第一部 【企業情報】

第1 【企業の概況】

1 【主要な経営指標等の推移】

(1) 連結経営指標等

 

回次

国際会計基準

第3期

第4期

第5期

第6期

第7期

決算年月

2021年4月

2022年4月

2023年4月

2024年4月

2025年4月

売上収益

(千円)

651,343

910,368

1,792,991

2,852,561

2,456,956

税引前当期損失(△)

(千円)

4,895,986

5,563,449

9,314,001

9,219,842

21,550,288

親会社の所有者に帰属する

当期損失(△)

(千円)

4,893,050

5,484,122

9,264,266

9,181,329

21,551,603

親会社の所有者に帰属する当期包括利益

(千円)

4,924,748

5,663,531

9,425,945

10,587,977

19,741,201

親会社の所有者に帰属する持分

(千円)

7,277,400

14,091,753

14,890,596

5,401,357

6,126,355

資産合計

(千円)

10,995,910

20,125,497

30,437,660

24,990,809

33,625,291

1株当たり親会社所有者

帰属持分

(円)

20,965.86

172.04

379.46

59.45

52.13

基本的1株当たり

当期損失(△)

(円)

7,302.14

73.66

111.16

101.45

188.91

希薄化後1株当たり

当期損失(△)

(円)

7,302.14

73.66

111.16

101.45

188.91

親会社所有者帰属持分比率

(%)

66.2

70.0

48.9

21.6

18.2

親会社所有者帰属持分

当期利益率

(%)

株価収益率

(倍)

営業活動による

キャッシュ・フロー

(千円)

4,878,725

5,501,610

8,074,404

12,822,877

12,250,750

投資活動による

キャッシュ・フロー

(千円)

414,144

662,665

1,634,729

1,182,820

1,043,993

財務活動による

キャッシュ・フロー

(千円)

5,385,481

13,794,672

15,227,617

4,145,924

20,818,761

現金及び現金同等物

の期末残高

(千円)

8,943,391

16,869,015

22,678,990

14,196,227

21,300,864

従業員数

(名)

146

276

394

494

577

(外、平均臨時雇用者数)

(21)

(28)

(34)

(32)

(35)

 

(注) 1.上記指標は、国際会計基準(以下、「IFRS」)により作成しております。

     2.第3期のIFRSに基づく連結財務諸表については、金融商品取引法第193条の2第1項の規定による監査証明を受けておりません。

3.第4期から第7期までのIFRSに基づく連結財務諸表については、金融商品取引法第193条の2第1項の規定に基づき、EY新日本有限責任監査法人により監査を受けております。

4.第3期から第7期までについて、多額の先行投資と長期の開発期間を要する衛星及び宇宙機器の研究開発に従事していることにより、税引前当期損失を計上しております。また、同様の理由により、営業活動によるキャッシュ・フローがマイナスとなっております。

5.基本的1株当たり当期損失については、普通株式の期中平均株式数により算定しております。なお、当社が発行する種類株式は、当期利益の分配に関して普通株式と同じ権利を有することから、1株当たり利益の計算上、普通株式数に含めております。

6.第3期から第7期までの希薄化後1株当たり当期損失については、当社が発行する新株予約権は逆希薄化効果を有しており、希薄化効果を有する潜在株式が存在しないため、基本的1株当たり当期損失と希薄化後1株当たり当期損失は同額であります。

7.第3期から第7期までの親会社所有者帰属持分当期利益率については、親会社の所有者に帰属する当期損失が計上されているため、記載しておりません。

8.第3期から第6期までの株価収益率については、当社株式が非上場であるため、記載しておりません。また、第7期の株価収益率については、基本的1株当たり当期損失が計上されているため、記載しておりません。

9.従業員数は就業人員(当社グループから当社グループ外への出向者を除き、当社グループ外から当社グループへの出向者を含む。)であり、臨時雇用者数(アルバイト及びパートタイマーを含み、人材派遣会社からの派遣社員を除く。)は、年間の平均人員を( )内に外数で記載しております。

10.当社は、2022年3月4日付で普通株式1株につき100株の割合で株式分割を行っております。当該株式分割については、第4期の期首に当該株式分割が行われたと仮定し、1株当たり親会社所有者帰属持分、基本的1株当たり当期損失及び希薄化後1株当たり当期損失を算定しております。

 

(2) 提出会社の経営指標等

 

回次

日本基準

第3期

第4期

第5期

第6期

第7期

決算年月

2021年4月

2022年4月

2023年4月

2024年4月

2025年4月

売上高

(千円)

110

396

6,708

987

2,467

経常損失(△)

(千円)

1,248,789

5,466,927

9,350,844

6,356,757

15,395,842

当期純損失(△)

(千円)

17,886,772

5,460,145

12,784,164

8,004,085

23,408,254

資本金

(千円)

100,000

100,000

100,000

100,000

10,297,486

発行済株式総数

 

 

 

 

 

 

普通株式

(株)

280,050

81,911,100

30,884,900

90,859,200

117,517,800

A種優先株式

(株)

53,900

5,390,000

B種優先株式

(株)

93,024

9,179,100

C種優先株式

(株)

74,715

7,471,500

D種優先株式

(株)

138,764

13,876,400

E種優先株式

(株)

54,150

5,956,500

F種優先株式

(株)

10,063,400

G種優先株式

(株)

7,226,400

純資産額

(千円)

9,218,313

16,271,805

13,744,108

6,836,764

4,103,090

総資産額

(千円)

9,282,202

17,879,664

20,352,003

19,739,608

17,929,082

1株当たり純資産額

(円)

18,283.61

197.32

398.24

73.03

30.82

1株当たり配当額

(円)

(1株当たり中間配当額)

(円)

(-)

(-)

(-)

(-)

(-)

1株当たり当期純損失

金額(△)

(円)

26,693.33

73.34

153.40

88.44

205.18

潜在株式調整後

1株当たり当期純利益金額

(円)

自己資本比率

(%)

98.1

90.4

67.0

33.6

20.2

自己資本利益率

(%)

株価収益率

(倍)

配当性向

(%)

従業員数

(外、平均臨時雇用者数)

(名)

8

15

24

31

35

(-)

(-)

(-)

(-)

(2)

株主総利回り

(%)

(比較指標:-)

(%)

(-)

(-)

(-)

(-)

(-)

最高株価

(円)

1,581

最低株価

(円)

513

 

(注) 1.第3期から第7期までについて、人件費をはじめ販売費及び一般管理費を計上したことに加え、関係会社貸付金に対する貸倒引当金繰入額を計上したこと(第3期、第4期、第5期、第6期及び第7期)、関係会社貸付金(利息相当額を含む)に対する貸倒損失を計上したこと(第6期及び第7期)、関係会社株式評価損を計上したこと(第3期、第5期及び第7期)、また、関係会社における借入金に対する債務保証損失引当金繰入額を計上したこと(第4期及び第5期)等により、経常損失及び当期純損失を計上しております。

2.第3期及び第5期の1株当たり純資産額については、純資産の部の合計額よりA種優先株式、B種優先株式、C種優先株式、D種優先株式、E種優先株式、F種優先株式及びG種優先株式の払込金額を控除した金額を普通株式の期末発行済株式数で除して算定しております。

3.当社は、2023年10月6日付で第三者割当増資(G種優先株式800,000株の発行)が行われた結果、資本金は600,000千円となり、発行済株式総数は、普通株式30,884,900株、A種優先株式5,390,000株、B種優先株式9,179,100株、C種優先株式7,471,500株、D種優先株式13,876,400株、E種優先株式5,956,500株、F種優先株式10,063,400株、G種優先株式8,026,400株となりました。その後、2024年3月15日付で普通株式を対価とする取得条項に基づき、発行済優先株式の全てを当社が取得し、引き換えに優先株主に対して当社普通株式の交付を行い、同日付で当社が取得した優先株式の全てを消却しております。

4.第3期から第7期までの1株当たり配当額及び配当性向については、配当を行っていないため、記載しておりません。

5.1株当たり当期純損失金額については、普通株式の期中平均株式数により算定しております。

6.潜在株式調整後1株当たり当期純利益金額については、潜在株式は存在するものの、第3期から第6期までにおいて当社株式は非上場であり、期中平均株価が把握できないため、記載しておりません。また、第7期においては、1株当たり当期純損失が計上されているため、記載しておりません。

7.第3期から第7期までの自己資本利益率については、当期純損失が計上されているため、記載しておりません。

8.第3期から第6期までの株価収益率については、当社株式が非上場であるため、記載しておりません。また、第7期の株価収益率については、1株当たり当期純損失が計上されているため、記載しておりません。

9.従業員数は、出向者を含まない就業人員数であり、役員は含めておりません。

10.第3期の財務諸表については、会社計算規則(2006年法務省令第13号)の規定に基づき算出した各数値を記載しており、金融商品取引法第193条の2第1項の規定による監査証明を受けておりません。

11.第4期から第7期までの財務諸表については、金融商品取引法第193条の2第1項の規定に基づき、EY新日本有限責任監査法人より監査を受けております。

12.当社は、2022年3月4日付で普通株式1株につき100株の割合で株式分割を行っております。当該株式分割については、第4期の期首に当該株式分割が行われたと仮定し、1株当たり純資産額及び1株当たり当期純損失金額を算定しております。

13.2024年6月5日付をもって東京証券取引所グロース市場に株式を上場したため、第3期から第7期までの株主総利回り及び比較指標については、記載しておりません。

14.最高株価及び最低株価は東京証券取引所グロース市場におけるものであります。なお、2024年6月5日付をもって同取引所に株式を上場したため、それ以前の株価については記載しておりません。

 

 

(参考情報)

