文中の将来に関する事項は、提出日現在において、当社が判断したものであります。
(1) 経営方針
当社は、「ゼロからイチを創る ~常識を疑い、組織力で難しい課題に挑戦する~」という経営方針のもと、日本のものづくり企業として、グローバルで成長することを目指しております。そのために、航空機エンジン部品に代表される難易度の高いものづくりに取り組むとともに、最先端技術の開発やイノベーションを推進しております。
(2) 経営環境
航空輸送業界は、新型コロナウイルス感染症による航空旅客需要の急激な減少に伴い甚大な影響を受けましたが、移動制限の緩和が進むにつれ航空旅客需要は急激に回復し、2024年には新型コロナウイルス感染症発生前の水準にまで回復するとともに、今後は長期にわたり成長することが見込まれております。
また、昨今多くの航空会社は大型機を活用し、主要空港などの大規模拠点(ハブ)に輸送を集中させ、そこから中小型機を活用して各拠点(スポーク)に輸送を行うハブアンドスポーク方式ではなく、中小型機等を活用し、出発地から目的地に直接輸送を行うポイントトゥポイント方式を採用する傾向があります。これは、エンジン性能の向上による規制緩和や、中小型機の燃費向上に伴う長距離飛行の実現に伴い、ポイントトゥポイント方式の方が、乗換等の手間が不要で柔軟なフライト設定が可能となるためであります。こういった背景により、中小型機である仏Airbus社製A320neoファミリー、並びに米Boeing社製737MAXについては、2023年の年間引渡機数がそれぞれ、571機、387機に対し、2024年6月末時点での受注残高機数は、それぞれ7,666機、5,145機となり(出所:一般社団法人日本航空機開発協会)、受注残高機数は年間引渡機数に対して10年を超えるほどの水準となり、今後も生産を拡大することが見込まれております。仏Airbus社、並びに米Boeing社は、これらの需要に対応するために増産に向けて取り組んでおり、両機種には当社製品が搭載されるLEAPエンジンが採用されていることから、当社のチタンアルミブレードの需要も増加することが見込まれます。
しかしながら、航空業界は、新型コロナウイルス感染症による影響を発端としたサプライチェーンの毀損や人手不足等を要因として、当初想定ほど、生産拡大は順調に進捗しておりません。また、737MAXについては、品質問題等を起因として、生産拡大に一定の時間がかかることが想定されます。
また、航空業界では2050年のカーボンニュートラル実現を目指し、機体メーカー及びエンジンメーカーにおいてCO2削減に向けた取り組みが加速しております。今後、CO2削減に向けた取り組みが、当社を含めたサプライチェーン全体で更に求められることになると考えられます。
(3) 中期経営戦略
当社は、仏SAFRAN社との契約に基づき、LEAPエンジンに搭載されるチタンアルミブレードの量産加工・販売を主たる事業としております。仏SAFRAN社は、拡大する航空機需要に対応するため、LEAPエンジンの生産能力増強を進めております。他産業と比較して高い品質水準が求められる航空機関連部品の量産には、サプライヤーにも高い技術力や品質保証力が要求されることから、長期的に高品質な部品を安定供給可能なサプライヤーを確保する動きが強まっております。特にチタンアルミブレードは、当社を含め、世界で2社のみが供給していることから、LEAPエンジンの生産拡大には、当社の生産能力の拡大が不可欠となります。そうした中、当社の量産実績、生産性向上への取組み、品質水準、技術開発に基づく提案、並びにこれらを支える組織体制等を評価頂き、2024年10月にSAFRAN社との間で供給期間の延長、マーケットシェアの拡大等に関する更新契約を締結(効力発生は2024年7月1日)する予定です。
当社は、会社設立後、品質を維持しながらも、効率的な生産工程の構築、設備の自動化や内製化等、生産体制の最適化を進めてまいりました。その結果、今回のマーケットシェア拡大に対応可能な生産キャパシティを確保できており、大型の設備投資を実施せずに生産を拡大することが可能と考えております。チタンアルミブレ―ド自体の需要拡大、並びに今回のマーケットシェアの拡大を、大型の設備投資を抑制しながら対応することで、固定費の増加を抑え、また、技術的な改善を更に行うことで収益力の拡大を図っていきたいと考えております。
また当社は、航空業界全体で求められるCO2排出量削減を重要なサステナビリティ課題と認識し、CO2削減に向けて継続的に取り組んでまいります。
一方で、当社はチタンアルミブレードの販売への依存度が高いことから、チタンアルミブレード量産加工で得た技術・経験、並びに資金を活用し、新たな航空機部品の量産案件の獲得を進めてまいります。航空機案件は初期投資が高く、また、量産立上までに時間はかかりますが、量産化が進むと、資金を長期に渡って獲得し続けることが可能となります。また、航空機業界以外の量産案件も、当社の技術との適合性、魅力を考慮しながら、獲得を進めていく計画であります。
次にマーケット需要を見据えながらも、先端研究開発を積極的に進めていくことにより、製造業として長期的な収益力の基盤を構築したいと考えております。現状、チタンアルミブレードの新材料の開発を進めておりますが、それ以外にも、AM(Additive Manufacturing、積層造形、いわゆる3Dプリンタ)技術、並びにAM技術を活用したチタンアルミブレードのMRO(整備・補修・オーバーホール)についても技術・事業開発を進めております。AM技術は製造業の考え方を大きく転換させる可能性があり、将来の製造業のあるべき姿を常に検討しながら、研究開発を推進してまいります。
(4) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社では、売上高、営業利益、EBITDAを重要な経営指標として管理しております。
当社は、企業として一定程度の売上高規模を確立し、事業基盤の安定性を確保するとともに、安定した利益の成長を継続させることで、新規案件への投資を継続的に行うことが重要であると考えております。
一方で、当社は、チタンアルミブレード販売への依存度が高く、事業ポートフォリオ及び収益源の多様化を図り、特定製品への依存度を下げることが、永続的に成長を続けるためには不可欠であると考えております。そのためには、チタンアルミブレード以外の売上拡大を図ることが必要となりますが、新規量産案件拡大のためには、設備投資等の初期投資が発生し、一時的な利益率の低下を招くことが想定されております。新規量産案件の獲得による売上の拡大と、利益のバランスを考慮しつつ、永続的な企業価値の向上を図ることが、現時点においては重要であると考えられることから、当社は売上高及び営業利益を重要な経営指標として位置付けております。
また、当社は、設立時に主要事業であるチタンアルミブレードの増産に対応できる水準の生産キャパシティを考慮した設備投資を実施していることから、チタンアルミブレードの今後の増産に対応するための大規模設備投資は今後も限定され、現時点において、既に将来の増産に対応する水準の減価償却費が会計上計上されていると考えております。そのため、当社の収益性や現金創出力をより適切に把握するために、減価償却費の影響を排除した指標であるEBITDAを重要な経営指標として管理しております。
(5) 優先的に対処すべき事業上の課題
① 原価低減と生産効率の向上による利益及びキャッシュ・フローの創出
新型コロナウイルス禍からの航空機需要回復によるチタンアルミブレードの需要拡大に伴い、当社の売上高は増加するとともに、新型コロナウイルス禍において積極的に取り組んだ工程の自動化、内製化、その他原価低減活動やトヨタ生産方式の実践により、当社の損益分岐点は新型コロナウイルス発生前から大きく低減しました。その結果、当社は、当事業年度まで2期連続で営業利益を計上しておりますが、それ以前は、設立以降継続して営業損失を計上しておりました。
