第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) 経営方針

当社グループは、「デジタル社会のインフラとして高精度位置情報基盤をグローバルに構築し、自動運転をはじめとする新しい未来を拓く」をパーパスとして掲げ、自動車関連及びスマートシティ(注)等、様々な用途に向けた高精度3次元データの構築・提供を行っております。

(注)都市の抱える諸課題に対して、ICT等の新技術を活用しつつ、マネジメント(計画、整備、管理・運営等)が行われ、全体最適化が図られる持続可能な都市または地区

 

(2) 経営環境

国土交通省「令和6年版交通安全白書」によると、我が国においては、交通事故発生件数は2004年を境に減少しているものの、2023年における交通事故死亡者数は2,678人となっております。また、世界全体では2021年における交通事故死亡者数が約119万人(World Health Organization「Global Status Report on Road Safety 2023」、2023年12月発行)になるなど、引き続き交通事故死亡者数の減少に向けた取り組みが必要な状況が続いております。こうした中、交通事故の発生減少に大きく貢献する可能性のある手段として自動運転技術の開発が推進されてきました。

また、我が国の地域社会においては、人口減少を背景とした利用者減等により公共交通手段の維持に課題が生じており、地域社会における移動手段の再構築が喫緊の課題となっております。

当社グループでは、こうした環境において、HDマップの整備・提供を通じて、自動運転や先進運転支援システムへの搭載は勿論、地域社会課題解決のためのMaaS展開へと広がると想定しています。さらには、防災・減災システム、インフラ維持管理システム等、自動走行以外での用途を拡大し、多様化するニーズに応えることによって安心・安全で快適な社会の実現に貢献する所存です。

 

<市場規模・市場動向>

IHS Markitの予測によると、2030年には全世界で新規に販売される車両の約28%にレベル2+以上の自動運転及び先進運転支援システムが搭載される見通しです(「IHS Markit “Autonomous Vehicle Sales Forecast 2023”」を基に当社作成)。また、Markets and Marketsの試算によると、2023年における自動車分野を除くデジタルマップ市場規模はグローバルで3.4兆円とされております(「Markets and Markets “Digital Map Market Global Forecast to 2029”」を基に当社作成)。Markets and Marketsでは、デジタルマップを「衛星画像や航空写真、GIS(注1)、クラウドソーシングデータ(注2)等のさまざまなデータソースとテクノロジーを活用して、道路やランドマーク、地形、交通ネットワーク、PoI(注3)等の空間情報を提供するもの」としており、当社のHDマップをはじめとした高精度3次元データを活用した事業をカバーしております。本資料では、当社の2つの事業領域(オートモーティブビジネスと3Dデータビジネス)についてマーケット情報を示しておりますが、図表の左側ではオートモーティブについて示しており、右側では3Dデータビジネスについてのみを示すことを目的としております。このためTAM(Total Addressable Market:獲得出来る可能性のある最大の市場規模)は、オートモーティブ向けのデジタルマップ市場を除外しております。

一方、SAM(Serviceable Available Market:実際にアプローチ出来る市場規模)については、当社事業とより近接した事業領域にあるものを抽出するため、地域と用途を絞り込んでいます。地域につきましては、現在の当社グループのデータカバレッジ地域と重なる北米・アジア・パシフィック市場としています。用途につきましては、インフラ、輸送、政府・防衛の3つの分野に限定しています。それぞれの代表的な内容としては、インフラ分野はインフラメンテナンス、輸送分野は各種情報に基づいたルート計画や交通計画・モデリング、政府・防衛分野は空間情報の提供による戦略的な計画や意思決定の支援が挙げられており、現在当社が3Dデータビジネスで取り組んでいる事業と重なるものです。なお、これらの記述は、本書に引用されている外部の情報源から得られた統計その他の情報に基づいており、それらの情報については当社グループは独自の検証を行っておらず、その正確性または完全性を保証することはできません。

 


 

当社グループは、2025年1月末現在、日本・北米・欧州・韓国・中東26か国において150万Km超にもわたるHDマップのデータカバレッジを広範に拡張し、世界で初めてレベル2+以上の自動運転/先進運転支援システムが搭載されたGeneral Motors CompanyのCT6への搭載以降、現在は35車種(販売予定が公表されている車種数を含む) の量産車へのHDマップ搭載を実現している等、オートモーティブビジネス向けのHDマップ市場において高い競争優位性を確保していると考えております。またオートモーティブ以外の3Dデータビジネスは、社会・産業のDX化のニーズの高まりを背景として、全世界で3.4兆円、現在の当社グループのデータカバレッジ地域と重なる北米・アジア・パシフィック市場において、当社が具体的に事業拡大を進めているインフラ、輸送、政府・防衛の3つの分野に限定しても1.6兆円と広大なマーケットが存在しています。当社がオートモーティブビジネスを中心としてこれまでに蓄積してきた高精度3次元データに関する深い知見と豊富なデータカバレッジ、データ精度の高さといった強みを活かして、顧客・協業先との関係性をより一層強固にすることで、広大な市場の獲得を目指していきます。今後、市場が拡大した後も当社グループの競争優位性を維持・強化すべく、顧客との関係の維持・強化、潜在顧客との取引の実現、高精度3次元データの用途拡大、技術的優位性の一層の強化の可能性の模索等、不断の努力を行ってまいります

 

(注1)Geographic Information System(地理情報システム)の略で、地理的位置に基づいた情報を管理・解析し、視覚的に表示する技術。地理的なデータを総合的に扱い、高度な分析や迅速な判断が可能になる

(注2)一般のユーザーが提供する地理情報を基に作成・更新される地図データのことで、リアルタイムで最新の情報を反映することが可能。具体的には、道路の変更、施設の情報(店舗の開店・閉店等)、渋滞・事故情報等が含まれる

(注3)Point of Interestの略で、地図やナビゲーションシステムで特定の地点を示すために使用される情報。具体的には、レストラン、ガソリンスタンド、観光名所、病院などユーザーが関心を持つ場所を指す

 

(3) 目標とする客観的な指標等

当社グループは、(1)経営方針に記載のとおり、「デジタル社会のインフラとして高精度位置情報基盤をグローバルに構築し、自動運転をはじめとする新しい未来を拓く」をパーパスとして掲げており、その実現のためには、中長期的な売上収益の成長、収益性の向上、また、事業活動を支えるキャッシュ・フローの創出が重要と考えております。当社グループは、成長性、収益性及びキャッシュ・フローの状況を把握するために、売上高、ライセンス型売上高、調整後EBITDAを重要な経営指標と位置付けております。

 

① 売上収益の中長期的な成長

当社グループでは、将来の黒字化に向け、売上収益の中長期的な成長を重視しております。2019年3月期から2024年3月期までの当社グループ全体での売上高年平均成長率は50%を実現しております。当社グループは、今後中期的にも同様の高成長性を維持することを目指して取り組んでまいりますが、そのためには自動車メーカーを中心とした顧客からの継続的な受注が重要と考えております。

 

   売上高(連結)の推移

                                                              (単位:百万円)

 

2023年3月期

2024年3月期

売上高

3,681

5,567

 国内

1,343

1,654

 海外

2,338

3,913

 

 

② ライセンス型売上の成長

当社グループでは、収益モデルの違いから、売上高をプロジェクト型とライセンス型に大別でき、将来の黒字化、一層の利益成長に向けて、整備済みのデータやシステム等を活用したライセンス型売上の成長が重要な課題と認識しております。

プロジェクト型売上には、主にHDマップデータ整備等による事業基盤の構築や官公庁向けプロジェクトを通した研究開発投資見合いの性質があり、オートモーティブビジネスにおけるHDマップ新規整備に係る開発プロジェクト及び固定価格でのHDマップ更新整備に係るメンテナンスフィー、3Dデータビジネスにおける官公庁からの開発プロジェクトが含まれます。

ライセンス型売上には、主に整備済みのデータやシステムをベースに、車載用や多用途向けに商品を提供するものが含まれます。オートモーティブビジネスにおける量販車へのHDマップ搭載に際し、販売台数に応じて受領するライセンスフィー(HDマップ搭載車の販売時に売上計上)及びメンテナンスフィー(HDマップ搭載の期間に応じて売上計上)、法人向けHDマップライセンス等(整備済み地図データ提供によるライセンスフィー、HDマップの利用対価として自動車メーカーより収受する開発利用料等)が含まれます。また、3DデータビジネスにおけるViewerやGuidance商品を通じたライセンスフィー、法人向けデータライセンス(整備済み地図データ提供によるライセンスフィー等)が含まれます。ライセンス型売上に係る売上原価は固定的なものが中心であり、限界利益率が高い性質を有しているため、今後、より高い粗利率が期待できるライセンス型売上の比率を高め、当社グループ全体の粗利率の向上を目指します。

売上カテゴリー別のビジネスの概要及び収益モデルについては、「第1 企業の概況 3 事業の内容(売上カテゴリー別のビジネスの概要及び収益モデル)」をご参照下さい。

 


 


 

 

売上高(プロジェクト型、ライセンス型)の推移       

                                      (単位:百万円)

 

2023年3月期

2024年3月期

売上高

3,681

5,567

 プロジェクト型

3,026

4,572

 ライセンス型

654

994

 

 

 

③ 調整後EBITDAの向上

当社グループは、持続的な成長と高い収益性の実現を目指す観点から、また事業活動を支えるキャッシュ・フローの状況を把握するため、調整後EBITDA(注)を重要な経営指標と位置付けております。

 

調整後EBITDAの推移
                                                                (単位:百万円)

 

2023年3月期

2024年3月期

調整後EBITDA

△3,597

△2,203

 

(注)調整後EBITDA

EBITDA(営業利益+減価償却費)に営業外収益に計上される政府補助金を加えたものです。

 

(4) 当社グループの強み

①  厳しい精度要求に応え得る高水準の正確性を有する技術力

自動運転や先進運転支援システムへ搭載されるHDマップにおいては、走行ルートから逸脱しないよう、自己位置推定機能において従来のナビゲーション地図(メートル級の精度)より厳しい精度水準が求められております。

当社グループは、高精度3次元データの測定技術にRTK(Real Time Kinematic)(注1)を採用するとともに、衛星測位、計測、図化、統合の各プロセスにおいて高い技術力を結集することにより、1桁のセンチメートル精度を実現しております。高水準の精度で3次元点群データを取得する測位・計測技術により、自動運転及び先進運転支援システムに用いられるHDマップの提供を可能としており、また、多様な顧客要求に応じたデータ形式・仕様での提供を可能にする図化・統合技術により、大手自動車メーカー各社の優位性ある自動運転及び先進運転支援システムの提供に寄与しております。

