第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 

文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において、当社グループが判断したものであります。

 

(1) 会社の経営の基本方針

当社グループは、「大地深く生命の根を張り大空高く自由に伸びよ」のMission(グループ社是)のもと、常に10年先の事業継続を見据えながら、様々な国・地域における取引先の変化し続けるニーズに対して、カスタマイズされたサービスや課題解決の技術を間断なく提供し続けることで、安定した財務基盤を維持し、企業価値を高める取組みを一つでも多く実現させながら、取引先とともに発展し、社会に貢献する企業を目指しております。

また、当社グループは、祖業である商社事業と商社事業を通じて生まれた製造事業で構成されており、いずれも取引先との間で事業を行っていることから、「価値をつくりお取引先様によろこんでいただく」ことをVision(経営の基本方針)とし、その実現に向け以下のとおりValue(グループ行動指針)を定め、グループ全員が共通理解に立ち、製造事業・商社事業の両輪での事業運営を行いながら、付加価値の創造に努めております。

 

Mission(グループ社是)

大地深く生命の根を張り大空高く自由に伸びよ

 

Vision

価値をつくりお取引先様によろこんでいただく

 

Value(グループ行動指針)

① 常に挑戦し価値を創造する

② お互いに尊敬と信頼の念をもつ

③ 誠実に行動し説明責任を果たす

 

(2) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

当社グループは、当社グループから取引先へお届けする製品やサービスの付加価値が、事業を継続させていただくための源泉であると考えており、営業利益及び営業利益率を事業運営上の重要な指標としております。

加えて、事業継続に必要な安定した財務基盤の維持・強化を図るべく、財務の健全性と効率性を示す自己資本比率、自己資本利益率(ROE)及び投下資本利益率(ROIC)を重要な財務指標としております。

 

(3) 中長期的な会社の経営戦略

当社グループを取り巻く市場環境の変化は更に速度を上げ、それに伴い取引先の事業方針、サプライチェーン構造等も変化し続けており、その変化に柔軟かつ迅速に対応するための構造転換をはかっていくことが求められています。加えて、大規模な自然災害リスク、特定地域での紛争リスク等、一企業、一個人ではどうすることも出来ない変化が起こっていることも事実であります。このような状況の下、当社グループでは、2025年2月に策定いたしました3ヵ年経営計画(2026年3月期~2028年3月期)において「製造1:商社2の売上構成を基本としたグループ運営」を事業展開の基本方針と定め、常に10年先の事業継続を見据え、それぞれの事業をより強くする自力の取組みに注力した事業戦略を具現化しております。

また、取引先との事業基盤を活かした次の成長の柱となる製造事業の新規組み入れに取り組んでまいります。

 

(4) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

3ヵ年経営計画(2026年3月期~2028年3月期)における基本方針に基づき、製造事業・商社事業のバランスを保ちながら、取引先に更によろこんでいただけるよう当社グループからお届けするサービスの質をより一層高め、事業継続性と企業価値向上を実現すべく、製造事業・商社事業の双方に必要なグループの共通課題を定め、取引先から求められる役割や付加価値の違いに応じた製造事業と商社事業のそれぞれの課題を設定し、その改善、解決に取り組んでまいります。

 

 

<グループ共通>

① ポートフォリオマネジメントの推進

当社グループでは、「製造1:商社2の売上構成を基本としたグループ運営」を事業展開の基本方針とし、グループ事業運営における事業ごとの役割を明確化し、収益性・成長性、資本効率を総合的に勘案して経営資源の配分を行うポートフォリオマネジメントを推進することによって、持続的な企業価値の向上に取組んでまいります。また、当社グループの強みである取引先基盤を活かし、次の成長の柱となる製造事業の新規組み入れを目指してまいります。

 

② デジタル対応・技術力の強化

当社グループでは、取引先に対して安全で安心して取引を継続していただくため、自動車工業会の定めるセキュリティガイドライン(レベル3)に則った情報セキュリティ体制を構築していくとともに、国際規格であるISO27001の取得部門拡大を通じ、情報セキュリティの継続的な強化に取組んでまいります。また、安全・安心の情報セキュリティを基盤として、各種デジタル対応を推進することで、各事業で必要な技術力の蓄積、強化につなげてまいります。

 

