第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであります。

 

(1) 経営方針・経営環境・経営戦略等

製薬業界は、高度化する医療技術の進展や多様化する医療ニーズへの対応等により、今後も更なる成長が見込まれております。一方で、ジェネリック医薬品の普及等の薬剤費の削減や医療保険の適用基準の厳格化の影響等により、国内における医薬品販売高の成長については不確実な要素も大きくなっております。

また、近年の臨床試験の厳格化の傾向に加え、臨床試験の規模が拡大すると共に開発期間が長期化し、製薬業界では激しいグローバル競争が展開されていることから、新薬開発の効率化が製薬企業各社の課題となっております。

このような状況の中、当社はPepMetics技術によって「創薬不可能」だった標的を「創薬可能」にし、治療法のなかった病気を治療することを使命にあげ、独自の創薬基盤技術を拠り所としております。この技術の有用性を証明すると共に、この技術において業界をリードし、競争力を維持し続けることが重要な経営課題であります。

 

(2) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

当社は現在、研究開発段階のものが多い状況であります。マイルストンの達成に応じて売上高が計上されてはおりますが、不確実性が高いため目標となる経営指標等は定めておりません。

一方で、将来的な成長の要素として、自社開発プログラム及び共同開発プログラムの進捗状況は重要であるため、経営指標として、研究開発における各段階のプログラム数の見通しを提示します。

現段階においては、早期の製品の上市を目指し、研究開発及び臨床試験の進捗状況、並びに研究開発資金と費用のバランス等を注視しながら、事業を推進しております。当社では、事業の進捗を測る指標として研究開発の各段階でのプログラムの数を管理しています。

研究開発では下記の4段階で進捗します。

標的探索

疾病に影響する可能性のある生体分子や生理的機序(メカニズム)を研究し、制御すべきタンパク質等の分子の候補を選び、疾患と標的の関係、評価系の構築難易度、結合様式とPepMeticsの適格性などを評価して創薬標的を選びます。

ヒット化合物探索

創薬標的に対して作用していることを測定する評価系を構築し、候補化合物をスクリーニングして活性のある初期ヒット化合物を見出します。初期ヒット化合物の周辺化合物を合成し、活性を高めると同時に標的に結合しているかを複数の評価系で確認し、ヒット化合物を特定します。

リード化合物探索

ヒット化合物をもとに、薬理活性を高め、動物モデルにおいて一定の治療効果が認められるリード化合物を特定します。

リード最適化

リード化合物をもとに、更に活性を高めると共に薬に適した物性及び安全性を得られるように最適化を進め、医薬品の原料となる臨床候補化合物を見出します。

 

これらのプログラムは全てが上位に進階する訳ではなく、一定の確率で目的の化合物が得られず中止となります。プログラムを進めるためには研究者及び資金等の多くの資源を必要とするため、一時期に並行して進められるプログラムの数には限界があります。当社では成功及び導出の可能性が高いプログラムに資源を優先的に配分することを重視しており、プログラムを始める際に明確な目標と期限を定め、進める中で想定外の状況が発生した場合にはプログラムを中止することがあります。その資源を新たなプログラムに配分することで、常時適切な数の有望なプログラムを揃える最適なパイプラインの状態を維持しています。

 

 

(3) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

当社の事業は独自の創薬基盤技術を拠り所としており、この技術の有用性を証明すると共に、この技術において業界をリードし、競争力を維持し続けることが重要な経営課題であります。

 

(特に優先度の高い対処すべき事業上及び財務上の課題)

① プログラムの推進

現在、エーザイ及び大原薬品とライセンス契約を締結し、それぞれの製薬会社が主導して臨床試験を実施しております。ライセンスアウト先からのマイルストンは多額であるため、その臨床試験の進捗は当社の資金繰り計画に影響を与えます。ライセンスアウト契約先と密にコミュニケーションを図りつつ、臨床試験の進捗の状況の確認及びアドバイス等をステアリングコミッティ等にて行い、共同して適切に進捗するように尽力して参ります。

新規の創薬プログラムは様々な事由で中止される可能性があります。そこで、現在当社で開発を進めております自社プログラムに加えて、新規プログラムを毎年開始することにより、確度の高いプログラムに優先的に資源を集中し、新たなプログラムを継続して創出することを目指しております。

 

② 創薬基盤技術の継続的な収益化

当社のPepMetics技術を活用し、最近数年間に複数の契約を締結することができました。これらの契約では、ヒット化合物の創出や研究開発が進む段階に応じてマイルストン収入が得られる仕組みになっており、契約先との密なコミュニケーションとサポートを行って進捗を推進して参ります。

今後も同様の契約を積み重ねていくことで、継続的な収益の基盤を構築することを目指しております。

また、より創薬基盤の価値を向上させるために有用性を示す技術開発も引き続き行う必要があります。

 

③ 人材の採用、育成

研究開発を進めるため、多様な人材の採用及び育成を強化する仕組みの構築に取り組んでいます。共同開発事業の拡大に向けたプロモーション活動の効率化を図るため、自社ウェブサイトの充実化、営業体制の効率化及び強化に努めて参ります。

 

(その他の優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題)
財務基盤の強化

継続的な収益化を目指す中、当事業年度末の現金及び預金は2,915,572千円であり、一層の事業の促進と並行してコスト削減及び財務基盤の強化も求められております。

 

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであります。

 

(1) サステナビリティに関する考え方

当社は、社会、従業員、環境のサステナビリティを重視し、整合性を持った経営をしております。

当社の事業は、独自の研究開発によって患者さまに新たな治療法とQOLの向上を提供し、また製造コストの低い低分子医薬品によってグローバルに低所得の国々にも治療へのアクセサビリティを提供いたします。

当社は、経営の基本理念を「優秀な研究者が薬を創り出すという同じ目的に向かって連携し、公平に議論し、革新を生み出し続けることが創薬事業の継続的な発展にとって最も重要である」と位置付けており、従業員の採用、教育、登用においては、人種、性別、年齢に関わらず創薬研究にかかる能力、意欲と実績を基準に判断しております。また、従業員の安全衛生並びに健康に配慮し、一人ひとりが能力を発揮できる環境づくりに努めております。

環境面においては実験における廃棄物等のコンプライアンスを重視し、最新の設備を有する施設で環境に最大限に配慮した管理を行っております。

 

