第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

当社は、リョーサンと菱洋エレクトロの経営統合によって2024年4月1日に設立されました。

当社グループは、「デバイス事業」と「ソリューション事業」を展開するエレクトロニクス商社として、『お客様のニーズにお応えし 社会に必要とされる企業になる』をビジョンに掲げ、当社のお客様のものづくりと事業成長を支援させていただくことを通じて、その先のエンドユーザー様までの課題解決に貢献することを追求してまいります。

当社グループが属するエレクトロニクス業界は、AIやDX(デジタルトランスフォーメーション)に対する注目、自動車の電動化や自動運転の進展に対する需要の高まりなどにより、今後の更なる成長が見込まれています。その一方で、半導体の需給バランスの変動や地政学的リスク、金融市場の動向など、外部環境の変化が及ぼす影響は非常に大きく、また、足元では各国における関税措置の動向等への懸念も高まっており、依然として先行きに不透明感を色濃く残す状況にあります。

このような状況の下、当社グループは、経営統合による両社それぞれの強みの融合により、個社の成長限界を打破し、バリューチェーン全体への価値向上の実現に向けて取り組んでまいりました。しかしながら、統合初年度となる当連結会計年度においては、当初の想定以上に業績が苦戦、その中で、量・質両面でお客様接点が不足しているとの当社固有の課題が浮き彫りとなり、この経営課題に対して試行錯誤を重ねることで、今後の成長に向けた戦略の方向性が明確になりました。

以上を踏まえ、統合2年目となる2025年度以降においては、お客様接点の絶対量の拡大とニーズを把握する仕組みの強化に向けた「生産性の向上」、両社の強みに基づく絞り込まれた取り組みによる「統合シナジーの創出」、競争優位性のあるノウハウの確立・強化による「独自性の創出」を徹底的に推進し、お客様接点の拡大に注力してまいります。これら取り組みを加速させ、具体的成果の実現につなげるべく、早ければ、2026年4月にリョーサンと菱洋エレクトロの事業子会社2社を統合することも視野に入れてまいります。

 

 

 


 

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティに関する基本的な考え方は、下記『サステナビリティ基本方針』および『サステナビリティビジョン』にて示しているとおりであり、地球規模の環境問題への取り組みとして「気候変動対応」、そして持続的な経済成長を図るべく「人的資本対応」に取り組んでまいります。

なお、本項目文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

『サステナビリティ基本方針』

リョーサン菱洋グループは、持続可能な経済成長と地球規模の環境問題をはじめとする、さまざまな社会的課題の解決に取り組みます。社会にとっての安心・最適を創り出す企業を目指し、お客様のみならず各ステークホルダーと、「貢献・協働・賞賛」に基づくコミュニケーションを活発に行い、サプライチェーン全体でサステナブルな未来を築いてまいります。

 

『サステナビリティビジョン』

「全てのステークホルダーへの、継続的な正しい貢献」

 

(1)ガバナンス

当社グループでは、サステナビリティを巡る課題への対応が、リスクの低減のみならず、収益機会にもつながる重要な課題であると認識しており、ガバナンスの強化と当社グループのサステナビリティへの取り組みを確実に推進することを目的として、サステナビリティ委員会を設置しました。

サステナビリティ委員会は、社長執行役員が委員長をつとめ、委員長と副社長執行役員が指名する者を委員として構成し、基本方針や推進活動などについて審議を行います。

サステナビリティ委員会において審議した事項のうち、重要事項については取締役会等の決議を必要とし、またサステナビリティへの取り組みの進捗状況についても、都度必要に応じて取締役会に報告します

 

(2)戦略

当社グループにおける気候変動対応及び人的資本対応については、以下のとおりです。

 

   気候変動対応

気候変動に伴って将来生じる可能性のある当社グループのリスク・機会について、確からしさと影響の大きさ2つの視点から特定するとともに、重要度を評価しました。重要度が「高」もしくは「中~高」のリスク・機会については、下表の<重要なリスク>と<重要な機会>として整理しました。対応策につきましては、事業に及ぼす影響に鑑みて2025年度中に具体的な対応策を立案し、以降順次取り組んでまいります。

