第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 

文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において、当社グループが判断したものであります。

 

(1) 会社の経営の基本方針

当社グループは、「大地深く生命の根を張り大空高く自由に伸びよ」の社是のもと、常に10年先の事業継続を見据えながら、様々な国・地域における取引先の変化し続けるニーズに対して、カスタマイズされたサービスや課題解決の技術を間断なく提供し続けることで、安定した財務基盤を維持し、企業価値を高める取組みを一つでも多く実現させながら、取引先とともに発展し、社会に貢献する企業を目指しております。

また、当社グループは、祖業である商社事業と商社事業を通じて生まれた製造事業で構成されており、いずれも取引先との間で事業を行っていることから、「価値をつくりお取引先様によろこんでいただく」ことを経営の基本方針とし、その実現に向け以下のとおりグループ行動指針を定め、グループ全員が共通理解に立ち、常に10年先の事業継続を見据え、付加価値の創造に努めております。

① 常に挑戦し価値を創造する

② お互いに尊敬と信頼の念をもつ

③ 誠実に行動し説明責任を果たす

 

(2) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

当社グループは、当社グループから取引先へお届けする製品やサービスの付加価値が、事業を継続させていただくための源泉であると考えており、営業利益及び営業利益率を重要な指標としております。

加えて、事業の強化に必要な再投資を継続的に行うために、必要な運転資本を営業利益で除した「運転資本回収期間」を指標として設定し、収益性と資金効率の両面から資金創出力を向上させるようにしております。

 

(3) 中長期的な会社の経営戦略

当社グループを取り巻く市場環境の変化は更に速度を上げ、それに伴い取引先の事業方針、サプライチェーン構造等も変化し続けており、その変化に柔軟かつ迅速に対応するための構造転換をはかっていくことが求められています。加えて、世界規模での感染症の拡大、特定地域での紛争リスク等、一企業、一個人ではどうすることも出来ない変化が起こっていることも事実であります。このような状況の下、当社グループでは、2023年2月に策定いたしました新3ヵ年経営計画(2024年3月期~2026年3月期)における基本方針を「やるべきことを“さらに”しぼりこみ、価値をあげる」と定め、常に10年先の事業継続を見据え、それぞれの事業をより強くする自力の取組みに注力した事業戦略を具現化しております。

また、各事業の保有技術を活かし、さらなる価値創造に必要な技術を獲得するための技術戦略、取引先に安心して取引いただくためのITセキュリティ基盤構築等のデジタル対応も中期的に継続して取り組んでまいります。

 

(4) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

新3ヵ年経営計画(2024年3月期~2026年3月期)における基本方針に基づき、取引先に更によろこんでいただけるよう当社グループからお届けするサービスの質をより一層高め、事業継続性と企業価値向上を実現すべく、製造事業・商社事業の双方に必要なグループの共通課題を定め、取引先から求められる役割や付加価値の違いに応じた製造事業と商社事業のそれぞれの課題を設定し、その改善、解決に取り組んでまいります。

 

<グループ共通>

① 環境変化に応じた事業構造転換の推進

各国・地域における事業環境及び取引先のニーズの変化に対し、常に柔軟かつ迅速に対応するために事業構造転換をはかっていくことが求められております。そのためには、各国・地域の取引先に対して、各子会社が製・商品やサービスの安定供給を全うし、業務品質を向上させることで信頼関係を構築することが重要であり、定められた権限において各子会社で迅速な判断を行いながら、当社からグループを横断したリソース配分等の必要な支援を行ってまいります。

 

 

 

 

 

 

② 事業強化のための継続的な再投資

当社グループの事業を継続していくためには、取引先へお届けする製品やサービスの付加価値を原資として、適切に再投資を実行しなければなりません。その実現のためには、各子会社における営業利益及び営業利益率と運転資本回収期間の改善に取り組みながら収益性と資金創出力を高め、更なる事業強化のための再投資に繋げてまいります。当社では定期的なモニタリングを通じて、改善に必要な支援及び再投資についての効果・リスクの可視化を行ってまいります。

 

③ 取引先へ安心・安全を担保するITセキュリティの強化等のデジタル対応

当社グループは製造事業・商社事業問わず、取引先の間に入り事業を行っており、取引先の各種情報の取り扱いを含む情報セキュリティの強化・担保等のデジタル対応は、事業を継続する上で不可欠であります。そのため、当社では情報セキュリティ担当役員と専任部門を設置し、各子会社での情報セキュリティに関連する法令、規範、取引先との契約事項、規程類の遵守、特定部門で取得したISMS認証基準の国際規格であるISO27001の取得部門拡大等を通じて、情報セキュリティマネジメント体制を継続的に強化してまいります。

 

<製造事業>

① 取引先の課題解決に資する開発技術の深化

当社グループの各製造子会社は、ニッチな事業領域で長年培ってきた独自の技術で製品・サービスを取引先に提供しております。今後の事業環境や取引先のニーズの変化に対して、現在の保有技術を更に高め、新たな技術を付加する必要があります。当社は、製造事業に特化した支援部門を設置し、技術力の向上・品質の改善、必要に応じた新技術獲得の投資やDX化等を積極的に取り組んでまいります。

 

② 技術人材の確保、育成

当社グループの各製造子会社では、技術力向上や新技術獲得のために、社内人材の育成・登用に加え、外部からの技術人材の積極的な採用が重要であり、当社の支援部門を通じた教育や必要な採用支援等を行ってまいります。

 

③ 損益分岐点の改善

当社グループの各製造子会社では、事業を継続していく上で、需要変動や材料費・労務費等の製造コストの上昇に対し、自動化を含めた生産工程の見直し等、生産性の改善や固定費の最適化といった損益分岐点の不断の改善が必要であり、今後も継続して取り組んでまいります。

 

<商社事業>

① 車載戦略における適正利益の可視化と均質なグローバルサービス体制の構築

当社グループの商社事業において、当社子会社である黒田電気株式会社を中心に海外子会社と連携し、特定の顧客に対して、国・地域問わずグローバルな商品の安定供給体制を維持するとともに、提供する付加価値を可視化しながら、国内外で顧客の品質要求水準を満たした均質なサービスを展開していくことが重要であります。そのため、必要な専門人材の確保・社内人材の育成・登用を進めてまいります。

 

② 国・地域ごとの取引先と協業したカスタマイズサービスの提供

当社グループの商社事業において、車載関連以外では、各国・地域によって異なる取引先のニーズに対し、顧客と仕入先の双方にメリットのあるカスタマイズされたサービスを提供していくことが重要であります。各国・各地域の事業環境に適応し、取引先を繋ぐことのできる人材育成・登用・配置を行うことで国内外における現地化を推進してまいります。

 

