第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中における将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)経営方針

今後もIoTの導入は加速し、インターネットに接続されるデバイス数は飛躍的に増加すると予想されます。それに伴いIoTのテクノロジーはあらゆる会社にとって重要性が高まることが推察されます。そのような環境の中、当社グループはIoTの導入におけるハードルを下げ、多様な顧客が利用可能な汎用性の高いプラットフォームを提供することで、ミッションとして掲げる「テクノロジーの民主化」に向けて取組んでまいります。当社グループは、「世界中のヒトとモノをつなげ共鳴する社会へ」のビジョンを実現するために、プロダクトポートフォリオの拡充によってMVNO(仮想移動体通信事業者)としてグローバルでNo.1のIoT プラットフォームを目指します。

 

(2)経営戦略等

当社グループは、上記の経営方針の下、さらなる成長の実現に向けて、顧客のフィードバックに基づきIoTプラットフォームに継続的機能強化を行い、リカーリング収益の持続的な成長を実現します。さらに、グローバル展開に向けた販売体制の強化、大規模案件の安定的な獲得、戦略的アライアンスの推進を基本的な戦略としております。

 

(a)リカーリング収益の持続的な成長

当社グループは、IoTサービスを始める顧客企業に向けて包括的なサービスを提供しております。具体的には、IoTデバイスやIoT SIM、IoTに必要な通信回線、IoTサービスに求められるデータ保存や可視化アプリケーション、ネットワークサービス等をプラットフォームサービスとして提供しております。当社プラットフォームでは、Web上で提供するIoTストアから、IoT SIMやデバイスを1個単位で購入し、すぐにサービス利用を開始することができるため、顧客企業が自らサービス利用を開始することができるセルフサービスモデル型で事業を展開しております。Web広告やイベントを通じて当社プラットフォームの認知度を上げるとともに、IoTの導入ハードルを下げることで、幅広いセルフサービスアカウント(注1)の獲得を目指しており、セルフサービスアカウント数の増加がひとつの成長ドライバーとなります。

上記のセルフサービスアカウント数の増加に加えて、メジャーアカウント(注2)への転換も当社グループの成長ドライバーになると考えております。当社グループにおいては、顧客によるIoTの導入規模や成長スピード等のポテンシャルを考慮の上でサービス導入や将来の取引拡大にかかるサポートを要すると判断した場合には、IoTに精通したアカウントマネージャーが対応することとしており、さらに、顧客ニーズに応じてスムーズなサービス導入及び立ち上げを促進するプロフェッショナルサービスを提供しております。当社プラットフォームを利用するセルフサービスアカウントが成長することで、契約回線数並びにデータ通信量が拡大するケースが多く、当社プラットフォームの利用料が増加し、メジャーアカウントへ成長する事例も増えております。結果として、第12期連結会計年度におけるリカーリング収益のNRR(注3)は117%の伸びとなっております。

また、これらのメジャーアカウントの成長による成功事例が、当社プラットフォームのサービスの評価や認知向上に繋がり拡散されることによるネットワーク効果から、更なるセルフサービスアカウントの獲得に結び付くという好循環を生み出しているものと認識しております。さらに、当該ネットワーク効果は、IoTに精通しているアカウントマネージャーが比較的大規模にIoT事業を始める顧客に直接アプローチすることで、新規のメジャーアカウントの獲得にも寄与しており、2025年3月末で課金アカウントは8千8百以上と継続的に増加しております。

なお、IoT領域における特性に加え上記のアカウントマネージャーのフォローにより、2025年3月末の主要顧客の年間解約率は0.4%(注4)に留まっております。

当社プラットフォームは、5G/6G、衛星通信、生成AI、などのテクノロジーの進化、異なる業種での顧客利用にあわせ、今後も継続して新規機能を追加していく予定であり、リカーリング収益の持続的な成長が見込まれます。

(注1)セルフサービスアカウントとは、当社のアカウントマネージャーが担当していない比較的小規模なアカウントをいいます。

(注2)メジャーアカウントとは、規模や将来性等を踏まえ当社のアカウントマネージャーが担当しているアカウントをいいます。

(注3)Net Retention Rate の略称。既存顧客のリカーリング収益の継続率を表し、以下の式で算出しております。NRR=(前期以前に獲得した顧客の当期リカーリング収益)÷(当該顧客の前期リカーリング収益)。

(注4)2025年3月31日時点。年間解約率 = (12か月間リカーリング収益の発生していないアカウント数) ÷ (年間1,000千円以上のリカーリング収益が発生しており、かつ、12か月間以上リカーリング収益の発生していない期間が存在しないアカウント数)

 

(b) グローバル展開に向けた販売体制の強化

当社プラットフォームは、グローバルに提供できるBtoBプロダクトであり、日米欧の世界三拠点で販売カバレッジに対応した体制を構築しております。実際、世界標準の通信規格とメガクラウドに準拠する当社グループのサービスは、米国や欧州を含め海外で既にプロダクトマーケットフィットを確認しております。海外拠点においては、営業人員拡充による販売体制強化を継続しており、顧客獲得においては米国拠点、欧州拠点ごとにその地域の顧客や市場に最適化したアプローチをとっております。例えば、米国拠点においてはより中堅・中小企業やスタートアップ企業などを対象としてセルフサービスアカウントの獲得に注力するとともに、メジャーアカウントへ成長するサポートに注力しております。一方で、欧州拠点においては新規のメジャーアカウントとなりうる有望な見込み顧客への直接アプローチにより顧客開拓に注力しております。今後も、米国拠点と欧州拠点のそれぞれの販売体制構築に向けたリソース拡充に努めてまいります。

 

(c) 大規模案件の安定的な獲得

当社プラットフォームは、主力サービスであるIoT通信の「SORACOM Air」をはじめとした多くのサービスを提供しております。様々な業種の顧客においてIoTの導入が進むにつれて、多様なニーズ、事業機会が生まれると想定されます。今後のさらなる成長に向けて、顧客のフィードバックに基づくサービス開発を通じてIoTプラットフォームサービスを継続的に拡充させるほか、各産業で必要とされるサービスを顧客の業務の流れやビジネス展開に沿った形で提供する取組みにより、また、クラウドカメラやIoTストア等のデバイス販売分野においても一時的な売上だけではなく、同様に顧客のニーズやビジネス展開に沿った提案をすることで、通信サービスの継続利用につなげ、事業の方向性を拡大し、収益機会を最大化してまいります。

このように、当社グループは、IoTの導入を進める多くの業界へ水平に展開してきましたが、いくつかの業界においては、その業界に特化したIoTデバイスやIoT関連サービスの開発を共に行うことで、深い業界知識と様々なニーズに対応できる技術を蓄積しております。今後は、その業界特有のIoTに関する課題を解決するサービスを開発・提供するといった垂直的な展開を進めていくことによって、大規模案件の安定的な獲得につなげ、さらなる収益の向上に向けて取り組んでまいります。

 

(d) 戦略的アライアンスの強化

当社グループは主要株主であるKDDI株式会社と戦略的アライアンスを組み、コネクテッドカー分野に取り組んでおります。グローバルなコネクテッドカーは、海外の地域キャリアと連携する必要があり、当社プラットフォームの海外通信キャリア連携の強みの活きる分野と考えております。また、2024年2月にスズキ株式会社ともモビリティサービス分野のIoT先端技術の活用に向けた合意書を締結しております。

一方で、通信キャリアとの連携において、KDDI株式会社へのIoT通信管理プラットフォームの開発・導入支援等も既に開始しております。今後、当社グループのテクノロジーを海外の他通信会社へ提供し、売上成長、及びグローバルスタンダードの確立も期待できるものと考えております。

さらに、丸紅グループとは、新会社の設立(予定)をはじめ、複数の分野において戦略的協業を推進しております。あらゆる産業のデジタル変革を加速し、持続可能でスマートな社会基盤の実現を目指しています。

 

