第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 当社の経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。

 

(1)会社の経営の基本方針

 当社は、「日本発」「世界初」のこれまでにない新しい抗がん薬を、一日でも早く患者様のもとに届けることで、『Tomorrow is Another Day~明日に希望を感じる社会の実現』を目指しています。2030年には日本発の研究開発型の製薬会社に成長していくことをビジョンとして掲げ、アンメットメディカルニーズの高いがん領域に特化して事業を進めています。特に、これまでにない新しい作用機序を有する低分子の画期的医薬品(ファーストインクラス)の研究開発に注力しておりますが、ファーストインクラスの医薬品は、既存治療薬と異なる有用性を示すことが期待され、これまでの治療法を大きく変えることができる医薬品に成長する可能性があります。既存治療薬では十分な効果が認められず、現在のがんの進行に不安を感じている多くの患者様に対して、がんの進行をコントロールできるという希望を届けることを目標に事業の推進を行っております。

 

 

           0102010_001.png

 

(2)経営上の目標達成状況を判断するための客観的な指標等

 当社は、新規抗がん薬の市販を目指して研究開発を行う創薬ベンチャー企業であり、現時点では製品売上により利益を安定的に計上するステージにはありません。

 当面の経営管理上の目標は、抗がん薬の早期の市販に向けて、当社のパイプラインを計画通り研究開発を推進すること、及び新規創薬標的の探索及びパイプラインを安定的に創出する体制を構築することです。

 従いまして、当社は、ROAやROEといった経営指標を目標とはせず、パイプラインの進捗等に目標をおいた事業活動を推進しております。

 

(3)中長期的な会社の経営戦略

 当社の中長期における最重要課題は、新規抗がん薬の研究開発を着実に推進して承認の取得もしくはライセンス契約を締結し、自社もしくはパートナー企業による製品販売からの安定的な収益源を確保することです。

 当社のリードパイプラインであるrogocekibは臨床試験段階にあり、自社もしくはパートナー企業により日本国内や欧米などの各地域での承認を取得していく予定です。また、パイプラインの充実に向けた探索研究も継続的に実施してまいります。創薬ベンチャーである当社にとっては、これらの臨床開発と探索研究を並行して行っていくために、研究開発体制の強化と研究開発資金の調達が不可欠であります。

 従いまして、当社は、日本の提携先に留まらず、グローバルの製薬会社等の新規提携パートナー企業の確保に努めるとともに、必要に応じて、事業会社や株式発行による資本市場からの資金調達を行いながら、研究開発を推進していく方針です。

 

(4)経営環境

①医薬品市場の動向

 厚生労働省が公表した「薬事工業生産動態統計」によると、2023年の医薬品最終製品(医療用医薬品や一般用医薬品などの合計)の国内での生産金額は10兆332億円、外国からの輸入金額は3兆7,727億円で、合計金額は13兆8,059億円でありました。これに対し、国内への出荷金額は12兆3,597億円、外国への輸出金額は7,131億円であり、合計金額は13兆728億円となりました。

 このうち、医療用医薬品の2023年の生産金額は9兆1,529億円であり、前年比較で0.8%の増加となりました。国内医薬品市場規模は薬価改定や医療制度改革に強く影響を受けておりますが、2019年以降の医療用医薬品生産金額の推移は、2021年を直近の底値として、2022年、2023年と2年連続で増加している状況です。その内訳として、腫瘍用薬(がん治療薬)の2023年の生産金額は1兆3,447億円であり、医療用医薬品生産金額の14.7%を占めました。腫瘍用薬の占める割合は2019年以降毎年増加している状況です。

 

       (単位:億円)

0102010_002.png

出典:厚生労働省「薬事工業生産動態統計」(2019~2023年度)

 

②がん領域、及び当社が注力する低分子医薬品の背景

 厚生労働省の調査によると日本における2022年のがんの死亡数は38.5万人となり、死因別にみても一番高い順位となりました。なお、がんは1981年から死因の第1位であり、人口10万人当たりの死亡率でみても1947年から増加傾向が進んでおり、最近では総死亡の約3割を占めております。

 

<死因順位別死亡数・構成割合(上位3位まで)>

 

2021年

2022年

前年比

 

死亡数

(人)

死亡総数に占める割合(%)

死亡数

(人)

死亡総数に占める割合(%)

死亡数

(人)

総数

1,439,856

100.0

1,569,050

100.0

129,194

死因別

 

 

 

 

 

1位 悪性新生物(がん)

381,505

26.5

385,797

24.6

4,292

2位 心疾患

214,710

14.9

232,964

14.8

18,254

3位 老衰

152,027

10.6

179,529

11.4

27,502

(引用元:厚生労働省令和4年(2022)人口動態統計)

 

<主要要因別死亡率>

0102010_003.png

出典:公益財団法人がん研究振興財団「がんの統計2025」

 

 国立研究開発法人である国立がん研究センターの調査によると、日本においては人口比におけるがんの死亡割合が世界の中でも高いことが挙げられます。2021年には年間約99万人が新たにがんと診断され、2023年にがんで死亡した人は382,504人となりました。これは日本人が一生のうちにがんと診断される確率は男性が63.3%、女性が50.8%と約2人に1人が診断されているほか、がんによる死亡確率は男性が27.9%で約4人に1人、女性が21.1%で約5人に1人となっています。(診断される確率は2021年、死亡確率は2022年のデータを引用)

 

<がん統計データ>

0102010_004.png

出典:国立がん研究センター がん情報サービス 「最新がん統計」、「院内がん登録生存率集計」

厚生労働省 「令和5年患者調査の概況」

 

 

 また2022年の全世界におけるがんの新規症例数は1,996万人、死亡数は973万人と報告されています(以下の表の脚注に記したBray F.らによる2024年の論文報告より引用)。

 

<世界における新規症例数および死亡数(2022年)>

がん種

新規症例数

比率(%)

死亡数

比率(%)

肺がん

2,480,301

12.4

1,817,172

18.7

乳がん

2,308,897

11.6

665,684

6.8

大腸がん

1,926,118

9.6

903,859

9.3

前立腺がん

1,466,680

7.3

396,792

4.1

胃がん

968,350

4.9

659,853

6.8

その他のがん種

10,814,465

54.2

5,293,419

54.4

合計

19,964,811

 

9,736,779

 

出典:Bray F, Laversanne M, Sung H, et al. Global cancer statistics 2022: GLOBOCAN estimates of incidence and mortality worldwide for 36 cancers in 185 countries. CA Cancer J Clin. 2024;74(3):229-263. doi:10.3322/caac.21834

 

 上記のとおり、がんは日本を含む世界中で罹患者数が多く、多くのがんにおいて根治療法が確立されていないため、新たな治療法を待っている患者が多くいることからアンメットメディカルニーズが高く、これからも創薬領域での研究開発がさらに活発になることが予想されます。

 

 当社が注力する抗がん薬、ファーストインクラス新薬の承認状況については、米国食品医薬品局(以下、「FDA」という。)が2024年に承認した50品目のうち、それぞれ24品目、13品目でありました。また、そのうちのおよそ半数のモダリティが低分子医薬品であり、ファーストインクラスの低分子抗がん薬の開発が引き続き活発に行われている状況と認識しており、当社パイプラインに対する大手製薬会社からのニーズも引き続き高いものと想定しております。

 

③今後の見通し

 日本国内においては、高齢化や医療分野での技術革新等の要因により、国が負担する全体の医療費が増大しております。これに伴い、国は薬価の引き下げを強化して薬剤費を抑えようとしております。実際に、2020年に当時の菅首相の所信演説では薬価改定を毎年実施する予定であることが示されました。このような薬価改定による価格引き下げで、国内医薬品市場は縮小傾向にあります。しかしながら、高齢化によるがん患者が増加している背景を受けて、抗がん剤等の新薬は販売を拡大しています(日本貿易振興機構JETROのHPより)。

 世界市場については、アジア新興国やBRICs諸国が世界市場のシェアを伸ばしてきており、この傾向は今後も続き、市場規模の拡大を牽引することが見込まれます。他の拡大要因としては、治療法が確立していない疾患への対応、長寿化及び医療サービスの高度化等が挙げられています。加えて創薬技術の高度化も市場規模の拡大に寄与するものと考えられます。

 

④参入障壁

 医薬品開発では患者を対象にして安全性と有効性の検証を段階的に進める臨床試験を実施しなければなりません。そのため、医薬品の臨床試験の実施の基準に関するGCP(Good Clinical Practice)と呼ばれる基準や、GMP(Good Manufacturing Practice)と呼ばれる適正製造基準が制定されています。安全な医薬品を製造し、臨床試験を実施するには、これらの厳格な基準を遵守する必要があるため、製薬業界への参入障壁は高いと考えられます。

 

⑤国際競争力

 医療用医薬品の世界売上上位100品目のうち、1割が日本の製薬企業から生み出されています。これまで医薬品開発に関連する様々なイノベーションにより、新しい価値を有する医薬品が誕生してきました。製薬産業は、研究、開発、生産、販売というバリューチェーンを通じて、さまざまなノウハウの蓄積が必要となるため、継続的に新薬を開発することができる製薬企業を持つ国は限られています。

 

医療用医薬品世界売上上位100品目の

国別起源比較(2018年)

0102010_005.png

(出所:厚生労働省「医薬品産業ビジョンの策定に向けて」、2021年5月17日)

 

⑥技術革新

 製薬業界では、AIやITを活用した創薬が注目されています。例えば、新薬の候補になる化合物の探索や設計、評価を行いますが、この探索や設計をコンピュータによるシミュレーション技術を活用するなどといったことが挙げられます。他にも、自律的に学習を深めていくディープラーニング(深層学習)を取り入れる試みや、分子の構造を計算する新しいアルゴリズムなど画期的な技術も次々と登場しています。

 これらの技術革新により、薬の有効成分になりうる新規化合物の創出や研究開発の時間的、金銭的コストの削減などのメリットが期待され、難病に対する新たな治療薬の誕生に向け、AIやIT技術が重要な役割を果たすとみられています。

 

(5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

 当社は、新しい作用を有する抗がん薬を開発することにより、今まで効果的な治療薬がなかったがん患者に対して、新たな治療法を提供することを目指しています。一方で医薬品としての事業化は、製品化までに多額の資金と長い時間を要する等の特性があり、当社は営業損失の発生及び営業キャッシュ・フローのマイナスを計上している状況にあり、すべての研究開発に関する投資を補うに足る収益は生じておりません。なお、当社は、当面の研究開発活動は、リードパイプラインであるrogocekibの米国1/2相試験に注力し、CTX-177は早期に開発を再開させるために、積極的に導出の可能性を検討しています。他の自社パイプラインについては、AMED等からの助成金を活用した自社研究を進めており、CTX-439とGCN2阻害薬に関しては早期のパートナリングも含めた幅広い可能性の検討を前向きに行っております。

