第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において、当社が判断したものであります。

(1)経営環境

 日本では、再生医療の承認を後押しする仕組みや法制度が導入されており、国として再生医療の開発を支援している状況にあります。2014年11月には薬機法が改正され、再生医療等製品では、有効性が推定され安全性が確認されれば、条件及び期限付きで特別に早期に承認できる仕組みが導入されました。また、2015年4月には、「画期性」「対象疾患の重篤性」「極めて高い有効性」「世界に先駆けて日本で申請」を満たす臨床開発中の医薬品及び医療機器に対して、審査期間の早期化や当局との事前相談に関する優先的支援などを提供する「先駆け審査指定制度」が試行的に運用開始されました。その後、2019年11月には更に薬機法が改正され、恒常的な活用のために「先駆的医薬品等指定制度」として法制化されています。革新的な医薬品に対する臨床開発上の優遇措置を、日本政府は強化しています。

 このような環境のもとで、2014年以降13品目の再生医療等製品が日本において承認されています。そのうち2022年には、角膜上皮幹細胞疲弊症に向けた細胞シートに加え、難治性の多発性骨髄腫向けの製品、合計2品目が承認されています。iPS細胞を活用した再生医療等製品の開発においても、本書提出日現在、まだ承認事例はないものの、国内では、国立研究開発法人理化学研究所が2014年に世界で初めてiPS細胞を使う臨床研究を実施したほか、2018年には京都大学がパーキンソン病患者さんに対してiPS細胞を使った治療の医師主導治験、2019年には指定国立大学法人大阪大学(以下「大阪大学」という。)がiPS細胞から作製した角膜上皮細胞シートの臨床研究、2020年には重症心不全患者さんに対して大阪大学がiPS細胞から作製した心筋シートの医師主導治験、2021年には慶應義塾大学が脊髄損傷患者に対するiPS細胞由来神経前駆細胞の臨床研究、さらには2022年に京都大学においてiPS細胞由来HLAホモ型血小板の企業治験が実施されるなど、治療法の確立に向けて臨床開発が進んでいます

 

(2)経営方針・経営戦略

 当社は、世界の死因の第一位を占める心臓病に焦点を当て、「再生医療で心臓病治療の扉を開く」ことをミッションとして重症心不全の抜本的治療法の開発を進めております。当社の心筋再生医療は、これまでの細胞治療とは一線を画す、弱まった心臓を再生心筋で置き換える、”Remuscularization(心筋補填療法)”と呼ばれるものです。投与した心筋細胞が患者さんの心臓の中に生着して長期間機能することを期待する治療法であるがゆえに、投与細胞の製造には高い安全性が要求され、サイエンス・技術面での参入障壁が非常に高い領域ともいえます。当社は、本領域の治療法として非臨床試験を完了させ患者投与での検証に入っている世界的にも先駆的な事例となっております。

 このような競争環境の中で、まず現在実施中のLAPiS試験を完了させて、HS-001において日本での条件及び期限付き承認を目指して販売収益が上がる体制にすること、同時により低侵襲な手法であるカテーテル投与によるHS-005の開発を当社のグローバルパートナーであるノボノルディスク エー・エスと進め、重症心不全に苦しむ日本の患者さんのみならず、世界の患者さんにも当社の心筋再生医療を届けることを目指しております。

 

(3)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標

 当社は現在、研究段階の企業であり販売承認を取得した製品群を保有しておらず、また、開発段階の進捗によりノボノルディスク エー・エスから取得する開発マイルストン収入が売上高に計上されてはおりますが不確実性が高いため、目標となる経営指標等は定めておりません。そのため、現段階においては、リードパイプラインを中心とした早期の上市を目指し、研究開発及び臨床試験の進捗状況及び研究開発資金と費用のバランス等を注視しながら、事業を推進しております。

 

(4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

① 臨床応用の加速

<HS-001について>

当社は、虚血性心疾患者さんを対象としたLAPiS試験を独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)に受理された治験計画に基づき、治験参加施設における患者さんのリクルートメントを継続しております。委託先や治験参加施設との連携を強化し本治験の着実な実行を図ってまいります。

<HS-005について>

2021年6月に発表しましたグローバル大手製薬企業であるノボノルディスク エー・エスとの全世界を対象とする独占的技術提携・ライセンス契約を基に、海外市場向け導出品として主に活用される想定である低侵襲的投与手法の開発などを進めてまいります。

② 中長期的事業基盤構築に向けた取り組み

大量生産を目的とした製造技術開発に加えて、当社が保有するプラットフォーム技術・知財に関する他社との提携などを進めることで、将来収益の極大化に向けた事業基盤を固め、世界市場においても競争力の獲得を図っていく方針であります。

③ 財務基盤の強化

当社は、HS-001での早期収益化を目指す中、2024年4月末時点の現預金残高は3,944,059千円、純資産額は4,549,120千円です。今後は一層の事業の促進と並行して財務基盤の強化を進めてまいります。

④ 組織体制の整備および人材育成

継続的に企業価値を高めていくために、優秀な人材の確保、組織体制の整備及び従業員のモチベーションの維持・向上に努めていくとともに、一人ひとりの従業員の能力開発や働きやすい環境を構築してまいります。

⑤ コーポレート・ガバナンス体制の強化

 事業の拡大とともに、内部管理体制の強化により2023年6月の臨時取締役会にて決議した「内部統制に関する基本方針」を着実に運用することで、さらなるコーポレート・ガバナンス体制の強化に取り組んでまいります。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社のサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであります。

 

当社は、心臓移植しか治療法のない重症心不全患者さんを救うために、心筋再生医療の実現を目指して設立されました。「再生医療で世界を変える」というビジョンのもと、「Patient first でHigh Quality な医療を提供する、独創性のある技術とサイエンスで、新しい医療を開拓する」という価値観から再生医療で心臓病治療の扉を開くことのできるよう、合理的かつ持続可能な研究開発・事業運営を行っていくことでサステナビリティ経営を促進しております。

 

(1) ガバナンス

 当社は、中長期的な企業価値の向上のため、サステナビリティを巡る課題への対応は経営の重要課題と認識しております。「第4 提出会社の状況 4.コーポレート・ガバナンスの状況等 (1)コーポレート・ガバナンスの概要」に記載のコーポレート・ガバナンス体制のもとで、持続可能な社会の実現と当社の継続的な企業価値の向上を目指しております。また、コンプライアンス・情報セキュリティ等においても継続的な活動の改善及び強化に取り組んでおります。

 

(2) 戦略

 当社は、持続的な成長や事業価値の向上を実現していくうえで、人材は最も重要な経営資源であると考えております。具体的には、一人ひとりの個性を生かし多様な働き方で能力を発揮できるよう、フレックスタイム制の導入やリモートワークをはじめとした働きやすい環境整備に努めております。また、エンゲージメントに関する調査を半年に1回を実施し、よりよい組織づくりに取り組んでおります。

 

(3) リスク管理

 当社は、各部門において定期的にリスクを抽出し、頻度及び影響度の観点からリスクを評価し、重要性に応じて当該リスクへの対応(回避・低減・移転・受容)を検討します。当該リスクの評価及び対応について、当社のコンプライアンス・リスク管理委員会へ定期的に報告され、モニタリングされます。また、人事面においては、就業規則、給与規程、人事考課規程等の社内規程を整備し、公正かつ客観的な評価を行うように定めております。

