文中の将来に関する事項は、提出日現在において、当社グループが判断したものであります。
当社グループは、「データ・AIを駆使した最先端技術とビジネス知見を用いて、未解決の課題に挑み、新しい社会を実現する」をミッションとして掲げております。
企業や各種業界が抱える様々な社会課題・顧客課題をAI・ディープラーニング等の先端技術を用いて解消するために、現場に入り込んだコンサルテーションに始まり、アセスメント、開発、導入、顧客による運用まで視野に入れた、実用的なソリューションを提供しております。
また、当社グループの「宇宙関連ビジネス」売上が、カスタムAIソリューション事業の30%程度となってきており引き続き力を入れてまいります。衛星データは、現状において十分に活用されていない知見が多くあり、今後は衛星データを活用した様々なAIソリューションやAIサービスが立ち上がっていくと考えており、当社グループはその分野でいち早く成果をあげ、衛星データ解析の国内トッププレイヤーを目指しております。
さらに、当社グループのミッションである社会課題の解決においては、衛星画像による土砂崩れの解析や、ドローンを使った海ごみ解析など、当社が開発・提供する環境モニタリングAIを中心に、SDGsの目標達成に向けて積極的に取り組んでおります。
当社グループは、安定的な成長を図るため、成長性、収益性及び効率性を重視した経営が必要と認識しております。このため当社では、売上高、営業利益、従業員数を重要な指標と位置づけて各種経営課題に取り組んでおります。
当社グループは、AIコンサルティング・ソリューション開発による知見・ノウハウ等の価値の蓄積、蓄積した価値の最大化、そして蓄積・最大化した価値を生かした新たな市場を創造し、新たな価値の蓄積を積み上げる、というエコシステムによる事業展開・拡大を目指します。

フェーズ1:先進技術による課題解消の知見・ノウハウ等「価値の蓄積」
当社グループは、各業界の大手企業や公的研究機関との共同開発において、様々な社会課題・顧客課題をAI・ディープラーニング等の先端技術を用いて解消するために、現場に入り込んだコンサルテーションに始まり、アセスメント、開発、導入、顧客による運用まで視野に入れたワンストップ対応による実用的なソリューションを提供することで、収益を上げると同時にAI・ディープラーニングによる課題解消の知見・資産を蓄積しております。ここでの蓄積される知見・資産は、顧客の実運用までを徹底支援し、AIのみならず既存技術や人による運用をあわせて組み上げた非常に実践的なソリューションであるため、顧客からの高い評価を獲得し、顧客との継続的・発展的な関係作りの基礎を担っております。
フェーズ2:蓄積した「価値の最大化」
次に当社グループは、フェーズ1における様々なプロジェクトや共同開発等によって蓄積した知見・資産といった価値を顧客企業の他の事業や類似するプロセスに拡大することによって、顧客企業にとっての価値の最大化を図ります。この際、既に存在する知見・資産の活用が可能であることから当社グループとしての収益性も向上し、収益の拡大に寄与します。
また、蓄積した価値を個別企業のみならず各業界のキープレイヤーとの協業スキームを活用して、業界のAI・DX化を進めることで、より大きな社会課題・ビジネス課題を解消するとともに、コンサルティングやシステム開発を主とするフロー型の収益モデルに加えて、サービス利用料やパートナーによる販売時の手数料収入といったレベニューシェア型で、かつ業界全体の多くの企業や人々に価値を届けるアセット型の収益モデルを実現してまいります。
さらには、これらの価値をより持続可能なものにするために、当社グループのAI×SDGsの仕組みである環境問題への貢献を目指す環境モニタリングAI、検査工程の省力化、効率化に寄与するソリューションの提供及びひび割れ検出(設備保守)AIなど社会問題への貢献を目指す社会活動モニタリングAIとの組み合わせによって、SDGsの目標達成の実現手段の1つとして、個別企業や業界に提供することで、様々な観点での「価値の最大化」を目指します。
フェーズ3:蓄積・最大化した価値からの新たな市場創造
当社グループの事業ドメインであるAI・ディープラーニングは、まだ手付かずの未知の領域が数多く存在しております。当社グループは、その未知の領域における新たな市場(=新たな価値)を開拓・創造してまいります。具体的には、既に蓄積している知見・資産の価値と、AI・ディープラーニングが活用されていない業界における潜在的な課題を掛け合わせることで、新たな市場を創造します。そのためには、国の研究機関や大学、そして大手企業の基礎研究領域における研究開発にも積極的に先行投資的な活動を行い、新たな市場(=新たな価値)を創造してまいります。
これらの方針に従い、当社グループは中長期戦略として4つのドライバー(施策)で顧客企業とともに事業拡大をしていく方針です。
