第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社が判断したものであります。

 

(1) 経営方針及び経営環境

当社は、1981年4月に動物血液の販売と細菌検査用培地の製造・販売(微生物事業)から事業をスタートいたしました。市場のニーズに合わせ、1986年4月には細胞培養用培地の製造・販売(組織培養事業)を開始し、続いて、2014年11月の「再生医療等の安全性の確保等に関する法律」の施行に伴い、細胞加工事業を開始いたしました。「組織培養事業」「微生物事業」「細胞加工事業」の3つの事業展開に加え、それらの事業を組み合わせることによって生みだされるシナジー効果を事業に活用する点が当社の最大の特徴であり、優位性であると考えます。

組織培養事業と細胞加工事業の関係性について、細胞加工事業の競合他社においては、当社のような培地を製造する企業から培地を購入し、細胞を加工する必要があるのに対し、当社では自社製品の細胞培養用培地を細胞加工事業で使用することができるため、細胞加工業務の原価率を低く抑えることができ、収益率の上昇に繋がります。また、細胞加工事業での自社培地使用により、その培地の性能に対するフィードバックを社内で速やかに得ることができ、製品性能・品質の向上、及び改善につなげることができる点にあります。

組織培養事業と微生物事業の関係性については、組織培養事業は細胞、微生物事業は細菌と、培養するターゲットは異なりますが、一部の顧客については、細胞を培養し、同時にその環境における細菌汚染を確認するなど、同一顧客に別事業の製品の販売が可能となることがあります。また、多くの販売代理店では企業や大学、医療機関などを顧客とし、様々な試薬を幅広く扱っていることから、当社が持つ組織培養事業と微生物事業の両製品を取り扱っており、顧客基盤や販売網を共有できる点が単一の事業のみの競合他社と比較して、優位であると考えております。

市場の状況といたしまして、組織培養事業では、再生医療市場における細胞培養用培地は、長きに亘り研究用途での使用が主流でありましたが、近年では、再生医療の市場発展により臨床用途での使用という新たな需要が生まれております。また、抗体医薬品やワクチンの研究、製造など、産業用においても細胞培養用培地が大量に使用されるようになってきたことから、その市場規模は数年間で急速に成長を続けており、グローバルでさらに大きな市場へ拡大していくと予想しております。

細胞加工事業では、ここ数年、新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴い、細胞加工の主要な患者層だったインバウンドによるメディカルツーリズムが減少いたしました。しかしながら、各国における海外渡航制限の緩和により、インバウンドも回復している様子が見られ、新たに再生医療、細胞治療を実施する医療機関数も増加傾向にあることから、国内の再生医療市場は今後も大きく発展していくと考えております。

微生物事業では、新型コロナウイルス感染症の感染拡大により、抗原検査キットなどの新型コロナウイルス感染症関連商材という新たな市場が創出されました。当初は需要が供給を大きく上回ったことから、市場における製品不足に陥りましたが、各社積極的な設備投資の実施により、現在の市場は落ち着きを取り戻しております。

すべての事業において共通しているのは、新型コロナウイルス感染症による経済活動への影響は収束し、アフターコロナへの移行を見据え、これまで停滞していた海外への事業展開が動き出すとともに、今後は各市場の成長に合わせた製品開発、価格戦略などの競争が激化していくものと考えております。

 

当社は、販売数量と売上高の拡大が企業価値向上に寄与するものと考えており、中長期かつ持続的な成長を実現するために、当社がこれまで培った製造技術に加え、特注で対応できる強みを活かして、製品のラインナップの拡充のために、更なる生産技術及び営業体制の強化に努めております。さらに、再生医療等製品の臨床試験用細胞の製造受託事業(CDMO事業)に参入し、更なる事業拡大を目指します。

また、下記の「社是」と「基本理念」を経営の中核に置き、市場・社会、法制度等への対応力強化と、各事業の強みを生かし、バイオテクノロジーの発展と共に、持続的な成長を続けてまいります。

 

 

「社是」

敬天愛人成善 ~公明正大 謙虚な心で仕事にあたり 人に恥ずることなく 人を愛し 仕事を愛し 善業を成す~

 

「基本理念」

「コージン」、つまり「考える人(考人)の組織集団」として、

1.常に誠心誠意で仕事をする

2.今、必要とされている最先端の製品を世に出す

3.喜びに満ち満ちた会社である

という基本理念のもと、私たちはバイオテクノロジーの発展のために日々努力しています。

 

「経営理念」

当社グループは、「考える人」の組織集団として、「顧客第一主義・品質第一主義」をモットーにバイオテクノロジーの発展に貢献していきます。

 

「ビジョン」

・グローバル企業としての位置を確立し、培地業界における国内シェア1位に

・新規事業を開拓し、高付加価値サービスを提供し続ける

 

「行動指針」

1.顧客の理解と満足が得られる製品であること

2.品質最優先で製造された高品質な製品であること

3.社会が今必要としている最先端の製品であること

4.一人一人が品質に自覚と責任を持てる製品であること

5.各種法規・規格・標準を遵守すること

 

 

(2) 事業展開方針

当社グループは、「組織培養事業」「微生物事業」「細胞加工事業」の3つの事業を展開しております。

組織培養事業では細胞を培養する際に用いる細胞培養用培地の製造を、微生物事業では細菌検査と感染症に関連する製品の製造を、また、細胞加工事業では医療機関より細胞の加工業務の受託を行っています。

今後、再生医療市場の拡大が見込まれており、周辺産業としての組織培養事業と細胞加工事業を成長の核と位置付け、重点戦略を実施していきます。

また、上記事業に加え、微生物事業においてもアジア圏で新たな市場が創出されており、各地域の需要に応じた製品を開発、供給することで、海外展開にも注力していきます。

 


 

《事業セグメント別成長イメージ》

組織培養事業:グローバルで市場が拡大傾向にあり、それぞれの需要に応じた製品を供給

微生物事業 :海外展開による新たな市場の開拓

細胞加工事業:再生医療等製品製造受託への新規参入

 

《中期事業目標》

重点戦略①:組織培養事業/開発から製造、販売までをワンストップで対応できる強みを活かし、種々の細胞に合致する製品の供給と、新たなニーズに沿う製品を開発することで、アジアNo.1の培地製造販売会社を目指す。