 なお、研究開発に関しましても、社内倫理委員会を設置し、倫理的及び科学的妥当性についてモニタリングを行っております。

 

(4) 指標及び目標

 上記「(2)戦略」において記載したとおり人材の育成、人材の多様性の確保及び社内整備環境に努めておりますが、従業員が50名未満の小規模組織であり事業展開により多様な人材を確保していくことから、定点観測が困難であるため、当該方針に関する指標を定めておりません。当社が中長期的に成長を続けていくためには、優秀な人材の確保、育成並びに生産性の向上が不可欠であると認識しており、具体的な指標及び目標については今後の当社の重要な課題として継続的に検討を進めてまいります。

 

3【事業等のリスク】

 当社の事業運営及び展開等について、リスク要因として考えられる主な事項を以下に記載しております。中には当社として必ずしも重要なリスクとは考えていない事項も含まれておりますが、投資判断上、もしくは当社の事業活動を十分に理解する上で重要と考えられる事項については、投資家や株主に対する積極的な情報開示の観点からリスク要因として挙げております。

 当社はこれらのリスクの発生の可能性を十分に認識した上で、発生の回避及び発生した場合の適切な対応に努める方針ですが、当社株式に関する投資判断は、以下の事項及び本項以外の記載もあわせて、慎重に検討した上で行われる必要があると考えます。

 また、当社は、再生医療等製品の開発を行っております。一般的に再生医療等製品を含む医薬品等の開発には長い年月と多額の研究費用を要し、パイプラインの開発が必ずしも成功するとは限りません。特に研究開発段階のパイプラインを有する製品開発型バイオベンチャー企業は、事業のステージや状況によっては、一般投資者の投資対象として供するには相対的にリスクが高いと考えられており、当社への投資はこれに該当します。

 なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであり、将来下記に挙げたリスク以外で当社に関する重要なリスクが発生する可能性があります。また、当社はこれら事業等のリスクを認識した上で、発生の回避及び発生した場合の対応を図り事業活動を行っておりますが、このような諸策の成否には不確実性が存在します。

 

(1)技術革新及び競合に関するリスク(発生可能性:低、発生する可能性がある期間:中長期、影響度:大)

 再生医療分野及びiPS細胞等の分野では、世界中で研究競争が盛んに行われており、飛躍的な技術革新が短期間で進んでいます。今後、革新的な技術が開発された場合、既存技術の大幅な改善がされた場合、遺伝子治療等新規の治療法について技術革新が生じた場合及び新規参入等の状況によっては、従来の技術が陳腐化するリスクがあります。このため、当社は、大学や公的研究機関と連携し、最先端技術の開発に先行して取り組むとともに、常に最新の技術動向の把握に努めております。

 競合につきましては、大手企業を中心に、新興企業、研究機関等が増加傾向にあるほか、今後の市場拡大を見込み、参入機会を窺っている企業も存在すると思われます。このような競合相手が新たな技術を開発し、当社の技術を上回った場合、あるいは関連特許を取得した場合及び当社より先に上市した場合等には、当社の開発する製品の販売が行えない可能性、あるいは市場において他社が優位を確立しており、当社の製品のマーケティングが困難となる可能性または当社が事業計画において想定していた売上を達成できず、研究開発費用を賄うことができない等の可能性があります。かかる事象が生じた結果、当社の経営成績及び事業展開に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 

(2)再生医療ビジネスに関する想定外のリスク(発生可能性:低、発生する可能性がある期間:特定時期なし、影響度:中)

 当社は、「薬機法」等の関連法令に準拠し、再生医療等製品の臨床試験を進めてまいります。リードパイプラインであるHS-001は低用量では0.5億個、高用量では1.5億個の心筋細胞を投与するため、事前にサルや小動物を用いた非臨床試験において有効性及び十分な安全性マージンを確認してLAPiS試験を開始しております。また、LAPiS試験開始後に開示した低用量3例における52週結果などにおいても、有効性及び安全性を示すデータを取得しております。しかしながら、今後LAPiS試験高用量移行後や、今後実施する心筋細胞に関連する治験において、事前に想定していなかったような予期せぬ安全性懸念が発生する可能性は現時点で完全には否定することはできません。また患者リクルーティングが難航することなどによる臨床試験の遅延、承認申請及び審査過程での遅延に加え、場合によっては臨床試験の中止や承認が得られず、製品の上市に至らないリスクがあるほか、臨床試験進捗の遅延や予期しない問題点への対応により研究開発費が見込みより増大するリスクがあります。各治験施設の責任医師や、関連するステークホルダーとの連携を密にするように心がけることなどでリスクの低減を図っておりますが、当社の製造する製品の上市や研究開発活動が当初の予定どおり進まない場合、当社が想定する売上や、マイルストン収入及びロイヤルティ収入の獲得が遅延・減少・喪失などする可能性があり、当社の経営成績及び事業展開に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 

(3)再生医療等製品に関連する法規制のリスク(発生可能性:低、発生する可能性がある期間:中長期、影響度:中)

 当社が規制を受けている再生医療等製品に関する法規制については、技術革新や想定外の事態の発生等に対応し、継続的に見直しがなされる可能性があります。当社が戦略的に依拠している薬機法による条件及び期限付承認制度に、審査期間の長期化、必要とされる臨床試験数の増加等の変更が生じて当社製品の上市時期または上市に必要な臨床開発に大きな変更がある場合や、当社の想定した内容での承認がなされない場合があります。また、日本では厚生労働省の薬価に対する考え方の見直しに伴い、薬価制度が変更になり、当社が将来想定している収益見通しに大きな影響がある可能性があります。医療費の引下げ圧力が年々強まる傾向にあることから、当社の製造する製品においても上市後の薬価に影響が生じる可能性があります。

 当社は、そうした見直しにいち早く対応すべく体制の整備に努めております。しかしながら、今後これらの法令等に重大な改廃があり当社の開発想定に影響がある場合には、研究開発進捗の大幅な遅延、研究開発費用の増大、あるいは当社が想定している製品価値よりも低い薬価となる可能性があります。かかる事象が生じた結果、当社の経営成績及び事業展開に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 

(4)条件及び期限付承認取得後のリスク(発生可能性:低、発生する可能性がある期間:中長期、影響度:大)

 日本では2014年11月の薬機法の改正に伴い、再生医療等製品にて有効性が推定され安全性が確認されれば、対象とする医療機関等の限定や追加の臨床試験等の条件を付し、承認に有効期限を設けることで早期に承認を取得できる条件及び期限付承認制度が導入され、当該制度の導入後多くの再生医療等製品が上市されております。そのため、当該制度によって可能な限り条件及び期限付承認を取得して開発中の再生医療等製品の早期実用化を目指すことを、当社では最重要戦略として位置付けて臨床開発を進めており、LAPiS試験においても、当該制度の活用を念頭に置いての臨床試験デザインを立案しております。

 他方で、条件及び期限付承認制度では、通常の医薬品開発では承認申請時に求められる大規模臨床試験による安全性や有効性の確認を上市後に行うという制度要件となっています。そのため、当社再生医療等製品の条件及び期限付承認後には、一定期間にわたり製造販売後調査を課されることが予見されます。

