第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) 会社の経営の基本方針

 当社は、2023年10月2日付で㈱リケンと日本ピストンリング㈱の経営統合に伴い、両社の共同持株会社として設立されました。経営統合にあたり、リケンNPRグループの経営理念として次のMission、Vision、Valueを定めており、単に競争を通じて利潤を追求するという経済主体ではなく、株主、取引先、従業員、地域社会等すべてのステークホルダーの立場を尊重し、その期待に応え、社会の一員として義務を果たしていくという決意を込めており、今後も持続可能な社会の実現に向け、努力と挑戦を続けてまいります。

 

 リケンNPRグループ経営理念

 Mission(リケンNPRの使命・存在意義)

  生み出す力で人と地球の「今と未来」を支えます

 

 Vision(リケンNPRの目指す姿・ありたい姿)

  人と技術の融合によりイノベーションを創出し、変革に挑戦し続けます

 

 Value(リケンNPRが提供する価値)

  信頼の「環」:ステークホルダーの皆様とのつながりを大切にし、高品質の製品とソリューションの提供を

通じて企業価値を向上させます

  成長の「環」:互いの価値を認めて尊重し合い、新たな挑戦を続けることで会社と従業員がともに成長します

  社会の「環」:暮らし、環境の社会課題解決に貢献します

 

(2) 経営戦略

 当社グループは、2024年2月14日に2026年度を最終年度とする第一次中期経営計画を策定いたしました。

「経営統合によるシナジー創出」「事業ポートフォリオ改革」「サステナビリティ経営の強化・成長基盤の整備」を柱とする中期経営方針に加えて、定量目標としましては、2026年度に、売上高1,800億円、経常利益率9%以上、ROE8%以上を目標としております。

 エンジン関連部品を中心とする既存事業については各種合理化等を含む収益力強化策を進めるとともに、次代を担うネクストコア事業の拡大・基盤強化を推進してまいります。加えて、持続的に成長する経済社会実現のためのサステナビリティ経営を実践し、中長期的な企業価値向上を目指してまいります。

 

0102010_001.png

 

 なお、株主資本コストを上回るROE(資本収益性)を実現するために、事業ポートフォリオ改革にむけた積極投資(設備投資・M&A・研究開発)、株主還元の一層の充実化など、企業価値向上に向けた戦略的キャッシュアロケーションを推進するとともに、財務戦略も含めた当期純利益水準の確保、中期戦略の着実な遂行、IR活動の充実化を通じた株主資本コストの低減に向けた取り組みを行ってまいります。

 

0102010_002.png

 

(3) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

 世界経済は、米国関税政策変更に伴う混乱や為替(円高)リスクの高まり、依然として高水準の地政学的リスク等、従来以上に不確実性の高い状況にあるものと認識しております。そのような環境下にあって、当社と関連が深い自動車産業は、その影響を強く受ける業界であり、変化に対する柔軟かつ適切な対応が求められるものと考えております。

 当業界は、100年に一度と言われる大きな変革期にあり、特にエンジン部品を巡る市場環境は、従前において中心的なシナリオであった「急速なBEV化」については進展のスピードが緩和されたとの見方が示されつつあるとはいえ、引き続きその厳しさは変わらないものと認識しております。そのような中で、当社グループは、内燃機関搭載車が今後とも当面はモビリティの主役であるとの認識を持ち、その主力事業者としての責任を果たすべく地球環境に貢献するエンジン部品の開発を強力に進めてまいります。同時に、新規事業領域への展開につきましても、上記の事業環境変化を踏まえつつSDGsや脱炭素といったグローバルな潮流を捉え、経営上の重要な課題として積極的に取り組んでまいります。

 当社グループは、このような大きな環境変化の中にはありますが、第一次中期経営計画に則った取り組みを着実に進捗させることで、企業価値向上に向け一歩一歩進んで行くことができるものと考えております。具体的な課題や取組方針は、次のとおりとなります。

 

①事業戦略(事業ポートフォリオの改革)

<既存事業>

 当社グループが「グローバルNo.1サプライヤー」であるピストンリング事業については、その地位の維持・強化を図ります。統合シナジーの創出と抜本的な生産性改善に注力するとともにエンジン機能の向上や水素・代替燃料対応技術開発にも積極的に取り組んでまいります。また、焼結・樹脂・素形材等の分野においても、グローバル展開を進めるニッチ分野にも強い有力サプライヤーとして引き続きシェア拡大を図ります。これらの既存事業については、競争力とともに収益力の強化を重視した施策を進めます。

 

<ネクストコア事業>

 半導体・エレクトロニクス事業に関連の深い熱エンジニアリング分野やEMC分野等、次代を担う事業の拡大・基盤強化を進めるとともに、電動化ユニット、機能性樹脂、磁性材、医療機器等の新製品開発にも積極的に取り組み、中核事業化を進めてまいります。加えて、内部リソースにのみ拘ることなく、M&A等を活用し、技術連関性や親和性の高い事業の取り込みも積極的に進め、本事業の質・量両面の拡充を図ります。

 

②財務・資本戦略(バランスシートの最適化)

<キャッシュアロケーション>

 営業キャッシュフロー及び政策保有株式等の資産圧縮を通じて創出した資金を、成長領域の設備投資・研究開発、M&A、等の戦略投資と株主還元に活用してまいります。

 

<株主還元>

 株主還元につきましては、経営上の重要課題と認識しており、総合的な観点から適切な資金配分を行うことを前提として、株主のご期待に応えつつ安定的・継続的に実施して行く方針としております。第一次中期経営計画期間については、配当性向40%以上、総還元性向70%以上(3年平均)、総額200億円(うち自己株式取得100億円)を目途とし、従来対比高水準の株主還元を実施してまいりたいと考えております。なお、自己株式取得につきましては、損益・財務状況、資本効率等を勘案しつつ、機動的に実施してまいりたいと考えております。

 

③サステナビリティ経営

 当社グループは、企業と社会の持続的成長を支えるため、サステナビリティ経営を推進してまいります。人的資本投資の拡充やエンゲージメント向上も含めた主要取組事項については、KPIを設定し、2026年度での目標達成を目指します。

 

④株主価値向上に向けた対応

 当社グループは、中期経営計画期間において、上記のとおり、事業ポートフォリオ改革、シナジー創出やバランスシート最適化、等を進めるとともに、ROIC経営の考え方を積極的に取り入れ、株主資本コストを上回る資本収益性(ROE)の実現を図ってまいります。また、引き続き従来対比高水準の株主還元を継続し、株主のご期待に応えるとともに、IR活動の充実化も推進し、企業価値の向上、延いてはPBR1倍以上の実現を目指します。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)サステナビリティ共通

 当社グループは、経営理念の実現に向けサステナビリティ基本方針を定め、SDGsの達成に貢献し、環境性能に優れた製品をより広く提供するなど、会社の持続的な発展と持続的な企業価値の向上を目指しております。

 

<サステナビリティ基本方針>

 

当社グループは、経営理念に掲げる「生み出す力で人と地球の「今と未来」を支える」ことを使命とし、ステークホルダーの皆様から信頼の得られる事業活動を行い、今までなかったものを創りだし、高品質の製品とソリューションの提供を通じた持続的な企業価値の向上を図ってまいります。

 

■地球環境への貢献(Environment)

当社グループは、地球環境の保全が人類共通の重要課題であることを認識し、カーボンニュートラルをはじめとした環境負荷の低減に積極的に取り組みます。

 

■多様性と人権の尊重(Social)

当社グループは、多様性の確保に向けた人材育成方針と社内環境整備方針を定めるとともに、国際的に認められた人権の原則を理解し尊重します。

 

■健全な企業統治(Governance)

当社グループは、「株主の権利・平等性の確保」、「株主以外のステークホルダーとの適切な協働」、「適切な情報開示」、「経営の効率性・適法性・透明性の向上」、「株主との対話促進」を基本とし、コーポレート・ガバナンスの充実に努めるとともに、事業を行う各国・地域の法令を理解し遵守します。