 このような事業背景の下で、当社は、次の対処すべき課題に取り組んでまいります。

 

①rogocekibの開発の促進

 当社は、国内の第1相臨床試験では、臨床試験実施医療機関の協力の下で患者登録が継続され、2023年8月には全ての患者登録を完了し、その結果を2024年4月の米国癌学会年次総会で発表しました。また2023年には米国での第1/2相臨床試験を開始し、臨床試験実施医療機関及び関連機関との連携を行い、早期で試験を完了する計画を進めています。世界の主要国において早期に承認を取得するためには、さらなる開発体制の強化と開発資金の確保が課題となります。このため、当社は国内及び米国での臨床試験の結果をもとに、提携パートナーの獲得を目指しながら開発の促進を図ってまいります。同時に国内の商業化を製薬会社との提携を行わず自社を中心に実施することも視野に入れ、株式会社メディパルホールディングスとの業務提携及びシオノギファーマ株式会社と協業に関する基本合意を行っております。ただし、株式会社メディパルホールディングス及びシオノギファーマ株式会社との提携については、基本合意段階であり、国内で自社販売する方針が固まったわけではありません。

 また、rogocekibは、一定の要件を満たす画期的な医薬品等については、開発の比較的早期の段階から、薬事承認に関する相談・審査における優先的な取り扱いをされる「先駆的医薬品指定制度」や、重篤な疾患であって有効な治療薬が乏しく患者数が少ない疾患等を対象として、治験実施が困難、あるいは実施可能であっても治験の実施にかなりの長時間を要すると認められる場合に、承認申請時に検証的臨床試験以外の臨床試験等で一定程度の有効性及び安全性を確認した上で、製販後に有効性・安全性の再確認等のために必要な調査等を実施すること等を承認条件に付与される「条件付き早期承認制度」を活用できる可能性のある品目であると当社は考えていることから、今後これらの指定制度(海外における同様の制度を含みます。)を活用することにより、開発の促進を実施する可能性がございます。現状の臨床試験戦略で目指している2028年後期の承認申請については、上述の国内外での指定制度を活用できることを前提として、計画を立案しております。

 

②CTX-177の導出

 CTX-177については、小野薬品とのライセンス契約の終了に伴い、当社がCTX-177の全世界での全権利を有することとなりましたので、開発の再開に向けて、新たなパートナーとのライセンス契約の締結を選択肢の一つとして考え、パートナー探しを鋭意進める予定でございます。

 

③前臨床パイプラインの開発の促進

 当社は、RNA制御ストレスを標的としたCTX-439、GCN2阻害薬、新規の標的分子阻害薬の3つの前臨床パイプラインを保有しています。AMED等からの助成金を活用した自社研究を進める一方で、研究開発リソースをrogocekibに注力している状況ですので、CTX-439とGCN2阻害薬に関しては早期のパートナリングも含めた幅広い可能性の検討も前向きに行っております。市場環境や競合状況を的確に判断して、適切なタイミングで提携パートナーを確保することが課題です。

 

④パイプラインの充実

 当社は、必要に応じてRNA制御ストレスを標的とした新しい抗がん薬パイプラインを立ち上げ、適宜パイプライン間の優先順位付けを見直すことによって研究開発の成功確率を上げることができると考えていますが、そのためにはアカデミアなどの最先端の科学へのアクセスを維持することと研究開発資金の確保が課題となります。なお、現状は研究開発リソースをrogocekibに注力している状況ですので、抑制的に新規パイプラインの検討を行っています。

 

⑤財務体質の強化

 当社は創薬バイオベンチャーであるため、多額の研究開発費用が先行して必要となり、継続的な営業損失が発生するとともに営業キャッシュ・フローもマイナスとなる傾向があります。そのため、財務体質の強化が課題となります。今後も、当社がrogocekibを始めとした既存パイプラインの開発を促進しながら、安定的に新規パイプラインの創出を継続していくためには、新たな提携パートナーの確保に加え、事業会社や株式発行による資本市場からの資金調達を実施するなどして、財務基盤の充実と安定化を図っていくことが重要な課題と考えています。

 

⑥優秀な人材の獲得

 当社は、創薬に関する経験豊富なメンバーが積極的に外部委託を活用することにより、効率的な組織運営をしております。しかしながら、今後も、国内外のバイオベンチャー企業や製薬企業との競争が続く中において、競合他社との差別化、研究開発の加速、事業領域の拡大などが必要になる可能性があると考えております。そのため、パイプラインの創出に際して最先端の科学へのアクセスを維持し、創造的かつ独創的な研究活動を推進する等の優秀な人材の獲得は、当社の重要な課題になっています。また、管理部門においても当面は少人数による運営体制を計画しておりますが、適切なタイミングで新たな人材を獲得して、財務・経理・内部統制を含む管理体制の一層の強化を進めていく方針です。

 

⑦提携パートナー確保

 当社はパイプラインの開発を推進するために最適な提携パートナーを確保することを課題としております。そのために、提携パートナー候補先の研究開発に関する戦略の方針状況を常に把握し、医療情報などの市場環境の情報収集も行っております。また当社のパイプラインの開発状況、競合状況を勘案して、適切なタイミングでコミュニケーションを行っております。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

(1)サステナビリティに関する考え方

 当社は、「日本発」「世界初」のこれまでにない新しい抗がん薬を、一日でも早く患者のもとに届けることで、『Tomorrow is Another Day~明日に希望を感じる社会の実現』を目指しています。ファーストインクラスの抗がん薬を創ることを設立以来のミッションに掲げ、2030年には日本発の研究開発型の製薬会社をビジョンとして、患者が幸せに明るく暮らすことができる社会の実現に向け事業活動を続けております。

 当社の製品が患者のQOL(Quality of Life)を改善することは、患者及びその家族にとって有益となるだけでなく、患者自身の社会及び経済活動への復帰に大きく寄与することとなり、持続可能な社会の継続に貢献できると考えております。

 また、当社が新たな医療手段を提供するための事業基盤を構築する上で、多様な経験や価値観を背景に能力を最大限に発揮する人材を確保及び維持することが重要であり、社内労働環境の整備、各従業員の健康管理、ワークライフバランスの取れた働き方の実現等を通じ、社員が生き生きと働くことができるような組織風土の構築に全社的に取り組む必要があると考えております。

 当社はがんの治療を通じて、持続可能な社会の継続に貢献すべく、長期的な視野に立って事業活動を推進いたします。

 

(2)サステナビリティに関する取組

 ガバナンス及びリスク管理

当社では、代表取締役はサステナビリティ関連(気候変動などの地球環境問題、人的資本等)を含むリスク管理に関する統括責任者として、経営管理部をリスク管理の担当部門と定め、業務運営に関するすべてのリスクについて、適切に管理・対応できる体制を整備しています。代表取締役又は経営管理部は、定期かつ随時にリスク管理に関する状況を経営会議に報告し、重要な事項を認識したときは取締役会及び監査等委員会に報告しています。サステナビリティをめぐる課題への対応はリスクの減少のみならず、中長期的な企業価値の向上の機会へつながる重要な経営課題であると認識し、管理・対応しております。

 サステナビリティ関連(気候変動などの地球環境問題、人的資本等)を含むリスク及び機会の特定及び管理方法として、経営管理部にて、事業環境、法規制、人的資本、気候変動などの地球環境問題等に関連するリスク及び機会を特定し、かつ発生頻度及び事業に与える影響度を分析しています。また、識別したリスク及び機会の評価・管理の過程として、経営管理部にて各種リスク及び機会の網羅性や妥当性などのモニタリングを行い、モニタリング結果に基づく対応策について経営会議に報告し協議しております。また、識別したリスク及び機会に変更がないか事業年度毎に見直しを行っています。

 

(3)人的資本に関する戦略(方針)、指標及び目標

①戦略(方針)

当社では、「Tomorrow is Another Day~明日に希望を感じる社会の実現」を共に目指す人材を、年齢・性別・国籍等にかかわらず、様々な経験、スキルを鑑み積極的に採用しており、多様性のある組織生成を目指しています。ひとりひとりの個性や価値観を相互に認め尊重し、個々の持つ能力を最大限に発揮することが、当社の事業推進に最も重要であると考え、育児や介護といった個々の抱える事情が、能力を十分に発揮することの妨げとならないよう環境整備を行い、それぞれの自己達成の場であると共に「働きやすい職場づくり」の実現を目指しています。

また、持続的に事業を拡大していくために不可欠な要素の一つとして、優秀な人材、特に研究開発の知識や技能を有した人材の確保及び育成を考えております。

 

②指標及び目標

 当社は、従来「働きやすい職場づくり」に向けて、社内管理職への啓蒙活動の実施とWEB研修制度の整備、各事案への個別対応に努めてまいりました。現時点において人的資本に関する指標や目標数値を設けてはいませんが、年一度の頻度で社内職場環境に関する匿名アンケートを実施しています。毎年のアンケートを分析することにより現状把握し、経年で職場環境の改善状況を管理しております。今後は人的資本に関する適切な指標を設け、その進捗管理に努めることで社内従業員や社外関係者に対して当社の人的資本に関する戦略の方向性を明確化し、透明性を確保した上でモチベーションを向上させることで一層の「働きやすい職場づくり」への実現に取り組んでまいります。

 

3【事業等のリスク】

 

 当社の事業運営及び展開等について、リスク要因として考えられる主な事項を以下に記載しております。当社として必ずしも重要なリスクとは考えていない事項も含まれておりますが、投資判断上、もしくは当社の事業活動を十分に理解する上で重要と考えられる事項については、投資家や株主に対する積極的な情報開示の観点からリスク要因として挙げております。また、事業への影響度が高いと当社が考えるリスクに対しては、その発生可能性に対する当社評価も合わせて記載しております。発生可能性は、5年に1回程度の発生を中として、それより頻繁な場合は高、稀な場合は低としました。