③ 現地化の徹底

国・地域ごとの事業環境及び取引先のニーズの変化に対し、当社子会社で定められた権限において、迅速な判断と機動的な対応を取りながら、取引先との深い信頼関係を構築する現地化の徹底を行い、当社からの適時・適切な経営資源の配分・支援をグループ横断で実行することによって、事業継続に必要な構造転換を実行してまいります。

 

<製造事業>

① 品質を根幹とした製造力の底上げ

当社の製造子会社は、それぞれニッチな事業領域で固有技術を活かした事業運営を行ってまいりました。今後の事業環境の変化に対応すべく、当社グループ独自かつ統一された生産システムを構築・運用することで、各製造子会社の品質を根幹とした自社製品に誇りが持てる製造力を底上げして、次のさらなる成長を実現できる土台をつくってまいります。

 

② 顧客対応力の向上

デジタル対応における現状把握・課題と対策効果の可視化を通じて、組織での課題解決力の向上と定着を図ることで、変化する顧客ニーズに対して、技術力の向上と知見を蓄積しながら、迅速かつ的確に対応することで、提供する付加価値を高めてまいります。

 

③ 特徴を活かした自立・持続可能な経営体制の構築

当社の製造事業の専門性を有した製造支援部門と各製造子会社が協業し、各製造子会社の現地化の徹底を図るとともに、事業領域で必要な保有技術の向上と新たな技術獲得を目指し、特徴・強みを最大限に活かした自立・持続可能な経営体制の構築につなげてまいります。

 

<商社事業>

① 取引先との密着度を高めた商品・サービスの追求

現地化の徹底を図りながら、車載関連の特定顧客へグローバルで均質なサービスを提供し続けることと、各国・地域における取引先と密着したカスタマイズされた商品・サービスを提案・提供し続けることで、取引先とのさらなる強固な信頼関係を構築し、運転資本の効率化と安定的な収益を確保してまいります。

 

② 徹底した効率化と人的リソースの配分

各種業務の自動化等のデジタル対応で徹底した効率化を行うことにより、取引先へのサービス向上に資する効果的なリソース配分を実施することで、取引先をさらに強くつなぎ、事業強化を図ってまいります。

 

③ 技術課題への対応力強化

取扱商材に精通した継続的な人材育成・確保を行うとともに、車載関連の特定顧客への取引先をつなぐ開発技術部門を設立・強化することで、新たな付加価値の創造につなげてまいります。

 

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループは、顧客、仕入先・協業先との間で事業を行っており、常に業務品質の向上に努め、当社グループから取引先に提供する付加価値を高めることで、当社グループのVisionである「価値をつくりお取引先様によろこんでいただく」を実現し、持続的かつ安定的な事業基盤を構築していくことが、当社グループのサステナビリティに関する基本方針となります。そのため、当社グループでは、当社グループのValue(グループ行動指針)である「常に挑戦し価値を創造する」「お互いに尊敬と信頼の念をもつ」「誠実に行動し説明責任をはたす」に対する重要課題(マテリアリティ)を「デジタル対応・技術力強化」「現地化の徹底」「説明責任の質の向上(ガバナンスの質の向上)」としております。「デジタル対応・技術力強化」「現地化の徹底」については、1経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (4) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題に記載の通りであり、「説明責任の質の向上(ガバナンスの質の向上)」についての主な取組みは以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)ガバナンス及びリスクマネジメント/コンプライアンス

当社グループでは、当社執行役員を中心にリスクマネジメント委員会(委員長:当社管理統括)とコンプライアンス委員会(委員長:当社法務担当)を設置し、サステナビリティを含めた会社経営全般に関する事象を広範囲に検証し、リスク管理及び法令順守体制を把握した上で、具体的な対応策を検討しております。また、これら検討内容及び対応策の中で重要なものについては、取締役会へ報告する体制となっております。

 

(2)人的資本に関する戦略

当社グループでは、「これから」の価値を創造し、事業の持続可能性を高めるために、各事業分野での十分な知識とマネジメントに精通した人材の確保・育成、優秀な人材を惹きつける労働環境及び働きやすい職場づくりに力を入れております。

多様で優秀な人材の獲得のため、採用活動を強化するとともに、入社後は存分に力を発揮できるよう、個々の実力と実績に基づいた評価や登用を行っております。また、従業員の自発的な能力開発を促進する「学び直し」に力を入れ、社員が自己実現を果たし、自己成長を遂げる環境を提供しています。従業員が会社を自己実現の場と捉え、モチベーションを高く成長し続けることが当社グループの持続的な企業価値の向上に直結すると考え、優秀な人材の確保、育成及び環境整備を進めております。

