(1)経営の基本方針
当社グループは、ありたい姿として21世紀の日本を代表する『知識集約型企業 Professional Design & Engineering Firm』を目指しております。ありたい姿を実現し社会と共に目指す未来像として、ソート(Thought)『Innovating for a Wise Future』を掲げております。このソートには、「工学知」をベースにした有益なソリューションを社会に普及させることにより、顧客、大学・研究機関、国内・海外パートナーなどの各ステークホルダーと共に、より賢慮にみちた未来社会を創出していきたいという想いを込めております。
これらの方針を基に、当社グループの付加価値創造の源泉である多様な「人才」(当社グループでは知識集約型企業という形態の組織を支えるため、「人」を経営のリソースとして扱う“人材”や“人財”ではなく、個々の才能に着目する“人才”と定義)と共に社会を良くするためには何が必要かを考え抜き、「知(知識、知恵の集合体)」と情報技術を組み合わせ、将来に向けた新たな価値を創造し、各ステークホルダーと共にサステナブルな成長を目指してまいります。
当社グループが持続的に発展していくための経営基盤である「品質の確保及び向上」、「今後の当社グループの成長を担う優秀な人才の確保と育成」を強化し、高い品質をベースとした付加価値の高い既存事業の着実な推進と、更なる付加価値増のための新たな事業投資を行うことで中長期的な企業価値向上を目指しております。
当連結会計年度(2025年6月期)に当社グループは持株会社制を導入いたしました。新たな体制において、グループ企業の豊富な人的資本をより有効に活用し、既存事業では高い収益性の維持とサステナブルな成長を、新規事業では必要な投資の継続により高い成長率と規模の拡大を目指してまいります。
(2)目標とする経営指標
当社グループはより優れた人才が集い、互いに切磋琢磨して成長していくことが重要だと考えており、事業の成長と人才の成長の両輪で持続的な成長を目指しております。こうした背景から、利益の追求に加えて、成長の源泉となる人才への還元も考慮し、営業利益に人件費と福利厚生費(フリンジベネフィット)を加えた指標を「総付加価値」と定義し、中長期的に8%程度の年間成長を経営目標としております。得られた利益を、株主や所員をはじめとした各ステークホルダー及び将来に向けた新規事業への投資へ適正に配分することで、サステナブルな成長を実現し、更なる成長に繋げていきたいと考えております。
また、期末のネット有利子負債については、今後も事業投資とのバランスを勘案しつつ適切な水準を維持していくとともに、自己資本比率の適正な水準の維持、高いROEの維持・向上、DOEを考慮した中長期保有株主に対する継続的かつ安定した配当も目標といたします。
当連結会計年度(2025年6月期)において、既存事業では高い収益性を維持し、着実な成長を目指すとともに、組織風土に見合った品質の高い仕事を追求してきました。またクラウドサービス提供型ビジネス等の新規事業においては、規模拡大に向け、より高い成長及び利益率の改善を図り、経営指標である総付加価値の計画(112億77百万円)達成を目指して遂行してまいりました。
(3)知識集約型企業としての行動指針
当社グループは、「知」を「価値」として社会に提供していく知識集約型企業としての行動指針として、以下の点を重視しております。
① 自律・自立と機動性
公開企業としてガバナンスを強化しつつも、迅速な意思決定が可能な機動力の高い組織の維持に努めます。社内外を繋げることで生まれるオープンイノベーションを推進するためにも、自由闊達な知の探索を奨励し、所員が切磋琢磨し主体的にチャレンジできる組織風土を作ってまいります。
② 独立性
独立系企業として全ての顧客と対等なパートナーシップを構築し、信頼されるパートナーとして安心して業務を任せていただけるように、良好な関係を築いてまいります。さまざまな企業の業務の理解を深めて経験知を蓄積し、知識集約型企業に相応しい価値提供を目指してまいります。
③ 多様性
当社グループは「社会のいかなる問題にも対処できるよう、バラエティに富んだ専門家を集めた工学を生業とした組織を作りたい」という創業の志を引き継ぎ、人才の多様性を重視しております。専攻、性別、年齢、国籍等によらない所員個々の多様な経験や知見、価値観が組織の活性化及び新たな事業展開に繋がると考えております。
④ 透明性
各ステークホルダーに対しては、透明性の高いガバナンス体制の構築に継続して取り組んでまいります。また、当社グループのありたい姿を実現するため、組織としての目標を全てのグループ会社、全ての所員に共有し、その目標達成を目指してまいります。
⑤ 社会性
当社グループの所員全員が、「真・善・美」を追求し、社会の様々な活動に関わる人々の行動や考え、評価や価値観などを察し「慮る」姿勢を常に持ち続け、各ステークホルダーや社会へ貢献してまいります。
(4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当社グループは、お客様に提供するサービスの品質を最重要課題として捉えるとともに、このサービスを提供する個々の人才の成長が大切だと考えております。
品質の面では、エンジニアリングコンサルティングビジネスではプロジェクトの納期、予算、質の面から第一級の顧客満足度の維持を目指し、各自が必要かつ十分な品質の確保に向けた取り組みを続けております。プロダクツサービスビジネスでは、お客様が利用されるソフトウエアの機能を最大限に活用できるように、また近年拡大しているクラウドサービスでは、プラットフォームが安定的に維持されることを目指しています。
人才の質を維持、向上するために、社会的に意義のあるプロジェクトを受注し、そこでの経験を積み、また不特定多数のお客様へ提供するプロダクツサービスビジネスでは、顧客の潜在的なニーズがどこにあり、どのように課題解決を伝えるかマーケティングの視点も重視しております。ジェンダーや国籍を超えた多様な人才が所属する組織の場を設定することで、より高い価値提供が可能だと考えます。
高収益のエンジニアリングコンサルティングビジネスを着実に維持、発展させつつ、新規顧客への訴求、新規テーマの創成を通じて、全社の利益性の向上を図ります。
このような経営方針をもとにして、当社グループは以下の観点を踏まえた施策を積極的に推進してまいります。
① 品質の維持及び向上
当社グループは、過去に犯した品質不良による顧客への迷惑を反省し、常に確かな品質を保証し価値ある成果を提供し、顧客の信頼と期待を獲得し続けることを誓っております。失敗を含めた過去からの経験知をベースに各グループ内に品質管理体制を構築し、更なる改善と着実な運用に継続的に取り組みます。何よりも品質に対する所員一人ひとりのこだわりが重要であることを認識し、各人の責任感の醸成を図っております。事業の中核となる受託エンジニアリングコンサルティングビジネスだけでなく、プロダクツサービスビジネスにおいても品質維持を着実に実行します。
② 多様性のある優秀な人才の確保・育成・定着
当社グループの価値創造の源泉は個々の人才にあります。企業としてのありたい姿に共鳴し、企業理念に共感する人才の採用に注力しております。建築構造設計から始まり、対象分野が拡大したエンジニアリングコンサルティングビジネスでは、顧客のニーズを聞き出すコンサルティングコミュニケーション能力を重視し、それぞれの技術分野と情報技術の習得を目指します。
