文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであります。
(1) 経営方針及び経営環境
当社は、1981年4月に動物血液の販売と細菌検査用培地の製造・販売(微生物事業)から事業をスタートいたしました。市場のニーズに合わせ、1986年4月には細胞培養用培地の製造・販売(組織培養事業)を開始し、続いて、2014年11月の「再生医療等安全性確保法」の施行に伴い、細胞加工事業を開始いたしました。「組織培養事業」「微生物事業」「細胞加工事業」の3つの事業展開に加え、それらの事業を組み合わせることによって生みだされるシナジー効果を事業に活用する点が当社の最大の特徴であり、優位性であると考えます。
組織培養事業と細胞加工事業の関係性について、細胞加工事業の競合他社においては、当社のような培地を製造する企業から培地を購入し、細胞を加工する必要があるのに対し、当社では自社製品の細胞培養用培地を細胞加工事業で使用することができるため、細胞加工業務の原価率を低く抑えることができ、収益率の上昇に繋がります。また、細胞加工事業での自社培地使用により、その培地の性能に対するフィードバックを社内で速やかに得ることができ、製品性能・品質の向上、及び改善につなげることができる点にあります。
組織培養事業と微生物事業の関係性については、組織培養事業は細胞、微生物事業は細菌と、培養するターゲットは異なりますが、一部の顧客については、細胞を培養し、同時にその環境における細菌汚染を確認するなど、同一顧客に別事業の製品の販売が可能となることがあります。また、多くの販売代理店では企業や大学、医療機関などを顧客とし、様々な試薬を幅広く扱っていることから、当社が持つ組織培養事業と微生物事業の両製品を取り扱っており、顧客基盤や販売網を共有できる点が単一の事業のみの競合他社と比較して、優位であると考えております。
市場の状況といたしまして、組織培養事業では、再生医療市場における細胞培養用培地は、長きに亘り研究用途での使用が主流でありましたが、近年では、再生医療の市場発展により臨床用途での使用という新たな需要が生まれております。また、抗体医薬品やワクチンの研究、製造など、産業用においても細胞培養用培地が大量に使用されるようになってきたことから、その市場規模は数年間で急速に成長を続けており、グローバルでさらに大きな市場へ拡大していくと予想しております。
細胞加工事業では、ここ数年、新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴い、細胞加工の主要な患者層だったインバウンドによるメディカルツーリズムが減少いたしました。しかしながら、各国における海外渡航制限の緩和により、インバウンドも回復している様子が見られ、新たに再生医療、細胞治療を実施する医療機関数も増加傾向にあることから、国内の再生医療市場は今後も大きく発展していくと考えております。
微生物事業では、新型コロナウイルスの感染拡大により、抗原検査キットなどの新型コロナウイルス関連商材という新たな市場が創出されました。当初は需要が供給を大きく上回ったことから、市場における製品不足に陥りましたが、各社積極的な設備投資の実施により、現在の市場は落ち着きを取り戻しております。
すべての事業において共通しているのは、新型コロナウイルスによる経済活動への影響は収束し、アフターコロナへの移行を見据え、これまで停滞していた海外への事業展開が動き出すとともに、今後は各市場の成長に合わせた製品開発、価格戦略などの競争が激化していくものと考えております。
当社は、販売数量と売上高の拡大が企業価値向上に寄与するものと考えており、中長期かつ持続的な成長を実現するために、当社がこれまで培った製造技術に加え、特注で対応できる強みを活かして、製品のラインナップの拡充のために、さらなる生産技術及び営業体制の強化に努めております。さらに、再生医療等製品の臨床試験用細胞の製造受託事業(CDMO事業)に参入し、更なる事業拡大を目指します。
また、下記の「社是」と「基本理念」を経営の中核に置き、市場・社会、法制度等への対応力強化と、各事業の強みを生かし、バイオテクノロジーの発展と共に、持続的な成長を続けてまいります。
「社是」
敬天愛人成善 ~公明正大 謙虚な心で仕事にあたり 人に恥ずることなく 人を愛し 仕事を愛し 善業を成す~
「基本理念」
「コージン」、つまり「考える人(考人)の組織集団」として、
1.常に誠心誠意で仕事をする
2.今、必要とされている最先端の製品を世に出す
3.喜びに満ち満ちた会社である
という基本理念のもと、私たちはバイオテクノロジーの発展のために日々努力しています。
「経営理念」
当社グループは、「考える人」の組織集団として、「顧客第一主義・品質第一主義」をモットーにバイオテクノロジーの発展に貢献していきます。
「ビジョン」
・グローバル企業としての位置を確立し、培地業界における国内シェア1位に
・新規事業を開拓し、高付加価値サービスを提供し続ける
「行動指針」
1.顧客の理解と満足が得られる製品であること
2.品質最優先で製造された高品質な製品であること
3.社会が今必要としている最先端の製品であること
4.一人一人が品質に自覚と責任を持てる製品であること
5.各種法規・規格・標準を遵守すること
(2) 事業展開方針
当社グループは、「組織培養事業」「微生物事業」「細胞加工事業」の3つの事業を展開しております。
組織培養事業では細胞を培養する際に用いる細胞培養用培地の製造を、微生物事業では細菌検査と感染症に関連する製品の製造を、また、細胞加工事業では医療機関より細胞の加工業務の受託を行っています。
今後、再生医療市場の拡大が見込まれており、周辺産業としての組織培養事業と細胞加工事業を成長の核と位置付け、重点戦略を実施していきます。
また、上記事業に加え、微生物事業においてもアジア圏で新たな市場が創出されており、各地域の需要に応じた製品を開発、供給することで、海外展開にも注力していきます。

《事業セグメント別成長イメージ》
組織培養事業:グローバルで市場が拡大傾向にあり、それぞれの需要に応じる製品を供給
微生物事業:海外展開による新たな市場の開拓
細胞加工事業:再生医療等製品製造受託への新規参入
《中期事業目標》
重点戦略①:組織培養事業/開発から製造、販売までをワンストップで対応できる強みを活かし、種々の細胞に合致する製品の供給と、新たなニーズに沿う製品を開発することで、アジアNo.1の培地製造販売会社を目指す。
重点戦略②:細胞加工事業/現在実施している特定細胞加工物に加え、再生医療等製品の製造受託に参入することで、この両輪を回し、研究開発から産業化まで対応が可能な高品質、高水準の細胞加工受託業者の地位を確立する。
重点戦略③:微生物事業/アジア圏における感染症の簡易検査キットを開発し、製品投入することで新たな売上を獲得する。
(3) 中長期的な会社の経営戦略
① 組織培養事業
再生医療分野や抗体医薬品の製造などグローバルで再生医療・細胞治療の市場が拡大している中で、細胞培養用培地を含む周辺産業では、これまで研究用途が中心だったものから、再生医療分野や抗体医薬品の製造など臨床用途への移行が進んでおり、より高性能、高品質の製品需要が高まっております。