(2) サステナビリティに関する取組

① ガバナンス

当社では取締役会がサステナビリティに関する全社的な活動を統括し、様々な課題に取り組む体制としております。取締役会では、研究開発の進捗及び組織の状況・課題の報告や、リスクコンプライアンス委員会からの報告がなされ、基本方針やサステナビリティに関するリスク及び機会について審議、監督しております。

 

② 戦略

「(1)サステナビリティに関する考え方」に記載のとおり、当社は、創薬基盤を構築する為のPepMetics技術を継続的に改良、発展させることが経営の基盤であると考えており、その技術(PepMetics技術)の改良、発展を支える人材の確保と育成、研究環境を中心とする社内環境の整備が成長戦略を実現するための源泉と考えております。そのため、成長戦略に沿って人員計画を立て、採用並びに育成のための活動を行い、経営と社員の密接なコミュニケーションを図ることで、優秀な人材がモチベーションを持って研究に取り組める環境整備に努めております。

 

③ リスク及び機会の管理

当社では、リスクコンプライアンス委員会を設置し、各部門より適時リスク及び機会の報告を行い、緊急度と影響度の観点よりリスク及び機会の評価を行い、優先度順にレベル分けし、度合いに応じて取締役会でも審議され、リスク及び機会を低減・受容・回避・移転するのか対応方法を判断します。また、認識されているリスク及び機会はリスクコンプライアンス委員会で定期的に再評価を実施してリスク及び機会のコントロールに努めております。

人事面では、就業規則、給与規程、並びに人事考課規程を設け、公正並びに客観的な評価を行うように規定しております。

研究開発に関する規程では倫理評価について定め、環境並びに実験動物への倫理について適切な対応を図っております。

 

(3) 指標及び目標

当社では、「(2) サステナビリティに関する取組 ②戦略」で述べたとおり、人材育成及び社内環境整備を重要な経営課題として取り組んでおりますが、組織が拡大中にあることで定点観測が困難である為、現時点では定量的な指標や目標は設定しておりません。今後、成長を続ける中で適切な指標や目標の設定について検討を進めて行く予定です。
 

 

3 【事業等のリスク】

本書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。また、当社は、医薬品等の開発を行っておりますが、医薬品等の開発には長い年月と多額の研究費用を要し、各プログラムの研究開発が必ずしも成功するとは限りません。特に研究開発段階のプログラムを有するバイオベンチャー企業は、事業のステージや状況によっては一般投資者の投資対象として供するには相対的にリスクが高いと考えられており、当社への投資はこれに該当します。

なお、文中の将来に関する事項は、提出日現在において当社が判断したものであります。

 

(1) 事業環境に由来するリスク

① 新薬開発の不確実性について(発生可能性:中、発生する可能性がある期間:特定時期なし、影響度:大)

一般的に医薬品開発は研究開始から承認まで長期間を要し、多額の研究開発投資が必要になりますが、他産業と比較して製品化の成功確率が著しく低い状況にあります。

医薬品候補化合物は、有効性や安全性の観点から開発の延長や中止をする可能性があります。また、臨床試験で良い結果が得られた場合であっても、各国における薬事関連法規等の厳格な法規制等の適用のもとで審査を受けることが必要であり、製品開発中に施行される承認審査基準の変更により、承認が得られない可能性があります。

開発の不確実性による新薬開発の遅延により研究開発の期間が延長された場合には、追加の研究開発投資が必要になるほか、上市後の特許権の満了までの期間が短くなることにより将来に期待していた収益が得られない可能性があります。また、研究開発を中止した場合は、それまでに投資した資金を回収できなくなることになります。

医薬品の研究開発には多くの不確実性が伴い、当社の現在及び将来の開発品についても同様の不確実性のリスクが内在しております。

当該リスクに対しては医薬品の開発や事業化について経験を有する人材を社内外に確保し研究開発を推進する体制の構築に努めております。その一環として、新薬の研究及び臨床開発の分野で豊富な経験を有するメンバーで構成したScientific Advisory Boardを組織し、助言を受けております。また、臨床試験の計画・実施に当たっては規制当局との事前相談等を通じて適切な助言を得て開発を推進して参ります。

 

② 医療費抑制策について(発生可能性:中、発生する可能性がある期間:特定時期なし、影響度:中)

医療用医薬品の販売価格は日本及びその他各国政府の薬価に関する規制を受けます。近年、日本では医療費抑制策の一環として、通常2年毎の医療用医薬品の薬価引き下げや、ジェネリック医薬品使用促進等の施策がとられております。欧米、アジアの国々等においても、医薬品の薬剤費低減への圧力は年々高まっており、将来に期待していた収益が得られない可能性があります。

このような動向を受け、当社の製品の薬価が当社の想定を下回り、又は当社製品への需要が減退した場合には、当社の事業、財政状態及び経営成績に重大な悪影響を及ぼす可能性があります。

 

③ 法規制に関するリスク(発生可能性:小、発生する可能性がある期間:特定時期なし、影響度:中)

医薬品事業は、薬事規制や製造物責任等の様々な法規制に関連しており、法規制の制定や改定により業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。

現在、当社のパイプラインは研究開発段階にあり、わが国の厚生労働省、アメリカ食品医薬品局(FDA)、欧州医薬品庁(EMA)等から上市のための認可は受けておりませんが、今後各国の薬事法(わが国においては「薬機法」)等の諸規制に基づいて医薬品の製造販売承認申請を行い、承認を取得することを目指しております。

当社に適用される法規制を遵守できない場合、規制当局から行政処分やその他の措置を受ける可能性や、製品の回収更には製品の許認可の取り消し、あるいは賠償請求を受ける等当社や当社の製品に対する信頼や評価を棄損するほか、事業、財政状態及び経営成績に重大な悪影響を及ぼす可能性があります。

当該リスクに対しては、パイプラインの拡充を図ると共に、医薬品の開発や事業化について経験を有する人材を社内外に確保してプログラムを推進する体制の構築に努めております。

 

④ 訴訟に関するリスク(発生可能性:小、発生する可能性がある期間:特定時期なし、影響度:小)

現在関与している訴訟は有りませんが、臨床試験に組み込まれた被験者の内賠償に該当する場合や、将来的に第三者の権利もしくは利益を侵害した場合又は侵害していない場合でも相手方が侵害していると考える場合には、損害賠償等の訴訟を提起される等、法的な紛争が生じる可能性があり、当社の事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