③ 取引先のニーズを理解した提案営業力の向上

当社グループの商社事業において、顧客のニーズを理解した上で、そのニーズに合う商品やサービスを提案・コーディネートすることが求められます。そのためには、取扱商品に対する専門性を高めることが必要であり、各種展示会の開催や商品勉強会等を通じて提案営業力の向上をはかってまいります。

 

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループは、顧客、仕入先・協業先との間で事業を行っており、常に業務品質の向上に努め、当社グループから取引先に提供する付加価値を高めることで、持続的かつ安定的な事業基盤を構築していくことが、当社グループのサステナビリティに関する基本戦略となります。具体的な指標等を定めてはいないものの、当社グループのサステナビリティを実現していくために必要となる取組みは以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)ガバナンス及びリスク管理

当社グループでは、リスクマネジメント体制として、当社事業担当責任者をリスクマネジメント推進責任者とし、リスクマネジメントの企画・立案・運用は、リスクマネジメント推進責任者の指示の下、当社経営企画部があたることとしており、サステナビリティを含めた会社経営全般に関する事象を広範囲に検証し、リスクを把握した上で、具体的な対応策を検討しております。また、これら検討内容及び対応策の中で重要なものについては、取締役会へ報告する体制となっております。

 

(2)人的資本に関する戦略

当社グループでは、「これから」の価値を創造し、事業の持続可能性を高めるために、各事業分野での十分な知識とマネジメントに精通した人材の確保・育成、優秀な人材を惹きつける労働環境及び働きやすい職場づくりに力を入れております。

多様で優秀な人材の獲得のため、採用活動を強化するとともに、入社後は存分に力を発揮できるよう、個々の実力と実績に基づいた評価や登用を行っております。また、従業員の自発的な能力開発を促進する「学び直し」に力を入れ、社員が自己実現を果たし、自己成長を遂げる環境を提供しています。従業員が会社を自己実現の場と捉え、モチベーションを高く成長し続けることが当社グループの持続的な企業価値の向上に直結すると考え、優秀な人材の確保、育成及び環境整備を進めております。

なお、本書提出日現在において、人的資本に関する指標及び目標は設定しておりません。今後、当社グループの事業特性に見合った関連指標のデータ収集と分析を進め、適切な指標及び目標を設定し、その進捗に合わせた開示項目を検討してまいります。

 

(3)知的財産への対応

当社グループでは、主に製造事業における長年培われた技術を活かした独自の製品を顧客に提供しており、今後も必要な技術を付加することで更なる付加価値の向上を目指すことに加え、「黒田グループ知的財産管理規程」を制定し、知的財産の保護について積極的に取り組んでおります。

 

3【事業等のリスク】

 

 当社グループのリスク管理体制及び財政状態、経営成績等に重要な影響を与える可能性があると考えられる主要なリスクは、以下のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであります。当該リスクが顕在化する可能性の程度や時期、当該リスクが顕在化した場合に当社グループの事業、業績及び財政状態に与える影響につきましては、合理的に予見することが困難であるため記載しておりません。

 

(1) 需要動向等に関するリスク

(顕在化の可能性:中/影響度:中/顕在化の時期:特定時期なし)

当社グループは、顧客密着型のビジネス展開を行い、生産用部品・材料のサプライヤーとして広範囲な産業に供給しており、世界的な需給環境の変動や取引先の購買方針の変更等により、当社グループの取扱商品あるいは取扱製品に対して、需要が短期間に減退する可能性があります。当社グループは持続的に競争優位の確保に努めているものの、これら商品や製品の需要が急速に減少あるいは価格が下落した場合、当社グループの業績及び財政状態が悪影響を被る可能性があります。

 

(2) 自然災害及び不測の事態に関するリスク

(顕在化の可能性:中/影響度:大/顕在化の時期:特定時期なし)

当社グループが事業活動を展開する国や地域において、大規模な自然災害(地震、水害等)、感染症の流行、テロ・紛争等の予期せぬ事態が発生し、サプライチェーンの混乱や業務の停止が生じた場合、顧客へのサービス提供や製・商品出荷等の停止など、当社グループの業績及び財政状態が悪影響を被る可能性があります。

 

(3) 法規制、不正、内部統制に関するリスク

(顕在化の可能性:中/影響度:大/顕在化の時期:特定時期なし)

当社グループは、内部統制体制の整備・維持を図り各種法令等の遵守に努めていますが、新たな環境規制や環境税の導入、法人税率の変動等これらの法令の改変があった場合や各種法令に違反したと判定された場合、公正取引委員会等による行政処分を受けた場合や税務当局から更正通知を受領した場合、あるいは反社会的勢力との取引や従業員による不正行為、品質不正があった場合や財務報告に係る内部統制の有効性が維持できなかった場合、当社グループの業績及び財政状態が悪影響を被る可能性があります。

 

(4) 品質保証に関するリスク

(顕在化の可能性:中/影響度:大/顕在化の時期:特定時期なし)

当社グループでは、国際品質マネジメント規格(ISO9001、IATF16949やその他の適用規格)や顧客が求める基準に従い、品質マネジメントを行っております。しかし、当社グループが供給する製・商品について品質不良等が発生して顧客から求償を受けることがあり、仕入先に起因する要因については、仕入先に補填をしていただくように努めておりますが、顧客や仕入先との協議により当社グループが損害賠償費用を負担せざるを得なくなった場合、当社グループの業績及び財政状態が悪影響を被る可能性があります。当該リスクについては、仕入先との取引開始時に、可能な限り取引基本契約書に加え、品質保証協定書等も取り交わし、顧客及び仕入先と取り交わす図面や仕様書等を踏まえて責任範囲を明確にするように努めております。

 

(5) 情報セキュリティに関するリスク

(顕在化の可能性:中/影響度:大/顕在化の時期:特定時期なし)

当社グループは、事業活動を通じて取引先の機密情報を入手することがあります。情報セキュリティに関連する法令、規範、取引先との契約事項、規程類を遵守し、特定部門でのISMS認証基準の国際規格であるISO27001を取得しています。また、情報セキュリティ担当役員を責任者とする情報セキュリティマネジメント体制を確立しております。更に、ISO27001の取得拡大を通じ、情報セキュリティに関する規程類、情報セキュリティマネジメント体制について、継続的に見直し、改善を行う様にしておりますが、サイバー攻撃によるウイルス感染や不正アクセス等の不測の事態により、万一、当社のシステムや通信ネットワークに重大な障害が発生し、正常に利用できない場合や機密情報が外部へ漏洩した場合、当社グループの顧客へのサービス提供や製・商品出荷等の停止、業務処理の遅延などにより、信用失墜及びそれに伴う損害賠償費用が発生し、当社グループの業績及び財政状態が悪影響を被る可能性があります。

 