この一年、採用サイトを更新し、より多くの候補者に関心をもってもらえるようになりました。キャリア採用(中途採用)においては、当社グループで働くことの愉しさを訴求し、単に給与の厚遇だけでない価値が理解されるような努力をしております。当社の勤務形態のユニークさに共鳴する候補者との出会いを大切にしております。
ジェンダーの区別は一切設けず、また特に日本に留学している外国籍学生などにも、アピールする説明会を何度も開催しております。2025年6月期は新卒採用23名、キャリア採用10名を得ており、2026年6月期は現在39名の新卒内定者が確定しております。
持株会社の傘下の各社では、それぞれの事業内容の多様化に応じて技術力だけでない、人才の獲得を目指しております。顧客のニーズを理解できるコミュニケーションに秀でた営業力、多数のお客様に訴求するためのマーケティング力や企画力などに優れた候補者との出会いも重視しております。
人才の定着を図るために、株式会社KKEスマイルサポートや熊本に拠点を置く株式会社PARA-SOLもあります。これらの組織は、様々な事由(育児、介護、配偶者の転勤等)に応じて、人才が自ら働き方を自由に設計できるように、多様な働き方の選択肢を提供しております。
社内でも若手、中堅にそれぞれの研修の機会があります。何よりも、素晴らしいお客様と出会い、その実践を通して所員は成長します。成長が促されるようなお客様との仕事をいかに創り上げていくか、経営も、営業も現場のマネジャーも真摯に考えております。当社には、MVA(Mission,Vision,Action)や目標管理制度(MBO)などの評価制度が確立し、年功序列でない、適材適所の人才育成が図られております。
③ 既存エンジニアリングコンサルティングビジネスのさらなる成長
当社グループでは、創業以来長きにわたり、エンジニアリングコンサルティングとプロダクツサービスを通じて、工学知の蓄積と多様な解決策の提案による付加価値を顧客に提供してまいりました。エンジニアリングコンサルティングにおいては、顧客ニーズの変化や技術変動のなかで、今後も高い利益性を維持しつつ、真に顧客ニーズに応える新しい解決策を生み出し続ける必要があります。新しいエンジニアリングコンサルティングサービスの立ち上げ、既存ビジネスの付加価値向上にスピード感を持って取り組むため、これまで以上に事業部門間連携を強化し、活動を進めてまいります。また営業部門においても、既存の顧客からの受注は大切にしながらも、新しい顧客開拓を積極的に進める必要があると考えております。
④ 今後10年の成長を担う新規事業の開発・開拓
当社グループでは、以前から社内発の新規ビジネスの立ち上げに積極的に取り組んでおります。特に大学・研究機関とは長期的な関係を構築しており、最近では東京大学の社会連携講座を通じて、粉体シミュレーションのiGRAFや水位予測ソリューションRiverCastといったサービスが誕生しました。また、海外の有用サービスの国内展開にも継続的に取り組んできました。近年は、Twilio Inc.、NavVis GmbH、RemoteLock,Inc.といった海外スタートアップ企業のサービスの国内展開を進め、これらの新規ビジネスの成長がここ数年の当社グループの成長を大きくけん引しております。今後も各社との関係を強化しつつ、さらなる成長に取り組んでまいります。
一方、これらの成果に安住することなく、今後10年の成長を担う柱となる事業の育成も重要課題です。最近では、ポルトガルのAllbesmart LDAやドイツのSimScale GmbHとの新たな協業を進めております。また、社内のビジネスシーズを発掘するための研究開発投資(未来投資)に力を入れており、有望なシーズは事業開発部門に新規ビジネスチームを立ち上げ、事業化を加速させています。こうしたシーズが次世代における当社グループの中核となるようなビジネスに発展するよう、事業開発部門や営業部門の連携を強化し、新規事業の育成を進めてまいります。
このように、新しい価値提供に向けてチャレンジする場を設定し、そこで活躍が期待できる人才がいかに参画するかが大切であると考えております。
(1)当社グループの基本的な考え方
当社グループは、社会と共に目指す未来像としてソート(Thought)『Innovating for a Wise Future』を掲げております。これは、「工学知」をベースにした有益な技術を社会に普及させることで、より賢慮にみちた未来社会を創出していきたいという想いを込めております。多様な人才と共に「知」をつなぎ合わせ、社会を良くするためには何が必要かを考え抜き、様々なステークホルダーと共にイノベーションを目指して挑戦し続けます。あくまでも人間主体に考察し共創される賢慮にみちた未来社会こそが、私たちの理想とするサステナブルな社会です。
賢慮にみちた未来社会を実現するためには、当社グループが提供するエンジニアリングコンサルティングの成果が多くのお客様に採用され活用されることが重要であり、「知」を生み出す人才こそがその源泉と考えております。当社グループでは従業員ではなく「所員」、人材でも人財でもなく「人才」という言葉(漢字)を使っております。所員が成長し、その才能を発揮し、成果がしっかりと社会に役立っているかが重要な観点だからです。
(2)ガバナンス体制とリスク管理
サステナブルに成長するために認識すべきリスク及び機会を識別し、評価し、マネジメントするためのガバナンス体制とプロセスに関しては、当社のコーポレート・ガバナンス体制と同様となります。当社のコーポレート・ガバナンスの状況は「
(3)人才育成方針
人を大切にする組織
「社会のいかなる問題にも対処できるよう、総合的なバラエティに富んだ専門家を集めた工学を生業とした組織を作りたい」という創業者の志のもと、当社グループは創業時より多様な人才の必要性を認識し、人を大切にする経営を実践しております。多様な人才を採用し、その成長を支援し、良い仕事ができる場と環境を提供することで、所員一人ひとりがより良い社会の実現に貢献することが当社グループの経営方針です。
KKE WAY「個のありかた」
当社グループは、所員一人ひとりに対してプロフェッショナルであることを要望しております。当社グループが考えるプロフェッショナルの特性とは「強さ」「深さ」「幅」の3つです。「強さ」とは所員一人ひとりが主体的に信念をもって行動すること、「深さ」とは愚直に取り組み失敗さえも糧にしておごらず精進を続けること、「幅」とは社内外の人と協働し、ネットワークを広げ自分の専門以外の知識やスキルの習得にもチャレンジすることです。当社グループではこれをKKE WAYの中で「個のありかた」として定義しております。
「らしさ」と自主性を両立する育成支援
当社グループは、企業理念から各個人の自己実現のための目標までを結びつけることができる環境や制度を整えるとともに、個人の裁量を重視した成長支援を方針としております。具体的には、以下のとおりです。
1.会社のありようについて日々経営トップからメッセージが発信され、組織文化の醸成を図ります。
2.各部門は、会社の方針に基づき、毎年自部門のミッションの見直しを行います。
3.そのミッションを達成するためにどのような組織であるべきかを考え、現状とのギャップを認識し、今後の活動方針を4つの定性軸(人才育成、組織風土向上、品質向上、付加価値向上)で計画します。
4.これらの各部門のミッションや活動方針、また実際の取り組み状況の振返りは、年3回行われるレビュー会議や年1回行われる定性評価会で全所員に共有されます。他部門の状況を把握する機会であるとともに、発表者はフィードバックを受ける機会でもあり、互いに学び合う機会となっております。
5.各部門には教育担当者を設置し、各部門の活動方針に基づいた教育計画を策定します。