なお、本書提出日現在において、人的資本に関する指標及び目標は設定しておりません。今後、当社グループの事業特性に見合った関連指標のデータ収集と分析を進め、適切な指標及び目標を設定し、その進捗に合わせた開示項目を検討してまいります。

 

(3)知的財産への対応

当社グループでは、主に製造事業における長年培われた技術を活かした独自の製品を顧客に提供しており、今後も必要な技術を付加することで更なる付加価値の向上を目指すことに加え、「黒田グループ知的財産管理規程」を制定し、知的財産の保護について積極的に取り組んでおります。

 

3【事業等のリスク】

 

 当社グループのリスク管理体制及び財政状態、経営成績等に重要な影響を与える可能性があると考えられる主要なリスクは、以下のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであります。当該リスクが顕在化する可能性の程度や時期、当該リスクが顕在化した場合に当社グループの事業、業績及び財政状態に与える影響につきましては、合理的に予見することが困難であるため記載しておりません。

 

(1) 需要動向等に関するリスク

(顕在化の可能性:中/影響度:中/顕在化の時期:特定時期なし)

当社グループは、顧客密着型のビジネス展開を行い、生産用部品・材料のサプライヤーとして広範囲な産業に供給しており、通商政策の変更に伴う世界的な需給環境の変動や取引先の購買方針の変更等により、当社グループの取扱製品あるいは取扱商品に対して、需要が短期間に減退する可能性があります。当社グループは持続的に競争優位の確保に努めているものの、これら製品や商品の需要が急速に減少あるいは価格が下落した場合、当社グループの業績及び財政状態が悪影響を被る可能性があります。

 

(2) 自然災害及び不測の事態に関するリスク

(顕在化の可能性:中/影響度:大/顕在化の時期:特定時期なし)

当社グループが事業活動を展開する国や地域において、大規模な自然災害(地震、水害等)、感染症の流行、テロ・紛争等の予期せぬ事態が発生し、サプライチェーンの混乱や業務の停止が生じた場合、顧客へのサービス提供や製・商品出荷等の停止など、当社グループの業績及び財政状態が悪影響を被る可能性があります。

 

(3) 法令違反に関するリスク

(顕在化の可能性:中/影響度:大/顕在化の時期:特定時期なし)

当社グループは、国内外において事業を行う際にはさまざまな法令の適用を受けております。当社は、グループ会社各社における業務の適正を図るため、法令の定めに基づいて内部統制システムに関する基本方針と、それに基づく各種の会社規則を定め、法令遵守に関する教育施策の実施や公益通報窓口の設置を実施しているほか、コンプライアンスに関する委員会を開催するなどして各種法令等の遵守に努めています。

 

(4) 品質保証に関するリスク

(顕在化の可能性:中/影響度:大/顕在化の時期:特定時期なし)

当社グループでは、国際品質マネジメント規格(ISO9001、IATF16949やその他の適用規格)や顧客が求める基準に従い、品質マネジメントを行っております。しかし、当社グループが供給する製・商品について品質不良等が発生して顧客から求償を受けることがあり、仕入先に起因する要因については、仕入先に補填をしていただくように努めておりますが、顧客や仕入先との協議により当社グループが損害賠償費用を負担せざるを得なくなった場合、当社グループの業績及び財政状態が悪影響を被る可能性があります。当該リスクについては、仕入先との取引開始時に、可能な限り取引基本契約書に加え、品質保証協定書等も取り交わし、顧客及び仕入先と取り交わす図面や仕様書等を踏まえて責任範囲を明確にするように努めております。

 

(5) 情報セキュリティに関するリスク

(顕在化の可能性:中/影響度:大/顕在化の時期:特定時期なし)

当社グループは、事業活動を通じて取引先の機密情報を入手することがあります。情報セキュリティに関連する法令、規範、取引先との契約事項、規程類を遵守し、特定部門でのISMS認証基準の国際規格であるISO27001を取得しています。また、情報セキュリティ担当役員を責任者とする情報セキュリティマネジメント体制を確立しております。更に、ISO27001の取得拡大を通じ、情報セキュリティに関する規程類、情報セキュリティマネジメント体制について、継続的に見直し、改善を行う様にしておりますが、サイバー攻撃によるウイルス感染や不正アクセス等の不測の事態により、万一、当社のシステムや通信ネットワークに重大な障害が発生し、正常に利用できない場合や機密情報が外部へ漏洩した場合、当社グループの顧客へのサービス提供や製・商品出荷等の停止、業務処理の遅延などにより、信用失墜及びそれに伴う損害賠償費用が発生し、当社グループの業績及び財政状態が悪影響を被る可能性があります。

