第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において、当社が判断したものであります。

 

(1)経営方針

 当社は、「私たちタウンズは、独自の体外診断用医薬品により、人々の生活に安心と潤いを届けます。そのために、技術・知識を集積し、新たな製品の開発、品質改善に取り組み続けます。」を経営理念としており、より良い製品を世界に向けて発信し続けることを方針としております。

 

(2)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 当社は、体外診断用医薬品の競争力を強化し、業績を向上させていくことが重要であると認識していることから、中期経営計画策定にあたり重視している経営指標は、売上高、営業利益、当期純利益、営業利益率、EBITDA及びEBITDAマージンとしております。

 

(3)経営戦略等

 当社は、「診断技術で、安心な毎日を。」をコーポレートスローガンとして、世界の安心な毎日を創るために、感染症POCT※1分野において、創業以来30年以上の長きにわたり、多くの製品を開発・販売し、世界に向けて高品質な製品の提供を目指しております。2020年10月に新型コロナウイルス抗原検査キットの製造販売承認を得て「イムノエース®SARS-CoV-2」の販売を開始するなど、現状においても国内のPOCT市場を牽引していると自負しております。今後に向けては、新たな事業の柱を築き更なる高付加価値企業となるべく、以下の戦略を推進しております。

 

① 新たな検査技術の開発

 当社は、既存のイムノクロマト法に加えて、高付加価値な次世代の検査技術の開発に取り組んでおります。

 開発中のD-IA(デジタルイムノアッセイ)※2は、抗原検査キットと同等の簡易な操作性でありながら、PCR検査にも比肩し得る高い精度の検査を、小型かつ安価な装置で迅速に実施できることが最大の特長です。

 ディスク型の装置に検体をセットすれば同時に最大で8検体を検査でき、1名分の検体を最大8項目同時(例えば風邪症状の患者の検体を、新型コロナ、インフルエンザ、アデノウイルス、溶連菌、RSウイルス、ヒトメタニューモウイルスなど複数の呼吸器検査項目を同時に検査することや、性感染症疑いの患者検体を、HIV、梅毒、B型肝炎、C型肝炎など複数項目を同時に検査することを想定)に検査したり、あるいは1項目であれば最大8名分を同時(例えばクリニックの繁忙期や、大量の検査を日常的に実施する検査ラボにおいて、同時に8名分の検査を行うことで検査の効率化・迅速化に貢献)に検査するなど、さまざまな使い方が想定できます。また定性検査のみならず、定量検査も可能です。当社はD-IAにより、POCT検査を質的にも量的にも進化させ、クリニック環境においてラボレベルの検査を簡易に行えるようにすることを目指しています。D-IAの他にも、血中のバイオマーカーを定量的に測定することができる小型血液検査装置や尿中バイオマーカーを簡便に測定できる尿検査システムの開発、新たな抗体取得技術による高性能な抗体の創出、体内の免疫細胞状態を解析するアプローチを用いた診断技術の開発、全ゲノム検査への取り組み等、当社の技術基盤の強化に向けて様々な角度から取り組んでおります。

 

② 慢性疾患領域への進出

 当社は、血中の亜鉛濃度を測定して亜鉛欠乏症の診断を行う「アキュリード®亜鉛」を皮切りに、慢性疾患分野への進出に取り組んでいます。具体的には、免疫プロファイリング※3を活用した血液検体によるがんのコンパニオン診断※4、POCTによるがんのリキッドバイオプシー※5検査、簡易尿検査システムによる腎疾患検査、イムノクロマト法による歯周病検査キット等、様々な製品の開発を進めています。

 

③ 予防・未病領域の開拓への取り組み

 当社は、予防・未病領域への取り組みとして、低侵襲※6に取得できる検体を用いたホームテストの活用とそこから得られる健康情報の解析や、各医療機関と連携した検体データベースの構築に向けた準備を進めています。それらを活用することで、新たなバイオマーカーの発見や、予防・未病領域向けの新たなPOCTの開発に繋げていきます。

 

④ 海外展開

 当社の海外展開は、短期的には既存製品を取り扱う各地域の代理店網の強化を進めております。中期的には品質を維持しつつコストを抜本的に見直した海外向け仕様品の開発・展開、長期的には新開発の高付加価値製品の投入を行っていきます。

 

⑤ 新工場設立

 当社は、新工場の設立を計画しております。今後の事業成長に向け、既存製品向けの製造ラインの増設に加えて、新製品に対応した製造ラインを設置し、またFactory Automationの推進により人員数の効率化を実現すると共に、品質の安定化を進めます。加えて、広大な敷地を活用して原材料在庫の十分な保管スペースを確保することで、倉庫費や物流費の削減が可能となることや、従来の1拠点のみの生産体制から2拠点体制に移行することで、緊急事態時にも生産ラインを止めることなく事業継続が可能となるBCP面の効果も想定しております。

 

⑥ 知財・戦略投資

 当社は、慢性疾患領域への進出を始めとする事業ドメインの拡大・強化に向けて、10年後のビジョンと現状の技術基盤を比較し、不足している・強化すべき領域を中心に、知財への投資や技術提携先への資本投資を戦略的に行ってまいります。

 

⑦ 戦略人事

 当社は、今後事業領域を拡大して国内外で高い成長を続けていくために必要なのは、それを実現する人財の登用と、最大限能力を発揮してもらうための仕組み、現社員と融和した組織作りだと考え、重要課題の解決に直結する戦略人事を実行してまいります。

 

※1 POCT:Point Of Care Testingの略になります。日本医療検査学会(旧:日本臨床検査自動化学会)POCTガイドラインによると、「臨床現場即時検査」として定義され、被検者の傍らで医療従事者が行う検査であり、検査時間の短縮及び被検者が検査を身近に感ずるという利点を活かし、迅速かつ適切な診療、看護・疾病の予防、健康増進に寄与し、ひいては医療の質、被検者のQOL(Quality of Lifeの略。生活の質の向上)及び満足度の向上に資する検査としています。

当社の製品群であれば、イムノクロマト法を原理とするインフルエンザやSARS-CoV-2などの抗原検査キットが該当しております。

※2 D-IA(デジタルイムノアッセイ):デジタルイムノアッセイ(digital immunoassay)の略称であり造語です。新規検出原理として研究開発を進めている検出プラットフォームの1つです。金コロイド標識抗体を使用し、抗体抗原反応の後、専用ディスク内の反応部位に金コロイド標識抗体と抗原の複合体を捕捉し、その後標識物である金コロイド粒子のみ科学的に遊離させます。遊離させた金コロイドのみ移動させ光学的に検出します。金コロイド標識抗体等の移動は専用ディスクを回転させることにより生じる遠心力を利用しています。従来の金コロイド粒子の検出方法は、イムノクロマト法に代表されるように金コロイド粒子の集積により生じる赤紫色の呈色を検出するものでありますが、D-IAにおいてはレーザーを照射し金コロイド1粒子からそれぞれ生じる散乱光を検出します。1粒子カウントを可能とすることから「デジタル」検出が可能となり、本検出原理名称の由来ともなっています。金コロイド粒子そのものを1粒子カウントすることで、抗原低濃度領域における高感度検出が可能となり、また粒子カウントによる定量検出も可能となります。

※3 免疫プロファイリング:患者血液中のT細胞やB細胞等、細胞性免疫機構に関わる細胞の状態(免疫細胞集団の状態)を指します。患者の病態の進行により、細胞集団の状態は変化します。がんの発生には免疫システムが密接にかかわっていることが示唆されており、免疫チェックポイント阻害剤はがん細胞により抑制されていた免疫システムを抑制状態から解放し再活性化することにより、自己免疫細胞によりがんを治療する方法(免疫療法)として知られています。ただし、がん細胞を攻撃する細胞集団が免疫療法に適した状態でないと、十分な効果が期待できません。そのため、抗がん剤の一種である免疫チェックポイント阻害薬の投与前に免疫プロファイルを測定し、免疫療法に適した状態であるかを事前に知ることは治療効果を予測する上で有用と考えられます。

※4 コンパニオン診断:コンパニオン診断とは、投与される医薬品の効果や副作用を事前に予測するために実施される検査であり、治療前に実施することによりある治療法がその患者に適しているかを事前に確認することができます。患者が有する遺伝的特性や治療時の免疫プロファイルの状態を基に、適切な治療法を選択することができ、より効果的な治療が可能となります。コンパニオン診断により、患者ごとに効果が高く副作用の少ない治療が選択できるため、治療効果を高め、ひいては患者のQOL向上に資することができます。また、特にがん領域においては、免疫チェックポイント阻害剤等の高額治療も存在しており、コンパニオン診断による効果的な治療法の選択は、医療費低減への貢献も期待されます。

※5 リキッドバイオプシー:血液や尿といった採取された体液など、さまざまな検査に用いることができる液状の検体を用いた検査(液体生検)の総称です。がんの検査においては、一般的に体内から臓器等の組織片を採取する生検が実施されます。当該生検は内視鏡や太い針により組織片を採取する方法ですが、患者への身体的負担が大きい点が課題です。また、がんの種類や採取部位によっては生検であっても十分な量の組織片を確保できません。近年、がんの種類や進行度などに応じて、がん細胞に由来する核酸(DNAやRNA)が血液中に滲出していること、また血液中に遊離し循環しているがん細胞由来のDNAを回収して、がん細胞特有の遺伝子異常を包括的に検出することも実施されています。採血は組織生検に比べ侵襲性が低く、繰り返し実施できる医療行為であり、リキッドバイオプシー検査はがん検査を変える可能性を有しており、一般的な組織生検を補完しつつある技術です。

※6 低侵襲:医療行為において、採血で静脈に針を刺す行為や胸部X線撮影において放射線で被曝させること、また手術で開腹するために切開すること、これはすべて侵襲性のある行為となります。これらの医療行為においては痛みや身体的負担を生じ、医療行為によりその程度は異なります。医療行為により侵襲性は異なり、身体へ与える影響が少ないものを低侵襲性又は非侵襲性と称しています。一般的に採血等の行為は最低限の侵襲性に留まっており、低侵襲性であるとされています。検体採取において無痛針を利用することで採血時の痛みを低減又は無痛にするなど、より侵襲性の低い検体採取法の開発も進んでいます。