6.各所員は、所属する部門の教育方針に基づき自らの目標を設定しますが、将来のキャリアを見据えて、自分の専門領域以外の知識やスキルの習得を目標に含めることも可能で、個人の裁量が重視されております。
多様性(採用方針)
多様な人才を確保するために採用に特化した専門組織を置いております。新卒採用、外国籍採用、キャリア採用の各ターゲットに応じたチームを作り、それぞれが相互に連携して採用活動を行っております。また、各子会社でもそれぞれのミッションに基づいて人才を採用し、働き方も含めたグループとしての多様性を追求しております。
|
|
|
|
2021年 6月期 |
2022年 6月期 |
2023年 6月期 |
2024年 6月期 |
2025年 6月期 |
|
所員数(名) |
|
|
607 |
621 |
642 |
644 |
639 |
|
|
性別 |
男性 |
437 |
457 |
471 |
475 |
469 |
|
|
|
|
72.0% |
73.6% |
73.4% |
73.8% |
73.4% |
|
|
|
女性 |
170 |
164 |
171 |
169 |
170 |
|
|
|
|
28.0% |
26.4% |
26.6% |
26.2% |
26.6% |
|
|
国籍 |
日本 |
568 |
587 |
602 |
598 |
588 |
|
|
|
|
93.6% |
94.5% |
93.8% |
92.9% |
92.0% |
|
|
|
日本以外 |
39 |
34 |
40 |
46 |
51 |
|
|
|
|
6.4% |
5.5% |
6.2% |
7.1% |
8.0% |
|
|
採用区分 |
新卒 |
489 |
495 |
511 |
516 |
515 |
|
|
|
|
80.6% |
79.7% |
79.6% |
80.1% |
80.6% |
|
|
|
キャリア |
118 |
126 |
131 |
128 |
124 |
|
|
|
|
19.4% |
20.3% |
20.4% |
19.9% |
19.4% |
|
管理職(名) |
|
|
85 |
92 |
98 |
98 |
87 |
|
|
性別 |
男性 |
76 |
82 |
88 |
87 |
74 |
|
|
|
|
89.4% |
89.1% |
89.8% |
88.8% |
85.1% |
|
|
|
女性 |
9 |
10 |
10 |
11 |
13 |
|
|
|
|
10.6% |
10.9% |
10.2% |
11.2% |
14.9% |
|
|
国籍 |
日本 |
83 |
91 |
96 |
97 |
86 |
|
|
|
|
97.6% |
98.9% |
98.0% |
99.0% |
98.9% |
|
|
|
日本以外 |
2 |
1 |
2 |
1 |
1 |
|
|
|
|
2.4% |
1.1% |
2.0% |
1.0% |
1.1% |
|
|
採用区分 |
新卒 |
68 |
76 |
78 |
73 |
69 |
|
|
|
|
80.0% |
82.6% |
79.6% |
74.5% |
79.3% |
|
|
|
キャリア |
17 |
16 |
20 |
25 |
18 |
|
|
|
|
20.0% |
17.4% |
20.4% |
25.5% |
20.7% |
|
採用数(名) |
|
|
28 |
55 |
56 |
41 |
33 |
|
|
性別 |
男性 |
20 |
45 |
43 |
24 |
23 |
|
|
|
|
71.4% |
81.8% |
76.8% |
58.5% |
69.7% |
|
|
|
女性 |
8 |
10 |
13 |
17 |
10 |
|
|
|
|
28.6% |
18.2% |
23.2% |
41.5% |
30.3% |
|
|
国籍 |
日本 |
25 |
50 |
44 |
31 |
26 |
|
|
|
|
89.3% |
90.9% |
78.6% |
75.6% |
78.8% |
|
|
|
日本以外 |
3 |
5 |
12 |
10 |
7 |
|
|
|
|
10.7% |
9.1% |
21.4% |
24.4% |
21.2% |
|
|
採用区分 |
新卒 |
22 |
38 |
43 |
33 |
23 |
|
|
|
|
78.6% |
69.1% |
76.8% |
80.5% |
69.7% |
|
|
|
キャリア |
6 |
17 |
13 |
8 |
10 |
|
|
|
|
21.4% |
30.9% |
23.2% |
19.5% |
30.3% |
(注)集計対象は株式会社構造計画研究所であります。
(4)社内環境整備方針
当社グループは、所員一人ひとりが能力を発揮し、自己実現のために利用する場として存在しております。この場は、制度の構築・運用だけではなく、所員同士の交流によっても支えられております。所員同士の働きかけにより、互いに刺激し合いながら成長する活き活きとした「場」が作られ、「場」に触発されて「個」が高まり続ける。このような循環を促す場作りを次のとおり実践しております。
① 育成
a. 個人の裁量を重視した教育制度
セミナー受講、書籍購入、資格取得など、各所員の成長に必要な費用を会社が負担します。個人が希望し、部門長が必要と判断すれば、直接業務に関係のないセミナー・研修についても受講することが可能です。特定の資格取得者にはお祝い金も支給しております。また、若手所員を中心に自然発生的に多くの勉強会が開催されているのも特徴的です。業務時間外や土日を含めて施設を自由に使用することができるため、部門を越えた仲間が集い様々な勉強会が開催されております。
(注)集計対象は株式会社構造計画研究所であります。
b. 大学・研究機関・パートナーとの連携による研鑽
国内外の多様な組織で経験を積める機会としては、投資先の海外パートナー企業や官庁への出向、大学との社会連携講座の設置や共同研究、学会発表・論文執筆(国内外)・雑誌への寄稿・出版・講師活動等の産学連携活動があります。その他にも、様々な見識を持つ社外の人々と交わる社外研修へ次世代リーダー候補を継続的に派遣し、次世代リーダー候補がリーダーシップを学び、社外の幅広い人脈・ネットワークを形成する機会を提供しております。
c. 服部賞
創業者の遺志を受け継ぎ、所員の向学心を涵養し技術向上心を高めるために、学術的又は業務上著しい成果をあげた所員に対して表彰を行っております。
② 評価
a. MBO
各所員が、期初に自身の想いをベースにした業務目標、行動目標、スキル目標を設定し、年間を通してその達成度合いを、マネージャと共に確認します。MBOで設定した項目の達成度は賞与や給与査定に反映されます。MBOでは、部門の教育計画と連動させた目標や、業務成果・組織貢献を実現させるための要となる技術・知識の研鑽についての目標を、自らの裁量で設定します。
b. MVA
代表執行役及び取締役を含む役員、部門長、上級技術者約70名を対象に、MVA(Mission、Vision、Action)を毎年設定し、個人の短期的・長期的目標やその達成に向けた取り組みが全社に向けて公開されます。期末には全所員に公開する形での審査会が行われ、個人の活動や達成度を加味し、社外取締役も含む取締役・執行役により個々人の評価が決定されます。
③ キャリア形成
a. 自律分散協調型の人才活用
