文中の将来に関する記載事項は、当事業年度末日現在において当社が判断したものであります。
(1)会社の経営の方針
当社は「医療イノベーションを実現し、医療分野での社会貢献を果たします」を経営理念として掲げており、「再生医療および創薬の研究開発を踏まえ、一刻も早く、患者様に有効な医薬品を提供すること」を経営方針として、神経疾患を主な対象領域として、iPS細胞を活用したiPS創薬事業と再生医療事業を展開しております。世界中でこれまでの医療では未だ有効な治療法のない病気に対して有効な治療法を見出すことに挑戦し続けることにより、社会の課題を解決して持続的な企業価値の向上を目指してまいります。
(2)会社の経営環境
当社は、中枢神経疾患領域に対して、iPS細胞を活用したiPS創薬と脊髄損傷等の神経損傷部位に移植する再生医療等製品の開発を主たる事業としており、iPS創薬の市場規模は、Arthur D Littleが2021年に公表した疾患特異的iPS細胞バンク事業の利活用に関する最終報告書(注1)によると、世界の精神・神経系のiPS創薬貢献市場規模は、2040年に6.1兆円と予測されております。
また、再生医療の市場規模は、経済産業省が2020年に公表した再生医療等製品市場規模(注2)によると、2050年には日本国内市場2.5兆円、世界市場38兆円と予測されております。
このように当社の事業環境は成長基調にあり、長年の最先端の基礎研究で蓄積された成果を基盤としていること、豊富な経験や知識を有する研究人員体制、慶應義塾大学等との産学連携のネットワーク、iPS細胞から神経細胞に分化誘導する技術および最適な化合物スクリーニングを行う表現型の確立等の当社の強みを活かすことで、事業の成長が見込まれると考えております。
(注)1.Arthur D Little 2021年3月
「令和2年度 疾患特異的iPS細胞バンク事業の利活用に関する調査 最終報告書」
https://www.amed.go.jp/content/000079225.pdf
2.経済産業省 商務・サービスグループ 生物化学産業課 2020年3月2日
「再生医療・遺伝子治療の産業化に向けた 基盤技術開発事業 複数課題プログラムの概要」
https://www.meti.go.jp/policy/tech_evaluation/c00/C0000000R01/200302_regenerative_medicin
e_1st/regenerative_medicine_1st_05.pdf
(3)会社の経営戦略
当社は、2007年に京都大学の山中伸弥教授が世界で初めて作製したヒトiPS細胞を活用して、病気の患者様の細胞から作製したiPS細胞を用いて分化誘導した神経細胞に対して既存の医薬品や化合物による表現型スクリーニングを行うことで有効な医薬品を見出すiPS創薬事業と、人体の損傷部分に直接細胞を移植することにより治療を行う再生医療事業をハイブリッドで展開することによって、事業リスクを分散すると共に、事業間の技術やノウハウ等の共有により各事業の活性化を図ってまいります。また、慶應義塾大学医学部で長年培った最先端の基礎研究の成果を直接的に事業活動に活用する「From Basic to Clinical」戦略と同時に、難治性の希少疾患の研究開発から患者様の数の多い一般的な病気の研究開発に結び付ける「From Rare to Common」戦略を推進してまいります。
また、ビジネスモデルとしては、当事業年度末日現在におきましては、慶應義塾大学医学部等の大学機関や医療機関が保有する基礎研究の成果や特許等の知的財産権の独占的な実施許諾権等に基づいた開発パイプライン、または、当社自らが基礎研究を進めた成果に基づいた開発パイプラインについて、製薬会社等のパートナーと、基礎/探索研究から企業治験の各段階において、共同研究開発や将来の製造販売等の権利の一部または全部を譲渡するライセンス契約を締結するものでありますが、特に再生医療事業(国内)におきまして、中長期的には、自社で製造販売を行うための取り組みを推進してまいります。
(4)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社は、医薬品と再生医療等製品の研究開発を推進するバイオベンチャー企業であり、現時点においては、継続的に売上を計上する段階には至っておりません。従いまして、iPS創薬事業および再生医療事業の各開発パイプラインの研究開発の進捗状況を経営上の目標の達成状況を判断するための指標として事業活動を推進してまいります。
(5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当社は、主に難治性の神経疾患に対して、iPS創薬事業と再生医療事業をハイブリッドで事業展開しており、一刻も早く患者様の元に有効な治療法を届けるために研究開発を推進しております。
このような中、当社が優先的に対処すべき課題として認識している事項は、以下のとおりであります。
①研究開発の推進
iPS創薬事業におきましては、難治性の神経疾患の一つであるALSに対するロピニロール塩酸塩の第Ⅲ相試験(多数の患者様に対する安全性および有効性の検証を行う試験)を適切に実施することにより、患者様へ安全で有効な治療薬を届けることができるようにしてまいります。
その他の開発パイプラインに関しても自社による独自の研究開発は勿論のこと、他の製薬会社等との共同研究開発や事業提携等も視野に入れ、研究開発の推進を行ってまいります。
また、再生医療事業におきましては、亜急性期脊髄損傷の医師主導の臨床研究が行われており、当該研究の完了後に当社が企業治験を行う予定にしていることから、大量培養法の確立やGMP対応試薬への切替、製品規格の元となるデータの取得等、治験薬製造に向けた検討を進めると共に臨床用iPS細胞の製品製造における医薬品受託製造事業会社(CDMO)の選定も並行し、臨床用iPS細胞の選定後、遅滞なく製造に移行できるよう研究開発の推進を行ってまいります。
②優秀な人財の確保
当社が行っているiPS創薬事業、再生医療事業における研究開発は、最先端の基礎研究が基になっており、非常に高度な専門性が要求されております。
さらに国内外の製薬会社やバイオ企業との開発競争の激化が予想される中で、より一層の研究開発の加速や他社との差別化が求められることから、採用活動の推進や適切な人事考課の実施等を行うことにより、優秀な人財の継続的な確保に努めてまいります。