 

(4)経営環境及び優先的に対処すべき事業上並びに財務上の課題

 体外診断用医薬品業界においては、新型コロナウイルス感染症の感染拡大を踏まえて、医療現場におけるPOCTの重要性が一層認知されている一方で、競合他社の参入により、競争は激しくなっています。

 また、昨今の新型コロナとインフルエンザの同時流行の発生や薬剤耐性問題、性感染症の蔓延などを背景として、網羅的かつ迅速な検査による、高精度な疾患鑑別へのニーズが高まりを見せており、感染症検査におけるマルチプレックス検査※化や更なる高精度化への流れが加速しています。

 このような状況の中、当社は「診断技術で、安心な毎日を。」というコーポレートスローガンのもと、企画開発から製造、販売までを自社一貫体制で行う強みを活かし、医療機関や患者を始めとする世の中の幅広いニーズに応える製品を提供するため、以下の課題に取り組み、事業の継続的な成長と企業価値の向上に努めてまいります。

 

※マルチプレックス検査:同一の検体で複数の検査を同時に実施する方法です。PCR検査やがん遺伝子検査などで広く利用されており、感染症検査においても、複数項目を同時に検査することができる抗原検査キットが出てきております。

 

① 営業チャネルの強化・拡大

 当社は2024年4月30日時点で35名の営業員を有しており、その6割以上が10年以上にわたる業界経験を持つ人財です。今後はさらに人員を拡充することで、新規及び既存の医療機関との関係構築・強化に注力してまいります。一方で、現状で当社がアプローチし切れていない医療機関もあることから、当社製品を扱う重要代理店との関係強化に加えて、製薬会社との共同販売推進による営業チャネルの拡大に取り組んでいます。

 

② 特定製品への売上依存

 当社の各感染症検査キットの市場シェアは、概ね拡大傾向で推移しております。以前はインフルエンザ検査キットが当社売上の大きな割合を占めていたものの、2020年10月に新型コロナウイルス抗原検査キット「イムノエース®SARS-CoV-2」を発売して以降は、新型コロナウイルス感染症関連製品への売上依存度が5割以上を占めており、新型コロナウイルス感染症の流行度合いにより業績に大きな影響を受ける状態にあります。当社は継続的に次世代型の検査技術や新製品の開発、新たな市場の開拓に取り組み、新型コロナウイルス感染症感染製品以外の売上拡充に努めております。また、新製品の迅速な市場展開に向け、薬事申請を含む規制対応の体制強化や、量産製造への移行プロセスの最適化等に取り組んでおります。新たな収益基盤を速やかに構築することで、特定製品への売上依存度を下げるように努めております。

 

③ 海外事業拡大に向けた基盤整備

 当社は、各地域における特定の代理店を通じて海外市場での販売を行っております。今後海外事業をさらに拡大していくために、より海外市場に受け入れられ易い価格と高品質を両立させる海外仕様製品の開発を行っています。また海外市場向けの薬事申請体制の強化や海外のKoL※との関係構築等と併せて、海外営業体制やマーケティング体制の強化に取り組んでおります。

 

※KoL:Key Opinion Leaderの略であり、当社であれば特定の疾患領域において、造詣が深く権威ある医師や大学教授などの方々を指します。

④ 新たなコア技術の開発

 現状の抗原検査の枠を超えて事業領域を拡大するために、Ecobody技術※1、D-IAや簡易尿検査システム、小型血液検査装置、免疫プロファイリング等の新たなコア技術の開発を行っております。これらの技術を活用し、既存の呼吸器感染症検査の領域のみならず、D-IAを用いた性感染症検査や慢性疾患の検査などの新疾患領域、予防・未病領域における超早期マーカーの発見や新規IVD※2の開発、簡易尿検査システムによる日常的な疾患リスクのモニタリングへの進出などに取り組んでおります。

 

※1 Ecobody技術:業務提携先であるiBody(株)の技術により開発したウサギモノクローナル抗体を適用した、新たな抗体開発技術を意味します。

※2 IVD:In Vitro Diagnosticsの略であり、体外診断用医薬品を意味します。

 

⑤ ICT※活用による生産性向上

 現在推進している新基幹システムの導入プロジェクトに伴い、業務体系を見直し、様々な業務データを標準化・マスタ整理をすることで、社内における非効率的なオペレーションを解消し、業務体系の効率化及び生産性の向上に取り組んでおります。

 

※ICT:Information and Communication Technologyの略であり、情報伝達や情報通信に関する技術の総称です。

 

⑥ 人財採用及び育成の強化

 当社の、今後の更なる成長に向けては、人員体制の一層の強化が必要です。専門人財の積極的な採用活動や、社内人財への教育体制の強化に努めてまいります。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社は、「診断技術で、安心な毎日を。」をコーポレートスローガンに掲げ、事業活動全体を通じて、独自の体外診断用医薬品により、人々の生活に安心と潤いを届け、持続可能な社会の実現に貢献することを目指しています。

 当社のサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。

 なお、本文中における将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであります。

 

(1)サステナビリティ全般

① ガバナンス及びリスク管理

 当社は株主、顧客、従業員をはじめとする利害関係者に対し、経営責任と説明責任の明確化を図り、経営の効率化、健全性、透明性を高めることにより、継続的に株主価値を向上させる企業経営の推進が経営上の重要課題と認識しています。

 このような取り組みを進めていく中で、企業倫理と法令遵守の徹底、経営環境の変化に迅速に対応できる組織体制と組織内部のチェック体制、リスク管理体制の強化を行い、コーポレート・ガバナンスの一層の充実に取り組んでまいります。

 当社は、コンプライアンス及びリスク管理の統括を目的として、代表取締役社長が委員長となり、代表取締役社長の指名に基づき選任された者を委員として構成されるリスク・コンプライアンス委員会を設置し、リスク全般の状況の把握及び分析並びにリスク管理に関する教育・啓蒙等を行っております。リスク・コンプライアンス委員会は原則四半期に1回以上開催の定例リスク・コンプライアンス委員会に加え、必要に応じて臨時リスク・コンプライアンス委員会を開催することとしております。

 詳細は、「第4 提出会社の状況 4.コーポレート・ガバナンスの状況等 (1)コーポレート・ガバナンスの概要」をご参照ください。

 

② 戦略

 2020年から始まった新型コロナウイルスのパンデミックにより、世界各地で医療体制がひっ迫し、人々の生活や経済全体に大きな影響を与え、診断技術の重要性が改めて明らかになりました。また、昨今では老年人口の増加による慢性疾患の需要が拡大しており、国策としての社会保障費の削減要請などを背景にした予防・未病医療の進展が待ち望まれております。他方で、今後地域医療構想※による病院の再編が見込まれる中では、病院の減少に伴いクリニックの役割が拡大し、クリニックで完結する検査の領域拡張が求められると考えております。

 当社は、このような社会的課題への問題意識を常に持ち、事業活動を通じてその解決に全力で挑みます。持続可能な社会の実現及び当社の持続的な成長に向けて、感染症診断の拡充に加え、感染症以外の診断領域への展開を進め、総合的な診断薬企業を目指すべく、以下のプロセスを経て、優先的に取り組むべき課題(マテリアリティ)を特定しました。

 

※地域医療構想:団塊世代が75歳以上となる『2025年問題』を見据えて、各地域における医療需要と病床の必要量を医療機能(高度急性期・急性期・回復期・慢性期)ごとに推計し、病床の機能分化・連携を促進していく取り組みであります。

 

STEP1. マテリアリティ候補となる社会課題の抽出

 国際的なガイドラインの要請事項、社会的責任投資(SRI)の評価項目等※を参考に、当社が検討すべき社会課題を抽出。

※SDGs、GRI、SASB、ISO26000、DJSI、FTSE4Good、MSCIなど

 

STEP2. 抽出した社会課題の優先順位付け

 「ステークホルダーにとっての重要度」と「タウンズにとっての重要度」の2軸で課題を抽出・整理。

0202010_001.png

STEP3. 社内各部門におけるヒアリング

 作成したマテリアリティ案について、社内各部門および執行役員にヒアリングを行い、妥当性を確認。

 

STEP4. マテリアリティの特定指標・目標

 取締役会での審議および決議を経て特定。

0202010_002.png

 

③ 指標の内容と実績

マテリアリティ

指標

実績

環境への配慮

会社使用車のハイブリッド車比率

92.7%

(2024年4月現在)

グローバルヘルスへの貢献

海外代理店設置国数

25ヵ国

(2024年4月現在)

海外薬事申請維持国数

25ヵ国

(2024年4月現在)

責任ある製品・品質とサービスの提供

規制当局からの重大な指摘事項の件数

ゼロ

(2023年6月期)

社会貢献

地域社会との関わり件数

(本社及び事業所所在地で開催される催事への協賛等)

8件

(2023年4月~2024年3月)

ガバナンス強化

取締役会の実効性評価

毎年実施

(2023年6月期実施済)

コンプライアンス研修

毎年実施

(2024年6月期実施済)

会社経営の継続に重大な影響を与える事業遂行上の業法等の法令違反

ゼロ

(2023年6月期)

リスク・コンプライアンス委員会開催

4回/年

(2023年6月期)

 

(2)人的資本

 企業が継続的に成長するために、人財の確保は不可欠であり、それを実現するにはダイバーシティ&インクルージョン(多様性と包摂)の推進や、働きやすく働きがいのある職場環境の整備が必要です。また、2015年9月の国連サミットで採択された「持続可能な開発目標(SDGs:Sustainable Development Goals)」においても、ジェンダーの平等や働きがい、不平等の是正、公正な社会などの目標が掲げられています。

 当社は、社員の活躍を支援する取り組みや魅力ある職場環境の整備を推進し、個を尊重するとともに、多様な価値観・考え・能力・経験をもった人財が活躍できるよう、社員と当社間で双方向にかつ複数のチャンネルでコミュニケーションが図れるように取り組んでおります。また、研修や資格取得支援を充実させ、社員の成長の場と機会の提供にも積極的に努めております。

 