 

① ガバナンス

 

 当社グループではサステナビリティに関わる活動をグループで統一的に推進するため、取締役会の下、COOを委員長とするサステナビリティ委員会を設置し、サステナビリティ活動に関する方針や施策の審議・決定、進捗の確認、取締役会への報告を行っております。

 また、サステナビリティ委員会の下にコンプライアンス部会、環境経営部会※、リスクマネジメント・BCM部会を設置し、分野別にグループ重要課題の推進を行っております。

(※)当社は、2024年10月に環境経営統括部を新設し、カーボンニュートラルに加え、生物多様性やサーキュラエコノミー等の環境経営課題への取り組みを推進しております。サステナビリティ委員会の部会における活動も、これらの課題に対しての取り組み体制の構築、強化が必要であるとの認識のもと、2025年4月よりカーボンニュートラル部会を環境経営部会に改称の上、体制変更を行いました。

 

<サステナビリティ委員会の主な議題(2024年度)>

2024年9月

サステナビリティ活動2024年度上期実績・下期計画

統合報告書作成進捗レビュー

2024年11月

2025年度リケンNPR環境目標

重要なリスクの特定と対策レビュー

コンプライアンス態勢強化(コンプライアンス・リーダーの設置)

2025年3月

サステナビリティ活動2024年度下期実績・2025年度上期計画

2025年5月の取締役会において本内容を報告

 

 

<サステナビリティ推進体制>

 

0102010_003.png

 

 

② 戦略

 当社グループはサステナビリティ経営を実現するために、SDGsなどサステナビリティに関連する課題・ゴールが当社グループの事業に与える影響と、それによるリスクと機会を分析し、適切な対応が企業経営に反映されることが重要と認識しております。

 この考えに基づき、当社グループのマテリアリティに関連するリスクと機会を抽出し、それらをアクションプラン、KPIに展開することで対応しております。

 

 

<マテリアリティの特定プロセス>

 

0102010_004.jpg

 

STEP1 課題の認識

各課題を、「ステークホルダーにとっての重要性」「当社グループの重要性」の2軸でマッピングし、優先順位づけを行いました。さらに現在の自らの強みと将来果たすべき役割について考慮した上で、当社が事業を通じ、社会への責任として取り組むべき課題と、当社の事業基盤強化のために取り組むべき課題を整理いたしました。

 

STEP2 課題の整理

各課題について中長期的に財務や事業戦略への影響が大きいもの、当社グループとしてKPIを定めて具体的かつ継続的な取り組みを行えるものを抽出いたしました。

 

STEP3 絞り込み

抽出された課題及び当社グループにおけるその位置付けについてサステナビリティ委員会及び経営会議での審議を経て、取締役会決議により、社会の持続的な発展と持続的な企業価値の向上を目指すためにサステナビリティ重要課題(マテリアリティ)を特定いたしました。

 

 

<特定した各マテリアリティのリスクと機会>

 

0102010_005.png

 

※ ICE:内燃機関/エンジン(Internal combustion engine)

 

③ リスク管理

 当社グループ全体におけるリスク管理体制を構築し、適切なリスク対応を実施するため、サステナビリティ委員会の下にリスクマネジメント・BCM部会を設置し、リスク管理及び事業継続計画(BCP)の定着と運用の徹底を図るために必要な活動を推進しております。

 リスクマネジメント・BCM部会を中心に年度毎に当社グループにおけるリスクの特定、「蓋然性」と「影響度」による評価を行い、優先順位付けした上でリスク対応計画を策定し、各リスク主管部門による対応を行っております。(その中でサステナビリティ課題に関するリスクも分析しております。)

 なお、事業等のリスクに記載された各リスクについては、リスク主管部門による評価(ボトムアップ)に加え、リスクマネジメント・BCM部会による評価(トップダウン)も重ねて行うことで、重要リスクの特定プロセスにおける網羅性の確保を図っております。当社は、蓋然性と影響度を当社の定めた基準に照らし、一定以上のリスク値が算出されたもの、財務状況、経営成績及びキャッシュフローの状況・戦略面等に重大な影響を及ぼすものを重要リスクとして特定しております。

 また、特定された重要リスクは経営において、定期的にその進捗を管理し、取締役会へ報告を行っております。

 

 

④ 指標と目標

 当社はサステナビリティを推進するために、各マテリアリティからアクションプラン、KPIとして指標と目標に展開しております。

 また、当社は第一次中期経営計画(2024年度~2026年度)において非財務目標を設定するサステナビリティ経営を掲げ、特に成長基盤の整備に必要と考えるマテリアリティ6項目を主要マテリアリティと位置づけ、ESG・人的資本投資の4分野に整理の上、その期間におけるKPIを設定し、推進しております。

 

<中期経営計画におけるサステナビリティ目標>

 

0102010_006.jpg

 

 サステナビリティ目標は、2026年度目標に対し、順調に推移ないし前倒しで達成をしております。

 (目標の進捗状況は、環境は(2)気候変動において、社会、人的資本投資は(3)人的資本(人材の多様性を含む)をご参照ください。)

 コーポレート・ガバナンスの向上においては、連結子会社の従業員向けにリケンNPR行規範動の周知と教育を実施するとともに、続いて実施した行動規範実践度確認チェックシートにおいて、実践度率89%(見込み)を確認しており、「実践度率80%以上」の2026年度目標を前倒しで達成しております。行動規範の周知教育を継続することにより、コーポレート・ガバナンスの向上とともに、リケンNPRグループで共有したい価値観として「行動規範を理解・実践し、社会及びステークホルダーの期待に応える倫理観を持ち行動していく」誠実な行動の浸透を目指し、取り組んでまいります。

 

(2)気候変動

 当社は、気候変動を含む環境問題を重要な経営課題であると認識し、サステナビリティ委員会を設置し、環境負荷低減に貢献する製品供給のみならず、事業活動におけるCO排出量削減等の環境目標を定め対応するとともに、具体的な活動となるCO排出量の削減・カーボンニュートラル(CN)活動、それらに貢献する新製品開発などの進捗状況を評価しております。

 これらの取り組みを気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)提言に沿った情報開示を進め、ステークホルダーの皆様との信頼関係の強化につなげてまいります。

 なお、CDPの質問書には、主要な事業子会社である株式会社リケンと日本ピストンリング株式会社において、回答を行っております。

 

① ガバナンス

 当社は気候変動対応における実効性を確保するために、気候変動対応において重要となるCN対応においては、サステナビリティ委員会の傘下に専門部会である環境経営部会を設置し、同じく主要な事業子会社の専門部門である環境経営統括部を事務局とし、各種情報収集、グループ各社の各部門と連携した具体的な推進を行っております。

 また、その他の環境関連事項に関する計画の実行においては、グループ環境委員会のもとに、事業子会社各社に各エリア環境管理委員会を設置し、推進を行っております。

 取締役会は気候変動に係る基本方針の策定や重要課題を設定するとともに、気候変動に関する(リスクと機会の両面において)業務執行に対する指示・監督・モニタリングを行っております。

 

<ガバナンス体制>

 

0102010_007.png

 

 

② 戦略

 当社グループはサステナビリティ経営を実現するために、気候変動が事業に与える影響とそれによるリスク(移行リスク、物理リスク)と機会に基づいて分析し、適切な対応が企業経営に反映されることが重要と認識しております。

 この考えに基づき、気候変動対策が推進されるシナリオ(NZE、2100年で1.4℃)、既存政策の成り行きであるシナリオ(STEPS、同2.5℃)の2つを想定し、次のとおりリスク(移行リスク、物理リスク)と機会を抽出し、対応しております。

 また、当社グループはICE関連製品売上高比率が高いことから、ICE変動時期やSDGsの達成年と重なる2030年を中長期的な時間軸として設定しております。

 

0102010_008.png

 

 

<主なリスクの抽出>

 

分類

 