また、高精度3次元データは社会DXサービスの提供に必要な高精度の位置情報データ基盤としてデジタル社会のインフラとしての役割を担います。国内外の大手自動車メーカー各社による採用実績から、当社グループの有する技術は社会DXサービスを実現する様々な用途展開を可能にする汎用性を有していると考えております。

 


 

(注1) 「相対測位」と呼ばれる測定方法のひとつ。固定局と移動局の2つの受信機で4つ以上の衛星から信号を受信する技術で、2つの受信機の間で情報をやりとりしてズレを補正することで、単独測位よりも精度の高い位置情報を得ることが可能

 

②  国内外を網羅する広域なカバレッジ範囲

当社グループは設立以来、自動運転の本格到来を前に必要となるデータを構築すべく、国内外においてHDマップのカバレッジ範囲を急速に拡大させてまいりました。2025年1月末時点において、日本国内において高速道路・自動車専用道路:33,000km、北米において高速道路・幹線道路:1,200,000km、欧州において高速道路・幹線道路:255,000km、韓国において高速道路:20,000km、自動車メーカーの求めるカバレッジ範囲のHDマップの整備を完了させており、顧客ニーズを充足しています。また2025年度中には、北米における更なるカバレッジの拡充・中東への展開を予定しております。今後の新規データ整備によるカバレッジ範囲の拡大は、顧客と綿密なコミュニケーションを行い、顧客ニーズや事業性を考慮した上で取り組み、競合他社に対する先行優位性をより強固なものとする方針です。

オートモーティブビジネスに加えて、当社グループが各国で保有する広範な高精度3次元データを活用し、3Dデータビジネス(自動運転及び先進運転支援システム用途以外でのソリューション提供)の拡大にも取り組んでまいります。


(注)2025年1月末現在

 

③  今後のパイプラインを生み出す顧客基盤
a 国内外の有力自動車メーカーとの緊密な関係性

日本国内のHDマップの生成は、日系自動車メーカー10社の要求に基づき共通の仕様が定義されています。こうした背景から、当社はHDマップ作成を一元化する目的で、上記日系自動車メーカー10社からの共同出資を受けた上で設立され、HDマップの整備に取り組んでまいりました。

また、連結子会社であるDynamic Map Platform North America, Inc.(旧 Ushr Inc.)も、当社買収前においてGM Venturesを通じて開発資金が提供され、技術者同士が協力するなど、General Motors Companyとの緊密なパートナーシップを構築してきました。General Motors Companyは北米高速道路におけるハンズフリー運転を可能とすべく2014年に開発を開始した同社のSuper Cruise™において、2013年にDynamic Map Platform North America, Inc.をパートナーとして選定した結果、Dynamic Map Platform North America, Inc.のHDマップは、Super Cruise™の開発とその市場投入に際して、重要な役割を果たしております。

こうした背景から、当社グループは上記に挙げた国内外の有力自動車メーカーとの緊密な関係性を既に有しており、各社への販路を構築できております。また、当該自動車メーカー以外においても、北米・欧州メーカーなど商談を開始している先が複数存在します。

上述のとおり既に販売中の量産車に当社グループのHDマップが複数搭載されていることに加えて、今後の利用を目的とした開発利用契約(注2)を複数社と締結している他、将来販売予定車種への搭載に向けて広範な商談が進んでいる取引先も複数存在し、当社グループのHDマップ搭載台数の一層の拡大を見込んでおります。

 

(注2) HDマップ開発に係る費用を当社グループ開発のHDマップの利用そのものへの対価として自動車メーカーより収受する契約

 

b 政府・自治体・企業等との緊密な連携

当社は、内閣府が所管する戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)において、HDマップの開発・作成を一元化する目的で設立され、官民一体となりHDマップの整備に取り組んできた経緯があり、政府・自治体・企業等と緊密に連携し事業を行っております。HDマップを活用した自動運転及び先進運転支援システム以外のソリューション提供、高精度3次元データの多用途展開を進める3Dデータビジネスでは、産業のデジタル化、脱炭素、高齢化社会・過疎化への対応等、各種社会課題解決に資する政府研究開発プロジェクトに継続的に参画している他、社会実装に向けた各種実証実験、商品開発に自治体や企業等と共同で取り組んでいます。これら政府・自治体・企業等の緊密な連携・関係性を活かして、研究開発・商品開発を進め、社会課題の解決を通じて新たな市場を創造し、一層の事業拡大に取り組んでまいります。

 

以下は、当社グループで契約済の案件、見積り依頼を受領している案件、商談中の案件のパイプラインの状況を示したものです。自動車メーカーは複数年にわたって新車開発を進める関係上、当社グループへの発注も新車販売タイミングより、相当の期間先んじて行われる傾向にあり、段階的な見積依頼(RFI: Request for Information(「情報提供依頼書」を指し、新しい製品・サービスを導入する前に、ベンダーから当該製品・サービスに関する基本的な情報を収集するための文書です)、RFQ: Request for Quotation(「見積依頼書」を指し、具体的な製品・サービスの購入を検討するに、ベンダーから正式な見積りを依頼するための文書です))及び発注書(PO: Purchase Order)の受領は、当社グループの将来収益の実現性を図る上で重要な要素となっております。当社グループでは、自動車メーカーの業界慣行に照らし、顧客との緊密な交渉を経ている等の一定の案件については、必ずしも法的拘束力のある契約書の締結には至ってはいないとしても、オートモーティブビジネス売上高に係る目標を議論するに際して将来売上高として考慮しております。3Dデータビジネスにおいては、政府プロジェクトの受注実績やViewerやGuidance商品の契約実績等の指標に着目し、契約書の締結に至ってない案件についても商談の状況を踏まえて、見込み案件毎に売上高を設定し、売上高に係わる目標を議論するに際して考慮しております。ステータスがRFQ、RFI、商談中の案件パイプラインについては、当社グループが受注に至っていないものであり、当社グループが想定する時期及び取引条件通りに受注・契約に至る保証はありません。

 

 

(オートモーティブビジネス)
プロジェクト型

 


(注)1.これらのパイプラインはあくまで契約に基づいて想定される収益見込み金額であり、記載の図の通りに推移しない可能性がある。

2.為替レートはFY22は131.43円/ドル、FY23は140.56円/ドル、FY24以降は150円/ドルで計算

 

ライセンス型

 


(注)1.当社にて契約締結間近と見込んでいるものの、契約が将来締結される保証はありません。また、仮に契約締結に至る場合でも、現時点で想定しているものと大きく異なる条件での契約締結となったり、将来的に契約が変更または解除される可能性があります。

2.これらのパイプラインはあくまで契約に基づいて想定される収益見込み金額であり、記載の図の通りに推移しない可能性がある。

3.契約済みかつ金額非開示のものについては、顧客との取り決めにより開示を差し控える。総額はFY24以降における開示金額の合計を記載

4.為替レートはFY22は131.43円/ドル、FY23は140.56円/ドル、FY24以降は150円/ドルで計算

 

 

(3Dデータビジネス)

プロジェクト型

(注)1.これらのパイプラインはあくまで契約に基づいて想定される収益見込み金額であり、記載の図の通りに推移しない可能性がある。

 

ライセンス型

(注)1.これらのパイプラインはあくまで現状の想定であり、記載の図の通りに推移しない可能性がある。

 

(5) 中長期的な経営戦略

①  搭載拡大に向けた幅広いステークホルダーとの連携

自動運転・先進運転支援システム市場の立ち上がりに合わせて、近年、搭載車種が高級車種から、普及車種に広がり、その搭載台数が拡大しています。既に北米においては普及車種にも広く搭載が進んでおり、他地域においても同様の進展が期待されます。また、生成AIの利用が進むなかで当社データを活用することで自動運転技術の安全性・快適性が向上することが期待されます。当社は、従来の自動車会社との連携に加えてTier1自動車部品メーカー(注3)・地図会社・半導体メーカー・AI企業等のステークホルダーとの連携を強化することで,自動運転及び先進運転支援システム全体を俯瞰した活動を通じて、自動車会社各社の自動運転社会の実現に向けた取り組みに貢献してまいります。

 

②  顧客ニーズに基づいたグローバルなデータ提供

国内は、自動車メーカーからの需要に応じて自動車専用道路につながる基幹道路や直轄国道等への展開を図り、当社データの利用機会を段階的に拡大します。また、スマートシティプロジェクトなどへも積極的に参画し、単に整備路線の拡充を図ることに限らず、線と面の両方から整備範囲の拡張を行います。また北米では,主要幹線や都市部の利用率の高い路線・地域から順に整備を開始し、顧客の高いニーズを充足すべくエリアを拡大いたします。既に北米においては1,200,000kmの整備を完了させており現時点での顧客ニーズは充足していますが、自動運転社会の進展に伴った具体的な顧客ニーズを受けてデータ拡大を進めてまいります。

また、欧州、アジア市場においても既に自動車メーカーと当社のHDマップデータの利用に関する契約を締結しております。今後は、当社グループの日本市場・北米市場における既存の取引関係を横展開することで、当社HDマップデータのより広範な搭載を訴求し、さらなる拡大を図ってまいります。加えて、当社グループが高精度3次元データを保有する各国において、保有データを活用した3Dデータビジネスの事業化・拡大にも取り組んでまいります。

 

③  デジタル社会における共通インフラの確立

道路管理情報、工事情報等の産業データを収集し、自社の「点群データ」、「ベクトルデータ」等に紐づけして「データ連携基盤」を構築いたします。当該「データ連携基盤」を道路台帳の整備・更新、除雪支援、電線/電柱の日常点検、維持管理等、様々な用途での活用を図ってまいります。また、インフラ・物流・建設領域等におけるプラットフォーマーとのアライアンスも視野に防災・減災、社会インフラの維持管理、輸送システム、建設生産システム(i-Construction)(注5)など、幅広いデータ利用者へ展開・提供するとともに利用アプリケーションの開発にも取り組みます。「過疎地域等移動,公共交通ICT(Information and Communication Technology = 情報・通信に関する技術)化等」、「郊外、観光地等での移動」、「駅、スーパー、病院等、拠点巡回」等、自治体向けモビリティサービスを地域整備(点)からはじめ、全国整備(面)へと拡大していきます

 

④  新規事業の創出

民間企業とのパートナリングにより,「データ連携基盤」を活用した新事業の創出を図ります。データ活用技術の開発を他社とのパートナーシップも活用して推進します。

 

<業界横断的な社会へのインパクト>


 