当社グループは「働きやすさ」と「働きがい」のある場の実現に向けて、それぞれの人才の個性を活かした人事制度の構築に取り組んでおります。持株会社体制移行後第1期目となる2025年6月期は、グループの成長をけん引する株式会社構造計画研究所、多様な働く場を提供する株式会社KKEスマイルサポート、地方での豊かな暮らしを実現するために熊本に拠点を置く株式会社PARA-SOLが、それぞれのミッションに基づきながらグループ会社間での連携を強化してまいりました。株式会社構造計画研究所は、メンバーシップ型雇用に基づく新たな挑戦と多様な経験による自律的な成長のさらなる促進に向けて嘱託制度を廃止しました。連結子会社のうち、株式会社KKEスマイルサポートはジョブ型雇用に基づき、リモートワークも取り入れ、業務が限定的な職種や時間・場所など制限がある場合でも働くことができる場を提供しております。これに伴い2025年7月1日に、株式会社構造計画研究所の嘱託所員24名が、株式会社KKEスマイルサポートに転籍しました。
b. 定年制の廃止
若手だけでなくシニアの活躍の場を広げるために、2019年から定年制を廃止しております。年度末ごとに60歳に到達する所員を対象に、今後の働き方を確認するための審査を等級に応じて行っております。
c. 異動希望調査
年に一度、部門横断的な異動を行っております。会社としての戦略的な異動とは別に、所員に対して異動希望調査を行い、所員自身の希望をもとにした異動も行っております。2025年6月期の異動実績(異動を希望した所員に対する異動した所員の割合)は、59.3%です(集計対象は株式会社構造計画研究所)。
d. 複線型のキャリアパス
リーダーとしてチームをまとめるマネージャと専門性や技術力の高さで会社に貢献するプロフェッショナルの2つの道が用意されております。マネージャとプロフェッショナルの道は、相互に行き来が可能で、状況に応じて役割や業務内容を変えながら自分自身を成長させていくキャリアストレッチを図っております。
e. 昇格試験
毎年一度、部内での審査の後に全社審査として5日間かけて論文・筆記試験・複数名の役員による面接審査を行い、昇格を希望する所員が役割に見合った成果を出せているか、将来のビジョンが描けているか等を審査したうえで、昇格の合否が判定されます。なお、2025年6月期の所員に占める昇格者の割合は7.7%です(集計対象は株式会社構造計画研究所)。
④ 組織文化
a. 全社イベント
当社グループは、多様なバックグラウンドを持った多様な人才のもと、多様な事業を展開している組織です。そのため、グループのありようについて日々経営トップからメッセージを発信することで、多様な組織でありつつも組織文化を根付かせ、共通の価値観、共通の目標を持つことの意義と重要性を理解してもらうよう努めております。また、全員が一堂に会する機会を意図的に多く設けることで、所員同士の交流活性化を図っております。2024年6月期から服部正構造計画研究所の創業日である1956年6月6日を創業記念日とし、インフォーマルコミュニケーションを目的とした創業記念イベントを実施しております。2025年6月期のテーマ「仲間を知る」のもと、会社の垣根を越えて全所員がスポーツや文化の様々なイベントを楽しんだ後、全員でバーベキュー大会を行いました。
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開催月 |
イベント |
概要・発信内容 |
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7月 |
定性評価会 |
2024年6月期 定性的取り組みの振返りと、今後の課題の公表 |
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7月 |
社内説明会 |
2024年6月期 賞与支給に関する説明 |
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9月 |
計画発表会 |
各部門のミッション、通期目標、第1四半期振返りの公表 |
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9月 |
プロジェクト表彰式 |
優れたプロジェクトを表彰・全社共有し、讃え、学び合う機会 |
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12月 |
社内説明会 |
2025年6月期半期業績説明・賞与支給に関する説明 |
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12月 |
忘年会 |
忘年会に合わせて講演会の実施 |
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1月 |
年頭挨拶(仕事始め) |
経営トップからの新年の挨拶・抱負 |
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1月 |
レビュー会議 |
各部門の第2四半期振返りと、今後の活動方針の公表 |
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1月 |
服部賞 |
年間を通して最も優れた個人・チームに贈られる表彰 |
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3月 |
社内説明会 |
2025年6月期半期決算説明 |
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4月 |
入社式 |
新入所員の自己紹介 |
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4月 |
レビュー会議 |
各部門の第3四半期振返りと、今後の活動方針の公表 |
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6月 |
創業記念イベント |
インフォーマルコミュニケーションを目的としたイベント |
b. プロジェクト表彰式
年に1回、「プロジェクト表彰式」という所員の交流の場を設けております。これは各部門(営業部門や間接部門を含む)が誇るべきプロジェクトや取り組みを紹介し、お互いに讃え、学び合う機会となっております。最近は学会等で行われるポスターセッション形式で実施し、部門を越えたコミュニケーションと共創の場となっております。
c. エンゲージメント調査
年に一度、エンゲージメント調査を行っております。調査結果は、課題の早期認識、施策の検討等に活用しております。
(注)集計対象は株式会社構造計画研究所です。
d. グループ報発行
会社の垣根を越えたグループ情報の共有とコミュニケーションの活性化を目的に、グループ報を年2回、紙媒体で発行しております。
⑤ 健康経営
a. 健康管理のための環境提供
所員が心身ともに健康で自らの才能を存分に発揮できるよう、様々な福利厚生の充実と環境整備に努めております。定期健康診断や希望者への産業医面談の実施、毎月の勤務管理表提出時の心身の不調に関するヒアリング、非喫煙手当の支給等を行っております。
b. マッサージスペース
所員の健康維持の一環として、社内に2か所のマッサージスペース(健康管理室)を設置し、業務時間内にマッサージ・鍼のサービスを受けることができます。
c. 専用トレーニングルーム
近隣ビルに、所員が積極的に運動を楽しみ、健康増進やリフレッシュ、多様なコミュニケーションを促進させる場として、専用の365日24時間利用可能なトレーニングルーム「ACTiveHUB(略称:アクトハブ)」を設置しております。