①ストック収益の拡大に向けたアクション
顧客企業との共同事業案件の確かな推進と、プラットフォーマーへのAIライセンスやAI保守運用サービスの提供による2軸でストック収益を拡大していきます。
②コンサルティングファームとの連携による大規模な事業共創案件の獲得
業界のリーディングカンパニーへのリーチを増やすために、当社グループがもつAI及びデジタル技術の知見をコンサルティングファームに共有し、補完関係を構築し、中長期テーマを共同で展開していきます。
③次世代AIの進化を見据えた研究開発
官能検査・生成系AI・マルチモーダルなど、次のAIへの期待に応えるための先行研究と事例を発信し、優秀な研究者・エンジニア採用による事業拡大を目指します。
④人工衛星データ解析AIでの国内リーディングポジションの確立とグローバル展開
衛星解析AIを強みに、人工衛星解析市場の拡大に合わせ、環境テーマ等のニーズを先読みし、官公庁と民間の両方へのアプローチを行い事業展開を目指します。
当社グループは、様々な業界に対してAI活用による課題解決を行っております。当社グループのビジネス市場である国内のAI市場は富士キメラ「2020人工知能ビジネス総調査」によると2021年の1.1兆円から2027年に1.9兆円になる見込みとなっております。その中でも当社のAI活用コンサルティング・AI開発サービスの位置するサービス市場の市場規模は、2021年度が6,248億円、2022年度が7,026億円、2027年度には10,429億円になる見込みとなっております。今後は、労働人口不足、働き方改革、インフラの老朽化など社会問題の解決策としてAI導入が加速すると予想され、AIサービス市場は拡大を続けると見込まれております。
その中でも当社グループが狙う市場としては、AI活用があまり進んでいない製造業・サービス業が抱える課題へのAI導入を目指しており、製造業の顧客が多くプロジェクト実績もあることが当社の強みとなっています。

なお直近では、AI市場のうち生成AIの市場規模が急拡大し、様々な業種でAI・DX活用戦略のアップデートが起きており、コンサルテーションニーズが拡大しております。

また人工衛星データ解析AI市場は、JAXA宇宙戦略基金と宇宙関連会社の上場で市場の関心は高まっており、地球観測市場は大きな成長が見込まれます。この市場は官需を中心としたマーケットで、安全保障と環境テーマでの衛星データ利用ニーズが増えてきており、当社グループの衛星データ関連プロジェクトの実績により強みを生かせる市場となっております。

上記方針を実現するため、当社グループが認識している課題と対応する具体策は、次のとおりです。
当社グループにとって、AIをはじめとした先端技術の研究による、技術基盤の確立、ソフトウェアの開発は必要不可欠なものであるため、社内のエンジニアの育成だけでなく、AI技術者などの専門的な技術をもつ人材の確保・採用も進めてまいります。また、必要に応じて産学連携や新技術を持つ企業との業務提携、共同研究等を進め、サービスメニューの充実化や事業化に向けた取り組みに注力してまいります。
当社グループの財産は、高度な技術・専門性とチャレンジ精神を持った優れた従業員であると認識しております。当社グループは「データ・AIを駆使した最先端技術とビジネス知見を用いて、未解決の課題に挑み、新しい社会を実現する」というミッションを掲げ、ビジネス・社会の重要な問題解決に必要な技術を見立て、技術の応用化に向けた開発を一気通貫・迅速に実行するプロフェッショナル集団として事業を遂行しております。今後も当社のミッションを遂行していくためには、従業員の生活・人生を豊かにし、業務においては成果の創出に集中できるような働きがいのある環境づくりが必要であると考え、その実現に取り組んでまいります。
当社グループのカスタムAIソリューション事業におけるシステム開発や運用等の遂行過程において、顧客の機密情報や個人情報等を取り扱う可能性があります。当社では、情報管理の強化が重要であると考えISO27001の認証を取得しているほか、情報セキュリティに関する情報セキュリティ基本規程を制定し従業員への教育を実施しておりますが、今後も社内での研修強化、情報管理体制強化のためのシステム整備等を継続して実施してまいります。
当社グループの継続的な発展を実現させるためには、コーポレート・ガバナンス機能の強化は必須であり、そのために財務報告の信頼性を確保するための内部統制システムの適切な運用が重要であると認識しております。
コーポレート・ガバナンスに関しては、内部監査による定期的なモニタリングの実施と監査等委員や監査法人との連携を図ることにより適切に運用しておりますが、ステークホルダーに対して経営の適切性や健全性を確保しつつも、俊敏さも兼ね備えた全社的に効率化された組織体制の構築に向けて更に内部管理体制の強化に取り組んでまいります。