③法令遵守等の推進
当社では、iPS創薬事業、再生医療事業という医薬品等の研究・開発・製造・販売を行うことを目的とした事業を行っておりますが、当社の属する業界は、監督官庁による規制、法令遵守および知的財産権の管理に関してグローバルな視点で対応することが重要となっております。
このような状況を踏まえ、当社では、法令遵守や社会的責任を果たすために「内部統制の基本方針」を定めており、社内管理体制およびリスク・コンプライアンスの管理体制の強化を継続して行ってまいります。
④多様な資金調達手段の確保
創薬事業は、一般的に多額の研究開発費用と長い時間を要します。当社のように研究開発を担う企業は、研究開発資金を投資家の方々や製薬企業等の事業パートナーからの契約金等で資金を賄っていく必要があり、資金調達を確実に推進していく必要があります。そのため、当社は、資金調達手段の確保・拡充に向けて、株式市場からの資金調達、事業進捗によるマイルストン収入等による調達および金融機関からの借入による調達等を進め、必要な資金調達手段の多様化を図ってまいります。
当社のサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末日現在において当社が判断したものであります。
当社は、「医療イノベーションを実現し、医療分野での社会貢献を果たします」を経営理念として掲げ、「再生医療および創薬の研究開発を踏まえ、一刻も早く、患者様に有効な医薬品を提供すること」を経営方針として、神経疾患を主な対象領域として、iPS細胞を活用したiPS創薬事業と再生医療事業を展開し、また、学校法人慶應義塾や学校法人北里研究所等と共同研究を実施していることから、2015年9月の国連サミットで加盟国の全会一致で採択された持続可能な開発目標(SDGs:Sustainable Development Goals)の中では、「3.すべての人に健康と福祉を」、「4.質の高い教育をみんなに」と密接に関連していると考えており、当社の事業活動やサービスの提供がサステナビリティの実現の一助となるべく事業を推進しております。
当社では、サステナビリティ関連のリスク及び機会を監視し、及び管理するためのガバナンスの過程、統制及び手続き等の体制をコーポレート・ガバナンスの体制と区別しておりませんが、取締役会は原則月1回開催する他、必要に応じて取締役会を開催することとしており、適時の監視および迅速な経営上の意思決定を行っております。
詳細は、
当社の経営方針・経営戦略等に影響を与える可能性があるサステナビリティ関連のリスク及び機会に対処するための取組としては、自社の研究開発や共同研究の進捗がサステナビリティの実現と密接な関係があると考えられることから、研究の進捗について定例の確認に留まらず、必要に応じて適宜確認しており、更に外部有識者のアドバイスを頂く等の取組も並行して行っております。
また、新たな開発パイプラインや共同研究先の検討も引き続き推進してまいります。
人的資本に関する戦略としては、当社が行っているiPS創薬事業、再生医療事業における研究開発は、最先端の基礎研究が基となり、非常に高い専門性が要求され、かつ今後国内外の製薬会社やバイオ企業との開発競争の激化が予想され、より一層の研究開発の加速や他社との差別化が求められることから、特に基礎研究、知財、臨床研究、製造等に知見を有する人財の確保は重要であると考えており、ライフスタイルを考慮した専門型裁量労働制やフレックスタイム制といった環境整備だけではなく、採用活動の推進や適切な人事考課の実施等を行うことで国内外の多様性に富んだ優秀な人財の確保を推進してまいります。
当社は、リスク・コンプライアンス委員会を設置し、常務取締役CFOを委員長として各本部の担当者、常勤監査役および社外の弁護士が委員となって四半期に一度開催しており、この場でサステナビリティ関連のリスク及び機会も識別し、重要性、緊急性等に基づいて、その評価、対応方針・対応内容等を協議したうえで、担当部門に対応処置の指示、連絡を行うと共に、取締役会へ報告することとしております。
当社では、サステナビリティ関連のリスク及び機会に関する当社の実績を長期的に評価し、管理し、及び監視するために用いられる情報としての指標及び目標を具体的に定めておりませんが、今後の事業を進める中でその精緻化を図ってまいります。
なお、人的資本に関する指標及び目標については、上記(2)で記載した戦略の実施を通じ、サステナビリティの実現を達成するうえで適切な指標及び目標を見定めてまいります。
本書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、当社において、財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を及ぼす可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりとなります。影響度や発生可能性が高いとはいえないものについても、投資判断または当社の事業活動を十分に理解するうえで、重要と考えられる事項については、投資家や株主に対する積極的な情報開示の観点から、リスク要因として挙げております。ただし、これらは、当社に関するリスクを全て網羅したものではありません。
当社は医薬品等の研究・開発・製造・販売を事業目的としておりますが、一般に医薬品等の研究開発には、前臨床の研究から臨床研究、上市に至るまで、長い期間と多額の研究開発費用を要することが多く、また、全てのパイプラインが上市するとは限りません。特に研究開発段階のパイプラインを有するバイオベンチャー企業については、事業やパイプラインの研究開発の段階によっては、一般の投資家の投資対象としては相対的に投資リスクが高いと考えられており、当社株式への投資はこれに該当いたします。
当社は、リスク・コンプライアンス委員会における検討および取締役会での議論により、これらのリスクの発生の可能性や影響度合い、頻度を十分に認識した上で、発生の回避および発生した場合の適切な対応に努める方針ですが、当社株式に関する投資判断は、以下の事項および本項以外の記載もあわせて、慎重に検討した上で行われる必要があると考えます。
なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末日現在において当社が判断したものであります。
