第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) 経営方針

当社グループは、お客さまの心からの満足、感動と信頼を第一に考え、お客さまと共に成長する企業であり続けるために「お客様の信頼第一」を基本理念の一番に掲げております。お客様と共に成長するためには、私たち一人ひとりが新分野・新技術へのチャレンジをするとともに、成長への自律的な努力に対し惜しみない協力と援助を行うことにより、人を活かし、人を大切にできる心豊かな企業であり続けるために「価値ある人財へ」を二番目に掲げております。さらには、私たちが決めた仕事の手順などのルールや、国内外の法とコンプライアンスを順守し、環境調和を常に考え、堅実・誠実・公正な活動の実践で全てのステークホルダーに貢献できる企業であり続けるために「きっちり 『ルール』、しっかり 『マナー』」を三番目に掲げ、常にお客様からの心からの「ありがとう」を目指しております。

当社グループは、時代に即したコミュニケーションでお客さまとマーケットをつなぎ、満足され、感動される品質で信頼を築く良きパートナーであり続けるために、「Good Communication, Good Partner」を企業スローガンとしております。(図3)

 


図3:基本理念、明日への宣言、ものづくり標語、企業スローガン

 

■中期経営方針

当社グループは、上記の基本理念及び企業スローガンのもと、将来のあるべき姿として、2024年6月期から『2026中期ビジョン 「コミュニケーション」と「包む」技術で、お客様と新しい感動を創り、未来へつなげる。』を掲げ、お客さまに寄り添って「新しい感動」を創ることで、お客様の利益や幸せ、豊かさにつなげ、そして、私たちの未来にもつなげる事業を目指しております。(図4)

その実現に向けて、市場環境の変化を見据えた事業戦略及び生産体制の合理化を推進する経営基盤を構築し、持続的な成長と企業価値向上を確かなものとするため、中期経営計画(2024年6月期から2026年6月期までの3ヵ年計画)の実現に向けて、全社視点での重点施策及び、各事業における施策を着実に実行することで計画達成に邁進しております。(図5)

 


図4:2026中期ビジョン

 


図5:2026中期ビジョン 成長ストーリー

 

(2)目標とする経営指標

当社グループは、お客様の良きパートナーとして共に発展していくことにより、収益性を確保し、当社グループ全体の売上高営業利益率を高めることを目標とし、企業価値の増大に努めてまいります。

 

(3) 経営環境及び対処すべき課題

今後の見通しにつきましては、国内経済は、物価上昇の継続、人件費及び物流費の高騰、加えて人手不足の深刻化などが、事業活動に影響を及ぼす可能性があると認識しております。世界経済においても、米国の金融政策の動向や中国経済の減速懸念、さらには国際的な紛争の長期化に伴う地政学的リスクの高まりなどにより、先行き不透明な状況が継続すると見込まれます。

当社グループにおきましては、国内印刷市場における旺盛なパッケージ需要を取り込むべく、生産性の向上や設備投資による生産能力の増強を推進するとともに、生成AIをはじめとする先端技術の実用化に積極的に取り組んでまいります。さらには、デジタルデータ加工技術を生かしたデジタルメディア領域の競争力強化に向けた事業構造改革を、スピード感をもって推進してまいります。

また、海外事業におきましては、中国及びインドネシアにおける販売拡大に注力するとともに、その他の東南アジア諸国への新規展開に向けた市場調査・分析を進め、将来的な事業拡大の基盤構築を図ってまいります。

 このような環境下において、当社グループの対処すべき課題は、以下のとおりです。

①販売戦略

パッケージング分野においては、安定した市場ニーズが継続している一方で、持続可能な供給体制の確立並びに製品の差別化及び新たな付加価値の創出が、企業価値の向上に資する喫緊の課題です。当社グループは、長年にわたり培ってきた技術的知見と豊富な実績を基盤に、高度な紙器構造設計技術を活用し、環境負荷の低減に配慮したサステナブルなパッケージ製品の開発・提供に取り組んでおります。