当社グループの変遷について

当社、株式会社アストロスケールホールディングスは、2018年11月15日に合同会社アストロスケールとして設立されました。2018年12月20日に株式会社へ組織変更するとともに、商号を「株式会社アストロスケールホールディングス」に変更いたしました。その後、当社の子会社であるAstroscale Singapore Pte. Ltd.を合併会社、当社の親会社(当時)であったASTROSCALE PTE. LTD.を被合併会社とするAmalgamation(シンガポール会社法上の組織再編)を実施したことにより、当社が当社グループの親会社となり、現在に至っております。

当該組織再編につきましては、海外会社による株式上場の場合は国内機関投資家が売買できない等、その流動性に懸念があったため、主に、当社が日本法人として株式上場することにより、かかる証券の流動性への懸念を低減し、もって円滑な東京証券取引所への株式上場を実現するために実行しました。なお、当社は2024年6月5日に東京証券取引所グロース市場に株式を上場しました。

 


 

(注) 1.2019年1月に実施したAmalgamationにより消滅。

2.2019年1月に実施したAmalgamationにおける存続会社。なお、本書提出日現在において、シンガポール子会社であるAstroscale Singapore Pte. Ltd.は休眠状態にあります。

 

 

2 【沿革】

提出会社の設立時点の親会社であるASTROSCALE PTE. LTD.は、創業者である代表取締役社長兼CEOの岡田光信が、2013年5月に将来の世代のために、安全で持続可能な宇宙開発を実現することを目指して、スペースデブリ(宇宙ゴミ。以下、「デブリ」)を除去することを目的とする初の民間企業として、シンガポールにて創業しました。

その後、上記の事業目的のもと、研究開発拠点として、2015年2月には日本に、2017年3月には英国に連結子会社を設立しました。2018年11月には合同会社アストロスケールを設立し、同年12月に同社を株式会社化し、商号を「株式会社アストロスケールホールディングス」に変更しました。2019年1月には株式会社アストロスケールホールディングスが、組織再編により当社グループの親会社となりました。

 

株式会社アストロスケールホールディングスの沿革は次の通りであります。

年月

概 要

2018年11月

小型衛星及び宇宙機器等の研究開発事業、宇宙空間の保全事業、並びに宇宙利用サービス事業を営む会社の株式を保有することにより、当該会社の事業活動を支配・管理することを目的として、東京都墨田区に資本金10千円で合同会社アストロスケールを設立。

2018年12月

合同会社アストロスケールを株式会社化し、当社の商号を株式会社アストロスケールホールディングスに変更。

2019年1月

当社の親会社であるASTROSCALE PTE. LTD.と、当社の連結子会社であるAstroscale Singapore Pte. Ltd.との間で、ASTROSCALE PTE. LTD.を被合併会社、Astroscale Singapore Pte. Ltd.を合併会社とし、その対価として当社の普通株式及び優先株式をASTROSCALE PTE. LTD.の株主に割当交付するAmalgamation(注1)を実施したことにより、当社が当社グループの親会社となる。

2019年3月

軌道上サービスの事業開発等を目的とした連結子会社、Astroscale U.S. Inc.を米国に設立。

2020年3月

静止衛星に対する寿命延長サービス等を提供するための技術開発等を目的とした連結子会社、Astroscale Israel Ltd.をイスラエルに設立。

2020年6月

イスラエルに所在する連結子会社Astroscale Israel Ltd.がEffective Space Solutions R&D Ltd.(イスラエル)から寿命延長サービス(Life Extension Service)事業を譲受。

2021年3月

連結子会社の経営管理と資金供給の観点からAstroscale Singapore Pte. Ltd.の連結子会社である株式会社アストロスケール及びAstroscale Ltdの全株式の譲渡を受け、株式会社アストロスケール及びAstroscale Ltdは、当社の完全連結子会社となる。

2021年3月

英国宇宙庁よりミッションライセンスを取得し、デブリ除去技術実証衛星(ELSA-d)を搭載したロケットの打上げに成功、ELSA-d技術実証実験が始動。

2021年8月

ELSA-dによる模擬デブリの捕獲に成功。

2022年1月

~4月

ELSA-dにより、自律制御機能と航法誘導制御アルゴリズムや絶対航法から相対航法への移行を含むデブリ除去のためのコア技術を実証。

2023年5月

本社を東京都墨田区内で移転。

2023年6月

軌道上サービスの事業開発等を目的とした連結子会社、Astroscale France SASをフランスに設立。

2024年2月

当社グループのサービサー衛星であるADRAS-Jを搭載したロケットの打上げに成功。

2024年6月

東京証券取引所グロース市場に株式を上場。

2024年5月

~11月

ADRAS-Jにより、対象デブリ後方約50mへの接近及び定点観測(計3回)並びに周回観測(計4回)に成功。その後、2回の最終接近を実施しPAF(注2)の下方約15mへの接近・位置付けに成功。さらに、各段階でアボート(注3)による衝突回避機能の有効性を実証。

 

 (注) 1.シンガポール会社法上の組織再編。以下同じ。

2.PAF:Payload Attach Fitting の略称。ロケットと衛星をつなぐ台座。将来デブリの除去としてその捕獲や軌道離脱も行うミッションADRAS-J2で捕獲箇所として想定。

3.アボート:対象物体への衝突を回避するためマヌーバを実施し安全な距離まで待避すること。

 

 

ASTROSCALE PTE. LTD.の沿革は次の通りであります。

年月

概 要

2013年5月

シンガポールに資本金280千シンガポールドルで設立。

2014年8月

航空宇宙関連部品製造を行う株式会社由紀精密(現 由紀ホールディングス株式会社の子会社)との業務資本提携契約を締結。

2015年2月

デブリの除去に関する小型衛星、宇宙機器、製造機器等の設計、研究、開発、加工、組立、保守及び販売等を目的とした連結子会社、株式会社アストロスケールを東京都墨田区に設立。

2017年3月

地上管制、ライセンシング、保険契約の締結等を目的とした連結子会社、Astroscale Ltdを英国に設立。

2018年7月

神奈川県横浜市戸塚区に自社アンテナを設置。

2018年11月

連結子会社として、合同会社アストロスケールを東京都墨田区に、当社グループの研究・開発及び製造・販売を統括する中間持株会社として、Astroscale Singapore Pte. Ltd.をシンガポールに設立。

2019年1月

当社の連結子会社であるAstroscale Singapore Pte. Ltd.を合併会社、当社の親会社であったASTROSCALE PTE. LTD.を被合併会社とし、その対価として当社の普通株式及び優先株式をASTROSCALE PTE. LTD.の株主に割当交付するAmalgamationを実施したことにより、当社の完全連結子会社となる。

 

 

3 【事業の内容】

当社グループは、当社並びに連結子会社である株式会社アストロスケール(日本)、Astroscale Ltd(英国)、Astroscale U.S. Inc.(米国)、Astroscale France SAS(フランス)、Astroscale Israel Ltd.(イスラエル)及びAstroscale Singapore Pte. Ltd.(シンガポール)(注1)で構成されております。

当社グループは、宇宙空間における軌道上サービス(注2)を通じて、人工衛星運用者やロケット事業者の事業価値の向上及び宇宙の持続的な利用に貢献してまいります。技術面では、コア技術である「宇宙空間の非協力物体(注3)に対するRPO技術(注4)」及び関連技術の研究開発並びに宇宙空間で提供されるサービスの開発を行っております。RPO技術は、人工衛星やデブリの除去、軌道変更・軌道維持、燃料補給、観測・点検、再利用・交換、製造・修理といった様々な軌道上サービスを実現可能にするものです(注5)。

事業面では、非協力物体に対するRPO技術の実証ミッションである、「ELSA-d(後述)」及び「ADRAS-J(後述)」による成果をもとに、2030年までに観測・点検、寿命延長・燃料補給、並びにデブリ除去をそれぞれ複数ミッション打ち上げることで軌道上サービスを日常的なものにすべく、日本、英国、欧州、米国等において、調査研究・研究開発・宇宙空間での実証・サービス等購入に関する契約の締結や補助金の獲得等に取り組んでおります。2035年までにさらに部品交換・修理といったサービス分野にまで広げ、政府機関・防衛機関からの需要獲得を継続・拡大しつつ、民間事業者からの需要獲得拡大によりさらに成長することを目指しております。

 


図1 当社グループが取り組む軌道上サービスと時間軸

 

(注) 1.本書提出日現在において、Astroscale Singapore Pte. Ltd.は休眠状態にあります。

2.人工衛星やデブリ等に対して軌道上において提供するサービスのことをいいます。

3.「宇宙空間の非協力物体」とは、デブリなど、位置情報を発信せず自由運動(回転など)をして宇宙空間を飛翔している物体を指します。

4.Rendezvous and Proximity Operations(ランデブ・近傍運用)技術の略です。

5.現時点で構想段階にあり、提供が開始されていないサービスも含みます。

6.以下、本「3 事業の内容」においては、個別に明記している場合を除き、1米ドル=140円、1ユーロ=150円、1英ポンド=175円の円換算レートを使用しております。

 

 

 1 宇宙環境と軌道上サービスの必要性

1.1 軌道について

人工衛星が通る道筋を「軌道」といい、衛星は、1つの決まった平面の中で地球を周回しています。この平面は「軌道面」と呼ばれ、人工衛星が地球を回る軌道面には、必ず地球の中心が含まれます。地球を回る軌道のうち、高度2,000km以下の軌道を低軌道(low Earth orbit、以下「LEO」)、高度約36,000kmの軌道を静止軌道(geostationary orbit、以下「GEO」)といいます。

低軌道は地表に近いため、高精度観測を必要とする観測衛星に多用されます。国際宇宙ステーションも低軌道を飛行しています。静止軌道は、同軌道上の衛星が地球の自転周期と同じ時間(約24時間)で地球を一周し、地上の観測者から相対的に静止しているように見えることから「静止軌道」と呼ばれております。静止軌道上の衛星からは地球の片半球全体を常に俯瞰できるため、気象衛星や通信・放送衛星に適します。当社グループは、低軌道及び静止軌道の双方において軌道上サービスを提供すべく、研究開発を行っております。

 


図2 人工衛星が通る道筋である「軌道」

 