(6) 重大な訴訟に関するリスク

(顕在化の可能性:低/影響度:大/顕在化の時期:特定時期なし)

当社グループは、業務の遂行にあたり法令順守などコンプライアンス経営に努めていますが、広範な事業活動を展開する中で、知的財産、労務、製造物責任、環境等、様々な訴訟の対象となるリスクがあり、重大な訴訟が提起された場合、当社グループの業績及び財政状態が悪影響を被る可能性があります。当該リスクに関しては、外部弁護士等の活用を行うとともに、社内研修等を通じてコンプライアンス意識の醸成に努めています。

 

(7) 信用に関するリスク

(顕在化の可能性:中/影響度:小/顕在化の時期:特定時期なし)

当社グループでは、「黒田グループ与信・債権管理規程」を定めて顧客と円滑な取引を実施し、顧客ごとに与信限度額を設定して与信管理を実施するとともに、グループ各社の営業部門が主要な顧客の状況を定期的にモニタリングし、担当経理部門が顧客ごとの期日管理及び残高管理を行い、貸倒れリスクの回避を図っております。しかしながら、各国の経済環境や景気の変化、取引先固有の事情等によって債権等が回収不能になった場合、当社グループの業績及び財政状態が悪影響を被る可能性があります。

 

(8) 為替相場の変動等に関するリスク

(顕在化の可能性:高/影響度:小/顕在化の時期:特定時期なし)

当社グループの海外事業の現地通貨建て財務諸表の各項目は、円換算時の為替レート変動の影響を受けます。外国通貨建て取引については、月次単位で為替予約等によるリスク回避の措置を講じておりますが、予測を超えた為替変動が発生した場合、当社グループの業績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

 

(9) 人材の確保に関するリスク

(顕在化の可能性:中/影響度:小/顕在化の時期:特定時期なし)

当社グループでは、「これから」の価値をつくり、事業の継続性を高めるために、既存の従業員に加え、各事業分野で十分な知識とマネジメントに精通した人材の確保・育成が不可欠であると認識しております。人材の育成と実務能力の向上のため、財務会計、語学、ビジネス教養、PCスキル等、各人の興味関心や能力に合う内容が豊富なeラーニングを従業員に提供し、「学び直し」をテーマに、従業員の自発的な能力開発を企業文化として定着させることを目的に、組織あるいは従業員が選択する教育ツールの費用負担、外部研修のさらなる活用、自己研鑽への取り組みを実施しております。しかし、少子高齢化や労働人口の減少、エンジニアなどの高度なスキルを持つ人材への需要増加により、優秀な人材の確保が難しくなっております。これにより、想定どおりに人材の確保及び育成が進まない場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(10)多額の借入れ、金利の変動及び財務制限条項への抵触に関するリスク

(顕在化の可能性:低/影響度:中/顕在化の時期:特定時期なし)

当社グループは、今後も、当社グループの事業強化に資する投資資金や事業を継続するための運転資金の確保を必要とする可能性があります。しかし、金融市場の環境、金利動向、資金需給の状況等の変化が、当社グループの資金調達に悪影響を及ぼす可能性があり、当社グループが必要とする資金の調達を適時かつ好条件で行うことが出来ない場合には、当社グループの事業、業績、財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

また、当社グループでは、2018年3月に黒田電気株式会社が非公開化する際、金融機関を貸付人とするシンジケートローン契約を締結し多額の借入れを行っており、2024年3月31日現在での借入金残高は31,315百万円あり、IFRSに基づく総資産額に占める有利子負債比率は32.8%となっております。又、本書提出日現在、借入金残高は29,290百万円となっております。今後の金融市場等の動向により、金利が上昇局面となった場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。当該シンジケートローン契約には、財務制限条項が課せられており、当該条項違反が発生した場合は、貸付人の同意により、期限の利益を喪失する可能性があります。また、直ちに借入金を返済しなければならない等、当社財政状態及び資金繰りに影響を及ぼす可能性があります。なお、契約の内容につきましては、「第2 事業の状況 5.経営上の重要な契約等」に記載のとおりであります。

 

(11)減損に関するリスク

(顕在化の可能性:中/影響度:高/顕在化の時期:特定時期なし)

当社グループは、本書提出日現在、MBKパートナーズグループがKMホールディングス株式会社を通じて黒田電気株式会社の株式を取得することを目的として2017年12月15日まで実施された公開買付け及び黒田電気株式会社により2017年12月25日から2018年1月26日まで実施された自己株式公開買付けにより生じたのれん19,024百万円を連結財政状態計算書に計上しているほか、その他の有形・無形の固定資産を有しております。今後、これらの固定資産に係る事業の収益性が低下する場合、当該固定資産の帳簿価額と回収可能価額の差を損失とする減損処理により、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。なお、当社グループが認識している主なのれんは、内部報告目的で管理されている事業単位である「製造事業」「商社事業」を資金生成単位として配分されており、減損の兆候の有無に関わらず、年に1度減損テストを実施し、回収可能価額が帳簿価額を上回っていることを確認しております。当社グループにて実施しているのれんの減損テストについては後記「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 連結財務諸表注記 15.のれん及び無形資産 (2)のれんの減損テスト」をご参照ください。

 

(12)配当政策について

(顕在化の可能性:中/影響度:中/顕在化の時期:特定時期なし)

当社グループは、株主への利益還元を経営上の重要な課題として認識しており、事業を継続・発展させていただくことが、長期にわたる株主への利益還元に繋がると考えております。事業の成長による中長期的な株式価値の向上とともに、業績推移や財政状態等を勘案しながら配当を継続的に実施していく方針でありますが、通期業績、財政状態及びその他の状況によっては、配当政策に影響を及ぼす可能性があります。

 

(13)大株主がファンドであること等について

(顕在化の可能性:低/影響度:大/顕在化の時期:特定時期なし)

本書提出日現在において、ケイエム・ツー・エルピー(MBKパートナーズグループが運営するファンドであり、「当該ファンド」という。) は、当社の発行済株式数(自己株式除く42,449,980株)の100%を所有しております。また、当社取締役である金子哲也及び太田光俊は、MBKパートナーズ株式会社から派遣されており、当社取締役会において、事業セグメントの業績管理の精緻化、投資案件の検討、既存投資案件のリターンの検証等で当社グループ企業価値向上のための建設的な意見・助言を行っております。

当該ファンドは上場時において、所有する当社株式の一部を売却する予定でありますが、上場後も相当数の当社株式を保有することとなった場合には、その保有・処分方針によって、当社株式の流動性及び価格形成等に影響を及ぼす可能性があります。