 

(6) 重大な訴訟に関するリスク

(顕在化の可能性:低/影響度:大/顕在化の時期:特定時期なし)

当社グループは、広範な事業活動を展開する中で様々な訴訟の対象となるリスクがあり、重大な訴訟が提起された場合、当社グループの業績及び財政状態が悪影響を被る可能性があります。このリスクを軽減するため、重要な契約については当社法務部門の確認を受けるほか、グループ各社の紛争にあっては当社がこれに関与して解決に当たっております。また、適宜、国内外の外部の弁護士を活用するなどして訴訟リスクの低減に努めております。

 

(7) 信用に関するリスク

(顕在化の可能性:中/影響度:小/顕在化の時期:特定時期なし)

当社グループでは、「黒田グループ与信・債権管理規程」を定めて顧客と円滑な取引を実施し、顧客ごとに与信限度額を設定して与信管理を実施するとともに、グループ各社の営業部門が主要な顧客の状況を定期的にモニタリングし、担当経理部門が顧客ごとの期日管理及び残高管理を行い、貸倒れリスクの回避を図っております。しかしながら、各国の経済環境や景気の変化、取引先固有の事情等によって債権等が回収不能になった場合、当社グループの業績及び財政状態が悪影響を被る可能性があります。

 

(8) 為替相場の変動等に関するリスク

(顕在化の可能性:高/影響度:小/顕在化の時期:特定時期なし)

当社グループの海外事業の現地通貨建て財務諸表の各項目は、円換算時の為替レート変動の影響を受けます。外国通貨建て取引については、月次単位で為替予約等によるリスク回避の措置を講じておりますが、予測を超えた為替変動が発生した場合、当社グループの業績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

 

(9) 人材の確保に関するリスク

(顕在化の可能性:中/影響度:小/顕在化の時期:特定時期なし)

当社グループでは、「これから」の価値をつくり、事業の継続性を高めるために、既存の従業員に加え、各事業分野で十分な知識とマネジメントに精通した人材の確保・育成が不可欠であると認識しております。人材の育成と実務能力の向上のため、財務会計、語学、ビジネス教養、PCスキル等、各人の興味関心や能力に合う内容が豊富なeラーニングを従業員に提供し、「学び直し」をテーマに、従業員の自発的な能力開発を企業文化として定着させることを目的に、組織あるいは従業員が選択する教育ツールの費用負担、外部研修のさらなる活用、自己研鑽への取り組みを実施しております。しかし、少子高齢化や労働人口の減少、エンジニアなどの高度なスキルを持つ人材への需要増加により、優秀な人材の確保が難しくなっております。これにより、想定どおりに人材の確保及び育成が進まない場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(10) 多額の借入れ、金利の変動及び財務制限条項への抵触に関するリスク

(顕在化の可能性:低/影響度:中/顕在化の時期:特定時期なし)

当社グループは、今後も、当社グループの事業強化に資する投資資金や事業を継続するための資金の確保を必要とする可能性があります。しかし、金融市場の環境、金利動向、資金需給の状況等の変化が、当社グループの資金調達に悪影響を及ぼす可能性があり、当社グループが必要とする資金の調達を適時かつ好条件で行うことが出来ない場合には、当社グループの事業、業績、財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

また、当社グループでは、2018年3月に黒田電気株式会社が非公開化した際のLBOローンを2024年9月にシンジケートローン契約に基づくコーポレートローンに借り換えております。借入金残高が2025年3月31日現在28,402百万円あり、IFRSに基づく総資産額に占める有利子負債比率は29.7%となっております。

今後の金融市場等の動向により、金利が上昇局面となった場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。当該シンジケートローン契約には、財務制限条項が課せられており、当該条項違反が発生した場合は、貸付人の同意により、期限の利益を喪失する可能性があります。また、直ちに借入金を返済しなければならない等、当社財政状態及び資金繰りに影響を及ぼす可能性があります。なお、契約の内容につきましては、「第2 事業の状況 5.重要な契約等」に記載のとおりであります。

 

