文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであります。
企業理念である「QUALITY FOR THE FUTURE 新たな価値へ、新たな未来へ」を実現すべく、先進性を追求し、変革する未来を乗り越え続けるリーディングカンパニーであり続けます。
当社を取り巻く環境は日々変化を続けております。家賃債務保証業界が立脚する賃貸不動産市場の現況を見てみますと、国内総人口は顕著な減少傾向にあるものの、単身世帯数(特に高齢者)や外国人労働者世帯数等の増加、さらに平均賃料の上昇等により、その市場規模は緩やかに拡大していくものと考えられております。
一方で、家賃債務保証業界においては競争が激化する状況が続いており、このような状況を踏まえますと、賃借人・賃貸人・不動産会社による家賃債務保証事業者の選別が今後更に進むことが想定されます。当社においては、こうした経営環境で生き残るべく、住宅確保要配慮者への円滑な保証やデジタル社会への対応といった課題を克服することで、契約件数・単価の増加、審査・債権管理の高度化、業務の効率化等を通じた収益性の向上を図ってまいります。
また、2025年4月4日に成立しました三菱UFJニコス株式会社による公開買付けにより、当社は株式会社三菱UFJフィナンシャル・グループの一員となりました。それによりブランド力を向上させるとともに、リーディングカンパニーとしてのプレゼンスを確固たるものとすることができると考えております。
こうした背景から、当社は2025年5月に新たな長期経営計画(2026年3月期-2030年3月期)を策定・公表いたしました。
その中で、以下を課題として捉え、対応策を定めております。
(長期経営計画概要)
(注)1 PERは東証スタンダード市場その他金融業の2025年3月平均値(16.1倍)を使用
① 市場動向
家賃債務保証業界が立脚する賃貸住宅市場は着実な成長が見込まれるものの、人口減少等の背景もあり、成長率は必ずしも高いとは言えません。また、国内経済の状況は必ずしも悪くありませんが、個人再生・破産や企業倒産件数が増加傾向にあり、国際的な経済摩擦による混乱と相俟って、当社の主力顧客である個人の入居者にとっては逆風の環境であると認識しております。このため、家賃滞納の増加に留意する必要があると考えております。
こうした環境下、当社としては無理な売上増加を求めず、株式会社三菱UFJフィナンシャル・グループの一員であるという圧倒的な信用力を背景に、ダンピング競争とは一線を画して低採算先の取引解消を進めるとともに、AI審査を活用した審査高度化および回収高度化により、信用コスト低減に努め、持続的な企業価値向上を目指すことを基本方針としております。
②収益力の向上
当社では上記背景から以下の戦略を定めており、株式会社三菱UFJフィナンシャル・グループと連携して新商品を開発・投入することで、効率的・効果的に収益力を向上させる方針です。
・地銀戦略:地方銀行が有する強固な営業基盤を活用し、当社の拠点がない地域での効率的なシェア拡大を目指します。このため、株式会社三菱UFJフィナンシャル・グループのグループ企業より親密地方銀行の紹介を受けて、提携先の拡充を図ってまいります。
・高齢者戦略:国内人口が減少する中、数少ない有望な成長市場としての高齢者との取引を拡大すべく、2024年8月から電力使用量データを活用した見守りサービス「Z-Support Premium」の提供を開始しております。
・事業用戦略:潜在的な巨大市場である事業用家賃債務保証について、株式会社三菱UFJフィナンシャル・グループのグループ企業より取引先の紹介を受けて、顧客基盤の拡充を行ってまいります。
・学費保証戦略:社会的な意義も大きい有望市場を先駆者として開拓してまいります。
③ 新たな価値創造のためのDX戦略の推進
当社では、お客さまへの新たな価値提供とともに業務の効率化および生産性向上のためDXを推進しております。
社内向けDXとしては、データやデジタルをフル活用し、審査・回収・オペレーション等社内業務の効率化や生産性の向上を目指してまいります。またデータに基づき経営戦略等を判断し行動に移すデータドリブンに取組んでまいります。
お客さま向けDXとしては、データやテクノロジーを駆使し、不動産業界のニーズに対応するデジタルサービスを提供し、顧客接点を拡大させ競争力を強化してまいります。最終的には生活において付加価値を提供できる「生活のプラットフォーマー」を目指します。