また、チタンアルミブレード生産に関しては、今後の増産に対応する設備投資が一巡しており、大型の設備投資が不要であること、また、材料費が無償支給であること等による低い変動比率から、売上拡大時には利益を出しやすい体質を構築しております。一方で、製造業にとって品質を維持しながらの原価低減、並びに生産の効率化は常に追求する必要があります。当社では、この課題に取り組むため、より一層の生産性の向上及び生産体制の構築に努め、中長期での利益及びキャッシュ・フローの最大化を推進してまいります。
② 収益の多様化
現在、当社の収益の大半が仏SAFRAN社に対するLEAPエンジン向けチタンアルミブレードの生産・販売から成り立っております。収益の多様化を図るためにも、チタンアルミブレードの加工で培った技術・経験、並びにAM(Additive Manufacturing、積層造形、いわゆる3Dプリンタ)技術等を活用し、新たな量産案件の獲得に積極的に努めてまいります。
③ 環境問題への取組
当社は、環境問題に積極的に対応するため環境マネジメントシステムの国際規格「JISQ14001」の認証を取得しております。また、製品の品質保証と顧客満足度の向上を目的に、航空宇宙・防衛産業に特化した品質マネジメントシステムの国際規格「JISQ9100」の認証を取得しております。
一方で、航空産業においては、機体メーカーやエンジンメーカーが、カーボンニュートラル実現に向けたCO2削減への取り組みを強化しており、サプライヤー全体でCO2削減を実現することが求められております。当社は、気候変動に係るリスク及び収益機会が当社の事業活動や収益等に与える影響について、必要なデータの収集と分析を行い、環境問題に向けた取り組みを加速してまいります。
④ 技術の開発
当社が、加工技術で今後も競争優位を発揮し、収益性を維持するためには、新たな技術を取り入れることが不可欠であります。また、収益の多様化を図るために、新材料やAM等、新たな技術の開発を取り入れていくことも必要であります。当社は、積極的に新たな技術の開発を行い、技術的優位性及び収益の多様化を図ってまいります。
⑤ 人財の採用育成
当社が、新たな技術開発や新たな案件に取り組むためには、優秀な人財の確保と育成が不可欠であります。当社は、新規採用を強化するとともに、育成とフォローアップ体制の整備を充実させることにより人財のスキルアップと組織の活性化を図ってまいります。
⑥ 資金調達と財務基盤の安定性の確保
当社は、LEAPエンジン向けチタンアルミブレード生産においては設備投資が一巡しているものの、収益の多様化実現に向け、新規案件を拡大するためには、新たな設備投資が不可欠となります。
当社は、収益多様化に向けた新たな設備投資を実行できるように、内部留保の確保と株主還元の適切なバランスを検討し、財務内容の最適化に努めてまいります。また、金利上昇下でも資金調達に支障をきたさぬように、金融機関との連携を密にしてまいります。
⑦ 内部管理体制の強化とコーポレート・ガバナンスの充実
当社は、持続的な成長と企業価値の向上のため、内部管理体制の充実が不可欠であると認識しており、役職員のコンプライアンス意識の向上、当社の取引態様に即した内部管理体制の構築など、コーポレート・ガバナンス体制の強化に取り組んでまいります。
当社のサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。
(1) サステナビリティに関する基本方針
当社は、「イノベーションで人と地球を美しく」というミッションステートメントの下、より美しい社会の実現のために、常にイノベーションを追求し、新たな技術、製品、並びにサービスを創造・提供し続けることを目指しており、これらを実践することがサステナビリティ経営そのものであると考えております。これらの実現に必要な企業の持続的な成長と中長期的な企業価値向上のためには、ステークホルダーとの協働が必要不可欠であると認識しており、ステークホルダーとの建設的な対話、公平・公正かつ透明性の高いガバナンスの実現、人権・環境・多様性への配慮により、人と地球の環境を大切にする社会の実現に貢献してまいります。
(2) ガバナンス
当社は、サステナビリティに関する事項について、迅速な対応を行うために社内マネジメントメンバーで構成される経営会議において、審議・検討しております。これらの審議結果は、経営戦略やリスク管理・評価に反映するとともに、経営計画や目標に落とし込み、それに基づき各部門で必要な施策を実行しております。これらの進捗状況は、部門目標管理により把握するとともに、代表取締役社長は定期的に実施されるマネジメントレビューにより、その有効性を評価し、改善指示を行っております。このような活動の中で、経営に影響を与える重要事項については取締役会に報告し、必要な審議を実施しております。
(3) リスク管理
当社はリスク管理の統括機関として「リスク・コンプライアンス委員会」を設置し、代表取締役社長を議長として、リスクの対応方針や課題について、優先度を選別・評価し迅速な意思決定を図っています。特定した気候変動に関するリスク及び機会は経営方針のなかで課題化し、全社で取組んでいます。また、JISQ14001に準拠した環境マネジメントシステム活動の一環で行うリスクアセスメントにより抽出した著しい環境側面を特定し、想定される緊急事態に対応する手順書の整備や訓練の実施、さらに必要な対策を施すことでリスクそのものの低減を計画的に進めております。
(4) 戦略並びに指標及び目標
① 気候変動への対応
2019年の国際航空分野におけるCO2排出量は、世界全体の約1.8%(6.2 億トン)(出典:国土交通省航空局「航空脱炭素化の取組の進捗について)を占めており、国際民間航空機関は2022年10月の総会において、2050年までのカーボンニュートラルを目指す脱炭素化長期目標を採択する等、航空機産業においても脱炭素化の取組みが加速しています。航空機の運航分野におけるCO2排出量削減には、機体や装備品の軽量化による燃費性能の向上が求められる中、当社が製造するチタンアルミブレードは、従来のエンジンに使用されていたニッケル基合金に比べ重量は約半分であるため、エンジンの軽量化につながっています。このチタンアルミブレードが搭載されたLEAPエンジンは、他の新技術も組み合わせることで、従来のエンジンに比べて消費燃料とCO2排出量の15%、窒素酸化物排出量の最大50%削減を実現しています。当社は、今後もLEAPエンジン向けにチタンアルミブレードを供給することで、航空機産業の気候変動対策に貢献してまいります。
また、このような中で当社の主要顧客である仏SAFRAN社が、自社のScope1、並びにScope2を2025年までに30%、2030年までに50%削減を目指す(2018年比)ことを宣言しました。当社としてはその取り組みに賛同し、社会から信頼される企業を目指していくため、社内で環境監視プロジェクトに加え、Carbon Neutral Projectを立ち上げ、部門横断で環境保護に取り組んでいます。
(環境監視プロジェクト)
省エネ法及びJISQ14001環境マネジメントシステムに準じた活動を推進する組織です。事業活動に伴うエネルギー使用の合理化による省エネルギー対策、廃棄物排出量の削減対策を推進し、従業員への周知及び教育を実施しています。
(Carbon Neutral Project)
カーボンニュートラルの実現に向けた中長期的な目標や方針の決定及び課題の特定、並びにこれらに関する施策を打つとともに、活動のモニタリングを行っています。2050年に向けたカーボンニュートラルをはじめとした環境問題への対応はもとより、グローバル動向や法規制を踏まえた中長期的な視点で取り組みを推進しています。