 当社はこれらのリスクの発生の可能性を十分に認識した上で、発生の回避及び発生した場合の適切な対応に努める方針ですが、当社株式に関する投資判断は、以下の事項及び本項以外の記載も併せて、慎重に検討した上で行われる必要があると考えます。また、これらは投資判断のためのリスクを全て網羅したものではなく、更にこれら以外にも様々なリスクを伴っていることにご留意頂く必要があると考えます。

 当社は、医薬品等の開発を行っていますが、医薬品等の開発には長い歳月と多額の研究費用を要し、全ての開発が成功するとは限りません。特に販売開始前の研究開発段階のパイプラインを有する研究開発型バイオベンチャー企業は、事業のステージや状況によっては、一般投資者の投資対象として供するには相対的にリスクが高いと考えられており、当社への投資はこれに該当します。

 なお、文中の将来に関する記載は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。

 

Ⅰ.医薬品の研究開発、医薬品業界に関するリスク

(1)新薬開発の不確実性(事業への影響度:高、発生可能性:中)

 医療用医薬品の研究と開発は、一般的に多額の投資と長い時間を要し、またその成功確率は他の産業に比べて極めて低い確率となっています。実際に、新薬の研究開発においては基礎研究及び非臨床研究において高い効果が期待される医薬品候補が見つかったとしても、その後の臨床試験において、期待した効果が得られない場合、重篤な副作用が生じた場合、当局の審査において承認が得られない場合などには、研究開発に遅れが生じ、研究開発計画の大幅な変更あるいは研究開発を中止せざるを得ない可能性があります。

 当社では、上記のリスクを低減するために非臨床試験での研究や評価、臨床試験での治験デザインの策定や計画、原薬及び製剤に関する施策などにおいて、外部の専門家のアドバイスを受けて適切にリスク対策を行っておりますが、当社の現在及び将来のパイプラインについても研究開発の遅延や、計画変更あるいは計画自体を中断せざるを得ない不確実性が内在すると考えております。研究開発が遅れた場合や追加試験が必要となった場合には、計画外の追加試験期間や追加資金の確保が必要となり、新たに資金調達が必要となる可能性があります。その資金調達の確保自体についても不確実性があります。

 当社のパイプラインが承認された際でも類似する薬が存在しない新薬となるため、当社で想定している薬価で保険償還されない可能性もあります。また新薬開発が必要とされるアンメットメディカルニーズの残る適応疾患には新たな競合品や新規の医療機器などが数多く開発されるため、将来的に対象疾患の治療体系が大きく変化する可能性があり、当初想定した計画を遂行できなくなり、当社の業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 

(2)副作用発現による損害賠償責任及び製造物責任(事業への影響度:高、発生可能性:低)

 医薬品には、臨床試験段階から更には市販後において、予期せぬ副作用が発現する可能性があります。当社は、こうした事態に備えて、各種賠償責任に対応するため、損害賠償保険などの適切な保険に加入しておりますが、最終的に当社が負担する賠償額の全てに相当する保険金が支払われる保証はありません。また、当社に対する損害賠償の請求が認められなかったとしても、製造物責任請求等がなされたこと自体によるネガティブイメージにより、当社及び当社のパイプラインに対する信頼に悪影響が生じる可能性があります。これら予期せぬ副作用が発現した場合、当社の業績及び財政状態に重大な影響が及ぶ可能性があります。

 

(3)競合について(事業への影響度:高、発生可能性:中)

 医薬品の研究開発は、国内外の製薬会社や創薬ベンチャー企業により激しい競争環境の下で行われております。当社のパイプラインと同じ疾患領域で他社が早期に、もしくは優位性のある競合品を市場導入した場合においては、当社パイプラインの競争力は低下する可能性があります。詳細は後述の通りですが、RNA制御ストレスに着目して当社パイプラインと同じ標的の研究開発を手掛けている創薬ベンチャー企業が既に存在しています。また、当社がrogocekibを優先的に開発しているAMLでは低分子医薬品に加えて抗体医薬品や細胞医薬品などの新しい治療モダリティの競合品が複数検討されています。競合品の開発状況により、当社のパイプラインの臨床試験において被験者登録の遅延や目標被験者数の未達となる可能性があり、その場合には当初の計画以上の開発資金が必要になったり、又は開発中止に追い込まれたりして、当社の事業計画や経営等に甚大な影響を及ぼす可能性があります。さらに、一般的に、当社パイプラインを導出した場合においても、その競合品が先行して市販され、当該パイプラインの事業性が大きく毀損されたと導出先製薬企業が判断した場合、開発スケジュールが遅延する可能性があるだけでなく、ライセンス契約そのものを解消する可能性があります。また、当社パイプラインが市販に至った場合でも、他社が当社のパイプラインより優位性のある製品を販売した場合、市場占有率が低下して、当初想定したロイヤリティ収入が得られない等により、当社の業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。当社は、競合品の開発状況について随時検討を重ねており、将来収益予想に影響を及ぼす可能性のある競合品は現時点では少ないと判断しておりますが、今後の競合品の開発状況の変化により、将来の収益性に大きな影響を及ぼす可能性があります。

 

(4)ライセンス活動の不確実性(事業への影響度:高、発生可能性:中)

 ライセンス収入の形態は、ライセンス契約締結時に発生する「契約一時金」、開発や販売の進捗に伴って発生する「マイルストン収入(臨床試験の開始や終了時又は製造販売承認申請時、販売目標等の予め定めた開発及び販売の節目(マイルストン)毎に支払われる収入)」、市販後において導出先である製薬会社が行う医薬品販売に対する「ロイヤリティ収入」などがあります。

 ライセンス契約の締結においては、製薬会社から当社のパイプラインに関して評価を獲得する必要があります。その際には、当社のパイプラインの有効性及び安全性、並びに予想される対象患者数や薬価、特許存続期間、競合優位性等の事業性の観点が評価されます。従いまして、製薬会社から研究開発成果に対する十分な評価が得られない可能性、当社の研究開発の遅延や導出候補先製薬会社のパイプライン状況などにより想定どおりのタイミングで評価されない可能性、製薬会社から想定どおりの評価が得られず「契約一時金」をはじめ上記の各種収入が当社の想定する規模の金額で契約できない可能性又はライセンス契約に至らない可能性があります。

 またライセンス契約締結に至っても、臨床試験を次の段階に進めるために十分な成績が得られない可能性、対象疾患の市場環境の変化、特許訴訟の発生等で当社のパイプラインの事業性が大きく毀損されたと導出先製薬企業が判断する場合は、開発スケジュールが遅延する可能性やライセンス契約自体を解消される可能性があります。また、医薬品のライセンス契約においては特許の成立国ごとで存続期間が異なる場合があるため特許権の有効期間をライセンス存続期間とする契約条件が一般的であり、ライセンス契約期間中に重要なマイルストンの達成が遅れてしまうと、当社が想定する投資金額の回収を終える前に、ライセンス期間もしくは特許期間が満了してしまうリスクがあり、当社の業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 

(5)薬事関連法規について(事業への影響度:高、発生可能性:低)

 医薬品業界は、研究、開発、製造及び販売のそれぞれの事業活動において、各国の薬事法(日本では、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律、別名、薬機法)及びその他の関連法規等により、様々な規制を受けております。具体的には、非臨床試験においては、医薬品の安全性試験の実施に関する基準であるGood Laboratory Practice(GLP)、原薬等の治験薬の製造においては、医薬品の製造管理及び品質管理に関する基準であるGood Manufacturing Practice(GMP)に準拠した治験薬製造、そして臨床試験においては、医薬品の臨床試験の実施に関する基準であるGood Clinical Practice(GCP)を遵守することが必要であり、製造販売においては販売を行う各国で定められている薬事関連法規や法令、規制当局の承認、許可を得る必要があります。

 現在、当社のパイプラインは、それぞれの法規制に適する体制を整備して事業を進めておりますが、各国の薬事法及びその他の関連法規等は改定やガイドラインの追加がなされるものであり、さらなる体制の整備・変更を求められることが起こり得ます。そうした場合において、これまで認められてきた開発方針や申請内容では薬事承認が下りなくなる、又は薬事承認の取得に想定以上の時間を要するといったリスクも否定できません。当社では、当該リスクへの対応について、適切なタイミングで各国の規制当局(日本では医薬品医療機器総合機構(PMDA))やその他の専門家に事前相談を行い、適切な助言を受けた上で計画の立案や事業の運営を行っておりますが、こうした規制への対応を適切に行えなかった場合や規制対応に多額の費用を要する事により、当社の業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 

(6)医療費抑制策などによる医療保険制度の変化

 世界の医薬品市場の主要国においては、人口の高齢化に伴う医療費の増大に対処するために、医療費抑制策が強化されております。実際に米国では2022年に米国議会において、インフレ抑制法(Inflation Reduction Act:IRA)が可決され、薬価上昇率がインフレ率を上回った製薬会社に対するペナルティの賦課、メディケア(米国の高齢者向け医療保険制度)受給者の自己負担額の上限設定、2026年よりメディケアの対象となる特定の医薬品に関する連邦政府への価格設定権限の付与等、メディケア・プログラムに基づく医薬品の補償条件が大幅に変更されました。また、2025年5月には、米国の処方薬価格を、選定された「同等に発展した国々」での最も低い価格に連動させる価格設定メカニズムである「最恵国待遇(MFN)」価格の導入に関する大統領令が発出されました。日本国内においても、政府は医療費の増大を抑制するため、定期的に薬価引き下げを実施しながら、後発医薬品の使用促進策の導入を進めております。そのため、今後の医療保険制度及びその他関係する制度の動向により、当社の想定する販売価格や薬価が認められず、当社の業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 

Ⅱ.事業遂行上のリスク

(1)事業の特定のライセンス契約への収益依存及び不確実性(事業への影響度:高、発生可能性:中)

 当社は、下記のライセンス契約を締結しており、これらを中心とした事業計画を策定しております。

 

 ・2017年11月に、武田薬品との間で、4つのパイプラインの全世界での独占的に研究、開発、製造及び商業化する権利を獲得するライセンス契約を締結

 ・2020年12月に、小野薬品との間で、全世界においてMALT1阻害薬CTX-177及びその関連化合物に関する独占的に研究、開発、製造 及び商業化する権利を供与するライセンス契約を締結、2025年4月に、戦略上の理由で臨床試験を中止する旨の通知を小野薬品より受領、ライセンス契約が終了。

 