重点戦略②:細胞加工事業/現在実施している特定細胞加工物に加え、再生医療等製品の製造受託に参入することで、この両輪を回し、研究開発から産業化まで対応が可能な高品質、高水準の細胞加工受託業者の地位を確立する。

重点戦略③:微生物事業/アジア圏における感染症の簡易検査キットを開発し、製品投入することで新たな売上を獲得する。

 

 

(3) 中長期的な会社の経営戦略

① 組織培養事業

再生医療分野や抗体医薬品の製造などグローバルに再生医療・細胞治療の市場が拡大している中で、細胞培養用培地を含む周辺産業では、これまで研究用途が中心だったものから、再生医療分野や抗体医薬品の製造など臨床用途への移行が進んでおり、より高性能、高品質の製品需要が高まっております。

そこで、当社がこれまで培ってきた製造技術に加え、特注で対応できる強みを活かして、今後は自社製品のラインナップの拡充と新たな特注製品やOEM製品の製造受託に対応すべく、更なる生産技術及び営業体制の強化に努めてまいります。

また、当社が事業展開しているアジア圏においては、各国現地企業による市場参入が見られ、これまで以上に性能面、価格面での競争が激化しておりますが、当社が蓄積してきた高性能製品の開発能力と日本産という高品質製品の製造能力を武器に、競合他社との差別化を図っております。そのような環境の中、当社では、大学や企業と積極的な共同研究を実施しており、そこから創出される開発製品の拡充と営業体制の増強により、新規顧客、新規案件の開拓に加え、アジア圏での販売代理店網を拡大していくことで、細胞培養用培地の販売数量アジアNo.1を目指してまいります。

同時に、世界中でバイオ医薬品の研究開発や最終製品の上市が相次いでいる中で、これら製造にも細胞培養用培地が必須であり、その需要が拡大しております。バイオ医薬品製造のための細胞培養用培地は使用量が多量となることから、液状ではなく粉末状での供給が必要となり、当社においても粉末培地の開発にも力を入れております。今後、国内外へ粉末培地を供給するために専用の製造設備の新設を計画しております。

 

② 微生物事業

日本における細菌検査について、医薬品や食品、化粧品等の産業分野で使用される細菌検査用培地は、供給が不安定、かつ、定期的に価格が上昇している輸入製品から国産製品への切り替え需要があることから、国産の強みを活かした提案営業を強化してまいります。

一方、病院等の臨床分野では、国内の細菌検査の市場が飽和状態となっていることから、今後も市場拡大が見込めるアジア圏への事業展開を模索しております。

アジア圏では細菌検査の体制が整っていない地域が多数存在しており、これらのエリアにおいて、感染症の簡易迅速診断を可能とする検査キットが普及する可能性が高く、アジア圏需要が大きい感染症をターゲットとした製品開発と供給の整備を進めてまいります。

 

③ 細胞加工事業

再生医療の進展により、大学や企業による臨床試験を目指した研究開発が活発になっておりますが、この臨床試験で用いる細胞製剤の製造を受託する企業が不足していることが市場拡大のボトルネックとなっております。

当社の細胞培養用培地のユーザーからも、臨床試験用細胞の製造委託の相談が寄せられており、当社がこれらの受け皿となるべく、新たに細胞加工施設を立ち上げ、再生医療等製品の臨床試験用細胞の製造受託事業(CDMO事業)に参入いたします。

競合となる細胞加工受託企業と差別化すべく、当社の組織培養事業と組み合わせ、「培地×細胞加工」というアプローチでの新規案件の獲得を進めてまいります。

また、がん免疫治療や幹細胞治療を主とする特定細胞加工物の受託について、海外渡航制限の緩和により、インバウンドによるメディカルツーリズムが再開し始めており、再生医療等提供医療機関は増加傾向となっております。

引き続き新たな医療機関との委受託契約の締結を見込んでおりますが、日本のみならず、アジア圏で自国での細胞治療という市場が創出され始めていることから、細胞加工施設の新設、並びにこれまで培った運用のノウハウを活用し、海外での細胞加工受託事業の展開を計画しております。

 

 

(4) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

① 人材の採用・育成

当社グループの主要事業である組織培養事業、微生物事業及び細胞加工事業においては、様々な専門スキルを有する人材が必要となっております。今後、市場の成長に伴う新規参入などによる更なる競争の激化が見込まれるなか、多様な専門人材の採用・育成が不可欠となっていることから、当社グループでは、グローバルな人材の確保に注力する方針であります。

また、組織規模の拡大・多様化に対応した会社組織としてのガバナンス、従業員サポート、教育の質的向上にも尽力してまいります。

 

② 新型コロナウイルス感染症への対応

当社グループにおける3年以上に亘る新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴う影響は事業によって異なります。

微生物事業においては、同感染症のPCR検査用のウイルス輸送液及び抗原検査キットが業績に貢献いたしました。

細胞加工事業においては、当社の取引先の医療機関へ来院するインバウンドの患者の減少を招き、細胞加工受託数の減少の要因にもなりましたが、2021年以降は、これを契機に国内患者向けのクリニックへ新規開拓に向けた営業活動の誘因となりました。

現状、世界的には軒並み個人行動の制限は解除され、正常化への歩みが進んでいるほか、国内においては、2023年5月から感染症法上の分類がインフルエンザと同じ5類に引き下がることが決まりましたが、当該感染症が完全に終息することは考えづらく、今後の見通しとしましても引き続き不透明な状況が続くと見込まれます。

新型コロナウイルス感染症の5類移行後の検査需要について、当社製品の一部は既に2023年4月にOTC医薬品の認可を取得しており、「KBM ラインチェックnCoV」について、ドラッグストアやインターネットを通じた販売経路の拡大に努める方針であります。また、細胞加工事業においては、中国などの一部地域を除き、海外渡航制限の緩和により、インバウンドによるメディカルツーリズムが再開したことで、外国人患者検体の細胞加工受託が回復しており、引き続き積極的な営業活動を進めてまいります。

新型コロナウイルス感染症の収束及び5類移行による影響を多岐にわたり想定しておりますが、リスクを十分認識した上で対策を取り、企業価値の確保、向上を図ってまいります。