そこで、当社がこれまで培ってきた製造技術に加え、特注で対応できる強みを活かして、今後は自社製品のラインナップの拡充と新たな特注製品やOEM製品の製造受託に対応すべく、さらなる生産技術及び営業体制の強化に努めてまいります。
また、当社が事業展開しているアジア圏においては、各国現地企業による市場参入が見られ、これまで以上に性能面、価格面での競争が激化しておりますが、当社が蓄積してきた高性能製品の開発能力と日本産という高品質製品の製造能力を武器に、競合他社との差別化を図っております。そのような環境の中、当社では、大学や企業と積極的な共同研究を実施しており、そこから創出される開発製品の拡充と営業体制の増強により、新規顧客、新規案件の開拓に加え、アジア圏での販売代理店網を拡大していくことで、細胞培養用培地の販売数量アジアNo.1を目指してまいります。
同時に、世界中でバイオ医薬品の研究開発や最終製品の上市が相次いでいる中で、これら製造にも細胞培養用培地が必須であり、その需要が拡大しております。バイオ医薬品製造のための細胞培養用培地は使用量が多量となることから、液状ではなく粉末状での供給が必要となり、当社においても粉末培地の開発にも力を入れております。今後、国内外へ粉末培地を供給するために専用の製造設備の新設を計画しております。
② 微生物事業
日本における細菌検査について、医薬品や食品、化粧品等の産業分野で使用される細菌検査用培地は、供給が不安定、かつ、定期的に価格が上昇している輸入製品から国産製品への切り替え需要があることから、国産の強みを活かした提案営業を強化してまいります。
一方、病院等の臨床分野では、国内の細菌検査の市場が飽和状態となっていることから、今後も市場拡大が見込めるアジア圏への事業展開を模索しております。
アジア圏では細菌検査の体制が整っていない地域が多数存在しており、これらのエリアにおいて、感染症の簡易迅速診断を可能とする検査キットが普及する可能性が高く、アジア圏需要が大きい感染症をターゲットとした製品開発と供給の整備を進めてまいります。
③ 細胞加工事業
再生医療の進展により、大学や企業による臨床試験を目指した研究開発が活発になっておりますが、この臨床試験で用いる細胞製剤の製造を受託する企業が不足していることが市場拡大のボトルネックとなっております。
当社の細胞培養用培地のユーザーからも、臨床試験用細胞の製造委託の相談が寄せられており、当社がこれらの受け皿となるべく、新たに細胞加工施設を立ち上げ、再生医療等製品の臨床試験用細胞の製造受託事業(CDMO事業)に参入いたします。
競合となる細胞加工受託企業と差別化すべく、当社の組織培養事業と組み合わせ、「培地×細胞加工」というアプローチでの新規案件の獲得を進めてまいります。
また、がん免疫治療や幹細胞治療を主とする特定細胞加工物の受託について、海外渡航制限の緩和により、インバウンドによるメディカルツーリズムが再開し始めており、再生医療等提供医療機関は増加傾向となっております。
引き続き新たな医療機関との委受託契約の締結を見込んでおりますが、日本のみならず、アジア圏で自国での細胞治療という市場が創出され始めていることから、これまで培った細胞加工施設の新設、ならびに運用のノウハウを活用し、海外での細胞加工受託事業の展開を計画しております。
(4) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当社グループの主要事業である組織培養事業、微生物事業及び細胞加工事業においては、様々な専門スキルを有する人材が必要となっております。今後、市場の成長に伴う新規参入などによる更なる競争の激化が見込まれるなか、多様な専門人材の採用・育成が不可欠となっていることから、当社グループでは、グローバルでの人材の確保に注力する方針であります。
また、組織規模の拡大・多様化に対応した会社組織としてのガバナンス、従業員サポート、教育の質的向上にも尽力してまいります。
当社グループにおける新型コロナウイルスの感染拡大に伴う影響について、組織培養事業では、同感染症による影響は解消し、グローバルでの再生医療の市場成長が見込まれており、そこで使用される細胞培養用培地の売上拡大が期待されております。これまで停滞していた海外案件も動きだしており、グローバルでの事業展開を進めてまいります。
微生物事業では、これまで同感染症のPCR検査にあたり検体の輸送時に使用されるウイルス輸送液や抗原検査キットなどコロナ関連商材の販売が拡大し業績に貢献しておりました。新型コロナウイルスの感染症法上の区分が5類に移行されたことに伴い、これまで検査の主体であった街中の無料検査所や発熱外来から、開業医クリニック等での検査に移行しており、引き続き当社では状況に合わせた販売戦略を検討してまいります。
細胞加工事業ではグローバルでの渡航制限の緩和により、新型コロナウイルス発生前に細胞加工受託の大半を占めていたインバウンドによる外国人患者検体が急回復しております。中国からの訪日受入はいまだに制限が残るものの、これが再開された際には細胞加工の受託件数が更に増加することが想定されるため、今後の受託件数増加を見据えた受け入れ態勢の整備を進めております。
引き続き新型コロナウイルス感染症により当社経営、及び業績に与える影響を十分に認識したうえ、対策を取ることで、継続的な企業価値の確保、向上を図ってまいります。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は次のとおりです。なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであります。
(1) サステナビリティ推進に向けた全体像
当社グループは、「敬天愛人成善 ~公明正大 謙虚な心で仕事にあたり 人に恥ずることなく 人を愛し 仕事を愛し 善業を成す~」という社是のもと、私たちは事業活動を通して、特に医療や健康の分野における、サステナビリティに関する社会問題に取組、持続可能な社会の実現に貢献してまいります。
① ガバナンス
当社グループは、今後、既存のリスク・コンプライアンス委員会にて、あらゆる外部環境の変化によるリスク及び機会を把握並びに対応方針の立案を行い、取締役会に報告、取締役会において当該報告内容について管理・監督する体制づくりを行っていく予定です。
当社のコーポレート・ガバナンスに関する詳細は、「
② リスク管理
当社グループにおいては、リスクマネジメントに関する基本的事項を定め、事業を取り巻く様々なリスクに対して的確な管理・実践が可能となるようにすることを目的として、リスク・コンプライアンス委員会を開催しております。同委員会での審議内容や検討状況を取締役会に定期的に報告することでリスク管理全般の統制及び管理を行っております。
今後、サステナビリティ全般における事項についても、同委員会にて取扱っていくこととしております。
当社が認識する事業上等のリスクに関する詳細は、「
なお、当社では、サステナビリティ関連の戦略、指標及び目標について、本書提出日現在では検討中であるため、記載しておりません。
(2) 人的資本に関する開示