 当社では各治験施設の責任医師や規制当局など関連するステークホルダーと連携しており、リスクの低減を図っておりますが、当該製造販売後調査の開始後、当社製品の有効性や安全性が不十分である場合、予期せぬ副作用が発生する場合、調査の結果に関する当社と当局との間の見解の相違が生じる場合、または要請された症例数や承認要件を満たせない場合には、本承認を取得できない可能性や条件及び期限付承認が取り消される等の可能性が存在しております。かかる事象が生じた結果、当社の経営成績及び事業展開に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 

(5)特定のパイプラインへの依存について(発生可能性:中、発生する可能性がある期間:特定時期なし、影響度:中)

 当社は、虚血性心疾患を原疾患とする心不全への適用を目指して、リードパイプラインであるHS-001を中心に現在複数のパイプラインを推進しているほか、新規のパイプラインの開発にも注力しております。当社は、HS-001での技術を基礎として、HS-001の拡張型心筋症への適用拡大及びHS-005の非臨床試験に向けての検討並びにヒト白血球抗原(HLA)の発現をなくした他家iPS細胞由来心筋球による治療プログラム(HS-030)の基礎研究を開始しております。将来的には、心筋再生医療の実現に向けた研究開発の過程で開発した高性能iPS細胞作製技術(H1foo)及び残存未分化iPS細胞の除去技術を用い、iPS細胞を用いた治療の可能性を心筋再生医療以外にも拡げることを期待しております。

しかし、これらの新規パイプラインについては、いずれも適用拡大の検討又は基礎研究の初期段階にあります。当社は上記のパイプラインや今後検討を開始する製品等について、製品化及び収益化に至るかは非常に不確実であり、仮に製品化が可能である場合においても、相当程度の期間及び費用を要するものと考えております。さらに技術的な困難、競合による開発の先行及び技術革新、法規制、当社の人材の不足並びにサプライチェーン構築の不確実性などの制約要因により、研究開発、非臨床試験、治験の実施並びに製品化及び収益化に当社が想定した以上に時間もしくは費用を要する可能性または想定した進捗及び成果が得られない可能性があると考えております。仮に研究開発に成功した場合であっても、臨床試験段階及び上市後において、予期せぬ品質問題や副作用等が発生する可能性があります。

 当社は、アカデミアとの連携や業界イベントへの参加を通じて、次世代再生医療技術に関する情報を継続的に収集し事業提携の機会を模索することなどによりリスクの低減を図っておりますが、これらの問題が生じた場合には、新規パイプラインによる収益が見込めなくなるほか、リードパイプラインであるHS-001への依存度が増し、HS-001の開発、治験の進捗及び販売等の状況の影響を強く受けることとなる結果、当社の経営成績及び事業展開に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 

(6)製造・輸送・販売体制の構築に関する不確実性について(発生可能性:中、発生する可能性がある期間:特定時期なし、影響度:中)

 当社は、研究開発活動において成果をあげることにとどまらず、その後の製造、輸送及び販売についても事業として展開していくことを視野に入れており、パートナー企業等とともに細胞の大量培養技術の開発等製造方法の確立に向けて注力しております。しかしながら、医薬品の開発には多種多様な技術が必要であるため、今後、何らかの理由で製造、輸送及び販売体制の構築等が困難になった場合には、臨床試験用や承認後の製品供給が遅れ、またこうした供給遅れに伴い、臨床試験の実施が中止・撤回されるリスクや構築した製造・輸送・販売体制を再構築する必要が生じるリスクが想定されます。

 また、特にサプライチェーンにおいて、製造場所、原材料または製造プロセスの変更が生じた場合、もしくは製造の為に提出していた各種データ及び当社体制などに関連する充分性や信頼性について当局が疑義を持つ場合など、当局から追加の説明及びデータの提出等を求められ、再度の非臨床試験及び臨床試験を求められる可能性や、臨床試験、承認申請、もしくは販売について、中止・撤回を要請される可能性もあります。

 さらに、販売承認後、先端的な技術を活用した製品であるがゆえに需給予測が困難な場合、想定していた投与や費用対効果が達成できない場合、新規性が高い製品であるがゆえに患者さんからの忌避感が当社の想定する以上である場合、国内外におけるプロモーション等営業活動に関する規制に違反し、訴訟や罰金の対象となる場合等には、想定していた売上計上につながらない可能性があります。

 当社では、製造拠点、原材料、輸送体制などサプライチェーンを担当して頂いている各企業様と連携しており、リスクの低減を図っておりますが、上記のリスクにより、当社の経営成績及び事業展開に対して重大な影響を及ぼす可能性があります。

 

(7)他社からの原材料供給(発生可能性:低、発生する可能性がある期間:特定時期なし、影響度:大)

 再生医療等製品の開発や販売開始後の安定供給について、当社は多くの協力企業との取引によって、必要な原材料や資材等の調達を受けております。特に、製造プロセス中に用いる原材料や試薬、投与に活用する針やカテーテル等は代替性が乏しく、仮に代替品に変更できたとしても現状の開発スケジュールを大きく遅延させる可能性があります。この点、当社はそうした外注先と供給契約を締結し安定供給を確保できるように努めております。

 外注先の取引方針の変更、供給能力の低下もしくは品質の低下、または自然災害及びこれに起因する事象等により現在の外注先への委託が困難になった場合、当社は代替外注先探索などの対応を行います。しかし、適切な企業の発見が困難である可能性に加えて、仮に適切な企業を発見できたとしても製造体制再構築に相応の時間及び費用を要する場合、あるいは当社に不利な内容での契約締結を余儀なくされる場合等が発生した場合は、当社事業に大きな影響を及ぼす可能性があります。

 

(8)予期せぬ副作用及び製造物責任等の発生について(発生可能性:低、発生する可能性がある期間:特定時期なし、影響度:大)

 当社の開発品である再生医療等製品を含む製品には、臨床試験段階及び上市後においても、予期せぬ品質問題や副作用等が発生する可能性があります。

 そうした事態に備え、当社では、入念な製造方法の移管プロセスを経た上で、現在進捗中の臨床試験製品を再生医療等製品の製造や品質管理に実績のある製造開発委託機関(CDMO)に委託しております。また、医薬品開発上求められる安全管理に関しても臨床開発や販売停止・中止に関して独立した権限を持つ信頼性保証部を社長直下に組成し、不測の事態に対応できる体制を整備しております。さらに、実施中の臨床試験においても、製造物責任を含めた各種賠償責任に対応するための適切な保険に加入する予定です。

 しかしながら、こうした安全管理が何らかの理由や事象で十分でなかった場合、当社の賠償責任が保険金額を上回る場合、あるいは当社に対する損害賠償の請求が認められずとも製造物責任請求等がなされたこと自体によるネガティブ・イメージを受けた場合には、当社及び当社の製品に対する信頼に悪影響が生じる可能性があります。

 さらに、当社の治療法に品質問題や予期せぬ副作用発現等の問題が発生した場合には、製品回収もしくは販売中止、医療機器の仕様変更等の対策の実施もしくは臨床試験の中止、製品の安全性に関する追加データの当局への提出、または再度の試験の実施もしくは罰金の命令等により、医薬品の売上の減少及び多額の費用が発生する可能性があります。

 かかる事象が生じた結果、当社の経営成績及び事業展開に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 

(9)知的財産権に関するリスク(発生可能性:低、発生する可能性がある期間:特定時期なし、影響度:大)