1.2 衛星データ利用の活発化

グローバル経済は人工衛星から受け取るデータに大きく依存しています。自動車、船舶及び飛行機の交通管制、天気予報、衛星放送並びに災害監視のほか、農業や漁業にも衛星データがリアルタイムに活用されています。その他にも、物流、金融市場、インターネット、安全保障等の地球上の社会基盤インフラサービスが、宇宙技術と密接不可分に様々な形で提供されています。

国連が定めた持続可能な開発目標(SDGs)の実現にも、衛星は大きく貢献しています。SDGsは17の目標とそれに因んだ169のターゲットによって構成されていますが、国連宇宙部等の共同研究によれば、そのうち65個のターゲットは地球観測や位置情報といった衛星技術を直接的に必要としており、通信衛星を含めればさらに衛星技術を必要とするターゲットの数は増えると考えられています(注1)。

例えば、1番目の目標である「貧困をなくそう」については、インターネット網が行き届かない貧困地域において、通信衛星が宇宙からデータ通信サービスを提供することでモバイルバンキングシステムを実現しています。また、13番目の目標である「気候変動に具体的な対策を」については、大気、海洋及び地表における気候データの5割以上は衛星の観測データによるものであり、気候変動予測などに役立てられています。これらは一例であり、様々なSDGs目標の実現のために、衛星データの多様な活用がなされています。

 


図3 地球上の社会基盤インフラサービスは宇宙技術に大きく依存

 

(注) 1.国連宇宙部: https://sdgs.un.org/un-system-sdg-implementation/united-nations-office-outer-space-affairs-unoosa-24523

 

1.3 宇宙環境の悪化(これまで)

宇宙空間においては、運用終了や故障により役目を終えた人工衛星、人工衛星の打上げに使われたロケットの上段、それらの爆発や衝突で生じた破片などが、デブリとなり地球の周囲を秒速約7〜8kmという非常に速い速度で飛翔しています。その数は年々増加し続けており、大きさが10cm以上の観測可能なデブリは約42,330個となり、大きさが数cm級のものも含めると約120万個にのぼります(2025年7月現在、注1)。また、大型のデブリは質量数トン、大きさ数十m級のサイズになります。稼働中の人工衛星の数も増加しており、約12,200機となっています(2025年7月現在、注1)。これらの人工衛星も、運用終了や故障等により将来のデブリになる可能性があります。

 

(注) 1.欧州宇宙機関(European Space Agency、以下「ESA」)“Space debris by the numbers (Information last updated on 23 July 2025)”

 


図4 デブリによる宇宙環境の悪化(イメージ図)(注2)

 

(注) 2.左:アメリカ航空宇宙局(the National Aeronautics and Space Administration(以下「NASA」)ゴダード宇宙飛行センター、右:ESAの公表資料をもとに当社作成

 


図5 地球周回軌道上における物体数の推移(注3)

 

(注) 3.NASA Orbital Debris Program Office(https://orbitaldebris.jsc.nasa.gov/quarterly-news/pdfs/odqnv27i1.pdf)

 

宇宙空間の物体(衛星やデブリ)の数は、図5が示すように、増加傾向にあります。特に、2020年以降は、コンステレーション衛星を含む人工衛星の打上げなどにより増加のペースが速まっています。宇宙空間における物体の数は既に危機的な水準にまで達しており、低軌道における衛星の他物体との1km以内のニアミスの数は、2020年以降、加速度的に増加しています(図6)。実際に物体同士の衝突も起きており、小さな破片が多数発生しております。これらの破片は、大きさわずか数mmであっても、衛星やロケットなどの宇宙機に衝突すれば壊滅的な被害を生じさせることが想定されます。宇宙空間の物体の連鎖反応的な衝突はいつ起きてもおかしくない状態であり、速やかに対策を講じなければ、やがて宇宙空間は利用できなくなり、交通管制、通信、放送、測位といった宇宙技術の恩恵を受けられなくなると考えます。したがって、デブリの増加防止及び(衝突や爆発をする前の)既存デブリの除去が、宇宙の持続利用のために急務となっています。

 


 図6 低軌道(LEO)における人工衛星の他物体との1km以内のニアミス数(月次)(注4)

 

(注) 4.The Center for Space Standards & Innovation at COMSPOC, with the Space Data Association, “Evaluation of LEO Conjunction Rates Using Historical Flight Safety Systems and Analytical Algorithms” (2021) をもとに当社作成

 

 

1.4 宇宙環境の悪化(これから)

宇宙利用は拡大基調にあります。数十機から数千機という多数の小型衛星を一体的に運用する「衛星コンステレーション」という新たな運用形態により、観測衛星による観測頻度を大幅に向上させたり、静止軌道以外での衛星通信を可能にしたりする新たなサービスが生まれています。加えて、ビッグデータ処理や、AI解析、IoTなどの宇宙分野以外における変革により、新たな宇宙利用サービスの創造が起きています。

更に、従来は国が主体となって宇宙開発を行うことが一般的でしたが、宇宙の事業主体が官から民へ移行しつつあります。米国を始めとする先進国では、商業ベースで、衛星の開発・運用や打上げサービス等を提供できるベンチャー企業等を政策的に育成・強化し、国はこれらの事業者からサービスを調達する方式が徐々に採用され始めています。

このような、新たなサービスの創造並びに衛星の製造、打上げ及び運用に伴う宇宙利用コストの大幅な低下が、宇宙利用を加速させています。その結果、2030年までに、宇宙空間における宇宙機及びデブリがともに大幅に増加すると予見されており(図7)、宇宙環境は今にも増して加速度的に悪化すると考えられています。

 


図7 稼働中の人工衛星及び観測可能なデブリの増加並びに今後加速する打上げ(注1)

 

(注) 1.ESA“Space debris by the numbers (Information last updated on 26 June 2025)”、Space News (2023)“Industry report: Demand for satellites is rising but not skyrocketing”及びU.S. Government Accountability Office (2022)“Large Constellations of Satellites”をもとに当社作成

 

1.5 軌道上サービス

自動車・船舶・航空業界等には販売後のアフターサービスがあり、点検・保守、修理・延命、移動・廃棄といったバリューチェーンを用意することで、利用環境を持続可能にするとともに、利用者のコストを最適化しています。宇宙環境が持続利用不可能な状態に向かっているのは、そのようなバリューチェーンが存在せず、いわゆる使い捨て文化のまま今日に至ったためです。役目を終えたり故障したりした衛星やロケット上段は、そのまま軌道上に滞在し続けデブリと化しています。

すなわち、これまでの宇宙業界は、Reduce(削減)、Reuse(再使用)、Refuel(燃料補給)、Repair(修理)、Relocation(移動)、Remove(除去)、Recycle(再利用)などができない状態であり、それを可能にするのが当社グループの軌道上サービスです。

 


図8 軌道上サービスは宇宙業界のバリューチェーンを拡大

(イメージ図。現時点で構想段階にあり、提供が開始されていないサービスも含む)

 

実際に、宇宙環境の急速な悪化を受け、自動車・船舶・航空業界に交通管理の仕組みがあるように、宇宙機の円滑かつ安全な運行のために、いわゆる「宇宙交通管理(Space Traffic Management、以下「STM」)」が必要との議論が、2018年頃から米国や欧州等の宇宙先進国や国際連合等で行われています。

例えば、日本における自動車の交通管理に関しては、道路交通法やその他の交通管制に係る法律があり、また、公益財団法人日本道路交通情報センターのように、国内の交通状態を一元的に把握する仕組みがあります。更に、故障車や事故車によって交通を妨げず、円滑で適切な運用を実施できるよう、一般社団法人日本自動車連盟(JAF)等が提供するロードサービスが存在します。

このような仕組みを宇宙空間にも整備しようとするSTMの議論が世界で活発になっており、現時点で、そのルールは、各国の法規制や国際的ガイドライン、行動規範、ベストプラクティス事例、業界指針などの集合体になると考えられています。STMのうち、宇宙空間状況を把握することをSSA(Space Situational Awareness)、軌道上サービスをOOS(On-Orbit Servicing)と呼び、安全な宇宙航行のための必要な要素と考えられています。

2024年9月には、国連本部において全会一致で「未来のための協定」が採択され、国連宇宙空間平和利用委員会(UN COPUOS)を通じて、スペースデブリ、宇宙交通管理・調整、宇宙資源に関する新たな枠組みの構築について議論することが合意されました。

 


図9 軌道上サービスは宇宙におけるロードサービス(イメージ図)

 

1.6 RPO技術

当社グループの軌道上サービスにとって特に重要な技術は「安全に接近・捕獲し、何らかのサービスを提供する技術」であり、RPO技術と呼ばれます。RPO技術は、複数のプロセスとそれに必要な技術要素の組み合わせになります。例えば、デブリ除去には、(1)対象物体(デブリなど)の軌道要素の推定及び打上時刻の決定、(2)対象物体の絶対位置を推定して接近する遠方域接近(絶対航法)、(3)対象物体の姿を捉えて様々なセンサを用いながら接近する近接接近(相対航法)、(4)対象物体の運動推定、回転を合わせることによる相対運動量の除去、(5)捕獲とその後の合体重心の推定や姿勢の安定化、(6)軌道上サービスの提供、といった各ステップで高度な技術が必要になります。また、必要に応じて制御落下(対象物体が大気圏に突入する際に燃え残った場合の地上への落下災害リスクを低減するため、安全な海域に落下させること)といった技術の開発も求められます。過酷な宇宙環境を想定した試験や、故障が起きた場合の対応、安全性を担保するための高性能なシミュレーション、複雑な衛星運用のための管制センターや運用手順書など、各ステップで必要となる技術の開発やその運用を支える基盤技術やノウハウも、RPO技術を支える重要な構成要素になります。

 


図10 コア技術であるRPO技術

(上図⑥には、現時点で構想段階にあり、提供が開始されていないサービスも含む)

 

 