また、当該ファンドは、引受人の買取引受による売出しに関連して、共同主幹事会社に対し、ロックアップに関する書面を差し入れる予定ですが、ロックアップの除外事由として、一定の借入れに関する担保権の設定及び当該担保権の実行に伴う処分等を行うことができる旨が定められております。かかる借入れに係る借入金額、貸出人その他の条件によっては、当該ファンドが当社普通株式への担保権の設定等を行い、当該担保権の実行等に伴い当社普通株式の処分が行われる結果として、当社普通株式の市場価格に影響を及ぼす可能性があります。

 

(14)海外販売に関するリスク

(顕在化の可能性:低/影響度:小/顕在化の時期:特定時期なし)

当社グループの売上高の約39%はタイ及びインドネシア等のアセアン地区と中国に所在する会社の海外販売であります。各国の政治・経済状況等を常にモニタリングし、迅速に対応できる体制を整えておりますが、政治の不安定化によりビジネス環境が変わり、法律や税制の変更によってコストが増加したり、各国の政策変更によって競争環境が変わったりすることが考えられます。また、経済状況の急変や自然災害、戦争やテロの社会的な混乱は、当社グループの業績及び財政状態が悪影響を被る可能性があります。

 

(15)在庫の評価損や廃棄損に関するリスク

(顕在化の可能性:中/影響度:中/顕在化の時期:特定時期なし)

当社グループでは、商社事業の重要な機能として顧客への継続的な安定供給を目的とした一定水準の在庫を保有しております。顧客の生産計画の変更、所要見込みの減少により、滞留在庫又は過剰在庫となり、棚卸資産の廃棄損や評価損を計上する場合には、当社グループの業績及び財政状態が悪影響を被る可能性があります。

適正在庫水準は顧客要求や商品によって異なりますが、このようなリスクに対して当社グループでは、日々顧客から発行される変動指示数について増減を確認し、変更があった場合には仕入先との調整を行うことで適切な在庫水準を保っております。また、滞留在庫の管理や定期的な在庫会議を通じて、顧客との協議を行い、過剰な在庫や不要な在庫を防止する対策に取り組んでおります。

 

(16)投資有価証券の評価損に関するリスク

(顕在化の可能性:中/影響度:小/顕在化の時期:特定時期なし)

当社グループは、上場及び非上場の株式等の投資有価証券を保有しております。市場経済の動向や投資先の財政状態等により、株価及び評価額に著しい変動が生じる場合には、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。対応策として発行体の財務内容を定期的に確認するための定量的な評価基準を設けております。

 

(17)仕入先に関するリスク

(顕在化の可能性:低/影響度:小/顕在化の時期:特定時期なし)

当社グループの商社事業において、仕入先の事業戦略や市場戦略等により取引の商流が変更される可能性があります。現在の主要仕入先との取引は代理店契約のみによる取引ではないものの、主要仕入先との取引が変更となった場合には、当社グループの業績及び財政状態が悪影響を被る可能性があります。当社グループの商社事業では、顧客の課題を読み取り、各仕入先の製品の最適な販売提案による拡販とともに信頼と企業価値の向上に取り組んでおります。

 

(18)新株予約権の行使による株式価値の希薄化リスク

(顕在化の可能性:低/影響度:小/顕在化の時期:特定時期なし)

当社グループは、当社及びグループ会社の役員に対するインセンティブを目的として、新株予約権を付与しております。本書提出日現在、これらの新株予約権による潜在株式数は1,273,500株であり、発行済株式数の約2.7%に相当しております。これらの新株予約権の行使が行われた場合、発行済株式数が増加し、1株当たりの株式価値が希薄化する可能性があり、この株式価値の希薄化が株価形成に影響を及ぼす可能性があります。

 

(19)当社株式の流動性について

 (顕在化の可能性:低/影響度:中/顕在化の時期:特定時期なし)

当社グループは、株式会社東京証券取引所スタンダード市場への上場に際しては、売出しによって当社株式の流動性の確保に努めることとしておりますが、株式会社東京証券取引所の定める流通株式比率について、新規上場時において26.08%にとどまる見込みです。今後は、大株主への一部売出しの要請、新株予約権の行使による流通株式数の増加等を勘案し、これらの組み合わせにより、流動性の向上を図っていく方針ではありますが、何らかの事情により上場時よりも流動性が低下する場合には、当社株式の市場における売買が停滞する可能性があり、それにより当社株式の需給関係にも悪影響を及ぼす可能性があります。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

 

(1)経営成績等の状況の概要

当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は以下のとおりであります。

なお、当社グループは2023年3月期を比較年度(開始BS移行日2022年4月1日)、2024年3月期を報告年度としてIFRSを任意適用しており、当連結会計年度の経営成績の状況及びキャッシュ・フローの状況について、前年同期比増減の記載を省略しております。

 

① 財政状態の状況

第7期連結会計年度(自 2023年4月1日 至 2024年3月31日)

 当連結会計年度末における資産合計は983億16百万円となり、前連結会計年度末に比べ34億83百万円の減少となりました。前年比売上の減少に伴う営業債権及びその他の債権の減少11億2百万円と、運転資本効率化の取り組みによる棚卸資産の圧縮28億41百万円に加え、減損を主因とする有形固定資産の減少21億66百万円及びのれんの減少10億13百万円が主な要因です。前年度比当期利益は26億5百万円減少しましたが、運転資本効率の取り組みにより現金及び現金同等物は49億35百万円の増加となりました。

 当連結会計年度末の負債合計は、前連結会計年度末から31億32百万円減少し、630億52百万円となりました。

主な要因としては、借入金の返済20億6百万円及び売却目的で保有する資産に直接関連する負債の処分7億24百万円等です。

 当連結会計年度末の資本合計は352億64百万円となり、前連結会計年度末に比べ3億51百万円の減少となりました。為替の影響によりその他の資本の構成要素が25億34百万円の増加があったものの、自己株式の取得により30億円減少したことによります。以上の結果、資産合計の減少が資本合計の減少に対し相対的に大きく、当連結会計年度末の自己資本比率は前連結会計年度末から0.7ポイント増加し、34.7%となりました。

 

第8期中間連結会計期間(自 2024年4月1日 至 2024年9月30日)

 当中間連結会計期間末における資産合計は967億51百万円となり、前連結会計年度末に比べ15億66百万円の減少となりました。運転資本効率化の取り組みが功を奏し、営業債権及びその他の債権、棚卸資産が25億79百万円減少したことが主な要因です。

 負債合計は591億51百万円となり、前連結会計年度末に比べ39億1百万円の減少となりました。営業債務及びその他の債務が24億42百万円減少したことと、借入金20億24百万円を返済したことが主な要因です。

 資本合計は376億円となり、前連結会計年度末に比べ23億36百万円の増加となりました。主に中間利益等による利益剰余金23億72百万円の増加が主な要因です。

 

② 経営成績の状況

第7期連結会計年度(自 2023年4月1日 至 2024年3月31日)