当社グループは、財務基盤の安定性を維持しながら、様々な事業上の課題を解決するための事業資金を確保し、また、新たな事業価値創出のために機動的な資金調達を実行できるよう、内部留保の確保と事業投資の適切なバランスを模索していくことが、財務上の課題であると認識しております。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取り組みは、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当社グループは、中長期的な企業価値の向上のため、今後、サステナビリティに関する取組みを拡充・充実させていく必要があると認識しており、特に、人的資本・知的財産への投資等が非常に重要であると認識しております。現在、当社グループでは、AIを通じた地域社会や地球環境への貢献及び価値あるサービスの創出を目指しているほか、そういったサービスの特許取得による知的財産保護や、人材確保・定着のための取組みの拡大等を実施しております。また、サステナビリティに関する取り組みについて、実効性が確保されているかを取締役会等で検証し、改善を図りつつ方針を実行する経営体制を構築しております。
当社グループは、サステナビリティに関する取組みのうち、特に人材確保・定着に関する取組みが経営上重要であると考えております。
人材の育成及び社内環境整備に関する方針、戦略
従業員は事業の成長を支える重要な存在であるとの認識のもと、多様な人材が仕事と家庭を両立し、最大限の能力を発揮できる職場環境や企業風土の醸成に取り組んでおります。具体的な取り組みとして、働きがいのある環境づくりのため、在宅勤務の導入や休暇取得の促進等、従業員の意向を踏まえた快適な労働環境を提供しており、研修や定期的な勉強会を実施する等自己研鑽の機会を設けております。
また、社員一人一人の自己能力を高めることができる業務体制や年齢、国籍、性別等区別することなく、意欲と能力のある従業員が平等に管理職への登用への機会等が得られるような人事制度を整えております。
当社グループでは、「コンプライアンス・リスク管理委員会規程」等に基づき、取締役会やその他の社内会議等を通じてリスクの識別・評価・管理を行うためのプロセスを整備し、リスクの未然防止及び会社損失の最小化に努めております。また、必要に応じて弁護士、公認会計士、弁理士、税理士、社会保険労務士等の外部専門家からアドバイスを受けられる体制を構築するとともに、内部監査及び監査等委員による監査を通じて、潜在的なリスクの早期発見に努めております。そのほか、サステナビリティ関連の課題について引き続き取締役会等で検証し、適切な対応を行っていく予定です。
人材の育成及び社内環境整備に関する方針に関する指標の内容並びに当該指標を用いた目標及び実績、指標及び目標
当社グループでは、小規模な組織体制であるため、年齢、国籍、性別等の区分で管理職の構成割合や人数の目標値等は定めておりません。ただし、当社が掲げるミッションを実現し、事業成長を加速するためには、様々な局面において多様な意見を反映することが重要であるという認識の下、女性や中途採用者の管理職への登用を推進しており、その数は増加傾向にあります。今後も期待する役割に応じた能力と実績に基づき、積極的に登用を進めるとともに、これらの者が成果を最大化し、適切に能力が評価されるような施策や環境の整備に取り組んでまいります。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当社グループが継続的にユーザーに支持されるサービスを提供していくためには、優秀な人材の確保及び育成が極めて重要な要素であると考えており、対外的な人材獲得及び社内の人材育成に加え、人材流出を防止するための環境整備に取り組んでおります。他方、当社グループの属するIT業界においては、人材獲得競争が非常に激しいことから、必要な人材を適時に十分確保できない場合や当社グループの優秀な人材が流出してしまった場合には、今後の事業展開に制約が加えられることとなり、その結果、当社グループの事業及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、企業価値を継続的かつ安定的に高めていくためには、コンプライアンス体制が有効に機能することが重要であると認識しております。コンプライアンス遵守及びリスク管理のため、代表取締役社長の直轄組織としてコンプライアンス・リスク管理委員会を設置し、原則として四半期に一度当社の現況及び問題点、新たなリスク要因の検討に取り組んでおります。しかしながら、当社グループの事業運営に関して法令等に抵触する事態が発生した場合、当社グループの事業及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、ISO27001の認証を取得しており、機密情報と情報機器等の管理は厳密に行っております。業務の性格上、ユーザーが保有している機密情報(経営戦略上重要な情報等)に触れる場合があります。情報の取り扱いについては、情報セキュリティ基本規程、個人情報保護規程を策定するとともに、適宜社内研修を実施することで周知徹底を図っております。しかしながら、このような対策にも関わらず、情報の漏洩や不正使用等の事態が生じた場合、損害賠償等の金銭補償や企業イメージの悪化等により、当社グループの事業及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