当社は、第三者との間で係争が生じた際には、顧問弁護士及び弁理士と連携し、当該係争に迅速に対応する方針であります。

 

(2) 事業内容に由来するリスク

① 他社による類似技術開発に関するリスク(発生可能性:中、発生する可能性がある期間:特定時期なし、影響度:中)

最近のゲノム情報を用いた解析により、細胞内に存在するタンパク質同士が結合することでシグナル伝達が起こる経路に疾患の原因となる異常が存在することが次々と明らかになっておりますが、PPIに作用して効果を示す薬剤は、ほとんど知られておりません。これは、分子量の大きなタンパク質(数万~数十万)同士の結合を、分子量の小さい合成低分子化合物(数百)で制御することが非常に難しいことによります。(大きな分子は、細胞膜を通過しないため使用できない。)中でもヘリックス(タンパク質の二次構造の共通モチーフのひとつで、バネに似た右巻き螺旋の形をしています。骨格となるアミノ酸の全てのアミノ基は4残基離れたカルボキシル基と水素結合を形成しています。)構造は、模倣が難しく過去に有効な成功例は数例しか報告されておりません。当社はヘリックス構造を模倣する多くの骨格を合成し、広範囲な特許対策も実施しております。

しかしながら、資金力のある大手製薬会社が将来的に新規構造を持つ化合物を合成したり、特許抜けによる類似化合物を合成する可能性は否定できません。

このようなリスクに直面した場合、当社の事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

② 外国為替相場の変動に関するリスク(発生可能性:中、発生する可能性がある期間:特定時期なし、影響度:小)

当社は、海外の製薬会社やCRO(開発業務受託機関)と多くの取引を行っており、受取及び支払は外貨建決済となります。従って、為替相場が変動した場合には、当社の経営成績及び財務状態に影響を及ぼすこととなります。

 

③ 他社とのアライアンスにおけるリスク(発生可能性:中、発生する可能性がある期間:特定時期なし、影響度:中)

当社は、新薬候補化合物を大手製薬会社等に導出し、導出先が販売促進活動し、マイルストン収入及びロイヤリティ収入を得るのが基本的ビジネスモデルです。共同開発事業についてはエーザイ、大原薬品との間でそれぞれ導出に関する契約を締結しております(後述の「5 重要な契約等」をご参照ください。)。既に導出を行った新薬候補化合物の臨床試験を実施中ですが、これらの試験結果が望ましくない場合や提携企業との良好な協力関係が保たれなくなった場合、当初予定していた売上高が減少し将来に期待していた収益が得られない可能性があります。また、製品買収や製品・開発品の導入等に伴う不確実性により、将来に期待していた収益が得られない可能性があります。

上記導出契約に加え、国内外の製薬会社との間で共同研究や研究協力に関する契約を締結もしくは今後の締結を見込んでおり、契約締結後、当社にとって不利な契約改定が行われた場合、当社の理念及び社会的評価を損ねる可能性があり、その結果として当社の事業、業績や財政状況等に重大な影響を及ぼす可能性があります。

当該リスクに対しては、新規提携先の拡充に向け複数の候補先と定期的なコミュニケーションの実施に努めております。

 

 

④ 業務委託先の工場の閉鎖又は操業停止(発生可能性:小、発生する可能性がある期間:特定時期なし、影響度:中)

技術上の問題、使用原材料の供給停止、新型コロナウイルス・インフルエンザ等のパンデミック、火災、地震、その他の災害等により業務委託先の施設が閉鎖又は操業停止となる可能性があります。この場合、原体の供給や活性データの報告が妨げられ、業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。

当該リスクに対しては、常に不測の事態に備え、複数の委託先との業務提携体制の構築に努めております。

 

⑤ 使用原材料の安全性及び品質に関するリスク(発生可能性:小、発生する可能性がある期間:特定時期なし、影響度:中)

使用する原材料の安全性及び品質に懸念が発生した場合、使用原材料の変更はもちろんのこと、それらを使用した研究開発結果への疑義等、業績や研究開発に重要な影響を及ぼす可能性があります。

当該リスクに対しては、常に不測の事態に備え、複数の仕入先との業務提携体制の構築に努めております。

 

⑥ 他社との競合について(発生可能性:中、発生する可能性がある期間:特定時期なし、影響度:中)

当社が事業を展開するペプチド模倣低分子技術は、今後市場規模が拡大した場合、国内企業のみならず、海外の大手製薬企業やバイオベンチャー等の参入も拡大し、競争環境が激化する可能性があります。

競合他社は、当社や当社の導出先よりも多くの経営資源又は研究開発や販売に関する豊富な経験を有している場合があり、これらの企業が当社や当社の導出先に先んじて研究開発を進めた場合のほか、当社が研究開発の過程で必要とする第三者の知的財産権について独占的な導出を受け、又は大手製薬企業と提携すること等を通じて、当該分野において当社よりも先行した場合、当社事業の競争上の優位性が低下する可能性や、当社の事業展開において当社が想定する以上の資金が必要となる可能性があります。

以上により、今後の競争激化が当社の事業、財政状態及び経営成績に重大な悪影響を及ぼす可能性があります。

 

⑦ 小規模組織及び少数の事業推進者への依存(発生可能性:小、発生する可能性がある期間:特定時期なし、影響度:中)

当社は、当事業年度末において従業員50名未満の小規模体制となっております。今後、業務拡大に応じて採用、経理人材の採用を通じて内部管理体制の拡充を図る方針です。

また、当社の代表取締役竹原大、取締役研究開発部長朴煕万をはじめとする現在の経営陣、研究開発活動を推進する各部門責任者及び少数の開発担当者はそれぞれが高度かつ専門的な業務に従事しており、当社の事業活動はかかる少数の主要な人材に強く依存するところがあります。そのため、常に優秀な人材の確保と育成に努めておりますが、人材確保及び育成が順調に進まない場合、並びに人材の流出が生じた場合には、当社の事業活動に支障が生じ、当社の業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。

また、当社が今後パイプラインの拡充や、製品候補の製造又は販売を行う場合、従業員数及び事業範囲を拡大し、商業化等の担当者を採用、維持する必要がありますが、当社が事業の拡大を適切に管理し、適切な人材を採用できない場合は当社の成長戦略に影響を及ぼす可能性があります。