(11) 減損に関するリスク

(顕在化の可能性:中/影響度:大/顕在化の時期:特定時期なし)

当社グループは、本書提出日現在、MBKパートナーズグループがKMホールディングス株式会社を通じて黒田電気株式会社の株式を取得することを目的として2017年12月15日まで実施された公開買付け及び黒田電気株式会社により2017年12月25日から2018年1月26日まで実施された自己株式公開買付けにより生じたのれん19,024百万円を連結財政状態計算書に計上しているほか、その他の有形・無形の固定資産を有しております。今後、これらの固定資産に係る事業の収益性が低下する場合、当該固定資産の帳簿価額と回収可能価額の差を損失とする減損処理により、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。なお、当社グループが認識している主なのれんは、内部報告目的で管理されている事業単位である「製造事業」「商社事業」を資金生成単位として配分されており、減損の兆候の有無に関わらず、年に1度減損テストを実施し、回収可能価額が帳簿価額を上回っていることを確認しております。当社グループにて実施しているのれんの減損テストについては後記「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 連結財務諸表注記 14.のれん及び無形資産 (2)のれんの減損テスト」をご参照ください。

 

(12) 配当政策について

(顕在化の可能性:中/影響度:中/顕在化の時期:特定時期なし)

当社グループは、株主への利益還元を経営上の重要な課題として認識しており、事業を継続・発展させていただくことが、長期にわたる株主への利益還元に繋がると考えております。事業の成長による中長期的な株式価値の向上とともに、業績推移や財政状態等を勘案しながら配当を継続的に実施していく方針でありますが、通期業績、財政状態及びその他の状況によっては、配当政策に影響を及ぼす可能性があります。

 

(13) 大株主がファンドであること等について

(顕在化の可能性:低/影響度:大/顕在化の時期:特定時期なし)

本書提出日現在において、ケイエム・ツー・エルピー(MBKパートナーズグループが運営するファンドであり、「当該ファンド」という。) は、当社の発行済株式数(自己株式を含む44,683,980株)の63.7%を所有しております。また、当社取締役である金子哲也及び太田光俊は、MBKパートナーズ株式会社から派遣されており、当社取締役会において、事業セグメントの業績管理の精緻化、投資案件の検討、既存投資案件のリターンの検証等で当社グループ企業価値向上のための建設的な意見・助言を行っております。

当該ファンドの保有・処分方針によって、当社株式の流動性及び価格形成等に影響を及ぼす可能性があります。当社は、当該リスクを軽減するため、当該ファンドとの取引等について、取引の合理性及び取引条件の妥当性を確認し、取締役会の承認を得ることとしております。

 

(14) 海外販売に関するリスク

(顕在化の可能性:低/影響度:小/顕在化の時期:特定時期なし)

当社グループの売上高の約37%はタイ及びインドネシア等のアセアン地区と中国に所在する会社の海外販売であります。各国の政治・経済状況等を常にモニタリングし、迅速に対応できる体制を整えておりますが、政治の不安定化によりビジネス環境が変わり、法律や税制の変更によってコストが増加したり、各国の政策変更によって競争環境が変わったりすることが考えられます。また、経済状況の急変や自然災害、戦争やテロの社会的な混乱は、当社グループの業績及び財政状態が悪影響を被る可能性があります。

 

(15) 在庫の評価損や廃棄損に関するリスク

(顕在化の可能性:中/影響度:中/顕在化の時期:特定時期なし)

当社グループでは、商社事業の重要な機能として顧客への継続的な安定供給を目的とした一定水準の在庫を保有しております。顧客の生産計画の変更、所要見込みの減少により、滞留在庫又は過剰在庫となり、棚卸資産の廃棄損や評価損を計上する場合には、当社グループの業績及び財政状態が悪影響を被る可能性があります。

適正在庫水準は顧客要求や商品によって異なりますが、このようなリスクに対して当社グループでは、日々顧客から発行される変動指示数について増減を確認し、変更があった場合には仕入先との調整を行うことで適切な在庫水準を保っております。また、滞留在庫の管理や定期的な在庫会議を通じて、顧客との協議を行い、過剰な在庫や不要な在庫を防止する対策に取り組んでおります。

 

(16) 投資有価証券の評価損に関するリスク

(顕在化の可能性:中/影響度:小/顕在化の時期:特定時期なし)

当社グループは、上場及び非上場の株式等の投資有価証券を保有しております。市場経済の動向や投資先の財政状態等により、株価及び評価額に著しい変動が生じる場合には、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。対応策として発行体の財務内容を定期的に確認するための定量的な評価基準を設けております。

