的な成長を目指すにあたり、これまで行ってきた活動を、サステナビリティの重要課題(マテリアリティ)として整理しました。具体的には、SDGsのターゲットレベルから当社の活動を俯瞰することで、ステークホルダー視点で重要なサステナビリティ課題をリストアップしました。次に、リストアップした課題を、The TECNISCO WAYや産業特性を考慮して重み付けすることで、自社視点から見ても重要な課題に絞り込みました。そして、絞り込んだ課題をベースに、経営会議で複数回にわたって議論することで、当社としての重要課題を特定・承認しました。
サステナビリティの重要課題の詳細は、当社WEBサイトをご覧ください。
https://www.tecnisco.com/company/sustainability.html
(3)リスク管理
上記戦略の進捗や妥当性を検証するために、サステナビリティの各重要課題の主管部門によって構成されるワーキンググループが、進捗状況を定期的に組織経営会議に報告します。このようにサステナビリティ推進のPDCAを回すことで、適切にリスク管理を行っていきます。
(4)指標及び目標
サステナビリティの重要課題ごとにKPIと2030年の目標を定めています。
詳細は当社WEBサイトをご覧ください。
https://www.tecnisco.com/company/sustainability.html
本書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
当社グループでは、リスクマネジメント・コンプライアンス委員会を設置することにより、当社グループにおけるあらゆるリスク等への対応および未然防止の体制を構築しております。詳細については、「4 コーポレート・ガバナンスの状況等 (1)コーポレート・ガバナンスの概要」をご参照ください。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
(1)経済状況について(発生可能性:高、発生時期:特定時期なし、影響度:中)
当社グループは国内・外の電子部品メーカー向けに製品を製造・販売しているため、その販売先の国又は地域の経済状況、自然災害、戦争・テロ、金融・資本市場、法令や政府による規制、および顧客の設備投資動向や生産動向の影響を受けます。特に当社グループは、高い海外売上高比率(2024年6月期は連結売上高に対し、65.8%)となっております。
当リスクへの対応として、販売先の国又は地域の情報収集や、市場環境・受注状況を取締役会等の重要会議における定期的なレビューの実施、また全社的な業務改善活動(PIM活動)の継続的な取り組み等により、予期せぬ需要や景気の変化に対し柔軟に対応できる体制を整備し、リスクの低減を図っております。
しかしながら、世界各地において予期せぬ景気後退による需要の減少および顧客が設備投資凍結や減産などを行った場合には、売上の減少等により、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(2)中国リスクについて(発生可能性:高、発生時期:特定時期なし、影響度:中)
当社グループは、中国・蘇州に現地法人を置き、製品の生産や営業活動を行っております。近年、中国では米中貿易摩擦、近隣との地政学的な緊張関係、感染症への大幅な政策転換等、経済情勢に大きく影響する事象が続いております。
当社グループでは現地法人を通じ、中国の経済・社会・政治的状況や法規制の動向について情報を収集し、対応が必要な事象が生じた際には、現地法人や専門家等と連携して対処していくことで、リスクの低減を図ってまいります。
しかしながら、現地での法律・規制や租税制度の変更や、予期し得ない経済情勢の悪化等が生じた場合には、追加的な納税義務並びにコストの増加や、売上の減少等により、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(3)為替レートの変動について(発生可能性:高、発生時期:特定時期なし、影響度:中)
当社グループの事業には、海外における生産と販売が含まれております。各地域における現地通貨建の取引は、連結財務諸表作成のために円換算されております。換算の為替レートにより、現地通貨における価値が変わらなかったとしても、円換算後の価値が影響を受ける可能性があります。一般的に円安は事業に好影響をもたらしますが、円高は当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
当リスクへの対応として、当社グループは、為替変動の情報を注視するとともに、為替予約等を行うことにより、リスクの低減に努めております。
しかしながら、予期しない大幅な円高が生じた場合、円換算後の価値が大きく影響を受け、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(4)新規事業の開発について(発生可能性:中、発生時期:特定時期なし、影響度:中)
当社グループは、高機能ヒートシンク用の新素材および製品の開発・製造に取り組んでおりますが、開発の遅れ、各種実証や認証の対応等に時間を要する等のリスクが潜んでおります。