特定されたリスク

影響度

主要な財務上の潜在的影響

対応策

移行

リスク

法規制

ICE車の

販売規制

ピストンリング事業の売上減

(非ICE車の電気自動車世界販売シェアは2022年:10%から2030年:40~60%に増加)

非ICEかつ成長分野(半導体、電動化、カーボンニュートラル対応)のネクストコア事業の売上拡大

炭素税

2030年度負担の炭素税総額は成り行き(2022年度と同排出量の場合)最大31億円程度

・2030年度のCO₂排出総量

 削減目標を設定

 (2013年度比▲51%)

・省エネ、再エネの積極的

 な導入、エネルギー置換、

 クレジット導入

・ICP制度導入

物理的

リスク

急性

気候災害

(特に台風、異常降雨による内水被害)の重大性・頻度拡大による操業停止

浸水による損害(例:国内1事業所の被害最大金額及び復旧費用試算は40億円程度)

改修工事、止水など資材準備、定期的な訓練の実施

慢性

(気候変動による)渇水による生産減、操業停止

中長期的な渇水リスクが高いインドの製造子会社で損害発生(未試算)

水循環装置の導入、貯水タンク(貯水槽)設置の検討

 

 

<主な機会の抽出>

 

分類

特定された機会

影響度

主要な財務上の潜在的影響

対応策

製品とサービス

低燃費ICE、カーボンニュートラル燃料対応ICE、カーボンニュートラル燃料供給インフラの普及

 

低燃費を実現するICE用部品、カーボンニュートラル燃料に対応したICE用部品の需要が増加し売上増加

非ICEのネクストコア事業への投資が拡大する中、ICE用部品に振り向ける割合は減少していくが、これらを効率化の上、低燃費、カーボンニュートラル対応部品の開発に振り向けていく

熱源を化石燃料から電気に切り替える「Electrification」

=「電化」が進展

発熱体をはじめとした熱エンジニアリング製品の需要が増加

熱エンジニアリング事業が含まれるネクストコア事業の売上拡大(積極的投資)

電気自動車(BEV)の需要拡大

BEVの需要拡大に伴い、電気自動車用部品の需要が増加し売上増加

非ICEかつ成長分野(半導体、電動化、カーボンニュートラル対応)のネクストコア事業の売上拡大(積極的投資)

自然災害/異常気象の重大性・頻度の上昇(大雨、洪水、台風、水不足等)

災害対策商品の需要が増加

災害医療領域への貢献を続け、新たな商権の獲得を

行っていく

 

気候変動以外の社会課題:高齢化や人口減少に対して、当社グループは先進医療(低侵襲で生体親和性の高い医療部材製品)を支える医療部材の開発促進や、建設現場における職人減に対応した施工しやすく、ミスが起こりにくい配管継手、産業・農業分野で生産性向上を支える特殊モータ部材、モータ、減速機、高機能樹脂製品の開発促進により、財務上のプラスを見込んでおります。

 

※財務影響が経常利益に与えるリスク:大(5億円以上)、中(1~5億円程度)、小(1億円以下)

 

 

③ リスク管理

(1)サステナビリティ共通 ③リスク管理」をご参照ください。

 

④ 指標と目標

 当社グループは、2050年までに事業活動において排出するCO排出量を実質ゼロにすることを目指しております。その達成に向けたマイルストーンとして、2030年度までの削減目標を設定するとともに、省エネ、再エネの積極的な導入等の活動推進と達成状況の確認を行っております。また、Scope3の排出量の把握と削減に向けた取り組みを行ってまいります。

 

年度

実績

目標

2013

2024

2026

2030

2050

CO₂排出総量

(Scope1・2)

t-CO₂

ベンチマーク

212,385

▲47.5%

111,416

▲39%

129,555

▲51%

104,069

カーボン

ニュートラル

 

※実績・目標は国内連結

 2024年度は削減目標2013年度実績対比▲33%に対し、実績▲47.5%で達成

 

(3)人的資本(人材の多様性を含む)

 

① ガバナンス

 「(1)サステナビリティ共通 ①ガバナンス」をご参照ください。

 

② 戦略

 当社グループの経営理念において「変革と挑戦」は重要なキーワードであり、中期事業戦略においても(非ICE売上比率の拡大へ)事業ポートフォリオを改革し、持続的な売上・利益成長を目指すこととしております。また、人材を資本として捉え、その価値を最大限に引き出すための投資を行うことが、社会から強く求められるとともに、その実現が当社の持続的成長を左右すると認識しております。

 こういった事業・社会環境、当社グループ方針、そして、経営トップ自ら従業員へ発信している共有したい価値観に基づき、当社は人材戦略において「成長を担う人材基盤の拡充」「変革への挑戦を後押しできる企業風土の醸成」をメインテーマに、5本柱の重要施策を定め、推進しております。

 

0102010_009.jpg

 

<重要施策5本柱>

■事業戦略と連動した人材ポートフォリオの構築

 事業ポートフォリオ改革を目指す当社グループにとって現在と、将来求められる人材ポートフォリオは大きく異なると見込んでおります。よって、現在の人材ポートフォリオ・スキルを可視化するとともに、将来において求められる人材ポートフォリオ・スキルの明確化を現在行っております。その結果を受けて、人材ポートフォリオの充実に向けた具体的施策を立案し、推進してまいります。加えて、将来の人材ポートフォリオ転換に資する教育体系、自発的な学習を支援する制度の整備・運用が必要になることから、現在、教育体系を含む人事制度について、リケンNPRとして統合に取り組んでおります。

 

■人材の高度化に向けた主体的・自主的なキャリア形成支援

 当社グループは人材ポートフォリオ充実を目的とした人材の高度化において、OJTをはじめとした階層別教育・訓練、部門別教育による、各分野におけるプロフェッショナル・管理者の育成を重視しております。一方で、個々の従業員の主体的・自律的なキャリア形成を支援し、さらなる成長や挑戦の機会を提供することも重要と考えております。

 よって、現在個々のグループ会社で実施され成果を上げている人材公募制度、海外トレーニー制度、海外留学制度、通信教育講座受講の斡旋・費用補助、従業員が自主的に受講する外部講座・授業料等の費用補助など諸制度をグループとして一体で運用するとともに、キャリアフォロー面談の定期実施など、新しい制度も立案・推進してまいります。

 

■従業員エンゲージメントの向上

 当社グループは、従業員エンゲージメントを高めるためには、環境性能に優れた製品提供など、当社グループが経営理念に基づく事業活動そのものを通じ、社会の持続的な発展に貢献していることを従業員に浸透させ、それが一人ひとりの価値観に結びついていくことが重要と考えております。

 また、個々のグループ会社で実施されていた従業員エンゲージメント調査を統合し、グループ共通の土台で、現状の把握とさらなる改善に繋げていくことが重要と考えております。

2024年度は当社の完全子会社である㈱リケンと日本ピストンリング㈱の両社で、共通の従業員ストレスチェック・エンゲージメント調査を実施いたしました。調査の結果では、調査実施企業のうち製造業平均と比較して、両社ともにワークエンゲージメント(※1)よりもエンプロイーエンゲージメント(※2)が低値となり、また、ストレスレベルが高いこと等が判明しております。

 本調査の結果を踏まえ、グループ全体としてのストレスコーピングの取り組み及びエンゲージメント向上の目標を新たに設定するとともに、達成に向けた施策を検討・実施してまいります。

 なお、従業員エンゲージメントを高めるためには、従業員一人ひとりが経営層との信頼関係や、企業理念・ビジョンへの共感・理解浸透を深めることが不可欠と認識しており、2024年度は前年度に続き、経営トップがグループの従業員に、当社グループの今後の見通し、方針、共有したい価値観を自らの言葉で伝えるとともに、日々の疑問にも答える場をウェビナー形式にて開催し、直近では6カ国からのべ604名の従業員が参加しております。

 (※1) 仕事に対する意識・行動(自発的行動やポジティブ感情など)

 (※2) 組織に対する意識・行動(組織との一体感など)

 