 このような契約は、契約条項違反が一定期間内に是正されない場合、当社の責務に依存しない要因などによって契約期間満了前に終了する可能性があります。現時点では契約終了となるような状況は発生しておりませんが、仮に本契約が終了した場合は、当社の業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 上記の武田薬品とのライセンス契約では、契約内に記載の違反条項等により契約を終了、解約された場合、当社の業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 また、上記の小野薬品とのライセンス契約が終了となったため、当社は現状、マイルストン収入が期待できるライセンス契約を有しておりません。そのため、今後、国内外の製薬企業との新しいライセンス契約を図っていきますが、ライセンス契約の締結には、当社のパイプラインに対する相手先企業の評価や経営判断等が伴うことから、当社が想定するタイミングで導出の提携ができない可能性があります。

 一般的に、当社パイプラインの権利を導出するライセンス契約に基づく収益には、開発の進捗に依存したマイルストンも含まれており、開発の遅延が生じた場合や、提携先の経営方針の変更など当社が制御し得ない要因により開発を中断あるいは中止した場合、又は提携先が契約条件の履行や各種規制等の遵守をできない場合は、提携契約の解除・終了や契約条件の変更等が生じ、当社の業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 当社では現状のライセンス契約への依存度を低減していくために、今後、新しいパイプラインの自社研究からの創出や導入の可能性を適切なタイミングで検討していきますが、特に導入に関しては相手先企業の経営判断等が伴うことから、当社が想定するタイミングで導入の提携ができない可能性があります。

 

(2)小規模組織及び少数の事業推進者への依存

 当社は、2025年8月末現在、取締役6名(社外取締役5名)、及び従業員20名の小規模組織であり、現在の内部管理体制は当該組織規模に応じたものとなっています。今後、事業拡大に応じて内部管理体制の拡充を図る方針です。当社の事業活動は、当社の創業者であり代表取締役である三宅洋及び事業を推進する各部門の責任者に強く依存するところがあります。したがいまして、三宅洋及びその他の重要な役職員による職務遂行が困難となった場合には、当社の業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 当社は、当該リスクへの対応として、社内で事前に事業継続計画(BCP)を定めており、また各部門においては有事の際に、各従業員の担当業務の引継ぎ担当を決めており、持続的に成長を続けていく体制を構築しておりますが、上記の対応策では重要な役職員の職務を完全に補完できない可能性があり、当社の業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(3)社歴の浅さ

 当社は2017年10月に設立された社歴の浅い企業です。従って、過去の業績から当社の将来の業績等を推測することは難しい状況にあります。また、医薬品業界における豊富な経験を有する経営陣及び研究開発人員により運営されているものの、企業としては未経験のトラブルが発生する可能性は否定できず、それへの組織としての対応能力については、一定のリスクがあります。

 

(4)人材の採用、育成

 当社は、持続的に事業を拡大していくために不可欠な要素の一つとして、優秀な人材、特に研究開発の知識や技能を有した人材の確保及び育成を考えております。また同時に、優秀な人材の採用、育成、維持に関しては人事に関する専門家、さらには知的財産、法務などの専門家の確保も重要と捉えています。当社では、①企業理念、経営戦略についてホームページなどを通じて社内外に浸透させ、やりがいのある会社風土を醸成し、②各従業員の職務権限を明確化し、適切な権限委譲を行い、③公的資金の獲得等による知名度向上などにより、優秀な人材の育成、維持、新規採用を図るように努めておりますが、当社の想定する計画で人材の確保に支障が生じた場合、又は優秀な人材が社外に流出した場合には、当社の事業、業績や財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。

 

(5)知的財産権

①当社が保有する知的財産権について(事業への影響度:高、発生可能性:低)

 当社では研究開発をはじめとする事業展開において様々な知的財産権を使用しており、これらは当社所有の権利であるか、あるいは適法に実施許諾を受けた権利となります。また、こちらの知的財産権については登録済みとなっているものと、出願・審査中のものがあります。下表に開発段階及び臨床試験段階にある当社の抗がん薬候補化合物に関する重要な特許の状況について記載します。

 

標的阻害薬

特許権者

特許申請番号

出願日(注)

CLK阻害薬

武田薬品工業株式会社

PCT/JP2017/016717

2016年4月28日

GCN2阻害薬

武田薬品工業株式会社

PCT/JP2017/028928

2016年8月10日

CDK12阻害薬

武田薬品工業株式会社

PCT/JP2019/013531

2018年3月29日

MALT1阻害薬

武田薬品工業株式会社

PCT/JP2019/046261

2018年11月28日

MALT1阻害薬

武田薬品工業株式会社

PCT/JP2021/019911

2020年5月27日

MALT1阻害薬

当社及び小野薬品工業株式会社

PCT/JP2023/003154

2022年2月2日

CLK阻害薬

当社及び国立研究開発法人国立がん研究センター

PCT/JP2023/013361

2022年3月31日

CLK阻害薬

当社

PCT/JP2025/000724

2024年1月12日

(注)当該出願日は、基礎出願日となります。

 

 当社が保有している現在出願中の特許が全て登録される保証はありません。また、特許が登録された場合でも、特許異議申立や特許無効審判制度により当社が保有している特許の全部又は一部の請求項が無効化され、独占性が失われる可能性があります。さらに、特許権の有効性、帰属などに係る特許権侵害訴訟の提起や特許無効審判が請求された場合、当社の業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。あわせて、CLK阻害薬の物質特許であるPCT/JP2017/016717については、出願時に特許明細書の一部の記載に不具合が存在したことから、外部専門家の意見も得た上で、特許事務所、ライセンス元である武田薬品と協力して対応して、これまで問題なく各国での登録が進んでいます。しかし、将来的にその不具合を根拠とした異議申立や特許無効審判が請求される可能性は否定できません。

 

②知的財産に関する訴訟及びクレーム等の対応について(事業への影響度:高、発生可能性:低)

 当社では他社の特許権の侵害を未然に防止するため、出来る範囲で特許の調査を実施しており、これまでに、当社の開発パイプラインに関する特許権等の知的財産権について第三者との間で訴訟が発生した事実はありません。しかし、当社のような研究開発型企業にとって知的財産権侵害の問題を完全に回避することは困難です。また、当社が保有する特許及びライセンスを受けた特許に係る関連化合物及び製剤の開発等に関し、第三者が権利主張や異議を述べてくる可能性も否定できません。当社は、仮に法的紛争に巻き込まれた場合には、弁護士や弁理士との協議の上、その内容に応じて対策を講じていく方針でありますが、法的紛争の解決に多大な労力、時間及び費用を要する可能性があり、当社の業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 

③職務発明及び特許出願に関する方針について

 当社は、2005年4月に施行された特許法の改正に伴い、職務発明規程を作成して、発明の認定や特許出願に関する社内運用を明確化しております。特許出願においては、発明の内容、事業性などの情報を基にして知財の排他性や費用対効果などを考慮して特許出願の可否を決定しています。一方、特許出願に至らなかった発明や戦略上の理由により特許出願しないと判断した発明においては、ノウハウとして社内で留保する運用を図っています。職務発明規程は労使間の協議の上で作成したものでありますが、将来、発明者との間で発明に対する対価の支払請求等について問題が起こらない保証はなく、紛争が生じた場合には、当社の業績及び財務状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 また、当社は複数の大学や公的研究機関との共同研究を積極的に行っております。そのため共同研究の中から見いだされた発明に係る知的財産については、単独あるいは共同出願という形で権利化を進めています。大学や研究機関が単独で出願した権利であっても、当社に独占的な実施権が許諾されるようなライセンス契約を協議することができます。そのため、本共同研究で生じた発明や特許権については一定の排他的な実施権を確保した上で事業を進めていると認識しております。しかしながら、大学や研究機関が出願人である発明や特許権に関して、将来的に共同研究契約の内容が変更された場合、期間満了及び解除等により契約が終了された場合において、知的財産の権利の確保が出来ず、当社の事業に影響を及ぼす可能性があります。

 当社では当該リスクに対して、大学や公的機関の研究者や知的財産担当者と適切な関係性を維持しており、また労使関係においても継続的な協力関係を築いておりますが、将来的に異議申し立てが発生する可能性や紛争が起こる可能性は否定できません。

 

(6)パイプライン(事業への影響度:高、発生可能性:中)

 当社は、臨床開発段階に2つ、それ以前の研究段階に3つの全5パイプラインを有しています。臨床開発段階にはrogocekibとCTX-177が進んでいますが、それぞれ第1相臨床試験の途上、第1相臨床試験を開始したばかりでありどちらも開発の早期段階にあるため、今後の開発が当社の計画通りに進まない場合は、市販時期が遅れる可能性があります。さらに、各パイプラインは、前述の「Ⅰ.医薬品の研究開発、医薬品業界に関するリスク」を伴うことに加え、それぞれに特有な業務遂行上のリスク要因が存在すると認識しています。

 

①rogocekib(CLK阻害薬CTX-712)

 当社と競合するCLK阻害薬を米国のベンチャー企業であるBiosplice Therapeutics社(以下、Biosplice社という。)、BlossomHills Therapeutics社(以下、BlossomHills社という。)が臨床試験を実施しております。両社が当社よりもより早く開発を進めると、rogocekibの市場占有率が下がる可能性があることに加え、両社がCLK阻害薬の安全性懸念事項や毒性所見を発表した際においては、当社のrogocekibの開発計画についても影響を受ける可能性があります。ただし、同一の化合物を開発しているわけではないため、影響は限定的であると想定しております。また両社のみならず、他の大手製薬会社がCLK阻害薬を新たに研究・開発して新たな競合が生じるリスクは潜在的に存在するものと想定しておりますので、できるだけ早くに開発を進め、競合優位性を保ちつつ市販され、市場占有率を高く維持し、適応がん種を拡大していく事が課題であると考えています。

 また、臨床試験において、rogocekibの投与と因果関係が否定できない3件の死亡例が発生しています。いずれも、規制当局に報告を行い、より安全に治験を実施するため治験実施計画書を改訂した上で試験を継続しており、現時点では、本パイプラインの開発の継続は可能と考えていますが、今後、重篤な副作用(特に死亡例)が続き、重篤な副作用発生のリスクを低減できない場合においては、本パイプラインの開発を中止する可能性があります。

 

②CTX-177(MALT1阻害薬)

 CTX-177においては、血液がんの研究開発に強みを持つAbbVie社、さらにはSchrodinger社がMALT1阻害薬の臨床試験を実施しております。またNovartis社等でも同一標的に対する研究を報告しているため競合環境が激しいと言えます。当社では、早期にCTX-177の権利を再導出し、臨床試験を再開できるように事業開発活動に鋭意取り組んでまいりますが、再導出には時間がかかる可能性があります。その場合はCTX-177の開発が遅れることになり、競合優位性が低下する可能性があります。