 知的財産権に関しては、当社の特許権が他社により侵害されるリスク及び当社が他社の特許権を侵害するリスクがあります。

 当社は知的財産権に関する管理体制をより強化していく方針であります。しかし訴訟等が提起され、当社の主張が認められない場合、または想定以上の費用もしくは時間が必要となる場合には、当社の事業計画に大きな支障をきたす可能性があります。

 秘密裏に当社の特許が侵害された場合や当社の調査範囲の及ばない抵触特許が存在した場合等には、当社の技術の優位性が損なわれる、あるいは多額の損害賠償を請求されるリスクとなる可能性があります。

 また、現在出願中の特許が全て成立するわけではありません。さらに、特許が成立した場合でも当社技術を超える優れた研究開発が行われ、当社の特許に含まれる技術が淘汰される可能性は常に存在しております。なお、現在までに、知的財産権に関して第三者との間で訴訟が発生した事実や特許権侵害の警告書を受領した事実はありません。

 当社の特許権が他社により侵害されるリスクに関しては、各種データベースや特許事務所を活用して情報収集を行い、研究開発で得られた成果は必要に応じて迅速に特許出願等を行っております。他社による特許侵害が考えられた場合には、当社の知的財産権保護のために必要な法的措置を検討していく方針ですが、当社が保有する特許権の範囲が必ずしも当社の事業の保護のために十分でない可能性があります。また、費用対効果や第三者から特許無効審判等を提起される可能性等も勘案し、あえて法的措置に踏み切らない可能性も否定できず、その場合、当該第三者が当社と競合する事業を行う可能性も存在することから、当社が期待していた収益が失われるリスクがあります。

 当社が他社の特許権を侵害するリスクに関しては、当社が他社の特許権を侵害しないよう各種データベースや特許事務所を活用して情報収集を行い、適法な手続のもとに当社事業に必要な特許権を使用することとしております。しかし、事前の特許等の調査でも認識できず、当社が意図せずに第三者の知的財産権を侵害する可能性もあります。当社では、第三者の知的財産権に抵触することを回避するため、事業上重要と思われる知的財産権に関しては、これを認識した時点で当社として評価し、必要に応じて遅滞なく実施許諾契約(ライセンス契約)を締結する方針です。しかし、今後、事業の拡大とともにこのようなリスクが増大する可能性もあり、実施許諾契約を適時・適切に締結できない場合やライセンサーにおいて他の第三者の知的財産権に抵触している場合等には、当社に対し製品の製造販売の差止請求または損害賠償請求等がなされる可能性があります。

 また、当社は各種公的機関や共同研究先から特許の実施許諾を受けており、これらは当社事業に不可欠であります。当社が活用する特許の実施許諾契約の締結や更新に加えて、当該機関・企業との良好な関係の維持・構築に努めておりますが、何らかの影響により協力が得られなくなる可能性があります。

 かかる事象が生じた結果、当社の経営成績及び事業展開に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 

(10)資金繰り(発生可能性:中、発生する可能性がある期間:中長期、影響度:大)

 当社の事業収支は、研究開発費用の負担により研究開発期間において継続的に営業損失を計上するため、当社の開発品が上市され、安定的な収益源が確保されるまでの期間においては、営業活動によるキャッシュ・フローはマイナスとなる傾向があります。

 当社の開発する製品は現在まで上市されておらず、また上市に至るまで研究開発及び臨床試験の実施、必要な許認可の取得、製造・輸送・販売体制の確立、並びに経営体制の維持及び拡充並びに知的財産の運用の体制の確立等のために多額の費用を必要とします。さらに、製品の開発においては臨床試験の実施時期や当局の許認可の時期または追加の研究開発の要否等の不確定な要素が存在することから、資金需要が増加する時期の予測が困難となる傾向があります。

 当社といたしましては、増資による資金調達を中心に、提携先からのマイルストン収入、取引先銀行とのコミットメントライン契約及び各種補助金等を活用することで資金確保に努める方針であります。しかしながら、必要なタイミングで資金を確保できなかった場合または必要な額の資金を確保できなかった場合には、結果として当社の財務状況や事業展開に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 

(11)経営上の重要な契約等に関するリスク(発生可能性:低、発生する可能性がある期間:特定時期なし、影響度:中)

 当社の経営上重要と思われる契約は、「第2 事業の状況 5 経営上の重要な契約等」に記載のとおりであり、関連する契約に基づいて当社事業における支援を得ております。また、当社は今後も、研究開発、並びに製造・輸送・販売体制の構築のため、各種の企業と事業提携を行うことを見込んでおります。

 しかし、このような既存の契約もしくは将来の契約が期間満了、解除、その他の理由に基づき終了した場合、あるいは、当社にとって不利な改定が行われた場合または契約の相手方の経営状態が悪化する場合もしくは相手方企業や機関の経営方針が変更され当社がコントロールし得ない何らかの事情が発生し、契約の継続が困難となる等の場合には、これらの契約先に代わる第三者と契約するため相応の時間と費用を要する、あるいは代替先を見つけることができず円滑な事業運営に困難を生じる可能性があります。

 また、現在及び将来の契約において、共同研究によって生じた発明に基づく特許権等の知的財産権に関して共同研究の相手方との共有とされる可能性があります。当社は共同研究成果としての知的財産権等を当社の事業領域において独占的実施権を確保するように努めております。しかし、このように共同研究によって生じた知的財産権の一部または全部が他社に帰属することにより当社が追加で実施料を支払う必要が生じた場合、もしくは他社が当該知的財産権を実施することを避けられなかった場合など、何らかの理由で当社の今後の研究開発及び製品販売に支障が生じる可能性があります。

 かかる事象が生じた結果、当社の財務状況や事業展開に影響を及ぼす可能性があります。

 

(12)ノボノルディスク エー・エスとの提携に関するリスク(発生可能性:低、発生する可能性がある期間:特定時期なし、影響度:大)

当社はノボノルディスク エー・エスと、全世界を対象とする独占的技術提携・ライセンス契約を締結しております。本契約は、他家iPS細胞由来心筋球(細胞株、投与方法、適応症は問わない)の日本以外の全世界における臨床開発・製造・販売権をノボノルディスク エー・エスへと付与する一方、国内では当社が製造販売権を保持して、両者共同で商業化(co-commercialize)し、日本国内事業に関する収益を50:50にてプロフィットシェアする事業提携スキームとなっております。これにより当社の事業収益は、日本国内で薬事承認後に取得する収益に加えて、導出に係る契約一時金(2021年に受領済)、日本及び海外の開発進捗に応じたマイルストン収入、並びに海外での製品上市後のロイヤルティ収入及び販売マイルストン収入を得ることを予定しております。

当社が受領可能な各種マイルストン収入や海外でのロイヤルティ収入において、金額規模や受領できるタイミングは、当社自身が主体として実施する日本での臨床開発、製造技術開発、薬事承認等の事業進捗に依存するものだけでなく、ノボノルディスク エー・エス自身が当該ライセンスに基づき海外で臨床開発・販売を進めた結果にも大きく影響されます。

当社が日本の開発権と製造販売権を保有する提携スキームとしたことでノボノルディスク エー・エスへの過度な依存を回避しております。しかし、ノボノルディスク エー・エスの研究開発・臨床試験が想定どおりに進捗しない、あるいは両社が想定する製造体制や製造規模が何らかの影響により実現できない等のリスクが存在します。