当社グループは、開発・実証・認証等の進捗状況について、逐一キャッチアップし毎回の経営会議および取締役会において状況の共有及び議論を行うことにより、リスクの低減に努めております。
しかしながら、これらに大幅な遅れが生じた場合、当該事業への投下資本に対する回収が進まず、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(5)人材の確保および育成について(発生可能性:低、発生時期:特定時期なし、影響度:小)
当社グループは、将来にわたる持続的な発展のために、優秀な人材の継続的な採用や育成が重要な課題であると認識しておりますが、雇用情勢の変化等により採用難や人材流出が進んだ場合、ベテラン社員の技能やノウハウ等の伝承や、後継人材の育成が適切になされないリスクが潜んでおります。
当社グループは、人材育成により生産性向上と残業時間の抑制を図る取り組み等を継続して行っているほか、一層の技術革新、生産性の向上を進めるための優秀な人材確保と従業員のモチベーション向上を図るべく、積極的な採用活動、人事評価制度の整備、技能の伝承、研修の実施等の施策を講ずることにより、リスクの軽減を図っております。しかしながら、雇用情勢がいわゆる「売り手市場」となった場合、人材が知名度や給与等において優位な他社に流れ、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(6)技術革新について(発生可能性:中、発生時期:特定時期なし、影響度:中)
当社グループの製品販売先である電子機器、自動車、航空宇宙、医療、設備産業等の業界においては、技術革新や事業環境の変化が急速に進んでおり、顧客が当社グループに求める技術レベルも高度化してきております。
当社グループは、シルバーダイヤによる高機能ヒートシンクの製品開発をはじめとした、新製品の開発や技術力の研鑽等に積極的に取り組んでいるほか、大学等研究機関との共同開発による産学官連携を積極的に実施するとともに、顧客との密接なコミュニケーションによりニーズの捕捉に努め、高度なニーズに対応し続けることにより、リスクの低減を図っております。
しかしながら、新技術や顧客ニーズへの対応の遅れなどが発生した場合、顧客が求める技術レベルに対応できず、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(7)研究開発活動について(発生可能性:中、発生時期:特定時期なし、影響度:中)
当社グループでは、新製品開発、製品改良、生産工程の改善等を研究開発活動として、継続的に実施しておりますが、開発の遅れが生じた場合や、開発した製品が顧客ニーズに合致しなかった場合、また、競合他社による新技術・製品が先行投入された場合には、開発コストの回収が困難となる等のリスクが潜んでおります。
当社グループは、大学等研究機関との共同開発による産学官連携の積極的な実施や、開発・実証・認証等の進捗状況について逐一キャッチアップし状況の共有及び議論を行うことにより、リスクの低減に努めております。
しかしながら、当社グループが顧客ニーズを把握しきれず、これに応えるための製品を正しく開発できない場合や、上記(6)にもあるように、新技術等への対応の遅れなどが発生した場合、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(8)原材料価格の変動及び調達について(発生可能性:高、発生時期:特定時期なし、影響度:中)
当社グループは、金属、ガラス、非金属、貴金属等を原材料に使用しており、これらの材料価格が変動する懸念や、調達そのものが困難となるリスクも潜んでおります。
当リスクへの対応として、当社グループは、貴金属等の重要な原材料の複数社購買、政策的な在庫の確保、客先の需要見通し情報を仕入先と共有するなど関係強化等の対策を行い安定供給の確立に取り組んでおります。
しかしながら、景気や為替の変動、政情の不安等の社会的混乱、投機筋の動向により、材料価格の大幅な変動や、調達そのものが困難となった場合、価格転嫁や生産活動等への影響により、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(9)サプライチェーンについて(発生可能性:低、発生時期:特定時期なし、影響度:中)
当社グループは、十分な品質の原材料等の提供を社外のサプライヤーより受けることが、製品の開発・生産活動において必要不可欠であると認識しております。需給動向の変化に伴い調達競争が激化した場合、開発・生産活動に支障が生じ、当社グループの業績や財政状態に影響を与える可能性がありますが、当社グループはサプライヤーを複数確保することにより、リスクの軽減を図っております。
しかしながら、独自の製品・技術等を有するサプライヤーから調達している原材料等の調達競争が激化した場合、代替での調達が進まず、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(10)外部委託先について(発生可能性:低、発生時期:特定時期なし、影響度:中)