(注)1.上記は当社グループが未進出の分野を含む、ターゲット市場のイメージを示しております

2.自動運転各レベルの内容は、「3 事業の内容 <自動車向けHDマップの特徴>③自動運転高度レベル2以上に有用な機能」に掲載する表のとおりです。

 

a あらゆる自動モビリティの制御データとしてのHDマップの提供

センチメートル級の位置精度でデータ整備を行うノウハウを活用する一方で、乗用車の先進運転支援システム向けに構築したデータ仕様を発展させることで、自動走行シャトル(注5)やドローン、AGV(Automatic Guided Vehicle)(注6)等、完全自動走行モビリティの安全な運行を可能とする高精度3次元データの提供を国の法令改定に従いながらサービス事業として推進いたします。また、静的情報だけでなく動的情報に対するニーズが益々高まる中、動的データを生成するための技術開発や既に存在する様々な情報との連携に取り組み、新たなデータ提供ビジネスの確立にも取り組んでまいります。

b 省人化・省力化に繋がるソリューションの提供

高精度な位置情報を持つ地図データは、自動モビリティの制御に役立つのみならず、人による行動や作業の効率化にも役立ち、カーボンニュートラルや高齢化社会への対応といった社会課題の解決にも寄与いたします。例えば、高さ情報や目的地の正確な座標情報を活用した無駄の少ない走行による電動車両の航続距離延伸(=CO2削減)や除雪機械の自車位置周辺の正確な地図データ配信による除雪作業の効率化、道路空間におけるインフラ管理の効率化、空港港湾等の制限区域内における位置情報の共有による安全性・効率性の向上などが用途として挙げられ、高精度位置情報を用いた様々なソリューションの提供に繋げてまいります。

c 自動車メーカー向け事業の盤石化

自動車メーカーによる先進運転支援システム開発の効率化を背景に、当社グループではHDマップデータの全世界的共通または互換性のある仕様での提供が重要になると認識しており、北米市場において量産車への搭載実績を有することを活かしつつ、欧州や中東、アジアなど他地域でのHDマップデータ整備を進めてまいりました。また、HDマップデータの整備範囲拡大・更新頻度向上に活用するために、インフラ会社等の他社が計測・提供するCrowd Sourcedデータ(注7)を当社のHDマップと連携させる研究開発を継続的に進め、事業基盤を盤石なものとしていきます。

HDマップのデータを更新するにあたっては、道路が変化したことを検知することが非常に重要となります。日本においては、国道、県道など主要な道路については道路管理者を通じて新規開通や大規模工事情報を入手することができますが、標識などの設置物、道路ペイントなどの小さな変化や一般道路の変化情報については、現地を確認する必要があります。また、国によっては大きな工事情報でさえも入手できないこともあります。当社は、自動車メーカーや車載機器メーカー等から入手した車両のプローブ情報(注8)をもとにした変化点検知を取り入れており、当該情報を活用することで、速やかに再計測し、データ更新する仕組みを取り入れており、より低コストで高鮮度の地図更新プロセスを進化させてまいります

d V2Xにおけるデジタルインフラの提供

自動運転・先進運転システムにおいてAI活用が進展することに伴い、車載センサーから得られた情報のみから判断する自律型から、より周辺情報を活用したV2X(注9)でのインフラ協調型での制御が求められます。既に海外においてはV2Xの実現に向けたデジタルインフラの検討が開始され当社グループも一部の取り組みに参画しております。当社グループは、中長期にわたりパートナーとの協力を通じて、車両・歩行者・天候・渋滞・交通規制といった動的情報を連携させる基盤を構築し自動運転社会の発展に貢献してまいります。

 

⑤  アライアンス・M&Aを活用した事業拡大

当社グループの持続的な成長のために、アライアンスやM&Aの活用による事業拡大は有効な手段であると考えております。当社は2019年に、当時General Motors Companyの投資先であった在米国HDマップ企業であるUshr Inc. (現・連結子会社Dynamic Map Platform North America, Inc.)を完全買収し、北米における事業基盤を確保すると同時に、同社が有するHDマップ生成に係わる技術・ノウハウ、優秀な技術者、現地市場における人脈を獲得しました。その後、同社を通じて、欧州・中東・韓国においても事業を展開しております。今後も事業領域の拡大や当社保有データの利用を促進するためのアプリケーション開発、データ解析、AI活用等に係る技術・ノウハウ獲得を目的としたアライアンスやM&Aの機会を検討してまいります。

 

   (注3) 自動車メーカーに直接部品を供給する部品メーカー

(注4) 国土交通省が推進する「ICTの全面的な活用(ICT土工)」等の施策を建設現場に導入することによって、建設生産システム全体の生産性向上を図る取組み

(注5) 自動運転でシャトル運行(イベントや空港・観光地など特定の目的地を利用する客を効率的に輸送するため短い間隔で運行)を行う輸送車

(注6) 産業用途で多く使用される自動運転車の一種。人間が運転操作を行わなくとも自動で走行できる搬送車

(注7)不特定多数の情報源から情報を収集し、その情報に基づき生成された地図データや位置情報

(注8)走行する車両を通じて収集される位置、時刻、路面状況等の情報

(注9)Vehicle to Everythingの略称。車両と様々な機器とを接続し、相互に連携する技術

 

(6) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

当社グループの事業上及び財務上の対処すべき課題は以下のとおりであります。

①  事業成長の実現及び収益性の向上

当社グループの事業は依然赤字状態にあり、収益性の向上に努めて黒字化を早期に実現することが特に財務上求められ、その対応が事業の持続的成長にもつながると理解しております。既存顧客との間では契約に基づく成果を生み今後も安定して継続する長期的な取引関係を築く他、車載向け事業に限らず広く潜在顧客との取引を実現し、事業・売上規模の大きな拡大を実現することを重要な課題として広範に対応を進めてまいります。

 

②  優秀な人材の採用と育成

当社グループの将来にわたる持続的成長に向けて、優秀な人材の採用と育成が欠かせないものと認識しております。特に、技術革新の激しい当社グループの事業領域においては、当社グループの競争優位性を維持・拡大することにつながる技術向上を担うエンジニアの獲得あるいは育成が不可欠であると考えております。当社グループでは、優秀な人材の獲得に向けて今後も積極的な採用活動を実施するとともに、人材の育成と維持のための社内トレーニング体制の強化や企業文化の醸成などの施策を推進してまいります。

 

③  内部統制の強化

当社グループは、デジタル社会における共通インフラとしての役割を担う企業として、ユーザーや市場からの信頼が必要不可欠であると考えております。情報管理、財務、IT、その他の社内制度などを含めた内部統制の継続的な策定、強化、改善を実施することで信頼を獲得し、企業価値のさらなる向上に取り組んでまいります。

 

④  HDマップ整備・更新プロセスの改善

地物の選定、品質基準等、既存のプロセスの見直しや、Dynamic Map Platform North America, Inc.とのより一層の技術統合を強力に推進することでプロダクト生成の低コスト化を追求し、合理的で競争力のあるプロセスを確立します。特に、計測・図化の自動化、省人力化を徹底するほか、国や地方自治体と連携しオープンデータを活用することで整備費を圧縮し、競争力の強化を図ります。

また、データ更新のコストと鮮度の維持について課題ととらえており、上記(5)中長期的な経営戦略 ④新規事業の創出 c 自動車メーカー向け事業の盤石化において記載しましたように対策を実行しております。

 

⑤  コスト低減に資する研究開発

Dynamic Map Platform North America, Inc.も含め衛星画像利用等によるモービル・マッピング・システム(MMS)以外の計測手法の開発、自動図化等のプロダクトによる生産性と効率の向上など、今後の成長に必要な技術開発力を強化します。また、更新コスト低減のキーとなる変化点抽出の効率化(自動化)については他社との提携なども含めて技術開発を進めます。

 

⑥  情報管理体制の強化

当社グループでは、自社情報の他、提供するソリューションに関連して取得される、人物の顔と表札を個人情報に該当するものとして取り扱っております。これらの個人情報を保護するため、当社では個人情報保護に係るルールの整備や施策を講じ、流出等の事態が生じないよう万全の注意を払っておりますが、今後も社内教育の充実、施策の強化・整備を実施してまいります。

 

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社のサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものです。

 

(1) サステナビリティに関する考え方

当社は、「デジタル社会のインフラとして、高精度位置情報基盤をグローバルに構築し、自動運転をはじめとする新しい未来を拓く」をパーパスとして掲げており、高精度3次元データプラットフォーマーとして様々な情報を集約して提供することで、分析・制御・予測が可能な世界を実現し、社会課題解決に資するイノベーションの実現に貢献することを基本方針としております。日本に限らずグローバルにおける様々な社会課題に対して、省人化や効率化の実現、安全性・快適性の向上といったソリューションを提供していくことは重要な課題と認識しています。これら社会課題解決への取り組みを通じて持続可能な社会の実現に貢献していくと同時に、サステナビリティを重視した経営を実践しております。

(2) ガバナンス

当社においては、サステナビリティに関する基本方針を定めておりませんが、 サステナビリティ関連のリスク及び機会を監視し、管理するためのガバナンスに関しては、コーポレート・ガバナンス体制と同様となります。当社のコーポレート・ガバナンスの状況の詳細は、「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等(1) コーポレート・ガバナンスの概要」に記載のとおりであります。

(3) 人材の育成及び社内環境整備に関する方針、戦略

当社は、社員が大切にすべきバリューとして「GIFT!」を掲げています。これを全社員が共有し、体現していくことで、社会に貢献していくことを目指しております。

「GIFT!」とは、「Global Mindset」「Innovate」「Fast Move」「Trust and Respect」「!be youthful!」の頭文字を取ったものです。当社グループにはさまざまな国籍の社員がおり、多様な国籍の企業と仕事をしている点で、「Global Mindset」の視点を持つことが欠かせません。また、さまざまな異なるバックグラウンドをもって入社してきた社員が集まっているため、互いを尊重しあう風土「Trust and Respect」が非常に重要となります。

こうした視点を持った人材の育成を目指し、グループ企業を含めた全社での「GIFT!」の浸透と体現に向けて積極的に取り組んでまいります。詳細は、弊社ウェブサイトの採用ページ(https://www.dynamic-maps.co.jp/recruit/)に掲載したトップメッセージをご参照ください。

また、当社では、社員一人ひとりの能力や個性を引き出し、最高のパフォーマンスを発揮できる制度の実現を目指しています。OKRを用いた公正・透明な評価制度や、社員の挑戦をサポートするための社内アイデアソンの実施など、モチベーションの向上に努めています。また、フレックスタイム制の実施や、フル在宅勤務制度の導入、ノー残業デーの設置など、ワークライフバランスを実現するための環境作りを推進しています。

(4) リスク管理

当社は、サステナビリティに関する基本方針を定めておりません。当社は、不測の事態または危機の発生に備え、「リスク・コンプライアンスに関する規則」を定め、リスクを網羅的に把握・管理する体制を構築しておりますが、サステナビリティに関連するリスクにつきましても、その他のリスクと同様に、当該規程に基づきリスク管理を行っております。

