(1)経営方針
当社グループは、「海の恵みを絶やすことなく世界中の人々に届け続ける。」ことをMissionとし、サーモン養殖事業、国内加工事業、海外加工事業、海外卸売事業の4つの事業を柱としてビジネスを展開しています。
日本において水産業は衰退産業といわれています。しかし海外において水産業は成長産業であります。私たちは日本の水産業において成長を阻害しているのは二つの要因、すなわち「供給の不安定性」と「消費の減少」であると考えております。ASC(Aquaculture Stewardship Council:水産養殖管理協議会)などの持続可能性を担保した認証を取得した養殖を推し進めることで「供給の不安定性」を解消し、また水産物の消費拡大が期待されるアジア圏での販売を促進することで「消費の減少」を解消していきたいと考えております。そして、これらの活動を通じて新しい水産業を切り開き、衰退産業とされた日本の水産業の成長産業化を実現することを経営方針としております。

(2)経営環境
当社グループを取り巻く環境は以下のとおりと認識しております。
①水産資源の需要はグローバルでは増加傾向
世界的にみると、一人当たりの食用魚介類の消費量は過去50年で約2倍に増加し、近年でもそのペースは衰えていません。とりわけ元来魚食習慣のあるアジアやオセアニア地域では、生活水準の向上に伴って顕著な増加を示しています(※1)。
参考:アジア全体の日本食レストランの店舗数推移

②養殖への需要の高まり
世界の漁業と養殖業を合わせた生産量は増加し続けています。その一方で、持続可能な(適正レベルよりも資源量が多く、生産量拡大の余地がある)レベルで漁獲されている状態の水産資源の割合は低下傾向です。1974年には90%の水産資源が適正水準以内で利用されていましたが、2017 年にはその割合は66%まで低下したとも言われています(※2)。この状況を背景に養殖の重要性はますます高まっており、漁業・養殖業生産量のうち漁業の漁獲量は1980年代後半以降横ばい傾向となっている一方で養殖業の収獲量は急激に伸びています(※3)。
③サーモン需要の増加
世界中でサーモンの人気は高く、世界のサケ・マス類養殖生産量は1987年の35万t から2017年の348万t と、約30年間で10倍に増加しています(※4)。日本国内においてもサーモンの人気は高く、各種調査でも人気の魚種として常に上位にあげられています。養殖効率に優れていて比較的低価格で購入しやすいサーモンの需要は、今後も伸びていくものと期待されています。
(※1)令和3年度 水産白書(水産庁) P.137
(※2)令和3年度 水産白書(水産庁) P.136
(※3)令和元年度 水産白書(水産庁) P.154
(※4)平成30年度 水産白書(水産庁) P.151
(3)経営戦略
このような環境を踏まえ、当社では養殖事業と海外卸売事業の成長を牽引する二つの事業として位置づけており、中長期の主な戦略として以下を計画しております。
①国内養殖規模の拡大
当社の成長のエンジンの一つはサーモン養殖事業であります。そして生産量を拡大していくことが当社の成長の基礎になると考えています。サーモン養殖事業はデンマーク及び日本国内において展開しております。
当社グループはサーモン養殖には以下のような限りない可能性があると考えており、それがこのような戦略を採る背景となっています。
・ サーモンは4大動物性タンパク質の供給源として、牛肉、豚肉、鶏肉と並ぶ存在になりうる
・ 肉類と同等の高タンパクでありながら、低いカロリーが健康志向にも合致する。
・ 完全養殖が実現されていて、海から天然の稚魚の捕獲が不要。生態系に影響を与えない。
・ 生産効率が高い。具体的には、増肉係数(FCR)が低く、かつ可食部分が多く、捨てる部位がほぼない
・ 低魚粉飼料で養殖が可能。植物性タンパク原料から、海由来タンパクを生産できる。
・ サーモンの市場は世界中に存在しており、市場規模が大きい。回転寿司でも定番の人気ネタとなっている。

なおデンマークでは、主に魚卵の採取を目的としてサーモンを養殖しております。デンマークでは近年養殖の拡大による環境負荷が懸念されていることや、適地が限られていることを理由に、新たなライセンスが発行されておりません。そのため、急激な規模拡大は容易ではない状況ですが、引き続きライセンス取得のための活動は継続してまいります。
一方、日本国内においては特に北日本では養殖適地が多数存在していることや、国の方針として養殖を増やすことが決定されていることから、当社グループにおける養殖規模拡大は国内養殖が主となります。国内養殖量は継続的な設備投資を背景に、2022年6月期の1,600トンから、順次拡大していく計画としています。引き続き、この国内養殖における水揚げ量増に対応するため、養殖設備の増強を継続してまいります。
②国内養殖事業の効率化
養殖規模の拡大と並行して、生産性を高め品質改善を継続することで、高品質のサーモンを低価格で供給できる体制をつくります。そのことが海外の競合相手との競争を勝ち抜いていくためには必要と考えています。生産性の向上のためには、安定的な給餌及び給餌コストの低減が効果的です。これらを達成するため、給餌方法の自動化を進めてまいります。具体的には、遠隔でのサーモン養殖生産管理システムを構築いたします。これは、養殖生簀にバージ船(※)を隣接し、バージ船上に自動給餌機と飼料を常設、システムを通じて給餌を行うものです。これにより、天候に左右されずに安全かつ安定的に給餌が可能になり、給餌コストの低減も可能になると考えております。
当社には、デンマーク子会社での経験、生食用サーモントラウトを大規模に養殖していることから得られるノウハウの蓄積といった優位性があります。これらの優位性を活かして、高品質のサーモンを低価格で供給できる体制を実現すべく、日々チャレンジと研究を続けていく所存です。
(※)バージ船とは、船底が平らになっている船舶のことであり、当社の連結子会社である日本サーモンファーム株式会社ではこのバージ船タンクに養殖用の餌を保管し、船外から自動で給餌できるシステムを構築しております。
③海外卸売事業の強化
養殖事業と並ぶ当社の成長エンジンは海外卸売事業であります。日本食ブーム、あるいは人口増を背景に海外、特にアジアにおいて日本食マーケットが大きく成長を続けております。このマーケットの成長の波をしっかりキャッチし、当社の成長にも繋げてまいります。すでにシンガポール、マレーシア、台湾及びタイに子会社を有し、着実に成長してきておりますが、日本食需要の大きい地域を中心に今後も進出先を増やし、さらなる成長に繋げていく計画です。また、シンガポールでは自社保有の超低温倉庫(-60℃)による徹底した温度管理や迅速できめ細やかな配送を行っており、オカムラ食品工業独自のコールドチェーンを築いておりますが、さらに超低温倉庫や配送能力への投資を進めていく計画としております。マレーシアにおいては、ハラール食品(※)のニーズが高いことから、ハラール食品の強化を重点課題とし、これに対応するための投資を進める計画としております。その他、水産専門会社であることや、養殖や加工部門を有していることの強みをより活かせるよう、カバーエリアの拡大、ヒトやモノへの先行投資を進めてまいります。
(※)ハラール食品とは、イスラム教で食べることが許されている調理法等に従い生産した食品のことを指します。

(4)対処すべき課題
経営戦略を進めていくうえで当社グループが優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題は以下のとおりであります。
養殖事業
① 国内養殖事業における中間養殖場の確保
養殖規模拡大のためには生産能力を上げていくことが必要で、特に不足しがちな中間養殖場の確保が課題です。なかでも河川を利用する中間養殖場については、養殖に適した河川が限られている関係上、新設は簡単ではありません。適地の選定、自治体との調整、養殖施設の建設と、一朝一夕に進むものではないため、中長期的な視点に立って着実に投資計画を進めてまいります。また、河川を利用せず、比較的適地の制約の少ない循環型中間養殖場にも積極的に投資し、全体としての中間養殖場のキャパシティ拡大を図ってまいります。