 2 事業の内容

2.1 グローバル体制図

宇宙環境問題の解決には全世界的に取り組む必要があるため、当社グループは、日本に本社を置き積極的なグローバル展開を実施しております(注1)。2025年4月末時点で当社グループの従業員の約7割がエンジニアであり、日本を中心に、英国、米国、イスラエル及びフランスで研究開発を行っております。

 


図11 当社グループのグローバル体制(注2)

 

(注) 1.本書提出日現在において、シンガポールの連結子会社であるAstroscale Singapore Pte. Ltd.は休眠状態にあります。

2.データは全て2025年4月末時点

 

2.2 軌道上サービス市場

軌道上サービスは、宇宙業界でも新しい分野ですが、市場規模拡大が期待されており、2023年から2033年の累計売上収益は182億ドル(約2.5兆円)と推計されています(図12)。これまでは政府機関(非防衛)が需要を牽引しており、当社グループとしては、政府機関からの需要は今後も引き続き拡大していくと見込んでいます。また、2024年4月期中に、地政学的な変化と防衛における宇宙領域の重要性認識から防衛機関からの需要が顕在化し始めました。防衛機関からの需要はこの市場の当面の成長ドライバーになると期待されています。加えて、政府機関及び防衛機関からの需要の増加とそれに伴う技術進展並びにデブリの低減に関する法規制の議論の前進(注1)などによって民間事業者からの需要の出現がさらなる市場拡大に寄与していくものと考えております。軌道上サービスを受けられるよう、事前にドッキング・インターフェース(例:ドッキングプレート(注2))を搭載した衛星の打上げも進められています。

 

(注) 1.詳細については、下記「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (3) 経営環境及び対処すべき課題」の「法規制作りへの働きかけ」をご参照ください。

2.予め識別マーカを備えた磁性体のプレート。衛星に当該プレートを搭載することで、捕獲機(サービサー)による捕獲対象衛星(クライアント)の識別、運動推定、接近、捕獲、軌道離脱を比較的容易にし、除去費用を抑えることが可能になります。

 


図12 軌道上サービスの想定需要の伸び(注3)(注4)

 

(注) 3.当社グループが現時点で想定する顧客層別の将来の需要の動向を示したイメージ図であり、市場規模や当社グループの売上目標等を示すものではありません。

4.Northern Sky Research In-Orbit Services Report (NSR IOSM) 3rd, 7th edition

 

 

2.3 4つの軌道上サービス

当社グループでは、以下4つの軌道上サービスの開発を行いながら、政府機関、防衛機関及び民間事業者の需要獲得に取り組んでいます。

① 故障機や物体の観測・点検サービス(In-situ Space Situational Awareness、以下「ISSA」)

② 寿命延長・燃料補給サービス(Life Extension Service、以下「LEX」)

③ 既存デブリの除去サービス(Active Debris Removal、以下「ADR」)

④ 衛星運用終了時のデブリ化防止のための除去サービス(End-of-Life Service、以下「EOL」)

 


図13 4つの軌道上サービスのイメージ図

 

各サービスの想定顧客と主な技術の比較は以下の通りです。

 


図14 各軌道上サービスの想定顧客と主な技術の違い

 

 

① ISSA(故障機や物体の観測・点検サービス)

概要:故障衛星やデブリといった非協力物体の安全に至近距離に接近することは極めて難易度が高く、その理由は、非協力物体からは位置情報が発信されず、接近して観測・点検を行うことが困難であることにあります。この点、当社グループの故障機や物体の観測・点検サービス(ISSA)においては、観測用衛星を打ち上げ、非協力的物体に安全に近距離まで接近し、可視光カメラ及びその他のセンサ類を用いて、対象物体のデータを取得することで、故障の原因解析への活用や、相手物体の把握(例えば、大型デブリを除去する前に位置や回転状況、形状、表面状態などを確認すること)を可能にするサービスを提供します。ISSAにおける相手物体の把握は、ADRに必要なデータを事前取得する役割も果たします。また、防衛用途では、特に静止軌道上での宇宙領域把握(Space Domain Awareness、以下「SDA」)をはじめとする宇宙監視、情報収集による宇宙作戦能力の向上にも貢献します。

主な顧客:本サービスが想定する対象顧客は主に政府機関や防衛機関となります。

提供価値:概要に記したとおりです。

技術:当社グループは、CRD2のフェーズIとして、2024年2月18日に打ち上げたサービサー衛星ADRAS-Jを用いて、非協力物体への近接、観測のための技術の宇宙実証を行い、フェーズⅠを完了しました。本ミッションの実証成果につきましては、下記「3.5 ADRAS-J(アドラス・ジェイ)」にて詳述しております。

事業上の取り組み:文部科学省の中小企業イノベーション創出推進基金(SBIR基金)における宇宙分野のテーマ「スペースデブリ低減に必要な技術開発・実証」において、当社グループが、2023年9月、「軌道上の衛星等除去技術・システムの開発・実証」という研究開発課題に採択されました。当社グループは、2023年10月から最長2028年3月までの期間、文部科学省からの補助を受け、大型の衛星を対象デブリとした近傍での撮像・診断ミッションにおいて、技術開発及びミッション遂行を担います。また、2025年1月に、英国政府プログラムの一環としてBAE Systems plc社から観測ミッションに関する契約(プロジェクト名:Orpheus(オルフェウス))を獲得しています。さらに、2025年2月に、防衛省より機動対応宇宙システム実証機の試作に係る防衛省との契約を獲得しております。当社グループは2028年3月末までに納品予定です。実際の打上げ、運用、実証に関しては別契約を予定しています。

 

② LEX(寿命延長・燃料補給サービス)

概要:当社グループの寿命延長サービス(LEX)は、燃料が枯渇した衛星や、想定外の燃料消費により予定より早く寿命を迎える衛星、あるいは軌道がずれてしまった衛星に対して、ドッキング(捕獲)を行い、当社グループのサービサー衛星の燃料を用いる、若しくは燃料補給を通じて、衛星の運用期間の延長や別の軌道への遷移などのサービスを提供するものです。

主な顧客:想定する対象顧客は、低軌道や静止軌道で衛星を運用する政府機関・防衛機関や民間事業者になります。特に、静止軌道では毎年20機以上の衛星が退役しております。

提供価値:静止衛星は、軌道上の特定の場所において、地上に対して相対的に静止し続ける必要がありますが、衛星には外力(月や太陽による引力等の様々な力)が働くため、ステーションキーピングと呼ばれる軌道を維持するための制御を随時行う必要があり、かかる軌道制御のために定常的に燃料を消費します。そのため、静止衛星は、燃料が枯渇すると運用ができなくなります。静止衛星は、軌道制御のほかにも、①軌道投入に失敗した場合の位置補正、②フリートマネジメント(静止衛星を別経度に移動させること)、③墓場軌道への移動(国際ガイドラインにより、運用を終了した静止衛星は高度を300kmほど上げ、墓場軌道と呼ばれる場所に退避することが勧告されています)などのために、燃料を消費します。静止衛星の運用者は、静止衛星の燃料枯渇の数年前から後継衛星の開発を開始しますが、静止衛星の大型化に伴い、打上げ費用を含めた数百億円の投資が必要となります。LEXサービスは、そうした衛星運用者の、既存の衛星を極力使用し続けたいというニーズに応えるものです。

技術:当社グループは、イスラエルに連結子会社であるAstroscale Israel Ltd.を設立し、2020年6月に、同国で寿命延長サービスを開発する、Effective Space Solutions社の知的財産権を取得し、同社のR&D拠点の従業員を承継しました。この事業譲受により、低軌道(LEO)から静止軌道(GEO)までを対象とした軌道上サービスに取り組むことが可能になりました。LEXサービスに用いるLEXI(レクシー)という名称のサービサーは、将来需要を鑑み、本書提出日現在、当社グループの自己資金で開発しております。LEXIの捕獲機構は、ペイロード・アダプター・リング(PAR)という、宇宙業界で幅広く採用されている、打上げ時のロケットと衛星のインターフェースとなる円形状の構造物を把持する設計で、軽量であり、様々なサイズのPARを把持できる特徴を持っています。

事業上の取り組み:当社の米国子会社であるAstroscale U.S. Inc.は、寿命延長サービスに興味を示している静止衛星を運用する民間事業者と協議を継続しております。当社では、2026年から2029年にかけて毎年約20~30基の静止衛星が退役し、寿命延長サービスに関する需要が生じると見込んでおります。その上で、当社は、LEXサービスのうち軌道修正に関して、毎年1~2社程度の各国の顧客に軌道修正サービスを提供することを目指しております。

LEXサービスのうち燃料補給に関しては、Astroscale U.S. Inc.が、2022年1月に米国Orbit Fab社との間で、静止軌道上の衛星への燃料補給に関する商業契約を締結したほか、2023年9月に米国宇宙軍より静止軌道における燃料補給衛星の開発を受注しております。その後、3回にわたり契約金額が増額され、燃料補給衛星のプロトタイプの開発から、静止軌道上での実証運用に契約範囲が拡大しています。国内では、内閣府主導のもと創設された「経済安全保障重要技術育成プログラム(以下「K Program」)において、国立研究開発法人科学技術振興機構(以下「JST」)が公募した「協力衛星を対象とした宇宙空間における燃料補給技術の確立」の研究開発の募集が行われ、2025年1月に、日本子会社である株式会社アストロスケールが委託先として採択されました。本書提出日時点で契約締結に向けた協議を行っております。なお、燃料補給サービスに必要な衛星給油口接続システムについては、本田技術研究所と共同で開発し、本ミッションにおいて使用される予定です。

 

③ ADR(既存デブリの除去サービス)

概要:ADRサービスは、捕獲用アームを用いたデブリの除去サービスであり、当社グループのサービサーを打ち上げ、既存デブリを捕獲し、軌道を降下させ、大気圏で燃焼させて除去するサービスです。既存デブリのうち、特に質量数トン級の巨大なデブリは破砕すると宇宙環境に大きな影響を与えるため、早期の除去が必要です。