① 戦略
当社グループの成長戦略を実現するためには、高度な専門的知識、技能及び経験を有する、多様な人材の確保及び育成が不可欠だと考えております。これを維持・向上するために基本的な人事施策の確実な実施を行っております。具体的には、フレックスタイム制及び時差出勤制度を導入し、従業員の柔軟な働き方に対応しております。
また、女性管理職比率の向上及び育児休業取得率の向上のために、女性だけに限らず、営業職、製造職、研究職、事務職などの異なる働き方のすべての従業員が、男女ともに、学業、子育て、介護などのライフステージに合わせて、プライベートと仕事が両立できる、従業員一人一人が満足し、前向きに働くことのできる公平で柔軟な働き方を受容する人事制度設計及びその働き方を受け入れる風土作りの準備をしてまいります。
② 指標及び目標
上記①戦略で記載した、多様な人材の確保及び育成について、連結グループに属するすべての会社では行われてはいないため、連結グループにおける記載が困難であります。このため、次の指標に関する目標及び実績は、連結グループにおける主要な事業を営んでおり、関連する指標のデータ管理とともに、具体的な取組みが行われている提出会社のものを記載しております。達成に向けて進捗を注視していくとともに、指標や目標の設定要否についても引き続き検討する予定です。
本書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであります。
当社グループは、アカデミア(大学や国立研究所のような、国の研究機関)、企業との共同研究も交え、市場ニーズに基づいた新製品の開発及び既存製品の改良を行っております。しかしながら、計画通りに研究開発が進行しない、製造販売承認の取得に時間を要する、新製品が期待通りの性能を示さない等を理由に、開発の期間延長又は中止を余儀なくされる場合があります。その結果によっては、追加投資が必要となる、又は、それまでに出資した研究開発費の回収が見込めない等、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
当社グループは、迅速かつ効率的な研究開発及び既存製品の改良を行っておりますが、常に、他社との技術革新に関する開発競争が展開される状況にあります。これらの競争の結果によっては、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
当社グループの細胞加工事業について、当社は医療機関から細胞加工受託サービスの対価として加工受託料を受領しております。新型コロナウイルス感染症の世界的な流行以前は、アジアを中心とした海外から多数のインバウンドの患者が当社の取引先医療機関へ来院し、細胞治療を行っていたため、当社の受託件数も増加し、大きな売上高を計上しておりました。しかしながら、新型コロナウイルス感染症の流行により、インバウンドの患者が激減したことを受け、本事業の売上高が減少し、当社グループの業績に大きな影響を与えました。
今後も、新型コロナウイルス感染症の感染状況並びにその他の要因により、インバウンドの患者の来院数が増減する場合には、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
当社グループの工場、倉庫及び細胞加工施設等の生産設備は一部を除き坂戸本社工場に集中しており、坂戸本社工場において、火災、地震等の災害や重大な設備事故、技術上の問題、使用原材料の供給停止等が発生した場合には、事業活動の停止等が生じる可能性があります。災害対策マニュアルの作成、防災訓練等の対策を講じてはおりますが、被害を完全に回避できるものではなく、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
変化する顧客ニーズへ対応し顧客満足度を高めていくためには、適切な人材確保が重要課題の一つと認識していることから、当社グループは、各部門に配属可能な高い専門性を有する人材の確保と育成に注力しております。しかしながら、他業界に比べ比較的人材が流動的である傾向にあることなどから、適切な人材が十分に確保、育成できない場合は、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
当社グループでは、社員のセキュリティ対策に対する意識を高め、顧客から信頼される高度なセキュリティマネジメントの実現に努めております。なお、細胞加工受託サービスの提供にあたり、顧客データと個人情報を取り扱う場合があります。これらの個人情報保護につきましては、「個人情報保護方針」に基づき、適切な管理に努めております。しかしながら、不正アクセスや人為的な重大ミス等により、万が一顧客情報の紛失、破壊、改ざん、漏洩等があった場合、社会的信用の失墜、顧客からの信用喪失、又は損害賠償請求による費用の発生等により、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
当社グループでは、特許権、実用新案権を含む知的財産権を厳重に管理し、第三者からの侵害、あるいは当社グループの製品が第三者の知的財産権を侵害しないよう十分に留意し、疑義ある場合には顧問弁理士に調査を依頼しております。一方、当社グループは、培地等の組成等の一部のノウハウに関しては、公開を前提とする特許等の知的財産権を獲得することよりも、単なるノウハウとして特許化せずに、機密情報として保有する方が事業戦略上有利であると考え、外部に流出しないよう管理を徹底しております。
しかしながら、当社グループの保有する知的財産権やノウハウが第三者から侵害を受けた場合、あるいは当社グループの製品が第三者の知的財産権を侵害した場合には、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
当社グループの製品は、過去の生産実績及び経験から積み上げた技術並びに研究開発によるノウハウを主たる収益基盤としているため、従業員等の関係者及び共同研究先並びに取引先との秘密保持契約を締結するよう徹底しております。
これらが記載された機密性の高い書類の保管に関しては、保管場所を厳重に管理し、データ情報についてはアクセス権を限定するなどし、外部に流出しないよう留意しております。
しかしながら、これらの技術・ノウハウが流出した場合には、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
当社グループでは、微生物事業において、これまで新型コロナウイルスのPCR検査用のウイルス輸送液及び抗原検査キットが業績に貢献し、2022年3月期の当該2製品の売上高は854百万円(前年同期比50.0%の増加)、売上総利益は608百万円(前年同期比33.9%の増加)、2023年3月期の売上高は1,286百万円(前年同期比50.7%の増加)、売上総利益は776百万円(前年同期比27.6%の増加)と大きく寄与いたしました。
2023年5月より同感染症の感染症法上の区分がインフルエンザと同じ5類に引き下げられ、その後の検査需要の変化により当社が上市している同感染症の抗原検査キット及びウイルス輸送液の販売数量は当初計画を大きく下回る結果となり、今後、競合他社との価格競争が予想される中で不透明な状況が続くと予想しております。