 

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は次のとおりです。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社が判断したものであります。

 

(1) サステナビリティ推進に向けた全体像

当社グループは、「敬天愛人成善 ~公明正大 謙虚な心で仕事にあたり 人に恥ずることなく 人を愛し 仕事を愛し 善業を成す~」という社是のもと、私たちは事業活動を通して、特に医療や健康の分野における、サステナビリティに関する社会問題に取組、持続可能な社会の実現に貢献してまいります。

① ガバナンス

当社グループは、今後、既存のリスク・コンプライアンス委員会にて、あらゆる外部環境の変化によるリスク及び機会を把握並びに対応方針の立案を行い、取締役会に報告、取締役会において当該報告内容について管理・監督する体制づくりを行っていく予定です。

当社のコーポレート・ガバナンスに関する詳細は、「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等」をご参照ください。

 

② リスク管理

当社グループにおいては、リスクマネジメントに関する基本的事項を定め、事業を取り巻く様々なリスクに対して的確な管理・実践が可能となることを目的として、リスク・コンプライアンス委員会を開催しております。同委員会での審議内容や検討状況を取締役会に定期的に報告することでリスク管理全般の統制及び管理を行っております。

今後、サステナビリティ全般における事項についても、同委員会にて取扱っていくこととしております。

当社が認識する事業上等のリスクに関する詳細は、「3 事業等のリスク」をご参照ください。

なお、当社では、サステナビリティ関連の戦略、指標及び目標について、当連結会計年度末現在では検討中であるため、記載しておりません。

 

(2) 人的資本に関する開示

① 戦略

当社グループの成長戦略を実現するためには、高度な専門的知識、技能及び経験を有する、多様な人材の確保及び育成が不可欠だと考えております。これを維持・向上するために基本的な人事施策の確実な実施を行っております。具体的には、フレックスタイム制及び時差出勤制度を導入し、従業員の柔軟な働き方に対応しております。

また、女性管理職比率の向上及び育児休業取得率の向上のために、女性だけに限らず、営業職、製造職、研究職、事務職などの異なる働き方のすべての従業員が、男女ともに、学業、子育て、介護などのライフステージに合わせて、プライベートと仕事が両立できる、従業員一人一人が満足し、前向きに働くことのできる公平で柔軟な働き方を受容する人事制度設計及びその働き方を受け入れる風土作りの準備をしてまいります。

 

② 指標及び目標

上記①戦略で記載した、多様な人材の確保及び育成について、連結グループに属するすべての会社では行われてはいないため、連結グループにおける記載が困難であります。このため、次の指標に関する目標及び実績は、連結グループにおける主要な事業を営んでおり、関連する指標のデータ管理とともに、具体的な取組みが行われている提出会社のものを記載しております。達成に向けて進捗を注視していくとともに、指標や目標の設定要否についても引き続き検討する予定です。

指標

2025年度目標

2023年度実績

管理職に占める女性労働者の割合

25以上

11.8

男性労働者の育児休業取得人員

2以上

1

労働者の男女の賃金の差異(全労働者)

75以上

68.0

 

 

3 【事業等のリスク】

 

本書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) 研究開発について(発生可能性:中、発生時期:特定時期なし、影響度:中)

当社グループは、アカデミア(大学や国立研究所のような、国の研究機関)、企業との共同研究も交え、市場ニーズに基づいた新製品の開発及び既存製品の改良を行っております。しかしながら、計画どおりに研究開発が進行しない、製造販売承認の取得に時間を要する、新製品が期待どおりの性能を示さない等を理由に、開発の期間延長又は中止を余儀なくされる場合があります。その結果によっては、追加投資が必要となる、又は、それまでに出資した研究開発費の回収が見込めない等、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

 

(2) 競争環境について(発生可能性:低、発生時期:特定時期なし、影響度:中)

当社グループは、迅速かつ効率的な研究開発及び既存製品の改良を行っておりますが、常に、他社との技術革新に関する開発競争が展開される状況にあります。これらの競争の結果によっては、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

 

(3) 事業環境について(発生可能性:低、発生時期:特定時期なし、影響度:中)

当社グループの細胞加工事業について、当社は医療機関から細胞加工受託サービスの対価として加工受託料を受領しております。新型コロナウイルス感染症の世界的な流行以前は、アジアを中心とした海外から多数のインバウンドの患者が当社の取引先医療機関へ来院し、細胞治療を行っていたため、当社の受託件数も増加し、大きな売上高を計上しておりました。しかしながら、新型コロナウイルス感染症の流行により、インバウンドの患者が激減したことを受け、本事業の売上高が減少し、当社グループの業績に大きな影響を与えました。

今後も、新型コロナウイルス感染症の感染状況並びにその他の要因により、インバウンドの患者の来院数が増減する場合には、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

 

(4) 工場の操業停止について(発生可能性:低、発生時期:特定時期なし、影響度:大)

当社グループの工場、倉庫及び細胞加工施設等の生産設備は一部を除き坂戸本社工場に集中しており、坂戸本社工場において、火災、地震等の災害や重大な設備事故、技術上の問題、使用原材料の供給停止等が発生した場合には、事業活動の停止等が生じる可能性があります。災害対策マニュアルの作成、防災訓練等の対策を講じてはおりますが、被害を完全に回避できるものではなく、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

 

(5) 人材確保及び人材育成について(発生可能性:中、発生時期:特定時期なし、影響度:中)

変化する顧客ニーズへ対応し顧客満足度を高めていくためには、適切な人材確保が重要課題の一つと認識していることから、当社グループは、各部門に配属可能な高い専門性を有する人材の確保と育成に注力しております。しかしながら、他業界に比べ比較的人材が流動的である傾向にあることなどから、適切な人材が十分に確保、育成できない場合は、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

 

(6) 情報セキュリティについて(発生可能性:低、発生時期:特定時期なし、影響度:大)

当社グループでは、社員のセキュリティ対策に対する意識を高め、顧客から信頼される高度なセキュリティマネジメントの実現に努めております。なお、細胞加工受託サービスの提供にあたり、顧客データと個人情報を取り扱う場合があります。これらの個人情報保護につきましては、「個人情報保護方針」に基づき、適切な管理に努めております。しかしながら、不正アクセスや人為的な重大ミス等により、万が一顧客情報の紛失、破壊、改ざん、漏洩等があった場合、社会的信用の失墜、顧客からの信用喪失、又は損害賠償請求による費用の発生等により、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