また、ノボノルディスク エー・エスにおいて、当社との提携製品の開発・販売の優先順位が下がる可能性及び当社の事業進捗が順調に進まない結果、当社に不利な形での契約の見直し・解除等が発生する可能性があります。

当社はこうしたリスクの対処の為に、ノボノルディスク エー・エスと密に事業連携するよう心がけておりますが、上記の様なリスクが発生した場合には、当社の経営成績及び事業展開に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 

(13)人材の確保に関するリスク(発生可能性:低、発生する可能性がある期間:特定時期なし、影響度:大)

 当社の成長戦略を実現するためには、高度な専門的知識、技能及び経験を有する人材の確保並びに育成が不可欠といえます。当社は、常に優秀な人材の確保と育成に努めておりますが、人材確保及び育成が順調に進まない場合、並びに人材の流出が生じた場合には、当社の事業活動に支障が生じ、当社の経営成績及び事業展開に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 

(14)内部管理体制について(発生可能性:中、発生する可能性がある期間:特定時期なし、影響度:中)

 当社の事業の運営に当たっては再生医療等製品、医薬品、医療機器に関する法令、自主規制等が及ぶ他、より一般的に製造物責任、情報保護、知的財産権、競争法、消費者保護、腐敗防止、税金等、各国での法令等の規制が及ぶことから、当社は、コンプライアンス及びコーポレート・ガバナンスの強化を図るための様々な施策を実施しております。また、業務の適正化及び財務報告の信頼性を確保するため、これらに係る内部統制が有効に機能する体制を整備、運用しております。しかしながら、事業の急速な拡大や、主要メンバーの離職、経営環境の大幅な変化等の理由により、内部管理体制の構築が追い付かないという状況が生じる場合には、適切な業務運営が困難となり、当社の経営成績及び事業展開に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 

(15)小規模組織であることについて(発生可能性:中、発生する可能性がある期間:特定時期なし、影響度:中)

 当社の業務執行体制及び経営管理組織は、事業規模に応じた比較的小規模なものとなっており、大企業と比べると、業務の遂行能力は、個々の経験や能力に大きく依存していると考えられます。業務を遂行するために最適と考えられる体制を構築し続けるとともに、今後の事業拡大に伴い積極的な人員の増強、経営管理組織の一層の充実を図る方針です。しかしながら、当初計画を超えた規模で事業が成長するため体制構築が追い付かない場合や、新たな人材の採用及び育成が順調に進まず、離職者が発生する場合などには、組織的な対応が有効に機能しないことが考えられ、これにより当社の経営成績及び事業展開に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 

(16)内部統制に関するリスク(発生可能性:低、発生する可能性がある期間:特定時期なし、影響度:大)

 当社は法令に基づき財務報告の適正性確保のために内部統制システムを構築し運用しておりますが、当社の財務報告に重大な欠陥が発見される可能性は否定できず、また、将来にわたって常に有効な内部統制システムを構築及び運用できる保証はありません。さらに、内部統制システムに本質的に内在する固有の限界があるため、今後、当社の財務報告に係る内部統制システムが有効に機能しなかった場合や財務報告に係る内部統制システムに重大な不備が発生した場合には、当社の財務報告の信頼性に影響を及ぼす可能性があります。

 

(17)社歴の浅さについて(発生可能性:中、発生する可能性がある期間:特定時期なし、影響度:中)

 当社は、2015年11月に設立された社歴の浅い会社であり、財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の期間比較の情報が限られております。今後のIR活動などを通じて経営状況を積極的に開示してまいります。しかしながら、経営成績等の期間比較をするための情報には時間の経過が不可欠であり、今後当社が成長を継続していけるか否かを現時点において予測するためには、過年度の経営成績のみでは客観的な判断材料として不十分な可能性があります。

 

(18)配当政策について(発生可能性:低、発生する可能性がある期間:特定時期なし、影響度:小)

 当社事業の特徴として、多額の先行投資を要し、投資回収までの期間も長期に及ぶことから当社は創業以来、株主に対する剰余金の分配を実施しておりません。

 株主への利益還元については、重要な経営課題と認識しており、将来的には経営成績及び財政状態を勘案しつつ剰余金の分配を検討する所存であります。しかしながら、現時点においては繰越利益剰余金がマイナスであるため、当分の間は研究開発の積極的な推進による企業価値の向上を目指し、配当は行わない方針です。

 

(19)特定人物への依存について(発生可能性:低、発生する可能性がある期間:特定時期なし、影響度:中)

 当社の代表取締役社長である福田惠一は、当社の創業者であり、設立以来当社の研究開発活動の遂行において重要な役割を担っております。こうした状況から、当社は特定の人物に依存しない体制を構築するべく、幹部社員への情報共有や権限の委譲によって福田に過度に依存しない経営管理組織の整備を進めておりますが、何らかの理由により福田の当社における業務遂行が困難になった場合、当社の経営成績及び事業展開に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 

(20)資金使途について(発生可能性:低、発生する可能性がある期間:特定時期なし、影響度:大)

 当社が今回の株式上場において公募増資により調達する資金の使途につきましては、主としてリードパイプラインのほか、新規のパイプラインの開発や必要な経営資金にも充当していく方針であります。

 ただし、急激な外部環境の変化などに対応するために現時点における資金使途以外の使途に充当する可能性があります。また、当社の計画どおりに使用したとしても、計画どおりの効果を上げられない可能性もあります。資金使途に関して、開示すべき事項が生じた場合には、速やかにお知らせいたします。

 

(21)新株発行による資金調達(発生可能性:中、発生する可能性がある期間:特定時期なし、影響度:中)

 当社は医薬品の研究開発型企業であり、将来の研究開発活動の拡大に伴い、増資を中心とした資金調達を機動的に実施していく可能性があります。その場合には、当社の発行済株式総数が増加することにより、1株当たりの株式価値が希薄化する可能性があります。

 

(22)ストック・オプション行使による株式価値の希薄化について(発生可能性:高、発生する可能性がある期間:各新株予約権発行後から10年の間、影響度:小)

 当社は、取締役、監査役、及び従業員に対するインセンティブを目的としたストック・オプション制度を採用しております。今後においてもストック・オプション制度を活用していくことを検討しており、現在付与している新株予約権に加え、今後付与される新株予約権について行使が行われた場合には、保有株式の価値が希薄化する可能性があります。

 

(23)ベンチャーキャピタル等による当社株式売却に関するリスク(発生可能性:中、発生する可能性がある期間:特定時期なし、影響度:中)

 本書提出日現在における当社の発行済株式総数のうち、ベンチャーキャピタル及びベンチャーキャピタルが組成した投資事業有限責任組合等(以下「ベンチャーキャピタル等」)投資を業とする企業体が保有している当社株式の割合は47.8%であります。

 当社の株式公開後に、当社の株式を保有しておりますベンチャーキャピタル等が、市場において当該株式を売却することが想定されますが、当該株式の売却によって、当社株式に関する市場の需給バランスが崩れることにより、当社株式の市場価格が低下する可能性があります。

 

(24)為替リスク(発生可能性:中、発生する可能性がある期間:特定時期なし、影響度:小)