このため、当社といたしましてはこれを機に販売計画の見直し等を行い、2024年3月期第3四半期連結累計期間において、当該感染症関連棚卸資産の評価損284百万円を計上いたしました。今後も品質・生産性の向上、コスト対応力強化のための施策を展開していく方針ですが、販売価格等、営業方針によっては今後の業績に影響を及ぼす可能性があります。
また、同感染症の新たな変異株の出現などにより、国内の感染者数が増加するなどした場合、上記コロナ関連商材の売上増加が期待される一方、当社従業員への感染拡大が発生した場合には、製品供給に制限が出るなど、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
当社グループは、事業の遂行にあたって、一部製品について「再生医療等安全確保法」及び「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」等の関連法令をはじめ、様々な法的規制の適用を受けており、事業に関連する法規制やリスク対応等について、毎月リスク・コンプライアンス委員会において検討すると共に、社内の管理体制の維持・強化を図ることとしております。
また、以下の主要な許認可を含めこれらの許認可等を受けるための諸条件及び関係法規の遵守に努めており、現状においては当該許認可が取消しとなる事由は発生しておりませんが、今後、これらの関係法規が改廃又は新たな法的規制が設けられるなどを理由に、仮にこれらの法規制を遵守できなかった場合、事業活動を制限されることはもとより、社会的信用の低下を招き、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。また、これらの法規制を遵守するためのコストが発生し、利益率の低下につながる可能性があります。
当社グループの主力製品である、細胞培養用培地及び細菌検査用培地共に「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」等の適用法規制は無く、雑品扱いとなるものの、GMP(医薬品等の製造及び品質管理の基準)に準拠した厳格な品質管理体制を構築しており、再生医療等製品で使用される組織培養培地の使用原料に関しては「生物由来原料基準」に適合した原料を選択しております。また、すべての製品において、品質管理部及び品質保証部を通じて製品の品質・安全に配慮した開発・製造・販売活動を行っております。
しかしながら、すべての製品において、コンタミネーションや異物混入などの予期せぬ品質問題が発生しないという保証はなく、返品、回収等の措置を取る可能性があります。また、細胞加工受託サービスの提供により患者の健康被害を一切引き起こさないという保証もありません。そこで、当社グループは、すべての製品において製造物責任保険に加入しておりますが、この保険が最終的に負担する賠償額を十分にカバーできるとは限らず、大規模な製品の回収や製造物責任賠償につながるような不具合・欠陥が発生した場合には、当社グループの社会的信頼性に重大な影響を与え、多額の費用、又は損失の発生や売上高の減少により、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
当社グループは、原材料を国内外より調達しており、重要製品の原材料についてはサプライチェーンの代替先を順次選定を進め安定供給を目指しておりますが、原材料価格の高騰により製品原価に影響を及ぼす場合や、原材料の需給バランスの変動、国内外の規制又は原材料メーカーによる品質問題の発生等により、原材料の入手が長期的に困難になり製品を製造・販売することができなくなる可能性があります。また、自然災害や世界情勢等により電気やガスといったエネルギーの価格が上昇した場合には、事業運営コスト及び製品原価が上昇し、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、一部の代替性の乏しい原材料及び資材等の調達について、特定の仕入先に依存しており、これらが調達できない場合、代替品対応についても、PMDA(独立行政法人医薬品医療機器総合機構)への届出を要することから、製造スケジュールの遅延、製造中止等当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
再生医療に関する規制の枠組みは、2014年11月に施行された「再生医療等安全性確保法」により整備されました。
当社グループの細胞加工事業は、同法に基づき業務を遂行しておりますが、自家培養による免疫細胞や幹細胞を用いた治療はいまだ黎明期であり不確実性が高く、今後の法令諸規則の制定・変更や治療効果等の動向によっては医療機関における治療件数の増加ペースが鈍化することもあり、その場合には当社の業績に影響を与える可能性があります。
当社の代表取締役社長である中村孝人は、当社の創業者であり、設立以来40年以上にわたり、代表取締役社長として経営方針や事業戦略の立案・決定及び事業運営等において重要な役割を果たしております。当社グループでは、担当業務毎に取締役、執行役員、又は部長を配置し、適宜権限委譲を行うことで同氏に過度に依存しない経営体制を整備しております。しかしながら、何らかの理由により、同氏が当社グループの業務を継続することが困難となった場合、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
大株主との関係については、当社の代表取締役社長である中村孝人、同氏の資産管理会社であるTAKAコーポレーション株式会社、配偶者・中村美千代、長男・中村雄一及び長女・中嶋久美子の保有株式は、本書提出日現在で議決権の66.12%となっており、上場後も引き続き安定株主として一定割合を保有する予定ですが、議決権行使に当たっては、株主共同の利益を追求するとともに、少数株主の利益にも配慮する方針を有しております。しかしながら、将来的に何らかの事情により当社株式が上記大株主により売却された場合には、当社株式の市場価格及び流通状況等に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループが取引金融機関との間で締結している借入金に係る契約のなかには、財務制限条項が付されているものがあります。当該財務制限条項に抵触した場合、貸付人からの請求があれば同契約上の期限の利益を喪失し、直ちに債務の弁済をするための資金確保が必要となるため、当社グループの資金繰りに影響を与える可能性があります。
(18)海外事業展開に伴うカントリーリスクについて(発生可能性:低、発生時期:特定時期なし、影響度:大)
当社グループは、香港に持株会社を、中国上海に製造販売拠点を有しております。これらの海外市場への事業進出は、以下のような不測の事態が発生するリスクがあります。
①政情不安、反日感情の高まり及び経済環境の悪化
②優秀な労働力の不足、人件費の高騰、大規模な労働争議の発生
③社会インフラの未整備に起因するエネルギー供給の不安定化