 

(7) 知的財産権について(発生可能性:低、発生時期:特定時期なし、影響度:中)

当社グループでは、特許権、実用新案権を含む知的財産権を厳重に管理し、第三者からの侵害、あるいは当社グループの製品が第三者の知的財産権を侵害しないよう十分に留意し、疑義ある場合には顧問弁理士に調査を依頼しております。一方、当社グループは、培地等の組成等の一部のノウハウに関しては、公開を前提とする特許等の知的財産権を獲得することよりも、単なるノウハウとして特許化せずに、機密情報として保有する方が事業戦略上有利であると考え、外部に流出しないよう管理を徹底しております。

しかしながら、当社グループの保有する知的財産権やノウハウが第三者から侵害を受けた場合、あるいは当社グループの製品が第三者の知的財産権を侵害した場合には、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

 

(8) 技術・ノウハウ管理の流出について(発生可能性:低、発生時期:特定時期なし、影響度:中)

当社グループの製品は、過去の生産実績及び経験から積み上げた技術並びに研究開発によるノウハウを主たる収益基盤としているため、従業員等の関係者及び共同研究先並びに取引先との秘密保持契約を締結するよう徹底しております。

これらが記載された機密性の高い書類の保管に関しては、保管場所を厳重に管理し、データ情報についてはアクセス権を限定するなどし、外部に流出しないよう留意しております。

しかしながら、これらの技術・ノウハウが流出した場合には、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

 

(9) 新型コロナウイルス感染症について(発生可能性:中、発生時期:2023年5月以降、影響度:中)

当社グループでは、微生物事業において、これまで新型コロナウイルス感染症のPCR検査用のウイルス輸送液及び抗原検査キットが業績に貢献し、2022年3月期の当該2製品の売上高は854百万円(前年同期比50.0%の増加)、売上総利益は608百万円(前年同期比33.9%の増加)、2023年3月期の売上高は1,286百万円(前年同期比50.7%の増加)、売上総利益は776百万円(前年同期比27.6%の増加)と大きく寄与いたしました。

2023年5月より同感染症の感染症法上の分類がインフルエンザと同じ5類に引き下げられ、その後の検査需要の変化により同感染症の抗原検査キット及びウイルス輸送液の販売数量は当初計画を大きく下回る結果となり、2024年3月期において、当該感染症関連棚卸資産の評価損218百万円を計上いたしました。今後も品質・生産性の向上、コスト対応力強化のための施策を展開していく方針ですが、販売価格等、営業方針によっては今後の業績に影響を与える可能性があります。

また、同感染症の新たな変異株の出現などにより、国内の感染者数が増加するなどした場合、上記新型コロナウイルス感染症関連商材の売上増加が期待される一方、当社従業員への感染拡大が発生した場合には、製品供給に制限が出るなど、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

 

 

(10) 法的規制について(発生可能性:低、発生時期:特定時期なし、影響度:小)

当社グループは、事業の遂行にあたって、一部製品について「再生医療等安全確保法」及び「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」等の関連法令をはじめ、様々な法的規制の適用を受けており、事業に関連する法的規制やリスク対応等について、毎月リスク・コンプライアンス委員会において検討すると共に、社内の管理体制の維持・強化を図ることとしております。

また、以下の主要な許認可を含めこれらの許認可等を受けるための諸条件及び関係法規の遵守に努めており、現状においては当該許認可が取消しとなる事由は発生しておりませんが、今後、これらの関係法規が改廃又は新たな法的規制が設けられるなどを理由に、仮にこれらの法的規制を遵守できなかった場合、事業活動を制限されることはもとより、社会的信用の低下を招き、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。また、これらの法的規制を遵守するためのコストが発生し、利益率の低下につながる可能性があります。

 

取得・

登録者名

取得年月・許認可等の

名称及び所管官庁等

許認可等の内容

及び有効期限

法令違反の要件及び

主な許認可取消事由

当社

1993年11月25日

体外診断用医薬品製造業・製造販売業

厚生労働省

体外診断用医薬品の製造及び製造販売

登録番号:11EZ286023(製造業)

2017年1月31日から2022年1月30日まで(5年間)以後5年ごとに更新

登録番号:11E1X80005(製造販売業)

2017年1月31日から2022年1月30日まで(5年間)以後5年ごとに更新

主な免許の要件

代表者や法人役員等が欠格事由に該当しないこと

禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった後、3年を経過していない者

該当法規、麻薬及び向精神薬取締法、毒物及び劇物取締法(1950年法律第303号)その他薬事に関する法令で政令で定めるもの又はこれに基づく処分に違反し、その違反行為があった日から2年を経過していない者

麻薬、大麻、あへん又は覚醒剤の中毒者

事務所に製造管理者及び製造販売3役を設置すること

当社

1995年7月2日

毒物劇物製造業

埼玉県庁

毒物劇物に該当する製品の製造

登録番号:埼製第24-2号

2017年4月5日から2022年4月4日(5年間)以後5年ごとの更新

主な免許の要件

毒物劇物取扱責任者が下記の欠格事由に該当しないこと

18歳未満の者

心身の障害により毒物劇物取扱責任者の業務を適正に行うことができない者として厚生労働省令で定めるもの

麻薬、大麻、あへん又は覚せい剤の中毒者

毒物若しくは劇物又は薬事に関する罪を犯し、罰金以上の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から起算して3年を経過していない者

 

 

取得・

登録者名

取得年月・許認可等の

名称及び所管官庁等

許認可等の内容

及び有効期限

法令違反の要件及び

主な許認可取消事由

当社

2005年2月14日(製造業)

2005年1月5日(製造販売業)

化粧品製造業・製造販売業

厚生労働省

化粧品の製造及び製造販売

登録番号:11CZ009126(製造業)

2020年4月1日から2025年3月31日まで(5年間)以後5年ごとに更新

登録番号:11C0X00096(製造販売業)