② 養殖に関する研究開発
①の課題を解決するために屋外循環式の大規模中間育成魚高密度生産システムの実証研究を継続しております。また、効率的かつ安全な給餌を目的として、バージ船を活用した大規模な海面養殖生産の研究開発も進めております。さらには、持続可能な環境負荷の少ない養殖の為の飼料開発も進めております。これらの研究開発を確実に実現していき、また、長年の養殖技術・ノウハウを有するデンマーク子会社Musholm A/Sの技術も取り入れながら、日本国内においてもこれらのサーモン養殖先進国並みの養殖技術を確立していくことが課題となっております。
③ 青森サーモンの販路拡大
現在、当社グループの養殖した青森サーモンは主に鮮魚として販売しております。今後、水揚げ量の拡大に伴って、多様な売り方が必要になってくると認識しております。具体的には、加工品マーケットへの販売、海外卸売事業を通じての海外向け販売、消費者向け直接販売などを想定しております。そういった販路に適した商品開発も含め、販路拡大に向けた取り組みを加速してまいります。
④ 青森サーモンブランドの確立
当社グループが養殖し、商標登録もしている「青森サーモン」のブランド強化を図ってまいります。
世界自然遺産白神山地から流れ出る清らかな淡水、津軽海峡の速い潮の流れを有する青森県で卵から養殖した当社の青森サーモンの良さを皆さまに広く認知していただくことが、当社の事業拡大には不可欠の要素であると考えております。そのためにも、青森サーモンのブランド強化は重要な課題であると認識しております。
海外卸売事業
⑤ 海外市場での営業基盤の強化
アジアにおける日本食マーケットの成長の波を確実にキャッチすることが、当社の成長には重要です。そのための配送・保管設備の増強は計画しておりますが、それに加えて、新しい顧客の開拓に努めるとともに、既存の顧客のご不満を聞き、顧客にご満足していただける製品開発やサービス提供を行うことで、営業基盤の強化を図っていくことが課題であると認識しております。
国内加工事業、海外加工事業
⑥ 安定的な加工体制の確立
安定的な加工体制の確保は、当社の基盤となります。これが確保されてこそ、加工事業の拡大だけでなく、養殖した青森サーモンの加工品マーケットへの展開や、海外卸売事業における顧客ニーズへのきめ細やかな対応といったことが可能になります。加工拠点の分散によるリスクヘッジ、工場従業員の教育による品質や効率性の向上、といった点を推し進めてまいります。
財務
⑦ 成長資金の確保
養殖事業拡大のための設備投資や事業拡大に伴う在庫投資など、当社は多くの成長資金を必要としています。事業収益及び金融機関の借入等を通じて成長資金を確保しつつ、一方で純資産と負債の適切なバランスを保って不測の事態にも対応可能な財務体質を維持することが財務上の課題であると認識しております。
その他
⑧ 環境への配慮
製造の原料となる水産物や養殖事業は大自然からの恩恵です。我々の事業は自然環境、特に海に大きく依存しています。自然への感謝の気持ちを忘れずに、自然を大切にすることこそ、当社の持続・発展にとって不可欠のことと考えています。
(原料について)
我々が製造に使用する原料は資源として持続的に調達出来るものでなければなりません。絶滅が危惧される原料、資源管理が徹底されていない原料を使用した製品加工は控えるべきです。資源管理が十分に行われていると認定されたASC・MSC(※)認証原料の使用を推進いたします。
(※)MSC認証とは、水産資源や海洋環境に配慮し適切に管理された持続可能な漁業に対する認証制度を指し、海洋管理協議会(Marine Stewardship Council)が管理運営しています。
(養殖事業について)
養殖事業を拡大すれば、周辺海域に影響を与えてしまう可能性が生じます。もし我々の事業が水質汚染や生態系破壊の原因となってしまえば、事業を継続することは出来なくなってしまいます。魚を育てるためには大量の飼料が必要となりますが、その主成分である魚粉や魚油は天然水産物由来のものです。飼料の成分やその原材料について注意を払う必要があります。デンマーク子会社Musholm A/Sではその生産量のほとんどでASC認証を取得しています。青森サーモン養殖でも一部でASC認証を取得しておりますが、今後もその数量を増加させ、環境への配慮をより高度な次元で達成してまいります。
⑨ 地域との共生の推進
自然環境に加え、我々の事業は地域社会の理解と協力の基に成り立っています。事業の継続とその拡大には地域との共生の実現が不可欠です。そのためには地域の方々と十分に話し合い、それを通じて地域との信頼関係を築くことが重要です。我々企業と地域社会とのコミュニケーション推進を通じて地域社会に理解されるとともに、青森やミャンマーなどでの雇用創出という形でその地域に貢献する企業となることを目指してまいります。
(5)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社では養殖量、特に拡大余地の大きい国内養殖量を重要な経営指標と考えております。水産物については漁獲や商品相場の変動が大きなリスクとなっていますが、養殖量の拡大によってこれらのリスクを低下させることができ、安定的に水産原料を確保することに繋がります。また、養殖事業の利益率は相対的に高いため、養殖規模の拡大によって当社グループ全体の利益率をさらに向上させることに繋がります。
現在、国内養殖量拡大のためのネックとなっているのは、中間養殖場を主とした養殖設備の不足にあります。当社グループでは、養殖量拡大に向けて積極的に養殖設備への投資を行っていきたいと考えております。
本書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、提出日現在において当社グループが判断したものであります。
1、気候変動(温暖化)によるリスク
(1)資源アクセス確保に与える影響
(発生可能性:中/発生時期:特定時期無し/影響度:大)
地球温暖化による海洋環境の変化により、下記のようなリスクが生じることが考えられ、当社グループの経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
① 各水産品種の生息可能な水域が変化することにより、当社グループが取扱う水産品種における従来の漁場、海面養殖場の環境(海水温条件など)が、その魚種の生息条件に適さなくなり、漁獲量・養殖生産量が減る可能性があります。
② 海洋環境が変化した場合には、当社グループに限らず、水産業界全体に及ぶ可能性があることから、漁獲量・養殖生産量減少により水産物の流通量が減ることで、水産物の価格が上昇し、当社にとっての原料仕入価格が高騰するおそれがあります。
(2)自然災害の頻度増加と激甚化によるリスク
(発生可能性:高/発生時期:特定時期無し/影響度:中)
地球温暖化による気候変動は、近年、台風、ハリケーン、時化、豪雨、洪水、赤潮、津波、干ばつ等の自然災害の頻度を増加させ、激甚化させる傾向にあります。特に、当社の主力工場のある青森県青森市、当社グループの養殖場が集中する青森県西津軽郡深浦町及び青森県東津軽郡今別町、デンマークMusholm島周辺に想定外の災害が生じた場合には、当社グループの経営成績に下記のような大きな悪影響を及ぼす可能性があります。
① 当社グループの養殖魚、食品製造や冷蔵倉庫、養殖場、工場、漁船への直接被害
② 台風等の悪天候による時化の増加により、海面養殖の生簀損壊、給餌回数の減少による魚の成長不足
③ 長期停電や水道水停止等による生産・物流への影響
④ 予防・安全対策コストとしての設備費や保険費用の増加
以上のリスクに対処するため、事業セグメントの分散、養殖拠点や製造拠点の分散を進めております。これにより、特定の事業や拠点に大きな損失が生じた場合でも、他の事業や拠点でその損失を吸収しうる体制を構築してまいります。