④ 信用コストの低減
当社は、前述の経済環境に鑑み、信用コスト低減のための審査・回収の高度化に取組んでおります。
審査については、AI審査モデルの活用を進めるとともに、株式会社三菱UFJフィナンシャル・グループと連携して審査モデルの高度化を進めてまいります。
回収については、ツール活用による効率化に加え、弁護士活用によって効果的な回収を行いつつ過度な取り立て行為を行わない体制を構築してまいります。
⑤ コーポレートカルチャーの確立
当社が社会に信頼され、お客さまに選ばれる存在であり続けるためには、社員一人ひとりへの企業理念・行動規範の徹底が重要であると考えております。そのため、マネジメントメッセージの発信、教育研修、社内広報媒体等を通じて企業理念・行動規範の浸透を図っております。
⑥ 人材の確保および育成
今後、当社が持続的成長を実現するためには、それに貢献できる人材の確保および育成を図ることが必要不可欠であると考えております。そのため、当社は継続的に採用活動を行うとともに、公正な人事評価、人材育成体系の充実および社内環境整備を進めていく方針であります。
具体的には、持続的な成長と企業価値の向上を図るため、人材の多様性を確保しつつ、性別、国籍、採用の時期等に関わらず、その能力や目標達成度に応じ、公平公正な人事評価を行っております。すでに当社では、中途採用者の管理職登用率は高い水準にありますが、今後は、女性管理職の割合を2025年3月末の11.5%から15%に増加させる目標を設定し、女性社員の活躍を一層推進してまいります。また当社では、外国人技術者を採用する試みをすでに始めており、この試みを通じて人材登用の多様化をさらに進めてまいります。
⑦ コーポレート・ガバナンスの充実
事業継続上、当社を取り巻くステークホルダーの皆さまから信頼を獲得することは特に重要であります。そのため、当社はコーポレート・ガバナンスの充実を企業活動の中核と位置づけております。
当社は、コーポレート・ガバナンスに関する基本的な考え方として、「QUALITY FOR THE FUTURE 新たな価値へ、新たな未来へ」を企業理念とし、豊かな生活の基盤である快適な住まいと安定した暮らしを支える家賃債務保証事業を通じて、社会へ貢献してまいりました。今後も、社会に必要とされ利用者に選ばれる存在であり続けるために、自由で柔軟な発想をもって、新たな価値の提供と未来の創造を実現し、ステークホルダーの皆さまとともに歩んでいくことに挑戦し続けます。
この企業理念を実現するために、以下の行動規範を定めています。
●誠実・信頼
私たちは、社会規範に則り、真心・責任をもって安心・安全を皆さまにお届けできるよう、誠実に行動します。
●品質・価値
私たちは、自由な発想で持続可能な未来標準となる品質、価値の創造を目指し、選ばれ続けるように行動します。
●変化・進化
私たちは、常に一歩先の未来を意識し、変化を恐れず、進化を遂げる好機ととらえ、スピーディーに行動します。
●挑戦・成長
私たちは、これまでの価値観や習慣にとらわれず、未来に向けて挑戦し続けることで成長を遂げ、業界をリードすべく行動します。
●チームワーク
私たちは、社員ひとり一人がお互いを尊重し、より風通しの良い職場を作り、一つのチームとして、さらに高い目標に向かって行動します。
このように、当社社員が行動規範に則った自由闊達な活動を通じて、新たな価値を未来に向けて提供するという当社の企業理念を達成していくためには、様々なステークホルダーの皆さまの立場を尊重し、透明・公正・迅速・果断な意思決定を行うコーポレート・ガバナンスの基本精神を踏まえつつ、持続的な成長と中長期的な企業価値向上のための活動を進めていくことが極めて重要となります。
したがって、当社は、コーポレート・ガバナンスを企業活動の中核と位置づけ、より実効性の高い充実したガバナンス体制を構築し、これを運用していくことを目指してまいります。
本書に記載した将来に関する事項については、本書提出日現在において当社が判断したものであり、実際の結果と異なる可能性があります。
当社は、人類、社会、経済が持続的に発展していくためには、地球環境等に係るグローバルな課題への真剣な取組みが極めて重要であると認識しております。また、そうした取組みの如何が、当社の管理リスクの減少のみならず収益機会にもつながる重要な経営課題であると認識しております。