(1)医薬品等の研究開発に関するリスク
①開発パイプラインの不確実性に関するリスク(影響度:中、発生可能性:中、発生可能性のある時期:中期)
当社では、iPS創薬事業、再生医療事業という医薬品等の研究・開発・製造・販売を行うことを目的とした事業を行っておりますが、これらは、一般的に多額の研究開発費用と長い年月を要し、臨床試験での患者様の募集の遅れや有用な効果を確認できないこと等により、研究開発が予定どおりに進行せず、研究開発期間の延長や中止の判断を行うことは稀ではありません。また、「(2)安全性および法的規制等に関するリスク」に記載のとおり、各国の薬事関連法等の法的規制の適用を受け、新たな医薬品等の製造および販売には各国別に厳格な審査に基づく承認を取得しなければならないため、有効性、安全性および品質等に関する十分なデータが得られず、予定していた時期に上市できずに延期になる、または上市を断念する可能性があります。これは、当社の開発パイプラインでも同様となります。
当社といたしましては、iPS創薬事業並びに再生医療事業において、複数の開発パイプラインを推進することで、適切な費用配分によるリスク分散を実施し、大学や研究機関等との連携の中で、新たな開発パイプラインなどの経営資源の獲得を継続的に行ってまいりますが、自社の研究開発した医薬品または再生医療等製品等の候補の上市が延期または中止された場合、当社の業績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
②技術革新に関するリスク(影響度:小、発生可能性:中、発生可能性のある時期:長期)
当社の行っているiPS創薬事業、再生医療事業の研究開発は最先端の基礎研究が基になっており、技術の革新および進歩が著しく速いバイオテクノロジー分野に属しております。そのため、当社は、大学や研究機関等、並びに大手製薬会社等との連携による最先端の研究成果・情報を速やかに導入できる体制を構築すると共に、国内外から優秀な人財を確保することにより技術革新の継続的な推進を行ってまいります。しかしながら、急激な技術の革新・進歩等により、当社がそのスピードについていくことができなかった場合や、当社が行っている研究開発の内容に陳腐化が生じ、その対応に想定以上のコスト等を要するような場合には、当社の事業展開、業績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(2)安全性および法的規制等に関するリスク
①副作用発現に関するリスク(影響度:大、発生可能性:小、発生可能性のある時期:長期)
当社がiPS創薬事業、再生医療事業の研究開発で取り扱っている医薬品および再生医療等製品には、臨床試験段階からさらには上市以降において、予期せぬ副作用が発現する可能性があります。当社といたしましては、将来的に患者様や医療関係者への迅速な情報提供が可能となるように情報提供体制および各関係医療機関とのネットワークを構築し、製造物責任を含めた各賠償責任に対応できるよう医薬品等の添付文書の記載、適切な保険への加入等を行ってまいりますが、予期せぬ副作用が発現した場合、当社に対する信頼に悪影響が生じ、当社の業績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
②ヒト由来の原材料の使用に関するリスク(影響度:大、発生可能性:小、発生可能性のある時期:長期)
当社が再生医療事業の研究開発で取り扱っている再生医療等製品は、ヒト由来の原材料であるヒト細胞・組織を利用したものであり、利用するヒト細胞・組織に起因する感染の危険性を完全に排除し得ないことなどから安全性に関するリスクが存在するとされています。当社といたしましては、前臨床および臨床研究の段階で安全性の基準に従った評価・確認を徹底し、外部の専門家との円滑な連携体制を構築することで、製造、流通、販売等の各サプライチェーンにおける安全性を確保してまいります。また、将来的に製造物責任を含めた各種賠償責任に対応するための適切な保険に加入してまいります。しかしながら、当社の再生医療等製品を患者様の体内に移植することにより、安全性に関するリスクが顕在化した場合、当社の業績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
③薬価規制に関するリスク(影響度:中、発生可能性:中、発生可能性のある時期:中期)
当社が取り扱いを予定している医薬品および再生医療等製品の価格は各国の医療行政における薬価規制の影響を受けており、世界的な医療費抑制の動向の中、薬価改定を含めた医療制度改革の施策が行われております。かかる動向を受けて、今後上市を目指す当社の医薬品および再生医療等製品の薬価が想定を下回る可能性があり、当社の業績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
④海外市場に関するリスク(影響度:小、発生可能性:中、発生可能性のある時期:長期)
当社は、事業拡大戦略の一環として、海外展開を目指しております。当社といたしましては、現地への進出にあたっては、金融機関や各種専門機関等との連携により、現地の市場動向や関連法令の有無・内容等に関する調査を行い、慎重な判断を行う予定でおりますが、今後、予期しない法規制の変更、政情不安等による社会的混乱等のリスクが顕在化し、当初の計画どおりに海外展開が進展しなかった場合には、当社の業績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
⑤医薬品に関する法令その他の規制に関するリスク(影響度:中、発生可能性:中、発生可能性のある時期:中期)