なお、2022年8月9日に青森県西津軽郡深浦町周辺で発生した大雨土砂災害により、当社の連結子会社である日本サーモンファーム株式会社の大峰中間養殖場に被害が発生いたしました。これにつきましては、養殖拠点の分散化の効果もあり、発生した損失は吸収することができております。
2、海外事業の拡大に関連するリスク(カントリーリスク)
(発生可能性:高/発生時期:特定時期無し/影響度:中)
当社グループは、「海の恵みを絶やすことなく世界中の人々に届け続ける。」をMissionとして掲げているとおり、海外での事業展開を積極的に行っております。海外への展開においては、以下を含む様々なリスクにさらされております。
・政情や治安の不安
・外国為替相場の変動
・将来起こりうる不利益な税制
・法令や規制の予期せぬ変更
・顧客ニーズ、市場環境及び現地の規制に関する理解不足
・人財の採用・雇用及び国際的事業管理の難しさ
・新たな多国籍企業との競争
海外事業の拡大に取り組む中で、上記のような事業展開に関連する様々なリスクが顕在化し、想定した事業展開を行うことができない可能性があります。また、海外企業への投資に関連して減損が生じる可能性や、当社グループの目標を達成できない市場から撤退する可能性があります。これらの結果、当社グループの事業展開、財務内容及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
なお海外加工事業においてはベトナムとミャンマーに加工拠点を有しており、このうちミャンマーにおいては本書提出日現在においても不安定な情勢が継続しております。現在もミャンマー工場は稼働を抑えた形で継続稼働しておりますが、情勢が悪化した場合は、海外加工事業における加工能力に影響を及ぼす可能性があります。今後も従業員の安全確保を最優先しつつ、引き続き情勢を注視してまいります。
3、養殖事業に関するリスク
(1)国内養殖において区画漁業権や水利権の維持や新規取得ができなくなるリスク
(発生可能性:低/発生時期:特定時期無し/影響度:大)
国内養殖において河川を利用した中間養殖を行うにあたっては水利権が、海面養殖を行うにあたっては区画漁業権の行使が必要になります。何らかの理由によりこれらの権利の使用や拡大に制約が生じた場合、当社グループの養殖事業の維持や拡大に支障を及ぼす可能性があります。
当該リスクに対応するため、当社グループでは法令遵守や環境配慮、行政、地域住民、地元漁協などとの対話を通じて、これらの権利の維持・拡大に努めております。
(2)養殖事業による海洋汚染に関するリスク
(発生可能性:中/発生時期:特定時期無し/影響度:中)
海面養殖では、残餌や糞尿等の海底堆積や逃亡魚等による海の汚染リスクが大きな課題です。当社がこの課題に適切に対処できない場合、ASC認証取消による当社養殖魚の付加価値の低下、地元漁協との関係悪化等により、養殖事業に悪影響を与える可能性があります。
当該リスクに対応するため、当社ではASC認証の維持を通じて環境に配慮した養殖を継続するとともに、潜水調査を含む継続的な環境影響調査や適正給餌などに努めております。
(3)養殖事業における環境規制の強化に関するリスク
(発生可能性:中/発生時期:特定時期無し/影響度:中)
環境保護の観点から、養殖事業に関する規制は強化される傾向にあります。新たな国内外の法規制等が制定された場合、当社グループにおいて、これら法規制等への対応のために新たな環境保全コストの負担等が生じることが予想されます。当社が現在又は将来の環境規制を遵守できなかった場合、当社に対する損害賠償請求や罰金の賦課、一定地域における生産・操業停止、当社の評判・信用の低下を招き、当社グループの事業展開、経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。
なお、当社グループに重大な影響を及ぼす可能性のある法規制等の改正は、本書提出日現在においてはありません。
(4)養殖用卵の調達に関するリスク
(発生可能性:低/発生時期:特定時期無し/影響度:中)
本書提出日現在において養殖事業における養殖量の約3割程度を占める日本国内においては、サーモンの養殖用卵の仕入は国家間の魚病防疫の契約上、米国もしくはカナダからの仕入れに規制されています。当社グループの国内養殖では米国の業者から仕入れた発眼卵を使って養殖を行っていますが、何らかの理由で当該仕入先からの発眼卵仕入が滞った場合、当社グループの国内養殖事業に大きな影響を及ぼす可能性があります。
(5)MSC認証およびASC認証について
(発生可能性:低/発生時期:特定時期無し/影響度:中)
当社グループが認証取得している持続可能な漁業認証(MSC)および養殖認証(ASC)においては、規格の要求事項を満たしたマニュアルを作成・運用し、定期的に認証審査機関による継続審査及び更新審査を受けることが求められます。当社グループでは、最新の規格要求事項に合わせてマニュアルをアップデートすることで、MSC・ASCを適切に運用しておりますが、当該審査で認証継続不可となる重大な不適合あるいは不適合品発生時の不適切な対応により、認証継続が一時停止又は取消された場合、当社グループが継続的に取り組んでいる事業に大きな影響を及ぼす可能性があります。
(6)疾病による大量斃死(へいし)
(発生可能性:低/発生時期:特定時期無し/影響度:中)
サーモン養殖においてはIHNやIPNといった抗生物質の効かないウイルス性の病気が発生することがあります。これらの病気が蔓延すると大量斃死が発生し、当社の業績に大きな影響を及ぼす可能性があります
当社では病気が持ち込まれるリスクに対処するため、他社で養殖した種苗は一切扱わず、発眼卵から自社で養殖するのみとしています。また、野生動物(特に鳥)による水平感染予防のための鳥よけ網、人的な水平感染予防のために場内入場時の全ての人、車に関する殺菌を実施しております。また、ワクチン開発を支援するため、ワクチン開発会社の行う治験へは積極的な協力を行っていく方針です。
(7)日本国内における養殖ライセンスの導入
(発生可能性:低/発生時期:特定時期無し/影響度:中)
デンマークを初め養殖先進国においては、淡水養殖を行う際は、取水量のライセンス、排水基準の規制などが存在し、海面養殖を行うためには、飼育生物量(バイオマス)ライセンスや使用給餌量ライセンスの取得が必要とされています。多くの国でこのライセンスの取得要件がネックとなり、それ以上の規模拡大が困難になるという状況が発生しています。
日本国内においてはこのような規制は現在はありませんし、規制が導入されることも現時点では予定されていません。しかしながら、長期的に見れば諸外国と同様にこのような規制が導入される可能性は排除できず、その場合は国内の養殖事業の大きな制約要件になる可能性があります。
当該リスクも見据え、当社では長期的な成長を想定して行使可能な水利権や区画漁業権の拡大を先行して進めております。また、ASC認証の取得率向上を通じて高い環境基準に対応できる体制の構築に努めてまいります。
4、製品の安全性について
(発生可能性:中/発生時期:特定時期無し/影響度:中)
食品の安全性に対する消費者の関心や要求は年々高まっております。
当社グループでは安全で、顧客に安心していただける商品をお届けするよう、経営責任者直轄の品質管理室を設置し、製造現場の衛生管理を推進しております。自社工場ではHACCPの管理手法を導入し、より高いレベルの食品安全マネジメントシステムの認証取得に取り組み、継続的な改善活動と、徹底した衛生管理を実践しております。また、検査室を設置して、食品の安全性を保証する微生物検査をはじめ各種検査を実施しております。さらに商品だけでなく製造環境の衛生状態も検査し、適切に管理しております。海外協力工場においても、自社工場と同等の管理手法を要求しており、緊密に連絡を取りながら当社主導で衛生管理の徹底と向上に取り組んでおります。以上のように、食品の安全性に対しては万全を期しておりますが、それでもなお品質に関する問題が生じた場合は、消費者の健康を脅かし、企業の信用を失墜させるおそれがあります。