■DE&I(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)

 当社グループは、性別や国籍などを問わずあらゆる人にとって「多様な人材が安心して活躍できる」職場づくりを目指し、開かれた職場環境の確保とともに、女性や外国人やシニア従業員等の採用、人材の多様化に取り組んでおります。

 当社グループは、多様な勤務形態の拡充や介護・育児への支援といった多様な働き方の実現に向けた取り組みに加えて、性別や時間的制約の有無にかかわらず、誰もが働き甲斐を感じ、能力発揮のしやすい雇用環境を創出することを重点的な取り組み課題としております。その上で、女性社員の積極採用、人材育成、役職登用を進めるとともに、女性管理職比率の向上を図ってまいります。あわせて、女性正社員に占める女性管理職比率等にも注視してまいります。

 また、当社は、男性が育児に積極的に参加できる環境を整備することが女性の活躍推進に繋がるとともに、男女を問わず働きやすい職場環境の構築にも繋がると考えております。

 よって、男性育児休業取得の推進に向けた目標を設定し、制度周知、環境整備を行ってまいります。目標に対する実績は定期的にモニタリングし、それを受けた目標の上方修正も視野に入れた推進活動を行ってまいります。

 その他、外国人の管理職への登用、中途採用者の管理職への登用、障がい者雇用の推進にも積極的に取り組んでまいります。

 

■安心安全な職場環境の構築

 心身ともに安心安全な職場環境の構築は、人材が持続的に能力を発揮し、また自ら成長し人的資本を向上させるために不可欠な取り組みと考えております。

 現在個々のグループ会社で実施され成果を上げている働き方改革(生産性の向上、長時間労働是正、休暇取得推進、多様な勤務形態など)、健康経営(※)、安全衛生の取り組みをグループ全体で共有し、KPIを定め、推進してまいります。

(※)当社の完全子会社である日本ピストンリング㈱は、6年連続で「健康経営優良法人」に認定されており、㈱リケンは、2025年3月に初めて認定されております。当社グループは、安心・安全な職場環境を整備し、従業員一人ひとりが生き生きと働けることによる生産性の向上、人材の獲得の実現に向けて、引き続き健康経営への取り組みを推進してまいります。

 

 

③ リスク管理

 「(1)サステナビリティ共通 ③リスク管理」をご参照ください。

 

④ 指標と目標

■従業員エンゲージメントの向上

 

2024年度

2024年度実績

2026年度目標

従業員エンゲージメント調査

肯定的回答率(国内連結)

ベンチマーク

‘24年度実績対比

+10%以上

※従業員エンゲージメントの向上につきましては、2024年度に2026年度目標を新たに設定しております。

 

■人材の高度化に向けた主体的・自主的なキャリア形成支援

 

2022年度

2024年度実績

2026年度目標

従業員人材開発投資(国内連結)

ベンチマーク

‘22年度実績対比

+14.4%

‘22年度実績対比

+30%

 

■DE&I(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)

 

2022年度

2024年度実績

2026年度目標

女性管理職比率(国内)

1.7%

2.7%

3%以上

女性管理職比率(連結)

5.8%

8.1

7%以上

男性育児休業取得率(国内)

15.3%

59.4%

50%以上

 

3【事業等のリスク】

当社グループの経営成績、株価及び財務状況等に重要な影響を及ぼす可能性がある事項には、以下のようなものがあります。なお、文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2025年6月23日)現在において判断したものであります。

当社グループでは、これらのリスク発生の可能性を認識した上で、リスクを最小化するためにリスク管理体制の整備・充実に努めてまいります。

 

(1)経済・金融市場動向に関するリスク

①景気後退による需要減少のリスク

当社グループの製品は、自動車、各種産業機械や建築・建設等に多く採用されております。よって、世界や我が国の景気後退や経済成長の減速が発生した場合、自動車生産・販売台数や着工件数等が減少し、当社製品の需要が減少する可能性があります。

当社グループは需要動向の早期把握、動向に応じた仕掛品・在庫品の適正水準の維持、リードタイム短縮、コストダウンを強化する等、安定的な収益基盤を強化する取り組みを行っておりますが、想定を超える需要変動があった場合やその他の要因で大きな需要変動があった場合、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

②原材料価格等の上昇及び調達リスク

当社グループ製品の主要材料である鉄、合金や硬質粒子などの金属材料、石炭、樹脂系原料等は需給バランス、為替レート変動等に伴い市場価格が変動することがあり、また一部調達先が限定されるものもあります。これらの原材料価格等が需給変化や市況変動により上昇する場合は、製造コストの上昇につながります。昨今、世界的な原材料価格等の高騰リスクも顕在化しております。

当社グループは生産の合理化、調達先の分散化、代替材料の選定など、原価低減策による影響緩和を図るとともに、顧客に対する適切な価格転嫁交渉の取り組みを鋭意すすめておりますが、予測を超えて市場価格に急激な変化が生じた場合、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

③為替レートの変動リスク

当社グループは、海外における事業展開及び、海外の顧客向けに販売活動を展開していることから、外貨建取引から発生する為替変動の影響を受ける可能性があります。また、売上・費用・資産を含む現地通貨建の項目は、連結財務諸表の作成時に円換算いたしますが、現地通貨における価値に変動がない場合も、円換算後の価値が影響を受ける可能性があります。

当社グループは輸出入等を中心とした外貨建取引については、為替予約等を通じて為替レート変動の影響を抑えるよう努めておりますが、予測を超える変動が生じた場合、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(2)事業及び外部の事業環境に関するリスク

①海外展開に伴うリスク

当社グループは、海外において北米(米国、メキシコ)、欧州(ドイツ)、アジア(インドネシア、中国、台湾、タイ、インド、シンガポール、マレーシア)の拠点で生産・販売活動を展開しております。これら各国は政治、経済、社会的混乱等によるリスクが潜在しており、これらの事象により、影響を受ける可能性があります。

また、当社グループは、海外において現地資本と合弁で事業を行っている会社について、合弁パートナーの経営や財務その他の要因が、当社グループの事業に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループは各社の在外子会社を所管する部門が定期的に海外子会社との情報交換及び継続的モニタリングに加え、経営状況の他、周辺環境の変化等についても情報の把握・分析を行い、可能な限りリスクの抑制を図っております。

しかしながら、当社グループの製品を製造・販売している各国の政治・経済・社会体制に予想を超える急激な変化が生じた場合、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

なお、直近では、米国関税政策変更に伴う関税レートの引き上げにより、特に北米に展開する拠点において、販売・製造コストの上昇等の影響を受ける可能性があります。これに対しましては、上記の対応に加え、顧客に対する適切な価格転嫁交渉、商流の見直し、生産体制見直しの検討等を行い、可能な限り影響を抑えるよう努めてまいります。

 

②特定業種(乗用車エンジン向け)への高依存度リスク

当社グループは、自動車エンジン向け、特に乗用車エンジン(乗用ICE)向け部品関連事業の売上高が事業全体の半分以上を占めておりますが、自動車産業では電気自動車や自動運転等の開発・実用化等の技術革新のスピードが速まっております。この産業構造変化に伴う自動車構成部品の変動は、電動化による内燃機関搭載車市場の縮小として、当社グループの事業に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループは中期経営方針において「既存ICE領域の収益力向上」「非ICE領域であるネクストコア事業・新製品事業を育成・売上比率向上」の事業ポートフォリオ改革を掲げ、非ICE領域の育成に経営資源を積極的に投入しております。

しかしながら、自動車産業における構造変化への対応が結果として不十分だった場合や変化が予想を超え急激に進展した場合、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

③価格競争リスク

当社グループの主要販売先である自動車、各種産業機械業界をはじめとして、すべての業界ではグローバルに激しい競争が行われております。よって、当社グループ製品自体のグローバル市場における競争力、ひいてはグローバルな製品供給能力、技術開発力、国際価格競争力が当社グループの事業に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループは、競合他社と差別化できる製品・生産技術の開発を必要な経営資源を投じて推し進めるとともに、お客さまのニーズを捉え、適時適切なソリューションを提供する技術提案型の営業体制の構築や評価技術サービスの展開、コストダウンの強化等の諸施策により、競争力の維持強化に努めてまいりますが、これらの取り組みが結果として不十分だった場合、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