 

③CTX-439(CDK12阻害薬)

 当社と競合するCDK12阻害薬を米国の創薬ベンチャー企業であるCarrick Therapeutics社が臨床試験を2024年9月に開始しており、またInsilico Medicine社等の会社も非臨床試験を実施しております。競合他社が当社よりも早く開発を進めると、CTX-439の市場占有率が下がる可能性があることに加え、CDK12阻害薬の安全性懸念事項や毒性所見が発表された際においては、当社のCDK12阻害薬の開発計画についても影響を受ける可能性があります。ただし、同一の化合物を開発しているわけではないため、影響は限定的であると想定しております。できるだけ早くに開発を進め、競合優位性を保ちつつ市販され、市場占有率を高く維持していく事が課題であると考えています。

 

④GCN2阻害薬

 当社のGCN2阻害薬パイプラインについては探索研究段階にあり、非臨床の安全性、製造上の懸念等で医薬品の研究開発における遅延や中断のリスクが存在するため、想定し得ない原因により開発が遅延したり、開発自体を中断しなければならない可能性も否定できません。HiberCell社、Nuvectis社及びDeciphera社がGCN2活性調節薬を、Nerviano Medical Sciences社及びApollo Therapeutics社がGCN2阻害薬の臨床試験を実施しており、加えてMerck KGaA社やRAPT Therapeutics社等が非臨床研究の報告をしております。競合他社が当社よりもより早く開発を進めると、当社のGCN2阻害薬の市場占有率が下がる可能性があることに加え、GCN2阻害薬の安全性懸念事項や毒性所見が発表された際には、当社のGCN2阻害薬の開発計画についても影響を受ける可能性があります。ただし、同一の化合物を開発しているわけではないため、影響は限定的であると想定しております。できるだけ早くに開発を進め、競合優位性を保ちつつ市販され、市場占有率を高く維持していく事が課題であると考えています。

 

⑤新規の標的分子阻害薬

 当社のRNA制御ストレスを標的とした新規の標的分子阻害薬については、化合物の最適化検討を行っている段階であります。現時点で競合品の開発情報はございませんが、当社のrogocekibが臨床での有用性を証明した際には多くの製薬会社がRNA制御ストレスの創薬研究に参入する可能性があり、競合環境がさらに激しくなる可能性があります。また、本標的分子の阻害薬においては、非臨床試験で安全性の確保、十分な有用性、医薬品に必要な化合物の物性を保つことができないリスクも否定できず、当社が想定している計画通りに研究開発が進まない可能性があり、当社の業績及び財務状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 

 

(7)外部委託先との連携について

 当社は、経営の機動性・効率性の観点、経費の低減や高い専門性が必要な分野における協業などの観点から、以下の業務の一部を専門機関に委託しております。

・薬効薬理試験、化合物の最適化と合成研究

・薬物動態や毒性試験等の非臨床試験

・原薬や製剤の製造・評価試験

・臨床試験の実施、そのモニタリング、データマネジメント、統計解析など

 当社は、業務委託先の選定及び関係構築について慎重に対応しており、業務に支障が生じないようリスク管理を十分に行っております。しかしながら、不測の理由により、業務委託先との契約が終了した場合、当社にとって不利な契約改定が行われた場合、業務委託先で業務遂行に支障が生じた場合には、当社の事業活動計画に大きな変更が生じる可能性があり、当社の業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。当該リスクへの対応については、代替委託先を複数確保するように努めておりますが、適切なタイミングで委託契約を締結できるかの不確実性があり、また、これまでと同等の品質のサービスを受けられるとは限らないため、代替委託先での切り替えには時間とリスク、追加費用が発生する可能性が存在します。

 

(8)重要な契約等(事業への影響度:高、発生可能性:低)

 当社の重要な契約等は、「第2 事業の状況 5 重要な契約等」に記載の通りです。事業環境の変化、契約の相手方の方針の変更その他、不測の理由で契約が終了したり、契約の履行に支障が生じたりした場合には、当社の業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 

(9)研究施設等における事故等の発生について

 当社は、湘南ヘルスイノベーションパーク内に研究施設を賃借して研究活動を行っております。同施設は多数の他社がテナントとして入居して共同利用することができるオープンラボスペースですが、設備の一部で当社の専有スペースを借りております。オープンラボスペースの特性上、他社が専有スペースにも出入りできる設備デザインとなっておりますが、湘南ヘルスイノベーションパークでは厳格な利用規則や使用ルール、毎日の巡回、入退場記録や防犯カメラ、3つのセキュリティレベルのICカード等が設置されており、また当社の専有機器には施錠等の対策をすることで盗難や事故が起こりにくい体制となっております。しかしながら、オープンラボのため何らかの原因により火災や環境汚染漏洩事故などが発生した場合、研究開発活動の中断、停止、又は、損害賠償などの重大な損失を招く可能性があり、その場合には当社の業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 さらに、地震や水害などの自然災害やその他避けることの困難な事態の発生により、研究設備・インフラが支障をきたし、研究施設等が稼働できない状況、従業員などが出社できない状況など、一時的又は長期的に業務が停止せざるを得ない状況が発生した場合には、当社の業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 

(10)ITセキュリティ及び情報管理について(事業への影響度:高、発生可能性:中)

 当社は、湘南ヘルスイノベーションパーク内に本社機能を設けております。同施設は多数の他社がテナントとして入居して共同利用することができるオープン施設ですが、設備の一部に他社が入室できない当社専有の執務用スペースを借りております。そのため、重要な業務や秘匿情報については専有の執務用スペースで業務を行っており、重要な書類についても専有の執務用スペースの施錠可能なロッカーで情報管理を行っております。しかしながら、第三者による意図的な行為により当社の重要情報の漏洩が発生する可能性があります。

 また、ITセキュリティ及び情報管理については、情報セキュリティ管理規程、個人情報取扱規程、特定個人情報保護規程、IT機器管理マニュアルなどの規程やマニュアルを整備して、ITセキュリティ及び情報管理の体制を構築していますが、役職員や外部委託先の不注意又は故意の行為、又は第三者による意図的なサイバー攻撃などにより、当社のシステムの停止、中断、秘密情報や個人情報の漏洩が発生する可能性があります。当社では当該リスクに対して、できる限りリスクを低減するべく規程やマニュアルの改訂・更新を行うとともに、外部専門家への委託を通じてセキュリティの強化に努めております。しかしながら、万が一当社の研究又は開発段階の情報や技術、ノウハウ等の重要な機密情報が流出した場合には、当社の研究開発活動への悪影響、個人情報や知的財産などにかかる重大な機密情報の流出、漏洩により権利の毀損や社会的信用低下を招き、当社の業績及び財務状況に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 

(11)コンプライアンスについて

 当社の業務遂行にあたっては、各国の薬事法上の規制、製造物責任法、環境に関する規制などの各種法令の規制適用を受けております。当社では、全社において事業活動が法令に遵守して実施されるように内部監査規程、コンプライアンス管理規程、監査等委員会規程、ハラスメント防止規程、ハラスメント相談に関する対処規程、研究活動上の不正行為の防止規程、公的資金等管理規程を整備して、また定期的に監査を通じて運用状況を検証しておりますが、役職員や外部委託先の第三者が法令等に違反した場合や仮に法令違反に該当しなくとも社会的に不適切とみなされる行為に及んだ場合には、法令による処分、処罰などの制裁、訴訟の提起を受ける可能性があり、当社の社会的信頼が毀損するだけでなく、金銭的損害を被ることにより、当社の業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 

(12)災害、感染症等の発生に関する不可抗力について

 当社は、事業活動の中心となる設備や人員が東京都と神奈川県に集中しています。また研究や製造の委託先及び臨床試験においては国内外の企業や施設に委託しています。そのため、これらの地域において地震や大規模な災害、世界的な感染症などが発生した場合には、設備等の一部又は全部が損壊などの影響を受けることで、研究開発の遅延や停滞、又は事業を中断せざるを得なくなる場合があります。そのような不可抗力により当社の業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 

(13)風評上の問題発生について

 当社は、研究開発における安全性の管理、法令遵守、個人情報の管理、知的財産権の管理などに努めており、現時点において、第三者から何らかの請求や主張を受けている事実はありません。しかしながら、当社に対してマスコミ報道やインターネット上での書き込みなどで、事実と異なる何らかの風評上の問題が発生した場合、当社の業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 当社では、主にホームページ上で適時に適切な開示を行う事で、こうした風評の発生の予防に努めております。

 

(14)新型コロナウイルス感染症拡大について

 現在、新型コロナウイルスの感染状況は比較的落ち着いており、社会・経済活動は概ね通常通りに行われています。しかしながら、今後同感染症が再度拡大し、政府等による移動制限や外出自粛要請等が発令された場合、当社の業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

Ⅲ.業績等に関するリスク

(1)配当政策について

 医薬品の研究開発には多額の先行投資が必要であり、その投資回収までの期間も長期に及ぶ傾向にあります。当社も創業以来、繰越利益剰余金がマイナスとなっており、株主に対する余剰金の分配を実施しておりません。株主への利益還元については、重要な経営課題と認識しており、将来的には経営の成績や財務状況を勘案しつつ余剰金の分配を検討する予定であります。しかしながら、剰余金がマイナスとなっている状況下においては、積極的な投資による開発推進によって企業価値を高めることこそが、株主利益の最大化に繋がると考えています。2025年8月期においては、配当可能な財政状態にはありませんが、将来、現在開発中の新薬が市販され、その販売によって当期純利益が継続的に計上される時期において、配当による利益還元の実施を検討したいと考えております。

 

①マイナスの繰越利益剰余金

 当社は、医薬品の研究開発を行う創薬バイオベンチャー企業です。医薬品の研究開発には多額の先行投資を要し、その投資資金の回収にかかる期間も他産業と比較して相対的に長期に及ぶため、創薬バイオベンチャー企業が当該事業に取り組む場合は、一般的に期間損益のマイナスが先行する傾向にあり、当社においても繰越利益剰余金は、2025年8月期末時点で、△7,507百万円とマイナスが先行しております

 当社はパイプラインの進捗に邁進し、製品市販後に利益計上及び利益拡大を目指していますが、開発が計画通りに進捗しない場合には、将来において当期純利益を計上する時期が遅延する可能性があります。また、計画通りに当期純利益を計上できない場合には、繰越利益剰余金がプラスとなる時期も遅延し、株主に配当を実施する時期が遅れる可能性があります。