当連結会計年度における世界経済は、総じて緩やかな持ち直しの動きが続いておりますが、世界的な金融の引き締めや中国における景気減速の懸念、ウクライナ情勢、中東地域での地政学リスクの高まり等、依然として景気の下振れ要因が重なりあっております。

このような経営環境のもと、当社グループでは、3ヵ年経営計画(2024年3月期~2026年3月期)における基本方針である「やるべきことを“さらに”しぼりこみ、価値をあげる」の下、常に10年先の事業継続を見据え、当社グループから取引先へお届けする製品やサービスの付加価値が事業を継続させていただくことを前提に、それぞれの事業をより強くする自力の取り組みに注力した事業戦略を具現化してまいりました。

また、各事業における既存の保有技術を活かした、更なる価値の創造に必要となる技術を開発するための技術戦略、取引先に安心して取引いただけるITセキュリティ等のデジタル対応にも中期的に継続して取り組んでまいります。

このような状況下で、当連結会計年度における当社グループの業績は、ハードディスクドライブの市況回復の遅れと当該事業環境と業績等を踏まえてハードディスクドライブ関連事業の固定資産に係る減損損失9億92百万円の計上、のれんに係る減損損失10億45百万円の計上を実施したことに加え、当社製造会社の事業譲渡関連による損失18億39百万円を計上したことにより、売上収益は1,266億91百万円(前年同期比9.0%減)、営業利益は19億81百万円(前年同期比56.6%減)、親会社の所有者に帰属する当期利益は3億78百万円(前年同期比85.4%減)となりました。

 

第8期中間連結会計期間(自 2024年4月1日 至 2024年9月30日)

 当中間連結会計期間における世界経済は、欧米における金融の引き締め政策の継続や中国における景気停滞、ウクライナ情勢、中東地域での地政学リスクの高まりや各国の政治情勢等、景気の変動要因に引続き注視していく必要があり、一部の地域における足踏みがみられるものの、総じて持ち直しの動きが続いております。

 このような経営環境のもと、当社グループでは、3ヵ年経営計画(2024年3月期~2026年3月期)における基本方針である「やるべきことを“さらに”しぼりこみ、価値をあげる」の下、常に10年先を見据え、当社グループから取引先へお届けする製・商品やサービスの付加価値が事業を継続させていただく源泉であると考え、それぞれの事業での付加価値を高め、各国・地域における取引先のニーズに迅速に対応するための事業基盤構築に向けた取組みを推進しております。

 また、取引先へ安心・安全を提供するITセキュリティ体制の担保を継続し、製造事業のDX化等のデジタル戦略や、各事業における既存の保有技術を活かした、更なる価値の創造に必要となる技術を開発するための技術戦略にも中期的に継続して取り組んでまいります。

 このような状況下で、当中間連結会計期間における当社グループの業績は、売上収益は603億60百万円(前年同期比7.8%減)、営業利益は31億30百万円(前年同期比10.6%減)、親会社の所有者に帰属する中間利益は23億1百万円(前年同期比11.2%増)となりました。

 なお、前中間連結会計期間では、当社グループ子会社の固定資産の売却による収益が5億21百万円、子会社株式売却による収益が2億84百万円あり、その反動で当中間連結会計期間の営業利益が前年同期比減少しております。

 

③ キャッシュ・フローの状況

第7期連結会計年度(自 2023年4月1日 至 2024年3月31日)

当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べ49億35百万円増加し、当連結会計年度末には151億44百万円となりました。

 

当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況は以下のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動の結果得られた資金は104億23百万円(前年同期は70億23百万円の資金の獲得)となりました。主な内訳は、非資金損益項目調整後の当期利益(当期利益に減損損失、減価償却費等の非資金損益項目を加算)74億41百万円、営業活動に係る債権・債務等の加減算47億33百万円です。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動の結果支出した資金は1億43百万円(前年同期は7億84百万円の資金の獲得)となり、主な内訳は、有形固定資産の取得による支出11億69百万円、有形固定資産の売却による収入13億12百万円があります。前連結会計年度は関連会社株式の売却による収入16億87百万円及び子会社の売却による収入10億60百万円があり、投資活動によるキャッシュ・フロー全体で7億84百万円の資金の獲得となりました。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動の結果支出した資金は58億71百万円(前年同期は64億81百万円の支出)となり、主な内訳は

自己株式取得による支出30億円及び借入金の返済による支出22億円です。

 

第8期中間連結会計期間(自 2024年4月1日 至 2024年9月30日)

当中間連結会計期間末における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べ77百万円減少し、当中間連結会計期間末には150億67百万円となりました。

 

当中間連結会計期間における各キャッシュ・フローの状況は以下のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動の結果得られた資金は39億30百万円(前年同期は53億93百万円の資金の獲得)となりました。主な増加は、税引前中間利益29億91百万円です。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動の結果支出した資金は19億78百万円(前年同期は4億43百万円の資金の獲得)となり、主な内訳は、有形固定資産の取得による支出22億7百万円があります。前中間期は有形固定資産の売却による収入8億円があり、投資活動によるキャッシュ・フロー全体で4億43百万円の資金の獲得となりました。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動の結果支出した資金は17億14百万円(前年同期は43億32百万円の支出)となり、主な内訳は借入金の借換え等により生じた借入による収入300億円及び借入金の返済による支出314億51百万円です。

 

④ 生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

第7期連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、以下のとおりであります。

セグメントの名称

金額(百万円)

増減率(%)

製造

28,364

△29.9

商社

合計

28,364

△29.9

(注)1.セグメント間取引については、相殺消去しております。

2.金額は、販売価格によっております。

 

第8期中間連結会計期間の生産実績をセグメントごとに示すと、以下のとおりであります。

セグメントの名称

金額(百万円)

増減率(%)

製造

15,103

10.3

商社

合計

15,103

10.3

(注)1.セグメント間取引については、相殺消去しております。

   2.金額は、販売価格によっております。

 

b.受注実績

第7期連結会計年度の受注実績をセグメントごとに示すと、以下のとおりであります。

セグメントの名称

受注高(百万円)

増減率(%)

受注残高(百万円)

増減率(%)

製造

26,931

△28.1

2,337

△54.3

商社

合計

26,931

△28.1

2,337

△54.3

(注)セグメント間取引については、相殺消去しております。

 

第8期中間連結会計期間の受注実績をセグメントごとに示すと、以下のとおりであります。

セグメントの名称

受注高(百万円)

増減率(%)

受注残高(百万円)

増減率(%)

製造

15,442

17.2

2,607

△35.7

商社

合計

15,442

17.2

2,607

△35.7

(注)セグメント間取引については、相殺消去しております。

 

 

 

 

 