(5) 機会

当社グループは、サステナビリティに係わる課題について、リスク低減のみならず、当社のパーパス実現に向けた取り組みとも直結する重要なものであり、収益機会にもつながるものと認識しております。HDマップデータを活用した防災・減災や、燃費の良いルート探索・運転ガイダンスを典型としたサービス提供を、サステナビリティに関する当社グループにとっての事業機会と捉え、より広範に当社サービスが利用されるべく、また新たなサービスの開発・提供の可能性を視野に、事業を推進しております。

(6) 指標及び目標

当社では、上記「人材の育成及び社内環境整備に関する方針、戦略」に記載した方針について、人材の育成・強化に取り組み、成長の実現につなげてまいります。具体的な指標及び目標については、現在、策定中であり記載を省略しております。

 

3 【事業等のリスク】

本書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、提出日現在において当社グループが判断したものであり、将来において発生の可能性のあるすべてのリスクを網羅したものではありません。

 

(1) 事業環境に関するリスク

①  事業環境に関するリスクについて(顕在化の可能性:中/影響度:大/発生時期:特定時期なし)

当社グループの売上の大部分は、自動車向けの自動運転及び先進運転支援システムへのHDマップ搭載に係る開発利用料やライセンス・メンテナンスフィーとなっております。先進運転支援システムについては、1990年代から開発が進められてきたシステムであり、矢野経済研究所「2023年版 ADAS/自動運転用 キーデバイス・コンポーネント」(2024年2月発行)によれば、先進運転支援システムの装着率は2030年までに日米欧で100%近くに達し、中国でも80%を超え、ASEANやインド向け需要が2028年以降に本格的に立ち上がると予測されているなど、今後さらなる普及が見込まれております。これらの記述は、本書に引用されている外部の情報源から得られた統計その他の情報に基づいており、それらの情報については当社グループは独自の検証を行っておらず、その正確性または完全性を保証することはできません。

当社グループでは、今後も先進運転支援システム装着車両の順調な拡大、自動運転市場の本格的な立ち上がりを見込んでおります。一方、当社が設立された2016年時点には、自動運転レベル3以上でのHDマップの本格的な搭載開始が2022年前後となると想定されておりましたが、2025年1月時点においては自動運転レベル3が商用車として販売実績はあるものの量産車種での本格展開には至らないなど、自動運転市場の本格的な立ち上がりは、設立当時想定と比べ数年遅れている状況にあります。そのため当社グループでは、2019年のDynamic Map Platform North America, Inc.買収時に計上したのれん・技術関連資産及び同社固定資産等につき、2022年3月期連結決算において、当初想定していた損益が買収時の計画のそれより著しく下方に乖離していると判断し、当該のれん等を全額減損処理しております。また、当社では、2024年3月期連結決算において、事業計画に基づく割引前将来キャッシュ・フローと固定資産の帳簿価額を比較した結果、割引前将来キャッシュ・フローが帳簿価額を下回ったことから固定資産の減損処理をしております。当該減損処理は自動運転市場の立ち上がりの遅れを背景とするものであり、当該市場の本質的な市場性あるいは当社事業の事業性によるものあるいはそれらに影響するものではなく、当社グループでは従来同様の成長性を見通しておりますが、仮に技術・安全性の観点から車種開発に遅れが生じる、部品供給の不足により販売時期が延期になる等、市場の立ち上がりが想定通りに進まなかった場合、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

②  競合について(顕在化の可能性:中/影響度:大/発生時期:特定時期なし)

自動運転機能の商流において、HDマップの生成プロセスはコストが膨大である一方、各自動車メーカー間でのカスタマイズを要しないものであることから、日本国内においては、共通の仕様が定義され、その実行組織として当社は設立されております。こうした経緯から、当社は日本国内におけるHDマップを広域で生成・提供しており、自動車メーカーをはじめとした取引先各社から相応の評価を得ております。

海外事業においては、既に複数自動車メーカーの自動運転及び先進運転支援システムに採用され、量産車に搭載されており、さらにGeneral Motors Companyにより搭載モデル数が拡大することが公表されております。広範な道路整備範囲とcm級の精緻な位置精度をはじめとした高い技術力を背景に導入車種拡大に向けた戦略的な施策を講じることで、当社グループは競争優位性の維持・向上に努めております。

しかしながら、当社グループのHDマップとの比較では少なくともその精度の面で上回る競争優位性を有するとは見られないものの、一定の競合事業者(Here、TomTom、Googleなど)の参入も見られており、当社グループを上回る技術力(例として地図データ更新サイクルの短縮を可能とするための変化点検知技術の確立、モービル・マッピング・システム(MMS)に代わる低コストかつ高速な計測手法の確立など)、営業力、価格競争力、または代替技術・ソリューションを有する競合他社の参入や競合の激化が生じた場合、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

③  技術革新について(顕在化の可能性:低/影響度:大/発生時期:特定時期なし)

当社グループの主な事業は自動運転に関連する業界に属しており、技術革新は早いスピードで進むと予想されます。今後市場の拡大が見込まれるV2Xへの展開や半導体メーカー等における自動運転システム開発への適用など、自動車向けHDマップの活用領域は拡大していくものと考えておりますが、今後、HDマップに係る代替技術・ソリューション(例として、自動運転・先進運転支援システムにおける「地図」データの利用に関する、制御に必要な位置情報を把握するための技術的アプローチが挙げられます。「HDマップ」を利用するアプローチと、「SDマップ(ナビ地図)に走行車両から得られる走行車線のレーン情報などを付加した地図」を利用するアプローチがあり、いずれも、これらの地図データと各種車載センサーから得られる情報を組み合わせて制御を行います。両者はそれぞれ特性と用途が異なり、前者は高度な自己位置推定や悪天候時等にセンサーを補完し、限定されたエリアでの高度な自動運転、先進運転支援を可能にするものであり、後者は走行エリアを限定しない先進運転支援(車線維持支援、衝突回避、アダプティブ・クルーズ・コントロール(前車追従機能)等)に用いられています。現時点では、大手自動車メーカーや米国及び中国における主要な自動運転タクシーサービス提供企業が採用する「HDマップ」のアプローチが主流でありますが、テスラ等一部のプレイヤーは後者のアプローチを採用しています。)の拡大など、当社グループが現在展開する事業が適合しない新たな技術革新や市場動向が生じる可能性があります。当社グループはこうした技術進展を踏まえた機能開発・ソリューションの提供など、仮にそうした代替技術・ソリューションが一般化する場合には、当該状況に適合し、当社グループとして当該技術・ソリューションにおいても優位性を確保していくよう事業運営に取り組んでまいります。また他社と共同で代替技術の研究開発も行っております。

現時点で、代替技術・ソリューションが実用面で現実的なものとなる可能性は乏しいと見ておりますが、仮に現実的になった場合で、上記技術やソリューションを当社グループが提供できなかった場合、市場からの需要を喪失し、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

④  HDマップの整備・更新に係る投資が先行し、赤字を計上するリスクについて(顕在化の可能性:高/影響度:大/発生時期:1年以内)

当社グループの事業は、HDマップの整備道路範囲の拡大が当該マップ搭載の前提となるため、先行的にHDマップの整備範囲の拡大を進めており、当社グループは、設立以来赤字を継続しております。現時点での顧客ニーズに対応するためのHDマップの整備状況としましては、日本国内においては高速道路・自動車専用道路の整備を完了しており、北米においては対象を一般道に拡大し整備を進めております。欧州・韓国・中東においては、高速道路相当より整備を進めている段階です。日本・海外ともに顧客ニーズに対応するための大きな費用を要する整備が先行する状況が継続する場合、当面赤字計上が続く可能性があります。今後は、自動運転及び先進運転支援システム市場の立ち上がりを捉えた売上の拡大と、機能開発による整備コストの低減により、収益性の向上に努めていく方針です。

一方で、当社グループを取り巻く経営環境の急激な変化や「事業等のリスク」に記載されたリスクが顕在化することにより、上記収益性の向上が想定通りに進まなかった場合、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑤  多用途展開の推進について(顕在化の可能性:中/影響度:大/発生時期:数年以内)

当社グループでは、スマートシティ、MaaSにおける自動走行をはじめ、道路や設備などの各種インフラ維持管理、国や地方自治体による防災・減災対策、各研究機関に向け、高精度3次元データを提供するなど、多用途展開の推進に取り組んでおります。当社グループでは、今後も多用途展開について積極的に取り組んでいく方針ですが高精度3次元データを活用できる技術が確立されない、安定的なライセンス料収入につながるビジネスモデルの構築・商品化が出来ない、などの外部要因により当初の想定通りに事業が進捗しなかった場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑥  海外事業展開について(顕在化の可能性:中/影響度:大/発生時期:特定時期なし)

当社グループでは、Dynamic Map Platform North America, Inc.をはじめ、北米、欧州、中東及び韓国に拠点を有し、グローバルベースで事業を展開しております。当該海外事業の展開にあたっては、各国の経済・政治情勢の悪化、法律・規則、税制、外資規制等の差異及び変更、商慣習や文化の相違等が発生する可能性があります。これらの要因により特定の国での事業の遂行及び推進が困難になる場合には、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。当社グループでは次のようなリスクシナリオを想定し、それぞれの防止体制を整備しております。

 

a 当該地域・国における経済情勢が想定外に極端に悪化し、事業採算が大きく悪化する

現地において日常の事業を通じ経済動向を継続的に把握し、また予算・事業計画の策定と予実管理の徹底により、事業面で取るべき行動を早期に察知し、撤退を含めた必要な行動を取れるような体制としております。

b 当該地域・国において外資規制等、当社グループ事業のそれまでの想定を許容しない制約につながる法律・規制の変化が生じる、あるいは法律・規制の複雑さ・不明瞭さが増し、事業展開における柔軟性が阻害される

 法律・規制の動向につき、現地の日常的な事業を通じての情報収集の他、現地の法律・規制動向に通じる外部の法律事務所等を起用し、当該リスクの発生につながり得る動向を早期に把握できるようにしております。

c 当該地域・国の政情に不安が生じる

経済動向の把握と同様、現地における事業や現地勤務社員の日常生活を通じて政情の変化があればそれを早期に察知し、撤退を含めた必要な行動を取れるような体制としております。

d 当該地域・国において大きな自然災害が生じる

自然災害の影響の防止は手段が限定されますが、日本における対策と同様にBCPの体制を適用することで事業への影響を限定的にすべく想定しております。

e 当該地域・国において知的財産の侵害が起きる

日本における対策と同様、知的財産の保護のための必要な調査や手配を行っております。

f 当該地域・国における税制・関税に不利益な変化が生じる

経済情勢の動向把握の一環として税制についての状況も把握すべく努めており、仮に不利益な変化が生じる場合には当該地域・国における事業性を改めて精査すべく想定しております。関税については、事業を基本的には現地において完結できる体制とすることで影響を抑制すべく努めております。

 