当社グループは、十分な品質の外注加工サービスの提供を社外の委託先より受けることが、製品の開発・生産活動において必要不可欠であると認識しております。現在、これらの外部委託先との関係は良好ですが、外部事業者との関係が悪化した場合、開発・生産活動に支障が生じるリスクが潜んでおります。
当社グループは、品質、コスト、生産能力に問題がなければ内製にて対応するのが基本的なスタンスであり、代替可能な領域の一部のみを、社内の稼働に応じて外部委託先を利用するというのが典型的な利用ケースであることから、こうしたリスクは相対的には高くないものと考えられます。また、当社グループは委託先を複数確保することにより、リスクの軽減を図っております。
しかしながら、独自の技術等を有する外部委託先との関係が悪化した場合、代替での委託が進まず、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(11)公的規制・コンプライアンスについて(発生可能性:低、発生時期:特定時期なし、影響度:大)
当社グループの事業活動において、国内外の法令や規制に反する事象が発生した場合、監督官庁による処分、訴訟の提起、当社の社会的信用の低下等が発生するリスクが潜んでおります。
当社グループでは、法令遵守および法的要求事項への対応として、リスクマネジメント・コンプライアンス委員会を設置するとともにコンプライアンスマニュアル・行動規範を策定しております。また、社員に対するコンプライアンス教育と行動規範の周知を行い、法令遵守の徹底に努めています。
しかしながら、法規制の変更等の把握等が漏れ、予期せぬ法規制への抵触が生じた場合には、監督官庁や訴訟への対応、レピュテーションへの影響等により、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(12)環境規制について(発生可能性:低、発生時期:特定時期なし、影響度:小)
当社グループは、水質汚濁、劇物・有機溶剤使用、廃棄物等多様な環境問題に対し各種環境法令及び規制の影響を受けており、年々それらの規制が厳しくなっております。
当社グループとしては、こうした規制の制改定動向をタイムリーに捕捉し、遵守の徹底に努めるとともに、企業としての社会的責任の観点からも事業活動を通じて地球の環境保全や環境リスク低減に努めて取り組んでおります。
しかしながら、各種環境法令等が大きく厳格化された場合、大幅な追加的義務並びにコスト増加が発生し、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(13)感染症の拡大について(発生可能性:高、発生時期:特定時期なし、影響度:低)
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)等の感染拡大によっては、当社グループの事業活動において影響が生じる可能性があります。
当社は感染拡大を想定し、リモートワーク制度やWEB会議の活用等により、感染拡大期においても円滑なコミュニケーションを取り、業務を継続できる体制を構築しております。
しかしながら、感染が大きく拡大・長期化した場合には、当社グループ各社や顧客の事業活動が停滞する事態が発生し、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(14)自然災害、人的災害等について(発生可能性:低、発生時期:特定時期なし、影響度:大)
当社グループは、生産拠点を広島県、中国・蘇州、シンガポールの3箇所に構えており、災害等が発生した場合、生産設備への損害、ラインの停止等が発生するリスクが潜んでおります。
ただし、これらの各拠点が、自然災害等により同時に生産活動の停止が発生する可能性は極めて低いと考えられます。また、当社グループとしては、各拠点における防災設備や防災体制の整備、防災訓練の実施などの対策を行うほか、社外サプライヤーへの加工委託等を一部行うことにより、リスクの低減を図っております。
しかしながら、広島は各製品の開発拠点、蘇州は量産品の生産拠点、シンガポールは高性能ヒートシンク材料の開発・生産拠点と、各工場特有の機能を有しており、全ての機能において直ちに代替が効くものではないことから、被害の復旧が長期化した場合、生産活動が停滞し、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(15)生産拠点の集中に関するリスクについて(発生可能性:低、発生時期:特定時期なし、影響度:中)
当社グループは、上記(14)のとおり、国内外に計3箇所の生産拠点を構えており、設備等のトラブル発生による生産活動の停止が発生するリスクが潜んでおります。
ただし、これらの各拠点において、同時多発的に設備等のトラブル発生による生産活動の停止が発生する可能性は極めて低いと考えられます。当社グループとしては、設備のメンテナンスの定期的な実施、設備投資計画に基づく計画的な設備の更新、さらに、社外サプライヤーへの加工委託等を一部行うことにより、リスクの低減を図っております。