 

c.販売実績

第7期連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、以下のとおりであります。

セグメントの名称

金額(百万円)

増減率(%)

製造

29,753

△27.8

商社

96,938

△1.1

合計

126,691

△9.0

(注)セグメント間取引については、相殺消去しております。

 

第8期中間連結会計期間の販売実績をセグメントごとに示すと、以下のとおりであります。

セグメントの名称

金額(百万円)

増減率(%)

製造

14,093

△6.9

商社

46,268

△8.1

合計

60,360

△7.8

(注)1.セグメント間取引については、相殺消去しております。

2.最近2連結会計年度及び第8期中間連結会計期間の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は以下のとおりであります。

 

相手先

第6期連結会計年度

(自2022年4月1日

至2023年3月31日)

第7期連結会計年度

(自2023年4月1日

至2024年3月31日)

第8期中間連結会計期間

(自2024年4月1日

至2024年9月30日)

金額(百万円)

割合(%)

金額(百万円)

割合(%)

金額(百万円)

割合(%)

株式会社デンソー

18,736

13.45

22,735

17.95

11,227

18.60

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は以下のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものであります。

 

a.重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則」(以下「連結財務諸表規則」という。)第93条の規定によりIFRSに準拠して作成しております。この連結財務諸表の作成に当たって、必要と思われる見積りは、合理的な基準に基づいて実施しております。

また、連結財務諸表の作成にあたっては、過去の実績や取引状況を勘案し、合理的と判断される前提に基づき見積り及び予測を行っておりますが、前提条件やその後の環境等に変化がある場合など不確実性が存在するため、実際の結果がこれらの見積りや予測と異なる場合があります。

なお、当社グループの連結財務諸表で採用する重要性がある会計方針及び見積りは、「第5 経理の状況 1.連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表に関する注記事項 3.重要性がある会計方針」及び「第5 経理の状況 1.連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表に関する注記事項 4.重要な会計上の見積り及び見積りを伴う判断」に記載しております。

 

b.経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

財務状態及び経営成績の状況につきましては、「(1) 経営成績等の状況の概要」に記載のとおりであります。

 

当社グループは、セグメントを製造事業と商社事業に大別し、当社グループから取引先へお届けする製品やサービスの付加価値が、事業を継続させていただくための源泉であると考え、営業利益及び営業利益率を重要な指標として事業運営を行っており、セグメント別の業績は以下のとおりであります。

 

<製造>

生産財(顧客の生産工程に資する製品・サービスを提供):

株式会社コムラテックでは、液晶用配光膜印刷版のシェアアップに取り組んでおり、市況に若干の落ち込みはあるものの、中国・台湾メーカーからの受注は微増で推移いたしました。一方で、黒田テクノ株式会社では、ハードディスクドライブ業界の市況悪化を受け、主要顧客での設備投資が抑制されたことを背景に自動化装置の受注が大幅に減少いたしました。

また、クロダ オートテック(タイランド)CO., LTD.において、直近の業績と事業環境を踏まえ、固定資産に係る減損損失1億59百万円の計上を行いました。

直材(顧客の生産に必要な部品・サービスを提供):

日動電工株式会社では、電設業界における顧客への価格改定が広く浸透し、受注も堅調に推移いたしました。一方でZ.クロダ(タイランド)CO., LTD.では、ハードディスクドライブの市況回復が遅れ、フィルター製品を中心とした各種部品の受注が低調に推移しました。足元では、緩やかな市況回復の兆しがあるものの、当連結会計年度を通じて市況悪化の影響を大きく受けました。また、同社の直近の業績と事業環境等を踏まえ、固定資産に係る減損損失9億92百万円の計上、のれんに係る減損損失10億45百万円の計上を行いました。

上記以外に、黒田虹日集団(香港)有限公司及び東莞虹日金属科技有限公司において、直近の業績と事業環境を踏まえ、減損損失13億20百万円を計上し、同社の事業譲渡に伴い、売却損失5億19百万円を当連結会計年度で計上しております。

この結果、製造事業の売上収益は297億53百万円、営業利益は13億62百万円、営業利益率4.6%となりました。

 

<商社>

車載(特定の顧客へグローバルにサービスを提供):

自動車業界は、主に半導体等の部材供給の制約が解消されたことを背景に、黒田電気株式会社を中心に顧客からのプリント基板含む電子部品、樹脂材料、各種成形品の全てにおいて、受注が大幅に増加し、好調に推移いたしました。

地域(各国・地域の顧客へカスタマイズしたサービスを提供)

コロナ禍の反動によるTV・PC・アミューズメント・スマホ・2次電池・インクジェットプリンターの各種部材の受注減少に加え、顧客の在庫調整によるエアコン関連部材の受注が大幅に減少いたしました。また、中国の景気減速を背景に産業機器向け部材も受注が大幅に減少いたしました。

この結果、商社事業の売上収益は969億38百万円、営業利益は23億60百万円、営業利益率2.4%となりました。

 

上記各セグメントの営業損益のほかに、各セグメントに帰属しない全社費用等17億40百万円があります。

 

c.キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

(キャッシュ・フローの状況の分析・検討)

キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要」に記載のとおりであります。

 

(資本の財源及び資金の流動性に係る情報)

当社グループの主な資金需要は、投資及び運転資本の調達を目的としております。これらの資金需要につきましては、原則として「営業活動によるキャッシュ・フロー」により獲得した資金で賄い、既存取引拡大と恒常的な設備資金については、一定の財務基盤を維持しながら、銀行借入による資金調達を活用することも考えております。なお、新規事業のための投資については、自己資金で行うことを基本といたします。又、資金繰りについて万が一悪化したときは電子債権の現金化やコミットメントライン契約に基づく借入枠の使用により対応できると考えております。

当社グループは、事業を継続させていただくために、取引先へお届けする製品やサービスの付加価値を高めていくこととともに、事業運営に必要な運転資本の効率化をはかることによって、事業活動における現金創出力も高めたいと考えております。そのため、事業にかかる運転資本を本業である営業利益で除した「運転資本回収期間」を重要指標として捉え、本指標の改善に取り組んでまいります。これは、付加価値を高めることと運転資本の効率化の両面からアプローチすることで、事業を継続させていただくために必要な再投資の原資を創出し、着実な再投資の実行に繋げていくものであります。

 

 

(参考情報)

① 財務推移

2020年3月期、2021年3月期及び2022年3月期における連結会計年度ごとの主要な経営指標等を記載いたします。

(単位:百万円)

 

2020年3月期

2021年3月期

2022年3月期

 

日本基準

日本基準

日本基準

売上高

135,334

116,851

133,739

売上原価

113,845

98,535

112,654

売上総利益

21,488

18,315

21,084

営業利益

3,917

2,906

5,308

調整後営業利益

5,247

4,222

6,627

調整後EBITDA

8,552

7,116

9,679

設備投資額

2,436

2,842

2,195

減価償却費

3,305

2,894

3,052

のれん償却費

1,330

1,315

1,318

 