これらの活動に基づき、GHGプロトコルに基づくCO2排出量の算出を行い、CO2削減のための具体的な方法を検討し、当該内容を事業計画策定に反映させることとしております。具体的には、CO2削減のために、グリーンエネルギーの活用、最適な加工方法による電力利用量の削減、加工過程で排出される産業廃棄物のリサイクル、新材料開発によるサプライチェーン全体でのCO2の削減といった取り組みを実施しております。
これらの活動により、2050年に事業活動に伴うCO2排出量(Scope1、Scope2)の実質ゼロ(カーボンニュートラル)に向けて、2018年度のCO2排出量に対し、2025年度の主要製品の原単位排出量30%、2030年の主要製品の原単位排出量、及び総排出量の50%削減を目指します。
<CO2排出削減目標>
・2025年度末までに2018年度比でCO2排出量30%削減(原単位)
・2030年度末までに2018年度比でCO2排出量50%削減(原単位&総量)
<CO2排出実績>
※1 原単位の分母は売上高(百万円)です。
※2 2023年6月期のScope1及びScope2排出量(総量)は、一般社団法人日本能率協会より第三者保証を受けています。
※3 2024年6月期のCO2排出実績に関しては、算出に使用している2024年4月から2024年6月までの排出係数が未公表のため、2024年3月の排出係数を使用して算出しております。当該期間の排出係数が公表後、再算出した際にCO2排出実績が変更される可能性があります。
② 人的資本経営の推進
当社は、チタンアルミブレードの量産・販売を主たる事業としておりますが、現状では、当該事業への依存度が高く、この依存度低減のためには、チタンアルミブレード以外の新規量産案件等の拡大が不可欠であります。一方で、当社が属する航空機エンジン業界は、グローバル企業が主要プレイヤーであり、そういった企業と取引を継続・拡大していくためには、当社においても様々な領域でのグローバル人財を拡充する必要があります。また、ものづくり企業として、優位性を確保するためには、技術者を含めたエンジニアの拡充も不可欠であります。これらを達成するために、当社は、グローバル人財並びに本社工場が拠点とする地域での優秀な人財の獲得と育成を推進し、これらの人財が働きやすい環境を提供することが企業価値向上のためには必要であると考えております。当社は上記の方針に基づき、人財育成及び社内環境の整備を以下のとおり実施しております。
・人財育成
当社は、入社時研修や階層別研修、昇格者研修など、各種教育プログラムを体系的に実施することにより、各階層で求められる人財の育成を行うとともに、管理職向けのマネジメント研修等を実施することで、グローバル人財の育成を推進しております。また、機械保全技能士等の数十種におよぶ技能検定や各種資格取得を奨励しており、資格取得報奨金制度を設けることで、技術職を初めとした従業員の自己啓発に対する支援を行っております。また、製造業である当社は、日々の改善活動が企業価値や現場力の向上に重要であると考えております。そのため、職種に関わらず全従業員が参加する改善提案活動を展開しており、従業員の業務スキルを全方位的に高めることで、人財育成と生産性向上の両立を推進しております。具体的には、改善提案制度を導入し、改善提案の効果を確認し、その効果に応じた報酬を社内仮想通貨である「EdgeCoin」として活動に取り組んだ従業員へ付与しています。改善事例や成果は、図や写真を活用して可視化した資料を社内に掲示することに加え、報告会を通じて社内全体に共有するとともに、年間を通して活動件数が多い従業員と、優れた提案をした従業員を「改善活動AWARD」として顕彰し、従業員の活動への参加意欲向上を図っております。なお、当社では、新卒入社者の受入れを増加させていくことを計画しており、若年者への人財育成施策を更に充実させて、社員の成長を促進してまいります。
・社内環境整備
当社は、「ゼロからイチを創る」という経営理念に基づき、従業員一人ひとりが挑戦をすることが会社の持続的な成長に不可欠であると考えております。そのためには、多様な人財がそれぞれの能力を存分に発揮できる職場環境が必要であり、社歴、年齢、国籍、性別等に関係なく、本人の努力によって、平等に活躍の機会が得られるような人事制度となっております。また、リモートワーク導入等による柔軟な就労環境の整備や、定期的な1on1面談の推奨により、上長との対話機会を増やすことで、キャリアプランや働き方に関して、相談やサポートを受けやすい環境を整えています。
女性活躍推進の観点からは、製造工程の自動化等を積極的に開発・導入することで、性別を問わず製造に携わることができる仕組みを推進しています。また、産休・育休を取得しやすい職場環境を整備することで、妊娠や出産といったライフイベントによる女性社員の離職を無くすことを目指しております。
目標としては、女性従業員比率を2026年までに35%(2024年6月末現在24.2%)、年休取得率を2025年6月期末までに全従業員平均70%以上(2024年6月末現在76.4%)と設定しております。当社は、今後も女性、外国籍の方、高齢者、障害をお持ちの方など、多様な人財の採用を継続し、多様な方々が働きやすく、存分に活躍できる環境整備を進めてまいります。
本書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
当社は、これらのリスクの発生可能性を十分に認識した上で、発生の回避及び発生した場合の対応に努める方針であります。そのためのリスク管理体制としては、リスク管理規程を定め、四半期に一回(必要に応じて適宜)代表取締役、常勤取締役及び常勤監査役等で構成されるリスク・コンプライアンス委員会を開催し、リスクの調査、網羅的認識及び分析、各種リスクに関する管理方針の協議及び決定等を行うとともに、それら内容については、適宜取締役会にて報告が行われております。
なお、本項目の記載は全てのリスクを網羅したものではなく、業績等に影響を与えるリスクは下記項目に限定されるものではありません。また、文中における将来に関する事項については、提出日現在において当社が判断したものであります。
① 主要な事業活動の前提となる事項、並びに特定の取引先及び製品への依存について(顕在化の可能性:中、顕在化の時期:長期、影響度:大)
当社は、航空機である仏Airbus社製A320neoファミリー機及び米Boeing社製737MAX機に搭載されるLEAPエンジンの構成部品であるチタンアルミ製低圧タービンブレードの生産・販売を主たる事業活動としており、当該部品を仏SAFRAN社へ販売しております。当社は、当該チタンアルミブレードの販売契約を同社と下記のとおり締結しておりますが、当社の売上高に占める同社、並びに同製品(関連売上を含む)への売上高の割合は2024年6月期において97.2%となっており、同社、並びに同製品への取引依存度が高い水準にあります。そのため、当社は、当該販売契約を事業に関わる重要な契約であると認識しております。
当該契約において、仏SAFRAN社はLEAPエンジンの生産に必要なチタンアルミブレードの総量の35%分(以下、マーケットシェア。2024年10月締結予定の購買契約の改定により、2024年7月1日に遡ってマーケットシェアは40%に変更となる予定)を契約期間中に渡って、原則として契約に定められた価格(販売年度に応じて変動。また、一定の為替レートレンジを超えた場合にも変動)で当社に発注することが定められております。但し、同社からは一定期間の発注見込数量が提示されますが、当該見込数量は保証されているわけではなく、確定発注数量は数週間分のみとなり、最低発注数量等も定められておりません。また、当該契約期間終了に伴う更新は自動で行われるわけではありません。