企業を取り巻く環境や労働人口減少に伴う企業経営の効率化などの動きにより、当社グループが事業を展開しているAI業界は今後も拡大していくことが予測されるものの、国内外の経済情勢や景気動向、それに伴う設備投資意欲の減退等の理由により、市場の成長が鈍化する可能性があり、その場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
当社グループが事業を展開しているAI業界は、技術革新が速く、当社グループの優位性を維持するためには、技術革新に即座に対応する必要があります。当社グループでは、各種イベントやセミナーへの参加や社内の定期的な勉強会等を通じて、AI業界の技術革新の動向を把握するとともに、それに対応した新サービスの提供ができるよう努めております。しかしながら、当社グループが技術革新に対応できないような場合、または、当社グループが対応できないような技術革新が生じた場合、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、AI活用コンサルティング・AI開発を主たる事業領域としておりますが、技術革新や顧客ニーズの変化が速く、AI業界へ参入する企業も増加する傾向にあることから、引き続き事業の拡大及び競争力の維持・変化への対応に努めてまいります。当該リスクへの対応として、最新の技術動向や環境変化を常に把握できる体制を構築するだけではなく、優秀な人材の確保及び教育等により技術革新や顧客ニーズの変化に迅速に対応できるよう努めてまいります。しかしながら、当社グループが技術革新や顧客ニーズの変化に適時に対応できない場合、または、変化への対応のためにシステム投資や人件費等多くの費用を要する場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、今後の成長機会の創出に向けて、研究開発費、広告宣伝費、人件費等を投入し、研究開発と事業拡大を進めるとともに、非連続的な成長のためには、M&Aや資本業務提携も有効な手段の一つと考えております。当社グループでは収益見通しを十分吟味した上でこれらの取組みについて進めておりますが、現在の事業領域と異なる分野に進出した場合において、当該分野における収益化が進まない場合や、M&Aや資本業務提携を行った相手先との収益化や事業計画が予定通りに進捗しない場合には、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、第三者の知的財産権侵害の可能性について、チェック体制を整備することにより、十分な注意を払うとともに、案件によっては顧問弁護士や弁理士等に調査を依頼することとしております。しかしながら、当社グループの事業領域に関する第三者の知的財産権の完全な把握は困難であり、当社グループが認識せず他社の知的財産権を侵害し、訴訟等の紛争に至った場合、社会的信用の失墜、対応にかかる多額の経費発生等により、当社グループの事業及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
当社の代表取締役社長である柳原尚史は、創業者であるとともに、創業以来、当社グループの事業推進において重要な役割を担ってまいりました。柳原尚史は、サービスの企画から開発、及び運用に至るまで豊富な経験と知識を有しており、経営方針や事業戦略の決定及びその遂行において重要な役割を果たしております。