 

2020年3月期

2021年3月期

2022年3月期

 

日本基準

日本基準

日本基準

流動資産

57,820

57,315

60,710

現金及び預金

13,067

10,211

8,861

受取手形及び売掛金

32,319

34,425

34,272

その他の流動資産

12,434

12,679

17,577

固定資産

47,525

47,638

46,496

有形固定資産

17,602

18,988

19,561

無形固定資産

27,122

25,214

23,264

投資その他の資産

2,801

3,436

3,671

資産合計

105,346

104,954

107,207

負債合計

80,666

77,350

74,820

支払手形及び買掛金

19,710

22,256

23,340

有利子負債(リース債務含む)

52,784

45,808

40,076

その他の負債

8,172

9,286

11,404

純資産合計

24,679

27,603

32,386

株主資本

24,740

26,024

28,817

負債・純資産合計

105,346

104,954

107,207

 

 

2020年3月期

2021年3月期

2022年3月期

 

日本基準

日本基準

日本基準

営業キャッシュ・フロー

9,604

6,795

6,010

投資キャッシュ・フロー

△364

△2,507

△2,066

財務キャッシュ・フロー

△7,072

△7,319

△5,838

(注) 1.調整後営業利益は、営業利益からのれん償却費、ストック・オプション等に関連する費用を控除し算出。

  2.調整後EBITDAは、調整後営業利益に減価償却費を加算し算出。

3.設備投資額は、有形固定資産取得額と無形固定資産取得額を加算し算出。

  4.有限責任 あずさ監査法人の監査及び期中レビューを受けておりません。

 

 

② 事業ポートフォリオ

当社グループでは、「第1 3.事業の内容」に記載のとおり、事業の区分として、製造事業と商社事業の2つを設定しております。当社グループが海外に有している強固な顧客基盤やネットワークにより、2025年3月期中間期の売上高構成比は日本が61%、中国が17%、アジアが19%、その他(北米・欧州)が3%です。また、営業利益構成比は日本が43%、中国が7%、アジアが47%、その他(北米・欧州)が3%です。

(単位:百万円)

 

 

2020年
3月期

2021年
3月期

2022年
3月期

2023年
3月期

2024年
3月期

2025年
3月期
中間期

 

 

日本
基準

日本
基準

日本
基準

日本
基準

IFRS

IFRS

IFRS

黒田グループ
合計

売上高

135,334

116,851

133,739

139,241

139,275

126,691

60,360

調整後営業利益

5,247

4,222

6,627

6,343

6,487

5,328

3,371

調整後営業利益率

3.9%

3.6%

5.0%

4.6%

4.7%

4.2%

5.6%

調整後EBITDA

8,552

7,116

9,679

9,516

9,982

8,084

4,679

調整後EBITDA率

6.3%

6.1%

7.2%

6.8%

7.2%

6.4%

7.8%

調整後親会社の所有者に帰属する当期(中間)利益

3,867

2,593

2,151

(注) 1.黒田グループ合計の調整後営業利益は、日本基準は営業利益からのれん償却費、ストック・オプション等に関連する費用を控除し算出。IFRSは営業利益から事業会社の減損、株式や固定資産売却による損益等の一過性の特殊要因を控除し算出。

   2.調整後EBITDAは、同調整後営業利益に減価償却費を加算し算出。

   3.調整後親会社の所有者に帰属する当期(中間)利益は、親会社の所有者に帰属する当期(中間)利益から事業会社の減損、株式や固定資産売却による損益等の一過性の特殊要因を控除し算出。

 

 参考として、管理会計上の事業別の業績推移は以下のとおりであります。

                                    (単位:百万円)

 

 

2020年
3月期

2021年
3月期

2022年
3月期

2023年
3月期

2024年
3月期

2025年
3月期
中間期

製造事業

(管理会計参考値)

売上高

47,227

41,559

47,858

47,947

34,615

17,112

営業利益

4,455

3,224

4,788

3,857

1,985

2,031

営業利益率

9.4%

7.8%

10.0%

8.0%

5.7%

11.9%

国内

売上高

16,942

15,379

16,374

16,342

14,657

6,898

営業利益

2,584

2,227

2,914

2,543

1,735

645

営業利益率

15.3%

14.5%

17.8%

15.6%

11.8%

9.4%

海外

売上高

17,686

16,615

20,903

19,404

15,118

10,214

営業利益

1,519

1,100

1,992

1,092

130

1,386

営業利益率

8.6%

6.6%

9.5%

5.6%

0.9%

13.6%

その他

(2025年3月期中間期末以降非継続)

売上高

12,598

9,564

10,580

12,201

4,841

営業利益

352

△104

△118

221

120

営業利益率

2.8%

△1.1%

△1.1%

1.8%

2.5%

商社事業

(管理会計参考値)

売上高

111,273

94,085

109,489

113,040

109,281

50,920

営業利益

1,256

1,171

2,209

2,839

3,119

1,602

営業利益率

1.1%

1.2%

2.0%

2.5%

2.9%

3.1%

国内

売上高

65,945

62,200

70,063

72,856

70,306

33,952

営業利益

△73

791

1,396

1,946

2,013

1,019

営業利益率

△0.1%

1.3%

2.0%

2.7%

2.9%

3.0%

海外

売上高

45,328

31,884

39,426

40,184

38,975

16,968

営業利益

1,329

380

813

894

1,106

583

営業利益率

2.9%

1.2%

2.1%

2.2%

2.8%

3.4%

(注) 1.製造事業と商社事業の財務情報は、管理会計上の参考値であります。そのため、「第5 経理の状況」に記載のセグメント情報とは数値が異なります。

   2.その他(2025年3月中間期末以降非継続)の財務情報は、2025年3月期中間期末までに売却・清算が行われており、以後発生が予定されない子会社の損益を集計した参考値であります。そのため、IFRS 第5号「売却目的で保有する非流動資産及び非継続事業」で定義される非継続事業とは異なります。

   3.有限責任 あずさ監査法人の監査及び期中レビューを受けておりません。

 

 

③ 製造事業の商材別及び商社事業の切り分け(管理会計参考値)