マテリアリティ:魅力ある職場環境の構築

 

目標値を設定している指標

指標

目標値

実績

男性の育児休業取得率

50%以上

100%

(2023年1月~12月)

年次有給休暇と会社独自のリフレッシュ休暇の合計取得日数

7日以上

13.4日

(2023年4月~2024年3月)

 

指標の内容と実績

取り組み

指標

実績

ダイバーシティ&インクルージョンの推進

女性管理職比率

20.0%

(2024年4月現在)

正社員に占める女性比率

40.4%

(2024年4月現在)

安全衛生・健康・メンタルヘルスの推進

健康診断受診率

100%

(2023年7月~9月)

ストレスチェック受検率

100%

(2023年7月~9月)

 

3【事業等のリスク】

 当社の事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、リスク要因となる可能性があると考えられる主な事項及びその他投資者の判断に重要な影響を及ぼすと考えられる事項を以下のとおり記載しております。また、必ずしもそのようなリスク要因に該当しない事項につきましても、投資家の投資判断上、重要であると考えられる事項につきましては、投資家に対する積極的な情報開示の観点から以下に開示しております。当社は、これらのリスク発生の可能性を十分に認識したうえで、発生の回避及び発生した場合の対応に取り組む方針ではありますが、当社株式に関する投資判断は、本項及び本書中の本項以外の記載事項を慎重に検討した上で行われる必要があると考えております。

 なお、本項記載のうち将来に関する事項は、将来において発生の可能性があるすべてのリスクを網羅するものではなく、本書提出日現在において当社が判断したものであります。

 以下の各事項において、当該リスクが顕在化する可能性の程度や時期、当該リスクが顕在化したときに当社の経営成績等の状況に与える影響について合理的に予見することが困難な場合には、その可能性の程度や時期・影響についての記述は行っておりません。

 

(1)法的規制等に関するリスク(顕在化の可能性:低、顕在化の時期:特定時期なし、影響度:大)

 当社は、体外診断用医薬品の製造販売を行うために医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(以下、「薬機法」という。)などの関連法令をはじめ、様々なガイドラインに従い、適正に運用しております。

 当社は、体外診断用医薬品及び医療機器の製造販売をするために、「体外診断用医薬品製造販売業許可」、「体外診断用医薬品製造業登録」及び「医薬品販売業許可」、また、医療機器の製造販売を行うために「第三医療機器製造販売業許可」、「医療機器製造業登録」及び「高度管理医療機器等販売業許可」を受ける必要があり、関係する業許可を取得し法令遵守に努めており、現状においては当該許認可が取り消しとなる事由は発生しておりませんが、今後、これらの関係法令が改廃又は変更された場合や新たな法規制が設けられた場合には、これらの法規制を遵守できなかったことにより許認可の取り消し等の処分を受けこれにより事業活動を制限されることはもとより、社会的信用の低下を招く可能性があると共に、これらの法規制を遵守するために当社の事業活動が制限を受ける可能性があり、その結果、当社の業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。また、これらの法規制を遵守するためのコストが発生又は増加し、利益率の低下につながる可能性があります。加えて、当社の業績は保険点数・条件等の影響を受ける可能性があるところ、これらの変更により、当社の収益を左右する可能性があります。さらに、海外販売にあたっては国内法令以外に、販売国の法令を遵守するために現地代理人と連携し薬事承認を目指しますが、当社の想定通りに薬事承認を得ることができない又は薬事承認取得後に販売国の薬事法令が切り替わることにより事業活動の制限を受ける可能性があります。特に欧州においては新しい薬事規制・欧州体外診断用医療機器規制(IVDR)が2022年5月から適用開始となりましたが、欧州での販売の混乱を防ぐ目的で現在は旧指令(IVDD)と新規制が混在されて運用されています。当社製品では結核検査のCapilia TB-NeoはIVDR承認を取得していますが、その他はIVDD登録です。当社製品が、2027年までにIVDRとしての承認が取得できない場合には、欧州でこれを販売することができなくなるため、当社は製品ごとに順次対応を進めております。さらに、将来的に進出を検討している米国市場においては、QSR(Quality System Regulation)が2023年に一部変更になる通知が出ております。当社はこれら国内外の法規制等の改正動向につき、常時積極的な情報収集に努めるとともに、関係部署には情報共有を行いながら適時対応策の検討を行っております。

 以下に、国内における薬事の業許可を示します。

許認可等の名称

許可番号

有効期限

取消事由

体外診断用医薬品製造販売業許可

静岡県知事

22E1X00002

2026年6月30日

薬機法第二十三条の十六

体外診断用医薬品製造業登録

静岡県知事

22EZ2000006

2026年6月30日

薬機法第二十三条の十六

医薬品販売業許可

静岡県東部保健所

東保A第22-94号

2027年6月30日

薬機法第二十三条の十六

第三種医療機器製造販売業許可

静岡県知事

22B3X10021

2026年6月30日

薬機法第二十三条の十六

医療機器製造業登録

静岡県知事

22BZ200150

2026年6月30日

薬機法第二十三条の十六

高度管理医療機器等販売業許可

静岡県東部保健所

東保A第11-554号

2027年6月30日

薬機法第二十三条の十六

 

(2)製品品質に関するリスク(顕在化の可能性:中、顕在化の時期:特定時期なし、影響度:中)

 当社では、医療機器及び体外診断用医薬品の製造管理及び品質管理の基準に関する省令(以下、「QMS」という。)などに基づき、重大な品質問題が発生しないように製品毎にリスクマネジメントを実施し、リスクの低減を行っております。また、海外販売においてはISO13485:2016(医療機器における品質マネジメントシステム)の適用を欧州の第三者認証機関を通じて認証を受け、開発から製造、品管、販売までのリスク低減に向けた取り組みを実施しております。

 また、当社では、QMS及びISOのルールに則り品質マニュアルを定め、製品毎のリスクマネジメント及び教育、社内外の監査、苦情処理、是正措置、購買先管理などの規定文書を定めており、さらに、監査による問題の洗い出しや、厚生労働省及び海外薬事規制当局、第三者認証機関における査察を受け、適時、改善を継続的に実施し、且つ市販後調査等により重大な品質問題が発生するリスクの軽減に努めております。

 このように、当社は、薬機法及び関連法令、ガイドライン等に基づき、万全の品質管理体制を敷いて製品の品質確保に取り組んでおりますが、製品に重大な品質問題が発生した場合には、当社レピュテーションへのダメージは勿論のこと、売上高の減少やコストの増加、法令上の制裁に伴う事業活動の制限などにより、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(3)訴訟・係争リスク(顕在化の可能性:低、顕在化の時期:特定時期なし、影響度:特定不能)

 当社は、本書提出日現在係争中の訴訟事案はありませんが、事業活動を継続していく過程において、製造物責任(PL)関連、労務関連、知的財産関連、商取引関連、その他に関する訴訟が提起される可能性があります。このようなリスクを事前に予防するため又は仮に訴訟に発展した場合にも業績への影響が限定的となるよう社内の法令遵守体制を徹底するため、社内に複数の法律又は会計などの専門家を配置していますが、これらの訴訟の結果によっては、損害賠償を請求される、社会的信用の低下、レピュテーションへのダメージ等、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(4)新製品開発力に関するリスク(顕在化の可能性:中、顕在化の時期:特定時期なし、影響度:中)

 当社は、2020年10月に新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)抗原検査キットを発売するなど、新規の感染症向け製品、既存製品の性能向上等、継続的に新たな収益基盤として期待される新製品の開発に注力しております。

 体外診断用医薬品は、国内では所轄官庁の承認、海外では承認や認証を得てはじめて上市可能となります。また、体外診断用医薬品業界は、技術開発及び性能の向上において常に競合他社と競争状態にあります。このため、研究開発の遅延や中断により研究開発投資の回収が困難になり、将来にわたり業績に影響を与える可能性があります。また、他社の革新的技術により当社製品の優位性が低下した場合、製品売上が減少する可能性があります。

 このようなリスクを踏まえ、当社は、研究開発部門が営業部門と連携することで課題の共有を密に図るほか、規制当局及び関連学会等の動向を常時積極的、且つ継続的に情報収集し、大学等公的研究機関や医療機関と共同研究等による連携も行いながら、業界と市場の変化及び顧客ニーズをタイムリーに把握するよう努めております。また、開発された製品は薬事申請が必要となることから、生産部門、品質管理部門と連携しながら医療機関において臨床評価試験も行います。製品化においては、QMSに則り、開発計画から薬事承認まで、研究開発部門、生産部門、品質管理部門との連携により遂行しております。

 また、外部からの技術導入や外部との連携を進め、並行して人的リソースの拡充も含め開発力の更なる強化に取り組むとともに、開発に係るマネジメント体制の強化にも努め、且つ市場環境の変化を考慮しながら開発案件の優先順位等を判断し、業界と市場の変化及び顧客ニーズを踏まえて注力すべきと考えられる新製品に開発力を集中できる体制を整備しております。

 

(5)感染症の動向による業績への影響(顕在化の可能性:中、顕在化の時期:特定時期なし、影響度:中)

 インフルエンザ検査キットは、2019年6月期及び2020年6月期において、売上高の大きな割合を占める製品となっております。その後、2021年6月期から2023年6月期においては、新型コロナウイルス関連の検査キットが売上高の大きな割合を占める状況が続いております。

 当社は、新たな感染症に対応する製品の開発や既存の感染症領域における新製品の開発等により感染症領域における競争力の強化を図るとともに、感染症以外の領域での強化を図ることで、特定の製品への売上げの依存度を減少させることを目指しておりますが、上記の主要製品に係る感染症の流行が当初の想定より小規模であった場合、又は予期せぬ事由により当該製品の売上高が大幅に減少した場合、在庫の評価減、廃棄損も含め、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

(6)原料、商品等の調達に関するリスク(顕在化の可能性:中、顕在化の時期:特定時期なし、影響度:小)