(3)経営環境

  ①市場環境

 当社グループが展開するIoTプラットフォーム事業は、IoTプラットフォーム市場やIoT関連のサービス市場のうち、コネクティビティ、サービス、ソフトウェア及びハードウェアを対象市場として想定しております。このIoT市場は、技術革新の波に乗り、今後も年間二桁成長率を維持することが予想されており、進化する生成AIや5Gなどのテクノロジーは、コネクテッドカーやスマートシティといった多岐にわたる業界においてIoTの展開を促進することが期待されています。また、IoTデータの蓄積が進むにつれて、その価値はさらに増大すると予測されており、2026年時点で全世界でそれぞれコネクティビティ市場は約787億ドル(2022年時点では約589億ドル)、サービス市場は約4,275億ドル、ソフトウェア市場は約2,168億ドル及びハードウェア市場は約3,714億ドルと、合計で約1兆946億ドルの市場規模を見込んでおります(注)当社グループが注力するコネクティビティ市場はもちろんのこと、ソフトウェアやサービスを含む広範な領域で成長機会があります。

(注)IoTプラットフォーム市場やIoT関連のサービス市場規模は、IoT市場のうち、IoT Platform、Cellular及びServicesの市場規模の合計(米国ドル)により推定しております。(出典:IDC“IDC’s Worldwide Internet of Things Spending Guide”(2023年5月))

 

   ② 競争優位性について

 当社グループは、IoTに必要な通信回線やデバイスを提供するとともに、インターフェースやアプリケーション、ネットワークサービス等、IoTを導入・運用する際に必要となる多種多様な機能をワンストップで利用可能なプラットフォームを提供しております。国内外の移動通信体事業者(MNO)より通信回線(携帯電話網)を調達し、サービスを提供するとともに、必要に応じて経営資源とノウハウを補完し合えるエコシステムパートナーとの協業を図り、常に変化する市場環境と多様化する顧客ニーズにスピード感をもって的確に対処することで、競合サービスとは異なる優位性を構築しております。

 

   ③ 事業・サービスの概要について

 当社の主要なサービスの内容につきましては、「第1 企業の概況 3 事業の内容(2)事業・サービスの概要」に記載しております。

 

(4)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 当社プラットフォームは従量課金モデルで提供しており、リカーリング収益の拡大を経営上の目標としております。その達成状況を判断する上で、契約回線数や課金アカウント数を重要な指標としております。リカーリング収益は経常的に得られる利用料の合計額であり、経営上の目標の達成状況を把握するものです。リカーリング収益を拡大させるためには特に課金アカウント数(注1)とリカーリング収益のARPA(注2)の拡大が重要と考えております。

(注1)課金アカウント数は、1ヶ月の間にリカーリング収益が発生した口座数をいいます。同一の顧客企業等が部署や業務別に複数の口座を有する場合が含まれております。

(注2)Average Revenue Per Accountの略称。1アカウントあたりの平均売上金額を示す指標を意味します。

 

(5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の対処すべき課題

IoTプラットフォーム市場やIoT関連のサービス市場は、事業環境の変化が早く、顧客企業のニーズが絶えず変化しております。当社グループは直面する課題に対処するだけではなく、今後さらなる成長を実現するために、以下の取組みを行ってまいります。

 

① 優秀な人材の採用と育成

当社グループの持続的な成長のためには、多岐にわたる経歴を持つ優秀な人材を採用し、営業体制や開発体制、管理体制等を整備していくことが重要であると捉えております。特に、イノベーションによりIoTの力で顧客の課題解決並びに事業成長を支援できるIoTプラットフォームを開発・提供していくことが重要と考えており、顧客ニーズを適切に把握できる営業や開発の人員の強化が求められております。当社グループのミッションや事業内容に共感し、高い意欲を持った優秀な人材を採用するために、積極的な採用活動を推進するとともに、高い意欲を持って働ける環境や仕組みの構築に取組んでまいります。

 

 

② 技術力の強化と追加サービスの展開

IoTプラットフォームに係る独創的な技術力は当社グループの競争力の源泉であり、事業の成長を支える基盤でもあることから、継続的な改善、強化が重要であると考えております。優秀な技術者の採用や先端技術の把握及び当社サービスへの反映を通じて、技術力の向上に取組んでまいります。

またIoTプラットフォームとしての価値向上のために、自社サービスの追加開発や、当社プラットフォームにおいて他社のアプリケーションの連携を容易にする仕組みを継続的に開発し続けてまいります。

さらに、成功事例として蓄積されたノウハウを横展開し、新規顧客の獲得を進めてまいります。

 

③ 海外市場における事業成長

当社グループは、2016年11月の北米におけるサービス開始、2017年2月の欧州におけるサービス開始を起点に、海外市場への展開を開始いたしました。世界的なIoT導入の加速、インターネットに接続されるデバイス数の飛躍的な増加を背景に、1回線から手軽にIoTを始めることを可能にする当社のビジネスモデルは海外市場においても事業機会を形成することができるものと考えており、当社グループは、投資規律を維持しつつ、今後も戦略的に海外市場での事業成長を図ってまいります。
 一方で、当社グループの海外事業は人材の採用・育成やマーケティング活動に対する投資段階にあり、中期的には売上高拡大を重視した海外事業のさらなる拡大に向けて、以下2点の取組みを重点的に行ってまいります。
 a. 営業体制の強化
 当社グループの海外事業の成長を加速させる上で、海外拠点における営業体制の拡充は必要不可欠であると考えております。当社グループは、継続的な採用の強化に向けて、ミッションや事業内容に共感し、高い意欲を持った優秀な人材の確保や、教育研修制度の拡充を行うことで、より強固な営業体制の構築に努めてまいります。

なお、米国及び欧州における従業員数の推移は以下のとおりであり、ここ数年で増加傾向にあります。

2020年3月末

2021年3月末

2022年3月末

2023年3月末

2024年3月末

2025年3月末

16名

18名

42名

51名

49名

55名

 

 


  b. 顧客獲得・マーケティング強化にかかる対応

グローバルでの認知度も高まっており、世界的な調査会社であるKaleido Intelligenceにより、ソラコムは3年連続でCMP(Connectivity Management Platform)のChampionに選出されました。また、AI of Thingsの分野においても、世界的な調査会社であるFrost & SullivanよりTechnology Innovation Leadership Award 2025を受賞しました。海外顧客基盤の拡大のためには、さらなる知名度の向上が不可欠と考えております。当社グループは、今後もオンライン、オフライン双方でのイベント開催等を中心とした情報発信を通じて、知名度向上に努めてまいります。

 

④ 戦略的アライアンスパートナーとの事業連携

当社は、2021年6月にセコム株式会社、ソースネクスト株式会社、ソニーグループ株式会社、日本瓦斯株式会社(ニチガス)、株式会社日立製作所及びWorld Innovation Lab(WiL)の6社と資本提携を含むパートナーシップを締結しております。6社とのグローバルビジネス協業を通じて、当社プラットフォームの国内外における利用実績を拡大し、顧客フィードバックに基づいてサービスを拡充していくことを目的としております。

また、今後は事業ポートフォリオの拡大及び既存事業とのシナジー創出等による事業成長を目的とし、IoTに関連するデバイスやアプリケーション領域にて事業展開する企業に対する当社グループからの出資を行う方針であります。その一環として、2022年5月には、ビジネス分野でのカメラ活用を推進するためIoTスマートホーム製品を開発・製造販売するアトムテック株式会社と資本業務提携を開始しております。また、2024年2月にスズキ株式会社とモビリティサービス分野におけるIoT先進技術の活用に向けた合意書を締結しております。

当社グループは、必要に応じて経営資源とノウハウを補完し合えるアライアンスパートナーとの協業を図り、常に変化する市場環境と多様化する顧客ニーズにスピード感をもって的確に対処しながら、企業価値のさらなる向上に向けて事業展開を進めてまいります。

 

通信ネットワークの増強

多様な顧客が手軽に利用できるIoTプラットフォームを構築するためには、通信ネットワークの運用効率化の推進が必要となります。当社グループは、特に海外における複数地域キャリア等からの回線調達の拡充を重点的に行うことで、今後も通信ネットワークの増強に努めてまいります。

 