当社グループでは、取締役会や経営会議等において役員及び従業員への情報共有や権限委譲を進める等組織体制の強化を図ることにより、代表取締役社長の柳原尚史に過度に依存しない経営体制の整備を進めております。しかしながら、何らかの理由により、柳原尚史が当社グループの経営執行を継続することが困難になった場合には、当社グループの事業及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、企業価値の持続的な増大を図るためには、コーポレート・ガバナンスが有効に機能することが不可欠であるとの認識のもと、業務の適正性及び財務報告の信頼性の確保、及び健全な倫理観に基づく法令遵守の徹底が必要と考えており、人員の増強による内部管理体制の充実に継続的に努めております。しかしながら、事業の急速な拡大等の理由により、内部管理体制の構築の十分性が確保できない状況が生じる場合には、適切な業務運営が困難となり、当社グループの事業及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、2025年7月31日現在において、取締役9名(うち監査等委員3名)、従業員数74名と小規模組織であり、内部管理体制もこの規模に応じたものとなっております。当社グループでは、今後の業務拡大に応じた人員増強や従業員の育成により、内部管理体制の一層の充実を図っていきますが、これらの施策が適時適切に進行しなかった場合、当社グループの事業及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
当社の設立は2016年7月と社歴の浅い会社でありますが、これに対応すべく、各部門において、十分な知識と経験を有する人材の確保を行っております。他方、当社社歴の浅さとAI業界を取り巻く環境の急激性・流動性が相まって、当社グループにおける経営計画の策定には、不確定事項が含まれざるを得ない状況にあり、過年度の財政状態及び経営成績では、今後の業績を判断する情報としては不十分な可能性があります。
当社グループは、取締役及び従業員に対して、業績向上に対する意欲を高めることを目的としたストック・オプション(新株予約権)を発行しております。また、今後もストック・オプション制度などの株式報酬型のインセンティブを活用することが考えられることから、現在付与している新株予約権に加え、今後株式が付与された場合、または、今後付与される新株予約権について、権利が行使された場合には、当社株式が新たに発行され、既存の株主が有する株式の価値及び議決権割合が希薄化する可能性があります。なお、本書提出日現在、新株予約権による潜在株式数は、104,420株であり、発行済株式総数4,307,720株の2.4%に相当しております。
当社グループは、株主に対する利益還元については経営の重要課題の一つと位置付けておりますが、配当を実施しておりません。今後におきましては、経営成績、財政状態、事業計画の達成状況等を勘案しながら、株主への利益配当を検討していく方針であります。しかしながら、当社グループの事業が計画どおり推移しない場合など、配当を実施できない可能性があります。
当社グループは、株式会社東京証券取引所の定める上場維持基準は25%であるところ、流通株式比率は本書提出日現在において38.25%となっております。今後は、大株主への一部売出し要請、ストック・オプションの発行及び行使による流通株式数の増加分を勘案し、これらにより流動性の向上を図っていく方針ではありますが、何らかの事情により上場時よりも流動性が低下する場合には、当社株式の市場における売買が停滞する可能性があり、それにより当社株式の需給関係にも悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループのカスタムAIソリューション事業においては、提供するAIソリューションの機能性・利便性の向上及び他分野への展開が重要と考えております。そのため、上場時に調達した資金の使途につきましては、システム開発や事業拡大に伴う人件費及び研究開発費用へ積極的に投資していきたいと考えております。しかしながら、AI関連市場は変化が激しく、その変化に柔軟に対応するため、上記計画以外の使途に使用する可能性があります。また、上記計画どおりに資金を使用したとしても当初想定していた事業規模の拡大が進まない可能性があります。なお、将来にわたっては、資金調達の使途の前提となっている事業計画・方向性が見直される可能性があります。
当社グループは、有事に備えた危機管理体制の整備に努めておりますが、当社グループが事業活動を展開する国や地域において、地震、台風、洪水等の自然災害又は感染症の流行等が想定を上回る規模で発生した場合、被災状況によっては正常な事業活動が困難となり、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。当社グループではテレワーク可能な社内管理体制及びそれを可能とする業務システムの運用を行い、それにより当該状況でも従来どおりの事業継続が可能となる事業運営を行っております。
2024年6月に子会社化した株式会社スターミュージック・エンタテインメントは、今後の当社グループの業績に貢献するものと見込んでおります。しかしながら、事業環境の変化等により当初の想定を下回る場合、のれんの減損処理等が発生し、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