2020年4月1日から2025年3月31日まで(5年間)以後5年ごとに更新

主な免許の要件

代表者や法人役員等が欠格事由に該当しないこと

禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった後、3年を経過していない者

該当法規、麻薬及び向精神薬取締法、毒物及び劇物取締法(1950年法律第303号)その他薬事に関する法令で政令で定めるもの又はこれに基づく処分に違反し、その違反行為があった日から2年を経過していない者

麻薬、大麻、あへん又は覚醒剤の中毒者

事務所に責任技術者及び製造販売3役を設置すること

当社

2009年1月5日(製造業、製造販売業)

2009年7月14日(修理業)

医療機器製造業・製造販売業・修理業

厚生労働省

医療機器の製造及び製造販売

登録番号:11BZ200113(製造業)

2019年1月5日から2024年1月4日まで(5年間)以後5年ごとに更新

登録番号:11B3X10023(製造販売業)

2019年1月5日から2024年1月4日まで(5年間)以後5年ごとに更新

登録番号:11BS200105(修理業)

2019年7月14日から2023年7月13日まで(5年間)以後5年ごとに更新

主な免許の要件

代表者や法人役員等が欠格事由に該当しないこと

禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった後、3年を経過していない者

該当法規、麻薬及び向精神薬取締法、毒物及び劇物取締法(1950年法律第303号)その他薬事に関する法令で政令で定めるもの又はこれに基づく処分に違反し、その違反行為があった日から2年を経過していない者

麻薬、大麻、あへん又は覚醒剤の中毒者

事務所に責任技術者、製造販売3役及び医療機器修理責任者を設置すること

当社

2019年5月30日

特定細胞加工物製造業

厚生労働省

特定細胞加工物の製造

登録番号:FA3190002

2019年5月30日から2024年5月29日(5年間)以後5年ごとの更新

上記と同様

 

 

取得・

登録者名

取得年月・許認可等の

名称及び所管官庁等

許認可等の内容

及び有効期限

法令違反の要件及び

主な許認可取消事由

高金生物科技(上海)有限公司

2014年5月13日

(更新日 2016年11月23日)

営業許可証

上海市工商行政管理局

生物科技(バイオテクノロジー)領域における技術開発、技術コンサルティング(遺伝子組換え、人体幹細胞、遺伝子診断及び治療に関する技術開発を除く)、バイオ試薬・工程技術の開発、バイオ関連製品・試薬の製造、自社製造製品の販売、バイオ関連商品の卸売(危険品を除く)・輸出入・マーケット情報コンサルティング(市場調査を除く)

企業コード:91319999987776353T

有効期限:2014年5月13日から2044年5月12日(30年)

許認可を受けている経営範囲以外の業務を執り行った場合、工商管理条例等関連法規に基づいて罰金、経営許可内容の取消し等行政処分となる。

 

高金生物科技(上海)有限公司

2017年5月19日

建設項目環境影響評価

上海市金山区環境保護局

組織細胞用培地製造(年間30万本)に関する環境保護評価

許可番号

金環験(金山環境保護局)[2017]355号

有効期限:なし

建設項目環境保護管理条例等関連法に則り、許可取消し等行政処分となる。

高金生物科技(上海)有限公司

2021年3月22日

易燃性物品の使用、貯蔵に関する届出

上海市公安局金山分局朱行派出所

易燃性原材料の購入、使用、貯蔵に関する届出

有効期限:なし

危険化学品安全管理条例等関連法に則り、許可取消し等行政処分となる。

 

 

 

(11) 製造物責任について(発生可能性:中、発生時期:特定時期なし、影響度:中)

当社グループの主力製品である、細胞培養用培地及び細菌検査用培地共に「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」等の適用法的規制は無く、雑品扱いとなるものの、GMP(医薬品等の製造及び品質管理の基準)に準拠した厳格な品質管理体制を構築しており、再生医療等製品で使用される組織培養培地の使用原料に関しては「生物由来原料基準」に適合した原料を選択しております。また、すべての製品において、品質管理部及び品質保証部を通じて製品の品質・安全に配慮した開発・製造・販売活動を行っております。

しかしながら、すべての製品において、コンタミネーションや異物混入などの予期せぬ品質問題が発生しないという保証はなく、返品、回収等の措置を取る可能性があります。また、細胞加工受託サービスの提供により患者の健康被害を一切引き起こさないという保証もありません。そこで、当社グループは、すべての製品において製造物責任保険に加入しておりますが、この保険が最終的に負担する賠償額を十分にカバーできるとは限らず、大規模な製品の回収や製造物責任賠償につながるような不具合・欠陥が発生した場合には、当社グループの社会的信頼性に重大な影響を与え、多額の費用、又は損失の発生や売上高の減少により、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

 

(12) 原材料やエネルギー価格高騰について(発生可能性:低、発生時期:特定時期なし、影響度:中)

当社グループは、原材料を国内外より調達しており、重要製品の原材料についてはサプライチェーンの代替先を順次選定を進め安定供給を目指しておりますが、原材料価格の高騰により製品原価に影響を及ぼす場合や、原材料の需給バランスの変動、国内外の規制又は原材料メーカーによる品質問題の発生等により、原材料の入手が長期的に困難になり製品を製造・販売することができなくなる可能性があります。また、自然災害や世界情勢等により電気やガスといったエネルギーの価格が上昇した場合には、事業運営コスト及び製品原価が上昇し、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

 

(13) 資材の調達について(発生可能性:低、発生時期:特定時期なし、影響度:小)

当社グループは、一部の代替性の乏しい原材料及び資材等の調達について、特定の仕入先に依存しており、これらが調達できない場合、代替品対応についても、PMDA(独立行政法人医薬品医療機器総合機構)への届出を要することから、製造スケジュールの遅延、製造中止等当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

 

(14) 再生医療等治療について(発生可能性:低、発生時期:特定時期なし、影響度:中)

再生医療に関する規制の枠組みは、2014年11月に施行された「再生医療等安全性確保法」により整備されました。

当社グループの細胞加工事業は、同法に基づき業務を遂行しておりますが、自家培養による免疫細胞や幹細胞を用いた治療はいまだ黎明期であり不確実性が高く、今後の法令諸規則の制定・変更や治療効果等の動向によっては医療機関における治療件数の増加ペースが鈍化することもあり、その場合には当社の業績に影響を与える可能性があります。