また、当社は海外における事業開発活動については海外在住のコンサルタントを活用しており、契約が解除されることで一時的に業務に支障が生じる可能性はありますが、当社の役員及び従業員で補いつつ海外の他のコンサルタントに委託する等の対応を取る方針です。

当社は、当社の理念の浸透を図ると共に、専門分野毎の縦割り型ではなく、経営陣並びに従業員が自由闊達に議論を交わせるような組織づくりを通じ、やりがいを感じることができる風土を醸成すると共に、新規採用も含め社内体制の強化を進めて参ります。

 

 

⑧ 現在出願中の特許が登録されないリスク(発生可能性:低、発生する可能性がある期間:特定時期なし、影響度:中)

当社は、研究開発により得られた成果に関して戦略的な特許出願を行っております。その結果、当事業年度末時点で13件(登録済10件、出願中3件)の特許を出願・登録し、今後、一層、知的財産権の確保のため、新規出願及び出願済特許の登録の増加を図っていく方針であります。しかしながら、出願した特許が登録に至らない、若しくは特許の一部のみしか登録に至らない可能性があります。また、当社グループが所有又は使用許諾を受けた知的財産権に優位する知的財産権が第三者によって生み出される可能性があり、こうした結果、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 

⑨ 特許訴訟に関するリスク(発生可能性:小、発生する可能性がある期間:特定時期なし、影響度:小)

当社は、提出日現在、当社の事業に対する特許権等の知的財産権に関する第三者との間での苦情及び訴訟等といった問題は認識しておりませんが、医薬品開発事業の一般的なリスクとして、自社で出願した特許以外にも第三者の特許が関連する可能性があります。当社が第三者との間で係争に巻き込まれた場合、当社は弁護士や弁理士との協議の上、その内容に応じて対応策を検討していく方針でありますが、仮に相手方の主張が認められる可能性が低い係争であっても、係争の解決に多大な労力、時間及び費用を要する可能性があり、その場合、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

また、将来的な事業展開においては、他社が保有する特許権等への抵触により、製品候補の開発の停止等を命ぜられる等の事業上の制約を受ける等、当社の事業、財務状況及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

当社は、新たな開発に着手する際は、他社の特許権等を侵害しないことを確認する調査等によりリスクの低減を図ると共に、第三者との間で係争が生じた際には、顧問弁護士及び弁理士と連携し、当該係争に迅速に対応する方針であります。

 

(3) その他リスクについて

① 新株予約権の行使による株式価値の希薄化について(発生可能性:大、発生する可能性がある期間:各新株予約権発行後2~10年の間、影響度:小)

当社は、当社の役員、従業員等に対して新株予約権を付与しております。提出日前月末時点において、これらの新株予約権による潜在株式数は3,489,900株であり、提出日前月末時点での発行済株式総数36,916,000株の9.5%に相当しております。これらの新株予約権が権利行使された場合、当社株式が新たに発行され、既存の株主が有する株式の価値及び議決権割合が希薄化する可能性があります。また、今後も優秀な人材確保のため、新株予約権の発行と付与を実施する可能性があります。従いまして、今後発行される新株予約権が行使された場合にも、当社の1株当たりの株式価値が希薄化する可能性があります。

 

② 情報セキュリティ事故について(発生可能性:中、発生する可能性がある期間:特定時期なし、影響度:中)

当社は、情報セキュリティ、研究開発等に関する機密情報等及び個人情報の管理について、情報システムを活用しつつ、情報セキュリティ管理規程、個人情報取扱規程に沿って運用を行っておりますが、当社の役職員、提携先、取引先の不注意や故意、セキュリティ障害、第三者による攻撃等により、当社の研究開発等に関する重要な機密情報や個人情報が流出した場合には、当社の事業展開や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

当社は当該リスクを低減するため、当社の提携先及び取引先との間で守秘義務を含む契約を締結すると共に、規程に沿った情報管理の運用に努めておりますが、現在、当社はサイバーセキュリティ保険への加入も検討しております。

 

 

③ 資金繰りについて(発生可能性:中、発生する可能性がある期間:特定時期なし、影響度:中)

当社の創薬基盤の拡張・維持や自社開発事業は、多額の研究開発費用を必要とし、今後一定期間にわたって先行投資の期間が続きます。この期間においては、継続的に営業損失を計上し、営業活動によるキャッシュ・フローはマイナスとなる傾向があります。これまでも特定の事業年度を除くと営業キャッシュ・フローのマイナスが続いており、現状では共同開発事業からの収益に対して自社開発事業への投資並びに管理部門等の間接経費が上回っている状況です。

このため、安定的な収益源が先行投資を上回るまでの期間においては、研究開発の進捗等に応じて適切な時期に資金調達等を実施して財務基盤の強化を図る方針ですが、必要なタイミング又は適切な条件で資金を確保できなかった場合は、当社事業の継続に重大な懸念が生じる、又は株主の保有する権利に影響を及ぼす可能性があります。

当該リスクに対しては、自社開発事業への先行投資の調整や早期の資金調達の実施に注力すると共に、金融機関からの融資、コミットメントラインなどの調達方法の多様化を検討して参ります。

 

④ 調達資金について(発生可能性:中、発生する可能性がある期間:特定時期なし、影響度:中)

新薬開発に関わる研究開発活動の成果が収益に結びつくには長期間を要する一方で、研究開発投資から期待した成果が得られる保証はなく、また当社の判断により調達資金を上記以外の目的で使用する可能性、当初予定していた研究開発対象とは別のプログラムがあり、その結果、資金の投資が期待される利益に結びつかない可能性があります。

 

⑤ 収益計上について(発生可能性:中、発生する可能性がある期間:特定時期なし、影響度:中)

当社の収益構造は、当社が研究開発する医薬品について製薬企業等と導出契約等を締結し、その対価として契約一時金、マイルストン収入及び製品の上市以降の販売に応じたロイヤリティ収入を得ることを基本モデルとしております。

一般的に医薬品等の開発期間については基礎研究開始から上市まで長期間に及ぶこと、製薬企業等からの収入は研究や開発の進捗に大きく左右されることが予見されます。

また、研究開発の進捗遅れが生じた場合や導出先の研究開発方針に変更等が生じた場合には、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