さらには、商品の保管、受注処理、梱包、発送、在庫管理に至るまでの物流業務全般を包括的に受託するフルフィルメントサービスの展開に一層注力し、発想から発送までを一貫して支援するワンストップソリューションを提供してまいります。

コミュニケーション分野においては、紙媒体からデジタルメディアへの移行が進む中、デジタルコンテンツ制作の需要が高まっております。当社グループは、印刷関連分野で培った制作技術やデジタルデータ加工・ネットワーク構築のノウハウを活用し、これらをさらに進化させることで、情報分野での土台づくりを進めながら、付加価値の高いソリューションの提供による収益機会の拡大を図ってまいります。

 

②生産体制の構造改革

旺盛なパッケージ需要に対応するため、基盤となる生産能力の増強及び安定的な供給体制の整備が喫緊の課題となっております。需要動向に応じた最適な人員配置の推進に加え、機械稼働率の向上及び内製化の促進を継続的に図ってまいります。

さらに、IoT技術を活用した製造ラインの可視化を進め、価格競争力の強化と持続可能な生産体制の構築を目指してまいります。

 

③サステナビリティ経営、人的資本経営の推進

当社グループは、新分野・新技術への挑戦と、成長に向けた自律的な努力に対して、惜しみない支援を行うことで、人を活かし、人を大切にする心豊かな企業であり続けることが、持続的な発展に繋がると考えております。その実現に向けては、社員の健康と安全の確保を最優先に、多様な価値観や個性を尊重しながら、人的資本経営の推進に取り組んでおります。

具体的には、人事評価制度の高度化を通じて、従業員の能力・成果を適正に把握し、評価の透明性と納得性の向上を図っております。また、タレントマネジメントの強化により、個々の人財の特性を的確に把握し、最適な配置及び育成を推進しております。

これらの取り組みは、人的資本を企業価値の源泉と捉え、持続的な成長と組織力の強化を目指す経営戦略の一環として位置付けております。

 

④AI・DXの推進

当社グループは、業務の自動化による労働生産性の向上を、経営上の最重要課題と位置付けております。この課題に対応するため、社員のICTリテラシー向上を目的とした教育施策を強化するとともに、業務プロセス及び製造プロセスのデジタル化を積極的に推進しております。さらに、生成AIをはじめとする先端技術の活用を通じて、新たな企業価値の創造を図り、持続的な成長と目標達成に向けた取り組みを加速してまいります。

 

⑤情報セキュリティの強化

近年、サイバー攻撃等の脅威が増加しており、システム障害による事業停止や情報漏洩による社会的信用の低下は、当社グループの業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。当社グループは、機密情報を多数取り扱っていることから、情報セキュリティの強化を最重要課題と位置付けております。

そのため、インシデント発生時の対応体制の整備、業務継続のための代替手段の確保、標的型攻撃メールを想定した定期的な訓練の実施、社員の情報リテラシー向上など、情報セキュリティ対策の強化に継続的に取り組んでまいります。

 

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

(1) サステナビリティ全般に関する考え方及び取組

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組みは、次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。

 

① ガバナンス

当社グループのサステナビリティに関する具体的な取組みは、環境に関するリスク及び機会は環境管理委員会が担当し、法務・労務・倫理・人権などのリスク及び機会はリスク・コンプライアンス委員会が担当しております。各委員会には代表取締役社長・本部長・工場長が出席して、各委員会で審議された対応策をモニタリングをしております。

なお、サステナビリティに関する重要事項については、必要に応じて常勤役員会または取締役会へ報告し審議しております。

 

② リスク管理

環境管理委員会及びリスク・コンプライアンス委員会は、四半期ごとに年4回開催されており、各委員会がリスク及び機会の特定・分析・評価を行い、リスクへの対応方針を審議して、当社グループ全体に展開しております。

 

③ 戦略

当社グループは、持続可能な社会の実現に向けたSDGs推進の一環として、環境マネジメントシステムの継続的な改善を通じて、環境負荷の低減及び環境貢献(グリーン化)に取り組んでおります。これに加え、環境配慮型の製品及びサービスの提供を積極的に推進し、全従業員がグリーン社会の実現に向けて主体的に参画できる体制の構築を目指しております。