 

(15) 創業者への依存について(発生可能性:低、発生時期:特定時期なし、影響度:大)

当社の代表取締役社長である中村孝人は、当社の創業者であり、設立以来40年以上にわたり、代表取締役社長として経営方針や事業戦略の立案・決定及び事業運営等において重要な役割を果たしております。当社グループでは、担当業務毎に取締役、執行役員、又は部長を配置し、適宜権限委譲を行うことで同氏に過度に依存しない経営体制を整備しております。しかしながら、何らかの理由により、同氏が当社グループの業務を継続することが困難となった場合、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

 

 

(16) 大株主について(発生可能数:低、発生時期:特定時期なし、影響度:中)

当社の代表取締役社長である中村孝人、同氏の資産管理会社であるTAKAコーポレーション株式会社、配偶者・中村美千代、長男・中村雄一及び長女・中嶋久美子の保有株式は、当連結会計年度末現在で議決権の66.12%を保有しております。同氏は、引き続き安定株主として一定の議決権を保有し、その議決権行使に当たっては、株主共同の利益を追求するとともに、少数株主の利益にも配慮する方針を有しております。しかしながら、将来的に何らかの事情により当社株式が上記大株主により売却された場合には、当社株式の市場価格及び流通状況等に影響を与える可能性があります。

 

(17) 借入契約に係る財務制限条項について(発生可能性:低、発生時期:特定時期なし、影響度:中)

当社グループが取引金融機関との間で締結している借入金に係る契約のなかには、財務制限条項が付されているものがあります。当該財務制限条項に抵触した場合、貸付人からの請求があれば同契約上の期限の利益を喪失し、直ちに債務の弁済をするための資金確保が必要となるため、当社グループの資金繰りに影響を与える可能性があります。

 

(18) 海外事業展開に伴うカントリーリスクについて(発生可能性:低、発生時期:特定時期なし、影響度:大)

当社グループは、香港に持株会社を、中国上海に製造販売拠点を有しております。これらの海外市場への事業進出は、以下のような不測の事態が発生するリスクがあります。

① 政情不安、反日感情の高まり及び経済環境の悪化

② 優秀な労働力の不足、人件費の高騰、大規模な労働争議の発生

③ 社会インフラの未整備に起因するエネルギー供給の不安定化

④ テロ、戦争、暴動、自然災害、感染症の蔓延などによる社会的混乱

当社グループは、持株会社を有する香港並びに製造販売拠点の存する中国上海の情勢把握には常に注意を払い、損害を未然に防止できるよう努めておりますが、大規模な労働争議、テロ、戦争、暴動、自然災害、感染症の蔓延などの不測の事態が発生した場合には、当該地域における生産活動や販売活動の停止、現地資産の喪失などにより、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

 

(1) 経営成績等の状況の概要

当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用関連会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

① 財政状態及び経営成績の状況

当連結会計年度におけるわが国経済は、2023年4月に新型コロナウイルス感染症の水際対策が終了し、日本入国に関するすべての制約が撤廃されたことで、訪日外国人数が増加すると同時に、年度末に向け円安が進んだこともあり、インバウンド消費の復調が見られました。また、2023年5月には新型コロナウイルスの感染症法上の分類が5類に移行したことを受け、行動制限の緩和が進んだことにより人流が増加し、国内景気に対するプラスの影響がみられ、内需主導での社会経済活動が正常化へ向かいました。

一方で、中東地域をめぐる不安定な国際情勢や世界的な金融引き締めを背景とする為替相場の影響により、エネルギー資源や原材料の価格、物流費の上昇圧力の高まりは継続しており、依然として先行きの不透明な状況となっております。

このような経済状況の中で、当社グループは感染症対策や再生医療の発展のために、経営理念に掲げる「顧客第一主義・品質第一主義」のもと、全社員がグループ全体の更なる成長とステークホルダーへの貢献に努めております。

当連結会計年度の微生物事業において、2023年5月より新型コロナウイルス感染症の感染症法上の分類がインフルエンザと同じ5類に引き下げられたことにより、同感染症関連製品の需給動向に変化が生じたことで売上高は減少に転じ、関連する棚卸資産について、当連結会計年度末の在庫数量、単価、及び今後の同製品の販売数量見込み等に基づき、棚卸資産の評価損218百万円を売上原価として計上いたしました。なお、下半期以降の新型コロナウイルス感染症、及びインフルエンザの感染拡大もあり、同感染症関連製品の需要は回復傾向を示しております。また、細胞加工事業においてはインバウンドの回復により、外国人患者による日本での細胞治療受診件数が急激に増加したことから、同事業における特定細胞加工物の製造受託数が計画を大きく上回って推移いたしました。

当連結会計年度の売上高は4,770百万円(前年同期比0.6%の増加)となり、営業利益は596百万円(前年同期比52.9%の減少)、経常利益は635百万円(前年同期比48.9%の減少)、親会社株主に帰属する当期純利益は384百万円(前年同期比53.6%の減少)となりました。

 

セグメント別の経営成績を示すと、以下のとおりであります。

(組織培養事業)

当連結会計年度における組織培養事業は、国内では渡航制限の緩和により、インバウンドによるメディカルツーリズムが回復したことで、細胞加工施設を有する医療機関における細胞治療用の細胞培養用培地の使用量が増加いたしました。また、アジア圏でも再生医療の研究開発や臨床試験が活発に実施されており、ここで使用される細胞培養用培地の販売数量も拡大いたしました。

培地のOEM製造受託については、国内では再生医療市場の拡大を背景に新規契約先からの製造受託や既存顧客からの新規案件の受託が増加し、中国ではがん免疫療法用の細胞培養用培地の販売を委託している康宁生命科学(吴江)有限公司からの受注が拡大し、日本、中国ともに工場での細胞培養用培地の生産数量が増加傾向となっております。

この結果、売上高は1,904百万円(前年同期比15.5%の増加)、セグメント利益(営業利益)は609百万円(前年同期比16.8%の増加)となりました。

 

(微生物事業)