しかしながら、各工場はそれぞれ特有の機能を有しており、全ての機能において直ちに代替が効くものではないことから、復旧が長期化した場合、生産活動が停滞し、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
なお、中国・蘇州の工場が立地する工業団地「蘇州日本工業村」には再開発計画があり、これにより、移転が求められておりますが、当社グループでは、関係各所とも十分に協議のうえ、近隣地区への移転に向けた生産計画や工事計画を進めており、現工場と移転先工場での操業にブランクが生じる可能性は極めて低いと考えられます。
(16)固定資産の減損について(発生可能性:低、発生時期:特定時期なし、影響度:小)
当社は開発・生産設備をはじめとする固定資産を多数所有しております。経営環境の著しい悪化等によっては、減損損失を認識する必要が生じるリスクが潜んでおります。
当社グループは過去に必要な固定資産の減損は実施済であり、現時点において遊休資産を含め、収益性の低下を認識すべき資産の保有はなく、こうしたリスクは相対的には高くないものと考えられます。
しかしながら、予期せぬ急激な経営環境の悪化が生じた場合、固定資産について、さらなる減損損失を認識する必要が生じ、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(17)設備投資について(発生可能性:低、発生時期:特定時期なし、影響度:中)
当社グループは生産能力および研究開発力の維持・増大のため、設備投資を継続的に行なっておりますが、設備投資の結果、増強した能力が必ずしも業績に貢献しないリスクがあるほか、これらの老朽化等に伴う更新が進まなかった場合、現在と同程度の水準の生産設備を維持できないリスクが潜んでおります。また、資金調達や設備納入等に遅れが生じた場合、生産能力の拡大が想定どおり進まないリスクが潜んでおります。
当社グループは、設備投資に際し、事前に収益性や投資回収可能に関する十分な検討や、可能な限り専用設備の導入を避け多用途の汎用設備を導入しているほか、設備投資計画に基づく計画的な設備の更新を実施することにより、これらのリスクの低減を図っております。
しかしながら、予期せぬ急激な顧客ニーズの変化、経済状況の悪化等が生じた場合、増強した設備による貢献が不十分となる可能性があります。このほか、計画変更による設備更新の停滞や、資金調達・設備納入等の遅れが生じた場合、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(18)知的財産等について(発生可能性:低、発生時期:特定時期なし、影響度:中)
当社グループの技術・ノウハウを第三者が不正に模倣した場合や、知的財産を巡って紛争が生じた場合には、当社グループの製品の競争力低下等が生じるリスクが潜んでおります。
当社グループでは、特許権その他の知的財産権や機密管理により知的財産の保護を徹底するとともに、第三者の知的財産権を侵害しないよう専門家とも連携しながら細心の注意を払うことにより、リスクの低減を図っております。
しかしながら、予期せず第三者との紛争が発生した場合、多額の訴訟費用が生じ、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。また、知的財産権の保護が不十分な国または地域において模倣等が生じた場合には、当該模倣品が拡販され、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(19)情報の流出について(発生可能性:低、発生時期:特定時期なし、影響度:中)
当社グループは、事業活動における重要情報や顧客から入手した個人情報、機密情報を保有しています。顧客の情報の漏洩や滅失等の事故が発生した場合には、損害賠償や当社グループの社会的信用の低下等が生じるリスクが潜んでおります。また、営業上・技術上の秘密情報の漏洩や滅失等の事故が発生した場合もしくは第三者に不正使用された場合には、生産や業務の停止、競争優位性の喪失等が生じるリスクが潜んでおります。
当社グループは、「情報マネジメント規程」をはじめとする社内規程を制定しているほか、情報管理に関する社内研修を定期的に実施しております。さらに、サイバー攻撃等による不正アクセスや情報漏洩等を防ぐための管理体制を構築し、適切な安全措置を講じております。
しかしながら、予期せぬサイバー攻撃等により当社グループから情報漏洩等が生じた場合や、当社と機密保持契約等を取り交わした第三者が、これに反し、当社に知られず情報を不正使用した場合、生産や業務の停止、競争優位性の喪失等が生じ、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(20)当社の競合環境について(発生可能性:中、発生時期:特定時期なし、影響度:中)
当社グループには国際的な大企業から小規模な企業、国内から海外まで、広範な競合企業が存在することから、競争の激化により新規受注数が減少し、または製品・サービス価格が下落するリスクが潜んでおります。