 当社の事業パートナーであるノボノルディスク エー・エスからの開発・承認・販売進捗に伴う受領可能なマイルストン収入や、海外販売開始後の売上に伴うロイヤルティ収入の受取りは、すべて米ドルベースとなっております。また、将来にわたっても当社は海外から当社開発製品に必要な資材や原料を輸入する等、何らかの海外企業との提携を進める可能性が存在しているため、当社の事業活動には為替リスクが存在しております。当社は、できるだけ為替リスクを負わないように、直近利用しない米ドル運転資金が無い場合は、受領後即時円転とする旨を内規で定めております。しかしながら、急な為替市場の変動等によって、当社の経営成績及び事業展開に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 

(25)自然災害等について(発生可能性:低、発生する可能性がある期間:特定時期なし、影響度:大)

 当社または当社が開発や研究を委託している企業や研究機関などが事業活動を行っている地域において、自然災害や火災等の事故災害等が発生した場合、それらの研究設備等に被害があり、その一部または全部の稼働が中断し、研究開発が遅延する可能性があります。また、損害を被った設備等の修復のために多額の費用が発生し、当社の経営成績及び事業展開に重大な影響を及ぼす可能性があります。特に、現在懸念されている気候変動によって、台風、洪水、地震等の自然災害が頻発または深刻化した場合には、当社または当社のパートナー企業の事業活動に大きな影響を与え、当社のサプライチェーンに大きな被害をもたらす可能性があります。

 

(26)情報管理について(発生可能性:低、発生する可能性がある期間:特定時期なし、影響度:中)

 当社の事業において、研究または開発途上の知見、技術、ノウハウ等は非常に重要な機密情報であります。当社は、その流出リスクを軽減するため、必要に応じて取引先等との間で守秘義務等を定めた契約を締結するとともに、個別の事情に応じた情報開示を行うなど、厳重な情報管理に努めております。また、情報セキュリティ管理規程を定め、これを基に情報セキュリティの維持・管理に努めております。

 しかしながら、取引先等によりこれが遵守されなかった場合、あるいは、何らかの原因により、情報システムの停止、個人・顧客情報の流出やコンピュータ・ウイルス、ハッカー、不正侵入等が生じた場合には、重要な機密情報が漏洩する可能性があり、このような場合には、当社の経営成績及び事業展開に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

 当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は以下のとおりであります。

 

① 経営成績の状況

第8期事業年度(自 2022年11月1日 至 2023年10月31日)

 当事業年度(2022年11月1日~2023年10月31日)における我が国の経済は、新型コロナウイルス感染症の位置づけが5類感染症へと移行したことにより社会経済活動の正常化に向けた動きが進んだものの、ウクライナ情勢の長期化による原材料価格の上昇やサプライチェーンへの制約、各国の政策金利引き上げに伴う円安の進行、それらに中東情勢の緊迫等も加わり、国内景気は不透明な状況となっています。

 日本の再生医療業界においては、2014年に施行された改正薬機法によって、再生医療への「条件及び期限付承認制度」が導入され、また承認審査期間の短縮や当局との事前相談に関する優先的支援などを提供する「先駆的医薬品等指定制度」が2019年に法制化されるなど、優れた再生医療等製品を逸早く実用化出来る仕組みが整っております。

 このような状況のもと、当社は「再生医療で心臓病治療の扉を開く」をミッションとして、慶應義塾大学で創出された技術をベースに重症心不全の根本的治療法の開発を進めており、当期は主に臨床開発の実施に加え、低侵襲投与デバイスの開発などに注力しております。

 当事業年度における事業の概況としましては、虚血性心疾患に伴う心不全患者を対象とする他家iPS細胞由来心筋球の開胸投与による治療プログラム(HS-001)をリードパイプラインとして、開発を継続しております。冠動脈バイパス手術と併用する第Ⅰ/Ⅱ相臨床試験(LAPiS試験)を実施中であり、治験参加施設における患者のリクルートメントを継続しております。

 また、グローバル大手製薬企業であるノボノルディスク エー・エスとの全世界を対象とする独占的技術提携・ライセンス契約のもと、同社との製造技術開発の進捗に伴い、当事業年度にマイルストン収入を計上しております。また同社と共に、患者にとってより負荷の低いカテーテルを用いた投与方法の開発について計画を策定し、現在は試作品における確認・検証等を進めております。

 以上の結果、当事業年度の業績は、売上高は344,725千円(前事業年度比30.9%減)、営業損失は1,459,614千円(前事業年度は営業損失1,458,590千円)、経常損失は1,456,584千円(前事業年度は経常損失1,410,304千円)当期純損失は1,473,500千円(前事業年度は当期純損失1,412,728千円)となりました。

 なお、当社は医薬品事業のみの単一セグメントであるため、セグメント別の業績記載を省略しております。

 

第9期第2四半期累計期間(自 2023年11月1日 至 2024年4月30日)

 当第2四半期累計期間(2023年11月1日~2024年4月30日)における我が国の経済は、新型コロナウイルス感染症の影響は収束しつつあり、社会経済活動の正常化に向けた動きが継続したものの、為替変動、不安定な国際情勢、原材料価格やエネルギーコストの高騰など、国内景気は依然として不透明な状況となっています。

 日本の再生医療業界においては、2014年に施行された改正薬機法によって、再生医療への「条件及び期限付承認制度」が導入され、また承認審査期間の短縮や当局との事前相談に関する優先的支援などを提供する「先駆的医薬品等指定制度」が2019年に法制化されるなど、優れた再生医療等製品を逸早く実用化出来る仕組みが整っております。

 このような状況のもと、当社は「再生医療で心臓病治療の扉を開く」をミッションとして、慶應義塾大学で創出された技術をベースに重症心不全の根本的治療法の開発を進めており、当期は主に臨床開発の実施に加え、低侵襲投与デバイスの開発などに注力しております。

 当第2四半期累計期間における事業の概況としましては、虚血性心疾患に伴う心不全患者を対象とする他家iPS細胞由来心筋球の開胸投与による治療プログラム(HS-001)をリードパイプラインとして、開発を継続しております。冠動脈バイパス手術と併用する第Ⅰ/Ⅱ相臨床試験(LAPiS試験)を実施中であり、治験参加施設における患者のリクルートメントを継続しております。また、3月初旬に開催されました第88回日本循環器学会学術集会におきまして、治験施設の医師らにより当試験の良好な初期結果が発表されました。

 一方、グローバル大手製薬企業であるノボノルディスク・エーエス社との全世界を対象とする独占的技術提携・ライセンス契約のもと、同社との製造技術開発の進捗に伴い、第1四半期会計期間にマイルストン収入を計上しております。また同社と共に、患者にとってより負荷の低いカテーテルを用いた投与方法の開発について計画を策定し、現在は試作品における確認・検証等を進めております。

 このような状況のもと、当第2四半期累計期間の業績は、売上高153,210千円、営業損失は720,081千円、経常損失は719,483千円、四半期純損失は720,225千円となりました。

 なお、当社は医薬品事業のみの単一セグメントであるため、セグメント別の業績記載を省略しております。

② 財務状態の状況

第8期事業年度(自 2022年11月1日 至 2023年10月31日)

(資産)