 

(17) 仕入先に関するリスク

(顕在化の可能性:低/影響度:小/顕在化の時期:特定時期なし)

当社グループの商社事業において、仕入先の事業戦略や市場戦略等により取引の商流が変更される可能性があります。現在の主要仕入先との取引は代理店契約のみによる取引ではないものの、主要仕入先との取引が変更となった場合には、当社グループの業績及び財政状態が悪影響を被る可能性があります。当社グループの商社事業では、顧客の課題を読み取り、各仕入先の製品の最適な販売提案による拡販とともに信頼と企業価値の向上に取り組んでおります。

 

(18) 新株予約権の行使による株式価値の希薄化リスク

(顕在化の可能性:低/影響度:小/顕在化の時期:特定時期なし)

当社グループは、当社及びグループ会社の役員に対するインセンティブを目的として、新株予約権を付与しております。本書提出日現在、これらの新株予約権による潜在株式数は1,273,500株であり、発行済株式数の約2.9%に相当しております。これらの新株予約権の行使が行われた場合、発行済株式数が増加し、1株当たりの株式価値が希薄化する可能性があり、この株式価値の希薄化が株価形成に影響を及ぼす可能性があります。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

 

(1)経営成績等の状況の概要

当社グループ(当社、連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は以下のとおりであります。

 

① 財政状態の状況

 当連結会計年度末における資産合計は957億82百万円となり、前連結会計年度末に比べ25億34百万円の減少となりました。運転資本効率化の取り組みが功を奏し、営業債権及びその他の債権、棚卸資産が42億65百万円減少したことが主な要因です。

 当連結会計年度末の負債合計は、前連結会計年度末から68億78百万円減少し、561億74百万円となりました。

主な要因としては、借入金29億13百万円の減少、営業債務及びその他の債務41億95百万円の減少等です。

 当連結会計年度末の資本合計は396億8百万円となり、前連結会計年度末に比べ43億44百万円の増加となりました。親会社の所有者に帰属する当期利益等による利益剰余金43億31百万円の増加が主な要因です。以上の結果、資産合計の減少に対して資本合計は増加しており、当連結会計年度末の自己資本比率は前連結会計年度末から5.4ポイント増加し、40.1%となりました。

 

② 経営成績の状況

当連結会計年度における世界経済は、欧米における金融政策や地政学リスクはあるものの緩やかに持ち直しております。しかしながら、米国の通商政策における各国・地域ごとの景気変動及びサプライチェーンの変化に注視していく必要があります。

このような経営環境の中で、当社グループでは、常に10年先を見据え、経営における基本方針である「やるべきことを“さらに”しぼりこみ、価値をあげる」の下、当社グループから取引先へお届けする製商品やサービスの付加価値が事業を継続させていただく源泉であると考え、各国・地域における取引先ニーズに迅速に対応するための事業基盤構築に向けた取組みを推進しております。加えて、取引先へ安全・安心を提供するITセキュリティ体制の担保を継続し、製造DX等のデジタル戦略、各事業の既存保有技術を活かし、更なる価値の創造に必要な技術を開発するための技術戦略にも取組んでまいりました。

また、各国・地域における事業環境の変化に対して、より柔軟かつ機動的に対応し、当社グループの持続的な成長、企業価値の向上に繋げていくため、新たな3ヵ年経営計画(2026年3月期~2028年3月期)を策定し、様々な経営課題に対する取組みを開始しております。

これらの取組みの結果、当連結会計年度における当社グループの業績は、売上収益は1,213億27百万円(前年同期比4.2%減)、営業利益は59億28百万円(前年同期比199.2%増)、親会社の所有者に帰属する当期利益は39億14百万円(前年同期比935.6%増)となりました。

なお、前連結会計年度では、当社製造子会社の事業譲渡に伴う損失18億39百万円と固定資産、のれん等に係る減損損失21億96百万円を計上しております。このため、当連結会計年度の営業利益は前連結会計年度比で増加しております。

 

③ キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べ3億32百万円増加し、当連結会計年度末には154億76百万円となりました。

 