5、特定の外注先への依存に伴うリスク
(発生可能性:中/発生時期:特定時期無し/影響度:中)
海外加工事業では、サーモンやサバ製品の外注加工に関して、ベトナムのTrung Sonグループに加工業務の過半を依存しています。そのため、災害等の要因によって同社の稼働に影響が生じた場合、あるいは同社との取引条件が大きく変動した場合などは、当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。
このようなリスクに対応するために、当社グループでは自社工場の拡大及び加工先の分散に努めております。
6、相場変動リスクについて
(発生可能性:高/発生時期:特定時期無し/影響度:小)
当社グループが取り扱う水産物は漁獲量や市況により相場が大きく変動するものがあります。当社ではこの相場変動が仕入と販売の両局面で影響を及ぼしますが、両者の相場変動の波にはタイムラグがあり、それによって利益率も大きく変動するため、当社の業績もその影響で大きく変動するリスクを抱えています。特に近年は不安定な世界情勢などを背景に、当社グループの取扱うサーモンや魚卵原料の相場が大幅に上昇をしてきました。今後はその反動減も想定されうる状況にありますので、この相場変動リスクは顕在化しやすい環境下にあると考えられます
これらのリスクに対処するため、当社グループでは、漁獲量や市況のタイムリーな状況把握とその状況に応じた調達・販売に努めております。
7、原料調達リスク(仕入先への依存リスク)
(発生可能性:低/発生時期:特定時期無し/影響度:中)
国内加工事業では、他の仕入先への代替が難しく、原料の総仕入高の約半分程度が特定の仕入先に集中しております。特定の仕入先とは取引開始以来、良好な関係を継続しており、今後も仕入取引を継続していく方針であり、また継続的かつ安定的に仕入ができるよう連携を強化しております。また、自社養殖原料を増やすことによってもリスクヘッジを図るよう努めております。
しかしながら、今後、自然災害、品質問題及び仕入先の経営悪化等何らかの要因により継続的かつ安定的に仕入れることが困難な状況となった場合、当社グループの事業展開、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
8、有利子負債への依存について
(発生可能性:中/発生時期:特定時期無し/影響度:小)
当社グループの事業の性質上、在庫残高は多くなる傾向にあり、2023年6月末時点では14,785百万円(総資産の49.1%)となっております。これは、養殖在庫については販売までに一定の養殖期間を要すること、仕入在庫のなかには仕入時期に季節性があり買付が一時に集中するものがあること、長期保存が可能な凍結原料があること、などに起因しています。当社ではこれらの在庫資金の多くを借入金で賄っているため、事業規模の拡大に伴って有利子負債残高も多くなっており、2023年6月末時点の有利子負債残高は14,999百万円、総資産に占める負債の割合は66.9%と大きくなっています。そのため、今後の金利情勢の変動によっては経営成績が影響を受ける可能性があります。
なお当社では、財務体質強化のために負債比率の削減が課題であると認識しており、それに向けて自己資本の充実に努めて参る所存です。
9、法的規制等について
(発生可能性:低/発生時期:特定時期無し/影響度:中)
当社グループの事業に適用される「食品安全基本法」「食品衛生法」「製造物責任法」「廃棄物処理法」等の様々な規制・規則が存在しております。今後各省庁等における現行の法解釈に何らかの変更が生じた場合、もしくは新たに当社グループの事業を規制する法律等が制定・施行された場合、その内容によっては当社グループの事業が制約を受けたり、当社が新たな対応を余儀なくされたりする可能性があります。このような場合には、当社グループの経営成績又は今後の事業展開が影響を受ける可能性があります。
当社グループでは、専門家の活用や行政とのコミュニケーション等を通じて、タイムリーな情報収集や適切な対応策の策定など、当該リスクの低減に努めております。
10、個人情報の管理について
(発生可能性:低/発生時期:特定時期無し/影響度:中)
当社グループは、通信販売等を通じて顧客の個人情報を入手する機会があります。何らかの理由でこれらの個人情報が漏洩した場合には、損害賠償請求の発生や社会的信用の低下等により、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、これらの情報についての厳格な管理体制を構築し、情報の取扱い等に関する規程類の整備・充実や従業員等への周知・徹底を図るなど、情報セキュリティの強化に努めております。
11、訴訟・係争等について
(発生可能性:低/発生時期:特定時期無し/影響度:中)
当社グループでは、現在係争中の案件はありません。当社グループでは法令遵守をはじめコンプライアンスを常に考慮した経営に努めておりますが、意図せざる理由により製品回収、法令違反又は訴訟提起等が生じた場合、その結果によっては、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
12、人財の確保、育成について
(発生可能性:低/発生時期:特定時期無し/影響度:小)
当社グループは、世界の多くの国と地域で事業活動を推進しております。そのため、継続的に事業を発展させるためには、専門性のある多様な人財及び経営戦略やグローバルな組織運営といったマネジメント能力に優れた人財の獲得、育成を継続的に推進していくことが重要となります。
しかしながら、必要な人財を継続的に獲得し定着させるための競争は厳しく、特に日本国内においては、少子高齢化や労働人口の減少等を背景に雇用環境の変化が急速に進んでおり、人財獲得や育成が計画通りに進まなかった場合、長期的視点から、事業展開、業績及び成長に大きな影響を及ぼす可能性があります。当社グループでは人財獲得のために新卒採用や経験者の通年採用を積極的に展開しております。また、期待水準の明確化に基づいた公平な評価・処遇制度の充実などの仕組みの構築により、従業員のエンゲージメントを高め、人財の定着を図っております。さらには、自律型人財やグローバル人財を育成し、当社グループの価値観を伝える教育プログラムの充実を図っております。
13、知的財産権に関するリスク
(発生可能性:低/発生時期:特定時期無し/影響度:小)
国内外において、当社グループの商標権が侵害されるなどした場合、当社グループ又はそのブランドのイメージを侵害し、当社グループの事業及び経営成績に影響を与える可能性があります。
また、当社グループが意図せず第三者等の知的財産権を侵害してしまった場合には、当該第三者から訴訟等を提起される可能性があり、損害賠償や補償等、又は訴訟等に対応するための多大な時間、労力、費用を要する可能性があることに加え、当社グループ又はそのブランドのイメージ、評価、社会的信用を害する可能性があり、その結果、当社グループの事業、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、保有する知的財産権を適切に管理し、第三者の知的財産権を侵害しないよう必要な調査を行う等、当該リスクの低減に努めております。
14、感染症大によるリスク
(発生可能性:低/発生時期:特定時期無し/影響度:小)
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関しては、これまでの経験を踏まえて対処してまいりますが、より強力な変異株や新たな感染症の出現により大幅な感染拡大、経済規制の強化が行われる場合は、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
15、当社株式の流動性について
(発生可能性:低/発生時期:特定時期無し/影響度:小)