d. 朝食サービス
朝の時間を有効活用し、健康でメリハリのある働き方を推進するため、無料の朝食(軽食)の提供を開始いたしました。
⑥ 職場環境
a. 環境改善のためのKPI設定と施策
職場環境の改善に向けて、「一人当たり面積」「利用頻度×人数」「定性アンケート」の3つの観点でKPIを設定し、PDCAサイクルに基づいて施策を検討・実施しております。2025年6月期には、新オフィスの契約により一人当たり面積の格差是正に取り組みました。また、設立約40年を迎えた熊本構造計画研究所では、大規模改修工事を実施し、より良い職場環境を整備いたしました。
b. enカフェ(本所新館)、logiカフェ(本所)
組織を越えた交流、人と人とのつながりを生み出す場、アイディア、発想がひらめくクリエーションの場として社内にプライベートカフェを設けております。憩いの場、お客様との打合せ、懇親会、歓送迎会、同期会、勉強会、社内ミーティング等で活用されております。
c. ライブラリ
業務や勉強、自己研鑽の場としてライブラリを開設しております。MVA報告会で上級役職者から紹介された書籍や、所員からの要望に基づき毎月書籍が追加購入され、各所員はいつでも自由に利用することができます。
d. ラボ
DesignとEngineeringの掛け合わせによる価値創出を夢見て、各所員が担当業務で活用するほか、これまでにない発想から主体的にものづくりに勤しみ、外部のパートナーや学生の方々などと共に自由闊達な試行を重ねるための場としてラボを開設しております。
e. リビングルーム
文化の共創空間として、多目的に使えるオープンスペース「リビングルーム」を開設いたしました。部門や組織を越えた交流を育むほか、当社グループが初めて導入したコンピュータの実物の展示など会社の歴史や文化を発信する展示物を通じて、グループ理念への共感を促しております。お客様を含む様々な社外の方も利用可能で、ステークホルダー間の相互理解・相互作用を促進する場として活用されております。
f. 備品選択
各所員の職務環境の改善・最適化に努めております。仕事で使用するパソコン、所員へ提供されるスマートフォンに加えて、業務中に長時間座る椅子も、各所員が自分の好みに合ったものを選択しております。このような点においても、自主性が尊重されております。
(5)指標及び目標
総付加価値
当社グループでは、営業利益に人件費と福利厚生費(フリンジベネフィット)を加えた指標を総付加価値と定義し、重要な経営指標としております。また労働分配率を重視し、得られた利益を適正に分配し所員のモチベーションを上げることで、持続的な成長を目指しております。総付加価値の成長については、中長期的に8%程度の年間成長を目指しております。
(注)2024年6月期までは2024年7月1日に完全子会社となった株式会社構造計画研究所の状況を、2025年6月期は連結グループの状況を示しております。
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|
2021年 6月期 |
2022年 6月期 |
2023年 6月期 |
2024年 6月期 |
2025年 6月期 |
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平均総年収(万円) |
861 |
876 |
986 |
1,031 |
951 |
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(注)2024年6月期までは2024年7月1日に完全子会社となった株式会社構造計画研究所の状況を、2025年6月期は連結グループの状況を示しております。
その他指標
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2021年 6月期 |
2022年 6月期 |
2023年 6月期 |
2024年 6月期 |
2025年 6月期 |
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離職率 (注)2 |
4.9% |
6.1% |
4.8% |
5.3% |
10.3% |
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|
性別 |
男性 |
4.6% |
5.9% |
4.9% |
4.2% |
8.5% |
|
|
|
女性 |
5.9% |
6.7% |
4.7% |
8.3% |
15.3% |
|
|
国籍 |
日本 |
3.3% |
4.6% |
4.5% |
5.5% |
10.4% |
|
|
|
日本以外 |
28.2% |
32.4% |
10.0% |
2.2% |
9.8% |
|
|
採用区分 |
新卒 |
5.5% |
6.3% |
4.7% |
4.5% |
7.0% |
|
|
|
キャリア |
2.5% |
5.6% |
5.3% |
8.6% |
24.2% |
|
入社1年以内離職率 |
- |
- |
3.6% |
2.4% |
3.0% |
||
|
|
性別 |
男性 |
- |
- |
2.3% |
4.2% |
4.3% |
|
|
|
女性 |
- |
- |
7.7% |
- |
- |
|
|
国籍 |
日本 |
- |
- |
4.5% |
3.2% |
- |
|
|
|
日本以外 |
- |
- |
- |
- |
14.3% |
|
|
採用区分 |
新卒 |
- |
- |
- |
- |
4.3% |
|
|
|
キャリア |
- |
- |
15.4% |
12.5% |
- |
|
入社3年以内離職率 |
13.1% |
14.0% |
16.2% |
10.7% |
10.8% |
||
|
|
性別 |
男性 |
12.1% |
12.5% |
13.3% |
9.2% |
10.0% |
|
|
|
女性 |
15.4% |
18.8% |
25.8% |
15.0% |
12.5% |
|
|
国籍 |
日本 |
9.3% |
7.6% |
9.5% |
8.2% |
9.9% |
|
|
|
日本以外 |
30.4% |
55.6% |
55.0% |
22.2% |
13.8% |
|
|
採用区分 |
新卒 |
14.1% |
16.0% |
17.5% |
11.4% |
10.1% |
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|
キャリア |
9.7% |
6.7% |
12.1% |
8.6% |
12.9% |
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|
|
2021年 6月期 |
2022年 6月期 |
2023年 6月期 |
2024年 6月期 |
2025年 6月期 |
|
有給休暇消化率 |
78.7% |
87.2% |
85.2% |
86.2% |
84.1% |
||
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|
|
|
2021年 6月期 |
2022年 6月期 |
2023年 6月期 |
2024年 6月期 |
2025年 6月期 |
|
|
58.8% |
37.5% |
76.9% |
81.8% |
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79 |
85 |
85 |
120 |
|
||