当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況は以下のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動の結果得られた資金は69億88百万円(前年同期は104億23百万円の資金の獲得)となりました。主な増加要因は、税引前利益55億44百万円、減価償却費及び償却費24億38百万円です。主な減少要因は、法人所得税の支払額7億31百万円です。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動の結果支出した資金は34億80百万円(前年同期は1億43百万円の支出)となり、主な要因は、有形固定資産の取得による支出35億4百万円です。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動の結果支出した資金は30億22百万円(前年同期は58億71百万円の支出)となり、主な増加要因は、借入金の借換え等により生じた短期借入金の純増減額50億円、長期借入による収入250億円です。主な減少要因は、長期借入金の返済による支出325億1百万円です。

 

④ 生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、以下のとおりであります。

セグメントの名称

金額(百万円)

増減率(%)

製造

29,015

2.3

商社

合計

29,015

2.3

(注)1.セグメント間取引については、相殺消去しております。

2.金額は、販売価格によっております。

 

b.受注実績

当連結会計年度の受注実績をセグメントごとに示すと、以下のとおりであります。

セグメントの名称

受注高(百万円)

増減率(%)

受注残高(百万円)

増減率(%)

製造

29,077

8.0

2,566

9.8

商社

合計

29,077

8.0

2,566

9.8

(注)セグメント間取引については、相殺消去しております。

 

c.販売実績

当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、以下のとおりであります。

セグメントの名称

金額(百万円)

増減率(%)

製造

28,713

△3.5

商社

92,614

△4.5

合計

121,327

△4.2

(注)1.セグメント間取引については、相殺消去しております。

2.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は以下のとおりであります。

 

相手先

前連結会計年度

(自2023年4月1日

至2024年3月31日)

当連結会計年度

(自2024年4月1日

至2025年3月31日)

金額(百万円)

割合(%)

金額(百万円)

割合(%)

デンソーグループ

44,762

35.33

47,965

39.53

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は以下のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものであります。

 

a.重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則」(以下「連結財務諸表規則」という。)第312条の規定によりIFRSに準拠して作成しております。この連結財務諸表の作成に当たって、必要と思われる見積りは、合理的な基準に基づいて実施しております。

また、連結財務諸表の作成にあたっては、過去の実績や取引状況を勘案し、合理的と判断される前提に基づき見積り及び予測を行っておりますが、前提条件やその後の環境等に変化がある場合など不確実性が存在するため、実際の結果がこれらの見積りや予測と異なる場合があります。

なお、当社グループの連結財務諸表で採用する重要性がある会計方針及び見積りは、「第5 経理の状況 1.連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 3.重要性がある会計方針」及び「第5 経理の状況 1.連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 4.重要な会計上の見積り及び見積りを伴う判断」に記載しております。

 

b.経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

財政状態及び経営成績の状況につきましては、「(1) 経営成績等の状況の概要」に記載のとおりであります。

 

当社グループは、セグメントを製造事業と商社事業に大別し、当社グループから取引先へお届けする製品やサービスの付加価値が、事業を継続させていただくための源泉であると考え、営業利益及び営業利益率を重要な指標として事業運営を行っており、セグメント別の業績は以下のとおりであります。

 

<製造>

生産財(顧客の生産工程に資する製品・サービスを提供):

液晶生産財事業においては、主に中国でのシェアアップの取組みが奏功し、中国の液晶メーカーへの液晶用配向膜印刷版の売上が増加いたしました。自動化設備では、液晶用配向膜印刷版製造装置の内製化に取組んでいる一方で、主要事業領域のハードディスク・ドライブの市況が回復しているものの、主要顧客における増産等の設備投資までには至らず、自動化設備の売上が大幅に減少いたしました。

回路設計・受託開発事業においては、自動車関連の回路設計の売上が増加いたしました。

自動車用樹脂成型金型事業では、主要顧客での開発延期等の理由から金型の売上が大幅に減少いたしました。

直材(顧客の生産に必要な部品・サービスを提供):

ハードディスク・ドライブ部品事業においては、生成AIの普及に伴うデータセンター用ニアラインモデルの生産台数増加を背景に、フィルター製品の一部顧客への供給終息はあるものの、シール・ラベル等を中心とした各種部品の売上が大幅に増加いたしました。

電設資材事業においては、現場施工の人員不足が顕在化しておりますが、電設業界の需要は底堅く、新製品含めた各種資材の売上は微増となりました。

アルミダイカスト事業では、産業モーターをはじめとするアルミダイカスト製品の売上が大幅に増加いたしました。

 