当社は本書提出日現在、東京証券取引所スタンダード市場への上場を予定しておりますが、株式会社東京証券取引所の定める流通株式比率は新規上場時において25.08%となる見込みです。今後は、当社の事業計画に沿った成長資金の公募増資による調達、ストック・オプションの行使による流通株式数の増加など、これらを組み合わせて、流動性の向上を図っていく方針ではありますが、何らかの事情により上場時よりも流動性が低下する場合には、当社株式の市場における売買が停滞する可能性があり、それにより当社株式の需給関係にも悪影響を及ぼす可能性があります。
16、大株主について
(発生可能性:低/発生時期:特定時期無し/影響度:小)
当社の代表取締役社長である岡村恒一は、当社の大株主であり、自身の資産管理会社である株式会社オカムラ、配偶者、二親等内の血族の所有株式数を含めると本書提出日現在で発行済株式総数の77.9%を所有しております。同人は、安定株主として引続き一定の議決権を保有し、その議決権行使にあたっては、株主共同の利益を追求するとともに、少数株主の利益にも配慮する方針を有しております。当社といたしましても、同人は安定株主であると認識しておりますが、何らかの事情により、大株主である同人の株式の多くが減少した場合には、当社株式の市場価格及び議決権行使の状況等に影響を及ぼす可能性があります。
(1) 経営成績等の状況の概要
①経営成績の状況
第52期連結会計年度(自 2021年7月1日 至 2022年6月30日)
当連結会計年度における当社グループの経営成績の状況の概要は次のとおりであります。
当連結会計年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染拡大防止対策であるワクチン接種の推進効果等で感染者数が減少したことから経済活動正常化に向けた動きがみられました。しかし、昨年来の資源・エネルギー価格の高騰に追い打ちをかけるウクライナ情勢の長期化、さらには米国の金融政策の影響等による急激な円安の進行から物価上昇局面となり、先行きは不透明な環境が続いております。
海外においては、ワクチン接種の進展などにより新型コロナウイルスに対する厳しい規制から抜け出し需要が拡大する一方で、上記要因から欧州などを中心に資源・エネルギー価格の高騰が続く状況にあります。
当社グループの事業におきましては、新型コロナウイルス感染者数の減少から経済活動が活発になり、いくら・サーモン等の市場供給量が不足する中、養殖事業及び海外加工事業を中心に当社製品に対する需要及び販売価格が高水準で推移しました。
このような状況のもと、当社グループでは、養殖事業から国内加工事業、海外加工事業及び、海外卸売事業という川上から川下まで一貫した事業運営体制を背景に、製品品質の向上とコスト削減、継続的に商品を届け続けることに努めてまいりました。
その結果、当連結会計年度の売上高は前連結会計年度に比べ3,886百万円増の24,100百万円(前期比119.2%)、営業利益は前連結会計年度に比べ1,465百万円増の2,961百万円(前期比197.9%)、経常利益は前連結会計年度に比べ1,748百万円増の3,341百万円(前期比209.7%)、親会社株主に帰属する当期純利益は前連結会計年度に比べ1,257百万円増の2,249百万円(前期比226.8%)となりました。
各セグメントの経営成績は次のとおりであります。
(単位:百万円/%)
※調整額はセグメント間取引及び全社費用等であります。
また、売上高営業利益率は12.3%(参考:2022年3月期全産業平均6.49%。2023年3月期JPX調査レポートより。)、自己資本当期純利益率(ROE)は35.4%(参考:2022年3月期全産業平均9.37%。2023年3月期JPX調査レポートより。) と、高い収益性を達成することができました。
(養殖事業)
養殖事業においては、国内養殖場の規模拡大に伴う養殖量の増加、デンマークにおいて収穫時期を例年より遅らせたことによるトラウト卵の収穫量の増加に加え、コロナ禍後の世界的な需要増加やウクライナ侵攻後の供給・流通不安により、サーモン市場価格が歴史的な水準まで上昇したことから、収益性が大きく改善しました。なお、養殖事業には国際財務報告基準(IFRS)を採用するデンマーク子会社Musholm A/Sが含まれており、養殖事業の損益には、IAS第41号「農業」に従った売却コスト控除後の公正価値により評価した結果(売上原価△90百万円)が含まれております。
(単位:百万円)
(国内加工事業)
当期はいくら・筋子の新製品の拡販や生産ラインの大幅な見直しなどにより増収増益を見込んでいましたが、世界的ないくらの在庫・供給量不足などを背景に値上げを余儀なくされたものの、その後においても当社主力製品である筋子・いくらについて販売が好調に推移したことで、一定の利益を確保いたしました。
(海外加工事業)
新型コロナウイルス感染症流行に伴う東南アジア諸国での都市封鎖(ロックダウン)により、外注加工委託先の生産能力の低下が生じ、サプライチェーンの混乱等の影響を受け売上は減少しました。一方で、サーモン相場の変化をとらえて、低価格での調達を行うことができたことから、一定の利益を確保いたしました。
(海外卸売事業)
新型コロナウイルス感染症の影響に伴う東南アジア諸国での都市封鎖(ロックダウン)等により、一時的な売上の落ち込みは生じたものの、ワクチンの普及に伴い外食規制等が撤廃されるとともに外食事業向けの販売が拡大し、事業は堅調に推移いたしました。
第53期第3四半期連結累計期間(自 2022年7月1日 至 2023年3月31日)
当第3四半期連結累計期間における当社グループの経営成績の状況の概要は次のとおりです。
当第3四半期連結累計期間におけるわが国経済は、コロナ禍を抜けて第3次産業や個人消費を中心に経済活動正常化に向けた動きがみられたものの、資源・エネルギー価格の高騰に追い打ちをかけるウクライナ情勢の長期化、急激な円安の進行とその後の円高など、依然として先行き不透明な状況が続いております。
海外においては新型コロナウイルス感染症の世界的なパンデミックは収束に向かい、当社グループの事業領域である欧州や東南アジアでは活動規制の緩和や堅調な外需による景気の持ち直しが続く一方で、上記世界情勢の不透明さに起因したインフレーションが続き、今後の事業活動への影響に注視が必要な状況となっております。
当社グループの事業におきましては、サーモンの市場供給量の不足とサーモン相場の高騰から、養殖事業及び海外加工事業を中心に当社製品に対する需要及び販売価格が高水準で推移しました。
このような状況のもと、当社グループでは、養殖事業から国内加工事業、海外加工事業及び、海外卸売事業という川上から川下まで一貫した事業運営体制により、製品品質の向上とコスト削減、継続的に商品を届け続けることに努めてまいりました。
その結果、売上高は20,855百万円、営業利益は2,799百万円、経常利益は3,033百万円、親会社株主に帰属する四半期純利益は2,063百万円となりました。
各セグメントの経営成績は次のとおりであります。
(単位:百万円/%)
※調整額はセグメント間取引及び全社費用等であります。前第3四半期連結累計期間については、四半期連結財務諸表を作成していないため、記載を省略しております。
(養殖事業)
養殖事業においては、国内では4月以降の水揚に向けて養殖魚の成長段階である一方、海外では養殖魚の水揚と販売が行われました。国内養殖事業においては、2022年8月9日に青森県西津軽郡深浦町周辺で発生した大雨土砂災害により、深浦大峰中間養殖場において飼育する中間魚、養殖設備等に被害がありました。また海外養殖事業においては、2022年11月12日にデンマーク子会社の養殖生簀に漁船が衝突する事故があり、飼育する養殖魚、養殖設備等に被害がありました。いずれも、当該災害にかかる保険金については特別利益の受取保険金として、発生が見込まれる費用については、特別損失の災害による損失及び災害損失引当金繰入額として計上し、来期に向けて設備の復旧等を進めております。
なお、養殖事業には国際財務報告基準(IFRS)を採用するサーモン養殖事業会社が含まれており、養殖事業の損益には、IAS第41号「農業」に従った売却コスト控除後の公正価値により評価した結果(売上原価△271百万円)が含まれております。