これまで当社は、家賃債務保証サービスの提供を通じて、賃借人の住まいの確保の円滑化、賃貸人の家賃未収リスクの軽減に取り組んでまいりました。さらに、賃借人事故対応費用保険等の付帯サービスや、電力使用量データの変化や自然災害情報から賃借人およびそのご家族または協定会社等に安否確認等を行う「Z-Support Premium」等の新たなサービス・商品を開発・提供してまいりました。
また、2024年3月期より、専修学校及び学生に向けて、授業料等の分割納付を可能にする保証サービスである「Z-College support(学費保証)」の提供を開始しております。当社は、本サービスの積極拡充を通じて、学生の就学の機会や意欲をサポートするとともに、専修学校の安定経営にも寄与することで、我が国の人材育成に貢献してまいります。
人的資本への投資として、当社では、人材育成の重要性に鑑み、全社的な人事育成計画を定めて計画的な研修受講の仕組みを整えております。マネジメント研修や年次別研修等の階層別研修をはじめとし、部門別に必要な専門知識を学ぶ部門別研修を定めているほか、全社員向けにコンプライアンス研修、経済知力を高めるための研修、デジタルトランスフォーメーション研修(非管理職のみ)、選択式のeラーニングによるスキル研修等を充実させることにより、社員が自らチャレンジし、成長していく体制を整えております。
知的財産への投資については、当社の持続的成長に向けた効率化及び生産性向上への取り組みの一環として自社システムの開発及び機能向上に努めており、特に保証サービスへの申し込みのデジタル化・ペーパーレス化の推進及びAI審査の機能向上に注力しております。当社の提供する申し込みシステムである「Z-WEB2.0」の機能拡充及び協定会社とのシステム連携を積極的に推進することで、デジタル化・ペーパーレス化に寄与してまいります。
また、CSRとして難病支援活動、及び学生向け奨学金などの社会・地域貢献活動にも努めており、2024年度には合計で7,800千円を寄付しています。具体的には以下のとおりであります。
・難病支援(認定NPO法人アンビシャス)
・学生支援(全保連未来創出奨学金)
サステナビリティに関するガバナンス及びリスク管理の体制として、当社では社外役員が55%(11名中6名)、女性役員が18%(11名中2名)を占めており、適切な牽制や多様な観点を確保できる体制となっております。また、サステナビリティに関連するリスクについては適宜リスク管理委員会や経営会議で討議・協議し、取締役会への報告を行うこととしております。
詳細は、
当社が、今後とも上述の企業理念を事業の柱として、社会に必要とされ、またお客さまに選ばれる存在であり続けるためには、自由で柔軟な発想をもつ社員を育成し、その活躍の場を与えることが必要不可欠となります。このような考えの下、当社では、社員の日頃の労に報い、そのモチベーションの向上を図り、併せて、事業拡大に貢献できる人材の確保を進めるために賃金の引き上げをはじめとする処遇の改善に取り組んでいるほか、人的資本の在り方等につき下記の方針に従って、取り組んでおります。
・人材育成
当社では、人材育成の重要性に鑑み、全社的な人事育成計画を定めて計画的な研修受講の仕組みを整えております。マネジメント研修や年次別研修等の階層別研修をはじめとし、部門別に必要な専門知識を学ぶ部門別研修を定めているほか、全社員向けにコンプライアンス研修、経済知力を高めるための研修、デジタルトランスフォーメーション研修(非管理職のみ)、選択式のeラーニングによるスキル研修等を充実させることにより、社員が自らチャレンジし、成長していく体制を整えております。
・社内環境整備
当社では、社員が当社での勤務を通じて公私ともに充実した豊かな人生を手に入れることを可能にするために、主に以下のような取り組みを行っております。
(休暇制度)
連続休暇制度、育児休業制度、介護休業制度
(柔軟な働き方を実現するための制度)
短時間勤務、定年後再雇用制度
(手当)
資格取得奨励制度、慶弔見舞金、帰省手当
(その他)
定期健康診断、総合福祉団体定期保険、福利厚生倶楽部、確定拠出年金型退職金制度、永年勤続表彰制度
当社は、価値観の多様化が進む社会のインフラを支える使命を果たすためには、当社の中核人材についても多様性を確保する必要があるとの考えのもと、性別、国籍、採用の時期等に関わらず、その能力や目標達成度に応じた適正公平な人事評価を行っております。