当社の主力製品であるヒートシンクは新規参入も少なく、特にレーザー用ヒートシンクについては極めて高度な加工精度と品質管理が要求されるもので、これら技術を有する企業は、当社含め限られております。また、当社グループは、「切る」「削る」「磨く」「メタライズ」「接合」の5つの加工技術による「クロスエッジ®Technology」を保有するという優位性を存分に活かし、市場における競争力を高めることにより、リスクの低減を図っております。
しかしながら、海外の新興企業をはじめ他社における技術力や営業力等の向上により、技術や価格等において、当社の競争力が低下し、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(21)大株主の状況に関するリスク(発生可能性:低、発生時期:特定時期なし、影響度:小)
当社の代表取締役社長である関家圭三の資産管理会社である合同会社XEホールディングスの当社議決権の所有割合は2024年6月30日現在で54.82%であり、同社の当社株式の保有・処分方針によっては、当社株式の流動性および株価形成等に影響を及ぼす可能性があります。
同社は、今後も引き続き当社株式の継続保有を維持する方針であることから、こうしたリスクは相対的には高くないものと考えられます。また、議決権の行使にあたっては、株主共同利益を追求するとともに少数株主の利益にも配慮する方針であります。
しかしながら、同社が、当社株式の保有・処分方針を大きく転換した場合、当該リスクが高まる可能性があります。
(22)有利子負債について(発生可能性:低、発生時期:特定時期なし、影響度:小)
当連結会計年度末において、当社グループの有利子負債は3,968,734千円、総資産に対する割合は41.7%となっており、金融市場、または当社グループの信用力の変動等により、借入金利の上昇、資金調達方法の制限等が発生するリスクが潜んでおります。また、借入金の一部には財務制限条項が付されております。
当社は、公的優遇制度の活用等の対策を講じるとともに、健全な借入レベルを維持するよう努めており、金利が上昇した場合の影響は極めて限定的と考えております。また、当座貸越枠の積極的な活用により適切なタイミングでの調達を図るとともに、当社グループ内の資金融通を適時柔軟に行うこと等により資金効率の向上に努めております。
しかしながら、予期せぬ急激な金利変動や経営環境の悪化が生じた場合、資金調達方法の制限や、財務状況の悪化による借入金の即時の返済により、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(1)経営成績等の状況の概要
当社グループ(当社、連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 経営成績の状況
当連結会計年度におけるわが国及び世界経済は、インフレ率の高止まり、ウクライナ情勢、中東情勢などの地政学的リスクの高まりを受け依然として先行き不透明な状況にあります。
このような経営環境のもと、当社グループの主力製品である産業用レーザー機器市場向け高性能ヒートシンクについて、中国市場は、不動産問題に端を発する景況感の悪化により、幅広い用途において需要の減退傾向が見られました。また中国以外の市場を含め、価格競争と世界的な先行き不透明感による短期的な顧客在庫調整による需要変動が大きい傾向もあり、ヒートシンク製品全体の売上高は前年より減少しました。ガラス製品は、国内向け製品は順調に推移したものの、利益率の高い欧米向け製品において顧客の短期的な需要変動があったことなどによって、売上高は前年より減少しました。
売上総利益については、広島工場の稼働率上昇や、原価低減の継続取組みの効果が見られているものの、ヒートシンク製品において販売単価の下落を吸収するまでに至らなかったこと、売上総利益率の高い製品が短期的な需要変動を受けたことなどによって、前年より減少しました。
販売費及び一般管理費については、広告宣伝費(展示会の出展費用他、今後の当社グループの成長のための投資を意図した支出項目が含まれます)や海外出張費、試験研究費等は増加しましたが、前年より減少しました。
なお、連結子会社のTECNISCO(SuZhou)CO.,Ltd.において、工場移転方針に伴い今後使用が見込まれなくなった固定資産に関する減損損失92百万円を特別損失に計上しました。さらに、当期及び今後の業績動向等を踏まえ、繰延税金資産の回収可能性を慎重に検討した結果、繰延税金資産を取崩し、177百万円を法人税等調整額に計上しました。
以上の結果、当連結会計年度の業績は、売上高4,683,182千円(前年比12.4%減)、営業損失476,939千円(前年は営業利益273,140千円)、経常損失318,634千円(前年は経常利益329,351千円)、親会社株主に帰属する当期純損失603,632千円(前年は親会社株主に帰属する当期純利益222,341千円)となりました。
なお、セグメント別の状況は、精密加工部品事業の単一セグメントであるため、記載を省略しております。
② 財政状態の状況
(資産)