主な顧客:本サービスが想定する対象顧客は政府機関です(過去に排出されたデブリの大半が政府機関によるミッションに由来するものであることに加え、過去に民間事業者により排出されたデブリについては、その排出の責任を当該民間事業者に遡及的に問うことは困難であるため)。

提供価値:既存デブリを早期に除去することで、既存デブリが破砕し、捕捉も捕獲もできない小さなデブリとなることを防ぎます。宇宙環境を保全し、宇宙空間に配置されている衛星群を持続的に利用するためには、既存デブリの除去が必要です。

技術:ADRサービスにおいては、当社グループのサービサーが、既存デブリ(重量数トンまで)をクライアントとして、接近し、捕獲用アームで捕獲後、軌道を降下させることで、クライアントを混雑軌道から退避させて破砕による宇宙環境の悪化を防ぎます。EOLサービスと異なり、クライアントがドッキングプレートを搭載していないことから、捕獲に磁石ではなく捕獲用アームを使用するため、運動推定や捕獲の難易度はEOLサービスより高くなります。

事業上の取り組み:日本では、宇宙航空研究開発機構(以下「JAXA」)が民間事業者と連携し、世界初の大型デブリ除去等の技術実証(CRD2:商業デブリ除去実証)を開始しました。当社グループは、2020年に同ミッションのフェーズIを受注しました。フェーズIは、サービサーが、非協力物体であり日本を登録国としているロケットの上段へ接近し、その運動や損傷・劣化状況を観測するものです。そのため、フェーズIで実証された技術の内容は、先述のISSAに相当します。当社グループは、CRD2のフェーズIを遂行する当社グループのサービサー衛星であるADRAS-Jを2024年2月18日に打ち上げ、JAXA要求ミッションを完了しました(後述の「3.5 ADRAS-J(アドラス・ジェイ)」参照)。また、フェーズII(ADRAS-J2)においては、当該ロケット上段に接近後、捕獲し軌道降下させる実証実験が計画されております。当社グループは、フェーズIIに係るフロントローディング技術検討を2022年8月に受注し、2023年12月に完了しており、フェーズII本体についても、2024年4月にJAXAから株式会社アストロスケールを選定企業として選定する旨の選定結果通知書を受領し、2024年8月に契約締結いたしました。

英国では、英国宇宙庁(United Kingdom Space Agency、以下「UKSA」)のデブリ除去プログラムCOSMICに関し、2021年10月にADRの概念設計(フェーズ0/A)を受注、2022年9月には基礎設計に該当するフェーズBを受注し、2024年4月にはフェーズBを完了しました。さらに、従前当社開示資料にてCOSMICフェーズCと呼称していた後続ミッションの初期段階を切り出したフェーズ2を2024年9月に受注し、2025年5月に完了しました。2025年7月に後続フェーズであるミッション契約の公募が公表されており、Astroscale Ltdは入札する予定です。

フランスでは、フランス国立宇宙研究センター(CNES)と、2023年6月に同国由来のデブリのうちいずれを優先的に除去すべきか検討するための共同研究契約を締結しました。

今後、日本での実証を経て技術が成熟化し、尚且つ世界の主要国で各国が排出したデブリを除去するためのサービス調達が始まることを想定して、当社グループは、世界主要国の政府機関や宇宙機関を主要顧客としてADRサービスを展開します。

 

④ EOL(衛星運用終了時のデブリ化防止のための除去サービス)

概要:EOLサービスは、運用を終了した衛星のデブリ化を防止するための除去サービスです。具体的には、当社グループの捕獲機(サービサー)を打ち上げ、故障機や寿命を迎えた衛星を捕獲し、のちに軌道を降下させ、大気圏で燃焼させて除去するサービスです。ADRと異なり、打上げ前にドッキングプレートを潜在顧客衛星に取り付けておくことで、磁石を用いた捕獲機構で捕獲が可能となります。接近・捕獲の難易度を下げることに加え、1,000kg以下の故障衛星を対象とし、サービサー1機で複数の故障衛星を除去することを想定しており、ADRに比して安価な除去サービスが可能になります。

主な顧客:本サービスが想定する対象顧客は衛星コンステレーションの運用事業者です。衛星コンステレーションは、多数の衛星を一つの軌道面に配備し、その上で、複数の軌道面を用いることで、数十機から数千機の衛星を用いて地球全体をカバーする運用を行います。故障機等がデブリとして軌道上にそのまま放置され続けると、デブリと故障機の衝突により生じた微小デブリによる軌道面汚染、自社の他衛星との衝突によるサービス停止、及び衝突回避のための燃料消費による衛星の短命化等の危険性が高まり、かかるリスクによって収益が減少する恐れがあるため、速やかに故障機等を除去するニーズがあります。2020年前後より、数社が大型のコンステレーション衛星の打上げを開始し、現在、世界中で100以上の会社・組織がコンステレーション衛星の設計・開発又はその検討を進めています。

 


図15 コンステレーション衛星の配置イメージ

 

今後生まれるデブリの大半は、コンステレーション衛星から発生すると考えられています。各コンステレーション衛星は、ミッション終了後に軌道離脱(デオービット)する機構を保有しますが、故障した場合の軌道離脱のバックアップ手段を有しません。

国際機関間スペースデブリ調整委員会(以下「IADC」)によるデブリ低減ガイドライン及び国連デブリ低減ガイドラインでは、低軌道(LEO)においては、衛星の運用終了後25年以内に、大気圏に突入し燃焼することでの廃棄を行うこと(Post Mission Disposal、以下「PMD」)とされています。軌道上の衛星のうち、運用終了後25年以内に大気圏に落下させることによる廃棄の成功率(Post Mission Disposal Rate、以下「PMD率」。自然に25年以内に落下する軌道の物体は除く)は、2000年以降改善してきたものの、3分の2程度にとどまっており(注2)、全体の衛星数の増加を考えると、運用終了又は故障後の衛星の多くが宇宙空間に長期にわたり残存して宇宙環境を悪化させていることがうかがえます。

提供価値:上述のデブリと故障機の衝突により生じた微小デブリによる軌道面汚染、自社他衛星との衝突によるサービス停止、及び衝突回避のための燃料消費による衛星の短命化等、並びにこれらのリスクによってもたらされる収益減少のリスクを低減します。また、米国、欧州、日本等の各国・地域において進んでいるデブリ低減のための新たな法規制づくりの遵守を可能にします(注3)。さらに、EOLはコンステレーション衛星のエコノミクスを最適化します。コンステレーション衛星自らによる軌道離脱だけでPMD率を100%に近づけようとすると、全ての衛星に二系統の軌道離脱機能を持たせることなどが必要になりますが、その反面、重量や打上げ費用の増加等によりコストが大幅に上昇します。加えて、コンステレーション衛星は、寿命が近づくと次の新たな衛星群に世代交代しサービスを継続しますが、新たな衛星群の準備が間に合わない場合には、軌道離脱用の燃料を用いて運用寿命を延長し、自力で軌道離脱できなくなった衛星にEOLサービスを用いるという選択肢も提供します。

技術:EOLサービスは、コンステレーション衛星に、ドッキングプレートを搭載することを前提としています。故障機又は運用終了後の衛星である捕獲対象衛星(クライアント)を捕獲する際は、予めドッキングプレートを付けたクライアント(主に重量100kg~1,000kg)に対し、捕獲機(サービサー)が磁石を用いた捕獲機構を駆使して捕獲・除去します。

事業上の取り組み:グローバルに衛星通信サービスを提供するNetwork Access Associates Ltd(以下「Eutelsat OneWeb社」)は、2019年12月には当社グループが設計に参画した、Altius Space Machines Inc.(以下「Altius社」)製ドッキングプレートを事前にEutelsat OneWeb社の衛星に搭載することを発表し、2020年12月以降に打ち上げられた同社の全ての衛星にドッキングプレートが搭載されています。また、ESAによる支援のもと、当社グループは、Eutelsat OneWeb社とSunriseプロジェクトを契約し、故障や運用終了により役目を終えたコンステレーション衛星を複数機除去可能なEOLサービサー「ELSA-M」(後述)を開発中です。Sunriseプロジェクトは、2024年7月、全部で4つのフェーズのうちの最終フェーズ(フェーズ4)の契約を獲得しました(本書提出日時点での状況については、下記「3.3 開発・運用状況 ELSA-M」参照)。また、他の衛星コンステレーション運用事業者も、ELSA-Mによる磁石捕獲が可能なインターフェースの事前の搭載を検討しております。Astro Digital US Inc.(以下「Astro Digital社」)は、同社が製造するコンステレーション衛星等向けのバスに当社グループ製のドッキングプレートを搭載することを発表し、2025年1月に搭載済み衛星が打上げられました。Airbus Constellations Satellites SAS社からは、2025年3月に100個以上のドッキングプレートを受注いたしました。また、上記以外の衛星コンステレーション運用事業者ともドッキングプレートの搭載について議論を続けております。本書提出日現在、ドッキングプレート(ELSA-Mと互換性のある第三者製造のドッキングプレートを含む)を搭載した衛星は軌道上に571機存在しております。

 

(注) 2.ESA's Space Environment Report 2024

3.詳細については、下記「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (3) 経営環境及び対処すべき課題」の「法規制作りへの働きかけ」をご参照ください。

 


図16 ドッキングプレートについて

左:ELSA-Mがドッキングプレートを目標として故障衛星に接近する様子(イメージ図)

右:ドッキングプレート

 

 

2.4 事業系統図

当社グループは、軌道上サービサーの設計・開発及び製造から、サービス提供に至るまで一貫して自社で行います。当社のサービス提供領域は宇宙空間ですが、ミッション遂行時の取得データを地上で顧客に提供する場合もあります。ISSA、LEX、ADR、EOLのいずれも、対象物体(衛星やデブリなど)の保有者や運用者から依頼を受けてサービスを提供し、かかるサービス提供の対価を受領する仕組みです。サービサーの一部部品の調達や加工においてはサプライヤーと協業し、ロケットによる打上げは、打上げサービス業者に委託します。