当該リスクに対し、導出契約先と密にコミュニケーションを図りつつ、臨床試験の進捗の状況の確認及びアドバイス等を定期的な会議等にて行い、共同して適切に進捗するように尽力して参ります。また、当社が創薬標的を選択して開発化合物を見出す自社開発事業と、創薬標的に対してヒット化合物を見出して導出する共同開発事業を組み合わせたハイブリッド事業モデルにより、一時的な収益計上の平準化、安定的な将来の利益拡大を目指して参ります。

 

⑥ 新株発行を伴う資金調達による株式の希薄化リスク(発生可能性:中、発生する可能性がある期間:特定時期なし、影響度:中)

当社は医薬品の研究開発型企業であり、将来の研究開発活動の拡大に伴い、増資等の新株発行を伴う資金調達を機動的に実施していく可能性があります。その場合には、当社の発行済株式数が増加することにより、1株当たりの株式価値が希薄化する可能性があります。

 

⑦ 自然災害、感染症等の発生について(発生可能性:小、発生する可能性がある期間:特定時期なし、影響度:中)

当社の事業所は神奈川県藤沢市及び東京都中央区に設置しておりますが、事業活動や研究開発活動に関わる設備及び人員は神奈川県藤沢市の施設に集中しております。そのため、周辺地域において、地震等の自然災害、大規模な事故、火災、テロ等が発生し、当社が保有する化合物のライブラリーの滅失、研究設備の損壊、各種インフラの供給制限等の不測の事態が発生した場合、当社の事業等に影響を及ぼす可能性があります。当社は、危機管理対策要領を作成し、緊急事態発生時に速やかに状況を把握し、迅速かつ適切な対処で被害を最小限に食い止められるような体制づくりに努めております。

 

 

⑧ 風説・風評の発生について(発生可能性:小、発生する可能性がある期間:特定時期なし、影響度:中)

当社や当社の関係者、当社の取引先等に対する否定的な風説や風評がマスコミ報道やインターネット上の書き込み等により発生・流布した場合、それが正確な事実に基づいたものであるか否かにかかわらず、当社の社会的信用に影響を与える可能性があります。また、当社に対する信頼性に悪影響が生じ、当社の事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑨ ベンチャーキャピタルによる株式保有・比率について(発生可能性:中、発生する可能性がある期間:特定時期なし、影響度:小)

当社の発行済株式総数に対するベンチャーキャピタル及びベンチャーキャピタルが組成した投資事業組合(以下「ベンチャーキャピタル等」という。)の所有割合は当事業年度末時点で39.88%であります。当社の株式の株価推移によっては、ベンチャーキャピタル等が所有する株式の全部又は一部を売却する可能性が考えられ、その場合、株式市場における当社株式の需給バランスが短期的に損なわれ、当社株式の市場価格が低下する可能性があります。

 

⑩ 職務発明に対する社内対応について(発生可能性:中、発生する可能性がある期間:特定時期なし、影響度:小)

当社が職務発明者である役職員等から特許を受ける権利を譲り受けた場合、当社は特許法に定める「相当の対価」を支払うことになります。当社では、共同発明の持分比率や相当の対価の支払い請求等に問題が生じる場合を想定し、その取扱いについて職務発明等取扱規程を制定しております。これまでに発明者との間で対価の支払い等で問題が生じたことはありませんが、そのような問題が生じた場合には、当社の事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑪ 配当政策について(発生可能性:小、発生する可能性がある期間:特定時期なし、影響度:小)

医薬品の研究開発には多額の初期投資を要し、その投資回収も長期に及ぶ傾向にあり、当社も創業以来継続的に営業損失及び純損失を計上していることから、当社はこれまで配当の実績はなく、当面は研究開発活動の継続的な実施に備えた資金の確保を優先し、配当は行わない方針であります。しかし、株主への利益還元は重要な経営課題であると認識しており、将来において安定的な収益の獲得が可能となる場合には、財政状態及び経営成績を考慮した上で、利益配当についても検討して参ります。

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

当事業年度における当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という)の状況の概要は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は提出日現在において判断したものであります。

 

① 経営成績の状況

当社は、独自のペプチド模倣技術を駆使してタンパク質/タンパク質間相互作用(Protein-Protein Interaction, PPI)を阻害する低分子を用いて新薬を開発することを目指し、10年以上にわたる研究開発の結果、臨床開発化合物を見出し、数多くのシード化合物を生み出しています。この独自の創薬基盤をPepMetics®技術として発展させ、これまで創薬が困難とされてきた標的に対して有望な化合物を見出す技術を確立してきました。PepMetics技術によって、細胞内のシグナル伝達を制御することで、ガンなどの難病を根治するための治療薬の創出を目指しており、当社が創薬標的を選択して開発化合物を見出す自社開発事業と、製薬会社の持つ創薬標的に対してヒット化合物、リード化合物、又は臨床候補化合物を見出して導出する共同開発事業を行っています。

 

自社開発事業では、導出した2つの臨床開発プログラムについて、それぞれ第Ⅱ相臨床試験を継続して実施しました。当事業年度においてマイルストン収入は得られなかったものの、導出先企業によって臨床開発の取り組みが着実に進められております。また、自社開発プログラムとして、当事業年度末時点で4つのプログラムを実施しております。

 

共同開発事業では、当事業年度末時点で国内外6社と契約を締結しており、それぞれの企業との間で研究開発活動を実施しました。小野薬品工業株式会社(以下、「小野薬品」という。)の共同研究につきましては、2025年11月に予め定められたマイルストンを達成し、一時金並びに共同研究費を受領しました。一方で、Eli Lilly and Company(以下、「Lilly」という。)並びにLES LABORATOIRES SERVIER(以下、「SERVIER」という。)との共同研究契約につきましては、2025年9月並びに10月にそれぞれ契約を終了しました。Lillyとの契約終了に伴い、残存履行義務が無くなったことから、契約負債残額をすべて取崩しのうえ、当事業年度の売上高として計上しております。

 

創薬基盤開発につきましては、本年4月に株式会社Elix(以下、「Elix」という。)との業務提携契約を締結し、PepMetics技術にAIを活用する取り組みを開始しました。また、当社の従来からの強みである有機合成化学と並行して、生物及び生物物理の機能を拡充しました。具体的には、PPI評価系を用いたハイスループットスクリーニング(HTS)の本格稼働に加え、PepMetics化合物とタンパク質の結晶構造分析といった生物物理学の手法を取り入れることにより、創薬探索規模の拡大と高度化を進めました。さらに、創薬研究に精通した優秀な人材の採用を積極的に進めました。