自社デバイス製品の開発強化

当社グループは、IoT領域における技術革新に迅速に対応し、事業競争力の向上を図るため、今後新たな人員確保、研究開発の拡充を通じて、セルラー対応のAIカメラ、IoTセンサーといった自社デバイス製品の開発を強化していく方針であります。

 

出資による資本提携の実施

当社グループは、IoTに関連するデバイスやアプリケーション領域にて事業展開する企業等への出資による資本提携を通じて、ポートフォリオの拡大及び既存事業とのシナジー創出等による事業成長を検討してまいります。

この戦略の一環として、2024年10月には、IoTプラットフォーム開発・提供を手掛ける株式会社キャリオットを連結子会社化しました。これにより、当社のIoTソリューション提供能力が強化され、顧客への付加価値提供がさらに向上しました。さらに、2025年8月には、丸紅I-DIGIOホールディングス株式会社の子会社を連結子会社化する予定です。

 

 

⑧ 財務上の課題

当社グループの当連結会計年度末におけるリース債務を含む有利子負債の残高は950,167千円、現金及び預金の残高は8,917,773千円となっており、当社グループの事業を推進していくうえで十分な流動性を確保しており、現時点において優先的に対処すべき財務上の課題はございません。しかしながら、今後事業拡大のための優秀な人材の採用や広告宣伝・販売促進等のマーケティング投資、IoTプラットフォーム「SORACOM」の拡充のための開発投資を進めていった際に、意図した投資成果が得られない場合には、流動性が低下する可能性があります。

当社グループは、事業規模の拡大状況から投資タイミングを見極め、投資成果を最大限に得られるようなリスク対策や施策を行いながら、投資を進めてまいります。

 

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) ガバナンス及びリスク管理

 当社では、リスクマネジメント・コンプライアンス委員会が四半期ごとに会議を開催し、従業員からの広範なリスク提案を募り、それに対処するための取組みとして、優先度の評価、適切な対策の立案・実施を行っています。リスクに対するアプローチは、毎年一度、全従業員と共有され、透明性のある情報共有が行われています。

 特に、電気通信サービスを安全に安定して提供していく企業として、顧客情報や会社の機密情報を厳密に取り扱うとともに、情報漏洩リスクなどに対して、常に適切な防御措置を講じることにより、顧客及び関係者の信頼を得るよう努めています。

 当社グループでは、従業員からの提案や洞察を積極的に受け入れ、情報セキュリティや環境へのリスク・影響を最小限に抑えるためのイニシアチブを推進しています。私たちは持続可能な未来を築くために、社会的責任や環境保護に取組みながら、ビジネス活動を展開しています。

 

(2) 戦略

 当社グループのサステナビリティ戦略は、リーダーシップ・ステートメントを基に醸成されるものであり、従業員一人ひとりがその重要性を理解し、行動に移しています。

①情報セキュリティ

 ISMS(Information Security Management System)認証(ISO/IEC 27001:2013)を2017年に取得しており、定期的に更新審査を受けております。また、クラウドサービスのセキュリティに関する保証報告書である「SOC2 Type1」報告書を取得しています。社内組織としては、情報セキュリティ委員会及び情報セキュリティ運用委員会を設置し、年間を通じて情報セキュリティの管理運用を行っています。

 最近では、フィッシング対策の実施を強化する取組みを行うなど、常にリスクの変化に応じた対応を行うとともに、社内に向けた情報発信についても行っています。

②環境

 カーボンニュートラルの観点からは、クウォーターサイズSIMを海外に続き日本でも導入し、環境に配慮したサプライチェーンの構築に貢献する体制が整いました。

 さらに最近では、iSIM(Integrated SIM)という、従来のセルラー通信において独立したコンポーネントとして存在していた通信モジュールとSIMやeSIMの機能を、1枚のチップ(SoC:System-on-Chip)に集約する技術規格に関する実証実験を行い、商用提供を開始しました。物理的なSIMやeSIMが不要になることで、基板スペースの削減や回路の簡素化によるモジュールの小型・軽量化、省電力化、処理能力向上、コスト削減、商流の簡素化などが見込まれ、従来のSIMやeSIMが抱えていた多くの課題が解決されると期待されています。

 私たちは、これらの取組みをさらに拡大していくために、他の業界やパートナーとの連携を強化し、より多くの企業や消費者に持続可能なテクノロジーを提供していき、それを重要な成長機会として捉えています。また、環境負荷の低減、カーボンニュートラルの課題や労働力不足にも積極的に取組み、地球環境の保護と省人化や自動化の推進などを通じて、社会の持続的な発展に貢献していくことを目指しています。

 

(3)人的資本に関する戦略

 社員がお互いを信頼し、最良のアイディアを出しあって、よりよい決定ができるチームを目指しています。入社年次や役職、年齢に関係なくフラットに議論し、居住国やワークスタイルの違いを意識せずにコラボレーションができるための仕組みとして、以下を整備しています。

①リモートワーク

 当社グループでは、リモートワークが主軸となり、従業員が最も生産性の高い場所で働くことができます。

②フレックス制

 ライフスタイルに合わせて、働く時間を柔軟に調整することができます。

③人事評価

 従業員の評価は、マネージャーからの評価だけでなく、本人の自己評価や協力的なチームメンバーからのフィードバックを総合的に行います。リーダーシップ・ステートメントを指針に、日々の行動を向上させ、さらなる成長の機会を創出しています。

④福利厚生

 当社では、産前産後休暇や育児休暇などの制度を整備し、介護休暇や子の看護休暇もサポートしています。従業員一人ひとりが働きやすく、スキル向上ができるような環境整備に力を入れています。さらに、ベビーシッター割引券の提供や資格取得補助、英語スクールの受講補助など、企業全体の競争力向上に貢献する制度も整備しています。最近では、従業員のAI活用を推進するため、全従業員に対してChatGPT Plusの利用料金を全額補助するChatGPT支援制度を導入したのに続き、他のGenerative AIの利用料金にも適用拡大するなど、積極的な取組みを行っています。

 

(4) 指標及び目標

 当社はサステナビリティに関する課題に対し、上記のようなガバナンス及びリスク管理、戦略をとっておりますが、現時点においては長期的な視点で評価・管理する指標及び目標の設定は行っておりません。また、人的資本に関しましては、多様性の尊重や柔軟な働き方の重要性について十分に認識しておりますが、これらを目標として定量的に管理するにあたり、どのような指標が適切であるかについては、今後の事業拡大方針や成長戦略と整合する形で検討を進めている段階です。

 今後、サステナビリティ課題への対応を一層強化する中で、必要に応じて適切な指標および目標の設定を行ってまいります。

 

 

3 【事業等のリスク】

 本書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が提出会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

当社の事業運営及び展開等について、リスク要因として考えられる主な事項を以下に記載しております。中には当社として必ずしも重要なリスクとは考えていない事項も含まれておりますが、投資判断上、もしくは当社の事業活動を十分に理解する上で重要と考えられる事項については、投資家に対する積極的な情報開示の観点からリスク要因として挙げております。

当社はこれらのリスクの発生の可能性を十分に認識した上で、発生の回避及び発生した場合の適切な対応に努める方針ですが、当社株式に関する投資判断は、本項及び本項以外の記載も併せて、慎重に判断した上で行われる必要があると考えます。また、これらは投資判断のためのリスクを全て網羅したものではなく、さらにこれら以外にも様々なリスクを伴っていることにご留意頂く必要があると考えます。なお、文中の将来に関する記載は、本書提出日現在において判断したものであります。

 

(1)事業展開等について

① 特定の取引先に対する売上比率について(顕在化の可能性:小、影響度:中、顕在化の時期:未定)

第12期連結会計年度における当社グループの連結売上高に占める株式会社エナジー宇宙(日本瓦斯株式会社の完全子会社)に対する売上高の割合は10.7%であります。同社を通じて、通信サービスやデバイスがエネルギー業界に提供されていることから、今後も売上が高い水準となる見込みです。また、主要株主であるKDDI株式会社に対する売上高の割合は10.6%となりました。業務提携契約に基づく協業の一環として、技術開発支援等の業務を受託しており、第12期連結会計年度において、新規事業開発に向けた取組みを継続的に行い、業務受託(インクリメンタル収益)に関する売上が好調に推移したことによるものであります。