当社グループは、前連結会計年度が連結初年度であり、また、連結子会社のみなし取得日を前連結会計年度末日としていることから、前連結会計年度においては、貸借対照表のみを連結しているため、連結損益計算書、連結包括利益計算書、連結株主資本等変動計算書及び連結キャッシュ・フロー計算書は作成しておりません。そのため、経営成績及びキャッシュ・フローに関する記載については、前連結会計年度との比較分析は行っておりません。
当連結会計年度(2024年8月1日から2025年7月31日)における我が国経済は、雇用環境の改善が進むなど緩やかな回復傾向が見られ、このような中、生成AI技術への注目の高まりにより、企業の生産性向上や競争力強化を目的としたDX関連の高い需要が継続しており、引き続き様々な場面においてAI導入の流れが加速しております。ただし、円安による輸入コストの上昇や、物価・賃金コストの上昇など、依然として、経済全体としての外部リスク要因は継続しています。
当社グループは「データ・AIを駆使した最先端技術とビジネス知見を用いて、未解決の課題に挑み、新しい社会を実現する」をミッションとして掲げ、カスタムAIソリューション事業として顧客の目的から現場のプロセス、課題を理解し、様々なデータに対応したAIを組み合わせた最適なAIソリューションの提案から実装までを行っており、特に直近では生成AI関連と衛星データ利用のニーズが増加しております。また、AI技術と親和性の高いデジタルマーケティング事業において、SNS広告のプランニングから制作までとプラットフォームの配信や広告等で利用される音楽制作を展開してまいりました。
これらの結果、当連結会計年度における当社グループの経営成績は以下のとおりとなりました。
売上高については、既存顧客からのAIプロジェクトの継続、生成AIテーマ案件の増加及び一部案件の大型化により、また、前連結会計年度末より株式会社スターミュージック・エンタテインメントの連結子会社化を行いデジタルマーケティング事業が加わった結果、2,593,322千円となり、売上総利益については、1,325,959千円となりました。
営業利益については、上記のとおり売上高の増加に伴い、283,137千円となりました。販売費及び一般管理費は外注利用、積極的な採用活動や生成AI等の新しい技術に対応するために研究開発等を継続しておりますが、売上高の増加が費用増加を上回っており、営業利益率は10.9%で当初想定を上回りました。
経常利益については、290,846千円となり、親会社株主に帰属する当期純利益は、法人税等102,722千円及び子会社の株主持分が53.8%のため非支配株主に帰属する当期純利益48,496千円により、139,627千円となりました。
当社グループの報告セグメントは、従来「カスタムAIソリューション事業」の単一セグメントでしたが、前連結会計年度末より「カスタムAIソリューション事業」と「デジタルマーケティング事業」の2区分に変更しました。
セグメント別の業績は次のとおりです。
カスタムAIソリューション事業におきましては、売上高が1,280,324千円、セグメント利益が161,725千円となり、そのサービス別の売上高は、前連結会計年度から継続している大手企業の顧客を中心にしたAIプロジェクトの継続に加えて開始が遅れていた案件やコンサルティングファームとの連携による案件が進捗したことによりAI活用コンサルティング・AI開発の売上高は896,681千円となりました。衛星関連プロジェクトは予定通り大型案件が2025年3月で完了し保守運用フェーズへ移行したことにより売上が上期に多い結果となり年間の人工衛星AI解析の売上高は280,996千円となりました。直近は新年度案件への移行期となっております。AI保守運用サービスについては大型の保守運用が継続しており売上高は102,646千円となりました。
デジタルマーケティング事業におきましては、売上高が1,312,998千円、セグメント利益が121,412千円となり、そのサービス別の売上高は、大手企業からの広告制作や運用などが増加した一方でプラットフォーマーからの受注が減少しソーシャルメディアマーケティングの売上高は954,621千円、保有する楽曲からの権利収入が増加し音楽制作配信サービスの売上高は358,377千円となりました。
当連結会計年度末における流動資産は2,306,169千円となり、前連結会計年度末に比べ162,171千円減少いたしました。これは主に、子会社株式の追加買取や借入金の返済により現金及び預金が288,210千円減少したこと及び直近月の売上高増加により売掛金及び契約資産が119,700千円増加したことによるものであります。また、当連結会計年度末における固定資産は540,149千円となり、前連結会計年度末に比べ34,737千円減少いたしました。これは主にのれんの償却などにより無形固定資産が46,590千円減少したことによるものであります。この結果、総資産は2,846,318千円となり、前連結会計年度末に比べ196,909千円減少いたしました。