当社では、iPS創薬事業、再生医療事業という医薬品等の研究・開発・製造・販売を行うことを目的とした事業を行っており、一般的に研究、開発、製造および販売のそれぞれの事業活動において、各国の医薬品等に関する法規制、薬事行政指導、医療保険制度並びにその他関係法令等により、様々な規制を受けております。また、基礎研究から製造・販売の承認を取得するまでに多大な開発コストと長い年月が必要となりますが、研究開発期間中に規制等の改定が生じ、計画時に見込んでいなかった事由により、規制当局から、追加的な試験を求められたり、承認の時期が遅れる等の事象が発生する場合があるだけでなく、医薬品等として規制当局が認めない場合には、上市自体が困難になる可能性があります。これらは、当社の医薬品等を他社へ導出する場合にも影響があり、当初計画した条件での導出が行えない、導出そのものが困難となる、導出に関する契約内容が変更になる、または導出契約が解消される可能性があります。さらに、医薬品等として承認を取得できたとしても、健康保険の対象として保険収載されない、計画どおりの保険価格が付されない可能性があります。当社といたしましては、日本および海外の医療行政や薬事規制の動向を各専門家から迅速に把握し、各開発パイプラインの進捗に応じて適切に規制当局等の行政機関との連携を推進してまいりますが、将来、各国の医薬品等に関する関連法令等の諸規制に大きな変化が生じたり、健康保険の対象として保険収載されない等の事象が生じた場合、当社の業績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(3)知的財産権に関するリスク
①知的財産権に関するリスク(影響度:大、発生可能性:中、発生可能性のある時期:中期)
当社は事業を進める中で特許権等の様々な知的財産権を使用することになり、この知的財産権には自社所有のものだけではなく、知的財産権の保有者から実施許諾を受けているものや受けようとしているものも含まれますが、当社が必要とする知的財産権について実施許諾を得られない場合や、当社が保有または実施許諾を受けている現在出願中の特許が成立しない場合があり、また、特許が成立した場合でも、当社の研究開発を超える優れた他社の研究開発により、当社の特許技術が淘汰される可能性は常に存在しております。また、当社では他社の特許権の侵害を未然に防止するため、外部の知財事務所等の専門家と連携し、前臨床段階における特許侵害に関する予防調査等の事前確認含め、当社が必要と考える特許の調査を実施しており、これまでに当社の開発パイプラインに関する特許権等の知的財産権について第三者との間で紛争が発生した事実はありません。
しかしながら、当社のような研究開発型企業にとって特許技術の淘汰を含めた知的財産権の問題を完全に回避することは困難であり、当社が必要とする知的財産権の実施許諾を得られない場合、当社が使用できる権利のある特許権等の権利範囲に含まれない優れた技術が他社により開発される場合、または第三者との間で知的財産権に関する紛争が生じた場合、当社の業績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(4)事業内容に関するリスク
①慶應義塾大学との関係に関するリスク(影響度:大、発生可能性:小、発生可能性のある時期:中期)
当社は、慶應義塾大学医学部生理学教室および同大学医学部整形外科学教室との共同研究で必要となる費用を負担している他、同大学が保有する特許権の一部について独占的実施許諾契約を締結しており、当該契約は特許権の独占的実施許諾を第三者に実施許諾する場合に、契約一時金およびかかる特許権を第三者に実施許諾したことによる収入(マイルストン収入、ロイヤリティ収入)の一定料率に相当する金額を同大学に支払うこと等を定めたものであり、「第2 事業の状況 5 経営上の重要な契約等」に記載しております。また、同大学の組成する慶應イノベーション・イニシアティブ2号投資事業有限責任組合は当社の株式を保有しております。
同大学との取引については、良好な関係を維持しつつも当社または株主の利益を害することのないよう、法規制を遵守すると共に、当社として利益相反管理方針を定め、当該方針に則り適切に利益相反の運営管理を行い、研究開発や治験を進めております。また、同大学との取引決定に当たっては特別利害関係人への該当/非該当について顧問弁護士からの助言に基づき慎重に判断を行ったうえで取締役会での事前承認を得ることを原則とし、監査役監査においても、同大学との契約関係が適切な手続きを経て締結されていることを確認しております。また、同大学でも、利益相反マネジメント・ポリシーにおいて同大学における透明性のある産学連携を推進するための基本方針を定めると共に、利益相反マネジメント内規において各部門(各学部・大学院各研究科等)での利益相反マネジメントを行う体制を定めており、当社の取締役でもあり、同大学医学部生理学教室の教授を務めております岡野栄之、同教室の准教授を務めております福島弘明、および同大学医学部整形外科学教室の教授を務めております中村雅也につきましても適切に遵守しております。しかしながら、利益供与を疑われる等の事態が発生した場合は、当社の利益および社会的評価を損ねる可能性があり、その結果として当社の業績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
②経営上の重要な取引に関するリスク(影響度:大、発生可能性:小、発生可能性のある時期:中期)
当社は、iPS創薬事業、再生医療事業という医薬品等の研究・開発・製造・販売を行うことを目的とした事業を推進しており、その研究開発や製造、流通、販売の各段階において、適切なバリューチェーンの確立を図ると共に必要な契約を締結しております。当該契約のうち、特に重要と考えられる取引に関する契約の概要は、「第2 事業の状況 5 経営上の重要な契約等」に記載のとおりであり、現時点において、その相手先との間で、当該契約の遂行および継続に支障をきたすような事象は発生しておらず、かつ当該契約の締結にあたっては、条項に過不足がないよう顧問弁護士等の外部専門家から適切な助言を頂いております。
また、当社といたしましては、今後も事業基盤の強化、効率的な経営の実現に向け、パートナー企業との円滑なコミュニケーションを通じ、広範な提携関係を構築してまいりますが、当社の計画どおりに提携関係が構築できない、提携関係に想定し得ない変化が生じる、提携の効果が当初の計画を下回る、提携関係が当社の意図に反して解消される等の事象が生じた場合、または当該契約の期間満了、相手先の経営状態の悪化や経営方針の変更による契約解除その他の理由による終了、もしくは当社にとって不利な契約内容の変更が行われた場合、当社の業績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
③収益計上に関する不確実性のリスク(影響度:大、発生可能性:中、発生可能性のある時期:中期)