 当事業年度末における資産合計は5,719,751千円となり、前事業年度末に比べ783,747千円増加しました。流動資産は5,028,176千円となり、前事業年度末に比べ108,987千円増加しました。これは主に現金及び預金が資金調達等により600,049千円増加したことによるものであります。固定資産は691,575千円となり、前事業年度末に比べ674,760千円増加しました。これは新オフィスへの移転に伴い有形固定資産が476,559千円、及び敷金の差入等により差入保証金が204,201千円増加したものであります。

(負債)

 当事業年度末における負債合計は450,192千円となり、前事業年度末に比べ241,741千円増加しました。

流動負債は244,062千円となり、前事業年度末に比べ101,667千円増加しました。これは主に新オフィスのフリーレント未払分の計上により未払費用が37,175千円、及び未払金が38,665千円増加したことによるものであります。固定負債は206,129千円となり、前事業年度末に比べ140,074千円増加しました。これは主に新オフィスに係る資産除去債務を計上したことにより132,017千円増加したことによるものであります。

(純資産)

 当事業年度末における純資産合計は5,269,559千円となり、前事業年度末に比べ542,006千円増加しました。これは資金調達及び減資手続きにより資本剰余金が2,015,561千円増加した一方、当期純損失の計上により利益剰余金が1,473,500千円減少したことによるものであります。

 

第9期第2四半期累計期間(自 2023年11月1日 至 2024年4月30日)

(資産)

 当第2四半期会計期間末における資産合計は4,965,556千円となり、前事業年度末に比べ754,195千円減少しました。流動資産は4,292,364千円となり、前事業年度末に比べ735,812千円減少しました。これは主に現金及び預金が644,059千円減少したことによるものであります。固定資産は673,192千円となり、前事業年度末に比べ18,383千円減少しました。これは主に、減価償却費を計上したことにより有形固定資産が18,383千円減少したことによるものであります。

(負債)

 当第2四半期会計期間末における負債合計は416,436千円となり、前事業年度末に比べ33,755千円減少しました。流動負債は235,573千円となり、前事業年度末に比べ8,489千円減少しました。これは主に国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)より受領した補助金等により前受金が71,456千円増加した一方、資産除去債務が取崩しにより43,800千円、未払金が支払により31,268千円減少したことによるものであります。固定負債は180,863千円となり、前事業年度末に比べ25,266千円減少しました。これは主に資産除去債務が21,110千円減少したことによるものであります。

(純資産)

 当第2四半期会計期間末における純資産合計は4,549,120千円となり、前事業年度末に比べ720,439千円減少しました。これは四半期純損失の計上により利益剰余金が720,225千円減少したことによるものであります。

 

③ キャッシュ・フローの状況

第8期事業年度(自 2022年11月1日 至 2023年10月31日)

 現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前事業年度末に比べ600,049千円増加し当事業年度末には4,588,118千円となりました。当事業年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりです。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動による資金の減少は797,930千円(前事業年度末は1,921,746千円の減少)となりました。主な内訳は、税引前当期純損失1,456,584千円の計上、売掛金の回収による増加296,560千円等によるものであります。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動による資金の減少は425,695千円(前事業年度末は994千円の減少)となりました。主な内訳は、新オフィスへの移転に伴い、新設による有形固定資産の取得による支出327,839千円、新オフィスの敷金及び保証金の差入による支出100,833千円によるものであります。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動による資金の増加は1,848,248千円(前事業年度末は22,164千円の減少)となりました。主な内訳は、資金調達による株式の発行による収入2,004,376千円によるものであります。

 

第9期第2四半期累計期間(自 2023年11月1日 至 2024年4月30日)

 当第2四半期累計期間末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前事業年度末に比べて644,059千円減少し、3,944,059千円となりました。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動の結果、減少した資金は574,657千円となりました。主な内訳は、税引前四半期純損失719,483千円を計上したことによるものであります。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動の結果、減少した資金は55,275千円となりました。主な内訳は、資産除去債務の履行による支出53,108千円によるものであります。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動の結果、減少した資金は14,498千円となりました。主な内訳は、上場関連費用の支出11,364千円によるものであります。

 

④ 生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

 当社は生産活動を行っておりませんので、該当事項はありません。

 

b.受注実績

 当社は受注生産を行っておりませんので、該当事項はありません。

 

c.販売実績

 当社は医薬品事業の単一セグメントであり、当事業年度及び第9期第2四半期累計期間における販売実績は以下のとおりです。

区分

第8期事業年度

(自 2022年11月1日

  至 2023年10月31日)

第9期第2四半期累計期間(自 2023年11月1日

  至 2024年4月30日)

金額

(千円)

前年同期比

(%)

金額

(千円)

医薬品事業

344,725

69.07

153,210

(注)1.前事業年度と比較して154,335千円の減少となりました。これはノボノルディスクエー・エスとの独占的技術提携・ライセンス契約における開発マイルストンの達成内容により収益計上していることによるものであります。

2.最近2事業年度及び第9期第2四半期累計期間の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。

相手先

第7期事業年度

(自 2021年11月1日

  至 2022年10月31日)

第8期事業年度

(自 2022年11月1日

  至 2023年10月31日)

第9期第2四半期

累計期間

(自 2023年11月1日

  至 2024年4月30日)

金額

(千円)

割合

(%)

金額

(千円)

割合

(%)

金額

(千円)

割合

(%)

ノボノルディスク エー・エス

499,060

100

344,725

100

151,710

99.02

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものであります。

① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。この財務諸表の作成に当たって、採用している重要な会計方針については、「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項」の「重要な会計方針」に記載のとおりであります。この財務諸表の作成に当たり、見積りが必要な事項につきましては、合理的な基準に基づき、会計上の見積りを行っております。

② 経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

第8期事業年度(自 2022年11月1日 至 2023年10月31日)

(売上高)

 売上高は344,725千円となり、前事業年度と比較して154,335千円の減少となりました。これは ノボノルディスク エー・エスとの独占的技術提携・ライセンス契約における開発マイルストンの達成内容により収益計上していることによるものであります。

 

(販売費及び一般管理費、営業損失)

 販売費及び一般管理費は、1,804,339千円となり、前事業年度と比較して153,311千円の減少となりました。前事業年度において研究用機器の購入に係る費用の計上がありましたが、当事業年度において研究機器購入を行わなかったこと等により、研究開発費が210,226千円減少したことに伴うものであります。

 この結果、営業損失は1,459,614千円(前事業年度は営業損失1,458,590千円)となりました。

 

(営業外損益、経常損失)

 営業外収益は、194,628千円となり、前事業年度と比較して133,211千円の増加となりました。これは主に、東京都の補助事業における補助金により補助金収入が150,000千円増加したことによるものであります。

 また、営業外費用は、191,598千円となり、前事業年度と比較して178,467千円の増加となりました。これは主に、弁護士費用や各種手続き費用等の上場関連費用136,409千円、及び外貨入金時の為替差損43,257千円を計上したことによるものであります。

 この結果、経常損失は1,456,584千円(前事業年度は経常損失1,410,304千円)となりました。

 

(法人税等合計、当期純損失)

 法人税等合計は、16,916千円となり、前事業年度と比較して14,492千円の増加となりました。この結果、当期純損失は1,473,500千円(前事業年度は当期純損失1,412,728千円)となりました。

 

第9期第2四半期累計期間(自 2023年11月1日 至 2024年4月30日)