当社が(a)契約不履行や破産等した場合、(b)当社の支配株主が同社の競合企業となった場合、(c)LEAPエンジンの事業主体が変更された場合、(d)同社がオフセット取引(特定の国に製品を購入してもらう見返りに、技術移転や経済発展等を目的として、当該国での現地生産を行うといった取引)を実行する場合、(e) 当社とマーケットシェアや地理的条件が同じ前提において、価格・品質・生産体制面で、当社より一定水準以上の優位な競合先が発生した際に、当社が追随できない場合には、当該契約が終了、もしくはマーケットシェアが減少する可能性があります。また、LEAPエンジンの生産が何らかの理由で一時中断となった場合は、同社は当社の生産ラインの一時中断を要求することができ、その際の経済的保証はないことが定められています。但し、上記(e)の事象が発生した場合に、同社はマーケットシェアを削減する権利を有する一方で、当該権利を行使することにより、当初のマーケットシェアの一定水準以上を削減する場合は、同社は一定の損害補償を当社に対して行うことが定められております。
なお、現時点において、上記記載の契約終了やマーケットシェアの変更等に影響を与える事象は発生しておりません。
当社は、契約期間の延長やマーケットシェア拡大について、SAFRAN社と2024年10月に契約を改定する予定であり、同社から一定の評価を得ているものと考えられること、また、高い品質が求められる航空機エンジン部品製造の参入障壁は他業界と比較して高く、競合が参入しにくいことから、今後も取引を継続できるものと考えておりますが、もし、上記記載の契約終了やマーケットシェアの変更に該当する事象が発生した場合は、当社の業績、財務状況等に大きな影響を及ぼす可能性があります。
また、当社製品が搭載される航空機等に重大な不具合や事故が発生した場合、その原因究明及び安全性の確認のため同型式航空機の運航を見合わせることや、航空機等に安全性を著しく損なう問題が発生した場合は、各国において、安全性が確認されるまで同型式航空機の運航が認められない場合があります。
これにより、当該機体の生産計画の変更、生産停止などが発生した場合、当社の業績、財務状況等に大きな影響を及ぼす可能性があります。なお、米Boeing社は、737MAX機について、2024年1月に発生した品質トラブルを要因として、米連邦航空局から生産拡大を一時停止するように指示されており、一定期間、生産数の拡大よりも品質改善に注力することを発表しております。もし、当該品質改善への対応が長期化し、生産が停滞した場合等は、当社の業績、財務状況等に大きな影響を及ぼす可能性があります。
当社は、引き続き同社が満足する製品を供給し、グローバル航空機エンジンメーカー大手である同社との取引関係を強化していく方針でありますが、同社、並びに同製品への依存度を引き下げるため、他の航空機エンジン部品等、当社の強みを発揮できる分野での新規量産案件の拡大に努めてまいります。
② 経済動向の悪化について(顕在化の可能性:中、顕在化の時期:特定時期なし、影響度:中)
当社の売上高の多くは航空機エンジンに使用される部品販売で構成されています。航空機業界は経済・マクロ動向の影響を受けやすく、世界的な景気悪化や国際紛争・テロの発生、感染症の流行等による旅客需要の減少や原油価格の高騰により、エアラインや航空機メーカー等の業績や経営基盤が悪化した場合、当社の受注高や売上高の減少など、当社の財政状態、経営成績等に悪影響を及ぼす可能性があります。
③ 原材料の代替について(顕在化の可能性:高、顕在化の時期:短期、影響度:大)
当社の売上高の多くを占める航空機エンジン用のチタンアルミブレードの材料は、仏SAFRAN社からの無償供給となっております。そのため、直接的に当該資材等の価格が当社の業績に影響を与えることはありませんが、この原材料については、その特殊性から供給元が限定されるものとなっており、供給者における事故や品質上の問題、あるいは国際情勢の悪化等により供給不足及び納入の遅延等が発生した場合は、生産スケジュールの遅延に伴う売上や利益の減少による業績の悪化、また、それに伴う売上入金の減少による資金繰りの悪化等、当社の業績、財務状況等に大きな影響を及ぼす可能性があります。過去においても、当該材料の供給元における新型コロナウイルス等に起因する人財不足や設備故障の発生等による材料の供給遅延が発生しており、当社の生産数量に一定の影響を与えております。
当社は、当該材料供給の影響を最小限にするために、あらかじめ余剰材料を供給することを顧客へ要請し、また材料の直接購買による材料調達の柔軟化や、新たな材料の開発に努めてまいります。
④ 為替レートの変動について(顕在化の可能性:中、顕在化の時期:特定時期なし、影響度:大)
当社の売上高の多くを占める航空機エンジン用のチタンアルミブレードは、米ドルによる外貨建て取引により輸出販売しております。2024年10月に予定しているSAFRAN社との契約改定において、為替レートの影響をヘッジするために、一定の為替レートレンジを超えて円高になった場合には、一部販売価格を引き上げ、円安になった場合には、一部販売価格を引き下げる契約を締結しましたが、一定の為替レートレンジ内においては、引続き為替変動による影響を受けやすくなっております。また、当社は副資材等については、一部輸入によって調達していますが、輸出に対する輸入の割合は低いものとなっております。そのため、当社の業績は、為替相場の円高局面ではマイナスに、円安局面ではプラスにそれぞれ影響を受け、想定を超えた為替レートの変動があった場合には、当社の業績、財務状況等に大きな影響を及ぼす可能性があります。
当社は、これらの為替変動の影響を最小限にするため、為替予約取引等により、為替変動リスクのヘッジに努めてまいります。
⑤ 自然災害等の影響について(顕在化の可能性:低、顕在化の時期:特定時期なし、影響度:大)
当社の生産拠点である工場は、栃木県に1か所のみであります。そのため、栃木県において大規模災害が発生した場合や、工場での事故や火災が発生した場合には、生産設備の破損、物流拠点の麻痺等が生じ、生産拠点の操業停止等、当社の生産体制が重大な影響を受け、当社の財政状態、経営成績等に重要な影響が及ぶ可能性があります。
当社は、自然災害等の事象が発生する場合に備えて、事業継続計画(BCP)を策定し、一部工程について外注先を確保するとともに、可能な限り最短での生産復帰が可能となるように、生産復帰までのマニュアルの作成や、社内研修等を実施することで、業務中断に伴うリスクを最小限に抑えるように努めてまいります。
⑥ 製品品質や安全について(顕在化の可能性:低、顕在化の時期:特定時期なし、影響度:中)
当社は、品質や安全に関する法令・規則の遵守及び製品品質や信頼性の向上に努めております。しかしながら、万一、製品に起因する品質上・安全上の問題により大規模なリコールや賠償請求に発展する場合は、多額のコストの発生につながり、当社の信用低下や財政状態、経営成績等に悪影響を及ぼす可能性があります。また、顧客との契約上の保証条項の内容においても、支払補償費などの発生費用により当社の信用低下や財政状態、経営成績等に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社は、当該リスクを防止するため、品質や安全に関する管理基準の適切な運用を実施しております。具体的には、航空品質認証であるJISQ9100を取得し、それに基づいた品質保証システムの確立と管理を行うとともに、主要顧客である仏SAFRAN社の認証や国際特殊工程認証であるNadcapを取得・維持管理することで品質を担保しております。製造工程を変更する場合は、規程に基づく顧客承認プロセスを含む工程変更手続きを厳格に行い、履歴管理を実施しております。当社は徹底した品質や安全に関しての社内ルールを整備・運用することにより、品質・安全リスクを最小限に抑えるように努めております。また、当社は航空PL保険に加入することにより、大規模なリコールや賠償請求等に対する備えを行っております。具体的には、当社は、仏SAFRAN社が求める水準の航空PL保険に加入しており、同社との契約上、チタンアルミブレードの販売における当社の賠償責任は、当該航空PL保険金額が上限となっております。