また、重要度が高く試算可能なリスクにつきましては、下記<事業インパクト評価>として、2030年(短期)、2050年(中期)、2100年(長期)時点での財務影響を試算しており、1.5℃/2℃、4℃シナリオに対して十分なレジリエンスを有していることを確認しております。

 

<重要なリスク>

主なリスク

事業への影響

重要度評価

発現時期

1.5/2℃シナリオ

4℃シナリオ

政策・法規制

 

炭素税・排出権取引の導入

当社グループが扱う製品の製造コストが増え、調達コストが増加する。

中~高

 

短~中期

環境規制の強化

当社グループが扱う製品の脱炭素やLCA調査等が必要となり、対応の遅れに伴う受注機会の縮小により、売上が減少する。

中~高

 

技術

低炭素技術の進展、EV車の普及

半導体関連の原材料(金属等)の需要が増えることで半導体の調達が困難となり、売上が減少する。

中~高

 

市場

原材料コストの変化

半導体の原材料(金属等)の加工・輸送コストの増加分が価格転嫁され、仕入コストが増加する。

中~高

 

評判

顧客の評判変化

気候関連問題への対応が不足した場合、顧客の信用低下に伴う取引停止や販売機会の縮小化により、売上が減少する。

中~高

 

急性

異常気象・自然災害の頻発化・激甚化

拠点浸水により資産毀損が発生するとともに、営業継続のための代替オフィス賃借料が発生する。

 

中~高

中~長期

顧客及び仕入先の被災に伴う事業停止やサプライチェーン寸断が発生し、製品の販売機会の縮小により、売上が減少する。

 

仕入先の被災により代替品確保の追加コストが発生するとともに、BCP対応のための在庫保管コストが増加する。

 

中~高

慢性

干ばつの増加

水不足に伴う半導体製造の遅延が発生し、製品の販売機会の縮小により、売上が減少する。

 

中~高

 

※★は財務影響を試算したリスク。

※発現時期は2030年(短期)、2050年(中期)、2100年(長期)を想定。

 

<重要な機会>

主な機会

事業への影響

重要度評価

発現

時期

1.5/2℃シナリオ

4℃シナリオ

|

再エネ政策の推進

電力損失低減を実現したエネルギーモジュール等の半導体製品の需要が増加し、半導体の受注機会が増加して、売上が増加する。

 

短~中期

省エネ政策の推進

省エネのための自動化、ロボットの需要が増え、半導体の受注機会が増加し、売上が増加する。また、当社グループが扱う協働ロボットの受注機会が増加し、売上が増加する。

中~高

 

脱炭素化、省エネ化、暑熱対策等に資する製品の需要が増加し、半導体の受注機会が増加して、売上が増加する。

 

GHG排出規制の強化

EVの普及により、EV関連の半導体の受注機会が増加し、売上が増加する。

 

気候変動対策(緩和策)の加速化

気候予測やエネルギー最適化等AI技術の進展に伴い、高性能プロセッサー(NVIDIA製GPU等)やAI演算用半導体の受注機会が増加し、売上が増加する。

 

気象パターンの変化、異常気象・自然災害の頻発化・激甚化

日常生活におけるリモートテクノロジーの進展に伴い、新たなIoT技術を活用したソリューションの受注機会が増加し、売上が増加する。

 

中~高

中~長期

気象・水位などの環境計測センサーやIoT関連商品の需要が増え、半導体・電子部品の受注機会が増加し、売上が増加する。

 

中~高

異常気象・自然災害の頻発化・激甚化

BCP対応としてサプライチェーンの複数ルート化が進むことで競争優位性が向上し、当社グループが扱う製品の受注機会が増加して、売上が増加する。

 

中~高

高寿命の蓄電池、高効率の充電装置・送配電システム等の需要が拡大し、半導体の受注機会が増加して、売上が増加する。

 

中~高

 

※発現時期は2030年(短期)、2050年(中期)、2100年(長期)を想定。

 

<事業インパクト評価>

特定されたリスクのうち、重要度が高く、試算可能なリスク(<重要なリスク>の表中★)について、移行リスクとして炭素税導入による追加コスト、物理的リスクとして洪水・高潮発生時の拠点の浸水による追加コスト・被害額を試算しました。試算に当たっては、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)と国際エネルギー機関(IEA)の情報に基づき、1.5℃/2℃上昇、4℃上昇を想定したシナリオを使用しました。 