 


図17 当社グループの事業系統図

 

当社グループが想定する収入形態は、政府機関・防衛機関等の需要に応じたプロジェクトか民間需要に応じたミッションかによって異なります。また、今後市場の成長・成熟化に伴い、想定される収入形態が変化する可能性もあります。

政府機関・防衛機関と締結する契約に基づく収入は、現時点においては、調査研究・研究開発・宇宙空間での実証のいずれについてもマイルストーン収入がメインとなっており、実証完了後のサービスの提供についてもマイルストーン収入がメインになると想定しております。マイルストーン収入は、後述する、宇宙業界特有の技術開発段階等に応じて設置された審査会の審査結果をもって支払われるケースが多く、ミッション完了まで複数回に分けて支払いを受けることになります。

なお、LEXサービスは、政府機関・防衛機関の顧客に対しては、当社グループが開発したサービサーを宇宙空間において顧客に引き渡し、以後の宇宙空間におけるサービサーの運用は政府機関顧客が行い、収入体系についてもサービサーの販売収入となることを見込んでおります。また、政府機関顧客との契約締結からサービサーの提供までには、約2〜3年を要すると見込んでおります。他方で、民間事業者を顧客とする場合は、契約時の少額の頭金と寿命延長期間のサービスフィー収入になることを見込んでおります。

民間コンステレーションを主な顧客と想定するEOLサービスについては、費用の大部分は衛星開発や打上げに関するものであり、打上げ時までに発生するため、打上げまでにかかる費用の大部分に対応する打上げ前のマイルストーン収入とミッション成功時の支払いの組み合わせを標準的な支払モデルとして想定しております。当社グループとしては、支払モデルの変更(定額払い等の採用)については顧客の要望に柔軟に対応しつつも、当社グループの事業運営上確保されるべき資金回収のタイミング及びマージンは堅持する方針です。

 


図18 収入形態(イメージ図)

 

当社グループへのマイルストーン収入の入金は、原則としてマイルストーンの達成に関する審査の完了後となります。また、顧客契約については、顧客セグメントによって支払形態や収益認識方法が異なります。

 


図19 顧客セグメントと契約形態及び収益認識の関係

 

 

 3 研究開発の状況

3.1 先進的技術

当社グループは、軌道上サービスを事業化させるために、先進的な技術開発を自社内で行っております。主なイノベーションとして、RPO技術、様々な宇宙機・物体を捕獲するための捕獲機構及び事前に衛星に取り付けるドッキングプレート、接近や捕獲動作等をアルゴリズムで自律的に判断することでより正確、安全、効率的な運用を可能にする自律化技術、複雑な運用を安全に実現するための地上局(アンテナ)網と管制局などがあります。

 


図20 イノベーションを支える革新技術

 

3.2 開発方針

品質、信頼性、安全性、コンフィギュレーション、スケジュール等のプロジェクト管理を含む品質保証体系については、航空宇宙業界のグローバルスタンダードとされる品質マネジメントシステム(QMS)要求規格である、AS/EN/JIS Q 9100に準拠した規定を制定し、実業務への浸透を行っております。

また、当社グループは、宇宙機のような大規模で複雑なシステムの開発アプローチ方法の基本である、システムズエンジニアリング手法の開発V字モデルを忠実に採用しています。このモデルは、NASA、ESA、JAXAのほか、多くの航空宇宙企業が採用しております。このモデルに沿った設計・試験を実施する場合、例えば、システム試験を行う段階では、下位のコンポーネントやサブシステムそのものにおける不具合は、すべて洗い出し・修正が完了しているとみなせます。このため、システム試験では、システム設計とサブシステム間インターフェースの不具合を洗い出すことに専念でき、手戻りがありません。また、最終的な地上でのシステム試験が完了したということは、軌道上でのミッションの実現を担保するものになっていると考えられます。

他方で、軌道上サービスのような新規性の高いミッションでは、伝統的な開発プロセスではシステム要求を定義し難いことや、新規技術に対する耐環境性や機能の検証作業に要する時間が長くかかりすぎて問題の発見が遅れ、手戻りが発生するなどのリスクがあります。そこで、信頼性を担保しつつ、合理的な開発スケジュールと収益性を実現するために、開発アプローチ、試験検証単位の考え方、信頼性工学に基づく手法など、柔軟かつ効果的な方法を取り入れています。

 


図21 開発の基本となるシステムズエンジニアリングのV字モデル

 

 

MCR

Mission Concept Review

ミッション概念審査

ミッションのニーズを確認し、提案されたミッションの目的と、その目的を達成するための概念を審査

MDR

Mission Design Review

ミッション定義審査

ミッションを遂行するために必要なシステムの要求事項をまとめ、要求事項を実現するためのシステムを定義するための全体計画を策定

SRR

System Requirement Review

システム要求審査

必要なシステムに関する機能や性能の要求及び、その検証方針の妥当性を審査し、定義したミッションを満たすことを確認

PDR

Preliminary Design Review

基本設計審査

契約書やシステム仕様の各項目を満足する製品の実現性などを検討し、詳細設計に移行できることを確認する設計審査

CDR

Critical Design Review

詳細設計審査

フライトモデルの製造に先立ち、製品の詳細な設計内容が技術仕様書の要求事項を満足し、製造に移行できることを確認する設計審査

PSR

Pre-shipment Review

出荷前審査

衛星の出荷に際し、衛星や管制センターなど全体システムが契約書・技術仕様書の要求事項を満足し、出荷に問題がないことを確認する審査

ORR

Operational Readiness Review

運用準備審査

運用へ移行する準備が整っていること、あらゆる運用モード(正規、緊急、計画外)も考慮して運用の準備が整っていることを確認する審査

 

 

 

3.3 開発・運用状況

以下は、当社グループで計画中の衛星開発に関するミッションパイプラインの状況を取組み開始時期等の順で示したものです。なお、打上げ時期やプロジェクトの内容は本書提出日現在における当社の計画もしくは公募の内容(公募者側の想定)を示したものであり、プロジェクトの全部又は一部のフェーズについて当社グループにおいて受注に至っていないものも含まれております。当社グループが受注未了のフェーズについては、当社グループの想定通りに受注に至る保証はありません。また、下記のタイミングで実際に打上げを実施し、また、プロジェクトの内容を計画通りに実現できる保証はありません。

 

ミッションパイプラインの詳細は以下の通りになります。

 

プロジェクト(注1)

カテゴリ

詳細(注2)

費用負担

(注3)

 

開発

フェーズ

(注4)

打上時期

政府機関案件・民間案件

1

ELSA-d

-

下記「3.4 ELSA-d(エルサ・ディー)」にて詳述。

自己資金

運用終了

打上済み

2

ADRAS-J

ISSA

・JAXAのCRD2のフェーズIにおいて、当社日本子会社の株式会社アストロスケールが2020年1月に、契約総額18億円(税抜)で採択(その後、変更契約により19億円(税抜)に増額)。

・下記「3.5 ADRAS-J(アドラス・ジェイ)」にて詳述。

受注元より

一部拠出

JAXAミッション完了

2024年2月18日に打上済み

3

ELSA-M

EOL

・ESAの通信システム先端研究である「Sunrise(サンライズ)」プログラムにおいてEutelsat OneWeb社に提供された資金に基づいて、当社英国子会社のAstroscale Ltdが受託し、2019年より同プロジェクトに参画。

・運用終了した衛星を複数機除去する衛星「ELSA-M(エルサ・エム、End-of-Life Services by Astroscale – Multipleの略)」を開発。

・ELSA-MはELSA-dの機能拡張版であり、複数デブリの除去が可能であることがELSA-dとの主な相違点。磁石による捕獲機構を用いる点はELSA-dと同様。ランデブ(接近)時や対象物と回転を合わせる際に化学推進を用いる点も同様だが、高度を上下に軌道遷移する際、より燃費の良い宇宙実証済みの電気推進を使用。

・2023年12月にAstroscale Ltdがフェーズ4への入札を実施し、2024年7月に契約獲得。契約金額は13.95百万ユーロ。

・2025年6月に詳細設計審査(CDR)完了。

受注元より

一部拠出

Phase D

(製造・試験)

2027年

4月期中

予定

4

COSMIC

ADR

英国政府が開始したデブリ除去プログラム「UK Active Debris Removal (ADR)」、低軌道上に存在する運用を終了した英国の衛星を少なくとも2機除去。

・当社グループは、2021年10月にフェーズ0-A(フィージビリティ・スタディ)に、2022年9月にはフェーズBにそれぞれ採択され、2024年4月にフェーズBを完了。当社は、フェーズCと呼称していた後続ミッションの初期段階を切り出したフェーズ2を、2024年9月に受注、2025年5月に完了。2025年7月にミッションフェーズの公募概要が公表され、当社英国子会社のAstroscale Ltdが入札予定。競合事業者1社の存在を認識している。

当社グループの他プロジェクトの知見や技術を活用。サービサーの製造にあたっては、英国・欧州を中心としたサプライチェーンを活用。

フェーズ0-Aの公募に係る、英国宇宙庁の2021年6月作成の公表資料に基づく当社推計によるフェーズCの契約総額は約40〜60百万英ポンド(注5、6)。なお、当該公表資料に記載された予算配賦額は、英国宇宙庁による将来の資金拠出額に係る拘束力ある意思表明や合意ではない。2025年7月に後続フェーズであるミッション契約の公募が公表されており、Astroscale Ltdは入札する予定。

提案範囲につき

受注元より

全額拠出

(注6)

Phase B

(PDR)