この結果、製造事業の売上収益は304億33百万円(前年同期比2.8%減)、営業利益は40億85百万円(前年同期比200%増)、営業利益率13.4%(前年同期9.1ポイント増)となりました。

 

<商社>

車載(特定の顧客へグローバルにサービスを提供):

日系自動車メーカーでの品質不正問題やリコールによる生産・出荷停止や中国の市場での苦戦等の影響があるものの、プリント基板を含む電子部品において、売上が好調に推移いたしました。

地域(各国・地域の顧客へカスタマイズしたサービスを提供)

中国の景気減速に伴う中国内での各種部材の大幅な売上の減少に加え、国内におけるアミューズメント・FA(ファクトリーオートメーション)機器用の中小型液晶の生産減、FA機器関連部材の在庫調整の長期化等で各種部材の売上が減少いたしました。一方で、EV・医療・デジタルカメラ関連の高付加価値部材の売上が大幅に増加いたしました。

 

この結果、商社事業の売上収益は929億13百万円(前年同期比4.5%減)、営業利益は32億74百万円(前年同期比38.8%増)、営業利益率3.5%(前年同期1.1ポイント増)となりました。

 

上記各セグメントの営業損益のほかに、各セグメントに帰属しない全社費用等14億31百万円があります。

 

c.キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

(キャッシュ・フローの状況の分析・検討)

キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要」に記載のとおりであります。

 

(資本の財源及び資金の流動性に係る情報)

当社グループの主な資金需要は、投資及び運転資本の調達を目的としております。これらの資金需要につきましては、原則として「営業活動によるキャッシュ・フロー」により獲得した資金で賄い、既存取引拡大と恒常的な設備資金については、一定の財務基盤を維持しながら、銀行借入による資金調達を活用することも考えております。なお、新規事業のための投資については、自己資金で行うことを基本といたします。又、資金繰りについて万が一悪化したときは電子債権の現金化やコミットメントライン契約に基づく借入枠の使用により対応できると考えております。

当社グループは、取引先へお届けする製品やサービスの付加価値を高めていくことが事業を継続させていただくための源泉であると考えており、事業継続に必要な安定した財務基盤の維持・強化を図るべく、財務の健全性と効率性を示す自己資本比率、自己資本利益率(ROE)及び投下資本利益率(ROIC)を重要な財務指標とし事業運営に取り組んでまいります。

 

 

5【重要な契約等】

(株式会社三井住友銀行及び株式会社三菱UFJ銀行と締結しているシンジケートローン契約)

 当社は2024年9月25日付で株式会社三井住友銀行をエージェントとする金銭消費貸借契約書を締結しております。

 主な契約内容は、以下のとおりであります。

 

イ.契約の相手先

  株式会社三井住友銀行及び株式会社三菱UFJ銀行

 

ロ.借入金額

  トランシェA(タームローン)     借入金額    10,500百万円

  トランシェB(タームローン)     借入金額    14,500百万円

  トランシェC(コミットメントライン) 借入金額     5,000百万円

 

コミットメントライン極度額      10,000百万円

コミット期間満了日:2027年9月30日

 

ハ.返済期限

  トランシェA:2029年9月28日を最終回とする分割返済

  トランシェB:2027年9月30日を満期日とする一括返済

  トランシェC:極度額を上限とするそれぞれの個別借入の満期日に一括返済、但し、満期日はコミット満了日を超えない

 

ニ.利率

  日本円TIBOR+スプレッド

  スプレッドは、シンジケートローン契約において予め定められた料率

 

ホ.主な借入人の義務

財務制限条項の遵守

 当社は、取引銀行2行とシンジケートローン契約を締結しております。この契約には、主に下記内容の財務制限条項が付されております。(借入残高 当連結会計年度(2025年3月31日):28,402百万円)

 

(a)2025年3月期末日及びそれ以降の各事業年度末日における連結財政状態計算書に記載される資本の部の合計金額を、直近の事業年度末日における連結財政状態計算書に記載される資本の部の合計金額の75%に相当する金額以上に維持すること。

(b)2025年3月期末日及びそれ以降の各事業年度末日における連結損益計算書に記載される当期損益を2期連続して損失としないこと。

 

 

 

6【研究開発活動】

 当社グループの研究開発活動は、主に製造セグメントにおいて製造会社を中心としてハードディスクドライブ用フィルター部品、電設資材、電力資材などの製品開発、技術開発を進めております。当連結会計年度における研究開発費の総額は、122百万円であります。