当社は女性役員比率が18%となっており、女性管理職の割合も11.5%(2025年3月末)から15%(2030年3月末)に上昇増加させる目標を設定しています。中途採用者の管理職登用率も高い水準であり、今後も人材登用の多様性を確保してまいります。外国人管理職の割合については、現状特段の目標を設定していませんが、これは、現時点における当社のマーケット戦略の主軸が国内にあることに加え、既に海外マーケット事情に明るい人材が取締役に登用されていることが理由であります。もっとも、多様性の確保が重要な課題であることに鑑み、当社では、外国人を積極的に採用しており、今後も社内における多様性を継続的に育んでまいります。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。なお、文中における将来に関する事項については、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。
当社の営む家賃債務保証事業は、国内賃貸不動産市場の動向による影響を受けております。このため、国内の人口減少や経済状況の悪化等に伴い、賃貸不動産市場が低迷した場合においては、当社の家賃債務保証事業にも影響を及ぼし、ひいては当社の財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。
一方、近年では晩婚化や少子高齢化に伴う単身世帯や高齢者世帯の増加、民法改正に伴う人的保証から家賃債務保証業者による保証への移り変わりといった環境下にあります。これらの動向は、家賃債務保証のニーズを後押しするものであり、当社の事業にとっては追い風の状況であると認識しており、こうした状況を踏まえれば、市場動向に伴う影響の発生可能性は低く、影響度も小さいものと考えられます。
家賃債務保証業は、法令上の業規制が無く、その点で形式的な参入障壁は低く、よって競合が発生し易い業態と言い得ます。保険会社等の保証実務に親和性のある他業種からの新規参入やクレジットカード会社等の台頭によってシェアを失う可能性もあります。
一方、当社のように、永年家賃債務保証事業を営んできた会社が培った賃貸人及び協定会社とのネットワークや代位弁済発生時の債権回収の実務フローは、新規参入者において一朝一夕に構築できるものではないと考えております。このため、競合による影響の発生可能性は低く、影響度も小さいと考えられます。
当社は、家賃債務保証契約の管理をはじめとして、多くの業務にシステムを活用しており、今後もシステムに対する投資を積極的に行っていく予定であります。当社のシステムについては、安定稼働の維持に努めるべく、バックアッププランを含めた緊急時の体制を整えると共に、システム全般に適切なセキュリティ対策を講じておりますので、システムリスクが顕在化する可能性は低いと考えられます。
しかしながら、これらの施策にもかかわらず、ソフトウェアの不具合や人為的ミスのほか、災害や不正アクセス等の外的要因により、システムの安定稼働の維持が困難となった場合、当社の事業活動に支障が生じることによって、当社の財政状態及び経営成績に多大な影響を与える可能性があります。
当社は、保証委託契約を締結した賃借人の家賃不払い等の債務不履行が発生した際には、賃貸人に対して代位弁済を実施しております。保証委託契約締結前に行う審査においては、自社の審査システムに基づき審査の適正性の確保に努めております。また、代位弁済の実施により当社が取得した賃借人に対する求償債権については、当社の定めるルールに従い債権回収を専門に行う部署が回収を担当しております。
しかしながら、経済状況や雇用環境が著しく悪化し賃借人の支払能力が低下した場合には、代位弁済額の増加、求償債権回収不能等の事象が発生することも相応にあり、当社の財政状態及び経営成績に多大な影響を与える可能性があります。
当社は、代位弁済実施前の潜在的な保証債務について保証履行損失引当金を、代位弁済実施後の賃借人に対する求償債権について貸倒引当金を計上しております。これらは、債権を期間に応じて分類し、過去の一定期間における貸倒実績率により算定した損失見込額に対して計上しております。前述の通り、経済状況や雇用環境が著しく悪化し、代位弁済額や求償債権額が増加した場合には、引当金の追加計上等が発生する可能性も相応にあり、その場合、当社の財政状態及び経営成績に多大な影響を与える可能性があります。
当社は、必要な人材の確保と育成に努めていく方針でありますが、必要な人材の確保が計画どおり進まなかった場合や、現在在籍する人材の社外流出等により、当社の事業拡大が制約を受けた場合、当社の財政状態及び経営成績に相応の影響を与える可能性があります。