当連結会計年度末における流動負債は369,883千円となり、前連結会計年度末に比べ162,358千円減少いたしました。これは主に前受金を受領していたプロジェクトが進捗し売上計上したことにより契約負債が122,137千円減少したこと及び借入金の全額返済により1年内返済予定の長期借入金が48,106千円減少したことによるものであります。また、当連結会計年度末における固定負債は17,654千円となり、前連結会計年度末に比べ53,003千円減少いたしました。これも借入金の全額返済により長期借入金が47,237千円減少したことによるものであります。この結果、負債合計は387,538千円となり、前連結会計年度末に比べ215,361千円減少いたしました。
当連結会計年度末における純資産合計は2,458,780千円となり、前連結会計年度末に比べ18,452千円増加いたしました。これは主に、親会社株主に帰属する当期純利益の計上により利益剰余金が139,627千円増加しましたが、一方で子会社株式の追加買取により資本剰余金が87,994千円、非支配株主持分が55,741千円減少したことによるものであります。
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末から288,210千円減少し、1,827,826千円となりました。当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とその主な要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果得られた資金は51,323千円となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益290,846千円があった一方で、売上債権及び契約資産の増加119,700千円及び大型プロジェクト完了により収益計上したことによる契約負債の減少122,137千円等があったことによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は53,143千円となりました。これは主に、前連結会計年度に購入したサーバー購入代金の支払いにより有形固定資産の取得による支出43,697千円があったことによるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果使用した資金は286,323千円となりました。これは主に、子会社の株式会社スターミュージック・エンタテインメントの株式を追加取得したことによる支出209,160千円と子会社で長期借入金を全額返済したことによる支出95,343千円があったことによるものであります。
当社グループで行う事業は、提供するサービスの性質上、生産実績の記載になじまないため、当該記載を省略しております。
当社グループで行う事業は、提供するサービスの性質上、受注実績の記載になじまないため、当該記載を省略しております。
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1.当連結会計年度の主な相手先の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものであります。
当社グループは、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等につきましては、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等(2)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等」に記載のとおり売上高、営業利益又は営業損失(△)、従業員数としております。過年度における当社の各指標の進捗は以下の通りです。
(単位:千円)
売上高は2,593,322千円となりました。これは主に前連結会計年度末に株式会社スターミュージック・エンタテインメントを子会社化したことによりデジタルマーケティング事業の売上高が加わったことによるものです。また、カスタムAIソリューション事業の売上高は1,280,324千円で前事業年度比119.4%となっておりこれは顧客需要の増加にともない生成AI案件が拡大したことによるものです。
営業利益は283,137千円となりました。これも主に前連結会計年度末に株式会社スターミュージック・エンタテインメントを子会社化したことによるものです。また、カスタムAIソリューション事業の営業利益は161,725千円で前事業年度比105.9%となっておりこれは売上高増加により増益となっている一方で社員数が横ばいのため外注費率が上昇し売上高総利益率が下がっているためです。