 製品の製造に使用している原料の中には、海外からの輸入原料もあるため、輸入原料や特殊な原料、商品等につきましては、個別にリスク管理を行い適切な在庫となるよう管理するとともに、極力複数社からの調達体制を構築し、国際情勢等の変化に柔軟に対応できるよう努めております。また、入手困難な原料が生じた場合は、代替原料の調査及び評価を行い、製品供給が滞らないよう努めております。しがしながら、国際情勢の変化などにより、原料並びに商品等の品質の変化、又は製造停止、終了や輸入経路の寸断などにより調達に問題が生じる場合は、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(7)外注先に関するリスク(顕在化の可能性:中、顕在化の時期:特定時期なし、影響度:小)

 当社は、体外診断用医薬品等の製造の一部、これに付随する保管、在庫管理、荷造り及び納入の業務を外注しており、当社の業務が一部取引先に集中する場合があります。当社は、外注先との関係強化・維持を図る共に、複数の外注先を確保することとしております。また、日常的、定期的に検査、整備等を行い自社生産の更なる充実を図ると共に、恒常的に2~3か月程度の製品在庫を保管し、リスクの極小化に努めておりますが、外注先の方針転換等により外注先へ業務委託できない状況が発生した場合には、製品の製造及び供給が困難となる等、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(8)知的財産権に関するリスク(顕在化の可能性:中、顕在化の時期:特定時期なし、影響度:中)

 当社は、新規性あるいは進歩性のある技術を特許化し、その複数の特許は一定期間保護されています。しかし、当社の保有する知的財産権が第三者から侵害を受けた場合には、期待される収益が失われる可能性があり、侵害を受けた場合は損害賠償請求を進めるなどの措置をとりますが、それでも当社が被った損害について十分な賠償を受けることができない可能性があります。また、当社の製品が意図せず他社の知的財産権を侵害した場合には、損害賠償を請求される可能性があり、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

 これらのリスクに対し、当社は、特許権、実用新案権、意匠権及び商標権の「産業財産権」を含む知的財産権を適正に管理し、第三者からの侵害あるいは第三者の知的財産権を侵害するおそれについても、常に監視を行うとともに、当該情報を当社内の関連部門間で共有することによって管理体制の強化を図っております。

 また、海外に向けても知的財産権を行使していることから、国内外の特許法の遵守に努めております。

 

(9)市場環境の変化に関するリスク(顕在化の可能性:中、顕在化の時期:特定時期なし、影響度:中)

 医療制度改革や診療報酬の改定が行われている中、国内の人口減少が続いており、当社の事業環境は、市場における他社との競合なども加わり、一段と厳しさを増しておりますが、新たな感染症対応製品の開発・販売開始等、市場環境は日々変化しております。足元では海外メーカーや国内後発メーカーなどにより、価格を重視した製品の市場投入が散見されております。

 MarketsandMarketsが2022年12月27日に発行した「ポイントオブケア (POC) 診断・迅速診断の世界市場 - 2027年までの予測」によると、当社のターゲット市場である臨床現場即時検査検査(POTC)市場について、「世界臨床現場即時検査(POCT)市場は、2022年から2027年までにCAGR10.8%の成長が予測されております。(2022年USD432億、2027年USD720億)」とされており、国際的な視点では、体外診断用医薬品市場は拡大傾向にあるとされています。そのため、海外市場への積極的な展開をすることで市場環境のリスク分散も進めております。

 当社では、市場及び競合動向の情報収集及び分析評価を継続的に行い、既存ビジネスの競争力維持・強化等のための施策や、新規分野への展開等に活用しております。また、市場環境の変化に柔軟に対応するべく、新製品開発力の維持・強化等に努めております。

 以上のような取り組みにもかかわらず、当社の市場環境の変化への対応が遅れた場合には、主要製品の需要減少、販売価格の低下、既存シェアの喪失などにより、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。一方で、新型コロナウイルスの抗原定性検査キットにおいては、短期的に大きな診療報酬の改定が見通されることから、当社では診療報酬引き下げの影響をすでに織り込んだ価格設定としております。なお、他の5類感染症については過去において2年に1度の頻度で小幅な薬価改定が行われており、新型コロナウイルスの抗原定性検査においても今後は同等の薬価改定が行われる可能性があります。

 

(10)海外事業展開に関するリスク(顕在化の可能性:中、顕在化の時期:中期~長期、影響度:中)

 当社は、日本国内のほか、欧州・アジア及びその他の地域における事業活動を展開しております。また、今後については、当社の海外売上比率を高めることを企図しております。

 これらの海外事業展開に関しては、カントリーリスクを初め、為替リスク、法規制・薬事ガイドライン、商習慣の相違等に起因するリスク、更には地政学的リスク等、海外ならではの付加的なリスクにさらされております。

 これに対し当社は、各国の状況に精通した現地代理店を通じて規制当局への薬事承認を取得し、販売を通じて法規制の遵守以外に当該国での医療事情の情報収集を行い、販売業績へのリスク低減に努め、またカントリーリスク及び個社の信用力等に基づく信用リスク管理も行うことにより、リスクのコントロールを図っておりますが、上記のリスクが顕在化した場合には、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(11)特定の販売先への依存によるリスク(顕在化の可能性:中、顕在化の時期:短期~中期、影響度:中)

 当社は、2023年6月期において、主要顧客であるスズケングループへの売上が73.0%を占め、特定の販売先に対する依存度が高い状況にあり、販売先の集中による信用管理リスクも高くなっております。また、株式会社スズケンの経営方針等の変更により取引が打ち切りになった場合や取引金額が引き下げられた場合には、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。そのため、当社は特定の販売先に対する集中を緩和するために、依存度が高い販売先以外の販売先との関係強化、新規販売先の開拓、及び海外売上の拡大に努めており取引先の分散化を図っております。信用管理の面では、販売先全社に対して信用力に基づく与信限度額を設定する等、信用リスク管理に努めておりますが、これらの取組みにもかかわらず当社がスズケングループに対する信用リスク管理を適切に行うことができない場合には、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(12)人財の確保と育成に関するリスク(顕在化の可能性:中、顕在化の時期:特定時期なし、影響度:大)

 当社では、海外事業展開を含めた中長期における当社の経営計画達成のために、新製品の企画、開発能力のある人財、海外国内を問わず活躍できるグローバル人財やプロフェッショナル人財、全ての局面で自律・自立して成果をあげる人財の確保と育成が必要であると考えています。当社では、このような人財の確保のため国内に限らず、多様な人財確保を目指し、雇用した多様な人財が、多様な価値観を尊重しつつ健康に働ける環境を整える努力をしております。人財の確保は、通年で計画的に、経営や事業関連のスキルを持つ経験者や新卒者の採用を国籍に関係なく行い、人財の育成には企業倫理の育成から始まりキャリアプランに応じた成長教育の強化に取り組んでおります。しかしながら、当社の持続的な成長に必要な人財の確保が達成できなかった場合、また、達成のために人件費等増加が生じた場合には、当社の事業及び業績に大きな影響を及ぼす可能性があります。

 

(13)労務に関するリスク(顕在化の可能性:中、顕在化の時期:特定時期なし、影響度:中)

 当社は、法令に基づく適正な労務管理などにより、全社的に労務関連リスクの低減に取り組んでおります。具体的には、当社は、日常的に労働災害が発生する可能性のある現場では災害を未然に防ぐための努力を行っています。災害が発生した場合には安全衛生委員会にて発生現場部署と連携し発生原因の特定から再発防止策の実施までを行い労働災害の再発防止に努めております。

 長時間労働については、当社の事業拡大に沿った人員計画に基づき採用を行うことや業務効率化を図ることで長時間労働が発生しないように人員体制を強化しております。また、勤怠管理システム上で時間外勤務時間が多くなるとアラートを出す設定をして、過度な長時間労働を未然に予防するようにしています。また日頃より36協定を遵守するための啓蒙活動の一環として管理本部や人事部からの警告と注意喚起を毎月行い、長時間労働をなくす努力をしております。長時間労働が発生してしまった場合には、必要に応じて対象者の産業医面談を行うとともに所属本部から改善策を提出させて、再発防止に努めています。

 ハラスメントに関してはハラスメント防止規程を設定し、社内掲示板にはハラスメント禁止を明示し、定期的にハラスメント防止のための研修受講を義務付けています。また、全従業員、役員が相談・通報できる社内・社外(弁護士直通)の「コンプライアンスに関する通報・相談窓口」を設置、個別に対応するようにしています。

 メンタルヘルスについては、事前予防策としてエンゲージメントサーベイを定期的に実施しメンタルヘルスの異変を事前に察知できるようにすることや、株式会社Smart相談室の提供する法人向けオンライン相談サービスの「スマート相談室」を利用し、従業員のメンタルヘルス改善に資する幅広い相談に応じており、問題を小さな芽のうちに解決するようにしています。また、産業医とも連携し人事部を中心に面談の実施等の対応もしています。

以上のような取り組みにもかかわらず、労務関連のコンプライアンス違反(労働災害、長時間労働、ハラスメント等)が発生した場合、争訟の発生、社会的信用の低下及びレピュテーションへのダメージ等により、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(14)情報の取扱い及び情報セキュリティに関するリスク

(顕在化の可能性:中、顕在化の時期:特定時期なし、影響度:中)

 当社は、事業上の営業秘密及び開発関連情報、薬事申請関連書類、規定文書、手順書、製造関係書類、品質管理書類、倫理関連書類、事業活動の過程で入手した個人情報や取引先等の多岐にわたる機密情報を保有しております。当社では当該情報の盗難・紛失などを通じて第三者に不正に情報が流出することを防ぐため、文書管理の徹底、社員及び委託先の情報リテラシー及びモラル向上、及びITガバナンスの強化に取り組んでおります。また、社内情報システムへの外部からの侵入防止対策も講じておりますが、当該情報の流出や漏洩が発生した場合には、社会的信用の低下、レピュテーションへのダメージ、訴訟や損害賠償に伴う金銭的負担・対応のための負担の増大、情報セキュリティ体制の見直し、強化等におけるコストの増加など、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(15)システム障害に関するリスク(顕在化の可能性:中、顕在化の時期:特定時期なし、影響度:中)