当社では採用の強化、処遇の改善(給与改定等による平均年収増加率は、2024年度5%)、公平公正な人事評価、研修制度の充実、育児休業や有給休暇の取得推奨等の働きやすい環境の整備により、必要な人材の確保を図っておりますので、発生可能性は低いと考えられます。
当社は、契約者の個人情報を含む数多くの機密情報を保有しており、万が一、当社の責めに帰すべき事由による情報漏洩が発生した場合、当社には、被漏洩者に対する損害賠償債務が発生するほか、当社の信用に対する重大な懸念が生じ、そのことが当社の財政状態及び経営成績に相応の影響を与える可能性があります。
このようなリスクを踏まえ、当社では、「プライバシーマーク」を取得し、社内規程やマニュアルの整備、役職員への教育、情報管理システムの構築等の体制を整備し、情報セキュリティの強化に取り組んでおり、情報漏洩リスクは低いものと考えらえます。また、万が一、情報漏洩が発生した場合には、直ちに関係者に公表し、被害拡大防止等の対策を講じるとともに、徹底した事実調査と原因究明を実施し、再発防止策を策定することにより、信用回復を図ることができるような対応策を整備しております。
当社は2017年10月に国土交通省によって創設された家賃債務保証業者登録制度(注1)への登録を行っております。万が一、当社が同制度に定める各種の規律に違反した等ことを理由に、同省から、同じく同制度に定める指導や登録取消等の措置を受けた場合には、当社の事業内容、財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。
また、家賃債務保証業については、当該業務それ自体を直接規律する法令(いわゆる業法令)が現状存在しないところではありますが、今後新たな法制度が導入される等することで、当該業務が直接法令上で規律される対象となった場合には、当社の事業内容、財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。
(注)1.家賃債務保証業を営む者の登録に関し必要な事項を定めることにより、その業務の適正な運営を確保し、家賃債務保証の健全な発達を図ることを通じて、もって賃貸住宅の賃借人その他の者の利益の保護を図ることを目的とする制度。
家賃債務保証事業においては、代位弁済した家賃等を賃借人から回収する必要がありますので、構造的にそうした賃借人からの苦情が発生する可能性があります。当社では『債権回収ガイドライン』を定めて、適正な回収業務に努めると共に、そうした業務をモニタリングする仕組みを設けております。
しかしながら、当社の回収業務に対して苦情が発生し、万が一報道やインターネットの掲示板等を通じて風評が拡散されることとなった場合には、当社のレピュテーションに悪影響を及ぼし、収益低下の要因となる等、当社の財政状態及び経営成績に相応の影響を与える可能性があります。
当社は、社内規程や業務マニュアルの整備、事務手続におけるチェックの徹底、各業務のシステム化による正確な事務処理体制の整備等により、オペレーションリスクの撲滅低減に努めております。
しかしながら、いわゆるヒューマンエラー等により適切な事務処理がなされない可能性はあり、発生可能性は低いものの、正常な業務運営に支障を来すことで、当社の財政状態及び経営成績に相応の影響を与える可能性があります。
当社は、協定会社を通じて、賃借人・賃貸人に当社の家賃債務保証サービスを提供しており、協定会社との関係性が重要であります。当社では協定会社との関係性を強化するために、電子申込みや事故対応費用保険等の仕組みを整えて協定会社の利便性・安心感を高めているほか、概算払方式のスキームで家賃滞納時における協定会社側の負担を低減させております。また、継続的な新規協定会社開拓と適時の既存協定会社フォローのために、全国の主要都市中心に本社・営業所等(現在全国19拠点)を配置しております。しかしながら、万が一当社の努力をもってしても協定会社との関係性が維持できない場合や、協定会社が倒産等により業務を停止したことにより申込が減少した場合には、当社の財政状態及び経営成績に相応の影響を与える可能性があります。
当社は、今後実施することが予想される代位弁済に備えるために、十分な資金の流動性を維持する必要があります。このため、当社では収益力の向上に不断に努めるとともに、配当方針については、強固な財務基盤を維持しつつ、中長期的な企業価値向上を実現することによって株主還元の向上を目指すこととしております。