当社グループにおいては、今後も当該上位取引先との良好な関係構築に努めるとともに、新規顧客獲得に注力することにより、その依存度低減を図る方針であります。しかしながら、当面は当該上位取引先の割合は高い状態が継続するものと考えられ、当該顧客企業における事業サービス動向に影響を受けるほか、事業戦略や取引方針等に変更が生じた場合は、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

② IoTプラットフォームについて(顕在化の可能性:小、影響度:大、顕在化の時期:未定)

(a)通信回線の調達について

当社グループは、仮想移動体通信事業者(MVNO)であり、事業運営基盤となる通信回線(携帯電話網)は国内外の移動通信体事業者(MNO)より調達しており、その他複数の通信事業者と回線調達にかかる契約を締結しております。当社グループは、これら調達先と良好な関係を維持するとともに、事業拡大や効率的なネットワーク運営等を踏まえた調達先の拡大等、通信回線の安定調達を推進していく方針であります。

しかしながら、一部は代替困難となる通信回線等もあり、何らかの要因により通信回線の調達に支障が生じた場合は当社グループの事業運営に影響を及ぼす可能性があるほか、将来において回線調達コストの上昇が生じた場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

また、各調達先における通信回線サービスの長期にわたる中断や停止、システムエラー、人為的な破壊行為、自然災害その他の想定外の事象発生に起因する大規模通信障害等が発生した場合には、当社グループにおけるサービス提供不全等が生じ、収益機会の逸失やサービスに対する信頼性低下等により、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

なお、当社プラットフォームにかかる顧客利便性向上及び通信ネットワークの運用効率化を図るため、海外における複数地域キャリア等からの回線調達の拡充を行う計画を有しております。各社との取引契約にかかる条件により設備投資費用の一部負担や預託金等の供出を要請される可能性があり、複数社との契約を締結することにより当該支出が多額となる可能性があります。

 

(b)クラウドサービス上におけるサービス提供について

当社グループは、外部クラウドサービス上に[IoTプラットフォーム用システム]を構築した上で各種サービスを提供しており、事業運営においてはクラウドサービスの安定稼働が重要な要素となります。

当社グループは、Amazon Web Services社が提供するサービス(以下「AWS」という。)を活用しており、AWSは全世界に点在する複数の地理的リージョン(注1)及びアベイラビリティゾーン(注2)にて運用されており、FISC安全対策基準(注3)を満たす安全性を備えているものと認識しております。また、当社グループは、クラウドサービスの継続稼働にかかる常時監視、障害発生又は予兆検知時のアラート通知及び早期復旧体制の構築等の対応を実施しております。

しかしながら、システムエラー、人為的な破壊行為、自然災害その他の想定外の事象発生によりクラウドサーバーの停止、コンピュータ・ウイルス、クラッカーの侵入又はその他不具合等によりシステム障害が生じた場合、又はAWSの継続利用に支障が生じた場合には、サービス提供に支障が生じることにより顧客からの損害賠償やその対応にかかる追加費用負担等が発生する可能性があるほか、当社グループのサービスやブランドに対する信頼性毀損等により、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

(注1) 地理的に独立したサーバーの設置エリアのことをいいます。各リージョン同士は完全に独立しているためひとつのリージョンで障害が発生しても他のリージョンには影響が出ない設計となっております。

(注2) リージョンの中の個々の独立したデータセンターの名称のことをいいます。

(注3) 公益財団法人「金融情報システムセンター(FISC:The Center for Financial Industry Information Systems)」が提供するガイドライン「金融機関等コンピュータシステムの安全対策基準・解説書」

 

③ SIM及びデバイス商品仕入について(顕在化の可能性:中、影響度:中、顕在化の時期:未定)

当社グループは、一部の通信サービス用SIM及びIoTデバイス商品(当社独自仕様含む)について、外部の海外事業者より商品仕入を行っております。また、当社グループは、近年における電子部品不足等の状況を踏まえて、商品在庫の確保施策等に努めております。

しかしながら、当該仕入については、製造元の供給能力や半導体その他の部材確保状況、その他のサプライチェーン動向等の要因から、継続かつ安定した商品仕入が困難となった場合、また、代替困難な商品について重大な欠陥が生じた場合等においては、当社グループの事業拡大の制約要因となる可能性があり、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

④ 海外事業展開について(顕在化の可能性:小、影響度:小、顕在化の時期:未定)

当社グループの事業展開は、現在、国内に加えて、連結子会社であるSoracom Global, Inc.(米国)及びSORACOM CORPORATION, LTD.(英国)において、米国及び欧州その他の海外地域における事業展開を推進しております。

現時点においては、海外地域における当社グループの認知及び顧客獲得実績は限定的であり、海外事業の拡大を企図し、人員体制強化によるマーケティング及び顧客獲得強化等を推進しております。しかしながら、当該施策が当社グループの想定通り推移する保証はなく、海外事業の拡大に支障が生じた場合や事業推進のためにさらなる投資が必要となった場合、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

なお、海外で事業活動を行うにあたっては、地政学上のバランス、各国の政治・経済情勢、為替の変動、外資規制・知的財産権等に関するものを中心とした法規制の新設又は変更等のリスクが存在すると考えております。当社グループはこれらのリスクを事前又は適宜に把握する社内体制を構築しており今後も必要な対応を講じていく方針でありますが、これらのリスクが顕在化した場合は、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑤ 海外事業強化に伴う販管費率の増加について(顕在化の可能性:小、影響度:小、顕在化の時期:長期)

当社グループは、第9期連結会計年度中より海外事業拡大を企図した人員体制強化やマーケティング強化を先行的に実施したことから、第10期連結会計年度においては黒字を確保しているものの、販管費率が増加いたしました。

第11期連結会計年度は、売上高が堅調に推移したことから、販管費率はやや低下いたしましたが、第12期連結会計年度は、先行投資の継続や人員体制の拡充により販管費率が48.7%と高水準となりました。今後もかかる先行投資については計画的に実施していくとともに、海外における認知拡大や営業人員の早期戦力化等、当社グループの業績拡大及び収益性向上に向けた取組みを継続して実施していく方針であります。

しかしながら、当該取組みが想定通りに進捗しない場合には投資回収に時間を要する等、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

⑥ 為替変動について(顕在化の可能性:大、影響度:小、顕在化の時期:未定)

当社グループの事業においては、海外顧客向けの販売(国内顧客向けグローバル回線販売含む)及び海外通信回線の調達については外貨建て取引にて実施しております。また、SIM及びデバイス商品については海外商品があり、日本円建て取引を含めて為替変動の影響を受けております。

当社グループは、現在、外貨建て取引の割合、外貨建て仕入及び販売による相殺効果等を考慮して特段の為替リスク対策は実施しておらず、急激な為替変動が生じた場合には当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(2) 事業環境について

① IoT関連市場の動向について(顕在化の可能性:小、影響度:大、顕在化の時期:未定)

当社グループのIoTプラットフォーム事業は、今後の国内及び海外のIoT関連市場の成長を事業展開の前提と考えており、当社グループの事業成長は当該市場動向に依存しているといえます。

国内外のIoT関連市場は現在発展途上であり、また、今後も継続的な市場成長を想定しておりますが、当社グループの事業展開地域における景気の低迷や設備投資縮小、IoT領域にかかる新たな法的規制の導入や規制強化、技術革新の停滞などの要因により、IoT関連市場の成長が阻害される場合や当社グループの想定どおりの規模に成長しない場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。そのため、持続的な成長に向け、継続収入であるリカーリング収益拡大に注力しております。そのため、持続的な成長に向け、継続収入であるリカーリング収益拡大に注力しているほか、事業展開地域における景気変動や経済情勢等を分析し、市場の変化を適切に経営戦略に反映させるとともに、海外展開により特定地域への依存を軽減し、顧客ニーズの変化に応じたサービスの提供によりリスクの低減を図っております。また法的規制の動向につき国内外の弁護士等の専門家と連携し、適時に把握し、必要な対応をとるよう努めております。更に、常に最新の技術動向を注視し、優秀な人材の確保や教育を通じた技術水準の向上を図るとともに、既存サービス・機能の向上や新規開発等を目的とした投資の必要性について判断を行っております。
 