 当社は各種情報システムを活用して業務を遂行しており、大規模な自然災害、社会インフラ(クラウドサービスやネットワーク回線、流通・供給網等)の遮断・混乱、想定を超えたサイバー攻撃等により、システムの長時間停止、又は事業活動における重要情報、顧客・従業員等の個人情報等の機密情報の漏洩、改ざん、消失等が発生する可能性があります。これらのリスクに対処するため当社では、絶えずシステム強化やセキュリティ対策をハード面から行うとともに、従業員のセキュリティ管理教育などのソフト面も徹底することにより障害が発生しないようにするとともに、万が一そのようなリスクが顕在化してしまった場合の迅速な対応やバックアップ体制の構築に取り組んでおりますが、これらの事象が発生した場合には、社会的信用の低下、レピュテーションへのダメージ、損害賠償請求に伴う金銭的負担、事業戦略の見直しの必要等が発生するおそれがあり、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(16)投資有価証券・関係会社株式・関係会社社債の減損に関するリスク

(顕在化の可能性:中、顕在化の時期:特定時期なし、影響度:小)

 当社は、ビジネス上のパートナーシップを強化するため、投資有価証券を保有しております。取得前には投資委員会においてビジネス、財務経理、法務等々の観点から十分な検討を行い、投資額の重要性に基づき取締役会で決議ないしは報告がなされてから投資が実行されるようになっています。投資有価証券の継続的な保有の合理性については、取締役会等において、取引額、将来的なビジネスの可能性、保有に伴う便益やリスク、資本コストとの見合い等を勘案した上で総合的に検証し、その結果、保有の合理性が低い株式については、市場環境等を考慮しつつ、売却を行うことを基本方針としております。取得後もリスクに見合ったリターンが得られているか、定量面・定性面での情報収集及び収集された情報の検証を含めリスク管理を徹底しておりますが、収益性の悪化等により投資先会社の純資産価値が毀損した場合や事業計画に大きな下振れが生じた場合など、当該投資有価証券・関係会社株式・関係会社社債の減損処理を実施することで、当社の業績に影響が及ぶ可能性があります。

 

(17)固定資産の減損リスク(顕在化の可能性:低、顕在化の時期:特定時期なし、影響度:小)

 当社は、工場、機械設備等多くの有形固定資産や顧客関連資産、技術関連資産等の無形固定資産を有しておりますが、投資に対する回収が不可能になることを示す兆候を認識した場合には、将来キャッシュ・フローの算定等により減損の有無を判定しております。その結果、減損損失の計上が必要になることも考えられ、その場合は、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(18)金利変動と財務制限条項に関するリスク(顕在化の可能性:低、顕在化の時期:特定時期なし、影響度:大)

 当社では、金融機関からの借入によって製造設備、運転資金その他必要な資金を調達しておりますが、有利子負債の金額は売上高に比して多額なものであると認識しています。今後、市場において金利が上昇した場合には当社の借入金利も上昇することが予想され、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。なお、当社の借入金には財務制限条項が付されている契約があり、具体的には純資産の減少及び経常損失の計上に関する財務制限条項が付されております。万一、当社の業績が悪化し、財務制限条項に抵触した場合には、当該契約による借入金の返済を求められる結果、当社の財政状態等に影響を及ぼす可能性があります。

 

(19)災害、事故、感染症等に関するリスク(顕在化の可能性:低、顕在化の時期:特定時期なし、影響度:大)

 大規模な地震、風水害等の自然災害や火災、事故、感染症の流行等により、販売等事業活動への影響及び生産設備等で発生する操業中断の影響を完全に防止することができない事態が想定されます。また、当社の生産拠点は神島工場の1ヵ所のみであるため、この地域において大規模災害の発生や事故等により、操業中断に追い込まれる事態になった場合には、製品の生産、供給能力が著しく低下し、当社の事業及び業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 このようなリスクを踏まえ、当社では、BCPを策定し、大規模な災害が発生した場合も事業を継続できるよう災害発生時の対応能力の継続的向上に取り組んでおります。また、恒常的に2~3か月程度の製品在庫を本社所在地以外に位置する複数の外部倉庫で保管していることや、各拠点において、事業が中断追い込まれるリスクを極小化するため、あるいは事業中断による影響を極小化するため、日常的、定期的に検査、整備等を行っております。

 

(20)CITIC(現Trustar) Groupとの関係(顕在化の可能性:低、顕在化の時期:短期~中期、影響度:小)

 当社は、グローバルプライベート・エクイティファームである、CITIC(現Trustar) Groupに属するCITIC Capital Japan Partners III, L.P.及びCCJP III Co-Investment, L.P.からの出資を受けており、本書提出日現在において、合計で当社発行済株式総数の60.0%を保有しております。また、伊藤政宏氏が当社取締役としてCITIC(現Trustar) Groupから派遣されております。CITIC(現Trustar) Groupは、当社の上場時において、所有する当社株式の一部を売却する予定でありますが、当社上場後においても相当数の当社株式を保有する可能性があります。したがって、今後の当社株式の保有方針及び処分方針によっては、当社株式の流動性や市場価格等に影響を及ぼす可能性があります。また、当社上場後にCITIC(現Trustar) Groupが相当数の当社株式を保有し続けたり、又は当社株式を買い増したりする場合には、当社の役員の選解任、他社との合併等の組織再編、減資、定款の変更等の当社の株主総会決議の結果に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

(21)資金調達に関するリスク(顕在化の可能性:低、顕在化の時期:特定時期なし、影響度:中)

 当社は、既存事業の強化並びに新規事業領域への進出により成長を目指しており、今後の資金調達が必要になる可能性があります。そのため、短期資金、長期資金のバランスを勘案し資金調達することで、借り換えリスクの低減を図っており、また、必要運転資金の最適化を図り、資金需要を抑制することでリスクの軽減に努めておりますが、金融市場の混乱、あるいは金融機関の融資方針の変更は、当社の資金調達に制約を課すとともに、調達コストを増大させ、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(22)新株予約権の行使による株式価値の希薄化について

(顕在化の可能性:高、顕在化の時期:短期~中期、影響度:小)

 当社は、役員及び従業員に対して、業績向上に対する貢献意欲及び士気を高めるため、新株予約権を付与しております。これらの新株予約権の権利が行使された場合には、当社株式が新たに発行され、既存の株主が有する株式の価値及び議決権の割合が希薄化する可能性があります。なお、本書提出日現在、これらの新株予約権による潜在株式数は7,907,918株であり、発行済株式総数100,000,000株の7.91%であります。

 

(23)配当政策について(顕在化の可能性:中、顕在化の時期:特定時期なし、影響度:中)

 当社は、株主への利益還元を重要な経営課題の一つとして位置づけております。配当につきましては、財務基盤の健全性を維持し、事業環境の変化や将来の事業展開に備えて内部留保の充実を図りつつ、配当性向30%を目安に安定配当を継続的に行うことを基本方針といたします。更に通常の配当政策に加え、業績や財務状態を総合的に勘案の上、周年記念にあたっては記念配当などを実施する方針であります。なお、内部留保資金につきましては、今後の研究開発や製造体制の強化などの成長投資として有効に使用してまいりたいと考えております。

 上記方針のもと、30%の配当性向を目標に安定的な配当を継続していくことを目指しておりますが、事業環境の急激な変化などにより、目標とする配当性向を達成できなくなる可能性があります。

 

(24)当社株式の流動性について(顕在化の可能性:中、顕在化の時期:中期、影響度:中)

 当社は東京証券取引所スタンダード市場への上場を予定しており、上場に際しては、売出しによって当社株式の流動性の確保に可能な限り努めることとしておりますが、市場環境によっては、株式会社東京証券取引所の定める流通株式比率は新規上場時において26.13%にとどまる見込みです。

 今後は、当社の事業計画に沿った成長資金の公募増資による調達、当社代表取締役社長野中雅貴を含む主要株主への一部売出しの要請、ストック・オプションの行使による流通株式数の増加分等を勘案の上、これらの組み合わせにより流動性の向上を図っていく方針ではありますが、何らかの事情により上場時よりも流動性が低下する場合には、当社株式の市場における売買が停滞する可能性があり、それにより当社株式の需給関係にも悪影響を及ぼす可能性があります。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

 当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

① 財政状態の状況

第8期事業年度(自 2022年7月1日 至 2023年6月30日)

(資産)

 当事業年度末における資産合計は前事業年度末に比べ1,935,925千円減少し、18,332,162千円となりました。

 流動資産は、前事業年度末と比べ2,578,728千円減少し、9,456,910千円となりました。これは主に、現金及び預金が5,103,045千円減少、売掛金が2,109,082千円増加したこと等によるものであります。

 固定資産は、前事業年度末と比べ642,803千円増加し、8,875,252千円となりました。これは主に、有形固定資産が718,939千円増加、無形固定資産が227,603千円減少、投資その他の資産が151,467千円増加したことによるものであります。

(負債)

 当事業年度末における負債合計は前事業年度末に比べ3,069,491千円減少し9,842,291千円となりました。

 流動負債は、前事業年度末と比べ2,418,833千円減少し、6,517,961千円となりました。未払法人税等が3,575,666千円、未払消費税等が944,650千円減少、短期借入金が2,300,000千円増加したこと等によるものであります。固定負債は、前事業年度末と比べ650,657千円減少し、3,324,329千円となりました。これは主に、長期借入金が732,000千円減少したこと等によるものであります。

(純資産)

 当事業年度末における純資産合計は前事業年度末に比べ1,133,566千円増加し、8,489,871千円となりました。

 これは主に、利益剰余金が当期純利益により3,034,863千円増加したものの、配当金の支払いにより1,900,000千円減少したこと等によるものであります。

 

第9期第3四半期累計期間(自 2023年7月1日 至 2024年3月31日)

(資産)

 当第3四半期会計期間末における資産合計は、前事業年度末に比べ12,114,974千円増加し30,447,137千円となりました。これは主に、売上高が大きく伸長したことに伴う売掛金及び現金及び預金の増加に加え、新工場建設費用の一部支払が生じたことによる有形固定資産の増加によるものであります。

(負債)