この方針に基づき、当社は以下の環境戦略に取り組むことで、企業としての社会的責任を果たすとともに、持続可能な成長と企業価値の向上を図ってまいります。

1)脱炭素社会への挑戦

省エネルギー活動による温室効果ガス排出の削減を通じ脱炭素社会の実現に挑戦します。また全従業員が自覚をもって業務効率化を推進し当社グループ全員で脱炭素化に取り組みます。

2)資源循環型社会への貢献

資源の循環的な利用、廃棄物等の発生を抑制し、天然資源の消費を抑制することで持続可能な社会の実現に貢献します。

3)人と環境に優しい製品開発

すべての人の使いやすさ、環境配慮を実現した製品開発を行い、お客様に満足いただける製品・サービスの提供に努めます。

 

人的資本に関する方針として、当社グループは「価値ある人財へ」という基本理念のもと、人的資本経営を重要な戦略として位置づけ、従業員一人ひとりが最大限の能力を発揮できる体制の構築に取り組んでおります。社員の健康と安全を最優先に、多様な価値観や個性を尊重した働きがいのある職場環境の整備を進めるとともに、将来を見据えた人財育成の強化に向けて、人的資本への投資を継続的に拡充しております。

また、多様性の推進にも注力しており、性別・国籍・障害の有無等にかかわらず、グローバル人財や障害者の雇用拡大ならびに多様な経験を有するキャリア人財の採用を積極的に進めております。これらの取り組みを通じて、持続的な成長と企業価値の向上を図ってまいります。

 

 

④ 指標及び目標

当社グループは、環境に関する戦略及び人的資本に関する戦略において、次の指標を用いております。当該指標に関する目標及び実績は、次のとおりであります。

<環境に関する指標>

指標

2024年度実績

(76期)

2025年度目標

(77期)

2030年度目標

(82期)

CO₂排出量の削減(Scope1+2)

3,992 t-CO₂

3,196 t-CO₂

(74期比 27%削減)

3,003 t-CO₂

(65期比 60%削減)

 

(注)CO₂排出量は、以下を対象に算出しております。

   Scope1:当社の国内工場及び営業拠点における直接排出量。

   Scope2:当社の国内工場及び営業拠点におけるエネルギー起源の間接排出量。

 


 

<人的資本に関する指標>

指標

2025年度実績

2026年度目標

女性育児休業等取得率

100.0

100.0

男性育児休業等及び育児目的休暇の取得率

100.0

100.0

 

(注)管理職に占める女性労働者の割合、男性労働者の育児休業取得率及び労働者の男女の賃金の差異についての実績は、「第1 企業の概況 5 従業員の状況 (4) 管理職に占める女性労働者の割合、男性労働者の育児休業取得率及び労働者の男女の賃金の差異」に記載しております。

 

 

 

3 【事業等のリスク】

本書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) 事業を取り巻く経済環境及び需要動向に関するリスク

(顕在化の可能性:中、発生時期:特定時期なし、影響度:中)

印刷産業は、プリントメディアの需要減少が進む中で、印刷事業を軸としながらも、新たな事業分野の開拓(エレクトロニクス、情報セキュリティ、通販、BPOなど)で収益源を確保する動きが活性化しております。当社グループが展開している印刷事業は、市場開発・生産・流通・調達などの事業活動をベースとして展開しており、その活動範囲は、国内にとどまらず、中国、インドネシアへ拡大しております。

当社グループの業績及び財政状態は、事業活動を行う上で各国の経済環境や需要動向の変化、デジタルメディアへの一層の進行など、市場環境が変化する中で、新たに取り組む事業領域において売上を拡大することができなかった場合には、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(2) 法律・規制に関するリスク(顕在化の可能性:低、発生時期:特定時期なし、影響度:小)

当社グループは、事業活動を行う上で、環境保護、個人情報保護など、関連する法律や規制の適用を受けております。当社グループの事業活動に影響を及ぼすものとして、化学物質に対する規制などが制定・導入されております。したがって、将来においても、新たな法律や規制により、事業活動の制約や管理コストの上昇などが生じた場合には、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(3) 海外事業展開のリスク