(単位:百万円)
(国内加工事業)
魚卵製品の原料価格上昇に伴う販売価格転嫁後においても引き続き魚卵製品に対する需要は堅調であり、年末商戦を含め好調に推移しましたが、2022年9-12月の北海道の秋鮭が前年比76%増の豊漁であったことから魚卵製品の市中供給量が増加し、価格・数量は調整局面に入っています。
(海外加工事業)
東南アジア諸国での新型コロナウイルス感染症に関する行動制限の緩和により、外注加工委託先の生産能力が回復したほか、ミャンマーの子会社では軍事クーデターに伴い事業を停止していたものの2021年10月より工場の稼働を再開したことにより、海外加工事業では、加工量、販売量ともに堅調に推移しています。また、サーモン相場の高騰によりサーモン仕入価格は上昇していますが、価格転嫁と過去に低価格で仕入れた在庫により利益を確保しています。
(海外卸売事業)
東南アジア諸国での新型コロナウイルス感染症に関する行動制限・外食制限の緩和・撤廃などにより、外食事業向けの販売が拡大し、事業は堅調に推移いたしました。
②財政状態の状況
当社グループの財政状態は次のとおりであります。
第52期連結会計年度(自 2021年7月1日 至 2022年6月30日)
(資産)
当連結会計年度末における流動資産は18,457百万円となり、前連結会計年度末に比べ5,643百万円増加しました。これは主に、事業規模拡大及び豊漁期に起因して原材料及び貯蔵品や商品及び製品が2,144百万円増加したことに加え、「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)を当連結会計年度から適用したことにより有償支給先の原材料を2,308百万円計上したこと、国内養殖事業の規模拡大により仕掛品が314百万円増加した等によるものであります。固定資産は5,876百万円となり、前連結会計年度末に比べ1,305百万円増加しました。これは主に養殖用施設への投資等で有形固定資産が1,346百万円増加したこと等によるものであります。
この結果、総資産は24,333百万円となり、前連結会計年度末に比べ6,948百万円増加しました。
(負債)
当連結会計年度末における流動負債は12,293百万円となり、前連結会計年度末に比べ3,680百万円増加しました。これは主に、運転資金として短期借入金が1,063百万円増加したこと及び「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)を当連結会計年度から適用したことにより「有償支給取引に係る負債」を2,308百万円計上したこと等によるものであります。固定負債は4,592百万円となり、前連結会計年度末に比べ1,085百万円増加しました。これは主に、設備投資資金として長期借入金が1,030百万円増加したこと等によるものであります。
この結果、負債合計は16,885百万円となり、前連結会計年度末に比べ4,766百万円増加しました。
(純資産)
当連結会計年度末における純資産合計は7,447百万円となり、前連結会計年度末に比べ2,182百万円増加しました。これは主に親会社株主に帰属する当期純利益を2,249百万円計上したこと等により利益剰余金が2,095百万円増加したこと等によるものであります。
第53期第3四半期連結累計期間(自 2022年7月1日 至 2023年3月31日)
当第3四半期連結会計期間における当社グループの財政状態の状況の概要は次のとおりです。
(資産)
当第3四半期連結会計期間末における流動資産は26,113百万円となり、前連結会計年度末に比べ7,655百万円増加しました。これは主に、年末商戦での売掛債権の回収が進んだことにより現金及び預金が1,528百万円増加したこと、国内加工事業で秋口から冬にかけて魚卵の仕入を行ったことや養殖事業におけるサーモンの養殖にかかる餌代等を仕掛品に計上したことにより棚卸資産が5,911百万円増加したこと等によるものであります。固定資産は7,275百万円となり、前連結会計年度末に比べ1,399百万円増加しました。これは主に養殖用施設への投資等で建設仮勘定が398百万円増加したこと等によるものであります。
この結果、総資産は33,388百万円となり、前連結会計年度末に比べ9,055百万円増加しました。
(負債)
当第3四半期連結会計期間末における流動負債は19,439百万円となり、前連結会計年度末に比べ7,146百万円増加しました。これは主に、運転資金として短期借入金が7,102百万円増加したこと等によるものであります。固定負債は4,411百万円となり、前連結会計年度末に比べ181百万円減少しました。
この結果、負債合計は23,850百万円となり、前連結会計年度末に比べ6,965百万円増加しました。
(純資産)
当第3四半期連結会計期間末における純資産合計は9,537百万円となり、前連結会計年度末に比べ2,089百万円増加しました。これは主に親会社株主に帰属する四半期純利益を2,063百万円計上したこと等により利益剰余金が2,006百万円増加したこと等によるものであります。
③キャッシュ・フローの状況
第52期連結会計年度(自 2021年7月1日 至 2022年6月30日)
営業活動によるキャッシュ・フローは、863百万円の支出(前期は3,606百万円の収入)となりました。
税金等調整前当期純利益が3,274百万円となった一方で、当社主要事業がそれぞれ事業拡大傾向であることに加え、国内加工事業においては、主原料である魚卵が豊漁の時期と重なり、計画的に仕入総額を増やしたこと等に伴う棚卸資産残高の増加が4,721百万円生じたこと等が主な要因となり、マイナスの営業キャッシュ・フローとなりました。
なお、上記棚卸資産の増加については、収益認識に関する会計基準(企業会計基準第29号)の適用に伴い、買い戻し義務のある有償支給先の原材料を棚卸資産として認識した2,308百万円が含まれており、有償支給原材料を除いた棚卸資産の残高の増加は2,412百万円であります。
投資活動によるキャッシュ・フローは、1,633百万円の支出(前期比438百万円の支出増加)となりました。
国内養殖事業拡大のための設備投資や、海外での加工品質向上を目的とした設備増強など有形固定資産の取得による支出が1,666百万円(前期比191百万円の支出増加)となったためです。
財務活動によるキャッシュ・フローは、2,457百万円の収入(前期は2,691百万円の支出)となりました。
過年度設備投資目的での借入資金であった長期借入金の返済が668百万円あったものの、上記、設備投資活動目的での長期借入金の借入2,005百万円及び、原材料仕入等の運転資金目的での短期借入金の純増減額1,063百万円があったためです。
以上に加え、現金及び現金同等物に係る換算差額58百万円を調整した結果、現金及び現金同等物の当連結会計年度末残高は、前連結会計年度末に比べ18百万円増加し、1,961百万円となりました。
第52期連結会計年度及び第53期第3四半期連結累計期間における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1.セグメント間取引については、相殺消去しておりません。
2.金額は、販売価格によっております。
3.海外卸売事業については、自社生産設備を保有していないため、記載を省略しております。
当社グループは、需要予測に基づく見込生産を行っているため、該当事項はありません。
第52期連結会計年度及び第53期第3四半期連結累計期間における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は、次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は提出日現在において判断したものであります。
① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