② 技術革新等への対応について(顕在化の可能性:小、影響度:中、顕在化の時期:未定)

当社グループの事業展開においては、特にIoT領域におけるビジネス・サービス動向や顧客ニーズに対応したプラットフォームやサービス・機能の拡充・更新等を適時かつ継続的に行うことが重要であると考えております。

また、IoT領域に関連する技術革新のスピードは非常に速く、先端技術に対応するサービスを提供し続けるためには、常に技術ノウハウを獲得し、開発プロセスに取り入れていく必要があります。そのため、当社グループは、高度なスキルを有するエンジニアの採用及び育成、創造的な職場環境・開発環境の整備を進めるとともに、技術的な知見・ノウハウの取得に注力しております。

しかしながら、かかる施策に拘わらず、当社グループにおける技術革新等への対応が困難となる場合はサービスの陳腐化や競争力低下が生じる可能性があります。さらに、新技術への対応のために追加的なシステム投資又は人材投資等の支出が増加する可能性があり、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

③ 競争状況について(顕在化の可能性:中、影響度:中、顕在化の時期:未定)

当社グループが事業を展開するIoT関連業界においては、大手通信事業者(MNO)や各種MVNO事業者まで多数の競合企業が参入しサービスを提供しており、その競争は激しい状況にあると認識しております。

当社グループは、クラウド上にモバイルコアネットワークを独自に構築し、IoTを導入・運用する際に必要となる多様な機能をワンストップでかつ安価に利用できるIoTプラットフォームが競争力の源泉となっているものと認識しており、また、過年度における顧客導入実績等から国内IoT業界において一定の市場認知を獲得しているものと考えております。

当社グループは、提供サービスについて、継続的な機能拡充、品質向上及び利便性追求等により競争力維持に努めていく方針でありますが、既存事業者との競争の激化や、新たな参入事業者が当社のシステムに類似する仕組みを構築する等により当社グループの優位性が損なわれる場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

④ 法的規制について(顕在化の可能性:小、影響度:中、顕在化の時期:未定)

当社は、IoTに必要な通信回線を提供するため、電気通信事業者として総務省に登録を行っており、電気通信事業法の規制を受けております。電気通信事業としての登録に有効期間はありませんが、当社の業務運営に関し、通信の秘密の確保やその他業務運営が適切ではないと判断された場合は、総務大臣より業務方法の改善命令その他の措置が実施されることとなります。また、電気通信事業法第14条に定められた事項に該当した場合は、電気通信事業者の登録の取消しとなります。現在、電気通信事業者の登録の継続に支障をきたす要因は発生していませんが、登録が取り消された場合、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

加えて、当社事業においては、消費者保護法、電気用品安全法、個人情報保護法等の法規制を受けております。

また、当社グループは、海外地域においても事業活動を行っており、その対象となる各国及び地域の電気通信関連の法規制が適用されており、必要な届出又は許認可取得を実施しております。その他、労働安全衛生、労使関係、外国投資規制、外資規制、国家安全保障、消費者保護、競争政策、税制及び環境保護等に関連する様々な法律及び規制の対象となっております。

当社グループにおいては、各種法規制を踏まえた社内規程やマニュアル整備等による社内体制の構築、各地域の法律専門家の活用、行政当局への相談等により、法令を遵守した業務運営に努めております。しかしながら、当社グループが法令等に違反する行為を行った場合、その違反意図の有無にかかわらず、行政当局から処分又は指導を受けることにより事業運営に支障をきたす可能性があるほか、ブランドイメージ及び社会的信用に悪影響が生じる可能性があります。また、今後上記の法的規制やこれに関連する法解釈が変更されたり、新たな法的規制が導入された場合には、当社グループの事業運営が制約される可能性があります。これらの場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(3)事業体制について

① 人材の採用・育成について(顕在化の可能性:小、影響度:中、顕在化の時期:未定)

当社グループは、今後想定する事業成長や企業規模拡大に伴い、継続的に幅広く優秀な人材を採用し続けることが重要であると認識しております。

サービスにかかる品質確保や安定稼働、競争力向上に際しては、開発部門を中心とした高度な技術力・企画力を有する人材が必要であり、また、国内外における新たな顧客獲得や顧客サポートを強化するため、営業及びマーケティング部門における組織体制強化も必要となり、継続的な人材採用とともに、既存人材の育成・強化が必要であると考えております。当社グループでは、国内外において、営業及びマーケティング部門、エンジニア部門および経営管理部門等の人員強化を図るとともに、部門別・職階別研修等による計画的な人材育成に努めております。

しかしながら、エンジニアその他の優秀な人材確保にかかる競争は厳しく、当社グループが必要とする優秀な人材確保が計画通りに進展しない場合や人材確保にかかる費用上昇が生じた場合、また、既存人材の育成が図られない場合や社外流出が生じた場合、当社グループの事業運営、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

② 内部管理体制の整備状況にかかるリスクについて(顕在化の可能性:小、影響度:中、顕在化の時期:未定)

当社グループは、企業価値を継続的かつ安定的に高めていくためには、コーポレート・ガバナンスが有効に機能するとともに、適切な内部管理体制の整備が必要不可欠であると認識しております。業務の適正性及び財務報告の信頼性の確保のための内部統制システムの適切な整備・運用、さらに法令・定款・社内規程等の遵守を徹底しておりますが、事業の急速な拡大により、十分な内部管理体制の整備が追いつかない状況が生じる場合には、適切な業務運営が困難となり、当社グループの事業運営、経営成績及び財政状態に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

③ コンプライアンス体制について(顕在化の可能性:小、影響度:中、顕在化の時期:未定)

当社グループでは、今後企業価値を高めていくためにはコンプライアンス体制が有効に機能することが重要であると考えております。そのため、コンプライアンスに関する社内規程を策定し、全役員及び全従業員を対象として社内研修を実施し、周知徹底を図っております。併せて、コンプライアンス体制の強化にも取組んでおります。

しかしながら、これらの取組みにもかかわらずコンプライアンス上のリスクを完全に解消することは困難であり、今後の当社グループの事業運営に関して法令等に抵触する事態が発生した場合、当社グループの事業運営、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

④ 知的財産権の管理について(顕在化の可能性:小、影響度:小、顕在化の時期:未定)

当社グループは、提供している商品・サービスに関する知的財産権の取得・維持・活用に努めております。しかしながら、先行する技術や商標の存在等により、当社が希望する態様で知的財産権を取得できず、当社グループの商品・サービスを模倣する商品・サービスに対して十分な対応ができない可能性があります。また、当社グループは、第三者の知的財産権の侵害を防ぐため、必要に応じて知財担当者又は外部への委託等により調査を行っております。しかしながら、万が一、当社グループが第三者の知的財産権を侵害した場合には、当該第三者に対して損害賠償の支払いや、侵害を構成する当社グループの商品・サービスの名前又は仕様の変更が必要となる可能性があります。これらの結果として、当社グループの事業運営、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑤ 情報管理体制について(顕在化の可能性:小、影響度:中、顕在化の時期:未定)

当社グループは、電気通信事業者として通信の秘密の保護を遵守するとともに、取り扱う情報資産の保護、管理に関して、情報セキュリティ委員会を設置して内部からの情報漏洩防止、及び外部ネットワークからの不正侵入の防止に関わる全社的対応策の策定及びGDPR等グローバルな法制度への対応を実施しております。しかしながら、情報の漏洩等が発生した場合、当社グループのブランドイメージや信頼性の失墜、莫大な補償・課徴金を伴う可能性があります。また、将来的に通信の秘密及び顧客情報保護体制の整備のため、さらなるコストが増加する可能性があり、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(4) KDDI株式会社との関係について