 (顕在化の可能性:中、発生時期:特定時期なし、影響度:大(中国)・小(インドネシア))

当社グループは、中国、インドネシアで事業活動をしており、その国において大規模な地震や風水害などの自然災害や、戦争・テロ・暴動、ボイコット、感染症、エネルギー供給障害、交通障害を含む社会的・政治的混乱などの地政学リスクが存在します。さらに政治的・経済的条件の急激かつ大幅な変動などの要因により、当社グループの事業活動の継続に支障をきたす可能性があり、その結果、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(4) 気候変動に関するリスク(顕在化の可能性:中、発生時期:特定時期なし、影響度:中)

当社グループは、気候変動に伴い、台風の大型化、洪水や渇水の発生頻度の増加による事業活動中断のリスク、降雨パターンの変化に伴う原材料調達に関するリスクがあります。自然災害が発生した場合の迅速な初期対応の推進及び業務を早期に復旧継続させることを目的とした事業継続計画(BCP:Business Continuity Plan)の策定など、具体的に進めております。

また、当社グループの生産拠点におけるGHG排出量の削減、当社グループが販売する製品における環境負荷低減などの製品開発などに努めております。

しかしながら、国内外において気候変動対策のための制度・規制の導入が進んだ場合、事業活動の制約やコストの上昇など、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(5) 市場性のある有価証券の保有に関するリスク

 (顕在化の可能性:低、発生時期:特定時期なし、影響度:中)

当社グループは、市場性のある有価証券を保有しております。株式市場や金利相場等の変動によっては、有価証券の時価に影響を与え、業績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

 

 

(6) 研究開発活動に関するリスク(顕在化の可能性:中、発生時期:特定時期なし、影響度:小)

当社グループは、将来の成長性を確保するという観点から、デジタルメディアやカーボンニュートラルへの対応等、マーケットニーズに的確に対応した技術確立と開発を進めるべく研究開発投資を行っております。しかしながら、計画どおりの十分な成果を上げることができない場合や想定し得ないような急激な技術革新が起きた場合には、当社グループの経営成績に影響が生じる可能性があります。

 

(7) 製品の品質に関するリスク(顕在化の可能性:低、発生時期:特定時期なし、影響度:中)

当社は、ISO9001及びISO14001を取得しており、安心安全で信頼できる製品を顧客に提供できるような品質管理体制の構築を図っております。

しかしながら、予想し得ない品質上の欠陥に基づく製造物責任の追及がなされた場合には、補償費用の負担や、再生産に係る費用の追加負担により、当社グループの経営成績に影響が生じる可能性があります。

 

(8) 原材料調達に関するリスク(顕在化の可能性:低、発生時期:特定時期なし、影響度:中)

当社グループは、事業に使用する印刷用紙、インキなどの原材料を外部メーカーから調達しております。事業活動の維持のためには、十分な量の原材料を適正な価格で調達することが重要ですが、外部メーカーからの供給量の大幅な不足や納期の遅延などが発生した場合、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(9) 原材料等の価格高騰に関するリスク(顕在化の可能性:中、発生時期:特定時期なし、影響度:大)

印刷用紙、インク、印刷用の版など、当社グループが使用する原材料等は、世界情勢の変化、市況等により変動いたします。特に主要材料である印刷用紙は原材料に占める割合は大きく、価格変動による影響が最も大きくなります。

従って、当社グループは、複数企業からの購買や、計画的な購買によって原材料等の安定的な調達に努める等の施策を実施しリスクを低減しております。また、企業努力だけでは吸収しきれない原材料価格や製造コストの上昇等については、販売価格への転嫁を行い収益性の改善に努めております。

しかしながら、これらのコストダウンや販売価格に転嫁するまでにタイムラグが生じたり、完全に販売価格に転嫁できない場合は、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(10) 競争激化に関するリスク(顕在化の可能性:中、発生時期:特定時期なし、影響度:中)