2029年

4月期

までを

予定

5

ISSA-J1

ISSA

文部科学省「中小企業イノベーション創出推進事業(SBIR)」の宇宙分野において、2023年9月に当社日本子会社の株式会社アストロスケールが採択。

低軌道上の大型デブリ衛星に対する観測衛星「ISSA-J1(イッサ・ジェイ)」を開発。ほぼ軸対称であるロケット上段と異なり、デブリの形状が非対称。また、2物体へのマルチランデブーを行う。

3つのフェーズに分かれており、3フェーズ合計で最大120億円の補助金総額(注7)。2024年12月にフェーズ2(交付額上限63.1億円)に移行済み。

提案範囲につき

受注元より

全額拠出

Phase B

(MCR)

2027年

4月期中

予定

 

 

 

 

 

プロジェクト(注1)

カテゴリ

詳細(注2)

費用負担

(注3)

 

開発

フェーズ

(注4)

打上時期

6

ADRAS-J2

ADR

・JAXAのCRD2のフェーズIIに相当する。フェーズI(ADRAS-J)で得られた情報も踏まえ、宇宙機を低軌道上の大型デブリ(ロケット上段。3トン、10メートル程度)に接近させ、捕獲し、軌道離脱するプロジェクト。当社グループは、2021年8月に「商業デブリ除去実証フェーズIIの概念検討」のプロジェクトに、2022年8月には「商業デブリ除去実証フェーズIIフロントローディング技術検討」に、それぞれ企画競争にて採択された。フロントローディング技術検討において、JAXA試験施設で接近・捕獲を地上実証済み。

・2023年12月に最終的な公募が発出され、当社日本子会社の株式会社アストロスケールが2024年2月に入札を実施し、2024年8月にJAXAと契約を締結。

・受注金額は120億円(税抜)。

提案範囲につき

受注元より

全額拠出

Phase B

(PDR)

2028年

4月期中

予定

7

K Program

LEX

・内閣府の経済安全保障重要技術育成プログラムにおいて、燃料補給プロジェクトの公募が2023年12月に発出され、当社日本子会社の株式会社アストロスケールが2024年3月に入札を実施。

・低軌道にて、相手物体に接近・捕獲後に燃料補給を実証。

・当社グループのRPO技術の活用に加え、当社グループにおいて、推進薬補給ロボットアームと推進薬移送システムを開発予定。

・2025年1月に採択され、総額最大120億円(間接経費を含む。公募枠としての上限であり、消費税額を含む)。契約の締結及び契約金額その他の条件の決定は未了。

提案範囲につき

受注元より

全額拠出

Pre-Phase A

(MCR)

2029年

4月期中

予定

8

CAT-IOD

(注8)

ADR

・欧州宇宙機関(ESA)によるADRミッションの軌道上実証(In-Orbit Demonstration: IOD)プログラムで、欧州連合の宇宙プログラム「コペルニクス」の地球観測衛星に対してサービス提供可能なCAT (Capture Bay for ADR)システムとD4R (Design For Removal)インターフェースを使用。

・2025年1月に当社英国子会社であるAstroscale LtdがESAとの間でCAT-IODフェーズAを主契約者として契約を獲得。

・契約金額は0.59百万ユーロ(税抜)。

提案範囲につき

受注元より

全額拠出

Phase A

(MDR)

 

未定

防衛関連案件

1

APS-R

LEX

当社米国子会社のAstroscale U.S. Inc.が、2023年9月に米国宇宙軍より軌道上で燃料補給衛星のプロトタイプ(APS-R)の開発を受注。

契約総額は当初25.5百万米ドル(税抜)から3回にわたり増額され、41.2百万米ドル(税抜)に増額。2025年4月、3度目の変更契約締結の際に、燃料補給衛星のプロトタイプの開発から打上げ及び軌道上実証も新たに含める延長契約として締結。

受注元より

一部拠出

Phase B/C

(PDR/CDR)

2027年

4月期中

予定

2

Orpheus

ISSA

2025年1月、当社英国子会社のAstroscale Ltdが、英国防衛省の執行機関である国防科学技術研究所(Dstl)による政府プログラムとして、BAE Systems plc社から受注。

観測ミッションであり、受注金額は5.15百万英ポンド(税抜)。

提案範囲につき

受注元より

全額拠出

非公表

非公表

3

防衛省案件

ISSA

2025年2月、当社日本子会社の株式会社アストロスケールが、防衛省より機動対応宇宙システム実証機の試作に係る契約を獲得。

静止軌道上での宇宙領域把握等の宇宙監視、情報収集、宇宙作戦能力の向上を目的として、静止小型実証衛星を設計し、プロトフライトモデルの試作・試験を行う。

契約金額は66億円(税抜)であり、契約期間は3年。

提案範囲につき

受注元より

全額拠出

非公表

未定

4

防衛案件

非公表

・2025年6月に当社子会社所在国防衛機関と契約締結。

・相手方の名称及びプロジェクト概要を含む、その他具体的内容については、契約相手方の以降を踏まえた守秘義務から非公表。

非公表

非公表

非公表

5

米空軍研究所案件

Others

・2025年67月、当社米国子会社のAstroscale U.S. Inc.が、米空軍研究所より自律的なランデブ・近傍運用及びドッキングに関する調査を受託。

・受注金額は8.7百万米ドル(税抜)。

提案範囲につき

受注元より

全額拠出

未開始

打上げ

予定なし

 

 

 

(注) 1.上記のプロジェクトは、契約済み、一部契約済み又は選定済みのプロジェクトのほか、当社がすでに提携関係を有しているか、サービス提供の合意に至っている潜在的顧客との間で交渉中(契約未締結)の潜在的プロジェクト、見込み顧客との協議段階の潜在的ミッションを含みます。上記の将来におけるパイプラインはイメージであり、現時点において顧客との間で契約上の合意に至っていない潜在的・将来的なサービスを含み、また、顧客との契約/交渉/提案の各段階について一定の前提を置いた上での試算であり、当社グループの将来の業績の予想又は目標を示すものではありません。

2.本「3.3 開発・運用状況」に記載された契約金額は、契約に定められた技術開発の進捗やサービスの提供に応じ、当社グループに支払われることが合意又は予定されている収入の合計金額であり、技術開発の進捗その他当該契約において定められた条件が実現に至らない場合、マイルストーン収入の一部が支払われない可能性があります。また、当社グループが受注未了のフェーズについては、当社グループが受注に至る保証はなく、受注に至った場合でも、契約金額は当社グループの推計と異なる可能性があります。

3.「全額拠出」は、当社グループが提案した範囲につき、契約に基づき拠出される資金により、当社グループが負担すると予想される経費の全額が補填されると当社が見込んでいることを示し、「一部拠出」は、契約に基づき拠出される資金により、かかる経費の一部が補填されるに留まると当社が見込んでいることを示します。各ミッションに係る実際の契約金額や、当社グループが実際に負担する経費の金額は、本書提出日現在における当社の想定から乖離する可能性があり、特に、契約締結時に想定されていなかった経費が契約締結後に追加的に発生した場合には、ミッションによっては基本的に当社グループの負担となるため、契約に基づき拠出される資金により、当社が負担する経費の全額を補填することができない可能性があります。

4.当社グループの開発・運用フェーズを記載しており、各々の契約もしくはプロジェクト機会において呼ばれている事業上のフェーズとは異なります。

5.英国宇宙庁 (UKSA) が2021年6月に示したガイダンスに基づく想定価格帯です。当該ガイダンスはUKSAその他英国政府機関による資金拠出の確約又は合意とみなされるべきものではありません。

6.初期の複数のフェーズを受注済みですが、後続フェーズについては受注未了です。受注済みのフェーズBまではミッションに要する資金の一部拠出を受けており、フェーズCでは当社グループから提案した範囲につき全額拠出を受けることを想定していますが、最終的に合意される契約金額によっては、ミッションに要する資金につき全額を補填することができない可能性があります。

7.初期の複数のフェーズにおいて契約を獲得していますが、後続フェーズでは未だ契約の締結はありません。これらのミッションの後続フェーズについては、当社は現時点で競合事業者の存在を認識しておらず、受注が期待できるとの当社認識に基づいておりますが、当社グループが受注に至る保証はなく、受注に至った場合でも、実際の契約金額は当社グループの推計と異なる可能性があります。SBIRの想定契約金額は、全フェーズについての政府予算の配分額の総額を契約総額として想定しています。

8.初期のフェーズを受注済みですが、後続フェーズについては受注未了です。後続フェーズにかかる欧州宇宙機関による予算措置はされない可能性があり、予算措置されても受注に至らない可能性もあります。

 

 

3.4 ELSA-d(エルサ・ディー)

ELSA-dは、EOLサービス(衛星運用終了時のデブリ化防止のための除去サービス)に係る一連のコア技術の宇宙実証を目的として開発されました。ELSA-dの名称は、End-of-Life Service by Astroscale – demonstrationの略です。ELSA-dで培われた技術は、ADR、LEX、ISSA等他の軌道上サービスに必要な技術開発の基盤にもなります。

ELSA-dはサービサー衛星(捕獲機)とクライアント衛星(模擬デブリ)から成り立っており、デブリ除去に必要な一連の技術(上記RPO技術の重要な部分を包含します。)を搭載したend-to-endの世界初のデブリ除去実証です。当社グループの知る限り、非協力物体の捕獲、連続可視のない状況下での接近・捕獲を目的とする宇宙実証は世界初と認識しています。

 


 図22 宇宙空間航行中のイメージ図

左:サービサー(捕獲機)、右:クライアント衛星(模擬デブリ)

 


図23 デブリ除去技術実証衛星ELSA-d(エルサ・ディー)

左:打上げ直前のELSA-d最終確認の様子、右:英国オフィス管制センターと運用チーム

 

 

ELSA-dは、2021年3月に高度550kmの軌道へサービサーとクライアントを固定した状態で打ち上げられました。約1年をかけて、デブリ除去に必要な技術要素である、クライアントの捕獲・分離機構や、接近に必要なセンサ群やスラスタ機能及び航法誘導制御技術(サービサーの位置や速度等を把握し、目標地点へ到達するための軌道を生成し、サービサーを制御していく技術)、また、それらを実現する管制センターや運用技術等の実証を行いました。