当社の収益モデルは、大手製薬企業等との共同開発および販売権のライセンスアウトによる収益化を基本としておりますが、このような収益モデルは、相手先企業の経営方針の変更や経営環境の極端な悪化等の、当社がコントロールし得ない何らかの事情により、期間満了前に終了する可能性があります。また、当社の業績予想策定の過程で製品上市前に所定の成果達成に基づくマイルストン収入を見込む場合がありますが、この発生時期は開発の進捗に依存し、販売金額についても、当社の想定より異なる可能性のある不確実なものとなります。なお、再生医療事業では自社による製造販売を行う収益モデルの構築を推進してまいりますが、この収益計上に関しても開発の進捗状況に依存した不確実なものとなります。当社では、このような収益計上に関する不確実性を低減させるため、複数の開発パイプラインの収益化を推進していく方針になりますが、相手先企業の経営方針等や販売動向、開発の遅延、中止等により、当社の業績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
④業績および資金繰りに関するリスク(影響度:大、発生可能性:中、発生可能性のある時期:中期)
当社では、iPS創薬事業、再生医療事業という医薬品等の研究・開発・製造・販売を行うことを目的とした事業を行っておりますが、一般的に多額の研究開発費用と長い時間を要し、その投資資金回収も他産業と比較して相対的に長期に及ぶため、継続的に営業損失を計上し、営業活動によるキャッシュ・フローはマイナスとなる傾向があります。
この傾向は、当社においても同様であり、当事業年度において営業利益を計上し、且つ営業活動によるキャッシュ・フローはプラスとなったものの、前事業年度以前の継続的な営業損失の計上、営業活動によるキャッシュ・フローのマイナスおよび将来の収益獲得の不確実性を考慮いたしますと、継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような事象または状況が存在していると認識しております。
このような事象または状況を改善するために契約一時金、マイルストン収入の獲得および市場からの資金調達による十分な運転資金の確保ができていることから、継続企業の前提に関する重要な不確実性は認められないものと判断しております。
しかしながら、当社はまだ安定的な収益基盤や資金基盤が確立されているわけではないことから、売上高、当期純利益(又は純損失)は不安定に推移し、適切なタイミングおよび条件で資金調達できる保証はないことから、複数の開発パイプラインのライセンスアウトによる収益化を推進するとともに、直接金融および間接金融による幅広い資金調達手段の確保等の推進を図ってまいりますが、それらの収益化や資金確保について遅延や中止が生じた場合、当社の業績および財政状態に重大な影響を及ぼし、資金調達並びに研究開発の継続や事業の継続・拡大に悪影響を及ぼす可能性があります。
(5)その他のリスク
①情報漏洩に関するリスク(影響度:中、発生可能性:中、発生可能性のある時期:長期)
当社は、研究開発に関連した技術、ノウハウ等や事業上の秘密情報を保持しております。これらの情報の外部への不正な流出を防止するため、情報セキュリティ関連規程を制定すると共に、情報の取り扱いに関する社員研修や、情報へのアクセス管理等、内部管理体制の強化を推進しております。しかしながら、予期せぬ事態により情報が流出する可能性は存在し、このような事態が生じた場合、社会的信用の失墜を招き、当社の業績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
②社歴に関するリスク(影響度:小、発生可能性:小、発生可能性のある時期:長期)
当社が行っているiPS創薬事業、再生医療事業における研究開発は、最先端の基礎研究が基になり、非常に高度な専門性が要求されることから、専門分野における知識・経験を有する人財を採用することが非常に重要になっておりますが、当社は企業体としての経験がいまだ浅く、今後予測できない事業上の問題等が発生し、必要な人財を確保できない場合には、当社の業績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
③小規模組織に関するリスク(影響度:中、発生可能性:中、発生可能性のある時期:中期)
当社は、医薬品等を取り扱う企業としては小規模な組織であるために、役員および従業員一人一人が担当する業務および責任の範囲は相対的に広範となっており、退職や休職等に対応する人員の補充が十分でない環境にあります。今後の事業拡大に伴い、中長期的に医薬品業界を中心とした優秀な経験者の採用を推進することで必要な人員増加を図ると共に、社内外のセミナーや勉強会等への参加による社員教育やノウハウの共有により人財育成の強化を図ってまいりますが、必要な人財の採用が進まず、また、多くの人財流出等があった場合には、当社の業績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
④特定の人物への依存に関するリスク(影響度:中、発生可能性:中、発生可能性のある時期:長期)
当社は、慶應義塾大学医学部生理学教室の教授を務めております岡野栄之、同大学医学部整形外科学教室の教授を務めております中村雅也の研究成果の事業化を目的とし、医薬品および再生医療等製品の研究・開発・製造・販売を事業目的として設立した企業であり、当社の創業者兼取締役でもある岡野栄之、中村雅也の長年の基礎研究の成果を生かし、事業を推進してまいりました。また、現在の当社と同大学医学部生理学教室および整形外科学教室との共同研究においても両名が中心的な役割を担っていることから、当社の研究開発活動および事業の推進において両名への依存度は高いと考えられます。さらに、岡野栄之、中村雅也は、当社の大株主でもあり、当社の経営基盤の安定のためにも、重要な位置付けを有しております。当社といたしましては、国内外の優秀な人財の確保を行うことにより社内の研究開発体制の強化や開発パイプラインの拡充を推進してまいりますが、今後も岡野栄之、中村雅也の当社への関与が重要であると考えており、何らかの理由により岡野栄之または中村雅也の関与が困難となった場合等には、当社の業績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
⑤剰余金の分配に関するリスク(影響度:小、発生可能性:小、発生可能性のある時期:長期)