(売上高)

 売上高は153,210千円となりました。これはノボノルディスク エー・エスとの独占的技術提携・ライセンス契約における開発マイルストンの達成内容により収益計上していることによるものであります。

 

(販売費及び一般管理費、営業損失)

 販売費及び一般管理費は、873,291千円となりました。これは主に、研究開発費を企業治験等の進捗及び心筋細胞製造委託等により661,245千円計上したことに伴うものであります。

 この結果、営業損失は720,081千円となりました。

 

(営業外損益、経常損失)

 営業外収益は、21,164千円となり、これは主に、有償支給手数料による受取手数料を18,343千円計上したことによるものであります。

 また、営業外費用は、20,566千円となり、これは主に、上場手続きに関する弁護士費用等を11,364千円計上したことによるものであります。

 この結果、経常損失は719,483千円となりました。

 

(法人税等合計、四半期純損失)

 法人税等合計は、742千円となり、この結果、当期純損失は720,225千円となりました。

 

③ キャッシュ・フローの状況の分析

 キャッシュ・フローの分析については、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ③ キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

 

④ 資本の財源及び資金の流動性に係る情報

 当社の事業活動における運転資金需要の主なものは、研究開発に係る人件費及び心筋製造に係る外注費及び資材です。将来の事業活動に必要な資金を確保し、適切な流動性を維持することを基本方針としております。

 運転資金及び設備投資等の資金調達につきましては、自己資金を充当することを原則としながら、必要に応じて株式市場より調達を行う方針であります。

 資金の流動性につきましては、2024年4月末時点における現金及び現金同等物の期末残高は3,944,059千円であり、これにマイルストン収入等の収益を加味すれば、当面の運転資金はカバーされ、流動性に支障がない水準であると考えております。なお、事業計画外の緊急を要する資金需要がないか、事業計画を進捗管理することで、流動性リスクをコントロールしております。

 

⑤ 経営方針・経営戦略等又は経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 当社の経営方針・経営戦略等又は経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等につきましては、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (3) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等」に記載のとおりであります。

 

⑥ 経営成績に重要な影響を与える要因について

 当社の経営成績に重要な影響を与える要因については、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のおり認識しており、これらのリスクについては発生の回避及び発生した場合の対応に努める所存であります。

 

⑦ 経営者の問題意識と今後の方針について

 当社の経営者は、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおり、当社が今後さらなる成長を遂げるためには、さまざまな課題に対処することが必要であると認識しております。

 それらの課題に対応するために、経営者は常に事業環境の変化に関する情報の入手及び分析を行い、状況に合わせて企業戦略を刷新していくことで、さらなる事業拡大を図ってまいります。

 

5【経営上の重要な契約等】

 当社の経営上の重要な契約は次のとおりであります。

 

(1) 特許実施許諾に関する契約

契約名

契約相手

契約締結日

契約内容

覚書

学校法人慶應義塾

2018年12月25日

当社が学校法人慶應義塾から譲渡または再実施権付独占的通常実施権の許諾を受けた心筋再生医療に関する特許権等の実施条件を定めた契約。対価として、当社は売上に応じて定められた実施料を支払う。

特許実施
許諾契約

学校法人慶應義塾

2016年10月17日

学校法人慶應義塾の有する純化精製方法(脂肪酸合成阻害法)に関する特許の再実施許諾権付独占的通常実施権の提供を受け、当社は当該特許を実施する際は対価を支払う契約。契約期間は締結日から5年で、終結の申し出がない場合には自動的に1年間延長され、その後も同様。

特許実施権許諾契約

iPSアカデミアジャパン㈱

2019年4月1日

当社がiPSアカデミアジャパン㈱から非独占的通常実施権の許諾を受けた、iPS細胞を心筋再生医療に使用する上での基本となる特許権等に関する契約。対価として、当社は売上に応じて定められた実施料を支払う。契約期間は締結日からすべての対象特許が存続期間満了または不存在となる日まで。

 

(2)業務委託契約

契約相手

相手先の所在地

契約内容

㈱ニコン・セル・イノベーション

日本

開発受託及び製造受託サービス基本取引契約。

㈱リニカル

日本

HS-001の第Ⅰ/Ⅱ相試験に関する業務の委受託契約。

 

(3)ライセンス提携・共同開発契約

契約名

契約相手

契約締結日

契約内容

COLLABORATION & LICENSE AGREEMENT

ノボノルディスク エー・エス

2021年5月4日

ノボノルディスク エー・エスとのヒトへの治療用途(以下、本用途)におけるHS-001, HS-005を含む他家iPS細胞由来心筋球(細胞株、投与方法、適応症は問わない)に関する、全世界を対象とする再実施許諾権付独占的技術提携・ライセンス契約。

他家iPS細胞由来心筋球の本用途について、日本国内に関しては当社が臨床開発を進め、商業化に関しては両者で収益を50:50にてシェアする。他方、日本以外の全世界においては、開発・製造・販売権をノボノルディスク エー・エスへと付与し、同社が開発・製造・販売に関する全ての費用を負担する。

当社は契約一時金・マイルストン合計で総額最大598百万ドル、および海外の売上に応じて一桁後半から二桁前半パーセントのロイヤリティを受領する。

契約期間は、契約締結日から日本ではco-commercialization(共同商業化)が継続する期間、日本以外では契約で定められたロイヤルティ支払い期間である。

ノボノルディスク エー・エスは当社に事前に通知することにより、契約の全部または一部を解除することができる。

なお、ノボノルディスク エー・エスの意向により契約が解除された場合、海外での開発、製造、販売に関する権利は当社に返還され、当社による事業継続が可能である。

 

6【研究開発活動】

第8期事業年度(自 2022年11月1日 至 2023年10月31日)

 当社は心筋再生医療の事業化を加速させるために、虚血性心疾患に伴う心不全患者を対象とする他家iPS細胞由来心筋球の開胸投与による治療プログラム(HS-001)をリードパイプラインとして、開発を継続しております。

 当事業年度においては、第Ⅰ/Ⅱ相臨床試験(LAPiS試験)を実施中であり、治験参加施設における患者のリクルートメントを継続している一方、複数の大学等のアカデミア及び企業との共同研究を活用することで基礎技術の開発も行っており、効率的な研究開発体制を構築しております。

 研究開発従事人員数は29人であり、当事業年度の研究開発費の総額は1,360,245千円となり、販売費及び一般管理費全体の75.4%と大きな割合を占めております。研究開発活動の具体的な内容は、「4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ① 経営成績の状況」に記載のとおりであります。

 また、研究開発の詳細については、「第1 企業の概況 3 事業の内容」に記載のとおりであります。

 

第9期第2四半期累計期間(自 2023年11月1日 至 2024年4月30日)

 当第2四半期累計期間における研究開発活動の金額は、661,245千円であります。

 2024年4月30日現在、研究開発従事人員数は28名在職し、リードパープラインである虚血性心疾患に伴う心不全患者を対象とする他家iPS細胞由来心筋球の開胸投与による治療プログラム(HS-001)開発、及び第Ⅰ/Ⅱ相臨床試験(LAPiS試験)を実施中であり、治験参加施設における患者のリクルートメントを前事業年度より引き続き継続して行っております。

 また、研究開発の詳細については、「第1 企業の概況 3 事業の内容」に記載のとおりであります。