⑦ 生産キャパシティの不足について(顕在化の可能性:低、顕在化の時期:中期、影響度:小)
当社製品が搭載される航空機である仏Airbus社製A320neoファミリー機及び米Boeing社製737MAX機は、商業用航空機全体の受注残高の多くを占めております。当社は、今後、両機の生産量が増加し、当社への受注が増加することを想定し、チタンアルミブレードの生産に関しては、安定的な材料の供給がなされる前提において、今後3年程度の増産見込に耐えられる十分な生産キャパシティを確保しておりますが、想定以上に受注が増加した結果、当社が十分な生産キャパシティを確保できずに供給遅延等が発生した場合には、顧客である仏SAFRAN社からの信頼を失い、同社との将来の取引に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社は、生産性向上を図ることにより、生産キャパシティの拡大を継続的に推進するとともに、想定以上の受注増加が予想される場合には、必要な設備投資等を行うことにより、生産キャパシティが不足しないように対応してまいります。
⑧ 法的規制等に関するリスクについて(顕在化の可能性:中、顕在化の時期:特定時期なし、影響度:大)
当社は、事業活動を行うに際して、製造物責任法・独占禁止法・下請代金支払遅延等防止法・廃棄物の処理及び清掃に関する法律・工場立地法・消防法・毒物及び劇物取締法等の法的規制を受けております。当社は、JISQ9100やJISQ14001の認証を取得した工場として、各種法令・規則に則り生産活動を行っておりますが、今後、新たな法令の制定等規制の動向によっては、当社の事業展開が制約され、当社の業績及び財務状況に影響を与える可能性があります。また、当社は直接的な法的規制は受けませんが、当社製品の供給先である航空機エンジンが搭載される航空機等に重大な不具合や事故が発生したことにより、関係当局から当該航空機の型式証明等が取り消された場合、当社の受注数量が減少することになり、当社の業績、財務状況等に大きな影響を及ぼす可能性があります。
当社は、法務業務を担当する経営管理部が、新たな法規制等を定期的に確認・対応すること、また、リスク・コンプライアンス委員会により当社事業に影響を与え得る法規制等を幅広く確認し、必要に応じて対応を行うことで、当該リスクを最小限に抑えるように努めております。また、特定製品への依存度を引き下げるため、他の航空機エンジン部品や、ガスタービン部品、eVTOL(電動垂直離着陸機、いわゆる空飛ぶクルマ)用部品等、当社の強みを発揮できる分野での新規案件の拡大に努めてまいります。
⑨ 固定資産の減損リスクについて(顕在化の可能性:低、顕在化の時期:特定時期なし、影響度:中)
当社は、設立から2022年6月期まで継続して営業赤字を計上しておりました。また、製造業であることから工場建物、機械設備等、多額の固定資産を保有しております。当該固定資産について、「固定資産の減損に係る会計基準」に基づき、減損損失を認識すべきであると判定した場合には、それぞれの固定資産について回収可能性を評価することとなります。回収可能価額が帳簿価額を下回る場合、その差額は減損損失として当該期の損失として計上されるため、当社の業績及び財務状況に影響を与える可能性があります。
当社は、原価低減活動や新たな収益源の拡大に取り組むことで、減損リスクを最小限に抑えるように努めてまいります。
⑩ 新型コロナウイルス等の感染症の発生について(顕在化の可能性:低、顕在化の時期:特定時期なし、影響度:中)
新型コロナウイルス感染症拡大は航空機による移動制限をもたらし、世界中のエアライン及び航空機メーカーは減便・減産を余儀なくされました。新型コロナウイルスやその他の感染症が今後新たに発生・拡大した場合は、航空機需要が減少し、当社の業績見通しが毀損する可能性があります。
当社は、感染拡大防止のための対策を徹底するとともに、引き続き生産・製造規模の臨機応変な対処を行い、資金需要についても金融機関と緊密な調整を進めるなど対応を継続しております。また、原価低減活動や新たな収益源の多様化、事業継続計画(BCP)策定により、当該リスク発生時の影響を最小限に抑えるように努めてまいります。
⑪ 有利子負債への依存度について(顕在化の可能性:低、顕在化の時期:中期、影響度:小)
当社は製造業であり、通常、収益の計上に先行して設備投資が必要となります。現状の事業拡大局面においては、設備投資額は増加傾向にありますが、資金面では手元資金に加えて金融機関からの借入金等によって調達しており、2024年6月期末において、2,768百万円の借入金(総資産に対する割合38.3%)があります。2024年9月には、シンジケートローンによる総額3,300百万円の借入を実施するとともに、既存借入の一部繰上返済を実施しておりますが、借入金残高は増加しております。そのため、当社の信用力低下等何らかの理由により調達に制約を受けた場合には、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
当社では、2024年6月期末において、1,813百万円の現預金を保有しており、一定の手元流動性を確保しておりますが、金融機関との良好な関係の維持・強化に努めるとともに、常に手元流動性の確保や資本効率の向上等の観点から検討を行い財務基盤の強化に取り組んでまいります。
⑫ 金利の上昇について(顕在化の可能性:低、顕在化の時期:中期、影響度:小)
現在、当社における資金調達は、低金利傾向といった金融情勢も勘案の上、金融機関からの長期及び短期借入にその多くを依存しており、2024年6月期末において、2,768百万円の借入金があります。2024年9月には、シンジケートローンによる総額3,300百万円の借入を実施するとともに、既存借入の一部繰上返済を実施しておりますが、借入金残高は増加しております。今後、世界的な金融引き締めにより、金利が上昇した場合には、資金調達コストが更に増大し、当社の財政状態、経営成績等に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社は、保有現預金や自己資本比率水準等の財務の健全性を維持・強化するとともに、資金調達手段の多様化等を進め、低利かつ安定的な資金の確保に努めてまいります。
⑬ 財務制限条項について(顕在化の可能性:低、顕在化の時期:中期、影響度:小)
当社は、安定的な資金運用を図るため、金融機関から資金調達を行っておりますが、一部の金融機関との取引について、「第5 経理の状況 [注記事項](貸借対照表関係)」に記載のとおり、借入契約に財務制限条項が付されたものがあります。万が一、これらの条件に抵触した場合には、期限の利益の喪失等、当社の経営成績及び資金繰りに影響を及ぼす可能性があります。
当社は、経済情勢や金利動向、財務バランスを総合的に勘案し、有利子負債の適正な水準の維持に努めながら事業展開を行ってまいります。
⑭ 情報セキュリティについて(顕在化の可能性:低、顕在化の時期:特定時期なし、影響度:小)