 

②収益が大きく変動する傾向

 当社の事業収益は、当面は、今後締結する可能性のあるパイプラインに対するライセンス契約等に基づく契約一時金、開発や販売の進捗に伴うマイルストン収入及びロイヤリティ収入に依存しているため、過年度の事業収益、当期純利益(損失)は不安定に推移する傾向があります。そのため、当社のパイプラインが市販され安定的な収益基盤が確立するまで、収益の変動は続くと見込まれます。また、2023年8月期においては、小野薬品から25億円のマイルストン収入を受領したため、黒字となりましたが、2024年8月期及び2025年8月期は赤字を計上しており、当社のパイプラインが市販され安定的な収益基盤が確立するまで、収益の変動は継続する見込みです。

 

(2)資本政策について

 当社は、研究開発費用の負担により長期に亘って先行投資の期間が続きます。この先行投資期間においては、継続的に営業損失を計上し、営業活動によるキャッシュ・フローもマイナスとなる傾向があります。当社においても、営業キャッシュ・フローは、当事業年度は△1,836百万円とマイナスとなり、翌期以降もマイナスが継続することを見込んでおります。このため、当社製品が市販され、安定的な収益源が確保されるまでの期間においては、必要に応じて追加の資金調達等を実施し、財務基盤の強化を図る必要性が生じます。臨床戦略、ライセンス活動が想定通りに進まず、必要なタイミングで資金を確保できなかった場合は、手元資金が枯渇し、当社事業の継続に重大な懸念が生じる可能性があります。

 

①新株発行を伴う資金調達による株式の希薄化リスク

 当社は医薬品の研究開発型企業であり、将来の研究開発活動の拡大に伴い、増資等の新株発行を伴う資金調達を機動的に実施していく可能性があります。その場合には、当社の発行済株式数が増加することにより、1株当たりの株式価値が希薄化する可能性があります。

 

②新株予約権の発行に伴う株式の希薄化リスク

 当社は、当社役職員の業績向上に対する意欲や士気を高め、また優秀な人材を確保する観点から、ストック・オプション制度を採用しています。会社法第236条、第238条及び第239条の規定に基づき、株主総会の承認を受け、当社取締役、監査等委員である取締役、従業員に対して新株予約権の発行と付与を行っています。

 2025年8月末時点における当社の発行済株式総数は68,988,800株、新株予約権による潜在株式数は5,727,000株(発行済株式総数と潜在株式数を合計した株式数に対する割合7.7%)であり、これら新株予約権の権利が行使された場合は、当社の1株当たりの株式価値は希薄化する可能性があります。また、今後も優秀な人材の確保のため、新株予約権の発行と付与を継続する可能性があります。従って、今後付与される新株予約権が行使された場合にも、当社の1株当たりの株式価値は希薄化する可能性があります。

 

③ベンチャーキャピタル等の当社株式保有比率

 2025年8月末時点における当社の発行済株式のうち、ベンチャーキャピタル及びベンチャーキャピタルが組成した投資事業組合(以下総称して「VC」)が所有している株式の所有割合は38.6%です。

 一般に、VCは投資ファンドの運用期間終了に伴い、保有株式の現金化を図ることが多く、当社の株式についても、今後の市場環境やファンドの償還時期等に応じて、VCによる一部または全部の売却が行われる可能性があります。これにより、短期的な需給バランスの悪化が生じ、当社株式の市場価格が下落する可能性があります。

 

(3)調達資金が業績に反映されないリスクについて

 当社は、上場時に調達した資金について、抗がん薬候補化合物rogocekibによる再発・難治性血液がんを対象とした臨床第1/2相試験の実施費用等に充当しております。一方で、現在発行中の新株予約権により調達を見込む資金については、同試験の拡大コホートの実施費用および薬物相互作用の検討に係る費用に充当する計画です。しかしながら、新薬開発に関わる研究開発活動の成果が収益に結びつくには長期間を要するため、研究開発投資から期待した想定の期間で成果が得られない場合があり、その結果、調達した資金が期待される利益に結びつかない可能性があります。

 また、当社が携わる抗がん薬の研究開発の領域において、外部環境が急速に変化する可能性があります。そのため、新薬の市販の動向、法令等の改正、当社の臨床試験の進捗状況によっては、上記の資金使途以外の事象に資金を充当する可能性があります。

 

(4)資金繰りに関するリスクについて

 当社は、当面の研究開発活動は、リードパイプラインであるrogocekibの米国1/2相試験に注力する見込みであり、そのための資金は上場時に調達した資金及び現在実施中の新株予約権の発行により調達する資金で確保できる見込みです。また、他の自社パイプラインについては、新たな資金を確保するまで多額の投資は行わず、新たなフェーズへの進捗はない予定です。現在、リードパイプラインであるrogocekibについて今後想定するタイミングでの導出を目指すと共に、既存パイプラインの早期導出、その他新たな資金調達手段に係る検討を進めていますが、導出については先方との交渉次第であるという点で不確実性がある高いと考えています。仮に今後、上記手段による新たな資金を確保出来ない場合には、rogocekib以外の研究開発が進められないなど、事業継続に支障が生じる可能性があります。

 

(5)為替変動リスクについて

 医薬品の研究開発においては海外の委託先も使用しており、外貨建の取引を行っていること等、当社の取引には、為替変動リスクにさらされているものが存在します。そのため、当社の想定以上に為替相場の変動が生じた場合、当社の業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(6)継続企業の前提に関する重要事象等

 当社は、新規抗がん薬の市販を目指して研究開発を行う創薬ベンチャー企業です。創薬事業は、高度な専門性と多額の資金を要する一方で、収益化までに長期間を要する事業特性を有しております。このため、継続的な営業損失及び営業キャッシュ・フローのマイナスの計上、重要な営業損失及び営業キャッシュ・フローのマイナスを計上しており、継続企業の前提に重要な疑義を生じさせる事象又は状況が存在しております。

 このような状況を踏まえ、当社は最も期待するパイプラインであるrogocekibに経営資源を集中させ、開発の迅速化を図っております。その他のパイプラインについては、引き続きコストを抑制しながら、他社との事業連携を含めて戦略的に検討を行う方針です。

 当事業年度末時点において、現金及び預金残高は2,548百万円を保有しており、今後1年間の事業活動を継続するために必要な資金は確保できております。また、rogocekibの将来の開発資金を確保するために、2025年9月には第三者割当による第9回新株予約権(行使価額修正条項付)、第10回新株予約権及び第11回新株予約権の発行を行っております。これにより、将来的な資金需要に対しても柔軟に対応可能な体制を維持しております。

 以上のことから、継続企業の前提に関する重要な不確実性はないと認識しております。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

 当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

①経営成績の状況

 当事業年度における当社の業績としてのパイプラインの開発進捗は以下の通りとなりました。

 

 当社が注力する抗がん薬、ファーストインクラス新薬の承認状況については、FDAが2024年に承認した50品目のうち、それぞれ24品目、13品目でありました。また、そのうちのおよそ半数のモダリティが低分子医薬品であり、ファーストインクラスの低分子抗がん薬の開発が引き続き活発に行われている状況と認識しており、当社パイプラインに対する大手製薬会社からのニーズも引き続き高いものと想定しております。

 

 このような環境の中で、当社は、rogocekibを中心とした5つのパイプラインの研究開発を進めております。当事業年度における主なパイプラインの進捗は以下のとおりです。

 

<rogocekib>

 rogocekibは、細胞増殖に重要な役割を果たすRNAスプライシング反応の主要な制御因子であるCLKに対するファーストインクラスの選択的な経口型の低分子阻害薬です。FDAからAML適応でのオーファンドラッグ指定(Orphan Drug Designation(ODD):希少疾病用医薬品指定)を受けています。2018年に開始した単剤での日本国内第1相臨床試験では、進行・再発又は難治性となった46例の固形がん及び14例の血液がん、合計で60例の患者に投与を行いました。rogocekibに関連する有害事象として、吐き気、嘔吐、下痢等が認められましたが、治験医師が参加する安全性評価委員会において、本剤の安全性に関する評価結果は許容範囲内であると考えられました。rogocekibの有効性に関しては、固形がんにおいて4例のPR(partial response:部分奏効)を認め、それらは全て卵巣がんでした。46例の固形がんのうち卵巣がん患者は14例であったため、卵巣がんでの奏効率としては14例中4例、28.6%でした。また、AMLとMDSの計14例においては、4例のCR(complete remission:完全寛解)を含む6例の奏功を認め、奏効率は42.9%でした。この試験結果は、卵巣がん及び血液がんにおいてrogocekibが有効である可能性を示しています。現在は、2023年に米国において開始した再発又は難治性のAML及びMDSの患者を対象にした第1/2相臨床試験の第1相パートを進めており、2025年8月末時点では合計36症例が登録されています。今後、2026年の早い時期に拡大コホートを開始する予定です。

 

<MALT1阻害薬CTX-177>

 MALT1阻害薬CTX-177については、2020年に小野薬品とライセンス契約を締結し、小野薬品によって米国及び日本において第1相臨床試験が実施されていましたが、2025年4月28日に、戦略上の理由で臨床試験を中止する旨の通知を小野薬品より受領しました。小野薬品とのライセンス契約が終了しましたので、今後は当社が、全世界での独占的な研究、開発、製造及び商業化する権利を保有します。現在、小野薬品と進行中の試験の取り扱い、これまでに得られたデータの移管、知的財産の取り扱い等に関する協議を進めております。今後、再導出に向けた事業開発活動を積極的に行なってまいります。

 

<前臨床パイプライン>

 前臨床段階にあるCDK12阻害薬CTX-439、GCN2阻害薬と5番目のパイプライン(標的名非公開)は、AMED等からの助成金を活用した自社研究を進めており、CTX-439やGCN2阻害薬の研究成果は、2025年4月25日から30日まで米国シカゴで開催された米国癌学会年次総会で発表いたしました。当社は、最も開発が進んでいるrogocekibにより一層注力して、開発をさらに迅速に進め薬事承認を獲得することが企業価値の向上に資すると考えており、rogocekibに社内リソースを集中させている状況ですので、CTX-439とGCN2阻害薬に関しては早期のパートナリングも含めた幅広い可能性の検討も前向きに行っております。また、パイプラインの価値を大きくするために、がん以外の疾患領域での可能性も共同研究等を通じて探っています。2025年7月には株式会社デ・ウエスタン・セラピテクス研究所と、2025年8月には千寿製薬株式会社と、それぞれ異なる当社化合物の眼科疾患治療薬としての可能性を探る共同研究を開始しています。