また、各地域における財務諸表は日本円以外の通貨建てで作成されるため、連結財務諸表作成にあたっては円建てに換算することが必要となります。したがって、連結財務諸表数値は為替相場の変動による影響を受ける可能性があります。当社では、為替リスク管理方針を策定しており、今後必要に応じたヘッジ取引を行うことを検討してまいります。

 

⑦  固定資産の減損リスクについて(顕在化の可能性:中/影響度:中/発生時期:特定時期なし)

当社グループは、HDマップやモービル・マッピング・システム(MMS)をはじめとした固定資産について、今後減損損失の認識をすべきであると判定され、減損損失を計上した場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。固定資産の計上対象につき厳選し、業績への影響を抑制すべく努めております。

 

⑧  自動車出荷台数の低下リスクについて(顕在化の可能性:中/影響度:中/発生時期:特定時期なし)

当社グループの主要な販売先は自動車メーカーであり、当該販売先への売上高はHDマップ搭載車のメーカー出荷台数に依存しております。そのため、景気動向などのマクロ環境の変化や、原材料価格の高騰や部材調達難に伴う供給能力の減少などに伴う自動車への需給変化が当社想定を上回って推移する場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。台数情報につきより最新の見通しを把握し、業績予想に常に最新情報が織り込まれるようにすることで、業績影響を抑制すべく努めております。

 

⑨  業績の季節変動リスクについて(顕在化の可能性:中/影響度:中/発生時期:特定時期なし)

当社グループの事業は、3月を年度末として納入・売上計上がその年度末前後となる多くの企業や自治体を取引先としており、年度末に売上が集中する傾向があります。また、一定の期間にわたって履行義務が充足される開発プロジェクト契約では、履行義務の充足に係わる進捗度に基づき収益を認識しておりますが、一部業務を外注している場合、当該外注業務の検収をもって履行義務が充足し、収益を認識することとなります。これらの外注業務の納入のタイミングは年度末近くに集中する傾向があるため、その結果として履行義務の充足、売上計上のタイミングが年度末に集中する傾向にあります。当社グループでは、取引先や売上計上の観点でのビジネスモデルの多様化の一層の推進により売上計上時期が平準化されるよう努めております。一方で、季節変動による下振れ幅が想定よりも顕著な場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑩  プロジェクト進捗の遅延による業績見通しへの影響について(顕在化の可能性:中/影響度:大/発生時期:特定時期なし)

当社グループは開発プロジェクトに係わる案件においては、履行義務の充足に係る進捗度に基づき収益を認識しております。当該進捗度の見積にあたっては、対象期日までに発生した工事原価が、予想される工事原価の合計に占める割合に基づいて行っております。当社グループは、案件ごとに継続的に進捗状況に応じて見積総原価や予定案件期間の見直しを実施するなど適切な原価管理に取り組んでおりますが、その見積総原価や案件の進捗率は見通しに基づき計上しているため、修正される可能性があり、それらの見直しが必要になった場合は、売上計上時期の変更等により、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑪  収益の不確実性について(顕在化可能性:中/影響度:大/発生時期:特定時期無し)

本書提出日現在、当社グループにおいて継続的に商談を行っているオートモーティブビジネス領域のパイプライン(上記「第2 事業の状況 3経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (4)当社グループの強み ③今後のパイプラインを生み出す顧客基盤」に記載されたものを含みます。)は、段階別に「契約済み」、「RFQ:Request for Quotation」、「RFI:Request for Information」、「商談中」に分類されます。「契約済み」のパイプラインは法的拘束力のある契約を締結している状況を指し、顧客への役務提供時期や販売価格を含む諸取引条件が顧客との間で明確化されております。ただし、法的拘束力のある契約であっても、一般に、当社グループによる契約違反、不可抗力的な外部要因等を理由として、顧客側より解除される可能性があります。契約が解除された場合、当社グループは、当該契約から得られるはずであった潜在的な収益の全てまたは一部を失う可能性があります。また、「契約済み」パイプラインのうち、プロジェクト型に区分されるものについてはその契約金額が契約書上明記されておりますが、収益計上金額及び収益計上時期は実際の当社グループによる役務提供の成果により変動する可能性があります。また、「契約済み」パイプラインのうち、ライセンス型に区分されるものについては、1台あたりのライセンス単価は契約上明記されているものの、ライセンス台数については実際の自動車販売台数により変動し、結果として、収益計上金額及び収益計上時期が変動する可能性があります。「RFQ:Request for Quotation」の段階にあるパイプラインは顧客からの見積依頼書(RFQ:Request for Quotation)を受領し、その回答を行っている状況を指し、当該見積依頼書や回答自体には法的拘束力はなく当該見積依頼書や回答に基づく契約が将来締結される保証はありません。一般に、自動車業界においては数年先のサービス提供開始を見据えて開発契約や生産計画が検討されることが多く、見積依頼書(RFQ:Request for Quotation)を受ける時点においては当該パイプラインの具体性が高まっている状況にあると考えられるものの、見積依頼書に対して回答を行った取引内容や販売条件等がその後変更または失注となり、当社グループが想定する収益につながらない可能性があります。「RFI:Request for Information」の段階にあるパイプラインは顧客から情報提供依頼書(RFI:Request for Information)を受領し、その回答を行っている状況を指し、当該情報提供依頼書や回答自体には法的拘束力はなく当該情報提供依頼書や回答に基づく契約が将来締結される保証はありません。すなわち、「RFI:Request for Information」の段階は、見積依頼書(RFQ:Request for Quotation)受領に至る前段階であり、当該情報提供依頼書への回答で行われた取引内容や販売条件等は「RFQ:Request for Quotation」及び「契約済み」に進捗する段階においてその後変更または失注となり、当社グループが想定する収益につながらない可能性があります。「商談中」の段階にあるパイプラインは、現時点で具体的な条件面でのやり取りに至っておらず、初期的な商談が開始された状況を指し、具体的な収益計上金額及び収益計上時期について現時点で明確となっている事項はありません。

 

本書提出日現在、当社グループにおいて継続的に商談を行っている3Dデータビジネス領域のパイプライン(上記「第2 事業の状況 3経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (4)当社グループの強み ③今後のパイプラインを生み出す顧客基盤」に記載されたものを含みます。)は、段階別に「契約済み」、「商談中」に分類されます。「契約済み」のパイプラインは法的拘束力のある契約を締結している状況を指し、顧客への役務提供時期や販売価格を含む諸取引条件が顧客との間で明確化されております。ただし、法的拘束力のある契約は、一般に、当社グループによる契約違反、不可抗力的な外部要因等を理由として、顧客側より解除される可能性があります。契約が解除された場合、当社グループは、当該契約から得られるはずであった潜在的な収益の全てまたは一部を失う可能性があります。また、「契約済み」パイプラインのうち、プロジェクト型に区分されるものについてはその契約金額が契約書上明記されておりますが、収益計上金額及び収益計上時期は実際の当社グループによる役務提供の成果により変動する可能性があります。「商談中」の段階にあるパイプラインは、「契約済み」に至るまでの様々な段階で交渉が継続している状況を指します。パイプラインによっては具体的な諸取引条件について明確になりつつあるものも含まれますが、いずれも法的拘束力のある契約の締結には至っておらず、今後の契約締結及び収益計上について何ら保証されるものではありません。

 

以上より、各段階にあるパイプラインが当社グループの想定するタイミングや取引条件で契約締結に至らない場合、契約締結に至った場合でも顧客により当該契約が解除された場合及び当社グループの想定するタイミングや条件・数量での取引が実施できない場合、実際の収益計上金額や収益計上時期が現時点で当社が想定しているものと異なる場合、為替が大幅に変動した場合等には、当社グループが現時点で想定する収益計上金額及び収益金額を実現することが難しくなり、当社グループの事業、業績及び財政状態に 深刻な影響を及ぼす可能性があります。

 

⑫  特定の販売先への依存について(顕在化の可能性:低/影響度:大/発生時期:特定時期なし)

当社グループ、特に当社子会社であるDynamic Map Platform North America, Inc.は、販売先においては北米を中心にハンズフリー運転を可能にする先進運転支援システム「Super Cruise™」の搭載を拡大しているGeneral Motors CompanyにHDマップを提供していることから、同社向けの売上が過半を占めております。当社グループは、他の取引先への販売金額を拡大し、特定の販売先に依存しないよう営業活動を展開しており、それにより当該販売先への依存は低減方向にありますが、当該販売先との関係悪化、及び当該販売先の業績悪化等による事業活動に大きな変化が生じた場合、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります

 

⑬  特定の外注先への依存について(顕在化の可能性:低/影響度:中/発生時期:特定時期なし)

当社グループは、HDマップ作成にあたって求められる技術水準を有する外注先を選定しており、特定の外注先への発注比率は低下傾向にはあるものの、図化業務及び計測業務においては特定の外注先への発注比率が比較的高くなっております。当社グループでは、外注候補先の拡充や内製プロセスの一層の活用を通じ、特定の外注先に過度に依存しない体制を構築してまいりますが、当該外注先の業績悪化等による倒産や事業活動に大きな変化が生じた場合、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑭  国内自動車メーカー向け販売活動について(顕在化の可能性:低/影響度:中/発生時期:特定時期なし)

日本国内における当社の国内自動車メーカー向けの販売活動は、地図会社又はシステムメーカー等の一次代理店を中心に推進しております。現時点において、各一次代理店とは良好な関係にあり、直接販売チャネルについても構築を進めておりますが、当該一次代理店と関係悪化や当該代理店の業績悪化等による倒産や事業活動に大きな変化が生じた場合、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑮  品質管理について(顕在化の可能性:低/影響度:大/発生時期:特定時期なし)

当社グループは、品質管理専門部署を設置し、専任担当を置く等、一定の品質管理体制を整備し、安全性を確保できるように努めております。一方で、HDマップ搭載車における自動車事故などが生じ、当該事故原因がHDマップの不具合(経時的な変化によらないHDマップと現況との不一致など)にある場合、当社グループは製造物責任法等に基づき、損害賠償請求の対象となる可能性があります。しかしながら、一般的に自動車メーカーは自動運転・先進運転支援システムの中で、自動車に搭載される各種センサーの情報をHDマップと組み合わせて冗長性にも優れたシステムを構築しており、事故原因がHDマップのみに帰する可能性は高いとは言い難いと考えております。当社グループでは、販売先との契約において、賠償等を含む損害について当該取引において受領した対価を上限とする等の対応をしておりますが、契約上、当該上限の設定がない販売先もあり、損害賠償請求の対象となった場合には、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑯  事業に関連する法的規制について(顕在化の可能性:低/影響度:大/発生時期:特定時期なし)