当社では、製品の設計・開発、生産、販売など、事業活動において、情報技術やネットワーク、システム(ITシステム)を利用しております。これらITシステムの運用、並びに導入・更新に際しては、システムトラブルや情報の外部漏洩が発生しないよう安全対策を講じておりますが、予想を超えるサイバー攻撃、不正アクセス、コンピュータウイルス侵入等により、重要な業務の中断やデータの破損・喪失、機密情報の外部漏洩などが発生する可能性があります。この場合、当社の信用低下や財政状態、経営成績等に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社は、情報セキュリティ対策の充実、役職員への教育、情報システムの社内バックアップ体制等により、当該リスクを回避できるように努めてまいります。
(2) 事業体制に関するリスク
① 代表取締役社長への依存及び当社の事業推進体制について(顕在化の可能性:低、顕在化の時期:短期、影響度:小)
当社の代表取締役社長である森西淳は、当社の創業者であり、設立時より最高経営責任者であります。同氏は、事業経営に関する豊富な経験と知識を有しており、現在においても経営方針や事業戦略等の立案及び決定を始め、取引先やその他各分野にわたる人脈等、当社の事業推進の中心的役割を担っており、当社における同氏への依存度は一定程度高いものとなっております。そのため、何らかの理由により同氏が当社の経営者として業務遂行が継続できなくなった場合には、当社の財政状態及び経営成績等に影響を与える可能性があります。
当社では、同氏に過度に依存しないよう、経営幹部、並びに業務推進役の拡充、育成及び権限委譲による分業体制の構築等を進めることにより、当該リスクを回避できるように努めてまいります。
② 人財の確保・維持について(顕在化の可能性:低、顕在化の時期:短期、影響度:小)
当社が今後事業の拡大を行うにあたり、優秀な人財を獲得・育成することが重要な課題と考えております。そのため、採用活動及び研修制度、人事制度の強化に努めておりますが、業務上必要とされる人財を確保・育成できない場合や、退職者の増加等により必要な人財が維持できない場合には、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
当社は、採用活動、研修制度及び人事制度の強化により、当該リスクを回避できるように努めてまいります。
(3) その他のリスク
① ストック・オプション行使による株式価値の希薄化について(顕在化の可能性:低、顕在化の時期:中期、影響度:小)
当社では、取締役、従業員等に対するインセンティブを目的としたストック・オプション制度を採用しております。また、今後においてもストック・オプション制度を活用していくことを検討しており、現在付与している新株予約権に加え、今後付与される新株予約権について行使が行われた場合には、既存株主が有する保有株式の価値及び議決権割合が希薄化する可能性があります。なお、当事業年度末現在における新株予約権による潜在株式数は583,000株であり、発行済株式総数の15.2%に相当しております。
当社は、収益力を高め、企業価値の向上を行うことで当該リスクを回避できるように努めてまいります。
② 配当政策について(顕在化の可能性:低、顕在化の時期:中期、影響度:小)
当社は、成長過程の途上にあり、経営基盤の長期安定に向けた財務体質の強化及び事業の継続的な拡大・発展を目指すため、内部留保を充実させることが必要であると考えており、これまでに配当を実施したことはなく、また、今後も当面の間は配当を実施する予定はありません。しかしながら、株主利益の最大化を重要な経営目標の一つとして認識しており、今後の株主への剰余金の配当につきましては、業績の推移、財務状況、今後の事業への投資計画等を総合的に勘案し、内部留保とのバランスをとりながら検討していく方針であります。
当社は、収益力を高め、企業価値の向上を行うことで、株主利益の最大化を実現できるように努めてまいります。
当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
当事業年度における世界経済は、社会経済活動の正常化が進んだものの、ウクライナ情勢の長期化や中東情勢の緊迫化等による地政学リスクや原材料価格の上昇、インフレリスクなど、依然として先行き不透明な状況が続いております。このような中でドル円為替相場は、前事業年度と比較して円安水準で推移しました。
航空業界においては、旅客需要が新型コロナウイルス発生前の水準に概ね回復し、更に拡大する兆しを見せております。エアラインでは、拡大する需要に対応するため、機体発注拡大などの動きを見せており、航空機メーカーにおいては、中小型航空機を中心とした機種の受注が増加しました。その結果、当社の主力製品であるチタンアルミ製の低圧タービンブレードを採用するLEAPエンジンが搭載される、中小型航空機の仏Airbus社製航空機A320neoファミリー及び米Boeing社製航空機737MAXは、高水準の受注機数残高を維持し、両社ともに生産体制の増強を進めております。また、同じくLEAPエンジンが搭載される中COMAC社製航空機C919は、2023年に初の商業飛行を中国国内で実施し、受注を拡大させています。
<LEAPエンジンが搭載される航空機の受注機数残高及び引渡機数(単位:機)>
(出所:一般財団法人日本航空機開発協会)
一方で、新型コロナウイルス感染症やウクライナ情勢を発端としたサプライチェーンの毀損や人手不足の影響の顕在化により、仏Airbus社及び米Boeing社ともに、生産体制の増強に一部遅延が見られております。また、米Boeing社においては、737MAXの品質問題に直面し、品質体制の構築を優先することによる一定期間の生産拡大の見合わせを発表しております。
その結果、当事業年度のチタンアルミブレードの販売数量は前年同期比微増に留まり、当社のチタンアルミブレードが搭載されるエンジン基数(チタンアルミブレード販売枚数÷LEAPエンジン1基当たりのチタンアルミブレード搭載枚数)は573基(前期比1.8%増)となりました。しかしながら、A320neoファミリー及び737MAXともに、受注機数残高は高水準を維持しており、航空業界でのサプライチェーンの毀損、人手不足や品質問題の解消が進めば、チタンアルミブレードの販売は拡大していくと考えられることから、当社は、将来の増産に向けて、引き続き生産性・収益性の向上に取り組んでまいりました。
当社が推進しているチタンアルミブレードの新材料開発に関しては、開発の進展に伴い顧客から一定の評価を得られたことから、開発推進のための受託業務を新規に売上計上しました。また、為替相場が円安で推移したことも業績に寄与しました。
費用面においては、翌事業年度中の量産開始に向けて取り組んでいるチタンアルミブレード以外の航空機エンジン部品の量産技術の開発や量産体制の構築、並びにその他の新規量産案件の獲得・拡大のための人員採用の積極化により人件費が増加しました。
以上の結果、当事業年度の経営成績は、売上高3,350,387千円(前期比14.7%増)、営業利益705,462千円(前期比47.1%増)となりました。経常利益に関しては、営業外費用として上場関連費用が発生しましたが、営業外収益として補助金収入や為替差益等を計上したことから、842,981千円(前期比40.9%増)となりました。当期純利益に関しては、資本金増加に伴う繰越欠損金の利用制限等により法人税等負担が増加しましたが、698,736千円(前期比3.8%増)となりました。
なお、当社は、単一セグメントのため、セグメントごとの記載を省略しております。
(資産)
当事業年度末における資産の残高は、7,236,980千円であり、前事業年度末に比べ1,448,744千円増加いたしました。この主な要因は、仕掛品の減少57,398千円があった一方で、当期純利益の計上や株式上場による新株発行に伴う現金及び預金の増加85,223千円、貯蔵品の増加51,222千円、未収消費税の増加190,175千円及び有形固定資産の増加1,182,527千円があったことによるものであります。