 当第3四半期会計期間末における負債合計は、前事業年度末に比べ6,810,337千円増加し16,652,629千円となりました。これは主に、新工場建設費用の一部支払いに伴う設備未払金が増加したことに加え、当第3四半期累計期間の課税所得が増加したことにより税金費用の支払に伴う未払法人税等が増加したことによるものであります。

(純資産)

 当第3四半期会計期間末における純資産合計は、前事業年度末に比べ5,304,637千円増加し13,794,508千円となりました。これは、主に利益剰余金の増加によるものであります。

 

② 経営成績の状況

第8期事業年度(自 2022年7月1日 至 2023年6月30日)

 当事業年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症の第6波が収束し行動制限が段階的に緩和されるなど、社会経済活動が正常化に向かい始めた矢先、感染力が高いとされるオミクロン変異株(BA.5等)の感染拡大による第7波及び第8波の影響を大きく受けることとなりました。今冬では新型コロナウイルス感染症流行が始まって以来、初めてのインフルエンザの流行も認められており、新型コロナウイルス感染症とインフルエンザの同時流行による感染が拡大することとなりました。しかしながら、年明け2月以降になると第8波も一服し社会経済活動の回復の兆しが見え始めるとともに、5月には新型コロナウイルス感染症が2類から5類感染症に移行となり、その後はウィズコロナに向けた行動制限の緩和に伴い社会経済活動は正常化が進みました。一方、世界経済はコロナ禍から先行して回復に向かう最中、半導体不足や労働力不足、物流停滞などによる供給制約を受け資源価格が高騰を続けました。さらには、ウクライナ問題の長期化がこれに拍車をかけ、各国は急激なインフレを抑えるため金融政策の引き締めに転じており、金利上昇による世界経済の景気後退が懸念される状況となっております。わが国経済においても、各国の金融政策との方向性の違いなどによる円安が急速に進行、物価上昇に伴う景気の下振れが懸念されるなど、先行きは依然として不透明な状況が続いております。

 体外診断用医薬品業界におきましては、新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴い、新型コロナウイルスの遺伝子検査や抗原検査等の検査需要は急激に高まりましたが、既存の感染症全般においては、新型コロナウイルス感染症に対する感染防御の効果や受診控え等により、検査需要が減少するという影響を引き続き受けております。このようななか、当社はコーポレートスローガン「診断技術で、安心な毎日を。」を設定、昨年4月には国内初となる唾液を適用検体種とする新製品「イムノエース®SARS-CoV-2 Saliva」を発売いたしました。今後も市場のニーズに応えた新製品をリリースすることで、あらゆる感染症の拡大防止に貢献してまいります。当事業年度における業績につきましては、新型コロナウイルス抗原検査キットの自治体向け販売の影響も奏功し、売上高は15,673,099千円となり、営業利益は4,967,275千円となりました。経常利益は4,953,451千円となり、当期純利益は3,034,863千円となりました。

 なお、当社は、体外診断用医薬品事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載は省略しております。

 

第9期第3四半期累計期間(自 2023年7月1日 至 2024年3月31日)

 当第3四半期累計期間(2023年7月1日~2024年3月31日)におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症の感染症法上の分類が2類から5類に移行された後、ウィズコロナによる行動制限や海外からの入国制限の緩和等により社会経済活動は正常化が進みました。一方、世界経済はウクライナ情勢の長期化や資源・エネルギー価格の高騰等による金融引締めが続くなか、世界経済の景気後退が懸念される状況となっております。わが国経済においても、雇用や所得環境は改善したものの、急速な為替変動がインフレに拍車をかけ、物価上昇による景気の減速が懸念されるなど、先行きは依然として不透明な状況が続いております。

 体外診断用医薬品業界におきましては、2020年初頭より発生した新型コロナウイルス感染症は、新たな変異株による感染拡大を繰り返すことで、感染拡大防止を目的とした遺伝子検査や抗原検査等の検査需要が急激に高まりました。他方、インフルエンザをはじめとした既存の感染症は、新型コロナウイルス感染症に対する感染防御の効果や受診控え等により、検査需要が減少するという影響を受けました。現在主流の変異株は、感染力は高いものの重症化リスクは低減しているといわれており、行動制限の緩和により社会経済活動は正常化に向かいました。さらには新型コロナウイルス感染症の感染症法上の分類が5類に移行された後、ウィズコロナ社会へと社会環境が変化したことで、過去に免疫獲得の機会を十分に持てなかった多くの既存感染症(インフルエンザ、アデノウイルス等)が増加しております。新型コロナウイルス感染症につきましては、5類移行後の感染者数の把握は全数把握から定点把握となりましたが、足元では新型コロナウイルス感染症とインフルエンザの同時流行は一服し小康状態にありますが、感染状況については依然として予断を許さないため、今後も新型コロナウイルス感染症及び既存感染症の流行状況については、動向を注視する必要があります。

 このようななか、当社はコーポレートスローガン「診断技術で、安心な毎日を。」を掲げ、社会的責務である供給責任を全うすることを最優先するとともに、市場のニーズに応えた新製品をリリースすることで、あらゆる感染症の拡大防止に貢献してまいります。当第3四半期累計期間における業績につきましては、売上高は16,371,691千円となり、営業利益は8,226,082千円となりました。経常利益は8,249,192千円となり、四半期純利益は5,906,535千円となりました。

 なお、当社は、体外診断用医薬品事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載は省略しております。

 

③ キャッシュ・フローの状況

第8期事業年度(自 2022年7月1日 至 2023年6月30日)

 当事業年度末における現金及び現金同等物は、前事業年度末に比べ5,103,045千円減少し、1,244,375千円となりました。当事業年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりです。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動の結果使用した資金は、3,157,605千円(前事業年度は10,694,688千円の獲得)となりました。これは主に税引前当期純利益4,654,856千円を計上したものの、売上債権の増加額2,109,082千円、未払消費税等の減少額944,715千円、法人税等の支払額5,483,126千円等によるものであります。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動の結果使用した資金は、1,615,239千円(前事業年度は2,679,870千円の使用)となりました。これは主に有形固定資産の取得による支出1,089,476千円及び関係会社株式の取得による支出299,889千円等によるものであります。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動の結果使用した資金は、330,200千円(前事業年度は3,660,000千円の使用)となりました。これは主に短期借入金の純増額2,300,000千円、長期借入金の返済による支出732,000千円及び配当金の支払額1,900,000千円等によるものであります。

 

④ 生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

 当社は、体外診断用医薬品事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載を省略しております。

事業区分の名称

当事業年度

(自 2022年7月1日

 至 2023年6月30日)

第9期第3四半期累計期間

(自 2023年7月1日

  至 2024年3月31日)

生産高(千円)

前年同期比(%)

体外診断用医薬品事業

18,195,696

77.3

16,407,718

合計

18,195,696

77.3

16,407,718

 (注)金額は販売価格によっております。

 

b.受注実績

 当社は見込み生産を行っているため、該当事項はありません。

 

c.販売実績

 当社は、体外診断用医薬品事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載を省略しております。

事業区分の名称

当事業年度

(自 2022年7月1日

 至 2023年6月30日)

第9期第3四半期累計期間

(自 2023年7月1日

  至 2024年3月31日)

売上高(千円)

前年同期比(%)

体外診断用医薬品事業

15,673,099

△10.2

16,371,691

合計

15,673,099

△10.2

16,371,691

 (注)1.最近2事業年度及び第9期第3四半期累計期間の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。

相手先

前事業年度

(自 2021年7月1日

至 2022年6月30日)

当事業年度

(自 2022年7月1日

至 2023年6月30日)

第9期第3四半期累計期間

(自 2023年7月1日

至 2024年3月31日)

金額(千円)

割合(%)

金額(千円)

割合(%)

金額(千円)

割合(%)

厚生労働省(注)2

8,411,808

48.2

スズケングループ

(注)3

3,539,252

20.3

11,436,450

73.0

9,068,617

55.4

2.前事業年度において、販売実績に著しい変動がありました。これは、新型コロナウイルス感染症の感染拡大により、抗原検査の検査需要が急激に高まるなか、厚生労働省による新型コロナウイルス抗原検査キットの買取等の影響により、販売実績が大幅に増加しております。

3.当事業年度において、販売実績に著しい変動がありました。これは、新型コロナウイルス感染症の感染区分が5類に変更となったことで病院の他、開業医への販路が広がったことにより、販売実績が大幅に増加しております。

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

 経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものであります。

 

① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。この財務諸表の作成にあたって、当社は、同業他社との比較可能性を確保するため考慮し、会計基準につきましては、日本基準を適用しております。

 なお、採用している重要な会計方針及び見積りに関しましては、「第5 経理の状況」に記載のとおりであります。

 

② 経営成績等の分析

第8期事業年度(自 2022年7月1日 至 2023年6月30日)

 当事業年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症の第6波が収束し行動制限が段階的に緩和されるなど、社会経済活動が正常化に向かい始めた矢先、感染力が高いとされるオミクロン変異株(BA.5等)の感染拡大による第7波及び第8波の影響を大きく受けることとなりました。今冬では新型コロナウイルス感染症流行が始まって以来、初めてのインフルエンザの流行も認められており、新型コロナウイルス感染症とインフルエンザの同時流行による感染が拡大することとなりました。しかしながら、年明け2月以降になると第8波も一服し社会経済活動の回復の兆しが見え始めるとともに、5月には新型コロナウイルス感染症が2類から5類感染症に移行となり、その後はウィズコロナに向けた行動制限の緩和に伴い社会経済活動は正常化が進みました。一方、世界経済はコロナ禍から先行して回復に向かう最中、半導体不足や労働力不足、物流停滞などによる供給制約を受け資源価格が高騰を続けました。さらには、ウクライナ問題の長期化がこれに拍車をかけ、各国は急激なインフレを抑えるため金融政策の引き締めに転じており、金利上昇による世界経済の景気後退が懸念される状況となっております。わが国経済においても、各国の金融政策との方向性の違いなどによる円安が急速に進行、物価上昇に伴う景気の下振れが懸念されるなど、先行きは依然として不透明な状況が続いております。