当社グループは、事業を展開する市場において多数の企業と競合しているため、価格競争が激化し受注価格の低下が発生しております。このような事業環境に対し、当社グループは、原価の低減や効率性の追求、顧客や市場への新しい付加価値の高い製品の開発と提案などによる内部努力を継続しておりますが、それらの努力で価格低下を吸収できない場合には、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(11) 人財の採用・育成に関するリスク(顕在化の可能性:中、発生時期:特定時期なし、影響度:中)

当社グループは、高度な技術力や企画力等を有する優秀な人財の採用・育成が、将来の成長性、収益性等を確保するために必要不可欠な要素であると認識しており、新卒採用のほかにも多様な専門性を有する人財を確保すべく中途採用の実施等、幅広く優秀な人財を求めております。

しかしながら、そのような人財の採用や育成ができなかった場合には、競争力が低下し、当社グループの経営成績に影響が生じる可能性があります。

 

(12) 新たな感染症に関するリスク(顕在化の可能性:中、発生時期:特定時期なし、影響度:中)

新たな感染症が発生し世界的に拡大した場合には、内外経済を下振れさせ、景気が減速するリスクがあります。多くの業界と取引があり当社グループに与える影響を正確に見通すことは困難ですが、当社グループが所属する印刷メディア市場におきまして、市場の縮小により経営成績等に影響を与える可能性があります。

 

 

(13) 情報システム障害及び情報セキュリティ管理に関するリスク

(顕在化の可能性:中、発生時期:特定時期なし、影響度:中)

当社グループの事業活動における情報システムの重要性は非常に高まっており、情報セキュリティの高度化などシステムやデータ保護に努めておりますが、万一、災害やサイバー攻撃など外的要因や人為的要因などによる情報システム障害や、情報の流失による問題が発生した場合には、当社グループのイメージや社会的信用の低下、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(14) 繰延税金資産の回収可能性の評価によるリスク

(顕在化の可能性:低、発生時期:特定時期なし、影響度:小)

当社グループは、将来減算一時差異及び税務上の繰越欠損金に対して、将来の収益力に基づく課税所得等を見積り、回収可能性があると判断した範囲内で繰延税金資産を計上しております。

しかし、実際の課税所得が見積りと異なることで繰延税金資産の全部または一部の回収可能性が無いと判断される場合には、繰延税金資産を減額することになります。その結果、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(15) 匿名投資組合投資に関するリスク(顕在化の可能性:中、発生時期:特定時期なし、影響度:小)

当社は匿名投資組合(航空機リース事業投資)へ投資をしております。

この投資商品にはリース期間中の収益と終了後の資産売却によってキャピタルゲインを得られる可能性がありますが、一方で「航空会社の倒産リスク」「リース会社の倒産リスク」等のリスクを併せ持っており、これらのリスクが顕在化する場合、業績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

 

(16) 大株主等の関係についてのリスク(顕在化の可能性:低、発生時期:特定時期なし、影響度:小)

王子マテリア株式会社(王子ホールディングス株式会社の100%子会社)は、当連結会計年度末現在、当社議決権の17.81%を所有する大株主であり、その他の関係会社に該当しております。同社の状況については、「第1 企業の概況 4 関係会社の状況」に記載のとおりとなります。

当社は、同社及び同社の親会社グループ(以下、「同社グループ」という。)との間で特段の人的関係を有しておりません。また、当社と同社グループは原材料の仕入及び製品の販売に関する取引を行っており、当社において、その取引規模は高い水準となっておりますが、同社グループとの取引につきましては、いずれも他社との取引条件及び市場価格を参考に決定しています。

なお、同社グループとは今後も取引先としての関係を維持していく方針でありますが、同社グループによる当社経営への関与は特になされておらず、当社は、同社グループにおいて今後も当社経営に積極的に関与する等の意向はないものと認識しております。

仮に、同社が当社株式を売却する場合には、売却する株式数や売却時の市場環境等により、当社株式の流動性や市場価格等に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

① 経営成績の状況

当連結会計年度におけるわが国経済は、緩やかな回復基調を維持し、個人消費は賃金の上昇や雇用環境の改善を背景に持ち直しの動きが見られました。しかしながら、エネルギー価格や生活必需品の価格上昇により、個人消費は本格回復には至らず、依然として先行き不透明な状況が続いております。