当社グループは、独占禁止法等、日本及び諸外国において、様々な法律及び規制に服しております。当社グループは、コンプライアンス体制の充実が重要であると考えており、コンプライアンスに関する社内規則の策定や各種研修の実施により社内での周知徹底を図るとともに、法務担当部門による情報収集を行い、また日本及び米国において顧問弁護士を雇い、日本及び米国を含む諸外国の法規制に関する情報提供を受け、これら法規制について適宜相談できる体制を構築しております。しかしながら、将来において独占禁止法等の法律・規制に抵触した場合、あるいは予期せぬ法規制の変更、行政の運営方法の変更などが生じた場合、新たな対応コストが生じ、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑰ 株主間契約について(顕在化の可能性:低/影響度:中/発生時期:特定時期なし)

当社は、当社の事業運営等にも関わる 主要な株主7社との間で、当社事業を効果的に立ち上げ運営すべく定められた株主間契約を締結しております。当該契約においては、株主による当社への事業支援、競業避止義務や事業機会の優先権付与等が定められており、当社は当該契約の存在によりそれら便益を享受しております。当社が株式の上場申請を行って以降、当社の役員体制や株主への報告事項、株主による質問検査権、事業運営における協力や競業避止等の主要条項につき効力停止中となっておりますが、それら条項の効力は、すべての契約当事者との間で当社の株式上場により完全に終了することとなります。株式上場により当社の経営の独立性を一層確保する観点から、従前よりそれら便益の享受を得ることがなくなることへの備えを進めてきておりますが、想定とは異なる影響がある場合、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。なお、主要な株主7社のうちジオテクノロジー株式会社は、当社株式の上場に際して行われる売出により保有する全株式の売却を予定しており、同売出により同社が保有する全株式が売却された場合、同社は当社の株式を所有しないこととなり、同社との関係における株主間契約は終了することとなります。 

 

⑱ 資金繰りについて(顕在化の可能性:中/影響度:大/発生時期:特定時期なし)

当社グループは、④ HDマップの整備・更新に係る投資が先行し、赤字を計上するリスクについてに記載のとおり、設立以来赤字を継続しており、営業活動によるキャッシュ・フローがマイナスの状況にあります。今後も、HDマップの整備の拡大、更新等を中心とした投資需要が継続する想定です。これは当社北米子会社のDynamic Map Platform North America, Inc.においても同様であり、当社からの追加出資により事業運営が行われております。

上記状況の中、当社は設立以来、株式発行及び銀行からの負債による資金調達を継続的に行ってまいりました。負債による資金調達においては、調達先、調達スキーム、契約内容、契約期間等を分散させることに留意しながら調達を行ってまいりました。また、直接の借入だけではなくコミットメントライン契約も締結することで、資金量が減少する局面において、短期間で追加的に資金を確保する体制も整えております。今後も事業運営に必要な資金を見通し、市場環境を見極めた上で、継続的に資金調達を行ってまいります。

今後は、グループ全体で収益性の向上を図ることで営業キャッシュ・フローを改善し、また、引き続き必要に応じ適切なタイミングで資金調達を行うことで、財務基盤の強化を図る方針ですが、当社グループを取り巻く経営環境の急激な変化や本「事業等のリスク」に記載されたリスクが顕在化することにより、収益性の向上が想定通りに進まなかった場合、キャッシュ・フローが改善せず、当社資金繰りに影響を及ぼす可能性があります。

 

(2) 経営管理体制に関するリスク

①  社歴が浅いことについて(顕在化の可能性:中/影響度:中/発生時期:特定時期なし)

当社は2016年6月に設立されており、現在第9期と社歴の浅い会社であります。当社グループは今後も経営状況を継続的に開示してまいりますが、事業の初期段階・成長段階にあることから当社グループの過年度の経営成績は年度毎の変動も少なくなく、また比較対象とできる期間業績が限定的であることから期間業績比較を行うための十分な材料とはならず、過年度の実績のみでは今後の業績を判断する情報としては不十分な可能性があります。

 

②  内部管理体制について(顕在化の可能性:中/影響度:中/発生時期:特定時期なし)

当社グループは、企業価値の持続的な向上にむけて、コーポレート・ガバナンスが有効に機能するとともに、内部管理体制について一層の充実を図る必要があると認識しております。また、当社グループはDynamic Map Platform North America, Inc.など海外子会社を通じて、北米、欧州、中東、韓国の各国で事業を展開しておりますが、子会社管理の責任者であるコーポレート統括執行役員及び子会社管理を担当する関連各部署の担当者が海外子会社の責任者との情報共有を密にし、現地の経済・社会情勢に関する情報を収集して事業展開への影響を把握しております。今後も業務の適正性及び財務報告の信頼性の確保、各社内規則及び法令遵守を徹底してまいりますが、事業の急速な拡大により、十分な内部管理体制の整備が追い付かない場合には、適正な事業運営が困難となり、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

③  優秀な人材の獲得・育成について(顕在化の可能性:中/影響度:中/発生時期:特定時期なし)

当社グループは、当社グループの将来にわたる持続的成長に向けて、優秀な人材の採用と育成が欠かせないものと認識しております。また、当社は設立当初より株主からの出向者も受け入れておりますが、独立した事業体として社員のプロパー化を推進してまいりました。斯かる状況から、今後も積極的な採用活動を行っていく予定でありますが、当社グループの求める人材が十分に確保されなかった場合や人材の流出が進んだ場合、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

④  知的財産管理について(顕在化の可能性:低/影響度:大/発生時期:特定時期なし)

当社グループは、第三者の知的財産権を侵害することなく事業運営を行う体制を整備しておりますが、当社グループが知的財産権の侵害を理由に第三者から訴訟の提起等を受け、これを斥けられなかった場合、これらに対する対価の支払いやこれらに伴う当社グループの提供データの販売若しくは使用の中止、第三者からの不利な条件でのライセンスの取得等が必要となる可能性があります。これらの対応により、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑤  安全保障に係る管理について(顕在化の可能性:低/影響度:大/発生時期:特定時期なし)

HDマップに関しては、国によって規制の在り方が異なっております。当社グループがHDマップを供給する国については、各国の弁護士等の専門家と密に連携を取り、各国の規制について事前に調査・確認を行い、当該規制に従ってHDマップの供給を行うこととしております。現時点で当社グループがHDマップを供給している国においては、当社グループのHDマップの整備や提供について安全保障上、当局等からの許可は必要とされていません。一方で、国によっては、HDマップの整備や国外への持ち出し等について当局からの許可を必要とするなどの規制が存在している国があります。将来において、これらの規制が存在する国でHDマップを整備・供給する場合、または現在規制のない国において、これらの既存の規制が変更され、あるいは新たな規制が制定されるなどし、当該規制に対応する必要性が生じた場合、これらの対応を実施するための対応コストが発生し、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑥  個人情報に係る管理について(顕在化の可能性:低/影響度:中/発生時期:特定時期なし)

当社グループは顧客情報や従業員情報の他、HDマップ作成時に取得される人物の顔等の個人情報を管理しております。当社グループでは、個人情報管理規則を定めた上で、入退室管理等の物理的安全管理措置、アクセス制御や外部からの不正アクセス等の防止等の技術的安全管理措置により、個人情報を厳格に管理しております。

一方で、万が一、これらの個人情報が外部からの不正アクセスや業務上の過失等により、当社グループまたは業務委託先から外部に流出し、不適切な利用や改ざん等が発生した場合には、当社グループへの損害賠償請求や当該流出への対応に多額の費用が必要となる他、社会的信用が毀損されるなどにより、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(3) その他のリスク
①  自然災害、事故等に関するリスク(顕在化の可能性:低/影響度:大/発生時期:特定時期なし)

当社グループでは、大規模な自然災害や事故等が発生した場合に備え、HDマップに係るデータはクラウド上に保管する、あるいは定期バックアップを行うなど、BCP対策を講じており、事業継続に対する影響を最小限に留めるよう努めておりますが、当該災害、事故等の発生によりデータに毀損が生じた場合には、HDマップデータの再整備が必要になる可能性がある等、事業の継続に支障が生じ、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

②  公募増資による調達資金使途について(顕在化の可能性:中/影響度:大/発生時期:特定時期なし)

新規株式上場時に計画している公募増資による調達資金の使途については、オートモーティブビジネス及び3Dデータビジネス向け高精度3次元位置情報の整備更新、海外事業拡大のための子会社宛投融資、研究開発に充当する予定であります。しかしながら、経営環境の急激な変化等により、上記の資金投入から想定通りの効果を得られない可能性があります。また、市場環境の急激な変化により、調達資金を上記以外の目的で使用する可能性があり、その場合は速やかに資金使途の変更について開示する予定です。

 

③  配当政策について(顕在化の可能性:中/影響度:中/発生時期:特定時期なし)

当社は創業以来配当を実施しておらず、当面も事業拡大のため、内部留保による財務体質の強化及びHDマップの整備範囲の拡大、HDマップの整備コスト削減に向けた研究開発といった投資を優先する方針です。株主への利益還元についても重要な経営課題として捉え、財政状態及び経営成績を勘案しつつ配当の実施を検討してまいりますが、利益計画が当社グループの想定通りに進捗せず、今後安定的に利益を計上できない状態が続いた場合には、配当による株主還元が困難となる可能性があります。

 

④  税務上の繰越欠損金について(顕在化の可能性:中/影響度:中/発生時期:特定時期なし)

当社グループは、2024年3月末時点において21,687百万円の税務上の繰越欠損金が存在しております。当社グループの業績が順調に推移することにより繰越欠損金が解消した場合には、通常の税率に基づく法人税、住民税及び事業税が計上されることとなり、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑤ 財務制限条項について(顕在化の可能性:中/影響度:大/発生時期:数年以内)

当社グループの主要な借入金に係る金融機関との契約には、財務制限条項が付されています。これらに抵触した場合には期限の利益を喪失する等、当社グループの財政状態に重要な影響を及ぼす可能性があります。財務制限条項の詳細につきましては「第5 経理の状況」に記載しております。

 

⑥  ベンチャーキャピタル等投資事業者の株式所有割合に伴うリスクについて(顕在化の可能性:高/影響度:大/発生時期:数年以内)

当社の発行済株式総数に対するベンチャーキャピタル等の投資事業者の所有割合(ベンチャーキャピタル、ベンチャーキャピタルが組成した投資事業有限責任組合、政府系投資ファンド等を含む)は本書提出日現在76.77%であります。当社の株式公開後において、投資事業者が所有する株式の全部又は一部を売却する可能性があり、特に投資事業者が所有する株式の過半を所有する株式会社INCJは、旧産業競争力強化法と同趣旨の枠組みのもと2025年3月末までを活動期間としており、活動期間終了までに投資資産(当社株式を含む)の処分を実施することを目標に設定しておりますが、投資資産の処分は経済事情及び投資先の事業の状況等も考慮した上で検討されるため、必ずしも2025年3月末までに全ての投資資産の処分が実施されるわけではありません。株式会社INCJは、2025年3月末以降も含め、株式市場で当社株式の売却を行う場合には、株価下落圧力とならないような譲渡または売却方法を可能な限り模索するとのことですが、当社株式の全部又は一部が短期間で売却される場合、株式市場における当社株式の需給バランスが短期的には損なわれ、当社株価に影響を及ぼす可能性が有ります。