 

1)税制度(炭素税等)導入による財務影響(追加コスト)

国際エネルギー機関(IEA)が提供する将来予測データを用いて、国内・海外の事業所のエネルギー消費に伴い排出される温室効果ガス排出量に応じて課税される追加コストを算定しました。

その結果、影響が最大となる1.5℃上昇シナリオにおいても、売上に対する追加コストの割合は最大約0.01%(経常利益比0.4%)であることから、影響は軽微であると判断しました。

 

2)異常気象・自然災害の激甚化等による財務影響(洪水・高潮の拠点浸水対応追加コスト)

気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が提供する将来予測データを用いて、国内事業所が、洪水又は高潮で浸水被害を受けた場合、事業を継続するのに必要な代替オフィスの借り上げ費(追加コスト)を算定しました。

その結果、影響が最大となる4℃上昇シナリオにおいても、売上に対する追加コストの割合は最大約0.07%(経常利益比2.0%)であることから、影響は軽微であると判断しました。

また、当社グループの自社倉庫および契約している外部の委託倉庫の浸水に伴う在庫資産の毀損も発生しないことが分かりました。

 

   人的資本対応

当社グループにおける、人材の多様性確保を含む人材育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針は以下のとおりです。

 

1)人材育成方針

当社グループの経営ビジョンである「お客様のニーズにお応えし、社会に必要とされる企業になる」を追求するために、会社を存続、繁栄に導く人材の育成は重要なテーマと考えております。特に「自ら考え、自ら行動する人材」、「会社を更なる繁栄に導くことができるリーダー」の育成に注力しております。2024年4月の経営統合を機に、経営陣と社員とのコミュニケーションの場を積極的に設け、ビジョン、人材戦略の浸透を進めております。

また、自律的思考と行動をすべてにおいて徹底的に促す制度、仕組みを構築してまいります。難易度の高いテーマへのチャレンジを促すことで失敗成功体験を積み上げた結果、会社の利益、お客様や仲間のために貢献、協働した社員を適正に賞賛(評価)する制度の定着を進めております。

加えて、将来更なる企業価値向上に向けて必要な専門的な知見や技術を有する人材を積極的に採用・登用してまいります。

当方針に基づき、社員の成長と育成のために会社の利益を再投資してまいります。

 

2)社内環境整備方針

当社グループの行動指針である「貢献・協働・賞賛」に基づくコミュニケーションを活発に行うことで、お互いから学びあうことができる企業文化を醸成し、社員一人ひとりが活躍し、成長できる環境づくりを進めてまいります。

また、社員が持っている能力を最大限に発揮できるよう一人ひとりと寄り添い、ライフステージに応じて柔軟な働き方を選択できる環境を整備することで、年齢・性別・国籍に関わらず、誰もが働きやすい環境づくりを推進し、当社グループの持続的な成長につなげることを目指してまいります。

健康経営の取組みに関しては、社員の人間ドック・健康診断の受診率や再検査受診の管理を強化しております。

メンタルヘルスについてもストレスチェックの実施と産業医との面談の場を提供し、ケアを強化してまいります。社員が安心して業務に邁進できる環境づくりを続けてまいります。

 

(3)リスク管理

当社グループは、サステナビリティに関する「マテリアリティ=優先して取り組むべき重要課題」を特定する過程において、当社グループのリスク・機会を抽出し、「経営の重要度・影響度」と「ステークホルダーの重要度・影響度」の2つの視点のマトリクスで、リスク・機会の重要度を評価しております。

 

   気候変動関連の重要検討テーマ

気候変動対応に関しては、詳細な内容まで落とし込んだリスク・機会を抽出し、確からしさと影響の大きさの視点で重要度を評価しております。特定された重要度が「高」もしくは「中~高」のリスク・機会については、上記(2)戦略①気候変動対応の<重要なリスク><重要な機会>に記載したとおりであり、事業に及ぼす影響を鑑みて、2025年度中に具体的な対応策を立案し、以降順次取り組んでまいります。中程度以下のリスク・機会については、今後の情報収集の徹底と、リスクによる財務影響の監視を継続してまいります。