④知的財産権リスク

当社グループは、当社グループの産業財産権やノウハウ等の知的財産権がお客さまの課題解決に貢献し、環境性能に優れた魅力ある製品・サービスを提供し続けるために不可欠であり、競争力・差別化の源泉であると認識しております。

当社グループは、自社権利の取得、活用及び保護と、他社権利の尊重に努めておりますが、第三者による当社グループの知的財産権の侵害、又は当社グループが意図せず他社等の知的財産権を侵害した場合、事業活動に支障が生じ、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

(3)業務運営に関するリスク

①品質リスク

当社グループの製品は、自動車、各種産業機械や建築・建設等に多く採用されております。よって、これら製品の品質に関する何らかの瑕疵が顕在化し、顧客等に付随した損害を与えるような場合、製造物責任やリコールにより、当社グループの事業が影響を受ける可能性があります。

当社グループは、「品質方針」を定めるとともに、お客様の要求する品質保証体制を構築の上、ISO9001やIATF16949といった外部認証を取得し、品質の保持、向上に努めておりますが、品質に瑕疵のある製品の流出を防止できず、それが大規模なリコールや製造物責任賠償につながった場合、その補償や社会的評価の低下等により、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

②環境汚染リスク

当社グループは、製品の製造においては多種多様な環境負荷物質の取り扱いを行っております。よって、これら環境負荷物質が法定、あるいは社内基準以上に環境に流出し、環境汚染の原因となった場合、当社グループの事業に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループは、「環境方針」を定めるとともに、地球環境保全に向けた環境負荷の低減のためISO14001に沿った環境マネジメント体制を構築しておりますが、想定外の事態による環境汚染が発生した場合、その処理費用の負担や行政命令等に基づく操業の停止、社会的評価の低下により、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

③情報セキュリティリスク

当社グループは、研究開発、生産、販売等に関する当社グループ及びお客様の機密情報に加え、お客様や従業員等の個人情報を保有しております。また、事業活動全般において、様々な情報技術、ネットワーク、システム等を活用しております。よって、これらの情報資産が不正アクセス等により「機密性」「完全性」「可用性」に関する脅威にさらされた場合、当社グループの事業に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループは、情報セキュリティを強化するため「情報セキュリティ基本方針」を定め、サイバー攻撃からの防御の強化、各種情報・機器の取扱い規定に基づく管理、従業員等の教育・啓発を行う等の取り組みを行っております。

しかしながら、サイバー攻撃の手口はますます高度化、複雑化しており、想定を大幅に超える不正アクセス等のサイバー攻撃により、当社グループのシステム停止や機密情報の外部流出が発生するなど、想定を超える事案が発生した場合、業務中断や社会的評価の低下により、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

④企業買収、資本提携及び事業再編リスク

当社グループは、中期経営方針において「既存ICE領域の収益力向上」「非ICE領域であるネクストコア事業・新製品事業を育成・売上比率向上」の事業ポートフォリオ改革を掲げ、その実現に向けた企業買収、資本提携及び事業再編を実施しておりますが、当社及び出資先企業の事業環境の変化、経営や財務その他の要因が、当社グループの事業に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループは、買収や提携等の検討対象企業のデューデリジェンスを慎重に行い、買収や提携後の事業計画を検証することによりリスクの低減に努めておりますが、当社グループ及び出資先企業を取り巻く事業環境に想定外の変化が生じた場合、のれん及び無形資産の減損等により、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑤人材に関するリスク

当社グループの持続的成長については、人材に依存する部分が大きく、優秀な技術者をはじめとする、必要な人材

の採用・育成(キャリア開発)を行うとともに、安全、安心して働くことができる職場環境を整備することが重要であると認識しております。

今後、人的資本経営を展開するためには、事業ポートフォリオに連動した人材ポートフォリオを戦略的に企画・

構築し、人材の多様性やリスキリングなどを通じて、組織・個人の活性化を図ることが求められておりますが、この展開が停滞した場合は、人材の流出など、当社グループの持続的成長に影響を及ぼす可能性があります。

 

(4)法的手続き・災害等のイベント性のリスク

①法的リスク

当社グループは、グローバルに事業を展開しており、環境法、安全衛生法、独禁法、贈収賄防止、安全保障貿易管理など、各国の多岐にわたる法令・規制が関連しております。

当社グループは、コンプライアンス推進機能のさらなる強化を図ることを目的として、専任組織である「法務・コンプライアンス室」を設置し、これらの法令等に適合する社内規定に基づく管理、従業員等の教育・啓発、法令等の改正への適宜対応に加え、各部門・子会社にコンプライアンス責任者(コンプライアンスリーダー)を設置し、自律的な教育・訓練、法令・規定の順守状況の確認を行っておりますが、これらのコンプライアンスの徹底が十分でなく、結果として適用法令等の違反が発生した場合、処罰、処分その他の制裁、対応費用の負担、社会的評価の低下により、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

②災害・感染症・テロ等の事業継続に影響を及ぼす事象に伴うリスク

当社グループの製品は、自動車、各種産業機械や建築・建設等に多く採用されており、その供給責任を果たすことの重要性を認識しております。一方、当社グループの各国事業拠点において大規模地震、水害、火災、感染症の蔓延、テロなど、様々な障害による調達・製造・物流に関わる製品供給停止が発生した場合、当社グループの事業に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループは、供給責任を全うするため「事業継続マネジメント(BCM)基本方針」を定め、災害時の事業継続又は早期復旧・再開を図るための取り組み方針、手続、組織・体制等について定めた事業継続計画(BCP Business Continuity Plan)を策定し、適切な管理体制を整備するとともに、建屋の耐震補強、製品や材料の安全在庫の確保、代替調達先、代替生産拠点の整備などの取り組みを行っております。

しかしながら、深刻な障害が発生した場合の被害や製品供給停止を完全に回避することは困難であるため、有事の際には当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

 当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

 ①財政状態及び経営成績の状況

 当連結会計年度における日本及び世界経済は、総じて緩やかな成長を持続しているものの、各国でのインフレ動向や中国経済の減速、米国の政策動向、地政学リスクなど、依然として先行きが見通しにくい状況で推移いたしました。

 当社グループと関連の深い自動車産業におきましては、認証不正問題等により日本国内の自動車生産台数は減少しましたが、中国市場の成長によりグローバルの自動車生産台数はほぼ前年並みとなりました。なお、中国においては、BEVをはじめとした電動車の伸長により自動車生産台数は増加したものの、内燃機関搭載車の生産は軟調が続いております。

このような状況のなか、当連結会計年度における当社グループの売上高は、為替が円安方向に推移したことや前連結会計年度末に㈱シンワバネスを子会社化したこと等により、170,340百万円となりました。損益面におきましては、原材料費高騰や労務費上昇等の売価反映を進めたことや原価低減活動の効果等により、営業利益は11,807百万円、経常利益は海外の持分法適用会社の利益等により14,678百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は減損損失の計上等により8,756百万円となりました。

なお、当社は2023年10月2日付で㈱リケンと日本ピストンリング㈱の経営統合に伴い、両社の共同持株会社として設立されました。設立に際し、㈱リケンを取得企業として企業結合を行っているため、前連結会計年度(自 2023年4月1日 至 2024年3月31日)の連結経営成績は、取得企業である㈱リケンの2023年4月1日から2024年3月31日までの連結経営成績を基礎に、日本ピストンリング㈱の2023年10月1日から2024年3月31日までの連結経営成績を連結したものとなるため、前連結会計年度との対比は行っておりません。