④テロ、戦争、暴動、自然災害、感染症の蔓延などによる社会的混乱
当社グループは、持株会社を有する香港並びに製造販売拠点の存する中国上海の情勢把握には常に注意を払い、損害を未然に防止できるよう努めておりますが、大規模な労働争議、テロ、戦争、暴動、自然災害、感染症の蔓延などの不測の事態が発生した場合には、当該地域における生産活動や販売活動の停止、現地資産の喪失などにより、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
(1) 経営成績等の状況の概要
当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用関連会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
第42期連結会計年度(自 2022年4月1日 至 2023年3月31日)
当連結会計年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症の影響が継続し、第7波、第8波と2度の感染拡大が発生いたしましたが、ウィズコロナの取り組みにより日常を取り戻すという政府方針のもと、新型コロナウイルスの感染症法上の位置づけが2023年5月より現状の2類から5類へ移行することが決定いたしました。
行動制限の緩和に加え、政府や自治体による旅行支援、インバウンドの回復等により、国内の経済は緩やかな回復の兆しを見せております。
一方、ロシア・ウクライナ情勢による地政学的緊張の長期化や、世界的な金融引き締めにより、国内景気や企業収益、個人消費に与える影響については、引き続き留意が必要な状況となっております。
このような経済状況の中で、感染症対策や再生医療の発展のために、経営理念で掲げる「顧客第一主義・品質第一主義」のもと、全社員がグループ全体の更なる成長とステークホルダーへの貢献に努めております。
当連結会計年度の売上高は4,742百万円(前年同期比20.2%の増加)となり、営業利益は1,267百万円(前年同期比30.7%の増加)、経常利益は1,244百万円(前年同期比35.6%の増加)、親会社株主に帰属する当期純利益は829百万円(前年同期比41.2%の増加)となりました。
セグメント別の経営成績を示すと、以下のとおりであります。
(組織培養事業)
当連結会計年度における組織培養事業は、再生医療の研究開発や臨床試験が国内外で活発に実施されていることに加え、新型コロナウイルス感染拡大に伴い、ワクチンやPCR検査のためのウイルス輸送液の製造用途の細胞培養用培地の需要が拡大いたしました。
国内では渡航制限の緩和により、一部の地域からのインバウンドによるメディカルツーリズムが回復したことで、自由診療領域の医療機関における細胞治療用の培地使用量が増加したこともあり、関連する製品の売上が増加いたしました。
培地のOEM製造受託については、一部の大口顧客において海外顧客からの受注減少による売上減少がみられましたが、新規契約先からの受託や既存顧客から新規案件の受託が増加しており、生産数量は増加傾向となっております。
この結果、売上高は1,648百万円(前年同期比7.1%の増加)、セグメント利益(営業利益)は521百万円(前年同期比21.1%の増加)となりました。
(微生物事業)
当連結会計年度における微生物事業は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響により、抗原検査キットの販売が大きく伸びたものの、新型コロナウイルス検査がPCR検査から抗原検査キットでの検査に一部置き換わった影響により、ウイルス輸送液の販売は減少いたしました。
また、2022年1月より弊社での取り扱いを開始した「C. DIFF QUIK CHEK コンプリートキット(TECHLAB社製)」が年度を通して売上に寄与したものの、細菌検査用培地の売上はほぼ横ばいでの推移となりました。
この結果、売上高は2,396百万円(前年同期比28.2%の増加)、セグメント利益(営業利益)は818百万円(前年同期比25.5%の増加)となりました。
(細胞加工事業)
当連結会計年度における細胞加工事業は、メディカルツーリズムを目的とするインバウンド患者に加え、国内患者による細胞治療が増加傾向にあることから、特に幹細胞の加工受託件数が大きく増加しており、また、新たに細胞治療を始める医療機関と細胞加工の委受託契約を締結いたしました。研究用試薬についても、化粧品の原料用途や、様々な疾患への応用が期待されているエクソソームの研究の用途での販売が増加し、フル生産の状況が継続しております。
この結果、売上高は697百万円(前年同期比29.8%の増加)、セグメント利益(営業利益)は280百万円(前年同期比66.9%の増加)となりました。
当連結会計年度における当社グループの財政状態は以下のとおりであります。
(資産)
当連結会計年度末における流動資産は、前連結会計年度末に比べ45百万円増加の3,478百万円となりました。これは主に、設備投資債務等の支払いによって現金及び預金が271百万円減少したこと、PCR検査のためウイルス輸送液の売上減少により電子記録債権が185百万円減少した一方で、新型コロナウイルス感染症及びインフルエンザウイルスの同時流行に備えた抗原検査キット製造用の材料購入等により、原材料及び貯蔵品が327百万円、商品及び製品が175百万円増加したことによるものであります。また、固定資産は、前連結会計年度末に比べ494百万円増加の2,655百万円となりました。これは、主にCDMO事業に関するCPC(細胞培養加工施設)の建設及び新規設備の導入により有形固定資産が462百万円増加したことによるものであります。
この結果、当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末と比べ539百万円増加の6,134百万円となりました。
(負債)
当連結会計年度末における流動負債は、前連結会計年度末に比べ823百万円増加の3,021百万円となりました。これは、主に翌連結会計年度に返済予定の長期借入金を、流動負債の1年内返済予定の長期借入金に振替えたことにより655百万円増加したためであります。また、固定負債は、上述に記載のとおり、長期借入金の返済及び振替によって1,064百万円減少したことにより、前連結会計年度末に比べ1,084百万円減少の95百万円となりました。
この結果、当連結会計年度末の負債合計は、前連結会計年度末と比べ261百万円減少の3,116百万円となりました。
(純資産)
当連結会計年度末における純資産は、前連結会計年度末に比べ800百万円増加の3,017百万円となりました。これは、主に親会社株主に帰属する当期純利益による増加(829百万円)及び剰余金の配当による減少(41百万円)によるものであります。
第43期第3四半期連結累計期間(自 2023年4月1日 至 2023年12月31日)