当社グループの製造事業を商材別に区分しますと、HDD部品、液晶生産材、電設資材、その他(継続事業及び非継続事業)に分類されます。HDD部品は、HDD用機構部品(シール・ラベルやフィルター等)の製造や、SSD用機構部材の製造。液晶生産材は、高精細な液晶ディスプレイ製造に不可欠な配向膜のコーティングに用いる印刷版(フレキソ印刷版)の製造。電設資材は、電設資材電力(配電機材)及び電材( 住宅用配線資材)の製造販売です。その他は、事業環境や今後のグループの事業戦略等を踏まえて、固定資産等の減損や事業ポートフォリオ入替のための子会社株式の売却等の構造転換施策を実施したことから、2025年3月期以降も継続している事業か否かで分類しています。なお、本数値においても、有限責任 あずさ監査法人の監査及び期中レビューを受けておらず、「第5 経理の状況」に記載のセグメント数値と異なります。

それぞれの部材毎の売上高は以下のとおりであります。

(単位:億円)

 

2020年3月期

2021年3月期

2022年3月期

2023年3月期

2024年3月期

2025年3月期
中間期

HDD部品

122

128

166

139

100

76

液晶生産材

31

30

34

27

27

14

電設資材

73

67

65

67

72

36

その他

(2025年3月期中間期末以降継続)

120

94

107

125

98

46

その他

(2025年3月期中間期末以降非継続)

126

96

106

122

48

(注) その他(2025年3月中間期末以降非継続)の財務情報は、2025年3月期中間期末までに売却・清算が行われており、以後発生が予定されない子会社の損益を集計した参考値であります。そのため、IFRS 第5号「売却目的で保有する非流動資産及び非継続事業」で定義される非継続事業とは異なります。

 

また、当社グループの商社事業をエンドマーケット別に区分しますと、車載、その他に分類されます。それぞれの売上構成比は以下のとおりであります。

 

 

2020年3月期

2021年3月期

2022年3月期

2023年3月期

2024年3月期

2025年3月期
中間期

車載

38%

44%

46%

48%

57%

63%

その他

62%

56%

54%

52%

43%

37%

 

 

④ 当社グループを取り巻く市場環境

当社グループの製造事業におけるHDD市場は、生成AI活用拡大もあり、今後もデータセンター関連の投資は中長期的に高い伸びが予想され、それに伴いニアライン向けHDDも成長トレンドへの回帰が見込まれております。ニアライン向けHDD市場の年次出荷台数は2023年から2030年まで年平均成長率19.7%で成長することが予想されております。(出典:TSR「月間ディスクドライブ生産統計情報-HDD, ODD & SSD)。

ディスプレイ市場は、LTPSに代表される高精細液晶ディスプレイが、製品寿命の長さの特徴から車載関連ディスプレイ等で伸長が期待されております。LTPS TFTの出荷金額は2023年から2029年まで年平均成長率7.3%で成長することが期待されております(出典:富士キメラ総研「2024 ディスプレイ関連市場の現状と将来展望」、「2023 ディスプレイ関連市場の現状と将来展望」)。

電設資材市場は、住宅関連市場における安定需要やリフォーム市場の拡大傾向、建設業界の人手不足を背景に、電設資材へ高機能性・安全性を求める動きが加速されると見込まれます。

当社グループの商社事業における車載関連市場では、電動化、ADAS、半導体関連の市場拡大が見込まれております。CASE関連自動車電装品の販売金額は2023年から2035年まで年平均成長率7.4%で成長することが見込まれております(出典:富士キメラ総研「車載電装デバイス&コンポーネンツ総調査 2024」)。

 

 

⑤ 財務規律

経営者の視点による主要な経営指標に基づく当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は以下のとおりであります。

 

 

 

2024年3月期

2025年3月期
中間期

健全性指標

自己資本比率

34.7%

37.7%

安全性指標

手元流動性

151億円

151億円

効率性指標

総運転資本

38日

37日

調整後ROE

7.5%

10.9%

調整後ROIC

5.5%

6.6%

(注) 1.総運転資本は、(事業運転資本(売上債権+棚卸資産-仕入債務)+その他運転資本(その他流動資産-その他流動負債-その他固定負債))÷日商(売上高÷365)にて算出。

    2.調整後ROEは、親会社の所有者に帰属する当期(中間)利益にのれん償却費、事業会社の減損、株式や固定資産売却による損益等の一過性の特殊要因を控除した調整後親会社の所有者に帰属する当期(中間)利益を使用し算出。

3.調整後ROICは、営業利益から上記特殊要因を控除した調整後営業利益を使用し算出。

 

 

 

5【経営上の重要な契約等】

(株式会社三井住友銀行及び株式会社三菱UFJ銀行と締結しているシンジケートローン契約)

 当社は2024年9月25日付で株式会社三井住友銀行をエージェントとする金銭消費貸借契約書を締結しております。

 主な契約内容は、以下のとおりであります。

 

イ.契約の相手先

  株式会社三井住友銀行及び株式会社三菱UFJ銀行

 

ロ.借入金額

  トランシェA(タームローン)     借入金額    10,500百万円

  トランシェB(タームローン)     借入金額    14,500百万円

  トランシェC(コミットメントライン) 借入金額     5,000百万円

 

コミットメントライン極度額      10,000百万円

コミット期間満了日:2027年9月30日

 

ハ.返済期限

  トランシェA:2029年9月28日を最終回とする分割返済

  トランシェB:2027年9月30日を満期日とする一括返済

  トランシェC:極度額を上限とするそれぞれの個別借入の満期日に一括返済、但し、満期日はコミット満了日を超えない

 

ニ.利率

  日本円TIBOR+スプレッド

  スプレッドは、シンジケートローン契約において予め定められた料率

 

ホ.主な借入人の義務

財務制限条項の遵守

 当社は、取引銀行2行とシンジケートローン契約を締結しております。この契約には、主に下記内容の財務制限条項が付されております。(借入残高 当連結会計年度(2024年3月31日):31,315百万円、当中間連結会計期間(2024年9月30日):29,290百万円)

 

(a)2025年3月期末日及びそれ以降の各事業年度末日における連結財政状態計算書に記載される資本の部の合計金額を、直近の事業年度末日における連結財政状態計算書に記載される資本の部の合計金額の75%に相当する金額以上に維持すること。

(b)2025年3月期末日及びそれ以降の各事業年度末日における連結損益計算書に記載される当期損益を2期連続して損失としないこと。

 

 

 

6【研究開発活動】

第7期連結会計年度(自 2023年4月1日 至 2024年3月31日)

 当社グループの研究開発活動は、主に製造セグメントにおいて製造会社を中心としてハードディスクドライブ用フィルター部品、電設資材、電力資材などの製品開発、技術開発を進めております。当連結会計年度における研究開発費の総額は、147百万円であります。

 

第8期中間連結会計期間(自 2024年4月1日 至 2024年9月30日)

 当社グループの研究開発活動は、主に製造セグメントにおいて製造会社を中心としてハードディスクドライブ用フィルター部品、電設資材、電力資材などの製品開発、技術開発を進めております。当中間連結会計期間における研究開発費の総額は、72百万円であります。