 

   人的資本関連の重要検討テーマ

経営統合を機に、人材活性化を加速する目的で新たな人事制度の検討を進めております。検討過程において、以下に関しましては特に重要なテーマと捉えております。

 

1)女性管理職、女性活躍推進施策の強化

   2)管理職の育成力向上への継続的な取り組み

   3)若手社員のキャリアアップ促進

   4)次世代幹部候補の育成推進

   5)人事情報の体系的管理システム導入と活用

 

(4)指標及び目標

当社グループでは、上記(2)戦略において記載した気候変動対応と人的資本対応に関する指標及び目標を以下のとおり定めております。

 

   気候変動対応の指標及び目標

気候変動対応について、リスク・機会ともに温室効果ガス(GHG)の影響を受けるところが多く、当社グループの気候変動対応の指標を下表に示すGHG分類毎の排出量とし、目標としては「2030年度末までにScope1+2のGHG排出量を2019年度対比46%削減」、そして「2050年度末までにカーボンニュートラルの達成」を目指します。また、Scope3については、サプライチェーン全体でGHG削減に取り組んでまいります。

 

指標

対象範囲

2019年度

(基準年)

(tCO2)

2023年度

(実績年)

(tCO2)

削減率

スコープ1の排出

グループ全社

394

347

▲11.9%

スコープ2(ロケーション基準)の排出

グループ全社

1,671

1,538

▲8.0%

スコープ2(マーケット基準) の排出

グループ全社

1,607

1,430

▲11.0%

スコープ1+2(ロケーション基準) の排出

グループ全社

2,065

1,885

▲8.7%

スコープ1+2(マーケット基準) の排出

グループ全社

2,001

1,777

▲11.2%

スコープ3の排出

※国内事業会社

1,512,029

 

    ※国内事業会社=株式会社スタイルズを除く、株式会社リョーサンと菱洋エレクトロ株式会社

 

   人的資本関連の指標及び目標

当社グループでは、上記(2)戦略において記載した人的資本対応について次の指標を用いております。当該指標に関する目標及び実績は、以下のとおりです。

 

指標

目標(2028年度

実績(当連結会計年度)

管理職に占める女性労働者割合

2029年3月末までに10

6.7

男性労働者の育児休業取得率
(配偶者が出産した男性に対する育休取得した男性割合)

2029年3月末までに100

66.7

労働者の男女賃金の差(男性賃金に対する女性賃金割合)

2029年3月末までに80

69.8

 

※上記3項目の実績は、当社グループの国内子会社の実績を含めて算出しております。

 

3 【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。ただし、当社グループで発生するすべてのリスクを網羅したものではなく、記載された事項以外の予見しがたいリスクも存在します。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末において当社グループが判断したものであります。

 

(1)世界マクロ経済環境の変化によるリスク

当社グループは、国内外の様々なセットメーカーに対し、商品の販売を行っております。米国、欧州、中国、新興国や日本の景気が減速する場合、個人消費や設備投資の低下をもたらし、その結果、当社グループの顧客が販売する製品に対する需要が減少し、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(2)市場リスク

①為替リスク

当社グループは、外貨建て取引を行っており、外国為替相場の変動に関するリスクを有しております。外貨建資産・負債のマッチング等のヘッジ手段を講じておりますが、それにより完全に為替リスクが回避されるものではなく、外国為替相場の変動が当社グループの経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

また、当社グループは海外に現地法人を有しており、外貨建ての財務諸表を作成しております。連結財務諸表の作成にあたって、円に換算する際に為替レートが変動した場合、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

②金利リスク

当社グループは、当連結会計年度末時点において借入金等が383億99百万円あり、金利が上昇する局面では利息負担が増加するリスクを有しており、当社グループの経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

③株価リスク

当社グループは、当連結会計年度末時点において取引先を中心に72億39百万円の市場価格のある株式を保有しており、株価変動のリスクを有しております。当社グループでは、取締役会において保有目的や経済合理性の検証を行い、その保有意義が当社の企業価値向上に十分とはいえない銘柄については、縮減を検討することとしておりますが、株式市場の価格変動は当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(3)在庫リスク