従業員数は当連結会計年度より株式会社スターミュージック・エンタテインメントの社員数35名が加わっておりますが、当社の社員数は2名減少し39名となっております。今後はエンジニアの中途採用だけでなく新卒採用も強化して社員数を増やしていく方針です。またデジタルマーケティング事業の社員数も年間5名程度の純増を目指します。従業員数は売上高の伸びにある程度比例するものと考えており、将来の受注見込を考慮して引き続き人材獲得を目指します。
当社グループでは、「データ・AIを駆使した最先端技術とビジネス知見を用いて、未解決の課題に挑み、新しい社会を実現する」の経営方針を掲げ、技術者を尊重する企業環境の下、先端技術の実用化に取り組んでまいりました。その結果として、ディープラーニングを中心としたAI関連技術を実装することについて、他社に対し優位な立場を築くことができていると考えております。一方で、当社グループが事業を営むカスタムAIソリューション事業においては、技術革新のスピードは非常に早く、その状況を常に注視し、また技術の変化、新技術の登場にいち早く対応することができなければ、当社グループの有する技術的な優位性は失われ得るものです。この優位性を維持し、さらに強固にするために、優秀な人材を継続して確保することが、当社グループにとって最優先の課題となると考えております。
現在、AI関連技術を有する人材に対する市場のニーズは強くその獲得競争は激化していると認識しております。当社グループにおいては、「データ・AIを駆使した最先端技術とビジネス知見を用いて、未解決の課題に挑み、新しい社会を実現する」の経営方針をより強く発信し、また最先端の研究をしている大学教授等と共同研究の取り組みを行うことにより、優秀な人材の確保を進める方針です。
経営成績に重要な影響を与える要因については、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載したとおり、事業内容、事業運営・組織体制等、様々なリスク要因が経営成績に重要な影響を与える可能性があると認識しております。市場動向及び業界動向に対して常に情報を集め、また、優秀な人材の獲得と育成に取り組むとともに、事業運営体制の強化と整備を進めることで、経営成績に重要な影響を与えるリスク要因に迅速かつ最適な対応に努めてまいります。
当社グループの資金需要のうち主なものは、人件費、外注費等の売上原価であります。運転資金は自己資金を基本としております。当事業年度末において、現金及び預金は1,827,826千円であり、十分な流動性を確保していると判断しております。
当社グループの財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この財務諸表の作成にあたっては、経営者の会計方針の選択や適用、資産・負債や収益・費用の計上に際し、合理的な基準による見積りが含まれており、見積りは不確実性を伴うため、実際の結果はこれらの見積りによる数値と異なる場合があります。詳細は「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1)『財務諸表』注記事項(重要な会計上の見積り)」をご参照ください。なお、当社の財務諸表で採用する重要となる会計方針につきましては「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1) 『財務諸表』注記事項(重要な会計方針)」に記載のとおりであります。
当社は、2025年9月12日開催の取締役会において、SBIホールディングス株式会社との戦略的な資本業務提携を行うこと及び割当予定先に対する第三者割当による新株式の発行を決議し、同日付で最終契約書を締結いたしました。なお、9月30日に払込が完了しております。
詳細につきましては、「第5 経理の状況 1連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項(重要な後発事象)」をご参照ください。
当社グループは、「データ・AIを駆使した最先端技術とビジネス知見を用いて、未解決の課題に挑み、新しい社会を実現する」の経営方針に基づきAI・ディープラーニング等の先端技術の社会実装を目的として、大学等の研究機関と共同研究や共同事業の開発に取り組んでおります。
研究の目的は、主にLLMや生成AIの活用となり、顧客からそれら技術を用いたプロジェクトの相談や受託を受けるようになっております。研究開発のための社内体制は、カスタムAIソリューション事業部のエンジニアが研究目的ごとにプロジェクトチームを組成し、技術顧問のサポートを受けながら研究開発を進めております。
当連結会計年度における当社グループの支出した研究開発費の総額は