こうした環境下にあって当社グループは、2026年中期経営計画『「コミュニケーション」と「包む」技術で、お客さまと新しい感動を創り、未来へつなげる』を推進し、各分野の収益性と成長性の位置づけを明確にして戦略的に経営資源を再配分した改革に取組み、企業価値向上を進めました。

パッケージング分野は、菓子・食品向けパッケージと関東地区・中部地区のフルフィルメントサービス需要が堅調に推移いたしました。また、エネルギー価格や諸資材価格、人件費の高騰に対しては、収益性を重視した営業活動を展開し、製品価格の適正化を進めました。

コミュニケーション分野は、情報媒体のデジタル化により、カタログやパンフレット類が低調に推移したことや、自動車業界の新車販売延期に伴う販売促進関係が低迷したことなどにより低調に推移しました。

また、生産面においては、旺盛なパッケージ需要に対応するため、安定した供給体制の構築に努めるとともに、業務の効率化と品質向上を目的として、適材適所での内製化の推進及び外製化の活用を進めました。

なお、商品分野別の業績の概況は次のとおりであります。

パッケージング分野の売上高は88億96百万円(前期比4.2%増)となり、コミュニケーション分野の売上高は36億58百万円(前期比17.2%減)となりました。

以上の結果、当連結会計年度の業績は、売上高が125億55百万円(前期比3.1%減)、営業利益は1億85百万円(前期比51.0%減)、経常利益は4億20百万円(前期比21.5%減)となり、親会社株主に帰属する当期純利益は2億46百万円(前期比38.0%減)となりました。

 

 

② 財政状態の状況

当連結会計年度末の総資産額は、140億8百万円となり、前連結会計年度末に比べ14億5百万円減少しました。その内訳と増減要因については、次のとおりであります。

 

(資産)

流動資産は51億22百万円となり、前連結会計年度末に比べ10億68百万円減少しました。これは主に、現金及び預金の減少7億82百万円、受取手形の減少98百万円、売掛金の増加53百万円、電子記録債権の減少2億88百万円によるものであります。

固定資産は88億86百万円となり、前連結会計年度末に比べ3億36百万円減少しました。これは主に、建設仮勘定の減少1億2百万円、保有株式の時価評価による投資有価証券の減少1億64百万円、保険積立金の減少73百万円によるものであります。

 

(負債)

流動負債は36億32百万円となり、前連結会計年度末に比べ8億14百万円減少しました。これは主に、支払手形及び買掛金の減少63百万円、電子記録債務の減少4億68百万円、1年内返済予定の長期借入金の減少1億97百万円、未払法人税等の減少86百万円によるものであります。

固定負債は12億28百万円となり、前連結会計年度末に比べ2億73百万円減少しました。これは主に、長期借入金の減少1億円、繰延税金負債の減少96百万円、取締役に対する退職慰労金制度廃止に伴う役員退職慰労引当金の減少1億3百万円によるものであります。

 

(純資産)

純資産は91億48百万円となり、前連結会計年度末に比べ3億16百万円減少しました。これは主に、利益剰余金の増加1億31百万円(親会社株主に帰属する当期純利益2億46百万円による増加及び、配当金の支払1億14百万円による減少)、自己株式の取得による自己株式の増加(純資産は減少)88百万円、その他有価証券評価差金の減少3億36百万円によるものであります。

 

③ 当期のキャッシュ・フローの概況

当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ11億32百万円減少し、6億10百万円となりました。

当連結会計年度におけるキャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動により得られた資金は56百万円(前連結会計年度は2億29百万円の獲得)となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益4億20百万円、売上債権の減少3億29百万円、仕入債務の減少4億99百万円、法人税等の支払2億40百万円によるものであります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動により使用した資金は6億83百万円(前連結会計年度は3億71百万円の使用)となりました。これは主に、定期預金の純増加額3億58百万円、有形固定資産の取得による支出1億89百万円、投資有価証券の取得による支出3億6百万円、保険積立金の払戻による収入1億44百万円によるものであります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動により使用した資金は4億85百万円(前連結会計年度は86百万円の使用)となりました。これは主に、長期借入金の返済による支出2億97百万円、配当金の支払1億14百万円、自己株式の取得による支出88百万円によるものであります。