セグメント別の状況は、売上高は自動車・産業機械部品事業が127,778百万円(前年同期比18.2%増)、配管・建設機材事業が18,676百万円(前年同期比7.1%増)、その他は26,278百万円(前年同期比66.5%増)となりました。営業利益は自動車・産業機械部品事業が9,050百万円(前年同期比39.1%増)、配管・建設機材事業1,197百万円(前年同期比114.3%増)、その他が2,056百万円(前年同期比70.2%増)となりました。

当社グループの当連結会計年度末における総資産は219,045百万円となり、前連結会計年度末に比べ1,119百万円減少いたしました。これは主に投資有価証券が3,291百万円、受取手形及び売掛金が1,151百万円、無形固定資産が755百万円、仕掛品が519百万円、商品及び製品が483百万円減少したことに対し、現金及び預金が3,581百万円、退職給付資産が1,426百万円増加したこと等によるものであります。

負債につきましては64,375百万円となり、前連結会計年度末に比べ6,370百万円減少いたしました。これは主に電子記録債務が4,268百万円、短期借入金が4,044百万円、流動負債その他が798百万円、繰延税金負債が796百万円、退職給付に係る負債が453百万円減少したことに対し、長期借入金が3,739百万円、賞与引当金が374百万円増加したこと等によるものであります。

純資産につきましては、154,669百万円と前連結会計年度末に比べ5,251百万円増加いたしました。これは主に利益剰余金が5,577百万円、為替換算調整勘定が5,309百万円、非支配株主持分が547百万円増加したことに対し、その他有価証券評価差額金が2,548百万円減少したこと等によるものであります。

 

②キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、25,760百万円と前連結会計年度末に比べ、3,498百万円増加しました。

 当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動の結果得られた資金は17,477百万円(前連結会計年度は18,496百万円の収入)となりました。これは主に税金等調整前当期純利益13,151百万円、減価償却費9,437百万円によるものであります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動の結果支出した資金は7,085百万円(前連結会計年度は13,548百万円の支出)となりました。これは主に有形固定資産の取得による支出7,259百万円、投資有価証券の売却及び償還による収入1,115百万円によるものであります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動の結果支出した資金は8,404百万円(前連結会計年度は8,615百万円の支出)となりました。これは主に短期借入金の返済による支出12,454百万円、短期借入による収入8,295百万円によるものであります。

 

 当社グループの資本の財源及び資金の流動性につきましては、資金調達は銀行借入が中心で、当連結会計年度末における借入金は19,337百万円です。また、国内金融機関において合計10,000百万円のコミットメントラインを設定しており、流動性の補完にも対応が可能となっております。

 

 ③生産、受注及び販売の実績

 a. 生産実績

 当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

生産高(百万円)

前年同期比(%)

自動車・産業機械部品事業

125,685

18.8

配管・建設機材事業

11,299

△1.1

報告セグメント 計

136,984

16.9

その他

4,179

△15.8

合計

141,163

15.5

(注) 金額は、販売価格等によっております。

 

 b. 受注実績

 当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

受注高(百万円)

前年同期比(%)

受注残高(百万円)

前年同期比(%)

自動車・産業機械部品事業

127,333

13.1

15,512

△2.4

配管・建設機材事業

18,971

8.3

2,967

11.0

報告セグメント 計

146,304

12.4

18,480

△0.4

その他

35,389

416.0

13,648

517.3

合計

181,693

32.6

32,128

54.7

 

 c. 販売実績

 当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

販売高(百万円)

前年同期比(%)

自動車・産業機械部品事業

127,710

18.2

配管・建設機材事業

18,676

7.1

報告セグメント 計

146,387

16.7

その他

23,952

82.9

合計

170,340

22.9

(注) セグメント間取引については、相殺消去しております。

 

 

(2) 財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析

 当社グループに関する財政状態及び経営成績の分析・検討内容は、原則として連結財務諸表に基づいて分析した内容であります。

 なお、文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2025年6月23日)現在において判断したものであります。

 

 ①重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている企業会計の基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたって、決算日における資産・負債の報告数値、報告期間における収入・費用の報告数値に影響を与える見積りは、主に貸倒引当金、賞与引当金、退職給付に係る負債、製品保証引当金、環境対策引当金、固定資産の減損会計及び繰延税金資産の回収可能性であり、継続して評価を行っております。

 見積り及び判断・評価については、過去実績や状況に応じて合理的と考えられる要因等に基づき行っておりますが、見積り特有の不確実性があるため、実際の結果とは異なる場合があります。

なお、連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しております。

 

 ②当連結会計年度の財政状態の分析

 当連結会計年度における財政状態の分析につきましては「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況」に記載しております。

 

 ③当連結会計年度の経営成績の分析

 当連結会計年度における経営成績の分析につきましては「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況」に記載しております。

 

 ④当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況の分析

 当連結会計年度におけるキャッシュ・フローの状況の分析につきましては「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載しております。

 

 ⑤経営成績に重要な影響を与える要因について

 経営成績に重要な影響を与える要因につきましては「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載しております。

 

5【重要な契約等】

(1) 技術援助契約

契約会社名

相手方

契約年月日

内容

契約期間

対価の受払

国籍

名称

(株)リケン

(連結子会社)

タイ

サイアムリケン社

2023.9.29

ピストンリングの製造法

5年

販売価額の一定料率の受取

インド

ネシア

パカルティリケンインドネシア社

2016.1.1

管継手及び自動車用鋳造部品の製造法

10年

インド

シュリラムピストンアンドリング社

2014.3.1

ピストンリングの製造法

14年

米国

グレディホールディングス社

2019.1.7

鋳物製品の製造法

2029年4.30迄

米国

ヘイスティング社

2021.7.7

ピストンリングの製造法

対象製品の初出荷日から7年

韓国

コリアピストンリング社

2022.6.1

ピストンリングの製造法

10年

中国

温州格羅孛活塞環有限公司

2022.6.1

ピストンリングの製造法

10年

中国

厦門理研工業有限公司

2023.7.1

ピストンリングの製造法

10年

中国

厦門理研工業有限公司

2023.7.1

カムシャフトの製造法

10年

中国

理研汽車配件(武漢)

有限公司

2021.6.30

ピストンリング、シールリング、動弁製品及びその他鋳物製品の製造法

5年

中国

理研密封件(武漢)有限公司

2024.1.1

シールリングの製造法

5年

中国

南京理研動力系統零部件有限公司

2019.9.1

ピストンリングの製造法

10年

中国

南京飛燕活塞環股份有限公司

2019.11.1

ピストンリングの製造法

10年

メキシコ

リケンメキシコ社

2013.9.1

バルブリフターの製造法

2028.12.31迄

メキシコ

リケンメキシコ社

2014.7.1

シールリングの製造法

2028.12.31迄

メキシコ

リケンメキシコ社

2015.9.1

ピストンリングの製造法

2028.12.31迄

日本ピストンリング㈱

(連結子会社)

インド

アイピーリングス社

2023.4.1

スチールリングの製造法

2026.3.31迄

2023.4.1

窒化リングの製造法

2026.3.31迄

2023.4.1

組合せオイルリングの製造法

2026.3.31迄

2023.4.1

PVDコーティング技術

2026.3.31迄

中国

儀征亜新科双環活塞環有限公司

2013.11.15

ピストンリングの製造法

2025.10.30迄

 

(2) 合弁事業契約

契約会社名

相手方

合弁会社名称

出資

比率

契約年月日

備考

国籍

名称

㈱リケン

(連結子会社)

台湾

何 政廷 他

台湾理研工業股份有限公司

50%

1966.12.15

自動車部品の販売

タイ

サイアムモータース社

サイアムリケン社

49%

2015.2.25

インドネシア

①パカルティヨガ社

②明和産業㈱

パカルティリケンインドネシア社

40%

1975.8.22

管継手及び自動車部品の製造及び販売

日本

シーケー金属㈱

㈱リケンCKJV

40%

2011.12.14

配管機器の製造及び販売

中国

南京飛燕活塞環股份有限公司

南京理研動力系統零部件有限公司

40%

2019.6.11

自動車部品の製造及び販売

中国

寧波聖龍汽車動力系統股份有限公司

聖龍理研新能源(寧波)有限公司

50%

2023.5.22

自動車・産業部品等の共同研究開発

日本ピストンリング㈱

(連結子会社)