第52期連結会計年度(自 2021年7月1日 至 2022年6月30日)
a. 経営成績の状況に関する分析
外部環境が不安定ななか、当社グループとしては大きく業績を伸ばす結果となりました。
特に業績を牽引したのは養殖事業と国内加工事業ですが、これらの事業において、当社の強みが発揮された結果であると考えています。当社の強みとは具体的には、①「自社原料を有していること」、②「外食店と小売店の両方を販売先として有していること」です。
・ 自社原料を有していること
水産資源の枯渇化、人口増に伴う水産物需要の増加を背景に、水産資源の価格の高騰が続いています。そこにウクライナの危機が重なり、原料調達の困難性が高まり、水産物の価格が急激に上昇しました。水産物を扱う多くの事業者にとっては、販売価格の上昇とともに仕入価格の上昇も伴います。在庫を有していた事業者も、手持ち在庫がなくなれば高い価格で調達せざるを得ない状況でした。高い価格でも調達できればまだ良い方で、数量の確保すら困難という状況が起こりました。
その点、当社グループは自社原料を有しています。飼料価格や輸送コストの上昇によるコスト増は当社も影響を受けますが、販売価格の上昇はそれを大きく上回るという状況が発生しました。勿論数量確保という意味でも自社原料は強さを発揮します。まさに自社原料として一定の在庫量が確保でき、市場の価格高騰の影響も限定的な自社原料が大きな利益を生み出しました。当社グループの場合、養殖したサーモンから国内加工事業で使ういくら・筋子の原料も採っていますので、養殖事業のみならず国内加工事業もこの恩恵を受けました。
・ 外食店と小売店の両方を販売先として有していること
営業制限により、外食店は大きなダメージを受けました。外食店と取引をしている事業者もその影響を受けます。当社も営業制限中は外食店向けの売上がダウンするという状況になりました。
一方で外食店向けの需要が小売店に流れた結果、小売店の売上高は増加するという現象が起きました。当社グループは外食店と小売店の両方を顧客として有しており、当社グループ全体では営業制限の影響を最小限に留めることができた点が好業績の一因であったと考えられます。
b. 財政状態に関する分析
棚卸資産の増加と有形固定資産の増加を主要因として総資産額が増加しています。負債側では借入金の増加を主要因として負債が増加しています。なお、「収益認識に関する会計基準」の適用により資産と負債がそれぞれ2,308百万円増加しています。
・棚卸資産の増加
当社グループではどの事業も拡大基調にあるため、恒常在庫水準が上昇傾向にあります。特に海外卸売事業を除く3事業は在庫回転期間が長いため、事業拡大に伴う在庫金額の増加も大きく出やすい傾向があります。このうち養殖事業は水揚げ時期の関係で期末在庫は大きくはなりませんが、国内加工事業と海外加工事業の在庫金額の増加が貸借対照表残高に大きく影響しています。これらの事業については、世界情勢の不安定感などを背景にリスクヘッジの観点から在庫を多めに抱える必要性も生じており、それも在庫金額増加の要因になっています。
・有形固定資産の増加
有形固定資産の増加については養殖設備への増加が主な内容になります。特に国内養殖の規模拡大は当社の成長戦略の最重要課題となっていますので、今後も引き続き、積極的な設備投資を行っていく方針です。
・借入金の増加
上記の在庫投資と設備投資の要する資金は借入金で賄っており、その結果として負債が増加しています。
第53期第3四半期連結累計期間(自 2022年7月1日 至 2023年3月31日)
a. 経営成績の状況に関する分析
当第3四半期連結累計期間におきましては、前期から好業績が継続する形となりました。
不安定な外部環境が継続する中、引き続き水産品の価格は高い水準で推移しました。そういった環境下にあっても、当社グループにおいては自社原料を含む原料調達力が強みを発揮して安定的な商品供給を行うことができ、相場上昇による利益率向上を享受することができました。
また、新型コロナウイルス感染症に関する行動制限解除後に小売店から外食店へ需要がシフトしていく環境の変化がありましたが、こちらも外食店と小売店の両方を販売先として有していることが功を奏し、引き続き売上を伸ばすことができました。
b. 財政状態に関する分析
基本的には従来の傾向が継続しており、棚卸資産の増加と有形固定資産の増加を主要因として総資産額が増加しています。負債側では借入金の増加を主要因として負債が増加しています。
・棚卸資産の増加
当社グループではどの事業も拡大基調にあるため、恒常在庫水準が上昇傾向にあります。加えて、原料価格上昇の影響で在庫単価も上昇しており、それも在庫残高を押し上げる要因となりました。また前期末との比較では、4月から始まる国内養殖の水揚げシーズンを前に、養殖事業の在庫が膨らんでいることも在庫金額増加の要因となっています。
・有形固定資産の増加
養殖量拡大に向けて、中間養殖場を中心に積極的な投資を継続しており、その結果として有形固定資産が増加しています。また、国内養殖事業の効率化や近代化に向けた投資も行っており、給餌用バージ船を昨年導入したことも有形固定資産増加の一因となっています。
・借入金の増加
上記の在庫投資と設備投資の要する資金は借入金で賄っており、その結果として負債が増加する傾向が継続しています。
② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に関する情報
第52期連結会計年度(自 2021年7月1日 至 2022年6月30日)
a. キャッシュ・フローの状況の分析
営業活動によるキャッシュ・フローは、863百万円の支出(前期は3,606百万円の収入)となりました。
税金等調整前当期純利益を3,274百万円計上しましたが、一方で棚卸資産残高の増加によるキャッシュ・アウトが大きく影響した結果、マイナスの営業キャッシュ・フローとなっています。
当社グループは事業の性質上、在庫回転期間が比較的長くなる傾向がありますが、そういったなかで事業規模拡大に伴い恒常在庫水準は年々上がっているため、大きなトレンドとして在庫投資に資金を要する傾向が継続しています。加えて、不安定な国際情勢を背景としたリスクヘッジとしての在庫確保、さらには短い周期で豊漁不漁が繰り返されるなかで当事業年度が豊漁期にあたっているといった要因も相まっております。いずれも、積極的な理由による計画的な支出であると捉えております。
投資活動によるキャッシュ・フローは、1,633百万円の支出(前期比438百万円の支出増加)となりました。支出のほとんどは設備投資によるものです。当社グループの成長に向けた主要課題として、国内の中間養殖場のキャパシティ拡大、成長するアジアの日本食需要への対応力強化があります。特に国内中間養殖場の拡大は重要課題ですが、建設期間や養殖期間を考慮すると相当程度前もって投資を行う必要があります。国内養殖量は2022年6月期の1,600トンから、3年後にはほぼ倍増を計画しています。その点を踏まえ、中期計画に沿った養殖量を達成するために必要な設備を順次計画的に建設しています。
以上のように在庫投資や設備投資に多くの資金を投入していますが、その資金は自己資金及び外部借入で調達しています。その結果、財務活動によるキャッシュ・フローは2,457百万円の収入(前期は2,691百万円の支出)となっています。金融機関とは良好な関係を維持しており、現状において資金調達環境に特段の懸念はありません。
また、現金及び現金同等物の期末残高は、翌月以降の資金繰り見込みを踏まえて期末時点の必要水準を確保した残高となるよう、借入金返済とのバランスを考慮しております。
b. 資本の財源及び資金の流動性に関する情報
当社グループの資本の財源は、自己資金及び金融機関からの借入であります。借入に関しましては、運転資金は主に短期借入金で、設備資金は主に長期借入金で調達しております。運転資金需要のうち主なものは、養殖事業における飼料代金、国内加工事業及び海外加工事業における原料仕入代金、海外卸売事業における商品仕入代金であります。設備資金需要のうち主なものは、養殖施設(冷凍設備や船等)や、国内加工工場(裁断機や浄化設備等)の設備投資代金であります。