 体外診断用医薬品業界におきましては、新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴い、新型コロナウイルスの遺伝子検査や抗原検査等の検査需要は急激に高まりましたが、既存の感染症全般においては、新型コロナウイルス感染症に対する感染防御の効果や受診控え等により、検査需要が減少するという影響を引き続き受けております。このようななか、当社はコーポレートスローガン「診断技術で、安心な毎日を。」を設定、昨年4月には国内初となる唾液を適用検体種とする新製品「イムノエース®SARS-CoV-2 Saliva」を発売いたしました。今後も市場のニーズに応えた新製品をリリースすることで、あらゆる感染症の拡大防止に貢献してまいります。

 

a.売上高

 当事業年度における売上高は15,673,099千円となり、前事業年度に比べ1,783,887千円減少(対前年同期比10.2%減)いたしました。これは主に、前事業年度に実施された厚生労働省による新型コロナウイルス抗原検査キット買取取引はなかったものの、新型コロナウイルス感染症の感染拡大継続のため、当社の新型コロナウイルス抗原検査キット等の販売が引き続き堅調に推移し、国内総売上を15,390,180千円計上、輸出総売上を282,918千円計上したこと等によるものであります。

 

b.売上原価、売上総利益

 当事業年度における売上原価は6,473,185千円となり、前事業年度に比べ3,698,506千円増加(対前年同期比133.3%増)いたしました。これは主に、製品売上増加に伴い材料費が953,787千円増加(対前年同期比53.4%増)、労務費が88,700千円増加(対前年同期比11.6%増)、製造経費が512,915千円増加(対前年同期比25.5%増)したことによるものであります。

 この結果、当事業年度における売上総利益は9,199,913千円となり、前事業年度に比べ5,482,394千円減少(対前年同期比37.3%減)いたしました。

 

c.販売費及び一般管理費、営業損益

 当事業年度における販売費及び一般管理費は4,232,638千円となり、前事業年度に比べ739,886千円増加(対前年同期比21.2%増)いたしました。これは主に、マーケティング等に係る業務委託が発生したことから業務委託費が700,599千円増加(対前年同期比277.3%増)したこと等によるものであります。

 この結果、当事業年度における営業利益は4,967,275千円となり、前事業年度に比べ6,222,280千円減少(対前年同期比55.6%減)いたしました。

 

d.営業外収益、営業外費用、経常損益

 当事業年度において、営業外収益が8,189千円発生いたしました。主な要因は、有価証券利息を3,933千円、受取配当金3,500千円計上したこと等によるものであります。また、営業外費用が22,013千円発生いたしました。主な要因は、支払利息を21,809千円計上したこと等によるものであります。

 この結果、当事業年度における経常利益は4,953,451千円となり、前事業年度に比べ6,257,234千円減少(対前年同期比55.8%減)いたしました。

 

e.特別損益、法人税、住民税及び事業税、法人税等調整額、当期純損益

 当事業年度において、特別利益が474千円発生いたしました。要因は、固定資産売却益が474千円発生したことによるものであります。また、特別損失が299,068千円発生しました。主な要因は、投資有価証券評価損が297,854千円発生したこと等によるものであります。

 法人税、住民税及び事業税が1,563,633千円、法人税等調整額が56,360千円発生いたしました。

 この結果、当事業年度における当期純利益は3,034,863千円となり、前事業年度に比べ1,445,890千円減少(対前年同期比32.3%減)いたしました。

 

第9期第3四半期累計期間(自 2023年7月1日 至 2024年3月31日)

 当第3四半期累計期間(2023年7月1日~2024年3月31日)におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症の感染症法上の分類が2類から5類に移行された後、ウィズコロナによる行動制限や海外からの入国制限の緩和等により社会経済活動は正常化が進みました。一方、世界経済はウクライナ情勢の長期化や資源・エネルギー価格の高騰等による金融引締めが続くなか、世界経済の景気後退が懸念される状況となっております。わが国経済においても、雇用や所得環境は改善したものの、急速な為替変動がインフレに拍車をかけ、物価上昇による景気の減速が懸念されるなど、先行きは依然として不透明な状況が続いております。

 体外診断用医薬品業界におきましては、2020年初頭より発生した新型コロナウイルス感染症は、新たな変異株による感染拡大を繰り返すことで、感染拡大防止を目的とした遺伝子検査や抗原検査等の検査需要が急激に高まりました。他方、インフルエンザをはじめとした既存の感染症は、新型コロナウイルス感染症に対する感染防御の効果や受診控え等により、検査需要が減少するという影響を受けました。現在主流の変異株は、感染力は高いものの重症化リスクは低減しているといわれており、行動制限の緩和により社会経済活動は正常化に向かいました。さらには新型コロナウイルス感染症の感染症法上の分類が5類に移行された後、ウィズコロナ社会へと社会環境が変化したことで、過去に免疫獲得の機会を十分に持てなかった多くの既存感染症(インフルエンザ、アデノウイルス等)が増加しております。新型コロナウイルス感染症につきましては、5類移行後の感染者数の把握は全数把握から定点把握となりましたが、足元では新型コロナウイルス感染症とインフルエンザの同時流行は一服し小康状態にありますが、感染状況については依然として予断を許さないため、今後も新型コロナウイルス感染症及び既存感染症の流行状況については、動向を注視する必要があります。

 このようななか、当社はコーポレートスローガン「診断技術で、安心な毎日を。」を掲げ、社会的責務である供給責任を全うすることを最優先するとともに、市場のニーズに応えた新製品をリリースすることで、あらゆる感染症の拡大防止に貢献してまいります。

 

a.売上高

 当第3四半期累計期間における売上高は16,371,691千円となりました。これは主に、新型コロナウイルス感染症とインフルエンザの同時流行に伴い、当社の新型コロナウイルスをはじめとする抗原検査キット等の販売が堅調に推移し、国内総売上を15,908,685千円計上、輸出総売上を463,005千円計上したこと等によるものであります。

 

b.売上原価、売上総利益

 当第3四半期累計期間における売上原価は5,061,362千円となりました。これは主に、製品売上増加に伴うものであります。

 この結果、当第3四半期累計期間における売上総利益は11,310,328千円となりました。

 

c.販売費及び一般管理費、営業損益

 当第3四半期累計期間における販売費及び一般管理費は3,084,246千円となりました。これは主に、マーケティング等に係る業務委託が発生したことや外形標準課税による租税公課が増加したこと等によるものであります。

 この結果、当第3四半期累計期間における営業利益は8,226,082千円となりました。

 

d.営業外収益、営業外費用、経常損益

 当第3四半期累計期間において、営業外収益が42,119千円発生いたしました。主な要因は、補助金収入を32,733千円、受取配当金5,343千円計上したこと等によるものであります。また、営業外費用が19,009千円発生いたしました。主な要因は、支払利息を18,445千円計上したこと等によるものであります。

 この結果、当第3四半期累計期間における経常利益は8,249,192千円となりました。

 

e.特別損益、法人税、住民税及び事業税、法人税等調整額、当期純損益

 当第3四半期累計期間において、特別利益が1,841千円発生いたしました。要因は、新株予約権戻入益が1,841千円発生したことによるものであります。また、特別損失が4,891千円発生しました。主な要因は、固定資産除却損が4,611千円発生したこと等によるものであります。

 法人税、住民税及び事業税が2,339,607千円発生いたしました。

この結果、当第3四半期累計期間における当期純利益は5,906,535千円となりました。

 

③ 財政状態の分析

 当社は、運転資金及び設備資金につきましては、内部資金又は金融機関からの借入により資金調達することとしております。また、当社は、資金の効率的な活用と借入金利息の削減を目的として、月次での資金計画などにより資金管理を行っております。

 なお、財政状態の分析は、「(1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態の状況」に記載のとおりであります。

 

④ キャッシュ・フローの状況の分析

 当社のキャッシュ・フローの状況の分析については、「(1)経営成績等の状況の概要 ③キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

 

⑤ 資本の財源及び資金の流動性についての分析

a.資本の財源

 当社の資金需要については、人件費や外注費、支払手数料、広告宣伝費等の販売費及び一般管理費等の営業活動に必要な運転資金が主なものであります。これらの資金需要に対する資本の財源は、手許資金、営業キャッシュ・フロー及び金融機関からの借入により必要とする資金を調達しております。なお、当面の資金繰りのための資金は十分に確保していると判断しております。

 

b.資金の流動性に関する分析

 月次での資金計画などにより資金管理に努めており、また、当座貸越契約により、必要に応じて資金調達ができる体制を整えることで十分な流動性を確保しております。

 

⑥ 経営成績に重要な影響を与える要因について

 当社の経営成績に重要な影響を与える要因について、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。

 

⑦ 経営戦略の現状と見通し

 当社の経営戦略の現状と見通しについては、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおりであります。

 

(参考情報)

 当社は経営成績の推移を把握するために、以下の算式により算出されたEBITDA及びEBITDAマージンを重要な経営指標として位置づけており、過去の推移は以下のとおりです。なお、第4期から第6期は、連結財務諸表を作成していたため、連結財務諸表の数値を記載しております。

 

・EBITDA及びEBITDAマージン

(単位:千円)

 

(株)タウンズホールディングス

(連結)

当社

(単体)

 

第4期

第5期

第6期

第7期

第8期

第9期

決算期

2019年6月期

2020年6月期

2021年6月期

2022年6月期

2023年6月期

2024年6月期

第3四半期

累計期間

売上高

4,708,742

4,121,609

5,906,350

17,456,987

15,673,099

16,371,691

うち、厚生労働省との買取取引に係る売上高

8,411,808

厚生労働省との買取取引分を除く売上高

9,045,179

売上総利益

2,717,500

2,547,447

3,543,171

14,682,308

9,199,913

11,310,328

うち、厚生労働省との買取取引に係る売上総利益

7,762,670

厚生労働省との買取取引分を除く売上総利益

6,919,637

営業利益又は営業損失

△1,112,106

746,311

1,143,757

11,189,556

4,967,275

8,226,082

厚生労働省との買取取引分を除く営業利益

3,426,885

+減価償却費

468,293

460,223

523,752

567,260

639,973

506,682

+特許権償却費

5,000

5,000

5,000

+のれん償却費

2,057,457

EBITDA

1,418,644

1,211,535

1,672,510

11,756,816

5,607,249

8,732,764

厚生労働省との買取取引分を除くEBITDA

3,994,146

EBITDAマージン

30.1%

29.4%

28.3%

67.3%

35.8%

53.3%

厚生労働省との買取取引分を除くEBITDAマージン

44.2%

 (注)1.EBITDA=営業利益又は営業損失+減価償却費+特許権償却費+のれん償却費

2.EBITDAマージン=EBITDA÷売上高

3.厚生労働省との買取取引分を除く営業利益=営業利益-厚生労働省との買取取引に係る売上総利益

4.厚生労働省との買取取引分を除くEBITDA=厚生労働省との買取取引分を除く営業利益+減価償却費+特許権償却費+のれん償却費

5.厚生労働省との買取取引分を除くEBITDAマージン=厚生労働省との買取取引分を除くEBITDA÷厚生労働省との買取取引分を除く売上高

 