当社グループは、当連結会計年度末時点において522億74百万円の棚卸資産を保有しております。棚卸資産金額を適正に保つために顧客からの受注状況を勘案し、仕入先への発注数の調整等をしておりますが、顧客の所要数量が急激に下落した場合、在庫の廃棄や評価の見直しが必要となり、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(4)与信リスク

当社グループは、国内外の様々なお客様との取引において信用供与を行っており、当連結会計年度末時点において受取手形及び売掛金が944億62百万円あります。お客様の社会的信用及び財務状況等から個別に与信限度額を設定し、その範囲内で取引を実行しており、リスク度合に応じてファクタリング付保などの保全策も実施しておりますが、お客様の財政状態の悪化や経営破綻等が生じた場合、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

 

(5)事業投資リスク

当社グループは、商権拡大等を目指して、ビジネスパートナー企業の株式・持分を取得することがあります。出資に際しては、出資先の財政状態、事業計画の実現性、投資リターン等を慎重に判断し、出資後は、出資先の財政状態、事業計画の進捗を定期的にモニタリングしておりますが、それにより完全に事業投資リスクを回避することは困難であり、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(6)固定資産に関する減損リスク

当社グループは、当連結会計年度末時点において固定資産を272億22百万円保有しており、資産価値の下落に起因する減損リスクを有しており、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(7)仕入先に関するリスク

当社グループは、国内外の複数の仕入先と代理店契約を締結しております。仕入先各社とは良好な取引関係を維持しておりますが、仕入先の事業再編や販売チャネル政策の見直しが当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(8)カントリーリスク

当社グループが進出した国又は地域において、政治・経済・社会の変動や法律・税制等の制度変更、テロ・戦争などの事象による社会的混乱が生じた場合、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(9)自然災害・感染症拡大リスク

当社グループが事業活動を展開する国や地域において、地震、風水害、火災及び噴火等の自然災害または新たな感染症の発生により、業務の停止やサプライチェーンの混乱が生じた場合、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(10)求償リスク

当社グループは、取り扱い商品の欠陥について、当社グループの責任と判明した場合や知的財産権に関連する訴訟に巻き込まれた場合に、契約相手方やその他の第三者から請求等を受け、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(11)情報セキュリティリスク

当社グループでは、お取引先様からお預かりした機密情報や個人情報を保有しており、情報セキュリティに関する規程等を整備し、セキュリティシステムの導入、各種セキュリティ管理策を実施しておりますが、悪意を持った第三者による不正アクセス、コンピューターウイルス感染、当社グループ関係者の不注意又は故意による情報の流出等が発生した場合、発生した損害に対する賠償金の支払いのみならず、レピュテーションリスクを被り、社会的制裁等により当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュフロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお当社は、2024年4月1日に共同株式移転の方法により株式会社リョーサン、菱洋エレクトロ株式会社の共同持株会社として設立されました。当連結会計年度が第1期となるため、前期実績はありません。

 

(1) 財政状態及び経営成績の状況

① 経営成績

当社は、2024年4月1日に共同株式移転の方法により株式会社リョーサン、菱洋エレクトロ株式会社の共同持株会社として設立されました。当連結会計年度が第1期となるため、前期実績はありません。

当連結会計年度(2024年4月1日~2025年3月31日)における世界経済は、米国の金融引き締め継続や中国経済の伸び悩み、地政学リスクの高まりによる供給網の混乱などが重なり、不透明感が強い1年となりました。

国内経済は、緩やかな回復が続いたものの、インフレと円安による輸入コストの上昇が企業収益を圧迫したほか、個人消費にも影響し、金融政策の正常化を模索する動きもみられました。

当社グループが属するエレクトロニクス業界に関しては、生産調整局面や中国市場低迷の影響が長期化している自動車や産業機器向けをはじめ、デバイス分野は全体的に厳しい事業環境となりました。一方、IT分野においては、生成AIの急速な進展に伴うデータ解析・処理に対する注目が一層高まったほか、企業のDX推進は引き続き活発な状況で推移いたしました。