KDDI株式会社は、本書提出日現在における当社の発行済株式総数の42.5%を保有しており、同社は当社の主要株主であります。

 

① KDDIグループとの資本関係(顕在化の可能性:小、影響度:小、顕在化の時期:未定)

同社は、当社株式上場に伴う一部保有株式の株式売出し等により株式保有割合は42.5%となりましたが、今後も当社が同社持分法適用会社に該当する水準にて当社株式を継続保有する方針であります。

KDDIグループの適切な運営を目的として、当社の経営において、同社の承認を要する事項は存在しておりませんが、同社において適時開示が必要となる事項に限り事前報告を行うことが定められており、同社は議決権の行使を通じて当社の経営判断に影響を及ぼし得る立場にあることから、同社利益が他の株主の利益と一致しない可能性があります。

 

② KDDIグループとの人的関係について(顕在化の可能性:小、影響度:小、顕在化の時期:未定)

本書提出日現在、当社取締役7名のうち、主要株主であるKDDI株式会社より1名を選任しております。豊富な経営知識から、当社事業に関する助言を得ることを目的として招聘したものであります。兼任している役員は以下のとおりであります。

 

当社における役職

氏名

兼務先における役職

 

取締役

藤井 彰人

執行役員 先端技術統括本部長

 

なお、2025年6月25日開催予定の定時株主総会の議案(決議事項)として、「監査等委員でない取締役4名選任の件」を上程しており、当該決議が承認可決された際には、上記状況に変更はない予定です。

 

③ KDDIグループにおける当社の位置付けについて(顕在化の可能性:小、影響度:小、顕在化の時期:未定)

当社は、KDDIグループにおいて、IoTやクラウド等を活用したビジネスDX(デジタルトランスフォーメンション)を担う会社として位置付けられております。主要株主であるKDDI株式会社においては、移動通信及び固定通信を中心とする通信事業をコア事業としているものの、これらに付随してIoTサービスを提供しており、広くIoTという領域でみれば、当社と一部事業領域が重複しております。

主要株主であるKDDI株式会社は、通信基地局等を保有したMNO(移動体通信事業:Mobile Network Operator)事業者であり、IoT領域においては、主に大規模顧客等に対するIoTシステム構築及び個別開発を前提とした事業を展開しております。これに対し当社グループは、通信基地局等を持たないMVNO事業者(仮想移動体通信事業者:Mobile Virtual Network Operator)であり、IoTに必要となる機能・サービスをクラウド上に独自プラットフォームとして構築し、顧客に提供する形態により事業を展開しており、事業上の棲み分けがなされているため、事業展開に影響を及ぼす競合等は生じておりません。

また、当社はKDDI株式会社との間で締結する業務提携契約に基づき、KDDI株式会社が構築する「IoT世界基盤」にかかる開発支援及びプラットフォームサービスの提供、その他技術開発支援等を受託しており、一部事業において協業しております。「IoT世界基盤」は当社のIoTプラットフォーム形成に関連する通信技術とau国際ローミングや閉域接続サービスを含むKDDI株式会社の世界規模の通信カバレッジを融合させたサービスであり、IoTによるシステム保守やメンテナンスのDX(デジタルトランスフォーメンション)やサブスクリプションモデルのグローバル展開など全産業の幅広い事業法人を対象に展開しております。なお、事業展開に影響を及ぼす競合等は生じておりません。

なお、当社グループにおいては上記の関係を継続していく方針でありますが、将来においてKDDIグループにおける経営方針及び事業戦略等の変更が生じた場合には、競合が生じる可能性があります。

 

④ 主要株主であるKDDI株式会社との業務提携契約について(顕在化の可能性:小、影響度:小、顕在化の時期:未定)

当社グループは、協業による通信ネットワークに関する技術開発及び収益ビジネスの創出・拡大を目的とし、KDDI株式会社と業務提携契約を締結しております。業務提携の主な内容は、新たな通信サービスの共同での技術開発及び販売等、当社が保有するデータ通信に関連する技術及び知見を活用したKDDI株式会社の通信ネットワークの高度化、KDDIグループが保有する通信に関連する技術開発環境及び営業上の販路等のリソースを活用した当社の販路拡大及び競争力強化になります。

また、当社グループは当該契約において指定される国内及び海外の移動体通信事業者等(指定事業者等)と指定される業務(指定業務)と競業する行為を行おうとするときは、KDDI株式会社との事前合意又は事前協議を経ることを義務付けられております。

本書提出日現在、当該契約における指定業務は「KDDIグループが保有するネットワークの改善・高度化を図るための技術検証及び開発」並びに「IoT 世界基盤等の提供可能範囲・サービス内容拡充のための技術連携・サービス開発」に限定されており、当社の提供しているサービスについては、顧客が指定事業者等に該当しないか、指定業務と競業する行為に該当しないかのいずれかとなっているため、当社グループの事業及び業績に与える影響も限定的であります。

しかしながら、今後の当社グループのビジネス展開がKDDI株式会社との競合に該当し同意が得られない場合や、当該契約の内容により当社グループの将来の事業活動が阻害される場合には、当社グループの事業及び業績に影響を与える可能性があります。

なお、過去に、当社グループのビジネス展開がKDDI株式会社との競合に該当した事例はありません。

 

⑤ KDDIグループとの取引関係について(顕在化の可能性:小、影響度:小、顕在化の時期:未定)

当社グループは、移動通信体事業者(MNO)であるKDDI株式会社と「IoT世界基盤」に係るプラットフォームサービスの提供及びソフトウェア開発等の業務受託取引並びにその他の取引を行っております。

また、当社グループは、KDDI株式会社を含むKDDIグループとの取引(関連当事者取引)を実施するにあたっては、関連当事者取引管理規程に基づき、年間取引金額が1百万円以上となる新たな取引については事業計画決議時又は取引開始前に取締役会において事業上の必要性、取引条件の妥当性を検討のうえ、承認を得ることとしております。さらに、事業年度をまたいで継続する取引についても、事業計画決議時の取締役会において事業上の必要性、取引条件の妥当性を報告することで、適切に牽制する体制を構築しております。

当社グループと主要株主であるKDDI株式会社との取引については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 関連当事者情報」をご参照ください。

 

(5) その他のリスクについて

① 配当政策について(顕在化の可能性:中、影響度:小、顕在化の時期:未定)

 当社グループは、株主に対する利益還元と同時に、財務体質の強化及び競争力の確保を経営の重要課題として位置付けております。現時点では、当社グループは成長過程にあると考えており、内部留保の充実を図り、事業拡大と事業の効率化のための投資に充当していくことが株主に対する最大の利益還元につながると考えております。このことから、創業以来配当は実施しておらず、今後においても当面の間は内部留保の充実を図る方針であります。将来的には、各事業年度の経営成績を勘案しながら株主への利益還元を検討していく方針ですが、現時点において配当実施の可能性及びその実施時期等については未定であります。

 

② 税務上の繰越欠損金について(顕在化の可能性:大、影響度:小、顕在化の時期:中期)

第12期連結会計年度末は、当社グループに税務上の繰越欠損金が存在しております。当社の経営成績が順調に推移することにより、繰越欠損金が解消した場合や税制の変更等により繰越欠損金が十分に活用できない場合には、通常の税率に基づく法人税、住民税及び事業税が計上されることとなり、当期純損益及びキャッシュ・フローに影響を与える可能性があります。

 

③ 訴訟等について(顕在化の可能性:小、影響度:小、顕在化の時期:未定)

当社グループは、本書提出日現在において、業績に重大な影響を及ぼす訴訟を提起されている事実はありません。当社グループは、コンプライアンスに関する社内規程を策定し、全役員及び全従業員を対象として社内研修を実施する等、法令違反などの発生リスクの低減に努めておりますが、事業を展開する中で、当社グループが提供するサービスの不備、情報漏洩、役職員のトラブル等により、何かしらの問題が生じた場合等、これらに起因した損害賠償の請求、訴訟の提起がなされる可能性があります。その場合、当該訴訟に対する防御の為に費用と時間を要する可能性があるほか、当社グループの社会的信用が毀損され、また損害賠償の金額、訴訟内容及び結果によっては、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