当連結会計年度末における資産は、前連結会計年度末に比べて1,237,983千円増加し、9,509,373千円となりました。これは主に、現金及び預金が1,334,617千円の増加、仕掛品が179,047千円の増加であった一方で、建設仮勘定が328,872千円減少したことによるものであります。
(負債)
当連結会計年度末における負債は、前連結会計年度末に比べて289,313千円増加し、4,821,158千円となりました。これは主に、1年内返済予定の長期借入金が585,190千円の増加、長期借入金が459,524千円の増加であった一方で、電子記録債務が205,978千円の減少、短期借入金が269,399千円の減少、未払金が71,834千円の減少、設備関係支払手形が142,343千円減少したことによるものであります。
(純資産)
当連結会計年度末における純資産は、前連結会計年度末に比べて948,670千円増加し、4,688,215千円となりました。これは主に、新規上場における一般募集増資及び第三者割当増資により資本金及び資本剰余金がそれぞれ675,710千円増加、為替換算調整勘定が195,807千円の増加であった一方で、親会社株主に帰属する当期純損失の計上により利益剰余金が減少したことによるものであります。この結果、自己資本比率は4.09ポイント増加して49.3%となりました。
③ キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、長期借入金の返済による支出、仕入債務の減少の計上等の要因があったものの、株式の発行による収入、長期借入れによる収入等により、前連結会計年度末に比べ1,350,609千円増加し、当連結会計年度末には2,080,097千円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において、営業活動の結果使用した資金は386,636千円(前年同期は361,148千円の収入)となりました。これは主に、減価償却費542,874千円、法人税等の還付額91,765千円、税金等調整前当期純損失419,530千円、売上債権の増加134,505千円、仕入債務の減少180,514千円、棚卸資産の増加203,502千円によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において、投資活動の結果使用した資金は434,589千円(前年同期は792,779千円の支出)となりました。これは主に、定期預金の払戻による収入119,968千円、定期預金の預入による支出100,000千円、有形固定資産の取得による支出431,304千円によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において、財務活動の結果得られた資金は2,092,750千円(前年同期は416,066千円の収入)となりました。これは主に、株式の発行による収入1,351,421千円、長期借入れによる収入1,700,000千円、短期借入金の純増加額160,601千円、長期借入金の返済による支出1,088,465千円によるものであります。
④ 生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当社グループは精密加工部品事業の単一セグメントであり、当連結会計年度の生産実績は次のとおりであります。
|
|
当連結会計年度 (自 2023年7月1日 至 2024年6月30日) |
|
|
セグメントの名称 |
金額(千円) |
前年同期比(%) |
|
精密加工部品事業 |
7,646,161 |
112.6 |
|
合計 |
7,646,161 |
112.6 |
(注)金額は製造原価によっております。
b.受注実績
当社グループは精密加工部品事業の単一セグメントであり、当連結会計年度の受注実績は次のとおりであります。
|
|
当連結会計年度 (自 2023年7月1日 至 2024年6月30日) |
|||
|
セグメントの名称 |
受注高(千円) |
前年同期比(%) |
受注残高(千円) |
前年同期比(%) |
|
精密加工部品事業 |
4,285,617 |
124.1 |
1,264,824 |
76.1 |
|
合計 |
4,285,617 |
124.1 |
1,264,824 |
76.1 |
c.販売実績
当社グループは精密加工部品事業の単一セグメントであり、当連結会計年度の販売実績は次のとおりであります。
|
|
当連結会計年度 (自 2023年7月1日 至 2024年6月30日) |
|
|
セグメントの名称 |
金額(千円) |
前年同期比(%) |
|
精密加工部品事業 |
4,683,182 |
87.6 |
|
合計 |
4,683,182 |
87.6 |
(注) 最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
|
相手先 |
前連結会計年度 (自 2022年7月1日 至 2023年6月30日) |
当連結会計年度 (自 2023年7月1日 至 2024年6月30日) |
||
|
金額(千円) |
割合(%) |
金額(千円) |
割合(%) |
|
|