(注)1.集計対象は株式会社構造計画研究所であります。
2.2025年6月期はホールディングス体制への移行に伴い、持続的成長の基盤強化を目的としたグループ内での人才の最適配置を実施いたしました。当該グループ内異動者が離職者数に含まれているため、離職率を押し上げる結果となっております。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において当社グループが重要と判断したものであります。
当社グループは、物理的、経済的もしくは信用上の損失又は不利益を生じさせる可能性のある事象をリスクと認識し、組織全体として適切に管理する仕組み・プロセスを構築しています。
当社のリスクマネジメント体制については、「第4 提出会社の状況 4.コーポレート・ガバナンスの状況等」に記載のとおりであります。
(1)信用上の損失又は不利益を生じさせる可能性のある事象
① 大型プロジェクトの不良化リスク
当社グループの売上の約60%を占めるエンジニアリングコンサルティング事業は多くが請負契約での受注であり、主にシステム開発、構造設計業務とコンサルティング業務から構成されています。そのため、契約内容やプロジェクト管理の不備によって作業工数の増大や納品物の品質低下が発生した場合、大幅な採算悪化や顧客への損害賠償、及び機会損失等が発生し、当社グループの業績及び事業展開に著しく大きな影響を及ぼす可能性があります。特に影響が大きいシステム開発分野と構造設計業務分野に対しては専門的な品質保証部門であるPM品質保証センターと構造品質保証センターを設置し、各組織に統括責任者を配置することで、業務品質のチェック体制を確保しております。PM品質保証センターはシステム開発関連分野の品質・生産性向上に注力し、構造品質保証センターは構造物や建築物のような長期的視点での品質確保が問われる構造設計業務について品質のチェックを行っております。これらを含め、当社グループでは各事業においてそれぞれの最終成果品のみならず、提案営業段階から最終工程までのプロセスごとの品質確保及び向上に取り組み、全社的な品質マネジメントサイクルを推進しております。特に近年ではプロジェクト受注前における品質リスク管理にも注力しており、更なる品質強化に努めております。更に、プロジェクト管理技術の向上や技術者教育、個人情報を含む機密情報保護の重要性を十分に認識し、社内管理体制を維持強化するとともに、当社グループ所員への教育を繰り返し徹底しております。
② 情報セキュリティに関するリスク
当社グループは知的活動を行う企業として業務遂行にあたり必要な資源としてお客様の機密情報等の情報資産を保有しております。コンピュータウイルスによる感染やサイバー攻撃等の外部からの不正侵入、自然災害の発生等による情報資産の多大な情報漏洩、紛失、破壊及び改ざん等が発生した場合には、当社グループの信用喪失につながり経営成績に影響を及ぼす可能性があります。当社グループ管理下の全ての活動に係る情報資産を保護の対象とし、技術的・教育的・物理的な側面から対策を講じ、情報管理及び情報セキュリティの強化・徹底を図っております。
(2)経済的損失の可能性のある事象
① 経営成績の季節的変動による資金繰りのリスク
当社グループは、多くの顧客が決算期を迎える3月末から6月末に成果品の引渡しが集中する傾向があり、またこの時期は比較的規模の大きなプロジェクトの完了時期に相当するため、当社グループの売上高及び請求は、上半期に比較して下半期の割合が高くなる傾向にあります。従って、経済状況の悪化等により銀行から借入れが困難になった場合、上半期において資金繰りが悪化するリスクがあります。
当社グループでは、季節的な売上変動による資金繰りのリスクを低減するため、エンジニアリングコンサルティング事業で大型・長期プロジェクトの契約内容を詳細に検討し売上高・利益計上のタイミング(収益認識の単位)をより適切に明確化するほか、プロダクツサービス事業でサブスクリプション型のビジネスモデル導入を拡大するなど、売上時期の分散を進めております。
② 為替変動リスク
日本と欧米との金融政策の方向性の違いから生じる金利差等による円安傾向が継続した場合、当社グループが出資している海外パートナーやプロダクツサービス事業で取り扱っている海外プロダクツの仕入及びロイヤリティ支払いが増加する等、各種事業に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、販売価格の改訂、仕入及びロイヤリティの一括前払いによる為替レート固定をはじめとして、為替変動リスクの低減に取り組んでまいりました。今後も状況に応じて柔軟に施策を講じるとともに、大口の投資案件や仕入及びロイヤリティの一括支払い等については機関決定後速やかに外貨に変換することで、為替変動リスクの低減に努めてまいります。
③ 人才に関するリスク
当社グループの企業成長の原動力は人才であると考えております。近年の労働市場全体の流動性の高まりや当社グループの就業環境の悪化等により優秀な人才の流出が発生した場合、及び所員が心身の健康を害し働けなくなった場合に、当社グループの中長期的な成長や経営成績等に大きな影響を及ぼす可能性があります。また、採用や人才育成の質が低下し人才の質が確保できなくなった場合には、提供するサービスの質の低下をもたらし、競争力の低下や社会的信用、当社グループの財政状態及び経営成績に重大な影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、報酬面の改善、社会貢献度の高い業務を通じた活躍の機会や主体的な学びの場の提供、人才育成制度及び福利厚生の充実により、個々人の自己実現の場として働きがいのある環境の整備を進めております。また、参画したばかりの所員が組織に慣れ早期に活躍できるようオンボーディング施策を実施しており、特にキャリア入社所員や外国籍所員に対しては力を入れて取り組んでおります。採用活動においては、良質な母集団形成に資する施策及び所員や役員とのコミュニケーションにより当社グループとのマッチングを見極める面談・面接を実施し、当社グループに参画する人才の質の確保を図っております。健康面においては、産業医に健康相談できる体制や身体のコンディションを整えるマッサージが気軽に受けられる体制の整備、当社グループ専用のトレーニングジムの設置・運営、セクシャルハラスメントやパワーハラスメント等労務相談窓口の設置等心身ともに健康的に働くための支援を行っております。また、オフィス内に学びの場としてライブラリや所員の交流の場としてカフェの設置等の物理的な就業環境の改善にも取り組んでおります。このような取り組みにより人才の定着・質の確保及び人才が健康的で持続的に働ける環境作りに努めております。
なお、当社グループの人才育成方針及び具体的な施策については「第2 事業の状況 2.サステナビリティに関する考え方及び取組」に記載しております。
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
(1)経営成績
当社は、2024年7月1日に単独株式移転方式により、株式会社構造計画研究所の完全親会社として設立されたため、前年同期との比較は行っておりません。
(単位:百万円)
|
|
当連結会計年度 |
|
連結受注高 |
20,880 |
|
連結売上高 |
20,137 |
|
連結売上総利益 |
10,514 |
|
連結営業利益 |
3,073 |
|
連結経常利益 |
3,046 |
|
税金等調整前当期純利益 |
3,015 |
|
親会社株主に帰属する当期純利益 |
2,048 |