 

以上の結果、当事業年度における売上高は677,330千円(前年同期比121.6%増)となりました。

費用につきましては、販売費及び一般管理費については1,044,209千円(前年同期比10.7%増)となりました。その内訳は、研究開発費が620,939千円(前年同期比8.6%増)、その他販売費及び一般管理費が423,269千円(前年同期比14.0%増)であります。

この結果、営業損失は774,453千円(前事業年度は782,392千円の営業損失)、経常損失は748,302千円(前事業年度は831,518千円の経常損失)、当期純損失は833,700千円(前事業年度は1,049,514千円の当期純損失)となりました。

なお、当社は、創薬事業の単一セグメントであるため、セグメント別の業績の記載を省略しております。

 

② 財政状態の状況
(資産)

当事業年度末における資産合計は3,085,692千円となり、前事業年度末と比較して1,442,873千円減少しました。流動資産は3,038,891千円となり、前事業年度末と比較して1,444,202千円減少しました。これは主として、現金及び預金が1,476,449千円減少したこと等によるものであります。固定資産は、46,801千円となり、前事業年度末と比較し1,328千円増加しました。これはラボスペース増床に伴う敷金及び保証金1,328千円の増加によるものであります。

 

(負債)

当事業年度末における負債合計は376,862千円となり、前事業年度末と比較して648,802千円減少しました。流動負債は370,080千円となり、前事業年度末と比較して649,788千円減少しました。これは主としてLilly及び小野薬品との共同研究及び導出契約に基づく契約負債が663,479千円減少したこと等によるものであります。

 

(純資産)

当事業年度末における純資産合計は2,708,830千円となり、前事業年度末と比較して794,071千円減少しました。これは主として、既存ストックオプションの権利行使に伴い資本金及び資本準備金をそれぞれ16,465千円計上したこと及び、新規ストックオプションの発行により新株予約権が6,698千円増加した一方、当期純損失の計上により利益剰余金が833,700千円減少したこと等によるものであります。

 

③ キャッシュ・フローの状況

当事業年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という)は2,915,572千円となり、前事業年度末に比べ1,476,449千円減少しました。当事業年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

当事業年度において営業活動により支出した資金は、1,468,363千円(前事業年度は150,144千円の獲得)となりました。これは主に、非資金項目である減損損失を82,978千円計上した一方、税引前当期純損失を831,280千円計上したこと及び、契約負債が663,479千円減少したこと等によるものです。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

当事業年度において投資活動により支出した資金は、69,013千円(前事業年度は244,187千円の支出)となりました。これは主に、固定資産の取得による支出67,684千円及び、敷金及び保証金の差入による支出1,328千円があったことによるものです。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

当事業年度において財務活動により獲得した資金は、33,588千円(前事業年度は3,370,055千円の獲得)となりました。これは主に、新株予約権の行使による株式の発行による収入32,551千円があったこと等によるものであります。

 

④ 生産、受注及び販売の状況
a 生産実績

当社は直接的な生産活動は行っておらず、生産実績にはなじまないため、記載を省略しております。

 

b 受注実績

当社の事業による共同研究は受注形態をとっておりませんので、記載を省略しております。

 

 

c. 販売実績

販売実績は、次のとおりであります。なお、当社は、単一セグメントであるため、セグメントごとの記載はしておりません。

 

セグメントの名称

金額(千円)

前年比(%)

創薬事業

677,330

121.6

合計

677,330

121.6

 

 (注) 主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は、以下のとおりであります。

相手先

前事業年度

(自 2023年10月1日

 至 2024年9月30日)

当事業年度

(自 2024年10月1日

 至 2025年9月30日)

販売高(千円)

割合(%)

販売高(千円)

割合(%)

Eli Lilly and Company

217,069

71.0

523,502

77.3

小野薬品工業㈱

47,666

15.6

109,999

16.2

 

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は提出日現在において判断したものであります。

 

① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
a 経営成績

経営成績につきましては、「(1) 経営成績等の状況の概要 ① 経営成績の状況」に記載のとおりであります。

 

b 財政状態

財政状態につきましては、「(1) 経営成績等の状況の概要 ② 財政状態の状況」に記載のとおりであります。

 

② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る事項

当社は、事業上必要な資金を手許資金で賄う方針でありますが、事業収益から得られる資金だけでなく、過去における増資資金及び株式公開における調達資金で賄う予定であります。資金の流動性については、資産効率を考慮しながら、現金及び現金同等物において確保を図っております。資金需要としては、企業価値を増加させるために、主に継続した研究開発や必要な設備投資等を予定しております。

キャッシュ・フローの状況につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ③キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

 

③ 重要な会計上の見積り及び当該見積に用いた仮定

財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定については、重要なものはありません。

 

5 【重要な契約等】

共同開発及び導出契約 (注)1

相手先の名称

相手先の所在地

契約品目

契約
締結日

契約期間

契約内容

エーザイ㈱

日本

研究協力・導出契約

2015年

12月11日

(契約変更)

日本における対象製品の有効特許権の最終満了日、又はいずれかの国における対象製品の最初の発売日から10年後のいずれか遅い日

エーザイとの共同研究で開発した化合物における当社の権利について導出し、マイルストン及びロイヤリティを受領

契約総額は一時金、開発、販売等に対するマイルストン及び研究費を含めて250億円以上

大原薬品工業㈱

日本

導出契約

2018年

5月24日

契約期間の定めなし

当社の保有する特許権及び特許を受ける権利について、専用実施権を許諾し、契約一時金、マイルストン、ロイヤリティを受け取る

Boehringer Ingelheim International GmbH

ドイツ

研究及び導出契約

2020年

5月18日

2025年5月17日

Boehringer Ingelheimの創薬標的に対するスクリーニングのためにPepMeticsライブラリーを提供しヒットした化合物に対して導出

当社はライセンスフィー及び研究開発や臨床試験の進捗に応じたマイルストーン、ロイヤリティを受け取る契約

Merck KGaA

ドイツ

ライブラリーのスクリーニング及び導出契約

2020年

10月12日

国、製品毎での最後のオプション期間満了日、もしくは最後のロイヤリティ期間の満了日のいずれか遅い日

Merckの創薬標的に対するスクリーニングのためにPepMetics ライブラリーを提供し、ヒットした化合物に基づいて研究開発を進めることに対して導出

当社はライセンスフィー、研究開発や臨床試験の進捗に応じたマイルストン及びロイヤリティを受け取る

LES LABORATOIRES SERVIER
 (注) 2

フランス

共同研究・ライセンスオプション契約

2021年

6月3日

締結日から契約内容が終了するまで自動延長

SERVIERの標的に対する、将来の契約一時金、開発マイルストン収入につながる開発化合物の優先交渉権

F.Hoffmann-La Roche Ltd.