インド

インディア ピストンズ社他

アイピーリングス社

5.56%

1996.2.9

自動車部品の製造及び販売

中国

儀征亜新科双環活塞環有限公司

儀征日環亜新科粉末冶金製造有限公司

50%

2013.10.30

自動車部品の製造及び販売

ドイツ

大同メタル工業㈱

エヌピーアールオブヨーロッパ社

70%

2018.9.10

自動車部品の製造及び販売

 

(3) 商標権使用許諾契約

契約会社名

相手方

契約年月日

内容

契約期間

対価の受払

国籍

名称

㈱リケン

(連結子会社)

中国

理研汽車配件(武漢)有限公司

2021.6.30

市販品販売に係る商標権の使用許諾

5年

販売価額の一定料率の受取

日本

㈱リケン環境システム

2021.10.1

5年

日本

㈱リケンヒートテクノ

2023.7.1

5年

 

(4) 特許・ノウハウ実施許諾契約

契約会社名

相手方

契約年月日

内容

契約期間

対価の受払

国籍

名称

㈱リケン

(連結子会社)

日本

㈱リケン環境システム

2021.10.1

製造販売に係る特許及びノウハウの実施許諾

5年

販売価額の一定料率の受取

日本

㈱リケンヒートテクノ

2023.7.1

5年

スイス

Georg Fischer Automotive AG

2013.7.1

いずれかの当事者が終結を申し入れない限り、無期限

販売価額の一定料率の支払

 

6【研究開発活動】

 2023年10月に経営統合したリケンNPRグループは、両社の強みを生かしながら研究開発を進めております。ICE製品の開発においては、社会の目指す「カーボンニュートラル」達成に向けて排ガス規制対応技術、燃費低減技術や水素エンジン、バイオフューエル等の代替燃料に対応する主要製品の開発を進めております。新規事業創出活動は、両社の保有技術を活かした新分野(電動ユニット製品、機能性樹脂製品、磁性材製品、医療機器製品等)の開発を行っており、中長期の主力となる製品を生み出すべく活動を推進しております。

 なお、当連結会計年度に支出した研究開発費の総額は4,569百万円であり、各セグメントの研究開発活動は次のとおりであります。

 

(1) 自動車関連製品事業

当連結会計年度における自動車関連製品事業に係る研究開発費は3,891百万円であり、主な研究開発活動は次のとおりであります。

① 次世代低燃費エンジン用ピストンリング

今後のカーボンニュートラルに向け、エンジンにはより一層の高熱効率化、クリーン化、カーボンニュートラル燃料への対応が求められており、カーボンニュートラルへの対応のため、エンジンの比出力、燃焼圧力は上昇し、摩擦損失の低減、粒子状物質(PM)の低減への取り組みが行われております。これらのエンジン開発動向に対し、ピストンリングでは低摩擦で高耐久性を実現する厚膜DLC皮膜や、過給エンジンのノック環境に対応した高靱性CrN皮膜を市場に投入しており、また新たにカーボンニュートラル燃料に対応したピストンリングの提案も行っております。

一方で、エンジンシステムの高機能化に伴う製品コストのバランス配分や効率的な製品開発への対応として、機能予測ツールの開発とそれを活用したモデルベース設計、ものづくり革新として低コストで高精度なピストンリングの開発にも取り組んでおります。また、産学連携強化も進めており、AICEのエンジン研究活動に直接参加し、日系企業の技術開発強化にも取り組んでおります。

 

② 次世代ディーゼルエンジン用ピストンリング

商用ディーゼルエンジンにおいても燃費基準に適合したエンジン開発が行われており、これまで以上の低燃費技術が求められております。燃費基準に適合したエンジン開発においては、新たにフリクションを低減させる高耐摩耗・高靱性CrN改良皮膜、厚膜DLC皮膜、及び低摩擦、低張力で高い潤滑油調整機能を持つ新形状のオイルリングの開発が完了し、クリーンな排ガスと低燃費、耐久性を両立させる製品を市場展開しております。また、生産性向上の取組みとして素材形状の最適化に加え、加工精度の向上による生産性の改善を実現しております。

 

③ バルブシート

ハイブリッド専用機関等の環境に対応した内燃機関の熱効率を向上するために、高い耐摩耗性が要求される希薄燃焼ガソリンエンジン、EURO7対応ディーゼルエンジン、代替燃料(ガス、エタノール)エンジン、カーボンニュートラル燃料対応エンジンに対応可能な高機能製品の開発に取り組んでおります。また、機能面だけでなくコスト低減を意識し、お客様にとって満足して頂ける最適仕様の製品開発にも取り組んでおり、あらゆる地域の顧客ニーズに対応することを目指し、グローバルな技術提案を行っております。

 

④ 組立式焼結カムシャフト

環境対応内燃機関の熱効率向上に寄与する軸部薄肉化による軽量化や、低燃費・高出力に対応する高面圧対応が可能な材料技術を有しており、お客様へ提案を行っております。また、お客様での加工取り代削減と、加工後の材料不良を削減させるため、素材精度向上と素材内在不良低減の開発も継続して行っております。

 

⑤ メタモ―ルド(金属粉末射出成形部品)

CASE領域の中、加速していく自動車の電動化に伴い、操舵系や駆動系関連の部品及び産業機械向け部品について多数の引き合いを受けております。複雑形状をした部品の引き合いは継続して増えており、拡販活動に取り組んでおります。また、新規参入に向けて材料ラインナップの拡充を図っており、外科用インプラントの標準規格ASTM-F2885に準拠したTi-6Al-4V合金材料の開発に成功し、インプラント関連製品への展開を図っております。

 

 

⑥ 新規焼結製品

当社が保有しているバインダージェット方式の3D金属積層造形法は、複雑形状の製品に適用が可能であることに加え、金型不要であり、かつメタモールドと同等の材料特性が得られる特徴を生かし、メタモールドで量産を

検討しているお客様の試作リードタイム短縮や試作金型費用削減に活用することでメタモールドの量産獲得に向けた展開を図っております。

また、整形インプラント等の医療関連製品においては、複雑形状且つ生産数量が少ないことから3D金属積層造形法が有用であり、新規参入に向けて材料ラインナップの拡充を図っております。

 

 (2)配管・建設機材事業

当連結会計年度における配管・建設機材事業の製品に係る研究開発費は205百万円であり、主な研究開発活動は次のとおりであります。

① ガス配管用継手

ガス配管用継手は、特に安全性と品質保証能力の向上が求められており、各都市ガス会社との共同研究を中心に開発を行っております。近年は、安全性・品質と同様に環境に配慮した製品設計や、配管施工者の人手不足に対応した省力化に注力した製品開発要請が強まっており、都市ガス、LPG向けにこれらに対応した高品質な製品の開発に取り組んでおります。

 

② 建築設備配管用継手

建築設備配管用継手もガス配管用継手同様に、安全性・品質はもとより、環境に配慮した製品設計や省力化に注力した製品開発要請が強まっております。同時に、消火・給水・給湯用の配管においては、近年、鋼管からステンレス管や樹脂管への材質代替が進んでおり、これらに対応するため、鋼管用継手に加え、ステンレス管用継手、樹脂管用継手の製品開発に注力しております。

 

③ 高強度ダクタイル製品

高強度ダクタイル製品は、独自の化学成分管理と製造ノウハウにより、FCD800・FCD900相当の高強度鋳鉄製品の大量安定生産が可能となっております。また、これら鋳造技術に加え素材のみならず、加工から表面処理まで一貫した生産対応で、鉄筋用継手や各種歯車等の開発に取り組んでおり、多様な顧客要望に対応しております。

 