|
連結受注残高 |
8,587 |
(注)連結売上高に含まれる株式会社構造計画研究所の売上高 19,634百万円
当連結会計年度においては、前事業年度から繰り越された受注残高に加え、エンジニアリングコンサルティングの着実な進捗、及びプロダクツサービスにおけるクラウドサービス提供型ビジネスの成長に支えられ、売上高及び利益は順調に推移し、業績予想を上回る結果となりました。またクラウドサービス提供型ビジネスのサブスクリプション収入の成長は、一人当たりの生産性向上に寄与し、営業利益率は15.3%となりました。
なお、当連結会計年度末における受注残高は、85億87百万円を確保しております。
(参考)株式会社構造計画研究所の2023年7月1日~2024年6月30日の経営成績
(単位:百万円)
|
受注高 |
18,561 |
|
売上高 |
17,942 |
|
売上総利益 |
9,322 |
|
営業利益 |
2,372 |
|
経常利益 |
2,534 |
|
税引前当期純利益 |
2,534 |
|
当期純利益 |
1,949 |
|
受注残高 |
7,815 |
当連結会計年度の報告セグメント別の状況は、次のとおりであります。
(単位:百万円)
|
|
エンジニアリング コンサルティング |
プロダクツサービス |
その他 |
|
連結受注高 |
12,752 |
7,575 |
553 |
|
連結売上高 |
11,969 |
7,597 |
570 |
|
連結売上総利益 |
7,281 |
3,047 |
185 |
|
連結売上総利益率(%) |
60.8 |
40.1 |
32.5 |
|
連結受注残高 |
6,306 |
2,225 |
55 |
(注)「エンジニアリングコンサルティング」、「プロダクツサービス」の区分には株式会社構造計画研究所が、「その他」の区分には株式会社構造計画研究所を除く他の会社が含まれています。
(エンジニアリングコンサルティング)
当連結会計年度においては、前事業年度末から繰り越された案件及び当連結会計年度に獲得した受注案件を着実に遂行したことで、売上高及び利益は堅調に推移しました。品質の確保に留意することで、引き続き高い利益率を維持することができました。
また、受注が順調に推移しており、翌連結会計年度に向けて受注残高は63億6百万円を確保しております。
(プロダクツサービス)
クラウドサービス提供型ビジネスが計画通り30%を超える成長率で進捗し、プロダクツサービスの売上成長をけん引するとともに、利益率の改善に寄与しました。具体的には、クラウド型入退室管理システムRemoteLOCKは、様々なパートナーと連携することで顧客や市場に適した多様な提案を行い、宿泊市場や地方自治体等への導入が進みました。また、現場3D化の加速を支援するNavVisは、パートナーと連携した計測サービスの提供を加速することでお客様のクラウド利用が拡大しサブスクリプション収入が増加しました。
(参考)株式会社構造計画研究所の2023年7月1日~2024年6月30日のセグメント別の状況
(単位:百万円)
|
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エンジニアリング コンサルティング |
プロダクツサービス |
その他 |
|
受注高 |
11,674 |
6,887 |
- |
|
売上高 |
11,419 |
6,522 |
- |
|
売上総利益 |
6,846 |
2,475 |
- |
|
売上総利益率(%) |
60.0 |
37.9 |
- |
|
受注残高 |
5,524 |
2,291 |
- |
当社グループは、高付加価値なサービスを提供し続けるために、より優れた人才が集い、組織として成長していくことが重要であると考えており、利益の追求に加えて所員への適正な配分を重視しております。当連結会計年度の総付加価値は、計画値112億77百万円に対し、実績値は120億88百万円となりました。加えて、採用市場の競争が激化する中、採用の訴求力向上を図り、2025年4月に新卒採用23名、2025年6月期通年ではキャリア採用10名の優秀な人才が新たに株式会社構造計画研究所に参画いたしました。労働環境に関しましても、フロアの拡充、所員交流や対外イベントの実施を可能にする場の創設など、所員が前向きに業務に取り組み、意欲的に挑戦できる環境を整備しております。また、今後のさらなる価値向上を目指すため、新規事業の立ち上げ支援も継続して取り組んでおります。研究開発投資(未来投資)の予算を昨年度より増額したほか、海外ビジネスを推進する組織を新設し、若手や外国籍所員の多様な視点を活かした新たな事業機会の創出に取り組んでおります。さらに、現場3D化を加速する「NavVis」の開発元であるNavVis GmbHに750万ユーロの追加出資を行いました。日本市場の基盤構築を目指すとともに、パートナー企業との協力体制を強化し、さらなる技術発展やグローバル展開に繋げていく所存です。
当連結会計年度の生産、受注及び販売の実績は、以下のとおりであります。
a.生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
生産高(千円) |
|
エンジニアリングコンサルティング |
4,415,690 |
|
プロダクツサービス |
4,410,916 |
|
その他 |
576,753 |
|
合計 |
9,403,360 |
(注)1.金額は総製造費用より他勘定振替高を控除した金額によっております。
2.当社は、2024年7月1日に単独株式移転により、株式会社構造計画研究所の完全親会社として設立されたため、前年同期との比較は行っておりません。
b.受注実績
当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
受注高 (千円) |
受注残高 (千円) |
|
エンジニアリングコンサルティング |
12,752,131 |
6,306,523 |
|
プロダクツサービス |
7,575,156 |
2,225,452 |
|
その他 |
553,054 |
55,667 |
|
合計 |
20,880,341 |
8,587,643 |
(注)1.金額は販売価額によっております。
2.当社は、2024年7月1日に単独株式移転により、株式会社構造計画研究所の完全親会社として設立されたため、前年同期との比較は行っておりません。
c.販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
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セグメントの名称 |
販売高(千円) |
|
エンジニアリングコンサルティング |
11,969,831 |
|
プロダクツサービス |
7,597,095 |
|
その他 |
570,447 |
|
合計 |
20,137,374 |
(注)当社は、2024年7月1日に単独株式移転により、株式会社構造計画研究所の完全親会社として設立されたため、前年同期との比較は行っておりません。
(2)財政状態
(資産)
流動資産は、94億44百万円となりました。主な内訳は、現金及び預金が42億42百万円、売掛金が23億62百万円であります。
固定資産は、126億23百万円となりました。主な内訳は、投資有価証券が42億39百万円、土地が32億35百万円であります。
この結果、総資産は、220億67百万円となりました。
(負債)