 

Genentech, Inc.

スイス

 

アメリカ

共同研究・導出契約

2021年

12月17日

契約期間の定めなし

Roche、Genentechとの三社間契約。低分子医薬品領域の共同研究及び、研究対象を製造、販売等を行うための知的財産権の使用権の付与を行い、マイルストン及びロイヤリティを受け取る契約

小野薬品工業㈱

日本

共同研究及び導出契約

2024年

4月25日

締結日から支払終了まで

小野薬品工業の創薬標的に対する開発候補化合物を共同で創製し、小野薬品工業は全世界で独占的に開発・商業化する権利を取得し、当社に対して契約一時金、研究資金、研究・開発の進捗及び売上高に応じたマイルストン、並びにロイヤリティ等を支払う

 

(注) 1.当社とEli Lilly and Companyは、2023年11月17日付で「共同研究及び導出契約」を締結し、Lillyの創薬標的に対して当社とLillyが開発候補化合物を探索する共同研究事業を進めてまいりました。両社で共同研究に注力し、一定の成果が得られておりましたが、Lillyより、2025年7月24日付の契約の終了に関する通知を受領したことから、当該契約の規定に基づき、2025年9月22日付で当該契約を終了しました。

2.当社とLES LABORATOIRES SERVIERは、2021年6月3日付で「共同研究・ライセンスオプション契約」を締結し、SERVIERが提示する創薬標的に対して両社間で共同研究事業を進めてまいりました。当該プロジェクトにおいて高度な成果が得られておりましたが、両社間で協議を行った結果、双方の合意により当該プロジェクトを発展的に解消することを決定し、2025年10月3日付で当該契約を終了しました。

 

6 【研究開発活動】

当社の研究開発活動における当事業年度の研究開発費は、620,939千円となりました。

当社は、PPIを制御する低分子化合物の創薬基盤技術を用いた新薬の研究開発を行っております。当事業年度末時点において、研究開発部に従業員39名が在籍し、創薬のための新規化合物の設計、合成、分析、評価等の業務を社外のコンサルタント、研究機関や受託研究機関等も積極的に活用し、効率的、効果的に運営しております。

当社では基盤技術の根幹となる高度な合成化学を研究、実施するための施設を保有し、汎用的な合成については外部の受託研究機関を用いることで、機密情報を守りつつ固定費を削減しております。

当事業年度における研究開発活動の詳細は下記のとおりであります。

 

① 自社開発事業
ⅰ) CBP/β-カテニン相互作用阻害剤(E7386、PRI-724)

Wntシグナル伝達経路は、ガン、線維化などを制御するタンパク質のネットワークであり、創薬標的として広く研究されています。Wntシグナルは、細胞が「ガン化」「線維化」する際のみならず、細胞が「分化」して正常に機能する際にも重要な機能を果たすため、Wntシグナルを止めることは副作用にもつながります。従来の技術で開発されてきたWnt阻害剤は、Wntシグナルを上流から全て止めてしまうため、強い毒性を示して開発が中止されてきました。

E7386及びPRI-724は、そのような毒性を示すことなく、治療薬として必要な安全性を可能とするコンセプトのもとで創出された化合物です。Wntシグナルは、細胞核内でβ-カテニンがCBPという転写因子タンパク質に結合することでスイッチが入りますが、PepMetics化合物は、このCBPに結合し、CBPとβ-カテニンの結合を阻害します。一方で、PepMetics化合物はCBPと似た別なタンパク質であるP300とは結合しないため、β-カテニンとP300によるWntシグナル経路は機能します。その結果、PepMetics化合物はWntシグナル全体の機能を止めることなく、「ガン化」「線維化」を止めることが可能となります。

 

(a) E7386

エーザイ株式会社(以下、「エーザイ」という。)と共同創出した経口投与可能なCBP/β-カテニン相互作用阻害剤であるE7386は、ガン細胞の悪性化に関与するCBP/β-カテニンシグナルをターゲットとし、2021年11月にはPOC(Proof of Concept)を達成しています。

当事業年度におきましては、エーザイ創製の経口チロシンキナーゼ阻害剤「レンビマ®」との併用による固形ガンを対象とした後期第Ⅰb相/第Ⅱ相臨床試験につきまして、本年5月の米国臨床腫瘍学会(ASCO)で後期第Ⅰb相パートの中間解析結果が発表され、計画されていた30名の患者の組み入れが完了し、子宮内膜ガンの患者で高い客観的奏効率と有望な予備的抗腫瘍活性を示しました。2025年10月の欧州臨床腫瘍学会(ESMO)で発表されたデータ(データカットオフ:2025年6月4日)では、全奏効率(腫瘍の大きさが30%以上縮小)が36.7%であり、11名の患者で確認されました。更には「レンビマ®」投与歴が無い患者における全奏効率は57.1%を示しました。エーザイでは、患者の用量最適化パート(第Ⅱ相)への組み入れを開始しており、「レンビマ®」との併用による子宮内膜ガンに係る適応に関して2031年3月までの承認取得を目指すと発表しています。

また、「レンビマ®」との併用による臨床試験と並行して、Merck & Co., Inc.,Rahway, NJ, USAの抗PD-1抗体「キイトルーダ®」との併用による固形ガンを対象とした後期第Ⅰb相/第Ⅱ相臨床試験が進行中です。(図16)
 

(b) PRI-724

当社が見出したCBP/β-カテニン相互作用阻害剤であるPRI-724(一般名:ホスセンビビント)は、大原薬品工業株式会社(以下、「大原薬品」という。)にガン以外の分野における権利を導出しました。C型肝炎(HCV)及びB型肝炎(HBV)による肝硬変患者を対象に臨床試験が進められ、肝硬度、肝機能の改善が認められたことから、2022年4月にPOCを達成しています。