Wuhan Raycus Fiber Laser Technologies Co., Ltd. |
1,364,829 |
25.5 |
892,233 |
19.1 |
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものであります。
① 経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
(売上高)
ヒートシンク製品群については、産業機器市場向け高性能ヒートシンクが、中国市場では不動産問題に端を発する景況感の悪化により、幅広い用途において需要の減退傾向が見られたこと、また、中国以外の市場も含め、価格競争と世界的な先行き不透明感による短期的な顧客在庫調整による需要変動が大きい傾向もあり、売上高は2,520,270千円(前期比17.5%減)となりました。ガラス製品群については、国内向け製品は順調に推移したものの、利益率の高い欧米向け製品において顧客の短期的な需要変動があったことなどによって、売上高は1,331,866千円(前期比7.4%減)となりました。全体としては、売上高は4,683,182千円(前期比12.4%減)となりました。
(売上総利益)
売上原価については、広島工場の稼働率上昇や、原価低減の継続取組みの効果が見られているものの、売上総利益率の高い製品が短期的な需要変動を受けたことなどによって、売上原価は3,507,270千円(前期比3.2%増)となり、売上総利益は1,175,911千円(前期比39.7%減)、売上総利益率は11.4ポイント減少して25.1%となりました。
(営業利益)
販売費及び一般管理費については、広告宣伝費(展示会の出展費用他、今後の当社グループの成長のための投資を意図した支出項目が含まれます)や海外出張費、試験研究費等は増加しましたが、経費削減の取り組みにより1,652,850千円(前期比1.4%減)となり、営業損失は476,939千円(前期の営業利益は273,140千円)となりました。
(経常利益)
営業外損益については、主に為替差益の計上により158,305千円の収益(純額)になったことで、経常損失は318,634千円(前期の経常利益は329,351千円)となりました。
(親会社株主に帰属する当期純利益)
特別損益については、TECNISCO(SuZhou)CO.,Ltd.において、工場移転方針に伴い今後使用が見込まれなくなった固定資産に関する減損損失92,794千円を特別損失に計上しました。さらに、当期及び今後の業績動向等を踏まえ、繰延税金資産の回収可能性を慎重に検討した結果、繰延税金資産を取崩し、177,209千円を法人税等調整額に計上しました。
この結果、親会社株主に帰属する当期純損失は603,632千円(前期の親会社株主に帰属する当期純利益は222,341千円)となりました。
② キャッシュ・フローの状況の分析
キャッシュ・フローの分析については、「(1)経営成績等の状況の概要 ③ キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
③ 資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当社グループの運転資金需要のうち主なものは、原材料等の仕入のほか、製造費、販売費及び一般管理費等の営業費用であります。投資を目的とした資金需要は、設備投資によるものであります。
当社グループは、運転資金、設備投資資金についてはまず営業キャッシュ・フローで獲得した資金を投入し、不足分について必要な資金を銀行等の金融機関から借入により調達しております。これらの自己資金は、機動的な事業経営、柔軟な研究開発活動を目的として、会社の対応力向上のために活用しており、設備投資の計画については、「第3 設備の状況 3 設備の新設、除却等の計画」に記載のとおりであります。
なお、事業拡大に向けて急激な資金需要が生じる場合に備え、一部の金融機関と当座貸越契約を締結しております。
④ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたって、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りを必要としております。経営者は、これらの見積りについて、過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果はこれらの見積り及び仮定と異なる場合があります。
連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しております。
連結財務諸表で認識する金額に重要な影響を与える可能性のある見積り及び仮定は、以下のとおりであります。
(固定資産の減損)
減損損失の認識において使用される将来キャッシュ・フロー、割引率等の前提条件については、一定の仮定に基づき設定しております。これらの仮定は、経営者が最善と判断した見積りに基づいて決定しておりますが、当初見込んでいた収益が得られなかった場合や将来キャッシュ・フロー等の前提条件に変更が生じた場合には、固定資産の減損を行い、翌連結会計年度以降の連結財務諸表に重要な影響を与える可能性があります。