しかしながら、発生可能性は低いものの、急激な経済状況の悪化等により代位弁済の実施件数の急増等が生じた場合には当社の流動性資金が減少し、当社の財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。
当社は全国的に事業を展開しておりますので、万が一大規模な地震・台風等の自然災害が発生した場合の被害は、発生地域における家賃債務保証需要の縮小を惹起するとともに協定会社の営業体制に影響を及ぼし、当社の財政状態及び経営成績に多大な影響を与える可能性があります。
また、感染症に対しては、お客様、取引先及び社員の健康と安全を確保しつつ、サービスの維持を図るため、事前対策、感染後の情報の収集、感染拡大防止のための措置を定め、適切な対策を実施しておりますが、万が一当社の従業員に感染が拡大した場合、健康被害等により業務遂行に支障が生じ、当社の財政状態及び経営成績に多大な影響を与える可能性があります。
当社は、将来の合理的な期間における課税所得の見積りを行い、将来の回収可能性を検討した上で繰延税金資産を計上しております。当社においては、主に保証委託料売上の前受金、保証履行損失引当金及び貸倒引当金等が一時差異等を構成しており、これらは今後も発生し続けることが見込まれております。今後、万が一当社の経営状態の変化により見込んでいた課税所得に達しない場合、税効果計算上の会社分類に影響が出る可能性があるほか、法人税率引き下げ等の税制改正及び会計基準の変更等が生じた場合には、繰延税金資産が減額され、当社の財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。
当社代表取締役会長である迫幸治は、創業時から蓄積された知見を有し、また代表取締役社長執行役員である茨木英彦は大手金融機関で培った知見をもとに、当社の経営方針や事業戦略の決定等において重要な役割を果たしております。当社は、両名に過度に依存しないよう、経営幹部役職員の拡充、育成及び権限委譲による体制の構築等により、経営組織の強化に取り組んでおりますが、十分な体制の構築が整うより以前に、何らかの理由で両名が当社の業務を遂行することが困難になった場合には、当社の財政状態及び経営成績に多大な影響を与える可能性があります。
当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は、次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであります。
当事業年度におけるわが国経済は、雇用・所得環境の改善が進む中、緩やかな回復基調で推移しました。一方、原材料や燃料価格などの物価の高騰や円安の進行に加え、地政学リスクへの懸念などから、不透明な状況が継続しました。
賃貸住宅市場におきましては、2024年4月から2025年3月までに賃貸住宅として新規着工された戸数が前年比4.8%の増加、賃貸住宅に対する新規に投資が予定されている額は前年比13.1%の増加となりました。注1
注1:出典「令和7年3月分 建築着工統計調査報告」国土交通省
このような経済環境を背景に、当社では、「QUALITY FOR THE FUTURE 新たな価値へ、新たな未来へ」という企業理念の下、経済合理性を追求しながら、事業の成長を図っております。
2024年5月に公表した中期経営計画(2024年度―2026年度)において戦略分野と位置付けている事業用家賃債務保証事業では、高単価の保証案件の獲得に注力するとともに、同じく戦略分野である学費保証市場においては、「Z-College support(学費保証)」の全国展開を進めました。さらに、当社が営業拠点を持たない地域における地方銀行の強固な営業基盤を活用するため、各地の地方銀行との提携戦略を推進しました。
また、当社は、同中期経営計画で掲げたDX戦略の一環として、独自開発した電子申込システム「Z-WEB2.0」に画面ガイド機能を導入し、同システムの操作性の向上を実現しました。こうした取組みを通じて「Z-WEB2.0」の導入促進に注力した結果、協定会社の「Z-WEB2.0」導入拠点数は、前年度末比6,816拠点増の12,581拠点となりました。かかる拠点数の拡大に伴い、当事業年度における当社と賃借人との間で締結する賃貸借保証委託契約の電子申込率は37.4%(前年度比7.5ポイントの伸長)となりました。また、電子契約サービス 「Z-SIGN」につきましても、電子契約率は24.1%(前年度比5.9ポイントの伸長)となりました。