当社は、株主への利益還元を重要な経営課題と認識しており、将来的には経営成績および財政状態を勘案しつつ剰余金の分配を検討することを目指しておりますが、当事業年度末日現在において利益剰余金はマイナスであり剰余金の分配を実行するためにはこれを解消する必要がございます。また、当面は、多額の先行投資を伴う研究開発活動の継続的かつ計画的な実施に備えた資金の確保を優先するため、配当等の株主還元は行わない方針としております。なお、収益計上額の大幅な変動または収益計上の時期の変更等により、将来的な剰余金の分配が遅れる可能性があります。
⑥増資等の資金調達に関するリスク(影響度:中、発生可能性:中、発生可能性のある時期:長期)
当社は中長期的な研究開発の中で多額の研究開発資金を必要としており、資金需要に応じて、市場において増資を含む資金調達を行うことにより、当社の発行済株式総数が増加することで、1株当たりの株式価値が希薄化し、当社株式の価値が低下する可能性があり、また、機動的な資金調達が困難となった場合、当社の財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
⑦新株予約権に関するリスク(影響度:小、発生可能性:小、発生可能性のある時期:長期)
当社は、当社取締役、従業員および社外協力者の業績向上に対する意欲や士気を高め、また優秀な人財を確保する観点から、ストックオプション制度を採用しております。会社法第236条、第238条及び第239条の規定に基づき、株主総会の承認を受け、当社取締役、従業員および社外協力者に対して新株予約権の発行と付与を行っております。当事業年度末日現在における当社の発行済株式総数は11,604,600株であり、発行済株式総数に対する潜在株式数の割合は10.0%となっております。これら新株予約権の権利がすべて行使された場合は、新たに1,160,000株の新株式が発行され、当社の1株当たりの株式価値が希薄化する可能性があります。また、今後も優秀な人財の確保等のため、同様のインセンティブ・プランを継続する可能性があり、今後付与される新株予約権が行使された場合にも、当社の1株当たりの株式価値は希薄化する可能性があります。
⑧感染症の流行に関するリスク(影響度:中、発生可能性:中、発生可能性のある時期:長期)
今般発生した新型コロナウィルス感染症のような感染症が流行することにより、当社の様々な事業活動が制約を受けた結果、当社の医薬品および再生医療等製品の研究開発と、その後の製造・物流・販売体制の構築に遅延が生じ、当社の業績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
⑨ベンチャーキャピタル等による当社株式売却に関するリスク(影響度:中、発生可能性:大、発生可能性のある時期:中期)
当事業年度末日現在における当社の発行済株式総数のうち、ベンチャーキャピタルおよびベンチャーキャピタルが組成した投資事業有限責任組合(以下「ベンチャーキャピタル等」という。)が保有している当社株式の割合は29.0%であります。
一般に、ベンチャーキャピタル等の出資目的は、株式公開後に当該株式を売却することによるキャピタルゲインの獲得であることから、今後においてベンチャーキャピタル等が所有している当社株式の売却が想定され、当該株式の売却によって、当社株式に関する市場の需給バランスが崩れることにより、当社株式の市場価格が低下する可能性があります。
当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
(資産)
当事業年度末における流動資産は3,308,968千円となり、前事業年度末と比較して1,938,040千円増加いたしました。主な要因は、現金及び預金が新株発行等により1,929,560千円増加、前払費用も8,967千円増加したことによるものであります。
固定資産は4,934千円となり、前事業年度末と比較して1,296千円増加いたしました。これは保証金が1,296千円増加したことによるものであります。
この結果、総資産は3,313,902千円となり、前事業年度末と比較して1,939,336千円増加いたしました。
(負債)
当事業年度末における流動負債は178,480千円となり、前事業年度末と比較して144,796千円増加いたしました。
主な要因は、未払費用が8,569千円増加、未払金が7,271千円増加、未払法人税等が67,683千円増加およびその他が59,714千円増加したことによるものであります。
固定負債は30,654千円であり、前事業年度末と比較して26,035千円増加いたしました。これは資産除去債務が26,035千円増加したことによるものであります。
この結果、負債合計は209,134千円となり、前事業年度末と比較して170,831千円増加いたしました。
(純資産)
当事業年度末における純資産合計は3,104,768千円となり、前事業年度末と比較して1,768,504千円増加いたしました。これは、当期純利益を260,330千円計上したことにより利益剰余金が260,330千円増加、新株発行により資本金および資本剰余金がそれぞれ754,087千円増加したことによるものであります。
この結果、自己資本比率は93.7%(前事業年度末は97.2%)となりました。
② 経営成績の状況
当事業年度における我が国経済は、長引くロシア・ウクライナ問題に加え、中東並びに中国・台湾においても地政学リスクが顕在化すると共に、エネルギー価格の高止まり、各国の金融引き締めに伴う景気の減速見通し、不安定な為替相場および中国経済の減速懸念等が重なり、依然として先行きが不透明な状況が続いております。
このような状況の中、当社は慶應義塾大学医学部発ベンチャー企業として、iPS細胞を活用した創薬事業、iPS細胞を活用した再生医療事業の研究・開発とその収益化を推進し、2023年3月1日にアルフレッサ ファーマ株式会社との間で、日本市場を対象とした「ロピニロール塩酸塩を活用したALS治療薬の開発権・製造販売権許諾契約」を締結すると共に、ALS治療薬の海外市場やALSに関する開発パイプライン以外の開発パイプラインにおいても国内外の製薬会社等のパートナーとの提携に向けた事業開発活動を鋭意進めております。
研究開発活動につきましては、iPS創薬事業では6つの開発パイプラインの研究を行っており、その内のALSに関する開発パイプラインでは、一刻も早く患者様に治療薬を届けるために、アルフレッサ ファーマ株式会社と共に検証的治験(第Ⅲ相試験)に向けて準備を進めております。