当第3四半期連結累計期間におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症の5類移行に伴うインバウンド需要の拡大等により、経済活動は正常化に向けて進み始め、日経平均株価もバブル崩壊後の高値圏で推移するなど、景気は緩やかに持ち直しの動きが見られました。一方で、地政学的リスクの長期化や資源・原材料価格の上昇、世界的な金融引締めの影響や中国経済の先行き懸念等、依然として先行きは不透明な状況が続いております。
このような経済状況の中で、感染症対策や再生医療の発展のために、経営理念で掲げる「顧客第一主義・品質第一主義」のもと、全社員がグループ全体の更なる成長とステークホルダーへの貢献に努めております。
2023年5月より新型コロナウイルス感染症の感染症法上の区分がインフルエンザと同じ5類に引き下げられたことにより、同感染症関連製品の需給動向に変化が生じたことから、販売計画の見直し等を行っております。なお、新型コロナウイルス感染症、及びインフルエンザの感染拡大によって、同感染症関連製品の需要は回復傾向を示しました。また、細胞加工事業においてはインバウンドの回復により、外国人患者による日本での細胞治療受診件数が急激に増加したことから、同事業における特定細胞加工物の製造受託数が計画を大きく上回って推移いたしました。これらの要因により、2023年11月に再度年度計画の修正を行っております。なお、新型コロナウイルス感染症関連棚卸資産につきましては、当第3四半期連結会計期間末の在庫数量、及び上記計画修正における同製品の販売数量見込み等により、同感染症関連棚卸資産の評価損284百万円を売上原価として計上しております。
以上の結果、当第3四半期連結累計期間の売上高は3,544百万円となり、営業利益は370百万円、経常利益は397百万円、親会社株主に帰属する四半期純利益は207百万円となりました。
セグメント別の経営成績を示すと、以下のとおりであります。
(組織培養事業)
当第3四半期連結累計期間における組織培養事業は、企業や大学、研究機関等において再生医療の研究開発や臨床試験が国内外で活発に実施されております。国内ではインバウンドによるメディカルツーリズムの拡大により、自由診療領域の医療機関における細胞治療用の培地の使用量が増加し、企業においても、再生医療市場の拡大に合わせ特注製品やOEM製造受託の需要が増加傾向にあります。
アジア圏での細胞治療の市場においても、日本同様に市場が拡大傾向にあることから輸出数量が増加するなど、総じて堅調な受注を獲得しております。
この結果、売上高は1,406百万円、セグメント利益(営業利益)は474百万円となりました。
(微生物事業)
当第3四半期連結累計期間における微生物事業は、細菌検査用培地について、医薬品など産業用途の培地売上が微増で推移しております。新型コロナウイルス感染症について、前述のとおり、同感染症関連棚卸資産の評価損284百万円を売上原価として計上しております。
この結果、売上高は1,233百万円、セグメント損失(営業損失)は178百万円となりました。
(細胞加工事業)
当第3四半期連結累計期間における細胞加工事業は、インバウンドによるメディカルツーリズムの急速な回復により、外国人患者検体の加工受託が増加し、国内患者による細胞治療も引き続き増加傾向にあることから、がん免疫、幹細胞ともに加工受託件数が大きく増加しております。
また、研究用試薬についても、化粧品原料やエクソソームの研究用途での需要拡大が続いているなかで、生産設備の増設による供給量の増加により、売上も拡大しております。
この結果、売上高は904百万円、セグメント利益(営業利益)は368百万円となりました。
当第3四半期連結会計期間における当社グループの財政状態は以下のとおりであります。
(資産)
当第3四半期連結会計期間末における流動資産は3,324百万円となり、前連結会計年度末に比べ154百万円減少いたしました。これは主に、細胞加工事業におけるインバウンド需要の回復による加工受託件数の増加等により、受取手形及び売掛金が168百万円、現金及び預金が119百万円増加した一方で、新型コロナウイルス感染症関連棚卸資産の評価損を計上したこと等により、原材料及び貯蔵品が262百万円、商品及び製品が141百万円減少したことによるものであります。
また、固定資産は3,003百万円となり、前連結会計年度末に比べ347百万円増加いたしました。これは主に、新型コロナウイルス感染症の抗原検査キットを安定供給する、という社会的責任を果たすため導入した製造設備、及び広島CPC開設に伴い購入した細胞培養設備102百万円等により有形固定資産が280百万円増加したことによるものであります。
この結果、当第3四半期連結会計期間末の資産は、前連結会計年度末と比べ193百万円増加の6,327百万円となりました。
(負債)
当第3四半期連結会計期間末における流動負債は2,361百万円となり、前連結会計年度末に比べ660百万円減少いたしました。これは、シンジケートローンの借換により1年内返済予定の長期借入金が712百万円減少したことによるものであります。
また、固定負債は782百万円となり、前連結会計年度末に比べ686百万円増加いたしました。これは主に、前述のシンジケートローンの借換により長期借入金が562百万円増加したこと、リース資産取得に伴って固定負債のその他に含まれるリース債務が123百万円増加したことによるものであります。
この結果、当第3四半期連結会計期間末の負債は、前連結会計年度末と比べ26百万円増加の3,143百万円となりました。
(純資産)
当第3四半期連結会計期間末における純資産は3,184百万円となり、前連結会計年度末に比べ166百万円増加いたしました。これは主に、親会社株主に帰属する四半期純利益207百万円の計上によるものであります。
第42期連結会計年度(自 2022年4月1日 至 2023年3月31日)
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末と比較して271百万円減少の1,462百万円となりました。
当連結会計年度の各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は、次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において営業活動の結果取得した資金は461百万円(前年同期比301百万円の収入減)となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益を1,244百万円(前年同期比322百万円の増加)稼得したこと、売上債権の減少による増加が300百万円(前年同期比539百万円の増加)あったものの、棚卸資産の増加による減少581百万円(前年同期比590百万円の減少)や、法人税等の支払額430百万円(前年同期比128百万円の支出増)があったことによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において投資活動の結果支出した資金は575百万円(前年同期比658百万円の支出増)となりました。これは主に、CDMO事業に係る施設及び機器等の購入に伴い、有形固定資産の取得による支出が560百万円(前年同期比358百万円の支出増加)あったことによるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において財務活動の結果支出した資金は172百万円(前年同期比187百万円の支出減)となりました。これは主に、短期借入れによる収入600百万円(前年同期比300百万円の収入増)があったものの、短期借入金の返済による支出300百万円(前年同期比300百万円の支出増)や、長期借入金の返済による支出409百万円(前年同期比252百万円の支出減)あったことによるものであります。