債権管理面では引き続き信用コストの削減に取り組んでまいりました。財務安全性を示す主要な指標である早期入金控除後30日期間代位弁済率注2は、AIの活用により審査を高度化したことが奏功し、0.47%(前年度比0.12ポイントの改善)となりました。同様に代位弁済回収率についても、96.0%(前年度比0.4ポイントの改善)となりました。
注2:当社が開発した審査精度を測定する指標。一定期間内に契約した案件について、初回賃料支払日に代位弁済が発生し且つ30日以内に入金の無かった件数を当該期間内の契約件数で除して算出
以上の結果、当事業年度の売上高は25,658百万円(前事業年度比4.7%増)、営業利益は2,548百万円(前事業年度比14.5%増)、経常利益は2,538百万円(前事業年度比16.0%増)、当期純利益は1,621百万円(前事業年度比5.4%増)となり、売上高は2期連続で過去最高を更新しました。なお、当事業年度においては、公開買付関連費用として、特別損失300百万円を計上いたしましたが、当期純利益も過去最高を達成しました。
(資産)
当事業年度末における総資産は22,762百万円となり、前事業年度末に比べ968百万円増加いたしました。求償債権が879百万円、無形リース資産が642百万円それぞれ減少したものの、現金及び預金が2,565百万円、仮払金が201百万円それぞれ増加したことが主な増加要因であります。
(負債)
当事業年度末における負債総額は、15,568百万円となり、前事業年度末に比べ1,465百万円減少いたしました。これは主に、未払法人税等が726百万円減少、リース債務(長期)が417百万円減少、リース債務(短期)が216百万円減少したことによるものであります。
(純資産)
当事業年度末における純資産は、7,193百万円となり、前事業年度末に比べ2,433百万円増加いたしました。これは主に、繰越利益剰余金が964百万円増加、資本金が726百万円増加、資本準備金が726百万円増加したことによるものであります。
当事業年度末における現金及び現金同等物は7,268百万円と前事業年度末に比べ2,065百万円増加となりました。当事業年度末における各キャッシュ・フローの状況とそれらの増減要因は、以下のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当事業年度における営業活動による収入は、3,063百万円(前事業年度は3,324百万円の収入)となりました。主な要因は、税引前当期純利益2,237百万円、減価償却費1,034百万円等の計上によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当事業年度における投資活動による支出は、668百万円(前事業年度は560百万円の支出)となりました。主な要因は、定期預金の預入による支出500百万円、無形固定資産の取得による支出140百万円によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当事業年度における財務活動による支出は、328百万円(前事業年度は1,217百万円の支出)となりました。主な要因は、株式の発行による収入1,453百万円があったものの、配当金の支払額による支出656百万円、リース債務の返済による支出633百万円、長期借入金の返済による支出292百万円によるものであります。
当社は、生産に該当する事項がありませんので、生産実績に関する記載はしておりません。
当社は、受注に該当する事項がありませんので、受注実績に関する記載はしておりません。
当事業年度の販売実績は、次のとおりであります。なお、当社は家賃債務保証事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載を省略しております。
(注) 1.主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合については、総販売実績に対する割合が10%以上の相手先がいないため記載を省略しております。
2.その他収入は、保証事務手数料収入、収納代行手数料収入等であります。
当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成しております。この財務諸表の作成に当たり、決算日における財政状態及び会計期間における経営成績に影響を与える見積りを必要とします。経営者はこれらの見積りについて、過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、この見積りと異なる場合があります。