なお、ロピニロール塩酸塩がALSの病態に有効であることをiPS細胞を用いる方法により見出されておりますが、これはiPS細胞創薬によって、既存薬以上の臨床的疾患進行抑制効果をもたらしうる薬剤の同定に世界で初めて成功した事例であり、iPS細胞等幹細胞を用いた研究に関する著明な国際科学雑誌である「Cell Stem Cell 誌(Cell Press)」に、2023年6月2日(日本時間)に掲載されております。
また、難聴に関する開発パイプラインにおいては、学校法人北里研究所との共同研究を2023年6月に開始し、前頭側頭型認知症に関する開発パイプラインにおいては、最終的に絞り込んだ1化合物について必要なデータの取得にも目途がつき、2023年11月2日に特許出願を行う等の成果が出ており、iPS創薬事業のその他の開発パイプラインにおいても、ハンチントン病に関する開発パイプラインで最終的な化合物の絞り込みを完了する等、今後の治験に向けた取り組みを進めております。
再生医療事業では5つの開発パイプラインの研究を行っておりますが、その内の亜急性期脊髄損傷に関する開発パイプラインでは、2023年2月に慶應義塾大学信濃町キャンパス内総合医科学研究棟に「ケイファーマ・慶應 脊髄再生ラボ」を開室し、2021年6月に開始した慶應義塾大学による医師主導臨床研究の解析結果が判明した後、速やかに当社による企業治験を始められるよう当事業年度PCT出願済の移植用神経前駆細胞への新たな分化誘導法に基づく大量培養法の確立やGMP対応試薬への切替、製品規格の元となるデータの取得等、治験薬製造に向けた検討を進めると共に臨床用iPS細胞の製品製造における医薬品受託製造事業会社(CDMO)の選定も並行し、臨床用iPS細胞の選定後、遅滞なく製造に移行できるよう準備を進めております。
亜急性期脊髄損傷以外の開発パイプラインに関しても、慢性期脊髄損傷に関する開発パイプラインにおいて、外部有識者とのアドバイザー契約を2023年6月に締結し、慢性期脳梗塞、慢性期脳出血および慢性期外傷性脳損傷に関する開発パイプラインにおいても独立行政法人国立病院機構大阪医療センターとの共同研究を2023年8月に開始しており、再生医療の実現に向け、研究および開発を進めております。
この結果、当事業年度におきましては、売上高を1,000,000千円(前年同期は-千円)、売上総利益を910,000千円(前年同期は-千円)計上したものの、研究開発費を255,417千円(前年同期は163,971千円)計上した結果、営業利益は366,057千円(前年同期は353,772千円の営業損失)、経常利益は344,184千円(前年同期は359,233千円の経常損失)、当期純利益は260,330千円(前年同期は392,427千円の当期純損失)となりました。
なお、当社は、医薬品等の研究・開発・製造・販売の単一セグメントであるため、セグメント別の記載は省略しております。
当事業年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という)は、営業活動による資金の増加454,425千円、投資活動による資金の減少11,099千円、財務活動による資金の増加1,486,235千円により前事業年度末と比較して、1,929,560千円増加し、3,266,408千円となりました。
当事業年度における各キャッシュ・フローの状況と、それらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当事業年度における営業活動による資金の増加は、454,425千円(前事業年度は363,482千円の減少)となりました。
主な要因は、税引前当期純利益301,076千円、その他の流動負債の増加96,930千円および減損損失43,107千円の非資金費用による資金の増加要因があった為になります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当事業年度における投資活動による資金の減少は、11,099千円(前事業年度は32,737千円千円の減少)となりました。
これは有形固定資産の取得による支出9,803千円、敷金及び保証金の差入による支出1,296千円による資金の減少要因があった為になります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当事業年度における財務活動による資金の増加は、1,486,235千円(前事業年度は1,544,285千円の増加)となりました。
主な要因は、株式の発行による収入1,496,325千円による資金の増加要因があった為になります。
当社は生産活動を行っておりませんので、記載を省略しております。
当社は受注生産を行っておりませんので、記載を省略しております。
販売実績は、次のとおりであります。なお、当社は、医薬品等の研究・開発・製造・販売の単一セグメントであるため、セグメントごとの記載はしておりません。
(注)主な相手先別の販売実績および当該販売実績の総販売実績に対する割合は、次の通りであります。
なお、前事業年度のアルフレッサ ファーマ株式会社に対する販売実績はありません。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末日現在において判断したものであります。
① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。この財務諸表の作成にあたっては、財政状態、経営成績およびキャッシュ・フローの状況に影響を与えるような見積り、予測を必要とされております。経営者は、これらの見積を行うにあたり、過去の実績値や状況を踏まえ合理的と判断される前提に基づき、継続的に見積り、予測を行っております。しかしながら実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
当社の財務諸表を作成するにあたって採用する重要な会計方針につきましては、「第5 経理の状況 1 財務諸表等(1)財務諸表 注記事項 重要な会計方針」に記載しております。
会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定につきましては、「第5 経理の状況 1 財務諸表等(1)財務諸表 注記事項 重要な会計上の見積り」に記載しております。