当連結会計年度における微生物事業は、期中に新型コロナウイルス感染症の感染拡大期が2度あったものの、同感染症の感染症法上の分類変更の影響により、街中の無料検査所の大半が閉鎖されるなど、抗原検査キットの需給動向に変化が見られ、販売数量が大きく減少いたしました。同様に新型コロナウイルス感染症のPCRでの検査数も減少したことで、ウイルス輸送液の販売も減少いたしました。新型コロナウイルス感染症については、前述のとおり、同感染症関連棚卸資産の評価損218百万円を売上原価として計上しております。

また、病院への外来患者数は大きな変動もなく安定的に推移したことから、臨床分野での細菌検査用培地の販売数は横ばいとなったものの、製薬企業等産業分野での細菌検査用培地は、競合する海外輸入品と比較し、安定供給先として評価をされる国内製造を強みとし、販売数が増加いたしました。

この結果、売上高は1,656百万円(前年同期比30.9%の減少)、セグメント損失(営業損失)は69百万円(前年同期は818百万円の利益)となりました。

 

(細胞加工事業)

当連結会計年度における細胞加工事業は、先進の医療技術と信頼の高い医師を求め、インバウンドでの日本の医療サービスを目的とする外国人患者が増加していることに加え、国内患者による細胞治療の需要も拡大したことで、特に幹細胞の加工受託件数が大きく増加いたしました。既契約医療機関からの受託件数の増加と多数の医療機関との新たな細胞加工の委受託契約の締結により、細胞加工施設は稼働の高い状況が続いております。

この結果、売上高は1,209百万円(前年同期比73.4%の増加)、セグメント利益(営業利益)は472百万円(前年同期比68.0%の増加)となりました。

 

当連結会計年度における当社グループの財政状態は以下のとおりであります。

(資産)

当連結会計年度末における流動資産は、前連結会計年度末に比べ69百万円減少3,409百万円となりました。これは主に、現金及び預金が264百万円、売掛金が75百万円増加した一方で、新型コロナウイルス感染症関連の棚卸資産評価損を計上したこと等により、原材料及び貯蔵品が246百万円、商品及び製品が119百万円、仕掛品が53百万円減少したことによるものであります。また、固定資産は、前連結会計年度末に比べ523百万円増加3,179百万円となりました。これは主に、イムノクロマト抗原検査キットの製造設備の導入や、坂戸本社工場の高圧受電設備を更新したことで有形固定資産が415百万円増加したことによるものであります。

この結果、当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末と比べ454百万円増加6,589百万円となりました。

 

(負債)

当連結会計年度末における流動負債は、前連結会計年度末に比べ623百万円減少2,398百万円となりました。これは、長期借入金の借換えに伴う返済により、1年以内返済予定の長期借入金が714百万円減少したことによるものであります。また、固定負債は前連結会計年度末に比べ753百万円増加848百万円となりました。これは主に、前述した借入金の借換えによって長期借入金が525百万円、イムノクロマト抗原検査キット製造設備の導入によってリース債務が227百万円増加したことによるものであります。

この結果、当連結会計年度末の負債合計は、前連結会計年度末と比べ129百万円増加3,246百万円となりました。

 

(純資産)

当連結会計年度末における純資産は、前連結会計年度末に比べ324百万円増加3,342百万円となりました。これは主に、剰余金の配当により79百万円減少したものの、親会社株主に帰属する当期純利益を384百万円計上したことによるものであります。

 

 

② キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末と比較して264百万円増加1,726百万円となりました。

当連結会計年度の各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は、次のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度において営業活動の結果取得した資金は823百万円(前年同期比362百万円の収入増加)となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益は635百万円(前年同期比608百万円の減少)であったものの、棚卸資産の減少による増加424百万円(前年同期比1,006百万円の増加)があったことによるものであります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度において投資活動の結果支出した資金は577百万円(前年同期比1百万円の支出増加)となりました。これは主に、製造設備の増強のための有形固定資産の取得による支出562百万円(前年同期比1百万円の支出増加)によるものであります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度において財務活動の結果支出した資金は1百万円(前年同期比170百万円の支出減少)となりました。これは主に、借入金の借換え(リファイナンス)等により長期借入金の返済による支出939百万円(前年同期比530百万円の支出増加)、長期借入れによる収入750百万円(前年同期はなし)、及び配当金の支払いによる支出79百万円(前年同期比37百万円の支出増加)があったことによるものであります。

 

③ 生産、受注及び販売の実績
a. 生産実績

当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 

セグメントの名称

生産高(千円)

前期比(%)

組織培養事業

898,069

+20.2

微生物事業

879,936

△24.0

細胞加工事業

28,583

+38.4

合計

1,806,590

△6.2

 

(注) 金額は、製造原価によっております。

 

b. 仕入実績

当連結会計年度における仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 

セグメントの名称

金額(千円)

前期比(%)

組織培養事業

101,962

+40.0

微生物事業

168,582

+18.5

細胞加工事業

114

+2,304.7

合計

270,659

+25.9

 

(注) 金額は、仕入価格によっております。

 

 

c. 受注実績

当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 

セグメントの名称

受注高(千円)

前期比(%)

受注残高(千円)

前期比(%)

組織培養事業

微生物事業

細胞加工事業

984,921

+95.7

31,047

    +50.7

合計

984,921

+95.7

31,047

+50.7

 

(注) 組織培養事業及び微生物事業については見込生産であり、該当事項はありません。

 

d. 販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 

セグメントの名称

販売高(千円)

前期比(%)

組織培養事業

1,904,442

+15.5

微生物事業

1,656,346

△30.9

細胞加工事業

1,209,307

+73.4

合計

4,770,096

+0.6

 

(注) 主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は、10%以上となる相手先がいないため、記載を省略しております。

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は、次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。

当社グループの連結財務諸表を作成するに当たり重要となる会計方針については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項」に記載のとおりであります。

 

② 経営成績に重要な影響を与える要因について

経営成績に重要な影響を与える要因については「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。

 

③ 経営戦略の現状と見直し及び経営者の問題認識と今後の方針

経営戦略の現状と見通し及び経営者の問題認識と今後の方針については「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおりであります。

 

 

④ 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
a. 財政状態

財政状態とそれらの要因については、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ① 財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりであります。

 

b. 経営成績

(売上高)