④ 自然災害・事故等について(顕在化の可能性:中、影響度:中、顕在化の時期:未定)

当社グループでは、自然災害・事故等に備え、サービスの定期的バックアップ、稼働状況の常時監視等によりトラブルの事前防止又は回避に努めておりますが、当社グループの所在地近辺において、大地震等の自然災害が発生した場合、当社グループが保有する設備の損壊や電力供給やインターネットアクセスの制限等の事業継続に支障をきたす事象が発生して、当社グループの事業運営、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑤ 株式の追加発行等による株式価値の希薄化について(顕在化の可能性:中、影響度:小、顕在化の時期:中期)

当社グループは、当社グループの役員及び従業員に対するインセンティブを目的とし、新株予約権を付与しております。また、今後においても新株予約権又は譲渡制限付株式等を活用したインセンティブプランを活用していく方針であります。これらの新株予約権が権利行使された場合や譲渡制限付株式の発行に伴い、当社株式が新たに発行され、既存の株主が有する株式の価値及び議決権割合が希薄化する可能性があります。なお、当連結会計年度末時点でこれらの新株予約権による潜在株式数は4,993,723株であり、発行済株式総数 45,153,515株の11.1%に相当しております。

 

⑥ 調達資金の使途について(顕在化の可能性:小、影響度:中、顕在化の時期:未定)

株式上場時における公募増資による調達資金の使途については、事業拡大のための人件費及び採用費、広告宣伝・販売促進等のマーケティング投資並びにIoTプラットフォーム「SORACOM」の拡充のための開発費に充当する予定であります。しかしながら、当初の計画に沿って資金を使用した場合においても、想定通りの投資効果を得られない可能性があります。また、市場環境の変化が激しく、計画の変更を迫られ調達資金を上記以外の目的で使用する可能性があり、その場合は速やかに資金使途の変更について開示を行う予定であります。

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

① 財政状態の状況

(資産)

当連結会計年度末における流動資産合計は12,308,184千円となり、前連結会計年度末に比べ2,214,033千円増加いたしました。これは主に現金及び預金が2024年4月におけるオーバーアロットメントによる売出しに関連した第三者割当増資による新株式の発行及び2024年12月における金融機関からの借入の実行等により1,220,528千円増加したこと、デバイスや受託開発案件の納品があったことによる売掛金及び契約資産の増加689,983千円によります。固定資産合計は、1,077,945千円となり、前連結会計年度末に比べ275,291千円増加いたしました。これは主にソフトウェアなどの無形固定資産の増加271,281千円によるものであります。

この結果、当連結会計年度末における資産合計は13,403,349千円となり、前連結会計年度末に比べ2,485,973千円増加いたしました。

(負債)

当連結会計年度末における流動負債合計は2,319,939千円となり、前連結会計年度末に比べ141,808千円減少いたしました。これは主にデバイス仕入により買掛金が235,017千円増加、1年以内返済予定の長期借入金249,996千円増加した一方で、デバイス交換等により製品保証引当金が293,946千円減少、リカーリング収益の前受額を売上認識したことにより契約負債が135,641千円減少したことによるものであります。固定負債合計は728,389千円となり、前連結会計年度末に比べ677,203千円増加いたしました。これは主に長期借入金が687,505千円増加したことによるものであります。

この結果、当連結会計年度末における負債合計は、3,048,329千円となり、前連結会計年度末に比べ535,394千円増加いたしました。

(純資産)

当連結会計年度末における純資産合計は10,355,020千円となり、前連結会計年度末に比べ1,950,578千円増加いたしました。これは2024年4月におけるオーバーアロットメントによる売出しに関連した第三者割当増資による新株式の発行やストックオプションの行使による資本金及び資本剰余金の増加それぞれ741,897千円744,897千円、親会社株主に帰属する当期純利益352,716千円の計上による利益剰余金の増加によるものであります。

この結果、自己資本比率は75.0%(前連結会計年度末は75.5%)となりました。

 

② 経営成績の状況

 当連結会計年度におけるわが国経済は、企業の高収益と賃上げで緩やかに回復するも、物価高と海外での保護主義の台頭による不透明さが増しています。米国経済は堅調な労働市場に支えられていますが、政策とインフレ動向に注視が必要な状況にあります。欧州経済は持ち直し傾向にあるものの、高金利と地政学リスクが不確実要因となっている状況が継続しています。

このような状況の下、ITサービス分野において、IoT技術は、日本の喫緊の課題である少子高齢化や人口減少に伴う労働力不足、生産性向上といった社会課題の解決に貢献することが一層期待されています。また、企業における業務効率化ニーズの高まりを背景にICT(情報通信技術)の活用が加速する中、今後もIoTは社会インフラや産業高度化においてますます重要な役割を担っていくと予測され、当社が果たすべき役割はますます高まるものと認識しております。加えて、2024年以降、生成AIの社会実装と活用が急速に進んでおり、政府によるAI戦略の推進や、データ活用基盤の整備といった動きも活発化しています。当社グループにおいても、AIoT(AI of Things)として、顧客への新たな価値提供を目指し、生成AIを活用したサービスの高度化や新規事業の探索、技術研究開発を積極的に推進しております。

当連結会計年度の業績については、課金アカウント数(注1)(注3)やARPA(注2)(注3)が伸びたことにより、リカーリング収益(プラットフォーム利用料)による継続収入が6,562,193千円(前期比21.9%増)と好調に推移しました。課金アカウント数は継続的に伸びて8千8百となり、ARPAは前期比10.5%増加の760千円となりました。一方で、商品販売とその他の売上からなるインクリメンタル収益については、一部期ずれ案件もあり2,430,837千円(前期比4.5%減)となりました。

当社グループは日本発のグローバル企業として海外展開の取り組みを行って参りました。その結果、海外売上高の比率は、前期比5.4ポイント増加の41.8%となりました。

また、販売費及び一般管理費については、人材投資、イベント出展による広告宣伝など積極的な投資を行った結果、4,376,526千円(前期比16.2%増)、販管費率は47.5%から48.7%となりました。さらに営業外費用として、円安の影響による為替差損26,323千円、特別損失として、投資有価証券評価損198,302千円を計上しております。

この結果、当連結会計年度における売上高は8,993,031千円(前期比13.4%増)、営業利益は656,539千円(前期比9.7%減)、経常利益は619,617千円(前期比2.9%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は352,716千円(前期比27.4%減)となっております。

なお、当社はIoTプラットフォーム事業の単一セグメントであるため、セグメント情報は記載しておりません。

(注1)課金アカウント数は、1ヶ月の間にリカーリング収益が発生した口座数をいいます。同一の顧客企業等が部署や業務別に複数の口座を有する場合が含まれております。

(注2)Average Revenue Per Accountの略称。1アカウントあたりの平均売上金額を示す指標を意味します。

(注3)株式会社キャリオットを除いております。

 

③ キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)については、前連結会計年度末より1,220,528千円増加し、8,917,773千円となりました。当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動の結果、支出した資金は728,673千円(前連結会計年度は456,241千円の収入)となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益を421,314千円計上したものの、デバイスや受託開発案件の納品があったことに伴う売上債権の増加683,729千円及びリカーリング収益の前受額を売上認識したことによる契約負債の減少257,639千円があったことによるものです。その他、デバイス仕入に伴う仕入債務の増加額223,704千円及びデバイス交換等による製品保証引当金の減少額293,946千円、投資有価証券評価損198,302千円を計上しております。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動の結果、支出した資金は474,993千円(前連結会計年度は170,572千円の支出)となりました。これは主にソフトウェアの開発に伴う無形固定資産の取得による支出306,611千円及び投資有価証券の取得による支出161,600千円によるものです。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動の結果、増加した資金は2,451,930千円(前連結会計年度は3,791,479千円の収入)となりました。これは主にオーバーアロットメントによる売出しに関連した第三者割当増資による新株式の発行による収入1,287,956千円及び新株予約権の行使による株式の発行による収入178,780千円、長期借入れによる収入1,000,000千円及び長期借入金の返済による支出62,499千円によるものです。