当社グループでは、事業活動を円滑に行うため、金融機関との当座貸越契約等を利用し、実需に応じた資金調達を実施し、流動性を確保しております。当面の資金繰りのための資金は十分に確保していると判断しております。
③ 重要な会計上の見積及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。連結財務諸表を作成するにあたって、棚卸資産の評価、固定資産の減損、繰延税金資産の回収可能性等の資産、負債、収益及び費用に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いております。これらは、過去の実績や将来の事業計画等に基づき合理的に算出しておりますが、見積りの不確実性から実際の結果と異なる可能性があります。
また、海外子会社における生物資産評価については、生物資産を公正価値で測定し、取得価額との差額を損益(売上原価の繰入又は戻入)として認識しており、その測定には生物資産の正味売却価額や生存率等を見積もる必要があることから、市場の動向等により結果が大きく変動する可能性があります。当該海外子会社における生物資産評価については、「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しております。
なお、新型コロナウイルスによる当社グループへの影響は現時点においては限定的と考えているため、会計上の見積りについて、重要な変更は行っておりません。
製品加工委託契約
第52期連結会計年度(自 2021年7月1日 至 2022年6月30日)
当社グループは、大規模サーモン養殖を進めるべく、各種助成金制度等へ申請し採択を受ける他、大学等の研究機関や外部民間企業と共同研究開発等を行っております。 なお、国内加工、海外加工、海外卸売事業については、新製品の開発は継続的に行っておりますが、いわゆる研究開発活動は行っておりません。
以上のとおり、当社連結子会社である日本サーモンファーム株式会社で実証実験や新設備によるテスト等を重ねておりますが、研究開発を専門とする部門はなく、また関連する支出は製造原価や一般管理費の一要素として捉えていて研究開発費部分だけを区分して把握するのが困難であるため、研究開発費の記載は省略しております。
(1)養殖事業
ア 研究開発活動の方針および目的
「海の恵みを絶やすことなく世界中の人々に届け続ける。」という当社のMissionの下、水産資源を持続的に供給し続けるべく、2015年に青森県において大規模サーモン養殖を開始いたしました。2018年には「青森サーモン」の水揚げが本格的に始まり、2019年には水産養殖管理協議会(Aquaculture Stewardship Council)が管理運営する養殖に関する国際認証制度であるASC認証を取得し、今日に至っております。これからも海の自然環境を保全し、養殖業に関わる人々の暮らしを支えながら、世界中に高品質なサーモンを供給し続けるための研究開発を積極的に行っていく方針です。
イ 研究の目的
世界中に高品質なサーモンを供給し続けるうえでは、中間魚(※)の養殖がネックとなっております。すなわち、中間養殖場の適地は限られていることから、現状の方法では中間養殖場不足がボトルネックになっているという状況です。この中間養殖場不足の問題を如何に打開するかは当社の研究開発の主要目的の一つとなっております。
また、気候変動の影響に如何に対処するかという点も大きな課題です。海水温上昇への対応、天候不順でも安全かつ安定的に給餌が行える仕組みの構築等も研究目的の一つとなっております。
その他、高品質のサーモンをより低価格で供給するため、養殖関連システムの開発、餌の開発なども目的とした研究を進めております。
(※)中間魚とは、陸上養殖場にて養殖されている養殖魚を指し、海面養殖用の生簀に移送する前段階の状況となります。
ウ 主要課題
①屋外循環式の大規模中間育成魚高密度生産システムの研究開発
屋内循環式の中間育成魚生産システム(従来技術)の課題を解決するため、新技術「屋外循環式の大規模中間育成魚高密度生産システム」の開発を継続しております。
国内サーモン養殖においては、海面生産に必須である中間育成魚の供給不足がボトルネックとなっております。この供給不足(ボトルネック)を解消するため、本研究開発では高密度養殖技術体系とIoT活用による酸素供給自働化システムならびに従来技術 (屋内において少量の水資源で循環生産可能) の利点を組み合わせることにより、屋外の寒暖差が大きい水環境でも周年生産可能かつ中間育成魚の生産の低コスト化と量産化を実現する新技術を確立することを目指しております。
現状におきましては、2019年から2020年にかけて、パイロットプラントを自社独自で設計、建設し、2020年にそのプラントで飼育した中間魚を海面生産へ出荷しております。また、本来の目的である量産化へ向けた次のプラント拡張へ、より良い中間魚並びに効率的かつ環境負荷の少ない養殖を目指していく為の飼料の改善や養殖技術の改善、オペレーションコストの改善について、現在も研究を継続しております。
②バージ船を活用した大型サーモントラウトの大規模な海面養殖生産の研究開発
現状、給餌は漁船による近接給餌を行っております。すなわち、漁船で海面養殖用生簀に近接し海上と海中で目視を行いつつ給餌を行う方法です。この給餌方法は、大規模化による規模の経済が働きにくいことに加え、悪天候下では十分な給餌が行えないリスクや従業員の安全確保が困難になるリスクも抱えております。
これらの課題を解決するため、バージ船を用いた遠隔生産管理システムの研究開発を進めております。
現状におきましては、2022年に農林水産業みらい基金の助成を受けてバージ船を導入し、運用を開始いたしました。引き続き、運用の高度化・効率化に向けて研究を進めてまいります。
③持続可能な環境負荷の少ない養殖の為の飼料開発
当社は、ASC認証をサーモン養殖の新規参入ながら試験養殖から4年目で取得をするなど、持続可能な養殖のリーディングカンパニーとして実際に活動しております。その中で、今後の大規模養殖を見据え、より持続可能で環境負荷の少ない飼料づくりを各飼料メーカーとともに、継続的に改善中であり給餌効率の向上や天然漁獲された魚を基にした魚粉率の低下など着実に成果を上げております。今後もこの方向性を堅持し研究開発に取り組んでいく予定です。
エ 研究開発体制等
国内養殖事業においては、大学等の研究機関や外部民間企業とも協力しながら研究開発を進めております。日本サーモンファーム株式会社の代表取締役がリーダーとなり、生産管理研究部のメンバーをサポートメンバーとする体制を採っております。
オ 研究開発費に対する基本的な考え方
国内養殖事業自体はまだまだ研究初期段階の事業であると考えており、短期的な利益よりも長期的目線で投資を行っていくべき段階であると考えております。従いまして、各種助成金制度あるいは大学等の研究機関や外部民間企業との共同研究開発等は最大限活用しながらも、当社Missionの実現に向けて積極的に研究開発は行っていく所存です。
(2)国内加工事業
国内加工事業においては、原料となる水産物を国内工場において加工し、販売しております。いわゆる研究開発活動は行っておりませんが、販売先のニーズの掘り起こし及び販路拡大を企図して、新製品の開発活動を継続的に行っております。
(3)海外加工事業
海外加工事業においては、原料となる水産物を海外工場において加工し、販売しております。いわゆる研究開発活動は行っておりませんが、販売先のニーズの掘り起こし及び販路拡大を企図して、新製品の開発活動を継続的に行っております。
(4)海外卸売事業
該当事項はありません。
第53期第3四半期連結累計期間(自 2022年7月1日 至 2023年3月31日)
第52期連結会計年度(自 2021年7月1日 至 2022年6月30日)に記載した事項から重要な変更はありません。