第42期連結会計年度(自 2022年4月1日 至 2023年3月31日)
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 金額は、製造原価によっております。
b 仕入実績
当連結会計年度における仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 金額は、仕入価格によっております。
当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 組織培養事業及び微生物事業については見込生産であり、該当事項はありません。
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1.主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合
当連結会計年度の㈱スギヤマゲン及び富士フイルム和光純薬㈱に対する販売高は、総販売高に対する割合が10%未満であるため、記載を省略しております。
当第3四半期連結累計期間における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 金額は、製造原価によっております。
当第3四半期連結累計期間における仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 金額は、仕入価格によっております。
当第3四半期連結累計期間における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 組織培養事業及び微生物事業については見込生産であり、該当事項はありません。
当第3四半期連結累計期間における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1.当第3四半期連結累計期間において、販売実績に著しい変動がありました。詳細は「第2 事業の状況 4経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析(1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりであります。
2.主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合については、総販売実績に対する割合が10%以上を占める相手先がいないため記載を省略しております。
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は、次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものであります。
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。
当社グループの連結財務諸表を作成するに当たり重要となる会計方針については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載のとおりであります。
経営成績に重要な影響を与える要因については「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。
経営戦略の現状と見通しおよび経営者の問題認識と今後の方針については「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおりであります。
財政状態とそれらの要因については、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ① 財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりであります。
b. 経営成績
第42期連結会計年度(自 2022年4月1日 至 2023年3月31日)
(売上高)
売上高は、4,742百万円(前年同期比20.2%の増加)となりました。これは主に、微生物事業において、新型コロナウイルス感染症の感染拡大による影響で抗原検査キットの製造・販売が大きく増加したことに加え、細胞加工事業において、国内患者による細胞治療が増加傾向にあることで、幹細胞治療の加工受託件数が増加したためであります。
売上原価は、2,288百万円(前年同期比20.0%の増加)となりました。売上原価率は48.3%となり、前連結会計年度と比して差はありませんでした。主な要因としては、利益率の高い抗原検査キットの売上が好調だった一方で、原油価格の高騰などにより水道光熱費が増加したことが挙げられます。
販売費及び一般管理費は、1,186百万円(前年同期比10.9%の増加)となりました。これは主に、抗原検査キットの販売増加に伴って運送費用が増加したことによるものです。この結果、営業利益は1,267百万円(前年同期比30.7%の増加)となりました。
営業外損益は、受取賃貸料11百万円と持分法による投資利益10百万円により営業外収益は25百万円となり、また、支払利息32百万円により営業外費用は48百万円となりました。この結果、経常利益は1,244百万円(前年同期比35.6%の増加)となりました。
(親会社株主に帰属する当期純利益)
法人税、住民税及び事業税を432百万円、法人税等調整額を△18百万円計上した結果、親会社株主に帰属する当期純利益は829百万円(前年同期比41.2%の増加)となりました。
第43期第3四半期連結累計期間(自 2023年4月1日 至 2023年12月31日)
(売上高)
売上高は、3,544百万円となりました。これは主に、メディカルツーリズムの回復による細胞加工及び細胞治療用の培地需要が増加した一方で、新型コロナウイルス感染症の抗原検査キット及びウイルス輸送液の需要が減少したことによります。
売上原価は、2,234百万円となり、売上原価率は63.0%となりました。これは主に、前述のとおり新型コロナウイルス感染症関連棚卸資産の評価損284百万円を売上原価として計上したことによります。
販売費及び一般管理費は、939百万円となりました。これは主に、CDMO事業に関するCPC施設の建設及び新規設備の導入により、減価償却費が増加したことによります。この結果、営業利益は370百万円となりました。
営業外損益は、主に持分法による投資利益51百万円により営業外収益は66百万円となり、また、支払利息16百万円と支払手数料21百万円により営業外費用は39百万円となりました。この結果、経常利益は397百万円となりました。
(親会社株主に帰属する四半期純利益)