2023年4月より、HCV・HBVに加えてMASH(代謝機能障害関連脂肪肝炎、旧名:非アルコール性脂肪肝炎(NASH)) に起因する非代償性肝硬変患者を対象とした第Ⅱ相臨床試験を国内38施設で実施しており、当事業年度におきましてはMASHを対象とするコホートでの患者の登録を完了しました。2027年12月に臨床試験終了を予定しています。

 

また、血友病合併HIVとHCVの重複感染に起因する肝硬変患者を対象に東京都立駒込病院を中心に実施されている第Ⅱ相臨床試験につきましては、2024年12月に症例の登録が終了し、2025年12月に臨床試験終了を予定しています。(図16)

 

 


※1:開発、販売地域はアライアンス先の開発・販売戦略毎に異なります。上記の情報には、現在入手可能な情報に基づく当社の判断による、将来に関する記述が含まれています。そのため、上記の情報は様々なリスクや不確実性に左右され、実際の開発状況はこれらの見通しとは大きく異なる可能性があります。導出された製品候補については、パートナーが今後の開発・商業化の第一義的な責任を負います。

※2:開発地域は当該臨床試験の実施国が属する地域を記載しております。 情報は、2025年8月14日時点でのjRCT又はClinicalTrials.govに基づくものであり、変更になる可能性があります。

※3:開発プロセスイメージにおける臨床試験期間は、2025年8月14日時点でのjRCT又はClinicalTrials.govに基づくものであり、変更になる可能性があります。また、臨床試験期間は、当該臨床試験の開始日(予定日)・終了日(予定日)を参照しております。開始日について、症例登録開始日(予定日)、被験者登録組入日の開示がある場合は当該時期を開始日として参照しております。    (図16)

 

ⅱ) FEP

従来進めてきたeIF4E/eIF4G阻害剤である4EBP1模倣化合物のプログラムは、「リード最適化」ステージにて創薬研究が実施されております。eIF4EとeIF4GはCAP依存性翻訳複合体の主要構成因子であり、mRNAの情報からタンパク質を生成(翻訳)する役割がありますが、このCAP依存的な翻訳機構が特定のガン種においては破綻して過剰に働くことにより、ガン細胞の増殖が進行しています。このような細胞内での翻訳が過剰にならないよう、本来は4E-BP1というタンパク質がeIF4Eに結合することで制御されていますが、ガン細胞では上流のPI3K/Akt/mTOR経路が活性化され、4E-BP1の機能が無効化されています。本プログラムにおいては、PepMetics技術を用いて4E-BP1の模倣化合物を作り、過度な翻訳を制御することを試みています。

治療標的となるガン種としては、たとえばTNBC(トリプルネガティブ乳ガン)では約42%、膀胱ガンでは約43%の患者において本経路が活性化されており、4E-BP1の模倣化合物はこれらガンに対する分子標的薬として期待されております。アメリカ・日本・ヨーロッパ主要国でのこれら活性化されている対象患者数は、TNBCで約13万人、膀胱ガンで約40万人と見積もることができ、更にはこれらガン腫に対する分子標的薬が無いことから、マーケット的に大きなインパクトがあると考えられています。

当事業年度におきましては、化合物の最適化合成並びに薬効評価を継続して実施しました。社内目標として早期の最適化リード化合物並びに臨床候補化合物の創出を掲げるとともに、鍵となる化合物が得られた段階で対外活動を行い、導出契約の締結を目標としております。

 

 

ⅲ) その他自社開発事業

当事業年度におきましては、これまで実施していた1つの「ヒット化合物探索」ステージのプログラムについて、計画していた進捗に至らなかったことから中止しました。一方で、当事業年度に新たに1本のプログラムを開始し、「ヒット化合物探索」を進めています。

 

自社開発プログラムでは標的探索を定常的に行っており、ヒット化合物探索からプログラム数を管理しています。

FEPを含め、進捗段階毎の実施中のプログラム数の経過は下記のとおりです。

 

2024年度末

増加数

次相への
進展

中止数

2025年度末

ヒット化合物探索

 

△1

リード化合物探索

リード最適化

 

 

(2) 共同開発事業

当社は、PepMeticsの創薬基盤を活用して製薬会社が選定した創薬標的に対してヒット化合物を見出して創薬を進める事業を行っております。

当事業年度末段階で国内外6社と共同研究契約を締結しており、各企業との間で研究開発活動を実施し、それぞれ順調に進捗しております。一方で、Lillyとの共同研究契約につきましては、両社で共同研究に注力し一定の成果が得られていたものの、Lillyの戦略的な判断により本年9月に契約を終了しました。

共同研究を実施している進捗段階毎のプログラム数の経過は下記のとおりです。

 

2024年度末

増加数

次相への
進展

中止数

2025年度末

標的探索

△1

ヒット化合物探索

△3

リード化合物探索

リード最適化

 

 

(3)創薬基盤開発

当社は、本年4月にElixとの業務提携契約を締結しました。当社のPepMetics技術はAIとの相性が良い性質を持っていることから、創薬にAIを活用することにより、研究開発の時間短縮と開発成功確率の向上を目指してコラボレーションを進めています。

また、当社の従来からの強みである有機合成化学に加えて、生物及び生物物理の機能を拡充しました。具体的には、生物評価系設備として自社内でPepMeticsライブラリー化合物の評価を高速で行うHTSを本格稼働させるとともに、PPI標的タンパク質の高次構造の予測やリガンドとの結合シミュレーションを行う計算化学、タンパク質-PepMetics化合物複合体のX線結晶構造解析による結合様式の解明を行う生物物理学の手法を確立し、これら新技術を適用することにより、創薬探索規模の拡大と高度化を進めました。さらに、創薬研究に精通した優秀な人材を積極的に採用したことにより、当事業年度末時点において研究開発部の従業員数は39名に増加しました。

これらの拡大投資によって、当事業年度におきましては、自社開発及び共同開発を含めて7つのプログラムを並行して進めました。共同開発事業におけるライブラリー化合物の提供のみならず、PepMetics化合物のデザイン及び最適化合成、PPI活性評価、腫瘍細胞の試験管内(in vitro)及び動物(in vivo, Xenograft等)薬効評価までの一連の創薬プロセスを自社で行う体制を構築し、創薬開発のスピード化による自社開発事業の拡充と、多様化する相手先企業のニーズに応える創薬提案を行える組織を編成しました。