(繰延税金資産の回収可能性)
繰延税金資産は、将来の課税所得の見積額及び実行可能なタックス・プランニング等を踏まえ、経営者が最善と判断した見積りに基づいて金額を算定しておりますが、将来の課税所得の見積額は業績等により変動するため、実際の課税所得の金額が見積りと異なった場合やタックス・プランニング等に変更が生じた場合には、翌連結会計年度以降の連結財務諸表に重要な影響を与える可能性があります。
⑤ 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等の進捗について
当社グループでは、売上総利益率の向上と経常利益の拡大を経営において重視しています。当連結会計年度の数値については、次のとおりとなっております。詳細は、①経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容の各項目をご参照ください。
|
|
前連結会計年度 |
当連結会計年度 |
|
売上総利益率 |
36.5% |
25.1% |
|
経常利益 |
329,351千円 |
△318,634千円 |
⑥ 経営者の問題意識と今後の方針について
経営者の問題認識と今後の方針については、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおりであります。
(1)技術援助等を受けている契約
|
契約会社名 |
相手方の名称 |
国名 |
契約品目 |
契約締結日 |
契約内容 |
契約期間 |
|
㈱テクニスコ(当社) |
Plansee SE |
Austria |
ダイヤモンド複合材 |
2016年12月21日 |
Technology Transfer and Technical Assistance Agreement Supply Agreement (技術移転技術援助契約) |
2016年12月21日から 2024年12月31日まで |
|
㈱テクニスコ(当社) |
Plansee SE |
Austria |
ダイヤモンド複合材 |
2024年1月15日 |
License Agreement (ライセンス契約) |
2025年1月1日から 2027年2月15日まで |
(2)当社が技術援助等を与えている契約
該当事項はありません。
(3)賃貸借契約
|
締結年月 |
2021年4月 |
2001年4月 |
|
契約の名称 |
土地賃貸借契約書 |
土地賃貸借契約書 |
|
相手先 |
常行寺 |
常行寺 |
|
契約の概要 |
自2021年4月24日 至2041年4月23日 当社本社土地(210.79㎡)の賃借にかかるものであります。 |
自2001年4月24日 至2031年4月23日 当社本社土地(443.93㎡)の賃借にかかるものであります。 |
(注)上記2契約による賃借料として月額975,500円を支払っております。
当社グループは「高度なクロスエッジ®Technologyへの継続的なチャレンジによって人びとの喜び実現の一助となる」という企業理念のもと、コア技術である「クロスエッジ®Technology」により、顧客が製品をより高機能化、高信頼性としていくために構成部品に求める、「こんなことが実現できないか?」という要望を一つ一つ実現させております。顧客から要望を受けた段階では、当社グループの既存技術では対応できなかったことを、研究開発活動により実現させていき、技術力を磨いております。
研究開発体制は、主に当社の技術開発本部で行っており、日々新しい製品・技術や新しい価値を世の中に提供する企業であり続けるため、「製品開発」、「技術改善」、「新技術の探求」、「量産案件」及び「製造移管」の大きく5つの区分について、研究開発活動に取り組んでおります。
当連結会計年度における当社グループが支出した研究開発費の総額は
なお、当連結会計年度における主な研究開発活動の内容は、次のとおりであります。
|
研究開発課題 |
内容 |
|
ドーム型キャップガラスの開発 |
一般的な殺菌用途の紫外線LEDの平面キャップガラスの光透過率が90~92%であるものを、キャップガラスをドーム形状とすることで、94~96%の光透過率とし殺菌効率の向上を図る。さらに、キャップガラス単体でUVC-LED光取り出し効率97%以上を実現する。 |
|
水素ガスセンサーの開発 |
岡山大学との共同開発において、従来の技術ではセンサーが加熱式であることで危険性があったが、非加熱式のセンサーとすることで、車載用途にも安心して使用できることを実現する。 また、協力研究機関と共に別方式での水晶振動子による水素センサーの開発を開始する。 |
|
金属用コアドリルの開発 |
アルミニウム材において、ガラス加工同様のリング加工が可能な工具を実現する。通常、金属材はエンドミルなどで円弧加工するが、コアリング加工を可能にすることで、加工効率向上を可能とする。 |
|
難切削材用工具の開発 |
SiCなどの難切削材用に切削性の良い工具を実現する。特に、厚みのあるSiCに対しては、深穴加工を可能とする。 |