流動負債は、68億33百万円となりました。主な内訳は、未払費用が23億2百万円、前受金が16億53百万円であります。
固定負債は、50億65百万円となりました。主な内訳は、長期借入金が27億98百万円、退職給付に係る負債が17億23百万円であります。
この結果、負債合計は、118億98百万円となりました。
(純資産)
純資産合計は、101億68百万円となりました。主に利益剰余金が78億19百万円となっております。
(3)キャッシュ・フロー
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、42億42百万円となりました。当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は、以下のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果得られた資金は33億20百万円となりました。
これは、主に税金等調整前当期純利益30億15百万円、退職給付に係る負債の減少額4億35百万円、減価償却費3億75百万円を反映したものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は22億73百万円となりました。
これは、主に投資有価証券の取得による支出14億35百万円、有形固定資産の取得による支出7億35百万円を反映したものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果得られた資金は57百万円となりました。
これは、主に資金の流出では、長期借入金の返済による支出10億50百万円、自己株式の取得による支出7億49百万円、配当金の支払額8億72百万円、資金の流入では、長期借入れによる収入24億円、自己株式の処分による収入3億39百万円を反映したものであります。
(参考)キャッシュ・フロー関連指標の推移
|
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2025年6月期 |
|
自己資本比率(%) |
45.7 |
|
時価ベースの自己資本比率(%) |
118.8 |
|
キャッシュ・フロー対有利子負債比率(年) |
1.0 |
|
インタレスト・カバレッジ・レシオ(倍) |
94.3 |
自己資本比率 : 自己資本/総資産
時価ベースの自己資本比率 : 株式時価総額/総資産
キャッシュ・フロー対有利子負債比率 : 有利子負債/キャッシュ・フロー
インタレスト・カバレッジ・レシオ : キャッシュ・フロー/利払い
(注)1.株式時価総額は、自己株式を除く発行済株式数をベースに計算しております。
2.キャッシュ・フローは、営業キャッシュ・フローを利用しております。
3.有利子負債は、連結貸借対照表に計上されている負債のうち、利子を支払っている全ての負債を対象としております。
(4)資本の財源及び資金の流動性
当社グループは、設備投資計画・研究開発計画に基づいて、必要な資金を社債発行及び銀行借入により調達しております。
社債及び借入金は、設備投資・研究開発投資のための資金と短期的な運転資金の調達を目的としたものであります。短期借入金は、年次・月次の資金計画により調達しておりますが、1年以内の短期間で返済しております。また、長期借入金は固定金利で調達し、金利変動リスクに備えております。
なお、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は42億42百万円であり、将来の資金需要に対し適正な水準であると認識しております。
(5)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標
中長期的な成長を実現していく上で、当社グループが重視する経営指標は、営業利益に人件費と福利厚生費を加えた総付加価値であります。当社グループの付加価値の源泉が人才であることから、今後もより良い人才を確保し育成していくことこそが、当社グループを持続的に発展させていくために必要だと考えております。その方針のもと、役員の業績連動型報酬制度については総付加価値を基準に設計を行っております。
なお、当連結会計年度における業績連動型報酬に係る指標の目標は112億77百万円で、実績は120億88百万円でありました。
(6)重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この財務諸表の作成にあたり、必要と思われる見積りは、合理的な基準に基づいて判断しております。
なお、連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。
当社グループは、事業の多様化に即した自立的・機動的な意思決定と事業運営、並びに人を中心とする経営資源の適切な配分を行うことにより持続的な成長を目指すため、2024年7月1日付けで株式移転により株式会社構造計画研究所ホールディングスを設立し、持株会社体制への移行を行いました。それに伴い、今後の当社グループの管理・運営を円滑に進めるため、会社分割を行い、株式会社構造計画研究所の資産等を当社に承継しました。詳細については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表 注記事項(企業結合等関係)」に記載のとおりであります。
また、持株会社体制への移行に伴い、当社は、連結子会社である株式会社構造計画研究所との間で、経営指導、業務受託サービス提供及び建物等の貸付を行うことについて、それぞれ契約を締結しております。
当社グループの研究開発活動は、社会の複雑化する課題やお客様のニーズに応えるため、技術開発とその社会実装を一体的に推進することを目的としています。これらの活動は、中長期的な成長を支える基盤技術への投資と、新規事業の立ち上げや迅速な成長を目的とした重点的な投資の両面から構成されています。さらに、産学連携や外部パートナー企業との協業を通じて、研究開発の加速と実用化を図っています。
当連結会計年度において当社グループが支出した研究開発費の総額は
セグメントごとの研究開発活動を示すと次のとおりであります。
(1)エンジニアリングコンサルティング
エンジニアリングコンサルティングでは、次世代無線通信技術の基礎研究から社会実装に至るまでを一貫して支援するプラットフォームの開発を継続的に推進しております。前期より販売を開始した実験・研究用オープンソース5G基地局「OAIBOX」並びに複数の産学官連携プロジェクトを活用し、次世代通信技術の評価・検証環境の事業化を進めております。また、東京大学社会連携研究部門「建築・都市サイバー・フィジカル・アーキテクチャ学」における研究成果を基に技術実証を進めている設備系統デジタルツインについては、プロトタイプ版が完成し外部パートナー企業と検証を進めております。得られた成果をプロダクトに反映し、事業化を加速してまいります。
当連結会計年度の研究開発費の金額は
(2)プロダクツサービス
プロダクツサービスでは、これまで培ってきた画像計測に関する知見を発展させた新たな振動計測技術「圧縮センシングDIC」を高知工科大学と共同で開発しました。本成果は国内の学会において表彰されるだけでなく特許も取得しており今後幅広い分野への貢献が期待されます。また、粉体・流体混相流解析ソフトウエア「iGRAF」のGUI開発を進め、ユーザビリティの向上を図りました。東京大学との社会連携講座において、粉体プロセスのデジタルツイン構築や粉体物性データベースの整備に取り組み、シミュレーション精度の向上を目指しています。
当連結会計年度の研究開発費の金額は