 

⑦ 新株予約権の行使による株式価値の希薄化について(顕在化の可能性:中/影響度:中/発生時期:数年以内)

当社グループでは、当社グループの役員及び従業員に対するインセンティブを目的とし、新株予約権を付与しており、今後も優秀な人材の獲得に向けてさらなる新株予約権の付与も検討しております。これらの新株予約権が行使された場合には、既存株主が保有する株式価値が希薄化する可能性があります。本書提出日現在における新株予約権による潜在株式数は2,807,800株であり、発行済株式総数18,814,850株の14.92%に相当しております。

 
⑧ 当社株式の流動性について(顕在化の可能性:中/影響度:中/発生時期:1年以内)

当社は、東京証券取引所グロース市場への上場を予定しており、上場に際しては、公募増資及び売出しによって当社株式の流動性の確保に可能な限り努めることとしておりますが、株式会社東京証券取引所の定める流通株式比率は25%以上であるところ、新規上場時における流通株式比率は25.0%にとどまる見込みであります。

今後は、大株主への一部売出しの要請、ストック・オプションの行使による流通株式数の増加等を勘案し、これらの組み合わせにより、流動性の向上を図っていく方針ではありますが、何らかの事情により上場時よりも流動性が低下する場合には、当社株式の市場における売買が停滞する可能性があり、それにより当社株式の需給関係にも悪影響を及ぼす可能性があります。

 

⑨  訴訟等について(顕在化の可能性:低/影響度:大/発生時期:特定時期なし)

当社グループは、本書提出日現在において、訴訟を提起されている事実はございません。一方で、事業運営の中で当社グループが提供するソフトウエア・データの不備等により、何らかの問題が生じた場合等、これらに起因した損害賠償請求や訴訟の提起がなされる可能性があります。その場合、当社グループの社会的信用が毀損され、また損害賠償の金額、訴訟内容及び結果によっては、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。) の状況の概要は次のとおりであります。

 

①  経営成績等の状況

第8期連結会計年度(自 2023年4月1日 至 2024年3月31日)

当期における我が国経済は、新型コロナウイルス感染症の5類への移行により、経済社会活動の正常化が進み、緩やかな回復基調となりました。一方で、中東情勢の緊迫化やウクライナ情勢の長期化、世界的な金融引締めに伴う景気の下振れ懸念、円安の進行を背景とした資源及び原材料価格の高騰等の影響により、景気の先行きは依然として不透明な状況が続いております。

そのような環境下、自動車業界においては自動運転及び先進運転支援システムへの関心が高まり、それに応じて当社グループHDマップの搭載車台数が増加しました。また、地球温暖化による環境変化が発生、国内での高齢化・人口減少問題が顕在化し、持続可能な社会の実現が求められる中で、自然災害激甚化に対する防災・減災対策や省人化・省力化対応などが推進されはじめており、車載向け以外の分野において、新たな用途での当社グループ保有データの活用に一層の期待を持てる状況となっております。

このような状況のもと、当社グループでは、デジタル社会インフラとして高精度位置情報基盤をグローバルに構築し、自動運転をはじめとする新しい未来を拓くことをパーパスと定め、高精度位置情報の提供を通じてあらゆる産業における共通基盤となるべく事業を推進しております。また、現実の世界をデジタル空間に複製する高精度3次元データのプラットフォーマーとして、様々な産業分野におけるイノベーションを支えることをミッションとして掲げ、多方面のお客様に価値あるサービスを提供できる組織体制を整え、パーパスの実現に向けた各施策を実行してまいりました。

以上の結果、当期の当社グループの経営成績は、売上高は5,567百万円(前期比51.2%増加)、営業損失は2,554百万円(前期 営業損失3,999百万円)、経常損失は2,490百万円(前期 経常損失3,453百万円)、親会社株主に帰属する当期純損失は4,049百万円(前期 親会社株主に帰属する当期純損失4,117百万円)となりました。

なお、第2四半期連結会計期間に実施した当社子会社DMP NA, Inc.の清算にともなう子会社清算益75百万円を特別利益として、また、国内セグメントにおける固定資産に係る減損損失1,596百万円を特別損失として計上しております。

 

セグメント別の経営成績は次のとおりであります。

a 国内

需要は堅調に推移しており、車載搭載台数が増加した他、HDマップデータの利活用を推進するため、国が推進する環境問題に対する取り組みや、空間情報を一意に特定するプロジェクト等に参画し、車載向け以外の案件も取り込んだことにより売上高は前期を上回りました。利益面は、受注案件の費用計上・先行投資実施等により、営業損失を計上しております。

以上の結果、売上高1,654百万円(前期比23.2%増加)、営業損失1,430百万円(前期 営業損失1,320百万円)となりました。

 

b 海外

主に、北米・欧州での自動車メーカー向け事業を担っており、現地での需要を確実に取り込むことにより、売上高は前期を大幅に上回りました。地図データ整備等の先行投資を行っていることにより営業損失を計上しております。以上の結果、売上高3,913百万円(前期比67.4%増加)、営業損失1,085百万円(前期 営業損失2,590百万円)となりました。

 

第9期中間連結会計期間(自 2024年4月1日 至 2024年9月30日) 

当中間連結会計期間のわが国経済は、雇用・所得環境が改善するなかで緩やかに回復する動きとなりました。一方で、中東情勢やウクライナ情勢の長期化、欧米における高い金利水準の継続による景気の下振れ懸念等の影響により、景気の先行きは依然として不透明な状況が続いております。

そのような環境下、自動車業界においては自動運転及び先進運転支援システムへの関心が高まり、それに応じて当社グループHDマップの搭載車種が増加しました。また、地球温暖化による環境変化が発生、国内での高齢化・人口減少問題が顕在化し、持続可能な社会の実現が求められる中で、自然災害激甚化に対する防災・減災対策や省人化・省力化対応などが推進されはじめており、車載向け以外の分野において、新たな用途での当社グループ保有データの活用に一層の期待を持てる状況となっております。

 

以上の結果、当中間連結会計期間の実績は、売上高は2,248百万円、営業損失は1,308百万円、経常損失は1,409百万円、親会社株主に帰属する中間純損失は1,416百万円となりました。

 

セグメント別の経営成績は次のとおりであります。

a 国内

当中間連結会計期間は、車載向け事業においてはHDマップの搭載台数が増加し、車載向け以外の事業では、受注活動が進展し、国が推進する環境問題や社会課題解決に取り組むプロジェクト等に参画し、案件進捗に応じた売上を計上した結果、売上高は376百万円となりました。利益面は、受注案件の費用計上・先行投資実施等により、営業損失630百万円となりました。

 

b 海外

当中間連結会計期間は、北米・欧州等での車載向け事業において、現地での需要を取り込みました。この結果、売上高は1,871百万円となりました。利益面では、北米地域等の先行投資分の費用計上により営業損失662百万円となりました。

 

第9期第3四半期連結累計期間(自 2024年4月1日 至 2024年12月31日) 

当第3四半期連結累計期間のわが国経済は、雇用・所得環境が改善するなかで緩やかに回復する動きとなりました。一方で、中東情勢やウクライナ情勢の長期化、欧米における高い金利水準の継続に伴う景気の下振れ懸念、円安の継続を背景とした資源及び原材料価格の高騰等の影響により、景気の先行きは依然として不透明な状況が続いております。

そのような環境下、自動車業界においては自動運転及び先進運転支援システムへの関心が高まり、それに応じて当社HDマップの搭載車種が増加しました。また、地球温暖化による環境変化が発生、国内での高齢化・人口減少問題が顕在化し、持続可能な社会の実現が求められる中で、自然災害激甚化に対する防災・減災対策や省人化・省力化対応などが推進されはじめており、車載向け以外の分野において、新たな用途での当社保有データの活用に一層の期待を持てる状況となっております。

 

以上の結果、当第3四半期連結累計期間の実績は、売上高は4,012百万円、営業損失は1,421百万円、経常損失は1,530百万円、親会社株主に帰属する四半期純損失は1,538百万円となりました。

 

セグメント別の経営成績は次のとおりであります。

a 国内

当第3四半期連結累計期間は、車載向け事業においてはHDマップの搭載台数が増加し、車載向け以外の事業では、受注活動が進展し、国が推進する環境問題や社会課題解決に取り組むプロジェクト等に参画し、案件進捗に応じた売上を計上した結果、売上高は719百万円となりました。利益面は、受注案件の費用計上・先行投資実施等により、営業損失970百万円となりました。

 

b 海外

当第3四半期連結累計期間は、車載向け事業において、現地での需要を取り込み、HDマップの車載搭載台数が増加しました。この結果、売上高は3,292百万円となりました。利益面では、北米地域等の先行投資分の費用計上により営業損失437百万円となりました。

 

②  財政状態の状況

第8期連結会計年度(自 2023年4月1日 至 2024年3月31日)

(資産)

当期末における資産合計は、前期末比4,291百万円減少の14,241百万円となりました。これは主に、北米等での地図データ整備費用支払により、現金及び預金が減少したことによるものです。

 

(負債)

当期末における負債合計は、前期末比359百万円減少の9,386百万円となりました。これは主に、長期借入金の返済により、有利子負債が減少したことよるものです。

 

(純資産)

     当期末における純資産合計は、前期末比3,931百万円減少の4,854百万円となりました。これは主に、親会社株主に帰属する当期純損失の計上によるものです。

 

第9期中間連結会計期間(自 2024年4月1日 至 2024年9月30日)
(資産)

当中間連結会計期間末における資産合計は、前連結会計年度末比2,453百万円減少の11,787百万円となりました。これは主に、北米等での地図データ整備費用支払及び長期借入金の返済により、現金及び預金が減少したことによるものです。

 

(負債)

当中間連結会計期間末における負債合計は、前連結会計年度末比1,436百万円減少の7,950百万円となりました。これは主に、長期借入金の返済により、有利子負債が減少したことによるものです

 

(純資産)

当中間連結会計期間末における純資産合計は、前連結会計年度末比1,017百万円減少の3,837百万円となりました。これは主に、親会社株主に帰属する中間純損失の計上によるものです。

 

第9期第3四半期連結累計期間(自 2024年4月1日 至 2024年12月31日)
(資産)

第3四半期連結会計期間末における資産合計は、前連結会計年度末比3,785百万円減少の10,455百万円となりしました。これは主に、北米等での地図データ整備費用支払及び長期借入金の返済により、現金及び預金が減少したことによるものです