親会社株主に帰属する四半期純利益は207百万円となりました。
a. キャッシュ・フローの状況
キャッシュ・フローの状況とそれらの要因については、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
b. 資本の財源及び資金の流動性
当社グループの当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は1,462百万円となっており、主に製品製造に必要な原材料の仕入及び生産設備の維持管理費用、従業員に支払う給与、各事業所等の賃借料等といった事業成長に伴う運転資金、並びに新規事業案件への投資に備えております。なお、資金調達の機動性及び安定性の確保を目的として、取引金融機関と当座貸越契約を締結しております。
当社は、2023年9月26日付で、株式会社埼玉りそな銀行をアレンジャーとして金銭消費貸借契約書を締結いたしました。契約の概要は、以下のとおりです。
当社グループの研究開発活動は設立以来、高品質な製品の大量安定供給をし続けるために顧客第一主義及び品質第一主義の製品を開発することに加え、バイオテクノロジーの発展に貢献すべく日々研究を積み重ねております。
研究開発体制は、当社の研究開発部門と大学や国の研究機関とが密接な連携・協力関係を保ち、効果的かつ迅速的に活動を推進してまいります。
第42期連結会計年度(自 2022年4月1日 至 2023年3月31日)
当連結会計年度における当社グループが支出した研究開発費の総額は
セグメントごとの研究開発活動を示すと次のとおりであります。
当セグメント分野では、再生医療及びその基礎研究に利用される幹細胞、神経細胞、表皮細胞等のヒトの細胞をターゲットとした培養液並びに、CHO細胞、HEK293細胞といったバイオ医薬品の生産に利用される産業用途の培養液の研究開発活動を行っております。
当連結会計年度においては、2022年9月にハイブリドーマ用無血清培地『KBM353』、2022年12月に間葉系幹細胞用の動物成分不含培地『KBM ADSC-5』を上市いたしました。現在、ヒトリンパ球用無血清培地『KBM591』及びCHO細胞用無血清培地『KBM 250 SC』の上市に向け準備を進めております。
中長期的な研究といたしましては、HEK293用無血清培地、昆虫細胞用CD培地、VERO細胞用無血清培地、MDCK用無血清培地を行っております。
当連結会計年度における研究開発費の金額は
当セグメント分野では、臨床分野の病原菌検査に使用される細菌検査用培地や体外診断用医薬品(イムノクロマト製品)の研究開発活動を行っております。
当連結会計年度においては、2022年7月、SARSコロナウイルス抗原検査キット『KBMラインチェックnCoV』が体外診断用医薬品として承認され、同年12月に上市いたしました。ケースタイプのデバイスを採用した新型コロナ抗原検査キットの新製品となります。また、一般用SARSコロナウイルス抗原検査キット『KBMラインチェックnCoV(一般用)』及び一般用SARSコロナウイルス・インフルエンザウイルス同時検出抗原検査キット『KBMラインチェックnCoV/Flu(一般用)』の上市に向け準備を進めております。
当連結会計年度における研究開発費の金額は
当セグメント分野では、再生医療の普及に向け、新しい細胞種の培養プロセスを構築し、それを基に新たな細胞治療の導入を目指しております。これまでの細胞培養技術を応用させ、各細胞の機能や性能を解明させ理解し、製品開発に向けた取組を行っています。
当連結会計年度においては、細胞治験薬の開発・受託製造をするためのCPC及び関連設備を設置いたしました。
共同研究といたしましては、現在、新潟大学 医歯学総合病院 高度医療開発センターのグループ及びノーベルファーマ株式会社と共同で、骨膜細胞を利用した顎骨再生に関する再生医療等製品の開発を実施しております。また、三重大学大学院 医学系研究科 個別化がん免疫治療学のグループ及び三重大学発ベンチャー企業であるティーセルヌーヴォー株式会社と共同で、三重大学で開発された固形がんを標的としたMAGE-A4 CAR-T細胞の調整方法及び品質管理システムの基盤技術の構築に関する研究を実施しております。
当連結会計年度における研究開発費の金額は
第43期第3四半期連結累計期間(自 2023年4月1日 至 2023年12月31日)
当第3四半期連結累計期間の研究開発費の総額は
セグメントごとの研究開発活動を示すと次のとおりであります。
当セグメント分野では、再生医療及びその基礎研究に利用される幹細胞、神経細胞、表皮細胞等のヒトの細胞をターゲットとした培養液並びに、CHO細胞、HEK293細胞といったバイオ医薬品の生産に利用される産業用途の培養液の研究開発活動を行っております。
当第3四半期連結累計期間においては、2023年7月にバイオ医薬品の開発と生産に使われているCHO細胞用の液体培地『KBM250SC』、2023年8月に動物幹細胞用培地、2023年9月にCHO細胞用粉末培地を上市いたしました。現在、CHO細胞用Feed粉末培地、昆虫細胞用CD培地『KBM730』、YEフリー昆虫細胞用培地の上市に向け準備を進めております。
中長期的な研究といたしましては、CHOトランスフェクション用液体培地、HEK293(ヒト胎児の腎由来細胞株)用培地、ハイブリドーマ(複数の細胞が融合した細胞)用培地用添加剤を行っております。
当第3四半期連結累計期間における研究開発費の金額は
当セグメント分野では、臨床分野の病原菌検査に使用される細菌検査用培地や体外診断用医薬品(イムノクロマト製品)の研究開発活動を行っております。
当第3四半期連結累計期間においては、2023年4月に一般用SARSコロナウイルス抗原検査キット『KBMラインチェックnCoV(一般用)』が一般用検査薬・第一類医薬品として承認され、同年5月に上市いたしました。また、2023年7月に一般用SARSコロナウイルス・インフルエンザウイルス同時検出抗原検査キット『KBMラインチェックnCoV/Flu(一般用)』も一般用検査薬・第一類医薬品として承認されております。両製品ともに薬局やドラッグストア及びインターネット等で販売可能な新製品となります。現在、肺胞蛋白症の診断に用いる為の抗GM-CSF自己抗体測定キット『KBMラインチェックAPAP』の上市に向け準備を進めております。
当第3四半期連結累計期間における研究開発費の金額は
当セグメント分野では、再生医療の普及に向け、新しい細胞種の培養プロセスを構築し、それを基に新たな細胞治療の導入を目指しております。これまでの細胞培養技術を応用させ、各細胞の機能や性能を解明させ理解し、製品開発に向けた取組を行っています。
当第3四半期連結累計期間においては、前連結会計年度に続き三重大学大学院 医学系研究科 個別化がん免疫治療学のグループ及び三重大学発ベンチャー企業であるティーセルヌーヴォー株式会社と共同で、三重大学で開発された固形がんを標的としたMAGE-A4 CAR-T細胞の調整方法及び品質管理システムの基盤技術の構築に関する研究を実施しております。
当第3四半期連結累計期間における研究開発費の金額は