5【経営上の重要な契約等】

(1) 業務契約

契約の名称

取引基本契約書

製造委託基本契約書

製造委託基本契約書

契約の当事者

当社

当社

当社

相手先

(株)スズケン

DICプラスチック(株)

(株)シン・コーポレイション

契約の概要

医薬品、医療用具、診断薬等の医療用品の売買に関する契約

体外診断用医薬品等の製造、これに付随する保管、在庫管理、荷造り及び納入の業務委託

体外診断用医薬品等の製造、これに付随する保管、在庫管理、荷造り及び納入の業務委託

契約締結年月

2009年2月

2020年5月

2020年6月

契約期間

1年間

(以後1年間自動更新)

2021年6月30日まで

(以後1年間自動更新)

2021年6月30日まで

(以後1年間自動更新)

 

契約の名称

2023年度共同販売促進活動(コプロ)に関する契約書

契約の当事者

当社

相手先

塩野義製薬(株)

契約の概要

塩野義製薬(株)のMR及びその他スタッフを使用して、日本における当社の特定された製品の販売促進活動を行い、当該活動に対する報酬を支払う契約

契約締結年月

2023年8月

契約期間

契約締結日からコプロ期間終了(2024年3月31日)後、報酬支払い完了まで

 

(2) シンジケートローン

当社は2024年2月14日開催の取締役会決議に基づき、2024年3月29日付でシンジケートローン契約を締結しました。

① 資金使途    新工場建設に係る設備投資資金

② 借入先     株式会社三菱UFJ銀行

          株式会社静岡銀行

          株式会社商工組合中央金庫

          株式会社りそな銀行

③ 組成金額    借入金A:3,918,000千円

          借入金B:6,420,000千円

④ 借入利率    基準金利+スプレッド

⑤ 契約締結日   2024年3月29日

⑥ 返済期限    借入金A:2026年9月30日

          借入金B:2034年3月31日

⑦ 返済方法    借入金A:期限一括返済

          借入金B:2026年3月末日を初回とし3か月毎に73分の1を返済し、残額を満期日に返済

(延長オプション10年)

⑧ 担保等     新工場土地建物(抵当権)

⑨ 財務制限条項

  A) 各事業年度の末日における貸借対照表における純資産の部の金額を、当該決算期の直前の決算期の末日又は2023年6月に終了する決算期の末日における借入人の単体の貸借対照表における純資産の部の金額のいずれか大きい方の75%の金額以上にそれぞれ維持すること。

  B) 各事業年度にかかる損益計算書上の経常損益に関してそれぞれ2期連続して経常損失としないこと。

6【研究開発活動】

第8期事業年度(自 2022年7月1日 至 2023年6月30日)

 当社は、体外診断用医薬品事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載を省略しております。

 

(1)研究開発への取り組み

 体外診断用医薬品において化学発光法や核酸増幅法などの技術が普及し、市場における競争が激化するなか、当社は迅速かつ正確な検査を通した医療機関と患者双方への更なる価値提供を目指して、POCTの技術革新、新製品開発及び既存製品の性能改善などの研究開発を行っております。また、新たなコア技術の開発を目的とし、デジタルイムノアッセイや簡易尿検査システムに関する技術開発活動を行っております。並行して各製品に使用する抗体等、原料の創出にかかる研究開発にも注力しています。

 

(2)研究開発体制

 研究開発については、開発本部が開発計画を統括し、研究開発部にて研究開発活動を実施しております。

 研究開発部には40名(臨時社員含む)が研究員として所属しており、正社員のうち約7割が博士・修士の学位を持ち、6割以上が5年以上の当社における研究開発実務経験を有しております。加えて、開発本部の各マネージャークラスの社員は化学反応、抗体反応、酵素反応、知的財産などの各技術分野において、豊富な業務経験、関連技術に係る専門資格を有しており、高度かつ多様な専門性を有する研究開発体制を構築しております。また社内に不足する知見を補うために、高い専門性を有する外部顧問を招聘し、一定の頻度で社内勉強会などを開催しております。

 研究員は、担当技術分野ごとに、応用開発課、技術開発課及び基礎開発課の3つのグループに所属しております。研究開発活動においては、社内の開発案件会議で討議され承認された研究開発テーマごとに、研究開発部と各課を横断したメンバーからなるプロジェクトチームが組成され、研究開発活動に取り組んでおります。

 また、臨床検査部では臨床検査受託(サービス)の開始に向けた準備をしており、受託検査を通して独自の検査サービスを提供する他、臨床現場の課題やニーズをより深く把握し、研究開発に活用してまいります。

 

(3)主な研究開発活動とその成果

 当事業年度における主な研究開発活動とその成果は、以下のとおりであります。

 2023年5月に、業務提携先であるiBody(株)のEcobody技術により開発した抗SARS-CoV-2ウサギモノクローナル抗体を適用した、新たな新型コロナウイルス抗原検査キットが承認されております。鼻腔及び鼻咽頭検体を使用する製品、また唾液を検体とする製品、双方に当該新抗体は適用されており、従来製品よりも更に性能を向上することを目的とした研究開発の成果になります。

 新型コロナウイルス抗原検査キットについては、更なる性能向上を目的とした改良・改善を継続し、また新たなコア技術を活用したPOCTの開発に向け、研究開発に取り組んでおります。

 2023年4月には、血中亜鉛濃度を簡便に測定する検査システムとして、亜鉛キット「アキュリード®亜鉛」とその測定機である「アキュリード®」を開発し、ノーベルファーマ社より販売を開始しております。当該製品は医療現場にて血中亜鉛濃度の測定結果を速やかに把握し、治療方針の策定に寄与することを目的とした研究開発の成果として、製品化されたものです。

 本製品は、当社の今後の注力領域の一つである慢性疾患領域の製品です。今後も、慢性疾患やヘルスケア分野における新製品の実現に向け、研究開発に取り組んでまいります。

 

(4)研究開発活動の総額

 当事業年度における研究開発費の総額は723,371千円です。

 

第9期第3四半期累計期間(自 2023年7月1日 至 2024年3月31日)

(1)研究開発への取り組み

 当第3四半期累計期間においては、第8期に引き続き、POCTの技術革新、新製品開発及び既存製品の性能改善などの研究開発を継続しております。また、デジタルイムノアッセイや簡易尿検査システムに関する基礎技術の確立を目指した開発活動を行っております。並行して各製品に使用する抗体等、原料の創出にかかる研究開発にも注力しています。

 

(2)研究開発体制

 研究開発については、開発本部が開発計画を統括し、研究開発部にて研究開発活動を実施しております。

 研究開発部には43名(臨時社員含む)が研究員として所属しており、正社員のうち約7割が博士・修士の学位を持ち、6割以上が5年以上の当社における研究開発実務経験を有しております。加えて、開発本部の各マネージャークラスの社員は化学反応、抗体反応、酵素反応、知的財産などの各技術分野において、豊富な業務経験、関連技術に係る専門資格を有しており、高度かつ多様な専門性を有する研究開発体制を構築しております。また社内に不足する知見を補うために、高い専門性を有する外部顧問を招聘し、一定の頻度で社内勉強会などを開催しております。

 研究員は、担当技術分野ごとに、応用開発課、技術開発課及び基礎開発課の3つのグループに所属しております。研究開発活動においては、社内の開発案件会議で討議され承認された研究開発テーマごとに、研究開発部と各課を横断したメンバーからなるプロジェクトチームが組成され、研究開発活動に取り組んでおります。

 臨床検査部には7名(臨時社員含む)が所属しており、臨床検査受託(サービス)の開始に向けた準備を進めております。研究開発部で実施される研究開発活動のサポートを行い円滑に研究開発活動が進むよう連携を図っており、また受託検査による検査サービスの研究開発活動にも取り組んでおります。

 

(3)主な研究開発活動とその成果

 当第3四半期累計期間における主な研究開発活動とその成果は、以下のとおりであります。

 2023年11月に、業務提携先であるiBody(株)のEcobody技術により開発した抗SARS-CoV-2ウサギモノクローナル抗体を適用した、新たな新型コロナウイルス抗原検査キットであるイムノエース®SARS-CoV-2Ⅲ(鼻腔及び鼻咽頭検体を使用する製品)、及びイムノエース®SARS-CoV-2 SalivaⅡ(唾液を検体とする製品)の製造承認が取得されました。

 前期より継続して、デジタルイムノアッセイの基礎技術開発を進め、検出用ディスク及び検出用装置の開発では医療機器製造業を有する企業との連携の元、これら装置等の設計と量産化へ向けた取り組みを継続しております。また検出用ディスクに実装する試薬においても、既存のイムノクロマト法製品にて培われた知見を取り入れ、量産される製品を念頭に置いた開発を進めております。

 簡易尿検査システムでは既存の検査装置による測定と対比しつつ、当該システムの基礎技術開発を進めております。また本件においても量産化を見据え、使用する部材の最適化等の検討も並行して実施しております。

 原料開発においては、今後開発に着手する項目における新規抗体開発を進め、業務提携先であるiBody(株)のEcobody技術による新規抗体作出を実施しております。また検体前処理や検出反応に使用する酵素の探索も実施しております。

 

(4)研究開発活動の総額

 当第3四半期累計期間における研究開発費の総額は693,383千円です。