 

 以上の結果、当事業年度の事業収益は該当ありませんでした(前事業年度は該当なし)。事業費用につきましては、研究開発費が1,425百万円(前事業年度比で5.0%減少)、販売費及び一般管理費が364百万円(前事業年度比で20.8%増加)となりました。この結果、営業損失は1,789百万円(前事業年度は営業損失1,801百万円)、経常損失は1,769百万円(前事業年度は経常損失1,824百万円)、当期純損失は1,785百万円(前事業年度は当期純損失1,827百万円)となりました。

 なお、当社は医薬品事業のみの単一セグメントであるため、セグメント別の経営成績を記載しておりません。

 

 

②財政状態の状況

(資産)

 当事業年度末における資産合計は2,681百万円となり、前事業年度末と比較して1,951百万円減少しました。このうち、流動資産の残高は2,669百万円となり、前事業年度末と比較して1,936百万円減少しました。これは主として、現金及び預金が1,780百万円減少したことによるものであります。また、固定資産の残高は12百万円となり、前事業年度末と比較して14百万円減少しました。これは主として、長期前払費用が11百万円減少したことによるものであります。

 

(負債)

 当事業年度末における負債合計は244百万円となり、前事業年度末と比較して226百万円減少しました。このうち、流動負債の残高は244百万円となり、前事業年度末と比較して226百万円減少しました。これは主として、未払金が262百万円減少したことによるものであります。また、固定負債は該当ありません。

 

(純資産)

 当事業年度末における純資産合計は2,437百万円となり、前事業年度末と比較して1,724百万円減少しました。これは主として、資本金及び資本剰余金がそれぞれ31百万円増加した一方、当期純損失の計上により利益剰余金が1,785百万円減少したことによるものであります。

 

③キャッシュ・フローの状況

 当事業年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)の残高は2,548百万円となり、前事業年度末から1,780百万円減少しました。当事業年度におけるキャッシュ・フローの状況は次のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 当事業年度において営業活動の結果使用した資金は1,836百万円(前事業年度使用した資金は1,937百万円)となりました。これは主として、税引前当期純損失1,783百万円の計上によるものであります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 当事業年度において投資活動の結果使用した資金は5百万円(前事業年度使用した資金は10百万円)と少額の発生にとどまりました。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 当事業年度において財務活動の結果獲得した資金は61百万円(前事業年度獲得した資金は1,478百万円)となりました。これは、新株予約権の行使による株式の発行による収入61百万円があったことによるものであります。

 

④生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

 該当事項はありません。

b.受注実績

 該当事項はありません。

c.販売実績

 該当事項はありません。

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

 経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次の通りであります。なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものであります。

 

①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

 当社の財政状態は、「(1) 経営成績等の状況の概要 ②財政状態の状況」をご参照ください。経営成績の状況については、「(1) 経営成績等の状況の概要 ①経営成績の状況」をご参照ください。経営成績に重要な影響を与える要因については、「3 事業等のリスク」をご参照ください。

 

②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

 当社の運転資金については、自己資金により充当しています。当事業年度末における現金及び現金同等物は2,548百万円であり、充分な流動性を確保しています。

 キャッシュ・フローの状況については、「(1) 経営成績等の状況の概要 ③キャッシュ・フローの状況」をご参照ください。

 

③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定については、重要なものはありません。

 

5【重要な契約等】

 

(1)当社が実施許諾を受けているライセンス契約

相手方

契約品目

契約締結日

契約内容

契約期間

名称

地域

武田薬品工業株式会社

全世界

ライセンス契約

CLK阻害薬

(2017年4月特許申請)

MALT1阻害薬

(2019年11月特許申請)

(2021年5月特許申請)

CDK12阻害薬

(2019年3月特許申請)

GCN2阻害薬

(2017年8月特許申請)

2017年11月21日

全世界において、それぞれ4つの阻害薬及びその関連化合物を独占的に研究、開発、製造及び商業化する権利を許諾された。

当社は、契約一時金を支払い、また開発マイルストン、売上高に応じた比率のロイヤリティの支払い義務がある。

2017年11月21日から契約に定められた期間

 

(2)当社が実施を許諾するライセンス契約

 当社のMALT1阻害薬CTX-177については、2020年に小野薬品とライセンス契約を締結し、小野薬品によって米国及び日本において第1相臨床試験が実施されていました。しかしながら、2025年4月28日に、戦略上の理由で臨床試験を中止する旨の通知を小野薬品より受領し、ライセンス契約を終了しました。現在は、進行中の試験の取り扱い、これまでに得られたデータの移管、知的財産の取り扱い等の細部に関する協議を進めている状況です。ライセンス契約の終了に伴い、当社がCTX-177の全世界での全権利を有することになりました。

 

(3)共同研究開発契約、再委託研究開発契約

相手名称

契約内容

契約締結日

契約内容

対象パイプライン

契約期間

国立大学法人京都大学

共同研究契約

2018年

5月1日

新規低分子抗がん薬候補の薬効評価、及び作用機序の解明

CLK他

2026年

4月30日

国立大学法人京都大学

再委託研究開発契約

2025年

4月1日

早期発がん過程の解明によるがんの予防、早期診断・介入技術の構築

CLK他

2026年

3月31日

国立大学法人京都大学

再委託研究開発契約

2025年

4月1日

大規模ゲノムデータと検体バンクを用いた骨髄系腫瘍とクローン性造血の病態解明と新規診断・治療技術の創出

CLK

2026年

3月31日

国立大学法人京都大学

再委託研究開発契約

2025年

4月1日

RNAスプライシング変異を有する難治性腫瘍に対する新規治療薬の非臨床試験

新規パイプライン

2026年

3月31日

国立大学法人京都大学

再委託研究開発契約

2025年

4月1日

ネオ抗原誘導薬による革新的がん免疫療法の開発

新規パイプライン

2026年

3月31日

国立がん研究センター、株式会社ヒューマノーム研究所

共同研究契約

2024年

1月15日

AIを利用したデータ解析に関する共同研究契約

CLK

2026年

3月31日

国立研究開発法人国立がん研究センター

再委託研究開発契約

2025年

4月1日

AIを利用した新規抗がん薬の創薬研究加速システムの開発

CLK

2026年

3月31日

国立大学法人東京大学、国立大学法人筑波大学、地方独立行政法人神奈川県立がんセンター

共同研究契約

2024年

1月15日

クローン性がん間質の空間ゲノミクスによる医療品初期開発

CDK12

2026年

3月31日

国立大学法人東京大学

再委託研究開発契約

2025年

4月1日

クローン性がん間質の空間ゲノミクスによる医薬品初期開発

CDK12

2026年

3月31日

国立大学法人京都大学、国立大学法人宮崎大学、国立研究開発法人国立がん研究センター

共同研究契約

2020年

4月1日

MALT1阻害薬のバイオマーカーに関する共同研究契約

MALT1

2026年

3月31日

国立大学法人京都大学、国立大学法人東京大学、国立大学法人三重大学

共同研究契約

2021年

4月1日

CDK12阻害薬の作用解析に関する共同研究契約

CDK12

2026年

3月31日

公立大学法人名古屋市立大学

共同研究契約

2019年

9月1日

EIF2A阻害薬(GCN2阻害薬)の作用機序解析に関する共同研究契約

GCN2

2026年

8月31日

株式会社デ・ウエスタン・セラピテクス研究所

共同研究契約

2025年

7月8日

眼科疾患に対する治療薬開発に向けた共同研究

未公開

契約に定められた期間

 

 

 

相手名称

契約内容

契約締結日

契約内容

対象パイプライン

契約期間

千寿製薬株式会社

共同研究契約

2025年

8月1日

GCN2キナーゼ阻害活性を有する特定化合物を用いて、眼科疾患に対する治療薬開発に向けた共同研究

GCN2

契約に定められた期間

 

(4)第三者割当による新株予約権の発行

 当社は、2025年9月5日開催の臨時取締役会において、第三者割当による第9回新株予約権(行使価額修正項付)、第10回新株予約権及び第11回新株予約権の発行を決議し、2025年9月22日に第三者割当契約及び総数引受契約を締結しております。詳細は「第4 提出会社の状況 1 株式等の状況 (2) 新株予約権等の状況 ③ その他の新株予約権等の状況」をご参照ください。

 

(5)その他

相手名称

契約締結日

契約内容

契約期間

武田薬品工業株式会社

2021年3月25日

湘南ヘルスイノベーションパークの利用に関する契約

契約に定められた期間

武田薬品工業株式会社、特許業務法人浅村特許事務所

2020年11月5日

CLK阻害薬の特許出願に関する覚書

British Columbia Cancer

2018年6月21日

CDK12阻害薬の提供

国立大学法人京都大学、国立大学法人宮崎大学

2021年6月25日

MALT1阻害薬の共同研究の成果に関する対価の覚書

国立大学法人京都大学

2021年6月25日

MALT1阻害薬の共同研究の成果に関する対価の覚書

国立研究開発法人国立がん研究センター

2022年3月28日

CTX-712に関するバイオマーカー候補の用途特許に係る共同出願の契約

シオノギファーマ株式会社

2022年5月13日

低分子化合物の製造における協業に関する基本契約書

株式会社メディパルホールディングス

2022年5月13日

流通及び販売促進等における業務提携に関する基本合意書

国立大学法人京都大学、富士通株式会社

2023年5月17日

実証実験に関する協定書

 

 

6【研究開発活動】

(1)研究開発体制

 当社は、抗がん薬に関する研究開発の経験が豊富な少人数の専門家集団です。当社は、大規模な研究所や製造施設を保有せず、湘南ヘルスイノベーションパークというオープンラボを活用して医薬品研究開発を行いながら、研究開発受託企業及び製造受託企業などを積極的に活用することに加え、大学等のアカデミアとの共同研究を活用することで効率的な研究開発体制を構築しております。

 創薬プロセスにおける当社の各部門が担っている役割として、研究本部は非臨床研究に関する業務で薬理、薬物動態、安全性、創薬化学を担い、プログラムマネジメント部は治験薬製造及び品質管理、知的財産に関連する業務を担い、臨床開発部は臨床開発に関する業務で臨床企画や臨床試験のオペレーション、臨床試験における安全性に関する業務を担っています。

 