② 経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
(売上高)
当事業年度の売上高は、1,000,000千円(前年同期は-千円)となりました。これは、開発権・製造販売権許諾契約を締結したことに伴い、契約一時金およびマイルストン収入を計上したことによるものであります。
(売上原価、売上総利益)
当事業年度の売上原価は、90,000千円(前年同期は-千円)となりました。これは、契約一時金およびマイルストン収入獲得に伴う特許権に対する再実施許諾金を計上したことによるものであります。この結果、売上総利益は910,000千円(前年同期は-千円)となりました。
(販売費及び一般管理費、営業利益)
当事業年度の販売費及び一般管理費は、543,942千円(前年同期は353,772千円)となりました。
主な要因は、研究開発強化による研究開発費255,417千円(前年同期は163,971千円)、東京証券取引所グロース市場上場に関連する支払手数料65,361千円(前年同期は41,104千円)および事業開発部門・管理部門増強を目的とした人員増加等による給料及び手当52,487千円(前年同期は23,874千円)の計上によるものであります。この結果、営業利益は、366,057千円(前年同期は353,772千円の営業損失)となりました。
(営業外収益、営業外費用及び経常利益)
当事業年度において、営業外収益は66千円、営業外費用は21,939千円発生しました。
営業外費用発生の主な要因は、公募増資等による株式発行に伴う株式交付費11,849千円、東京証券取引所グロース市場上場に伴う株式公開費用10,000千円が発生したことによるものです。
この結果、経常利益は、344,184千円(前年同期は359,233千円の経常損失)となりました。
(特別損失、当期純利益)
当事業年度において、減損損失による特別損失が43,107千円発生しました。また、法人税、住民税及び事業税を40,746千円計上した結果、当期純利益は260,330千円(前年同期は392,427千円の当期純損失)となりました。
なお、財政状態の分析については、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ① 財政状態の状況」に、キャッシュ・フローの状況については、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ③ キャッシュ・フローの状況」に記載しております。
③ 資本の財源及び資金の流動性についての分析
当社の資金需要の主なものは、研究開発費および事業運営費等であり、研究開発費には、継続的な候補物質の探索や候補物質の製品化に向けた開発費用、研究人員にかかる人件費、研究設備費用、共同研究費用並びに外部委託費用等が含まれます。
当社は、これらの資金需要を手元資金で賄う方針としておりますが、必要に応じて株式市場からの資金獲得や補助金の獲得等を行うことにより、安定的な財源の確保を図ってまいります。
また、手元資金に関しましては、流動性の高い現預金で保有することとし、流動性リスクを管理しております。
④ 経営成績に重要な影響を与える要因について
経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。
当社はiPS細胞を活用したiPS創薬事業および再生医療事業の研究開発を行っており、当事業年度における研究開発費の総額は
なお、研究開発費の主な内容は、研究開発者の人件費、研究に必要な試薬等の購入費用および研究施設の賃借料であります。
各事業に関する研究開発活動は以下のとおりであります。
(a)iPS創薬事業
iPS創薬事業では6つの開発パイプラインの研究を行っており、その内のALSに関する開発パイプラインでは、一刻も早く患者様に治療薬を届けるために、日本における開発権・製造販売契約権許諾契約締結先であるアルフレッサ ファーマ株式会社と共に検証的治験(第Ⅲ相試験)に向けて準備を進めております。
なお、ロピニロール塩酸塩がALSの病態に有効であることをiPS細胞を用いる方法により見出されておりますが、これはiPS細胞創薬によって、既存薬以上の臨床的疾患進行抑制効果をもたらしうる薬剤の同定に世界で初めて成功した事例であり、iPS細胞等幹細胞を用いた研究に関する著明な国際科学雑誌である「Cell Stem Cell 誌(Cell Press)」に、2023年6月2日(日本時間)に掲載されております。
また、難聴に関する開発パイプラインにおいては、学校法人北里研究所との共同研究を2023年6月に開始し、前頭側頭型認知症に関する開発パイプラインにおいては、最終的に絞り込んだ1化合物について必要なデータの取得にも目途がつき、2023年11月2日に特許出願を行う等の成果が出ており、iPS創薬事業のその他の開発パイプラインにおいても、ハンチントン病に関する開発パイプラインで最終的な化合物の絞り込みを完了する等、今後の治験に向けた取り組みを進めております。
(b)再生医療事業
再生医療事業では5つの開発パイプラインの研究を行っておりますが、その内の亜急性期脊髄損傷に関する開発パイプラインでは、2023年2月に慶應義塾大学信濃町キャンパス内総合医科学研究棟に「ケイファーマ・慶應 脊髄再生ラボ」を開室し、2021年6月に開始した慶應義塾大学による医師主導臨床研究の解析結果が判明した後、速やかに当社による企業治験を始められるよう当事業年度PCT出願済の移植用神経前駆細胞への新たな分化誘導法に基づく大量培養法の確立やGMP対応試薬への切替、製品規格の元となるデータの取得等、治験薬製造に向けた検討を進めると共に臨床用iPS細胞の製品製造における医薬品受託製造事業会社(CDMO)の選定も並行し、臨床用iPS細胞の選定後、遅滞なく製造に移行できるよう準備を進めております。
亜急性期脊髄損傷以外の開発パイプラインに関しても、慢性期脊髄損傷に関する開発パイプラインにおいて、外部有識者とのアドバイザー契約を2023年6月に締結し、慢性期脳梗塞、慢性期脳出血および慢性期外傷性脳損傷に関する開発パイプラインにおいても独立行政法人国立病院機構大阪医療センターとの共同研究を2023年8月に開始しており、再生医療の実現に向け、研究および開発を進めております。