 

④ 生産、受注及び販売の実績

当社グループは受注生産形態をとる事業を行っていないため、生産規模及び受注規模を金額及び数量で示す記載をしておりません。

a. 生産実績

当社グループが提供するサービスの性格上、生産実績の記載に馴染まないため、当該記載を省略しております。

 

b. 受注実績

当社グループが提供するサービスの性格上、受注実績の記載に馴染まないため、当該記載を省略しております。

 

 

c. 販売実績

当社グループは、IoTプラットフォーム事業を単一セグメントとして展開しておりますが、第12期連結会計年度における品目別販売実績を示すと、次のとおりであります。

品目

販売高(千円)

前期比(%)

リカーリング収益
(プラットフォーム利用料)

6,562,193

121.9

インクリメンタル収益

商品販売

1,715,493

103.0

その他

715,343

81.2

小計

2,430,837

95.5

IoTプラットフォーム事業合計

8,993,031

113.4

 

(注)  最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。

相手先

第11期連結会計年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

第12期連結会計年度

(自 2024年4月1日

至 2025年3月31日)

金額(千円)

割合(%)

金額(千円)

割合(%)

日本瓦斯株式会社

1,878,130

23.7

株式会社エナジー宇宙 ※

963,959

10.7

KDDI株式会社

1,008,772

12.7

955,591

10.6

 

※ 株式会社エナジー宇宙は、ニチガスグループの組織再編後のガス導管事業等承継会社で、日本瓦斯株式会社の完全子会社であります。

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は、次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものであります。
 

① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づいて作成されております。

この連結財務諸表を作成するにあたり重要となる会計方針については「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載のとおりであります。また、連結財務諸表の作成にあたっては、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りを必要としております。経営者は、これらの見積りについて、当社の実態等を勘案して合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積りによる不確実性のため、これらの見積りと異なる場合があります。

(繰延税金資産)

当社グループは、将来減算一時差異及び税務上の繰越欠損金に係る繰延税金資産の回収可能性を判断した上で、回収可能性がないと見積られる金額を評価性引当額として控除しております。繰延税金資産の回収可能性を判断する際には、将来の課税所得に基づき、将来の税金負担額を軽減する効果を有すると考えられる範囲で繰延税金資産を計上しております。将来の課税所得の発生額は、取締役会によって承認された来年度予算を基礎としており、顧客との交渉状況を踏まえた新規受注の獲得見込み等を主要な仮定として見積っております。

ただし、当該見積りには不確実性を伴い、これに関する経営者による判断が繰延税金資産の計上額に影響を及ぼす可能性があります。

(製品保証引当金)

当社グループは、顧客に販売した一部デバイスについて、将来発生する交換に伴う作業費用に備えるため、その発生見込み額を製品保証引当金として計上しております。

将来発生するデバイスの交換に伴う作業費用は、対象となるデバイスの数量、デバイス1個当たりの交換対応費用等の予測に基づき合理的に見込まれる金額を算定しております。この見積りには不確実性が含まれており、前提条件の変化等により、実際の発生額と異なる場合があり、引当金の追加計上もしくは戻入が必要となる可能性があります。

 

② 経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

 当社グループの第12期における売上高は、リカーリング収益とインクリメンタル収益とが共に堅調に推移した結果、前期比13.4%の増収となりました。KDDI株式会社の新規事業開発に向けた取組みの継続により、業務受託(インクリメンタル収益)に関する売上が好調に推移するとともに、海外子会社による売上も貢献しました。販管費については、広告宣伝や事業投資に係る費用、外形標準課税の適用による租税公課の計上により、611,163千円増加しましたが、増収が寄与し、営業利益は70,796千円の減益となりました。

 営業外収益としては、第12期においても、円安傾向の影響により、為替差損を26,323千円計上しております。

 また、第12期においては、投資有価証券評価損を198,302千円計上いたしました。

 

 財政状態においては、当社の第12期末におけるリース債務を含む有利子負債の残高は、金融機関からの借入を行ったことから950,167千円となり、現金及び預金の残高は、2024年4月24日付でオーバーアロットメントによる売出しに関連した第三者割当増資及び金融機関からの借入を行ったことにより増加し、8,917,773千円となっております。当社の事業を推進していくうえで十分な流動性を確保しており、今後は、これら資本を原資に、収益力とのバランスをみながら、マーケティング活動や優秀な人材の確保のための投資や事業投資を行い、国内売上の安定的な成長と海外売上の拡大を図ってまいります。

 

③ 資本の財源及び資金の流動性

当社は、事業を推進していくうえで十分な流動性を確保しております。当社の運転資金需要のうち主なものは、従業員の給料手当のほか、販売費及び一般管理費の広告宣伝費であります。当社は、事業運営上必要な資金を安定的に確保するために、必要な資金については自己資金により賄いますが、短期的な運転資金が必要となる場合には、金融機関からの借入及びエクイティファイナンス等でバランスよく調達していく方針です。なお、これらの資金調達方法の優先順位については、調達時期における資金需要の額、用途、市場環境、調達コスト等を勘案し、最適な方法を選択する方針であります。

 

④ 経営成績に重要な要因を与える要因について

経営成績に重要な影響を与える要因については、「3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。また、今後の経営成績に影響を与える課題については、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおりであります。

 

⑤ 経営者の問題意識と今後の方針について

経営者の問題意識と今後の方針については、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおりであります。

 

⑥ 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

当社グループは、経営成績を評価するために売上高、売上高総利益率及び営業利益率に加えて、リカーリング収益、課金アカウント数及びリカーリング収益のARPAを重要な経営指標と考えております。

売上高の伸びは事業全体が安定的に成長している指標となっており、コストとのバランスが異常でないことを売上高総利益率及び営業利益率をモニタリングすることで測っております。売上高については、前期比113.4%の伸びでしたが、営業利益率については、生成AI関連の費用やM&Aに係る費用等を計上したことにより、営業利益率は7.3%(前期は9.2%)と鈍化いたしました。

ARPAの上昇は、既存顧客がプラットフォームの利用範囲を拡大していることを示すため、課金アカウント数の増加と併せて重要な指標として管理しております。課金アカウント数及びリカーリング収益のARPAは、それぞれ前期比108.6%及び110.5%とともに増加し、顧客数の増加のみならず既存顧客の事業へのIoTの浸透が進んでいるものと評価しております。

加えて、グローバル回線の利用が増加した結果、海外子会社の国又は地域における売上高である海外売上高は第11期連結会計年度は2,887,912千円(海外売上高比率36.4%)、第12期連結会計年度は3,759,020千円(海外売上高比率41.8%)と増加しております。なお、海外売上高には、国内顧客向けグローバル回線にかかる売上高が含まれております。

売上高及び売上総利益の伸長の背景については「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」をご参照ください。

(単位:千円)

 

第11期連結会計年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

第12期連結会計年度

(自 2024年4月1日

至 2025年3月31日)

 

前期比

売上高

7,928,778

8,993,031

113.4%

売上高総利益率

56.7%

56.0%

営業利益率

9.2%

7.3%

 

 

 

 

 

 

課金アカウント数(千個)

8.1

8.8

108.6%

リカーリング収益のARPA

688

760

110.5%

 

 

 

 

5 【重要な契約等】

契約会社名

相手先名

契約の名称

契約内容

契約期間

株式会社ソラコム(当社)(注)

株式会社NTTドコモ

卸携帯電話サービス契約約款

卸携帯電話サービスに関する契約

合意による解除又は卸携帯電話サービスが廃止されるまで

 

(注) 本契約は、当社が提供するMVNO(仮想移動体通信事業者)サービスにおいて、移動体通信事業者から携帯電話網を借り受けるための契約であり、当社のIoTプラットフォーム事業に必要不可欠な契約であります。

 

 

6 【研究開発活動】

当連結会計年度において、Generative AI(生成AI)とLLM(大規模言語モデル)のIoT分野での活用について継続的に研究を行い、17,621千円の研究開発投資を行いました。