当社の財務諸表で採用する重要なものは「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項 重要な会計上の見積り」等に記載のとおりであります。
(売上高)
当事業年度の売上高は、25,658百万円(前事業年度比4.7%増)となりました。これは主に契約単価や累積保証契約件数の増加に伴い年間保証料収入が621百万円増加、月額保証料収入が234百万円増加、収納代行手数料が169百万円増加したこと等によるものであります。
(売上原価及び売上総利益)
当事業年度の売上原価は、8,504百万円(前事業年度比18.3%増)となりました。これは主に貸倒引当金繰入額が757百万円増加、保証履行損失引当金繰入額が383百万円増加したこと等によるものであります。
(販売費及び一般管理費及び営業利益)
当事業年度の販売費及び一般管理費は、14,605百万円(前事業年度比3.2%減)となりました。これは主に、DX推進による業務効率化等により、支払手数料が538百万円減少したこと等によるものであります。
この結果、営業利益は、2,548百万円(前事業年度比14.5%増)となりました。
(営業外損益及び経常利益)
当事業年度の営業外収益は、25百万円となりました。また、営業外費用は、借入金額の減少に伴い支払利息が32百万円減少したこと等により、35百万円となりました。この結果、経常利益は、2,538百万円(前事業年度比16.0%増)となりました。
(特別損益、法人税等及び当期純利益)
当事業年度の特別損失は公開買付関連費用が生じたことにより、301百万円となりました。また、法人税、住民税及び事業税と法人税等調整額を合算した法人税等は616百万円となりました。この結果、当期純利益は、1,621百万円(前事業年度比5.4%増)となりました。
当社の運転資金需要のうち主なものは、代位弁済金の支払、販売費及び一般管理費等の営業費用であります。運転資金に必要な資金は自己資金、金融機関からの借入等で資金調達していくことを基本方針としております。なお、これらの資金調達方法の優先順位等については、資金需要の額や使途に合わせて柔軟に検討を行う予定であります。
なお、キャッシュ・フローの分析につきましては、「(1) 経営成績等の状況の概要 ③キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
経営成績に重要な影響を与える要因については、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。
当社は、「QUALITY FOR THE FUTURE 新たな価値へ、新たな未来へ」を経営理念に掲げ、事業を拡大してまいりました。
当社がこの理念の下、長期的な競争力を維持し持続的な成長を図るためには、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載の課題に対して、経営者は常に事業環境の変化に関する情報の入手及び分析を行い、最善の経営方針を立案していくことが必要であると認識しております。
経営戦略の現状と見通しについては、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」をご参照ください。
経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等につきましては、累計契約件数及び協定会社拠点数を重視しております。累計契約件数及び協定会社拠点数の直近3事業年度末時点の推移は以下のとおりであります。
(三菱UFJニコス株式会社及び株式会社三菱UFJ銀行との資本業務提携)
当社は、2025年2月14日開催の取締役会において、三菱UFJニコス株式会社及び株式会社三菱UFJ銀行との間で資本業務提携を行うことを決議し、3社間で資本業務提携契約を締結しております。
当社における家賃債務保証可否の審査及び代位弁済した債権の管理について自社開発のシステムを使用しております。効率化及び生産性向上への取り組みとして開発及び機能向上に努めており、特に当社サービスへの申し込みのデジタル化の推進及び様々な業務プロセスへのAI活用に注力しておりますが、当事業年度において研究開発費の計上はありません。