有形固定資産が増加した主な要因は、チタンアルミブレード以外の航空機エンジン部品の量産のための新工場建設、並びに設備投資によるものであります。
(負債)
当事業年度末における負債の残高は、4,142,899千円であり、前事業年度末に比べ23,258千円減少いたしました。この主な要因は、未払金の増加316,763千円及び未払法人税等の増加168,296千円があった一方で、長期借入金(1年内返済予定分含む)の返済による減少338,713千円及びリース債務(1年内返済予定分含む)の返済による減少181,123千円があったことによるものであります。
(純資産)
当事業年度末における純資産の残高は、3,094,081千円であり、前事業年度末に比べ1,472,003千円増加いたしました。この主な要因は、株式上場に伴う新株発行等により、資本金382,443千円、資本剰余金382,443千円がそれぞれ増加したこと、当期純利益の計上等により利益剰余金698,736千円が増加したことによるものであります。
当事業年度における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、1,813,651千円と前事業年度と比べ85,223千円の増加となりました。当事業年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当事業年度における営業活動による資金の増加は、1,391,430千円(前事業年度は1,077,424千円の増加)となりました。主な増加要因は、税引前当期純利益841,820千円、減価償却費387,666千円及び補助金の受取額356,213千円であり、主な減少要因は、未収消費税等の増加190,175千円及び補助金収入140,073千円によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当事業年度における投資活動による資金の減少は、1,526,507千円(前事業年度は137,360千円の減少)となりました。主な減少要因は、有形固定資産の取得による支出1,519,961千円によるものであります。
有形固定資産の取得の主な要因は、チタンアルミブレード以外の航空機エンジン部品の量産のための新工場建設、並びに設備投資によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当事業年度における財務活動による資金の増加は、234,235千円(前事業年度は337,382千円の減少)となりました。主な増加要因は、株式の発行による収入754,071千円であり、主な減少要因は、長期借入金の返済による支出338,713千円及びリース債務の返済による支出181,123千円によるものであります。
当事業年度の生産実績は、次のとおりであります。なお、当社は「加工事業」の単一セグメントであるため、セグメント別の記載を省略しております。
(注) 金額は、製造原価によります。
当事業年度の受注実績は、次のとおりであります。なお、当社は「加工事業」の単一セグメントであるため、セグメント別の記載を省略しております。
当事業年度の販売実績は、次のとおりであります。なお、当社は「加工事業」の単一セグメントであるため、セグメント別の記載を省略しております。
(注)1.最近2事業年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
経営者による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は、次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものであります。
(売上高)
当事業年度の売上高は、3,350,387千円となり、前事業年度に比べ429,396千円増加(前期比114.7%)となりました。これは主に、航空需要の回復に伴いチタンアルミブレードの販売が拡大したこと、新材料等の開発業務を受託したこと、並びに為替相場が前事業年度と比較して円安に推移したことによるものであります。
(売上原価、売上総利益)
当事業年度の売上原価は、1,838,078千円となり、前事業年度に比べ121,627千円増加(前期比107.1%)となりました。これは主に、売上高の増加に伴う変動費等の増加によるものです。
この結果、売上総利益は1,512,309千円となり、前事業年度に比べ307,768千円増加(前期比125.6%)となりました。また、売上総利益率は、当事業年度で45.1%となり、前事業年度と比べて向上しました。これは主に、利益率の高い新材料等の開発業務を受託したこと、並びに為替相場が前事業年度と比較して円安に推移したことによるものであります。
(販売費及び一般管理費、営業利益)
当事業年度の販売費及び一般管理費は、806,847千円となり、前事業年度に比べ81,774千円増加(前期比111.3%)となりました。これは主に、人員拡大等に伴う人件費の増加37,512千円、外形標準課税の適用に伴う租税公課の増加38,262千円等によるものであります。
この結果、営業利益は705,462千円となり、前事業年度に比べ225,994千円増加(前期比147.1%)しました。
(営業外損益、経常利益)
当事業年度の営業外収益は、補助金収入等の一過性収入、為替差益等の増加により、前事業年度に比べ23,360千円増加し、190,438千円(前期比114.0%)となりました。営業外費用は、支払利息が減少したものの、上場関連費用の増加により、前事業年度に比べ4,562千円増加し、52,918千円(前期比109.4%)となりました。
この結果、経常利益は842,981千円となり、前事業年度に比べ244,792千円増加(前期比140.9%)となりました。また、経常利益率は25.2%となりました。
(法人税等、当期純利益)
資本金等の増加に伴う繰越欠損金の利用制限等により、法人税等は143,083千円(前事業年度は△73,479千円)となりました。
この結果、当期純利益は、698,736千円となり、前事業年度に比べ25,697千円増加(前期比103.8%)となりました。
財政状態の状況に関する認識及び分析・検討内容については、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ② 財政状態の状況」に含めて記載しております。
③ キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容については、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ③ キャッシュ・フローの状況」に含めて記載しております。
当社の運転資金需要のうち、主なものは、製造費、販売費及び一般管理費等の営業費用であります。主要事業であるチタンアルミブレードの生産においては、材料が顧客からの無償支給であるため、当社において材料購入に関わる運転資金負担はありません。
また、投資を目的とした資金需要のうち、主なものは、チタンアルミブレードの内製化推進や自動化投資、並びに新規案件に対応した設備投資等によるものであります。成長の原資たる設備投資については今後も継続してまいります。
当社は、運転資金及び設備投資資金の原資につきましては、当社の財務状況を勘案して、手許現金の使用・銀行借入・リースの利用等の中から最もふさわしい方法を採ることとしております。また一方で、先行投資的な資金も必要となることから、事業運営上必要な資金は、手元流動性の高い現金及び現金同等物として保持していく方針であります。なお、当事業年度末における現金及び現金同等物の残高は1,813,651千円であります。