このような状況の下、当連結会計年度における当社グループの売上高は3,598億11百万円、営業利益は85億42百万円、経常利益は71億33百万円となりました。また、特別利益として段階取得に係る差益及び投資有価証券売却益を計上し、親会社株主に帰属する当期純利益は93億87百万円となりました。

 

セグメント別の経営成績は次の通りであります。

 

イ デバイス事業

自動車やデジタル家電向け半導体の販売を中心に、売上高は2,595億73百万円、営業利益は44億80百万円となりました。

 

ロ ソリューション事業

サーバーや産業用PC等のシステム機器、蓄電システムやデバイス製造装置の販売を中心に、売上高は1,002億38百万円、営業利益は36億42百万円となりました。

 

経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等につきましては、「第2 事業の状況」、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」をご参照下さい。

 

 

② 財政状態

イ 資産

総資産は、2,305億2百万円となりました。主な内訳は、受取手形及び売掛金944億62百万円、商品及び製品519億円であります。

 

ロ 負債

負債は、990億52百万円となりました。主な内訳は、買掛金455億8百万円、短期借入金307億14百万円であります。

 

ハ 純資産

純資産は、1,314億50百万円となりました。主な内訳は、資本剰余金1,218億78百万円であります。

 

(2) キャッシュ・フロー

当連結会計年度末における現金及び現金同等物は296億74百万円となりました。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益が130億60百万円あったことに加え、棚卸資産が55億17百万円減少したため、仕入債務が43億65百万円減少したものの、全体で131億80百万円の資金の増加となりました。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動によるキャッシュ・フローは、連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得による支出180億83百万円等により、全体で152億58百万円の資金の減少となりました。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動によるキャッシュ・フローは、短期借入金が176億15百万円減少したこと等により、全体で176億15百万円の資金の減少となりました。

 

当社グループの資本の財源及び資金の流動性については、運転資金需要は主に、商品の仕入費用、販売費及び一般管理費等の営業費用であり、銀行借入及びコマーシャル・ペーパーの発行により調達しております。

 

 

(3) 生産、受注及び販売の実績

① 仕入実績

当連結会計年度における仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 

セグメントの名称

仕入高(百万円)

デバイス事業

229,029

ソリューション事業

89,103

合計

318,133

 

 

② 受注実績

当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 

セグメントの名称

受注高

受注残高

金額(百万円)

金額(百万円)

デバイス事業

239,036

98,894

ソリューション事業

96,608

29,823

合計

335,645

128,718

 

 

③ 販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 

セグメントの名称

販売高(百万円)

デバイス事業

259,573

ソリューション事業

100,238

合計

359,811

 

 

 

(4) 重要な会計方針・会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づいて作成されております。その作成には経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りを必要とします。経営者は、これらの見積りについて、過去の実績等を勘案し、合理的に判断しておりますが、実際の結果は見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。

当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、第5「経理の状況」の連結財務諸表の「連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」にて記載しておりますが、特に次の重要な会計方針が連結財務諸表作成における重要な見積りの判断に大きな影響を及ぼすと考えております。

 

① 貸倒引当金の計上基準

当社グループは、売上債権等の貸倒損失に備えて回収不能となる見積額を貸倒引当金として計上しております。将来、顧客の財務状況等が悪化し支払能力が低下した場合には、引当金の追加計上又は貸倒損失が発生する可能性があります。

 

② 棚卸資産の評価基準

当社グループが販売する棚卸資産は、市場の需給の影響を受け、市場価格が低下する場合があるため、評価基準として、原価法(収益性の低下に基づく簿価切下げの方法)を採用しております。

販売可能性については、市場動向、顧客への直近の販売実績や受注動向、今後の生産計画や受注見込み等の需要予測を勘案し、見積っております。

当該見積りは不確実性を伴うため、将来の市場環境の変化によって顧客の需要数量が急激に下落した場合や滞留在庫が増えた場合、追加の評価減が必要となる可能性があります。

 