ELSA-dミッションにて、以下を含むデブリ除去のためのコア技術を実証することができました。

・自律制御機能と航法誘導制御アルゴリズム

・航法センサ群を駆使した閉ループ制御(自律的に望ましい状態との差を縮めていく制御)

・スラスタによる自律的な接近マヌーバ及び姿勢制御

・絶対航法の技術(GPSと地上観測)を活用したサービサーの誘導航法(クライアントから約1,700kmの距離から約160mへの接近)

・絶対航法から相対航法への移行(サービサー搭載のLPRセンサを活用)

・2年以上にわたる軌道上でのミッション運用経験

・ドッキングプレートと磁石を用いた捕獲機構

 


図24  ELSA-dの宇宙実証の内容(*はサービサーとクライアントの距離)

 

ELSA-dは、2022年には、米宇宙業界誌Via Satelliteの「Satellite Technology of the Year」や内閣府主催第5回宇宙開発利用大賞の「内閣府特命担当大臣(宇宙政策)賞」を、2023年には、国際宇宙会議(International Astronautical Congressにおいて国際宇宙航行連盟(International Astronautical Federation)より「The IAF Excellence in Industry Award」を含む数々の賞を受賞しており、この先駆的な技術開発とその宇宙実証により宇宙の持続可能性(スペースサステナビリティ)や軌道上サービスの実現への道を切り拓いたという観点で評価を得たものと考えております。

 

 

3.5 ADRAS-J(アドラス・ジェイ)

ADRAS-Jは世界で初めて、実際にデブリに至近距離まで接近し観測・点検を行った画期的な衛星です。

対象となるデブリへのRPOを実施し、接近・近傍運用を実証し、長期にわたり放置されたデブリの運動や損傷・劣化状況の撮像を行いました。具体的には、低軌道(LEO)にあるロケット上段(H-IIAロケット15号機の第2段(2009年1月打上げ))について、遠方域接近、近接接近、運動推定・回転などを行いました。

 


図25 宇宙空間航行中のイメージ図

左:サービサー(捕獲機)、右:クライアント衛星(H-IIAロケット上段)

 

ADRAS-Jは、Rocket Lab, Inc.のロケット「Electron」により、ニュージーランドのマヒア半島所在の同社第1発射施設(Launch Complex 1)より、2024年2月18日に打ち上げられました。打上げは、正確なタイミングで行われ、予定通りの軌道に投入されました。ADRAS-Jは、軌道投入後の4日間の初期運用を無事に終えた後、同年2月22日に接近フェーズへと移行しました。

同年4月16日にIRCamによって取得するデブリの形や姿勢などの情報を用いる相対航法(Model Matching Navigation)を開始し、同年4月17日にデブリの後方数百mへの接近に成功しました。また、同年5月23日には、観測対象のデブリから約50mの距離へ接近に成功し、さらにその距離において定点観測に成功しました。これは、民間企業がRPO(ランデブ・近傍運用)を通じて実際のデブリに世界で最も近接した距離(注1)となります。加えて、同年6月19日にデブリの状態や動きを詳細に把握するために観測対象のデブリの周回観測も行い、その実施中に行われた自律的なアボート(クライアントに対する衝突を回避するためマヌーバを実施し安全な距離まで待避すること)により、安全運用のための衝突回避機能の有効性も実証いたしました。同年7月15日、16日には、観測対象のデブリの周回観測(デブリの周囲を約50mの距離を維持しつつ姿勢を制御しながら360度周回飛行する運用)に成功いたしました。本物のデブリの周囲を飛行する運用の成功は世界初となります(注1)。

さらに、同年11月30日には、最終接近を実施し、将来のデブリ除去としてその捕獲や軌道離脱も行うADRAS-J2のミッションで捕獲箇所として想定している衛星分離部(PAF)の下方に回り込んで接近し、約50mから約15mへとデブリとの距離をさらに縮めました。

 

(注)1.過去の同様ミッション実施の有無に関する当社調査に基づき判断しています。

 

 

 


図26 ADRAS-Jの定点観測により撮影された観測対象のデブリ

 


図27 ADRAS-Jの周回観測により撮影された観測対象のデブリ

 

 

3.6 開発・製造体制の確保

現在、当社グループの衛星の設計・開発・製造は、日本、英国、米国、イスラエルの各オフィスにて分担し、日々連携しております。各国で開発・製造体制を整えることで、プロジェクトや従業員の採用を並行して進められることに加え、各国の政府機関・宇宙機関プロジェクトの受注にあたっては、その国での製造、雇用その他サプライチェーンの活用などが要件とされる場合があることなどから、複数地域で開発・製造体制を整備することは当社グループの成長に寄与します。開発・製造体制については、今後とも軌道上サービス市場の伸びに応じて、また、セキュリティ面で特段の配慮を必要とする防衛機関からの需要にも対応できるよう、拡張していく予定です。

 


図28 各国の拠点

 

 

4 【関係会社の状況】

 

名称

住所

資本金

又は出資金

主要な事業の内容

議決権の所有

(又は被所有)

割合(%)

関係内容

(連結子会社)

 

 

 

 

 

Astroscale

Singapore Pte. Ltd.

(注)2、7

シンガポール

147,088

千米ドル

軌道上サービス事業

100.0

役員の兼任あり

2名

株式会社

アストロスケール

(注)5

東京都墨田区

10,000

千円

軌道上サービス事業

100.0

役員の兼任あり

3名

資金援助

Astroscale Ltd

(注)2、6

英国

オックスフォードシャー州

57,000

千英ポンド

軌道上サービス事業

100.0

役員の兼任あり

2名

資金援助

Astroscale U.S. Inc.

米国

コロラド州

100

米ドル

 

軌道上サービス事業

100.0

資金援助

Astroscale Israel Ltd.

イスラエル

テルアビブ

100
 新シェケル

軌道上サービス事業

100.0

[100.0]

(注)3

Astroscale France SAS

フランス

トゥールーズ

100,000
 ユーロ

軌道上サービス事業

100.0

資金援助

 

(注) 1.「主要な事業の内容」欄には、セグメントの名称を記載しております。

2.特定子会社であります。

3.「議決権の所有(又は被所有)割合」欄の[ ]内は間接所有割合で内数です。

4.上記連結子会社で有価証券届出書又は有価証券報告書を提出している会社はありません。

5.株式会社アストロスケールについては、売上収益(連結会社相互間の内部売上収益を除く。)の連結売上収益に占める割合が10%を超えております。IFRSに基づいて作成された同社の財務諸表における主要な損益情報等は以下の通りです。

主要な損益情報等 ①売上収益         963,352千円

②営業損失        2,520,272千円

③当期損失        2,989,480千円

④資本合計      △13,352,843千円

⑤資産合計       11,661,393千円

6.Astroscale Ltdについては、売上収益(連結会社相互間の内部売上収益を除く。)の連結売上収益に占める割合が10%を超えております。IFRSに基づいて作成された同社の財務諸表における主要な損益情報等は以下の通りです。

主要な損益情報等 ①売上収益       1,695,545千円

②営業損失        5,691,851千円

③当期損失        5,713,222千円

④資本合計       2,845,959千円

⑤資産合計       9,043,170千円

7.本書提出日現在において、シンガポール子会社であるAstroscale Singapore Pte. Ltd.は休眠状態にあります。

 

5 【従業員の状況】

(1) 連結会社の状況

当社グループで行う事業の部門別での従業員数は以下の通りであります。

2025年4月30日現在

セグメントの名称

部門名

従業員数(名)

軌道上サービス事業

Engineering(日本)

148

(11)

Engineering(海外)

277

(14)

全社共通(日本)

71

(5)

全社共通(海外)

81

(5)

合計

577

(35)

 

(注) 1.従業員数は就業人員(当社グループから当社グループ外への出向者を除き、当社グループ外から当社グループへの出向者を含む。)であり、臨時雇用者数(アルバイト及びパートタイマーを含み、人材派遣会社からの派遣社員を除く。)は、年間の平均人員を( )内に外数で記載しております。

2.全社共通は、渉外部門及び管理部門の従業員であります。

3.当社グループは、軌道上サービス事業の単一セグメントであるため、部門別の従業員数を記載しております。

4.従業員の著しい増減は、業容拡大に伴う採用数の増加によるものです。

 

(2) 提出会社の状況

2025年4月30日現在

従業員数(名)

平均年齢(歳)

平均勤続年数(年)

平均年間給与(千円)

35

45.4

2.6

12,145

 

 

セグメントの名称

部門名

従業員数(名)

軌道上サービス事業

Engineering

5

全社共通

30

合計

35

 

(注) 1.従業員数は、出向者を含まない就業人員数であり、役員は含めておりません。

2.平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでおります。

3.全社共通は、渉外部門及び管理部門の従業員であります。

4.当社は、軌道上サービス事業の単一セグメントであるため、部門別の従業員数を記載しております。

 

(3) 労働組合の状況

当社グループの労働組合は結成されておりませんが、労使関係は円滑に推移しております。

 

 

(4) 管理職に占める女性労働者の割合、男性労働者の育児休業取得率及び労働者の男女の賃金の差異

① 提出会社

当社は、「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号)及び「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(平成3年法律第76号)の規定による公表義務の対象ではないため、記載を省略しております。

 

② 連結子会社

連結子会社

当事業年度

補足説明

管理職に占める女性労働者の割合(%)

(注)1

株式会社アストロスケール

18.2

 

(注) 1.「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号)の規定に基づき算出したものであります。

2.男性労働者の育児休業取得率については、「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号)及び「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(平成3年法律第76号)の規定に基づき、開示義務の対象外となるため、記載を省略しております。

3.労働者の男女の賃金の差異については、「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号)の規定に基づき、開示義務の対象外となるため、記載を省略しております。

4.海外の連結子会社については、開示義務の対象外となるため、記載を省略しております。