(2)パイプラインの状況

<rogocekib>

①rogocekibの開発状況

 2018年から実施中のrogocekibの第1相臨床試験では、治験実施医療機関の協力の基で患者登録が継続され、2023年8月末には全ての症例登録が完了し、固形がん46名、血液がん14名で合計60名の患者への投薬が行われました。当社は第1相臨床試験の結果報告を2022年6月の米国臨床腫瘍学会、12月の米国血液学会及び2024年4月の米国癌学会の年次総会で報告しました。

 米国臨床腫瘍学会では、2021年12月時点までの固形がん(用量漸増コホート16名、拡大コホート10名)と血液がん(用量漸増コホート4名)を対象とした第1相臨床試験の安全性プロファイルを報告しました。観察されたDLT(Dose-Limiting Toxicity:用量制限毒性)は、脱水、血小板数減少、低カリウム血症であり、週2回の投与におけるMTD(Maximum Tolerated Dose:最大耐用量)は140 mgと決定されました。有効性に関しては、卵巣がんとAML患者において、それぞれ2例のPR (partial response:部分奏効)と2例のCR(complete remission:完全寛解)が認められました。さらにPK(pharmacokinetics:薬物動態)解析では、用量依存的な全身曝露量の増加が観察され、PD(pharmacodynamics:薬力学的)マーカーとして設定した2つのRNAのエクソンスキッピングが用量依存的に増加したことから、rogocekibによるmRNAのスプライシング変化が確認されました。

 米国血液学会では、2022年10月時点までの第1相臨床試験の血液がんに関する追加の報告を行いました。AML及びMDS患者8例にて4例のCR(complete remission:完全寛解)と1例のCRi(好中球未回復の完全寛解)が認められ、臨床試験におけるPOC(Proof of Concept(概念実証))が確認できました。

 米国がん学会では、2023年11月時点までの第1相臨床試験の安全性、有効性、ゲノム情報、薬物動態に関して、46名の固形がん、及び14名の血液がんの結果を報告しました。観察されたDLT(Dose-Limiting Toxicity:用量制限毒性)は、脱水、血小板数減少、低カリウム血症,及び肺炎であり、週2回の投与におけるMTD(Maximum Tolerated Dose:最大耐用量)は140 mgと決定されました。rogocekibに関連する有害事象として吐き気、嘔吐、下痢等が挙げられましたが、許容される安全性プロファイルと考えられました。有効性に関しては、固形がんにおいて4例のPR(partial response:部分奏効)を認め、それらはすべて卵巣がん(4/14例、28.6%)でした。Myc amplificationを有する卵巣がんに着目すると、3例中2例(66.7%)でPRが得られました。(図1)AML、MDS計14例において、4例のCR(complete remission:完全寛解)、1例のCRi(complete remission with incomplete hematologic recovery:好中球未回復の完全寛解)、1例のMLFS(morphologic leukemia-free state:形態学的無白血病状態)を認め、Overall Response Rateは42.9%でした。また、そのうちSplicing Factor mutationのある4例に着目すると3例(75%)の奏効が認められました。奏効を得た症例のうち3例は投与期間が300日以上と長期間の奏効を認め、そのうち1例は974日でした。(図2)さらにPK(pharmacokinetics:薬物動態)解析では、用量依存的な全身曝露量の増加が観察され、PD(pharmacodynamics:薬力学的)マーカーとして設定したRNAのスプライシング変化が用量依存的に増加したことから、rogocekibによる薬力学的反応が確認されました。以上より、卵巣がん、血液がんにおいてrogocekibが有効であることを示しました。

 当事業年度末現在では、2023年に米国において開始した再発又は難治性のAML及びMDSの患者を対象にした第1/2相臨床試験を進めており、2025年8月末時点では36人の患者への投与を完了し、更なる症例登録を進めている状況でございます。

 

図1.固形がんの40症例における腫瘍サイズの変化率(卵巣がん10症例が緑色、その他固形がんはグレーで示す)

 

0102010_006.png

 

図2.AML&MDS 14症例における奏効と治療期間

 

0102010_007.png

 

②今後の開発計画

 日本国内第1相臨床試験においてAML患者で奏効が確認できたことを受けて、当社はアンメットメディカルニーズの高い再発難治性のAMLでの開発を優先して進めていく計画を有しています。AMLは、がんの中でもすい臓、胆のう・胆管のがんに続いて3番目に低い5年相対生存率となっており、新しい治療法の開発が待ち望まれていると考えております(図3)。AMLにおける世界の年間罹患数は日本、米国、欧州主要国においてそれぞれ約9千人、2万2千人、1万3千5百人と報告されています(図4)。新たにAMLを発症された患者のおよそ半分の方は強力な化学療法を受け、およそ25%程度の患者は強力な化学療法ではない薬物治療を受けるとされています。1次治療を受けたおよそ半分の患者は、治療効果が不十分もしくは再発して2次治療が必要になりますが、そのおよそ半分の患者は特定の遺伝子変異を有しており、対応する分子標的薬による治療を受けることが多いと、当社では分析しています。残りの50%程度の患者に加えて、分子標的薬による治療が失敗してさらなる治療が必要になる患者が、rogocekibによる治療の対象になると当社では考えています(図5)。当面は、再発難治性のAMLでの開発を優先させて、迅速承認制度の活用も視野に入れながら、1日でも早い承認を目指していきます。さらに、日本国内第1相臨床試験においてrogocekibは卵巣がんやMDSでも奏効が確認できており、それらがん種でも順次開発を進めて適応を拡大し、rogocekibの製品価値の最大化に努めていきます(図6)。とくに卵巣がんではプラチナ製剤による治療に抵抗性を獲得してしまい治療選択肢が少ない患者に対して有効である可能性が示されており、今後、自社開発もしくは大手製薬会社との共同開発の可能性を積極的に探っていく計画です。

 

 

図3.がんにおける5年相対生存率とrogocekibが最初に狙う適応症

 

0102010_008.png

 

図4.世界のAMLの罹患者数

 

0102010_009.png

 

図5.AMLにおける治療体系とrogocekibの最初の対象患者

 

0102010_010.png

 

図6.rogocekibの臨床試験戦略

 

0102010_011.png

 

②ライセンス状況

 現在、全世界での独占的な研究、開発、製造及び商業化する権利は、当社が保有しています。

 

③共同研究状況

 米国第1/2相臨床試験をThe University of Texas MD Anderson Cancer Center、Mayo Clinic Arizona, Florida, Comprehensive Cancer Center等と協力して実施中です。非臨床研究としては、AMEDからの支援を受けて、ゲノム研究を創薬等出口に繋げる研究開発プログラムに採択され、京都大学(代表機関)及び国立がん研究センター(代表機関)との2つの共同研究を実施中です。

 

<CTX-177>

開発・ライセンス状況

 小野薬品によって米国及び日本において第1相臨床試験が実施されていましたが、2025年4月28日に、戦略上の理由で臨床試験を中止する旨の通知を小野薬品より受領し、当社が研究、開発、製造、及び商業化する権利を回収しました。現在、新たなライセンス許諾先の選定に向けた検討を進めております。

 

<CTX-439>

①開発・ライセンス状況

 現在、当社は対象化合物に関する全世界での独占的な研究、開発、製造および商業化の権利を保有しております。当事業年度末現在、臨床試験開始に向けての安全性試験や治験原薬の製造を終え、AMED等からの助成金を活用した自社研究を進めていますが、研究開発リソースをrogocekibに注力している状況ですので、早期のパートナリングも含めた幅広い可能性の検討も前向きに行っております。

②共同研究状況

 AMEDからの支援を受けて、ゲノム研究を創薬等出口に繋げる研究開発

プログラムに採択され、東京大学(代表機関)との共同研究を実施中です。また、京都大学、東京大学、三重大学と

の共同研究により、今後の臨床試験において奏効が期待される患者を層別するためのバイオマーカー探索研究及び

作用解明に基づいた併用戦略の構築も実施中です。

 

<GCN2阻害薬>

①開発・ライセンス状況

 現在、当社は対象化合物に関する全世界での独占的な研究、開発、製造および商業化の権利を保有しております。当事業年度末現在、AMED等からの助成金を活用した自社研究を進めていますが、研究開発リソースをrogocekibに注力している状況ですので、早期のパートナリングも含めた幅広い可能性の検討も前向きに行っております。

 

②共同研究状況

 2025年8月1日付けで、千寿製薬株式会社と、GCN2キナーゼ阻害活性を有する特定化合物を対象とした、眼科疾患に対する治療薬開発に向けた共同研究契約を締結しました。本共同研究におきまして、当社及び千寿製薬株式会社は、各々が保有する技術、リソースならびに医薬品研究開発のノウハウを活用して、眼科疾患治療薬の創製を目指した研究に取り組んでおります。また、名古屋市立大学等との共同研究により、今後の臨床試験対象となるがん種の選定を実施中です。

 

<その他の共同研究状況>

2025年7月8日付けで、株式会社デ・ウエスタン・セラピテクス研究所と、当社の抗がん薬パイプラインのうち探索研究ステージにあるキナーゼ阻害活性を有する特定化合物を対象とした、眼科疾患に対する治療薬開発に向けた共同研究契約を締結しました。本共同研究におきまして、当社及び株式会社デ・ウエスタン・セラピテクス研究所は、各々が保有する技術、リソースならびに医薬品研究開発のノウハウを活用して、眼科疾患治療薬の創製を目指した研究に取り組んでおります。また、探索研究の実施を目的として、AMEDからの支援を受けて、革新的がん医療実用化研究事業及び次世代がん医療加速化研究事業において採択され、京都大学を代表機関とする共同研究を実施中です。

 

 当事業年度における当社の研究開発費の総額は1,425百万円となりました。

 研究開発費の主な内容は、パイプラインの臨床試験及び非臨床試験に関わる外部委託費であります。

当事業年度は、2023年に米国において開始した、リードパイプラインrogocekibの、再発又は難治性のAML及びMDSの患者を対象にした第1/2相臨床試験の第1相パートを進めており、2025年8月末時点では合計36症例が登録されています。現在は用量漸増コホートの週1回の投与スケジュールの検討は終了しており、週2回投与スケジュールの最高用量である100mgの評価を慎重に進めているところです。2026年の早い時期に拡大コホートを開始する予定です。

 CTX-439は、臨床試験開始に向けての安全性試験や治験原薬の製造を終え、次のフェーズの準備を進めているところです。

 当社の事業セグメントは医薬品事業のみの単一セグメントであるため、セグメント別の記載はしておりません。