 

 

生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

当連結会計年度における生産実績を商品分野ごとに示すと、次のとおりであります。

 

商品分野の名称

金額(千円)

前年同期比(%)

パッケージング分野

6,613,793

91.7

コミュニケーション分野

3,022,780

82.2

合計

9,636,574

88.5

 

(注)生産金額は販売価格により表示しております。

 

b.受注実績

当連結会計年度における受注実績を商品分野ごとに示すと、次のとおりであります。

 

商品分野の名称

受注高(千円)

前年同期比(%)

受注残高(千円)

前年同期比(%)

パッケージング分野

8,928,966

103.9

545,954

106.2

コミュニケーション分野

3,725,290

86.0

249,108

136.6

合計

12,654,257

97.9

795,063

114.2

 

(注)金額は販売価格により表示しております。

 

c.販売実績

 当連結会計年度における販売実績を商品分野ごとに示すと、次のとおりであります。

 

商品分野の名称

金額(千円)

前年同期比(%)

パッケージング分野

8,896,557

104.2

コミュニケーション分野

3,658,998

82.8

合計

12,555,556

96.9

 

(注)1.金額は販売価格により表示しております。

2.主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合

相手先

前連結会計年度

当連結会計年度

金額(千円)

割合(%)

金額(千円)

割合(%)

王子ネピア株式会社

1,565,261

12.1

1,245,353

9.9

 

 

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

① 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

当社グループの当連結会計年度の経営成績等は、パッケージング分野では、菓子・食品向けや関東・中部地区のフルフィルメントサービスの需要が堅調に推移しました。エネルギーや資材、人件費の高騰に対しては、収益性を重視した営業活動により、製品価格の適正化を進めました。

一方、コミュニケーション分野は、情報媒体のデジタル化や自動車業界の新車販売延期の影響により、カタログ・パンフレット類や販促関連の需要が低調に推移しました。

その結果、売上高は125億55百万円(前期比3.1%減)、営業利益は1億85百万円(前期比51.0%減)、経常利益は4億20百万円(前期比21.5%減)となり、親会社株主に帰属する当期純利益は2億46百万円(前期比38.0%減)となりました。

当社グループの経営に影響を与える大きな要因としては、景気や消費動向、原材料や燃料価格の変動、人件費や物流費の増加、価格競争による製品価格の動向などがあります。

これらに対して、当社の強みである「発想から発送までのワンストップソリューション」の推進により、国内印刷市場における旺盛なパッケージ需要を取り込むべく、生産性の向上や設備投資による生産能力の増強を推進するとともに、生成AIをはじめとする先端技術の実用化に積極的に取り組んでまいります。さらには、デジタルデータ加工技術を生かしたデジタルメディア領域の競争力強化に向けた事業構造改革を、スピード感をもって推進してまいります。

また、海外事業におきましては、中国及びインドネシアにおける販売拡大に注力するとともに、その他の東南アジア諸国への新規展開に向けた市場調査・分析を進め、将来的な事業拡大の基盤構築を図ってまいります。

 
② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

当連結会計年度のキャッシュ・フローの概況につきましては、「(1) 経営成績等の状況の概要③ 当期のキャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

当社グループの資金需要の主なものは、原材料の購入費用のほか、外注費、販売費及び一般管理費等の営業費用などの運転資金及び生産設備の更新を中心とした設備投資であります。

運転資金については、自己資金及び金融機関からの短期借入による調達、設備投資資金については、金融機関からの長期借入による調達を基本方針としております。

 

(3) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果は実際の結果と異なる可能性があります。

連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1  連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。

 

5 【重要な契約等】

該当事項はありません。

 

6 【研究開発活動】

当連結会計年度における当社グループの研究開発活動は、技術承継を目的としたシステム開発及び将来的な業務への活用を見据え、AI技術に関する知識習得に取り組みました。

なお、当連結会計年度における研究開発費の総額は5百万円となっております。