(3) その他の製品

当連結会計年度におけるその他の製品に係る研究開発費は471百万円であり、主な研究開発活動は次のとおりであります。

 

① 新製品・新事業関連

1)モータ・減速機製品

小型産業用ロボット向けの小型軽量化、高精度化に貢献する波動減速機の開発を行っております。特徴としては、剛性と角度伝達精度に優れた新機構(3ローブ波動減速機)の適用や軽量化を実現する樹脂材料の採用(軽負荷用途向け)があります。展示会等に出展し、お客様の声をお聞きしながら、お客様の製造工程のロボットに組み込まれる部品(製品)としての引き合いなど多数受けており、お客様でご評価いただいております。

また、電動化要求の強まり、少子高齢化による労働力不足などの社会現象に鑑みて、小型搬送装置やパーソナルモビリティ、屋外用小型移動体(ロボット)への適用を目指したモータ及び減速機の開発を行っております。

高い設計能力によりお客様のニーズを満たすラジアルギャップモータ、独自の圧粉コアを利用したアキシャルギャップモータといった薄型モータと、オリジナルの3K遊星・波動減速機等の薄型減速機を組み合わせた超薄型ギヤードモータを基軸とした設計開発に取り組んでおります。3K遊星減速機と薄型モータを組み合わせた超薄型アクチュエータについては、小型移動体駆動用としてお客様に評価して頂き、好評を得ております。また、銀河電機工業㈱様と当社が共同開発した圧粉コアを使用したアキシャルギャップモータユニット(減速機、ブレーキ含む)が㈱DONKEY様発売の農業支援ロボットCP200(2024年9月1日販売開始)に採用されました。

引き続き、差別化されたギヤードモータの製品化を目指した設計・開発を推進いたします。

 

 

2)樹脂関連製品

モビリティ用部品の分野で軽量化、静音化などに貢献する製品を開発しております。リケンのシールリング製品で培ったスーパーエンプラの射出成形技術を元に高強度樹脂ギアの開発を行っており、高強度樹脂材料の開発とオリジナルギア設計技術、それらの組み合わせにより高強度樹脂ギア製品を提案・提供し、超小型モビリティのドライブユニット向けでPEEK材を用いたギアを量産化いたしました。そうした実績から、PEEKに限らず射出成形ギアの開発を行い、ギア拡販に取り組みを進めております。

また、電動化の流れの中で、金属から樹脂への置き換えによる軽量化検討が様々検討されており、電磁波対策を付与した樹脂成形品が求められております。当社ではEMC機能を付加したEV向けケース製品の開発を行っており、また併せて金属と樹脂を接合する技術を用いて、それぞれの特性・性能・機能を持ち合わせた製品の提案も行っております。(※異種材料接合技術のパイオニア企業である大成プラス㈱との資本業務提携による共同開発)

当社ではケース製品のように大きな型締め力(200ton超)を必要とする射出成形技術は新たな領域であり、射出成型機の導入を含めて技術導入を進めております。

 

3)EMC関連製品

自動車関連ではCASEの領域拡大が見込まれ、通信関係でも基地局、通信機器や測定機器などで電磁波ノイズ対策が求められております。車載電装機器、ADASなどの次世代通信技術に貢献する電磁波対策部材を開発・提供しております。

通信技術の高速大容量化や電子機器の小型・薄型化に対応できる高周波ノイズ抑制シート(GHz、MHz)、車載用レーダーや5G通信機器の電波干渉対策・検知感度を向上させた電波吸収シートを開発しております。

ノイズ抑制シートでは車載機器用や医療測定機器などで、電波吸収シートでは一般測定機器用で市場実績をあげております。

また、EVやHEV向けのワイヤハーネスからのノイズに対して高い抑制効果を確立させたノイズ抑制コア製品も開発しております。このコア製品は、軽量・省スペース化を狙った連結型や施工済みのワイヤハーネスに後付け可能な分割型など形状・設計のご要望にもお応えできる製品となっております。ご要求の性能に応じて、価格も考慮した材料設定もできるようにしております。

 

4)医療関連製品

生体適合性に優れたチタンタンタル合金(NiFreeT®)を使用した長期体内留置部材を医療機器メーカーと協業して製品化開発を進捗させております。NiFreeT®はチタン合金でありながら優れたX線視認性を持つことから、プラチナ合金の代替部材としての開発も行っております。NiFreeT®は骨に近い剛性であること、弾性率を変化させることができることから、整形インプラントへの適用を狙い、継続的に大学と連携をしております。

また、表面処理ではこれまでピストンリングで培ってきたPVD、DLCを医療機器に適用すべく生体適合性の評価も行っております。今後、生体毒性から規制が懸念されるコバルト合金や、PFASの代替技術の候補になりえる可能性があることから、医療機器メーカーと共同で開発を行うとともに、大学との連携も開始しております。さらに、大学病院のドクターにアドバイスを頂きながらニーズをリアルタイムでキャッチし、QOL(Quality of Life)を向上させる医療機器の開発も進めております。

歯科インプラントの開発・改良では、顧客要望から特殊領域へのインプラント埋入手術用術具の開発を完了させ販売を開始しましたところ、国内外の歯科医師から高い評価を得ております。今後もデジタル化が進む歯科業界のニーズに応えた製品展開や顧客要望を基にした商品開発・改良・取扱商品拡充により顧客満足度の向上を図ってまいります。

 

② 熱エンジニアリング応用製品

当社の熱エンジニアリング事業は、独自電熱材材料PYROMAX®、PYROMAX SUPER®とそれを活用した省エネ電気炉PYRORIK®の製造販売を手掛けており、60年を超える歴史において、半導体装置産業など特に高温領域でのヒータを必要とされるお客様のニーズに応える製品を提供してまいりました。2024年2月に株式会社シンワバネスが当社グループに加わることで、半導体製造装置向けヒーターユニットについては、高温から低温まで幅広い温度域の開発対応が可能となりました。これにより従来の半導体製造装置から最先端装置までの多様化する温度管理ニーズに対し、より柔軟かつ広範囲にソリューションを提供できる体制が整いました。今後も中長期的に大きな成長が見込まれる半導体ニーズに対応して、持続的に伸長することが予想される半導体製造装置の進化発展を見据え、優れた熱伝導性・緻密な温度管理・均等な温度分布など、熱解析技術(CAE)を駆使した高性能な製品の開発に取り組んでまいります。

また、昨今のカーボンニュートラルの潮流をうけて、各種の産業分野では熱エネルギーを化石燃料燃焼加熱からヒータによる電気加熱への転換が加速度的に進んでおり、需要はさらに大きく拡大するものと期待されます。さらなる環境性能を追求した製品・製造技術の研究開発に取り組み、事業の拡大を目指してまいります。

 

③ 水素・新エネ関連製品

当社は、カーボンニュートラルを実現する新世代燃料である水素、合成燃料、バイオ燃料などを使用する次世代エンジンに関連した新製品・新事業の創出を目指しております。

開発設備は、水素エンジンを実機評価できる専用のベンチ室を4室保有すると共に、大型水素供給設備のトレーラー庫を備え、大型トラックや建設機械向けの大型エンジンの評価にも対応し、自社開発への活用だけでなく、顧客向けのエンジニアリングサービスの提供も行ってまいります。

開発事例として、ディーゼルエンジンを水素エンジンにコンバージョンし、水素タンクを搭載した小型トラックを開発しております。2025年4月現在、このトラックは車検を取得済みで公道を走行可能となっております。関連会社における製品輸送での利用を見据え、各種走行テストを計画しております。

地域の水素利活用やFCVを初めとした水素車両の普及に向け、新潟県柏崎市に水素ステーションの建設を進めており、柏崎市が掲げるゼロカーボンシティ推進戦略の一翼として、再生可能エネルギーの地産地消と地域の活性化に貢献することが期待されております。

引き続き、評価設備拡充や水素車両による実証試験も進め、次世代を担う事業を模索してまいります。また、地域のカーボンニュートラルに貢献できる研究開発にも取り組んでまいります。