③ 有価証券の減損処理

当社グループは、金融機関や販売又は仕入に係る取引会社の株式を保有しております。市場価格のある上場株式については、期末における株価が取得原価に比べ30%以上下落した場合を著しく下落したものとし、回復可能性を総合的に判断の上、回復する見込みがあると合理的な根拠をもって予測できる場合を除き、株価と取得原価の差額に相当する額について減損処理することとしております。また、市場価格のない非上場株式は実質価額が著しく下落し、かつ、その下落が一時的でないと判断した場合には、その下落した額について減損処理を行うこととしております。将来、株式市場の悪化または投資先の業績不振により多額の有価証券評価損を計上する可能性があります。

 

④ 繰延税金資産の回収可能性の評価

当社グループは、繰延税金資産の回収可能性を評価するに際して将来の課税所得を合理的に見積っております。繰延税金資産の回収可能性は将来の課税所得の見積りに依存するので、その見積り額が減少した場合には繰延税金資産が減額され税金費用が計上される可能性があります。

 

⑤ 固定資産(のれんを含む)の減損処理

当社グループは、固定資産のうち減損の兆候がある資産又は資産グループについて、当該資産又は資産グループから得られる割引前キャッシュ・フローを見積り、その総額が帳簿価額を下回る場合には、帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上しております。減損の兆候の把握、減損損失の認識及び測定に当たっては、慎重に検討を行っておりますが、事業計画や経営環境等の前提条件の変化により、追加の減損処理又は新たな減損処理が必要となる可能性があります。

 

 

5 【重要な契約等】

2025年3月31日現在、次の主要各社と販売特約店契約、販売代理店契約等に基づいて取引をいたしております。

 

契約会社名

提携先

取扱商品

契約の種類

株式会社リョーサン

ルネサスエレクトロニクス株式会社

マイクロコンピューター、

システムLSI、

個別半導体 等

特約店契約

ウィンボンド・エレクトロニクス株式会社

DRAM、

フラッシュメモリ等

特約店契約

アルプスアルパイン株式会社

スイッチ、ボリューム、センサー等

特約店契約

日本電気株式会社

光デバイス、サーバー等

特約店契約

菱洋エレクトロ株式会社

エプソン販売株式会社

パソコン、プリンター、プロジェクター 等

代理店契約

三菱電機株式会社

パワーデバイス、光デバイス、イメージセンサー 等

特約店契約

インテル株式会社

プロセッサー、チップセット 等

代理店契約

日本ヒューレット・パッカード株式会社

サーバー、ストレージ、ネットワーク 等

販売特約店契約

京セラドキュメントソリューションズジャパン株式会社

プリンター、複合機 等

取引基本契約

日本マイクロソフト株式会社

ソフトウェア 等

取引基本契約

Rochester Electronics, LLC

半導体全般

販売代理店契約

Semtech (International) AG

システムLSI、光デバイス 等

販売代理店契約

㈱日本HP

ソフトウェア

販売特約店契約

NVIDIA Singapore Pte Ltd.

グラフィックス製品 等

代理店契約

Realtek Semiconductor Corporation

マイクロコンピューター、システムLSI 等

代理店契約

 

 

6 【研究開発活動】

当社グループでは独自性創出を目指す施策の一環として、技術リソースの強化と共に研究開発投資についても積極的に取り組んでおります。

当社連結子会社である株式会社リョーサンでは、お客様の様々なニーズを起点に、お客様に役立つ情報発信を継続して実施しております。様々なニーズに対応するための協業パートナー様も前年度比5倍に増加しました。

協業パートナー様との研究結果をお客様向けのサービスサイトやウェビナを通じて、お客様へのお役立ち情報として発信することでサービスサイトへの訪問者数やウェビナの視聴者数も大幅に増加しております。

引き続き、様々な研究成果がお客様のお困りごと解決に貢献できるよう取り組んでまいります。

また、当社連結子会社である菱洋エレクトロ株式会社では、研究開発活動においては、顧客の潜在ニーズの創出から、ニーズ顕在化を目的としたフィジビリティスタディやPoC(Proof of Concept:概念実装)や付加価値創出の源泉となる要素技術の開発を視野に展開しております。

今期注力している研究はデジタルツイン、ROS技術に取り組んでおり、AI×ロボティクス技術をもとに製造業を中心としたDX活動への展開を進めております。

その結果、当連結会計年度の研究開発費は156百万円であり、そのうちデバイス事業で24百万円、ソリューション事業で131百万円であります。