売上高は、4,770百万円(前年同期比0.6%の増加)となりました。これは主に、微生物事業において、前述のとおり需給動向の変化により抗原検査キットの販売数量が大きく減少したものの、細胞加工事業において、インバウンド需要の回復による外国人患者の増加、及び国内患者による細胞治療需要の拡大により、主に幹細胞治療の加工受託件数が大きく増加したためであります。

 

(売上原価及び売上総利益)

売上原価は、2,888百万円(前年同期比26.2%の増加)となりました。売上原価率は60.6%となり、前連結会計年度と比して12.3%増加いたしました。これは主に、前述のとおり新型コロナウイルス感染症関連棚卸資産の評価損218百万円を計上したことによります。

 

(販売費及び一般管理費、営業利益、経常利益)

販売費及び一般管理費は、1,284百万円(前年同期比8.2%の増加)となりました。これは主に、CDMO事業に関する設備投資により、減価償却費が増加したことによります。この結果、営業利益は596百万円(前年同期比52.9%の減少)となりました。

営業外損益は、持分法による投資利益71百万円と受取賃貸料11百万円の計上により営業外収益は93百万円となり、支払手数料29百万円、支払利息22百万円の計上により営業外費用は54百万円となりました。この結果、経常利益は635百万円(前年同期比48.9%の減少)となりました。

 

(親会社株主に属する当期純利益)

法人税、住民税及び事業税を275百万円、法人税等調整額を△25百万円計上した結果、親会社株主に帰属する当期純利益は384百万円(前年同期比53.6%の減少)となりました。

 

⑤ キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

a. キャッシュ・フローの状況

キャッシュ・フローの状況とそれらの要因については、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

 

b. 資本の財源及び資金の流動性

当社グループの当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は1,726百万円となっており、主に製品製造に必要な原材料の仕入及び生産設備の維持管理費用、従業員に支払う給与、各事業所等の賃借料等といった事業成長に伴う運転資金、並びに新規事業案件への投資に備えております。なお、資金調達の機動性及び安定性の確保を目的として、取引金融機関と当座貸越契約を締結しております。

 

 

5 【経営上の重要な契約等】

 

当社は、2023年9月26日付で、株式会社埼玉りそな銀行をアレンジャーとして金銭消費貸借契約を締結いたしました。契約の概要は、以下のとおりです。

(1) 契約締結日

2023年9月26日

(2) 満期日

2028年9月29日

(3) 契約金額

1,050,000千円

(4) 資金用途

運転資金

(5) アレンジャー

株式会社埼玉りそな銀行

(6) エージェント

株式会社埼玉りそな銀行

(7) 参加金融機関

株式会社埼玉りそな銀行、株式会社東和銀行、株式会社商工組合中央金庫、株式会社みずほ銀行

(8) 財務制限条項

① 2024年3月期を初回とする各事業年度の末日における単体の貸借対照表における純資産の部の金額を前年同期比75%以上に維持する。

② 各年度の決算期における単体の損益計算書に示される経常損益が2024年3月期以降の連続する2事業年度において2期連続して損失とならないようにする。

 

 

 

6 【研究開発活動】

 

当社グループの研究開発活動は設立以来、高品質な製品を大量安定供給し続けるために顧客第一主義及び品質第一主義の製品を開発することに加え、バイオテクノロジーの発展に貢献すべく日々研究を積み重ねております。

研究開発体制は、当社の研究開発部門と大学や国の研究機関が密接な連携・協力関係を保ち、効果的かつ迅速的に活動を推進してまいります。

当連結会計年度における当社グループが支出した研究開発費の総額は240百万円であります。

 

セグメントごとの研究開発活動を示すと次のとおりであります。

 

(1) 組織培養事業

当セグメント分野では、再生医療及びその基礎研究に利用される幹細胞、神経細胞、表皮細胞等のヒトの細胞をターゲットとした培養液並びに、CHO細胞、HEK293細胞といったバイオ医薬品の生産に利用される産業用途の培養液の研究開発活動を行っております。

当連結会計年度においては、2023年7月にバイオ医薬品の開発と生産に使用されているCHO細胞用の液体培地KBM250SCを上市いたしました。現在、エクソソーム産生用無血清培地としてKBM EV Pure、YEフリー昆虫細胞用培地、CHOトランスフェクション用液体培地の上市に向け準備を進めております。

中長期的な研究といたしましては、CHO細胞用Feed培地、HEK293(ヒト胎児の腎由来細胞株)用培地、ハイブリドーマ(複数の細胞が融合した細胞)用培地用添加剤を行っております。

当連結会計年度における研究開発費の金額は108百万円であります。

 

(2) 微生物事業

当セグメント分野では、臨床分野の病原菌検査に使用される細菌検査用培地や体外診断用医薬品(イムノクロマト製品)の研究開発活動を行っております。

当連結会計年度においては、2023年4月に一般用新型コロナウイルス感染症抗原検査キットKBMラインチェックnCoV(一般用)が一般用検査薬・第一類医薬品として承認され、同年5月に上市いたしました。また、2023年7月に一般用新型コロナウイルス感染症・インフルエンザウイルス同時検出抗原検査キットKBMラインチェックnCoV/Flu(一般用)も一般用検査薬・第一類医薬品として承認されております。両製品ともに薬局やドラッグストア及びインターネット等で販売可能な新製品となります。現在、肺胞蛋白症の診断に用いる為の抗GM-CSF自己抗体測定キットKBMラインチェックAPAPの上市に向け準備を進めております。

当連結会計年度における研究開発費の金額は49百万円であります。

 

(3) 細胞加工事業

当セグメント分野では、再生医療の普及に向け、新しい細胞種の培養プロセスを構築し、それを基に新たな細胞治療の導入を目指しております。これまでの細胞培養技術を応用させ、各細胞の機能や性能を解明させ理解し、製品開発に向けた取組を行っています。

当連結会計年度においては、前連結会計年度に続き三重大学大学院 医学系研究科 個別化がん免疫治療学のグループ及び三重大学発ベンチャー企業であるティーセルヌーヴォー株式会社と共同で、三重大学で開発された固形がんを標的としたGD2 GITRL CAR-T細胞の調整方法及び品質管理システムの基盤技術の構築に関する研究を実施しております。

当連結会計年度における研究開発費の金額は82百万円であります。