また、金融機関と安定的な事業資金の確保に取り組んでおり、今後も引き続き各金融機関からの資金調達、借入コミットメントライン契約の設定、リース等様々な資金調達を検討・実施し、継続的な財務基盤の強化に努めてまいります。
当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成しております。この財務諸表の作成にあたっては、資産・負債や収益・費用の報告数値に影響を与える見積りを行わなければなりません。これらの見積り及び判断・評価は、過去の実績等を勘案し合理的と考えられる要因等に基づき行っておりますが、見積り特有の不確実性があるため、実際の結果は異なる場合があります。
当社の財務諸表で採用する重要な会計方針及び当該見積りに用いた仮定は、「第5 経理の状況 1 財務諸表等 重要な会計上の見積り」に記載のとおりであります。
当社では、売上高、営業利益、EBITDAを重要な経営指標として管理しております。売上高及び営業利益を重視する理由は、企業として一定程度の売上高規模を確立することで、事業基盤の安定性を確保するとともに、安定した利益の成長を継続させることで、新規案件への投資を継続的に行うことが可能であると考えているためであります。また、当社は、設立時に主要事業であるチタンアルミブレードの増産に対応できる水準の生産キャパシティを考慮した設備投資を実施していることから、チタンアルミブレードの今後の増産に対応するための大規模設備投資は今後も限定され、現時点において、既に将来の増産に対応する水準の減価償却費が会計上計上されていると考えております。そのため、当社の収益性や現金創出力をより適切に把握するために、減価償却費の影響を排除した指標であるEBITDAを重要な経営指標として管理しております。
また、これらの源泉となる指標として、販売されたチタンアルミブレードが搭載されるエンジン基数、並びにエンジン1基当たりの営業利益をKPIとして選択しております。その理由として、当社は、チタンアルミブレード販売への依存度が現時点においては高いことから、チタンアルミブレードが搭載されるエンジン基数、並びにその収益性が、当社全体の収益力に直結すると判断しているためであります。
各指標の推移は以下のとおりであります。
※1 営業利益+減価償却費(有形・無形固定資産)
※2 チタンアルミブレード販売枚数÷LEAPエンジン1基当たりのチタンアルミブレード搭載枚数
(販売されたチタンアルミブレードは全て新造エンジンに搭載されたと仮定しております)
※3 営業利益÷販売されたチタンアルミブレードが搭載されるエンジン基数
当社は、仏SAFRAN社と「LEAP」エンジンに搭載されるチタンアルミ製低圧タービンブレードの製造・販売に関する取引契約を締結しております。
(※)2024年10月に契約締結予定となりますが、2024年7月1日に遡って効力発生となる予定です。
当社は、現時点において受託加工が主たる事業となっておりますが、ものづくり製造業としてグローバルでの成長を目指すにあたり、下記の開発にも取り組んでおり、当事業年度における当社が支出した研究開発費の総額は
LEAPエンジン向けチタンアルミブレードの合金材料は仏SAFRAN社から無償支給されておりますが、現在その材料メーカーは海外の1社のみとなっております。当社は、新たな材料調達先に選定されるべく、材料の開発を進めております。当社が開発している新材料は、Near Net Shape(NNS)形状と呼ばれ、現在のスラグ形状(鋳塊)と異なり、最終製品により近い形状の材料となります。そのため、コストの高いチタンアルミ原料の利用の削減、及び加工段階におけるコストが高い初期工程の削減が可能となります。その結果、環境負荷低減や材料及び副資材調達の海外依存からの脱却につながるとともに、調達リードタイムの短縮や物流費の低減にも寄与することとなります。また、工法開発に加え、適用範囲の拡大につながる合金の改良にも取り組んでおります。なお、当該開発は、国立研究開発法人物質・材料研究機構と共同で進めております。
当事業年度においては、前事業年度に導入した試験用の溶解炉を用いて一定量の試作を行い、特に量産に向けての品質改善、コストを継続的に検証してまいりました。特に量産時に安定的に生産が可能となる鋳造設備の一部自動化機能の設計や改修作業を進めました。また、昨今航空機エンジンメーカーが推進する品質保証の考え方として、プロセスの開発段階から量産時のあらゆるリスクを低減するために、所望のフレームワークや管理ツールを用いた開発を推進しております。品質管理の技術として、チタンアルミ鋳造材料の化学分析技術の知見を深めており、来期は仏SAFRAN社と有効な化学分析手法について検討する予定です。当該開発は、当社の主力事業であるチタンアルミブレードの材料の供給多様化等の観点において、顧客の期待も高いことから優先的に推進してまいります。
当社は、AM(Additive Manufacturing、積層造形、いわゆる3Dプリンタ)技術の開発を進めております。積層造形とは、電子ビームやファイバーレーザーにより金属粉末の溶融凝固を繰り返すことにより、金属部品を製作する技術のことをいいます。積層造形技術を活用することにより、今までは加工が困難であった複雑形状のものを作り上げることが可能となります。しかしながら、積層造形は高額な設備が必要となること、また、造形には時間がかかることが量産にあたっての課題となります。保有する金属積層造形設備2台を活用した研究開発を推進するとともに、積層造形を活用した試作品の受託を行い、設計機能や当社が実績を持つ精密加工や非破壊検査技術をも取り込んだ新たなビジネスモデルの構築を検討しております。また、積層造形は、デジタル製造や分散型製造モデルとも言われており、従来のサプライチェーンや大量生産モデルと異なるビジネスモデルが可能となると考えられております。このような特徴を有する積層造形とデジタル技術を組み合わせたビジネスモデルの検討も推進しております。
当事業年度においては、これまで培ってきた技術力やノウハウをもって市場開発と営業強化を行い、特定の顧客と金属・樹脂を問わずAM技術を活用した鉄道車輌用のスペア部品の試作、実験に着手しました。鉄道産業においても、運用年数が何十年と非常に長く、航空機産業におけるMRO(Maintenance Repair Overhaul、整備・補修・オーバーホール)ビジネスとの類似性もあり、引き続きAM技術と親和性が高い産業やアプリケーションに向け、技術開発、並びに事業開発を進めてまいります。
航空機エンジンはその安全性を担保するため、一定の飛行距離や時間に応じて、MROとして定期的にエンジンを点検することが求められております。航空機エンジンに搭載される様々なタービンブレードもその過程で補修することが必要となりますが、LEAPエンジン向けのチタンアルミブレードについてはその素材の特徴から補修する技術が確立しておらず、不具合が見つかった場合には、現時点では全て取り換えることが必要となります。当社は、AM技術を活用し、チタンアルミブレードの補修技術を確立すべく、研究開発を進め、MRO市場に参入することを目指しております。
当事業年度においては、欧州の研究機関とも連携を強め、チタンアルミ部品の補修時に発生し得る欠陥を低減するための技術やプロセス条件について検討を進めてまいりました。解決策の方向性の目処付けが出来つつあることから、今後は製品形状に特化した最適化を行ってまいります。また、当該技術は、生産過程で生じる欠陥の補修にも技術的には活用可能であるため、こうした技術の活用により、生産現場におけるスクラップ率の低減に向けても開発を進めてまいります。