 

(負債)

第3四半期連結会計期間末における負債合計は、前連結会計年度末比2,205百万円減少の7,181百万円となりました。これは主に、長期借入金の返済により、有利子負債が減少したことによるものです

 

(純資産)

第3四半期連結会計期間末における純資産合計は、前連結会計年度末比1,580百万円減少の3,274百万円となりました。これは主に、親会社株主に帰属する四半期純損失の計上によるものです

 

③  キャッシュ・フローの状況

第8期連結会計年度(自 2023年4月1日 至 2024年3月31日)

当期末における「現金及び現金同等物」(以下「資金」)は、前期末に比べ、3,419百万円減少し、10,174百万円となりました。当期における各キャッシュ・フローの状況は次のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動による資金収支は、3,166百万円の支出(前期は4,946百万円の支出)となりました。

これは主に、税金等調整前当期純損失4,042百万円(前期は税金等調整前当期純損失3,453百万円)、売上債権及び契約資産の増加額446百万円(前期は売上債権及び契約資産の増加額1,063百万円)等によるものであります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動による資金収支は、842百万円の支出(前期は1,928百万円の支出)となりました。

これは主として、北米等での地図データの新規整備等に係る無形固定資産等の取得による支出753百万円(前期は無形固定資産の取得による支出1,039百万円)等によるものであります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動による資金収支は、159百万円の収入(前期は7,119百万円の収入)となりました。

これは主として、新規借入による長期借入金による収入600百万円(前期は長期借入金による収入2,700百万円)等によるものであります。

 

第9期中間連結会計期間(自 2024年4月1日 至 2024年9月30日)

当中間連結会計期間末における「現金及び現金同等物」(以下「資金」)は、前期末に比べ、3,182百万円減少し、6,991百万円となりました。当連結中間会計期間における各キャッシュ・フローの状況は次のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動による資金収支は、724百万円の支出となりました。

これは主に、税金等調整前当期純損失1,409百万円、売上債権及び契約資産の減少額765百万円等によるものであります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動による資金収支は、1,699百万円の支出となりました。

これは主として、北米等での地図データの新規整備等に係る無形固定資産の取得等による支出1,042百万円、定期預金預入による支出609百万円等によるものであります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動による資金収支は、954百万円の支出となりました。

これは主として、長期借入金の返済による支出904百万円等によるものであります。

 

④ 生産、受注及び販売の実績

a 生産実績

当社グループが提供するサービスの性格上、生産実績の記載になじまないため、記載を省略しております。

 

b 受注実績

当社グループが提供するサービスの性格上、受注実績の記載になじまないため、記載を省略しております。

 

c 販売実績

第8期連結会計年度、第9期中間連結会計期間及び第9期第3四半期連結累計期間における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 

 

第8期連結会計年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

第9期中間連結会計期間

(自 2024年4月1日

 至2024年9月30日)

第9期第3四半期連結累計期間

(自 2024年4月1日

 至2024年12月31日)

セグメントの名称

販売高(百万円)

前期比(%)

販売高(百万円)

販売高(百万円)

国内

1,654

123.2

376

719

海外

3,913

167.4

1,871

3,292

合計

5,567

151.2

2,248

4,012

 

(注) 1.セグメント間取引については相殺消去しております。

2.当連結会計年度において、販売実績に著しい変動がありました。これは、海外セグメントにおきまして、北米・欧州での現地需要を取り込んだことによります。

3.主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合

 

取引先

第8期連結会計年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

第9期中間連結会計期間

(自 2024年4月1日

 至2024年9月30日)

第9期第3四半期

連結累計期間

(自 2024年4月1日

  至 2024年12月31日)

販売高

(百万円)

割合(%)

販売高

(百万円)

割合(%)

販売高

(百万円)

割合(%)

General Motors Company

3,182

57.2

1,419

63.1

2,402

59.9

国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構

693

12.5

41

1.8

104

2.6

 

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は、次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものであります。

 

①  重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般的に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたっては、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りが必要とされます。経営者は、当社グループの過去からの実績や将来における発生可能性を勘案して合理的に判断しておりますが、見積り時の不確実性のため、実際の結果はこれらの見積りと異なる場合があります。

当社の連結財務諸表を作成するにあたって採用している会計上の見積及び仮定のうち、重要なものは、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。

 

②  経営成績の分析

経営成績の分析については、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ① 経営成績等の状況」に記載のとおりであります。

 

③  財政状態の分析

財政状態の分析については、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ② 財政状態の状況」に記載のとおりであります。

 

④  キャッシュ・フローの分析

キャッシュ・フローの分析については、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ③ キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

 

⑤  経営成績に重要な影響を与える要因について

当社グループの経営成績に重要な影響を与える主な要因は、以下のとおりであります。

当社グループは自動運転や先進運転支援システムに有用な自動車向けHDマップを生成・販売しております。当社グループでは、今後も先進運転支援システム装着車両の販売が順調に拡大することを見込んでおりますが、想定通りに先進運転支援システムが普及せず市場が拡大しない場合には、当社グループの売上高等の業績に悪影響を及ぼす可能性があります。また、自動車向けHDマップの活用領域は、自動運転や先進運転支援システムの機能を装備した車両への搭載のみならず、今後市場の拡大が見込まれるV2Xへの展開や半導体メーカー等における自動運転システム開発への適用などに拡大していくものと当社グループでは考えておりますが、HDマップに係る代替技術・ソリューションの拡大など、当社グループが現在展開する事業が適合しない新たな技術革新や市場動向が生じる可能性があります。そのような代替技術・ソリューションが主流となった場合には、当社グループが提供するHDマップへの需要が低減し、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

その他、経営成績に重要な影響を与える要因については、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。

 

⑥  資本の財源及び資金の流動性についての分析

当社グループにおける主な資金需要は、HDマップの整備・更新のための設備投資及び外注費です。これらの資金需要に対しては、自己資金、金融機関からの借入等により充当することとしております。

なお、当社グループの資金の流動性につきましては、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ③ キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。また、重要な資本的支出の予定につきましては、「第3 設備の状況 3 設備の新設、除却等の計画」に記載のとおりであります。

 

⑦  経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (3)目標とする客観的な指標等」に記載のとおり、当社グループは、成長性、収益性及びキャッシュ・フローの状況を把握するために、売上高、ライセンス型売上高、調整後EBITDAを重要な経営指標と位置付けております。各指標の推移については、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (3)目標とする客観的な指標等」に記載のとおりです。

 

⑧  経営者の問題認識と今後の方針について

経営者の問題認識と今後の方針については、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおりであります。

 

 

5 【経営上の重要な契約等】

当社の経営上の重要な契約は以下のとおりであります。

 

相手先
の名称

相手先の
所在地

契約品目

契約
締結日

契約期間

契約内容

三菱電機株式会社

株式会社ゼンリン

株式会社パスコ

アイサンテクノロジー株式会社

ジオテクノロジーズ株式会社

株式会社トヨタマップマスター

株式会社INCJ

日本

2019年

3月11日

2019年3月11日開始

(期間の定め無し)

当社の事業運営等について規定された株主間契約で、当社の事業運営等にも関わる主要な株主7社との間で、株主による当社への事業支援、事業機会の優先権付与に関する事項等を定めたもの

(注)

株式会社ゼンリン

日本

地図データ

2020年

3月23日

2020年3月23日から
2021年3月31日まで

以後、1年後の自動更新

自動走行システム等を搭載した自動車又はナビゲーションシステムを量産・販売するための地図データの使用許諾

 

(注) 当社が上場申請を行って以降、当社の役員体制や株主への報告事項、株主による質問検査権、事業運営における協力や競業避止等の主要条項につき効力停止中となっております。それら条項の効力は、すべての契約当事者との間で当社の株式上場により完全に終了することとなります。なお、主要な株主7社のうちジオテクノロジー株式会社は、当社株式の上場に際して行われる売出により保有する全株式の売却を予定しており、同売出により同社が保有する全株式が売却された場合、同社は当社の株式を所有しないこととなり、同社との関係における株主間契約は終了することとなります。 

 

6 【研究開発活動】

当社グループは、当社グループが保有するアセットの品質向上や利用拡大に向けた付加価値向上を目的として研究開発を進めています。主要な課題として、HDマップ整備・更新費用の低減や多用途展開に向けた機能開発が挙げられ、当事業年度は、自動車専用道路更新コスト削減、一般道データ初期整備に向けた環境構築を主として、新規事業に関わる提案活動・PoCを推進しました。また、Dynamic Map Platform North America, Inc.も含め、ドローンや衛星画像等MMS以外の計測手法、自動図化等プロダクトの生産性と効率の向上や今後の成長に必要な技術開発力の強化を進めます。また、更新コスト低減のキーとなる変化点抽出の効率化(自動化)については他社との提携なども含めて技術開発を進めます。研究体制として、HDマップ整備の効率化については主にDynamic Map Platform North America, Inc.及びデータ制作部が担当し、多用途展開に向けた開発は主にライセンスビジネス部が担当しております。こうした研究開発の実施により、今後当社グループのコア技術開発を進めるとともに、HDマップがより広範に搭載・採用されるべく努めてまいります。

 

第8期連結会計年度(自 2023年4月1日 至 2024年3月31日)

当連結会計年度の研究開発費の総額は89百万円となりました。セグメント別では、国内で86百万円、海外で2百万円となりました。具体的な研究開発の成果は以下のとおりです。

 

(国内)

研究開発項目

研究成果

変化点検知コスト削減

簡易的な計測装置での自動変化点検知の実証を行う。道路構造変化の抽出について検知手法の原理検証が完了し、これによる変化点検知コスト削減効果が期待できることを確認。

除雪関連事業向けシステムの開発

HDマップ、高精度測位端末等を活用した除雪車両の運用支援システムのプロトタイプシステム開発。自治体除雪の現場でPoCを推進し、成果を基に量産に向けた開発計画を策定。

 

 

第9期中間連結会計期間 (自 2024年4月1日 至 2024年9月30日)

当中間連結会計期間の研究開発費の総額は93百万円となりました。セグメント別では、国内で93百万円となりました。HDマップの更新技術開発を目的に走行軌跡等のプローブ情報を活用した道路変化点検出実証、空港内の静的・動的な様々な情報を集約する空間情報システム(VIPS)の開発等を行ってまいりました。

 

第9期第3四半期連結累計期間(自 2024年4月1日 至 2024年12月31日)

当第3四半期連結累計期間の研究開発費の総額は171百万円となりました。セグメント別では、国内で171百万円となりました。HDマップの更新技術開発を目的に走行軌跡等のプローブ情報を活用した道路変化点検出実証、空港内の静的・動的な様々な情報を集約する空間情報システム(VIPS)の開発等を行ってまいりました。